グローランサー3エロパロSS


『モニカ触手陵辱』 

 

 

 

 

  1


 北の鉱山に時鉱石を採りに来たスレイン一行。
 しかし、鉱山の中は思ったより広く、そして入り組んでいた。坑道が幾つにも枝分かれして複雑に絡み合い、どこまで行っても真っ暗で、じとじとと湿った空気が澱む虚ろな穴ぐら。頼れるのは、スレイン達が持ってきたランプの小さな灯りのみだった。
 時鉱石は最深部にあるとは聞いたものの、どこをどう辿ればその最奥に行き着くのかまでは聞いてなかった。それに気付いたのは鉱山に到着してからだった。しかし、鉱山ならば坑は比較的整然と通ってて進み易いだろうとたかをくくった。
 実態を見たスレイン達は呆然とした。どうやら、放棄された後にモンスターの巣窟と成り果て、無秩序に拡張されたらしい。
 想像とはまったく異なる様相と化していた鉱山に、スレイン達は当惑したが、ひたすら最深部を目指せばいいだけだと、とにかく進み始めた。だが、何回も行き止まりに当たって引き返したり、ひとつ下の階層に降りる道を見つけるだけでも何時間も手こずったりするにつれ、楽観的な見方は影を潜めていき、代わりに不安と焦燥が首をもたげていった。
 この鉱山で目的の鉱物一つ探す困難を、スレイン達ははっきりと感じた。そこら辺に転がってる石ころでは用をなさない。どうしても時鉱石でなければ駄目なのである。だが、どうすれば最深部に到達することができるのか。皆目見当もつかなかった。
 ひょっとしたら、引き返した方がいいのではないか……。
 周りを囲う土壁の圧迫感が、山の中にいるのだという息苦しい窮屈さを絶えず意識させる。次々といびつに分岐する道が、冷静な判断力を少しずつ削ぎ取ってゆく。そして何よりも、暗闇で突如遭遇するモンスターの脅威。
 鉱山というより、これではまるで一つのダンジョン――
 なかなか深部に到達できず、ただいたずらに時だけが過ぎてゆき、スレイン達の疲労は溜まる一方であった。
 あと何時間、このダンジョンに潜っていればいいのか……
 そして。
 気づいた時には、パーティーの一番後ろを歩いていたモニカの姿が無くなっていた。

 


 モニカは独り、広大な坑道内のどこだか分からない位置に佇んでいた。周りは不気味なほど静まり返っている。この土の壁の向こうはどこまでも土石がつまってるのだという、押し潰されるような感覚がひしひしと伝わる。近くに水脈でもあるのか、それとも長雨がここまで浸透しているのか、土壁にじっとりと水気がにじみだしていて、空気もひんやりと冷たかった。
「困ったわ……」
 ぽつりと呟くモニカ。暗い坑道の中、仲間達とはぐれないように気を付けて進んでいたのだが、恐れていた事が起きてしまった。
 何十回目かもう分からなくなったモンスターとの戦闘中、後ろからもモンスターが現れ、最後衛のモニカが対応しなければならなくなった。もとより接近戦は得意ではない。何とか距離をとって戦おうと苦闘しているうちに、仲間達の戦いの場から離れてゆき、ようやくそのモンスターを屠れたと思っ周りを見回してみると、まったく覚えのない坑道に独りだったのである。ここは一本道だったが、来るまでに何回か分かれ道を通った気がする。しかし、どこをどう通って来たのか、道筋を覚えている余裕は無かった。同時に出口への順序も分からなくなったわけである。
 頼りはリング・ウェポンと、片手に持ったランプだけであった。
「疲労が招いた判断ミスね……」
と、モニカは冷静に自分の行動を分析しつつ反省した。
 表面上はいつものようにそう澄んだ顔だった。だが、胸中は違った。
 不安が渦巻いていた。
 フェザリアンの血が半分流れているモニカは、暗く狭いところはあまり好きではない。特にここは山の中である。まるで幽界を彷徨っているような、時々生きた心地がしない錯覚に陥った。この鉱山に潜ってもうだいぶ時間が経っているが、我慢し続けられているのは、人間の血と、仲間と一緒だったおかげだろう。
 それが、独りになってしまった。
(ひとりぼっち――)
 きゅっと心細そうに眉根をひそめるモニカ。
 父も母も小さい時に無くしたが、モニカは決して孤独ではなかった。母方の祖父と一緒に暮らしているし、ポーニア村の人々もよくしてくれる。フェザリアン達だって一応は彼女の存在を受け入れてくれる。
 だが今は、頼れるのは自分以外になかった。
(いえ、違うわ)
 モニカは首を振り、その考えをすぐに否定した。
(スレイン達は私を捜しに来てくれるはず……)
 決してまだ独りじゃない。
 冷静な判断力を失うまいと、唇を一文字に引き締めた。
 こういう場合は、むやみに動いても仕方ない。
 モニカはこの場で待機していようと、坑の端に腰を下ろそうとした。


 その時だった。


 ウジュル……ウジュル……


 ――怪しい変な音が、幽かに聞こえた気がした。
「……」
 モニカはしゃがもうとする動きを途中で止めた。
 じっと耳を澄ませる。


 ウジュル……ウジュル……


 まだ幽かだが、今度は前よりはっきりと聞こえてくる。
 坑道の闇の奥から、何かがこちらに近づいてくるようであった。
「……」
 モニカは片手に持っていたランプを見た。この光を目指しているのかもしれない。しかし、このランプの光が無ければ、この坑道内を一歩も進めない。
 それとも、すぐそこに転がっているモンスターの死骸から漂う血の臭いに誘われて来たのか。
 一本道の場所であった。来るとしたら、前か、後ろである。
 モニカは精神を集中し、リング・ウェポンを静かに発動させる。たちまちのうちに、空いている方の手の指の間に四本の鋭利な短剣が具現した。
 それをいつでも投擲できる体勢をとり、モニカは立ちつくした。


 ――静寂。


 ランプがなめらかな光を放ちながら虚ろな坑内を照らし出している。
 前……? 後ろ……? 音がくる方向がまだ分からない以上、動きようがなかった。できれば前から来て欲しかった。後ろは来た道である。
 どうしようか。
 モニカはじっとしたまま考えた。
 戦うか、逃げるか。独りで戦うのは危険だった。それほどモニカは自分に過信を抱いていない。よほど与し易い相手ならばいいが、モンスターは危険だからモンスターと呼ばれるのである。
 だが、どちらから来るのかが分からなければ、逃げ出しようもなかった。
 モニカはじっと動かず、聴覚に全神経を集めた。


 トクン……トクン……


 これは彼女の心臓の音。モニカの控えめな膨らみの下で、そのリズムは正確に刻まれていた。冷静に事態に対応している今は、興奮も極力抑えられていた。


 ウジュル……ウジュル……


 音が大きくなってきていた。近くまで来ている。
 後ろからだった。
(仕方ないわね……)
 モニカはだが、落胆しなかった。物事が思い通りにいかないことは、自分の背中にある飛べない翼が何よりも教えてくれる。
 ゆっくりと身体の向きを変え、後ろに振り返った。ランプを掲げてみたが、照らされる範囲にはまだ見えない。音の遠さはまだ光の外、闇の向こうだった。
 だが、着実にこちらに来ている。
 短剣を握る手に、わずかに力がこもった。
 現れるものが彼女にとって敵である可能性は極めて高い。こんな気色悪そうな音をたてるのは、十中八九、モンスターだろう。
 モンスターであればこの短剣を投げつけ、怯んだところを距離を取る。追いかけてくればさらに投げつけて牽制しつつ戦う。接近戦にはしない。
(非力で魔法も拙い私にはそれしかない)
 それが失敗したら――どうあがこうが、今は独りなのである。死ぬ可能性は高かった。


 ウジュル……ウジュル……ウジュル……ウジュル……


 すぐそこまで気配が近付いている。もう10メートルも離れてないだろう。モニカの手に緊張が篭もる。
(それにしても、気味の悪い音を出すやつね)
 まるで腐食物でいっぱいのゴミ溜めを掻き回すような……
 自分で想像してげんなりした。そんな事を考えるのは止そう。
 ふと――
 匂いが漂ってきた。
(……?)
 モニカは鼻を少しひくひくさせてその匂いを嗅いだ。
(甘い……?)
 まるで甘い蜜のようないい薫りであった。芳しい、とまではいかないが、モンスターが放つ匂いにしては珍しい。毒気は含んでいないようで、しばらく嗅いでも身体に変調などは起こらなかった。ただ少し妙なことに、気分が良くなるというか、緊張がほぐれるような気はした。あくまで気がしただけだが。
 モニカは注意を緩めず、この匂いの主の出現をじいっと待った。


 ジュル……ジュル……ジュル……


 ランプが照らす範囲内に、何かが揺らめいた。モニカの背より高いところ。
 モニカの身体に緊張が走る。
 見ると、それは一本の触手であった。子どもの腕ぐらいの太さはあるどす黒い肉色のロープの先端が、中空で何かを探しているように揺らめいている。
 モニカはにじり下がった。不意にその触手が攻撃に転じるのを最大警戒する。
(触手……)
 モニカは触手について考えた。触手は油断ならない。これを武器にするモンスターは、鞭のようにしならせて攻撃してくる。時にはまっすぐ突きかかってくるし、見た目通りの長さでない場合もある。
 厄介な敵かもしれない。逃げるのならば、急いで離れる必要があった。
 そんな風に対策を考えていると、触手に続いて、本体がランプの光の中にゆっくりと入ってきた。
 それを見たとき、
(こ、これはなに……!?)
 感情の発露が乏しいモニカでも、思わず、顔いっぱいに嫌悪を広げていた。
 それは――世にもおぞましい肉の塊であった。

 

 

 

 


  2

 


 モンスターといえども、普通はそれなりの見てくれを持つものだが、これは全く違った。
 坑道の幅、高さともに半分以上は占めているだろうか。モニカの何倍もあるか分からない、まるで小山のような体が、饅頭のようにぶよぶよと盛り上がっている。その表皮は斑紋のような赤黒いまだら模様で、無数の皺でたるんでいた。粘液でも分泌しているのか、黄ばんだ膜で全身テラテラと気色悪く濡れ、まるで肉自体が生きて動いているようでもあった。もっと濡れて水気があれば、考えたくもないが、まさしく臓物そのもの。汚物の山。
「やだ……」
 あまりの気色悪さに、にじり下がっていくモニカ。
 肉塊の特徴は、しかし、その姿よりも目を引くものがあった。触手である。やはり粘液にまみれ濡れた触手が体のあちこちから無数に伸び、気味悪く蠢いている。触手は、色も形状も千差万別であった。太い腸のような触手があると思えば、蔓のように細長いものもある。イボイボがびっしり生えた触手があると思えば、先ほどの肉色ロープ状もある。先端に口が開いてバクバクしている触手があると思えば、ベルトのように平べったい触手もある。その統一性のない混沌ぶりがまた、気持ち悪さに拍車をかけていた。
 モニカはこのおぞましい物体を見て、未だかつて味わったことのない激しい生理的嫌悪感に震え上がった。
(これが生き物……!? いや、魔物でもこんな……)
 吐き気をこらえる。肌が粟立って総毛立ち、背中に嫌な汗が流れた。これで匂いも腐っていたら、本当に吐いてしまっていたかもしれない。こんな甘い匂いを放つ主が、こんな想像を絶するモンスターだとは、思いも寄らないことであった。この鉱山内で初めてみるモンスターであったし、今まで見たこともない醜悪な化け物であった。
 しかし、これこそがある意味、モンスターと呼べる存在かもしれない。
 肉の塊は、


 ウジュル……ウジュル……


と、ナメクジのように地面を這い進んで来る。大きすぎて光の中に収まりきらず、後ろの方はまだ闇の中に残っている。
 モニカは肉塊と一定の距離を保ちながら下がっていたが、脳内では危険信号がけたたましく打ち鳴らされていた。この間合いはもう、単純にあの触手が伸びる範囲内である。もっと離れなければならない。しかしそれ以上に、もうこんなおぞましい物体とは一秒でも相対していたくはなかった。
 モニカはランプを真上に放り投げた。天井すれすれまで昇る光明に肉塊の意識が向く。その下では、ユラ――と、闇を吸い込むようにモニカの体が回転した――必殺の狙いを定めた円舞──瞬間、細い腕が豪速で打ち出された投槍のように一閃。いや二閃。いつの間にか空いた手にも揃っていた短剣が間髪入れず飛ぶ。一回で投げたように錯覚してしまうほどの疾風だった。
 八条の死の翼が白光を煌めかせ、闇と甘い匂いを切り裂いて肉塊に殺到した。
 肉塊が震えた。あっけなく全てがその体に突き刺さったのだ。
 だが、這いずる速度は少しも変わらなかった。
「!?」
 短剣はしばらく肉に挟まれるように突き立っていたが、そのうち内側から押し返され、ポロポロと落ちていった。そして形を成す力を失い、消えてゆく。
 傷――ついていない。刺さったのではなく……埋まった!?
 まったく効いてないようだった。
「うそ……!」
 落ちてきたランプをキャッチしながら、モニカは驚愕に目を瞠(みは)った。 得意の二連八刃投。投擲のタイミングに狂いはなく、正確なリズムを刻んで完 璧に投げた。身体が無意識までに覚えた、何千回と繰り返したモーションから 放つ攻撃は、充分な殺傷力を持つ必殺技なのである。
 いやそういう問題じゃない。私の攻撃が不十分というわけではなく、この肉 塊の表皮が厚いのか柔らかすぎるのか、刃物が通用しないのだ。これでは撃退 は不可能である。
 モニカの背筋に冷たいものが流れた。
(魔法――は駄目。のんきに詠唱してられない)
 その時、一本の触手がビュンッ!と唸った。
「!!」
 モニカはとっさにしゃがんだ。
 一瞬前に胴があったところを恐ろしい勢いの横薙ぎが奔(はし)る。
 見事なほどに空を切った触手は壁をしたたかに打った。


 ビシィッッッ!!


 聞くだけで痛くなるような音が立ち、打たれた部分が派手に砕けた。ぼろぼろと広範囲に土がこぼれる。避けられたのは奇跡に近かった。
(あんなのを喰らったら――)
 骨折。吐血。筋肉断裂。内臓破裂。様々な痛い単語が頭を飛び回る。
 敵う相手じゃない。判断力がそう急告していた。生死が賭かった戦いで、早すぎる決断ではなかった。
 逃げるしかない。逃げたほうがいい。
 もうこんなものに関わりたくない。
 幸い、肉塊はこの鈍重ぶりだった。これなら容易に逃げられる。
 モニカは恐怖で浮き立ちそうな体躯を叱りつけ、くるりと方向を転換し、少しでも早く遠く離れたい一心で脱兎のごとく一目散に駆けだした。
 だが、その逃走劇は無情にも、あっけなく短い幕切れを迎える。
 しばらくもいかないうちに行き止まりに突き当たってしまったのだ。
「そ、そんな……!」
 モニカは呆然として行き止まりの壁を見つめる。袋小路の一本道にいたのだ。
 あまりにもあっけない、最悪の展開だった。
 後戻りは出来ない。
 肉塊は、もうすぐそこまで迫ってきていた。
 壁を叩きながら、モニカは叫んだ。
「スレインー! アネットー! ヒューイー! 誰か助けてー!」
 せめて壁にではなく、来た方に叫べばいいものだが、モニカは後ろを振り返りたくなかった。
 やっぱり魔法を使おうか。今のうちに詠唱を始めれば――でも、魔法は得意じゃない。私の貧弱な魔法で渡り合えるのか――あんな――あんな――
 匂いが漂ってきた。戦慄で背筋が細かく砕けるような衝撃が走る。心臓の鼓動が耳元で鳴って、這いずる音が聞こえない。もう近くまで来てる。
 どうしよう。どうしよう。
 いつもの冷徹なほど論理的な思考回路が、今に限って働かなかった。いや、実は働いていた。怜悧なほどに働いて、もうすでに無慈悲な結果を弾き出していたのだ。
 勝てない。独力ではあまりにも選択肢がない。
 しばらく声を涸らして助けを求め続けていたが、あの甘い匂いを背後から濃密に感じ、モニカの声は途切れた。
「……あ……あ……」
 おそるおそる――振り返る。
 ランプの光に照らされて、のそりと肉塊が見下ろしていた。押し潰されるような重圧感。不気味に脈動する臓器のごとき肉まんじゅう。獲物を追いつめた歓喜に打ち震えているように、小刻みに揺れていた。
 そして、モニカの周りに群がる無数の触手。
 頭の上を揺らめいていた腸のような触手から、ねっとりと黄ばんだ粘液がねろー……と垂れ落ち、モニカの顔にかかる。これは甘い匂いではなく、ツンとすえたような醜悪な臭気だった。
 ゾゾゾ、とモニカの背に悪寒が走った。
「ひっ……ひゃっ……やああっ……! ヤアアアーッ!」
 背中の翼が潰れるのも構わず壁に張り付き、心の底から悲鳴を上げた。こんなの厭。人間もフェザリアンもなく、非力なただの十二歳の少女には、目の前の現実はあまりにもおぞましすぎた。闘志が萎えしぼむほどに。
 脅威に立ち向かう固い意志が剥がれ落ち、無防備になった柔らかい精神が表に晒される。
 モニカは恐怖に涙をこぼした。足腰が立たなくなり、ずりずりと壁をずり落ち、小さくうずくまった。その分触手が近づいてきて、さらに恐怖が増す。
「ひ……や……!」
 ガタガタと震え縮こまった哀れな少女に、何本もの触手が一斉に襲いかかっていった。
「いやあーーーッッッ!!!!」
 恐怖に震える儚い翼から、純白の羽根がはらはらと堕ちていった。

 

 

 

 

 

  3

 


「いやー!」
 モニカは這うようにして、肉塊の脇の隙間をすり抜けて逃げようとしたが、二、三歩も歩かないうちに足首を捕らえられ、その場に引き倒れてしまった。
「いたっ!」
 固い地面に体をしたたかに打ち付けるモニカ。拍子でランプと帽子がとんでしまった。だが、その衝撃が去る間もなく、彼女の腕よりも太い触手が何本も背中の上から襲いかかってきて、モニカの胴や腕に巻き付き、そのまま中空に持ち上げられた。
「いやっ、いやあっ!」
 モニカは身をよじって逃げようとした。だが、足がかりもない宙に浮いた状態で反動もつけられるわけがなく、吸い付くように巻き付いて離れない触手はびくともしなかった。
 抵抗も虚しく、完全に捕まってしまった。
 もう一方の足首を掴まれ、両脚をぐいっと広げられる。腕も伸ばされてがんじがらめにされる。大股を開いて万歳するような、恥ずかしい格好で吊されるモニカ。スカートがめくられ、黒いタイツで覆われた秘部が露わになった。
「ひゃっ、やっ、やああっ! 何するの!?」
 他の触手たちがまるで吸い寄せられるようにモニカの股間に伸びてきた。そして、モニカの秘奥の熱と匂いが嗅ぎ取れる間近まで迫ると、本当に嗅いでいるかのように、ヒクヒクと先端を蠢かせた。
 モニカは羞恥に顔を赤く染めた。「な……何してるの、やめて!」
 すると、触手たちに変化が起こり始めた。
「……!?」
 モニカの目の前を揺れていた触手たちもしばし動きを止め、小刻みに震えたかと思うと、


 ヌ"ロンッ!


と、その先端の包皮がめくれるようにして、中から綺麗な肉色をした、まるで人間の亀頭のようなものが出てきたのである。大小様々なエラ張ったカサ、太いのや広いののカリ首――見事に人間のそれを模していた。半数以上がそんな淫頭をまろび出しただろうか。
「……!?」
 さらにおぞましい物体と化した触手に、モニカは開いた口が塞がらなかった。性教育を受けているとはいえ実物を見たことがないモニカには、それが何かによく似ているような気はしたが、何なのかは思い出せなかった。不吉さを感じる不安だけが胸に渦巻く。
 どちらにしろ、これからこれで何かされる事は間違いないのである。
(どうにか……どうにかしないと……)
 その時、モニカはリング・ウェポンが無事なことに気付いた。手首は縛られてしまったが、そこから上はまだ動かせる。
 まだ反撃の力は残されている――。
 モニカは恐怖で乱れがちになる精神を必死に研ぎ澄ませると、手の中にいつもの短剣をイメージした。
 彼女の必殺の武器、八枚の死の羽根が手の中に具現化された。
(やったわ……! これを使って――)
 モニカの瞳の中にわずかな希望が灯される。
 が、それも束の間、淫頭を剥き出した触手たちが活動を再開し、タイツ越しに秘裂や会陰、アヌスなどに取り付き、その先端でぐりぐりと押しはじめたのである。
「ひやああッ!」
 股間から発生した異様な感触に、仰け反って悲鳴を上げるモニカ。
 その拍子に、手からバラバラと短剣がこぼれ落ちてしまった。
「あ、ああっ――はうんッ!」
 後悔する暇もなく、次々と股間から無視できない振動がモニカを襲う。
「い――いやっ! そんなところ弄くらないで……!」
 しかし、そんなモニカの懇願など考慮することなく、まるで独立した生き物のように蠢き、強弱をつけながら執拗にぐりぐりと押し続ける触手。オナニーすらしたことのない無垢な少女は、股間から生ずる奇妙な感覚に、ただただ体を震わせて耐えしのぶしかなかった。
 そのうち周りで手持ちぶさたように浮いていた余った触手たちも、昂奮してきたように震え、モニカのからだに近付くと、ぐりぐりと淫頭を押しつけたり、服の上から擦るように動いたりし、あちこちで少女のからだを弄くりはじめた。
「やっ……やめてぇ……」
 食べられる――生きたまま食われる――!
 モニカはそう思い、一層の恐怖に駆られた。
(だめ、焦っちゃ――もう一度……)
 モニカは震える手にもう一度短剣を生み出そうとする。
 その時、何本かの触手が伸びてきて、モニカの手の平に淫頭をぐりぐりと押しつけてきた。粘液にまみれた軟骨のような気味の悪い触感。
「ひいいっ!」
 手を引っ込めようとしても出来ない。手首を抑えられているのだ。指を動かして何とか退かそうとするが、それがかえって触手を撫でさする結果となり、触られた淫頭が気持ちよさそうにビクビクと震えたかと思うと、ブシュッ、ブシュッと黄色く濁った体液を手の平に吐き出した。
「いやあああっ!」
 でろりと黄ばんだ粘液にまみれる両手に悲鳴を上げるモニカ。それは蜜の匂いなどではなく、ツンとした鼻が曲がるような汚臭だった。性臭を知らないモニカは、ただただその気味の悪い臭いに嫌悪感を露わにした。これこそがこの肉塊に相応しいような匂い。
 しかし、それだけでは終わらなかった。からだのあちこちを弄くっていた触手たちも誘発されるように、次々と黄ばんだ濁液を噴き出しはじめたのだ。股間を嬲っていた触手たちも熱い液体を噴射し、服といわず顔といわず、全身がみるみるうちに穢れ濁った黄土色に塗りたくられる。
 まるで黄泥のシャワーであった。
 服や髪にベットリと黄色い粘液がつき、顔や股間にも容赦なく浴びせかけられるモニカ。
 必死に顔を背けながら、「やっ、いやあ! やめてえ!」と、熱くむせかえる汚濁の洗礼に悲鳴を上げる。
 甘い匂いがたちこめる中、ツンと独特の臭気で充満する空間。顔から垂れたものが口の中に入り、その苦さに思わず吐き出す。
「うええ……な、なにこれ……?」
 だが、そんな事を考えているゆとりはなかった。粘液を吐いて一層昂奮しだした触手たちが、今度は首まわりの隙間やスカートの中を潜って入り込んできたのである。
 ヌルヌルとした粘膜触手に直に肌を舐められ、そのおぞましさに震える。
「あひいい! や、やめて……気持ち悪いいい……からだを……這いずり回らないでぇ……!」
 お腹や背中の上をたっぷり汚辱に舐められ、モニカはあまりのショックに拒否反応を起こす。しかし、彼らはただモニカの肌を這いずっていたわけではなかった。上から入ったものは下に、下からのは上に出ると、少女の身体を覆う布切れを、背と腹両方の内側から引っ張りはじめたのである。
 モニカは蒼白にして叫んだ。
「やっ――いや、いやあやめてーーーッ!」
 モニカにぴったり合ったスカイグレイの可愛い衣装がありえないほどまでに伸張したかと思うと、


 ブチブチブチイッ!


と、激しい音を立ててボタンや縫い目が引き裂かれ、無惨な残片と化していった。むしり取られて空中に散らばり、あるいは触手に持っていかれ、元の形状など偲ぶべもなく四散していくモニカの服。
「きゃああ!」
 乱暴に衣服を引き裂かれた衝撃で揺さぶられ、モニカは悲鳴を上げた。もしあれが身体だったら――引きちぎられるのが服ではなく、身体だったら――
(そんなのいや……!)
 悪夢の想像に、力が抜ける。
 腰から上はすっかり裸になり、下半身もタイツとショーツ、靴とそして右足臑の赤いリボンを残すのみという、恥ずかしい格好になってしまったモニカ。
「う……う……う……」
 おぞましい生き物の前で、他人に見せたこともない生肌を晒したフェザリアンの混血少女。細いうなじ、うっすらと膨らんだ乳房、まだ毛の生えていない恥部――まだまだ成長途中の十二歳の少女の幼い肢体。背中からは小さな翼が力無くしおれている。
 みじめな屈辱感に、モニカは涙に暮れた。
 だが、触手は少女に悲しんでいる暇すら与えなかった。


 ヌチュッ!


「はあん!」
 幾つものぬめった触頭がいやらしい音を立てながら、休むことなく恥部を圧迫する。それとはまた別の触手が太いのと細いの二本、いや双つ同時だから四本、まだ膨らみかけの淡い胸に伸びた。太い方が乳房に、細い方が乳輪と乳首にそれぞれ巻き付き、薄い乳肉と可愛い桜色の乳首をキュッキュッと絞り上げられる。微乳はたちまちのうちに粘液にまみれて蹂躙され、汚辱された。
「いたあいっ! いや、やめてえ! なんでそんなトコ弄るのおっ!?」
と、胸を絞られる痛みにモニカは泣いた。
 下着の奥に隠された女の聖地は、恥じらうようにその入り口をぴたりとくっつけていたが、ゆとりのある股の隙間で大陰唇はこんもりと立派に成長し、もうまもなく肉体の門を開くという段階であった。
 そこへ今、生まれてからこのかた経験したこともない刺激が与えられはじめたのである。守護門は、主の意志を守って門扉を固く閉ざしていたが、その媚肉に心地よい振動を受け続け、徐々に崩される気配を見せていた。

 股間から広がる甘いさざなみと、胸が千切られるような痛みに震え、モニカはまたも身をよじって抜け出そうとするが、一ミリたりとも身体がずれることはなかった。あまりにも筋力が違いすぎた。
(それならリング・ウェポンを……)
 モニカはもう一度武器を具現させようとしたが、意識が千々に乱れ、集中できない。リング・ウェポンは反応する様子を見せなかった。
 小さな胸いっぱいに恐怖が広がってゆく。
「そんな……やだ……誰か……誰か助けて……やめ……や……め……やめてええぇ……」
 次第に触手の粘液がタイツに染みこんでゆき、ショーツまで濡れはじめる。ぐちょ……ぐちょ……と、卑猥な音がたちはじめる。
 それはまるでマッサージのようでもあった。股間の何点もの箇所から強弱混じり合った微振動を受け続けるうちに、段々とこわばった肉がほぐれてゆき、血が集まりはじめ、熱が籠もりはじめる。
 次第に股間からの振動が甘い痺れに変わっていった。
 モニカはいつしか、
「は……あ……あ……あ……」
と、うわ言を漏らすようになっていた。頬を紅潮させて必死に耐える。乳の痛みが皮肉にも正気を保つ救いとなっていた。
「も、もう……やめて……」
 どうして、胸や股間ばかり……?
 すると、それまで胸を絞っていた触手が離れ、細いものだけが残った。細い触手二本は、それぞれ担当した乳首の表面をくすぐるようになぞりはじめた。ぷっくりと膨れた薄桃色の乳首がピクピクと反応し、そのさまは可愛い小さな妖精が踊っているようであった。
「ひゃっ……」
 ソワソワ……と、それまでの痛みとはまったく違った、ゾクゾクするような痺れが胸に広がる。恥部の痺れと似たような感覚だったが、こちらはくすぐったい分、より耐え難いものがあった。
「くうう……」と、モニカは奥歯を噛みしめてその恥辱に耐えようとするが、股間と胸を同時に責められると、何とも言えない奇妙な感覚がからだの中で膨らんでいき、
「んう……んはあ……んん……」
と、耐えきれずに声を漏らしてしまうのだった。
(いや……なにこれ……?)
 ズキズキと痛む胸の中心で乳首が甘く切なくなっている。恥部からもたまらない疼きがからだ中に広がっている。モニカのからだは触手に嬲られるままに、得体の知れない感覚にどんどんと染まっていくようであった。
 モニカが戸惑いを浮かべているうちに、ジュプッ……と、ひときわ猥雑な音を立てて、一つの触手が陰部に埋まった。ついに秘裂の中にめり込んだのだ。
「ひゃあああっ!」
 下着が邪魔して秘孔までは届いていなかった。しかし、ひとたび割れ目を確認すると、その情報が伝播し、他の触手が何本もそこに寄ってくる。めり込んだ触手を中心にして、大小無数の触手がさらに淫裂を刺激しはじめた。
 これにはモニカもたまらなかった。
「んああああ! ああああッ!」と、湧き上がる望まない性感に嬌声に近い悲鳴を上げる。「だめぇ! そこだめぇ、だめなのおぉ! んああッ! そ、そこだけはやめてえぇ!」
 触手達はさらに奥を侵そうとする。だが、伸張性のあるタイツとショーツが邪魔し、処女膜代わりとなって小陰唇から先への到達を防いでいた。


 グッチョ、グッチョ、グッチョ、グッチョ――


 と、粘液をまき散らしながら下着越しの浅いピストン運動が始まっていた。さらに触手が増え、下着越しに肉唇をさんざんに突き押していく。濃い粘液にまみれてタイツがグショグショになり、黄色く粘った幾筋もの糸が、地面に向かって垂れていた。いくらタイツとショーツの二重の守りとはいえ、無数の触手で圧迫され、モニカはこれまで知らなかった未知の感覚が湧いてくるのを耐えるだけで必死だった。
「いやあっ……んはっ……んあっ……あはああっ……! ひああああっ!」
 ひときわ高い声が上がる。
「だめえぇ……そこはああぁ……! そ、そこグリグリしないでえぇ……!」
 触手の一つが、クリトリスのある部分を刺激してきたのだ。まだ愛らしく包皮につつまれた小さなお豆は、押し潰されたり擦られたりするたびに電流のような疼きを全身に発信する。
「んああ! んあああ! ひぐっ、だめ、だめぇ……!」モニカは涙を流しながら、股間から無尽蔵にこみ上げてくる喜悦を懸命に我慢しようとする。「なんでこんな事するのぉ……! そんなに刺激しないでえぇッ……!」
 乳首、恥骨、陰核、肉襞、陰唇、会陰、肛門。恥部の敏感なところばかりを執拗に責め嬲られ、いくらこれまで性的経験とは全く無縁だったモニカでも、急速にその幼いからだに性感を刻み込まれていくのだった。
 モニカは自分のからだに起こりはじめた変化に戸惑いの表情を浮かべた。
(なに……なにこれ……こんな……こんな気持ち悪いモンスターに嬲られているのに……)
「は……あ……う……あ……」
 モニカはいつしか、じっとりとした汗をかき、悲鳴の代わりにあえぎ声を漏らしていた。頭がぼんやりとして、どうしても胸や股間から生じる甘い刺激をからだが甘受してしまう。
(厭なはずなのに、どうして……?)
 疲れてもう、抵抗する意志が薄れてきているの――?
 やがて触手が、邪魔なタイツに業を煮やしはじめた。股の間でびちびちと跳ね、怒ったように揺れ動く。モニカの脚にも何度も当たり、鞭打たれるような痛みに歯を食いしばって耐えるモニカ。
 そんな淫頭触手の間を縫って、新たな触手が陰部についた。その先端がまるで口のように上下に開く。パックリと丸い穴が覗くと、その内側に沿って鋭い牙がびっしりと生えているのが見えた。
 それがタイツに食いついた。
「いいッ――!!」
 陰唇の肉まで牙が食い込んだのだ。全身を鋭く走る痛み。モニカは泣きながら身体を突っ張らせた。
 牙を剥き出した触手はいくぶんか力を緩めた。痛みもそれで引いたが、モニカにとってもっと恐ろしい事が起こる。十分に牙にタイツとショーツを引っかけた触手が、ぐいっと引っ張りはじめたのである。
「え……え……!?」
 触手の淫虐から純潔を守る布が破られる――モニカは甘い浅夢から醒め、恐怖に凍った。
「や……やめてえええ!」
 しかし、そんなモニカの哀願をあざ笑うかのように、タイツはどんどんと伸張していく。ショーツはそれよりも限界が近かった。タイツの内側でビリビリと破れていく音。
「あ……あ……あ……!」
 死刑執行の準備を見ているような感覚。
 そしてついに、タイツも――


 ビチィッ


 破ける音は汚液にまみれ水っぽかった。
「いやあーーーッ!!」


 ビチビチビチイィッ


 限界まで引っ張られたタイツがついに破け散る。股間部分だけが露わになった恥ずかしい破れ方に、モニカは顔を真っ赤に染めた。
 いったん、陰部を嬲っていた全部の触手が引いた。股間に残った切れ端が股間をずるずると伝い、やがて粘っこい糸を幾筋も作りながら真下にベチャリと落ちていった。
「あ……あ……ああ……!」
 股間に空気が直接触れるのを感じ、モニカは恐怖に喘いだ。
 首を回し、後ろを見た。小さな翼が力無く背中に乗っかっていた。白いお尻から膝にかけてタイツとショーツが無惨に破かれて、白い肌が露わになっている。赤いリボンと靴はまだ健在だったが、何のほどがあるだろう。でも、モニカは右足首に結んだ赤いリボンが無事なだけでも、ほんのわずかだが気持ちが救われた気がした。
 そして。
 無数の触手がうようよと、お尻の向こうで蠢いていた。全てが淫頭をこちらに、いや正確には秘裂に向けており、今にも突き進んできそうだった。
 それを見てモニカはハッと思い出した。あの触頭が何に似ているのかを。図解でしか見たことはないが、男性器の先端部分にそっくりだったのである。
 モニカは無数のペニスに囲まれていると言ってもよかった。
 その新しい認識に、モニカは恐怖のどん底に叩き落とされた。まさか、とは薄々思ったけど……そうすると、触手が吐き出す体液は、もしかして――
 この――この肉塊は私を食べるわけではなく……生殖をするために――!?
「――い――いやーーーッッ!! いやッ! いやああーーーーーッッッ!」
 モニカは思い切り泣き叫んで暴れた。性教育を受けている以上、生殖の仕組みや子作りの方法など、知識として覚えてしまっている。その知識が、瞬く間に彼女を地獄に投げ落とした。
「いやあ、無理よっ! やめてええーーーッ! こんなのとっ――いやっ、いやあっ許してええぇ、やめてえええぇぇーーーーーッッッ!!」
 じたばたと暴れるが、肉塊はモニカをギュッと掴んだまま、絶対に離さない。
「いや……いや……絶対にいやあ……!!」
 ただ、時鉱石を採りに来ただけなのに。皆を助けるためなのに。なんでこんな目に遭わなければならないの!?
 一緒に来た仲間達の事を思い出した。母親が死んでから孤独を強く感じて生きてきたフェザリアンの混血少女は、彼らに助けを求めて絶叫した。
「スレイン……アネット……ヒューイ……みんな助けてーーーーーッッッ!!」
 だが、その声は虚しく響くだけであった──
 彼女に破滅をもたらす肉凶器の群れが、すぐそこまで近付いてくる。膝のラインを通過し、太腿を抜け、股の間に勢揃いする。触手の熱気が秘唇に感じられた。あられもなく大股に開いた脚を何としても閉じたかったが、足首を掴んで開脚させている触手はびくともしなかった。
「ひっ……やっ……お願い……やめてええぇ……」
 もはや性器を守るものなど何もない。モニカは信じられないむせび泣いた。
 淫頭を持たない細い触手が何本か伸び、秘裂の花びらを左右に割った。さらにその中にまた何本かが伸び、添え棒を当てるようにして、何者にもまだ侵されていない聖域――うっすらと閉じる秘孔の入り口の肉を押し拡げた。
「ひいっ!」
 その感触に全身を震わせるモニカ。
 不条理な淫虐の審判が、いよいよ執行される。
 ぬろっ……と、淫頭を持った触手の一つが、群れの中から持ち上がった。一番太く雄大な触手であった。多量の粘液を滴らせながら、ゆっくりと近付いていく。


 くちっ……


と、拡げられた肉唇に淫頭が埋まり、頭部から下の肉茎が震えた。
「い、いや、いや、いやあああああぁぁぁ……!」
 モニカの歯が恐怖でガチガチと鳴る。感じる、中に入ってくる、入って来ようとしてる!
 悪魔の宣告が入り口の扉を押してゆく。
「ひいっ……ひいぃっ……」痛みが、じんわりと湧いてきた。「いた、痛い……痛いいいぃ……!」
 だが、極度の緊張でぎゅうっと締まった膣口に、太すぎる触手の侵入は難儀を窮めた。
 再び業を煮やし、肉塊は足首を縛る触手に力を入れ、脚をほとんど水平になるまで開脚する。モニカの身体が柔らかかったのが幸いしたが、股関節を痛めてもおかしくない勢いであった。また、さらに多くの細い触手が肉唇を取り囲み、全方位から先行して潜れるところまで潜り、入り口を拡張した。股の肉が突っ張るほどに伸び、サーモンピンクの膣壁がまじまじと観察できるぐらい拡げられた肉孔。モニカの秘所の全てが、何ら覆うものなく、おぞましい生き物の前にさらけ出された。
「いやああっ……! こんな……こんな……ひ、拡げないで……!」あまりの恥ずかしさに屈辱の涙を流すモニカ。
 淫頭は今度こそ、と、再び秘肉を割って埋没しはじめた。


 ズリュッ……ズリュッ……


 ついに、モニカの中へ触手が侵入していった。
 異物が、異形の生物の性器が自分の肉体を犯していくおぞましい感覚。
「やだ、やだ、やだあッ! 痛い、痛い、痛いいぃ……!」モニカは苦悶に泣き喚いた。
 しかし、そんなモニカの様子など気にもとめることなく、淫頭はブルッとひとつ震えると、先走り汁を噴き出した。滑りをよくするためだろう。膣内にねばねばした濁液がまき散らされる。
「ひっ!!」腰をわななかせるモニカ。「今なにを――何をしたのッ!?」


 しかし、そのおぞましい感触を再確認する暇なく、肉茎に力が籠められ、一気に奥まで刺し貫かれた。


 ズリュウウウッ! ズンッ!


「――!!!!」目をいっぱいまで見開くモニカ。「――あが……あがが……!」
 お腹を突き破られるような途方もない衝撃。勢いで膣奥に触頭が叩きつけられたのである。
 痛みはその後から来た。
「――いたいいたいいたいいたいいたい~~~~~ッッッ!!!!」
 気が遠くなりそうなほどの激痛。張り裂けそうだった。
「う……ぐ……いたい……いたいよ……いたいいぃ……!!」
 無惨に処女を散らされ、膣奥まで太い触手で貫通されたモニカ。ギチギチと音が鳴るのではないかと思えるぐらい、限界まで拡がった秘孔。鮮血が触手を伝い、ポタポタと地面に落ちた。
 だが、それで終わりではなかった。
 きついその狭まりの中を、触手がゆっくりと動きはじめたのだ。
 全身を砕かんばりの激痛に、モニカは絶叫した。
「いたいーーーーーッッッ!! 痛いッ、痛いの、う、うッ、動かないでえーーーーーッッッ!!」
 だが、触手は無慈悲にも動き続ける。


 ズッ……ズッ……


「うあっ、うがっ、うぎいぃぃ!」
 想像を絶する痛みに、モニカは歯が折れんばかりに食いしばる。お腹の中身をひきずり出されそうだった。触手が引き抜かれるたびに鮮血が飛び散る。秘裂も触手も膣内も、どれも真っ赤に染まった。
「うあっ……うぐっ! ううう……ううッ!」
 貫かれ揺さぶられるにつれ、モニカの瞳から、身体から、段々と力が失われていく。もうだめ。限界だった。心身が弛緩することにより痛みが薄れていくのが、むしろ有り難かった。
「うあっ……うあっ……うああ……」
 何十回目の挿入だっただろうか。
 奥壁にまで達した淫頭がブルブルと震え、その場でせっぱ詰まったように小刻みに抽送しはじめた。
 モニカはそれに気付いた。本能で理解した。
「えっ……えっ……や……!」顔がみるみるうちに蒼ざめてゆく。「やだ……やだ……膣内(なか)で出さないで……精液出さないで……やめて……やめ……や、や……やめてええぇぇぇぇッッッッッ!!!!!!!!」
 膣奥の肉襞で十分に刺激された触頭が膨れあがった。


「やあああーーーーーッッッ!!!! 赤ちゃん出来ちゃうーーーーーッッッ!!!!」


 ドブブブブブブブブブブッッッッッ!!!!!!


 もの凄い量の黄土色のザーメンが、バケモノの精液が、おぞましい生き物の精子が、モニカの汚れを知らなかった胎内に射精されはじめた。
 茫洋としつつあった意識の中で、モニカは体奥にはっきりと衝撃を感じた。
「ア――ア――アアアアアーーーーーーーーーーッッッッッ!!!???」
(やだっ……やだっ……やだやだやだああーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!
 バケモノの……バケモノの子どもが出来ちゃうううッッッ!!!!!!)


 ドプッドプッドププッドプププププッッッッッ!!!!!!


 濃厚なザーメンが膣内にどろどろと渦巻き、鮮血と混じり合っていく。ほとんど隙間のない膣内で異常なほどの圧力がかかり、瞬時にモニカの腹部が張り裂けんばかりに膨張した。
「ウア"ア"ア"ッッッ!!!! おなかッ!! おなか裂けちゃう"う"う"ッッッ!!!!」
 膣も悲鳴を上げていた。膨張した膣内からの圧力により、ザーメンが子宮口から噴射されるように子宮内に打ち込まれていく。


 ブビュビュビュビュビュビューーーーーッッッッッ!!!!!!


 まるで噴火の如き壮絶な光景。
 初めて精子を迎えたモニカの子宮が、その暴虐なほどの勢いと熱さにびっくりしたように震え、まだ身体の準備が出来てないとすすり泣くように戦慄(わなな)いた。だが、そんな幼さなど構うことなく、猛り狂った孕まし汁が後から後から流れ込み、悲痛に悶えるモニカの子宮を陵辱し、溶岩流の下に埋めてゆく。赤く染まったいびつな精子の大群は、まるで血眼になって獲物を捜す餓狼さながらであった。恐怖の狩猟者たちが孕ませるべき相手を求め、子宮中をどろどろと溢れかえった。
(で……出てる……バケモノの精子が……私のお腹の奥に……たっぷりと射精されてるうううう……!!!!)
 地獄の宣告。
 モニカの思考はあまりのショックに停止した。
 ただ、お腹の奥に灼かれるほど熱い迸りを感じるだけ――
「あ……あ……ああ……」
 バケモノの射精をまだ受け続けるモニカ。いったいどれだけ出せば気が済むのか。モニカの小さい子宮と膣内では収まりきれないほどの、大樽をひっくり返したような夥しいザーメン。結合部からもゴポゴポとにじみ出し、破瓜の血を洗い流すように後から後から溢れてくる。膣奥でどぷどぷとおぞましい体液を吐き出し続ける淫頭は、いくら射精しても満足することを知らず、あっという間に子宮は黄色く濁った粘液で埋め尽くされる。ほとんどゲル状の濃厚な白濁液がマグマのようにでろでろと子宮内で渦巻き、なおも増してゆく。
 一度は止まった膨張が、再び始まった。今度はじんわりと膨らんでいくモニカのお腹。
(うああ……熱い……熱いいぃ……!)
 女性器が一個の熱源と化し、頭のてっぺんまでその淫熱を行き渡らせ、モニカのからだを茹だらせた。肉がふやけて緊張が失われはじめ、傷つけられた膣の痛みが痒いような疼痛に変わってゆくのが唯一の救いであった。


 ドプッドプッドプッドプッ――


 バケモノの精液の噴出量は、ダメ押しどころではなかった。特濃のザーメンをこれだけ注ぎ込まれて、孕まない方がおかしい。ザーメンの奔流だけで卵管に辿り着いた精子たちが、その管中で卵子を見つけ出す。バケモノの精子は人間のそれより大きく、一匹で卵子をまるまる覆ってしまうぐらいだった。獰猛な狂犬のように一斉に卵子へ襲いかかるが、たちまちのうちに凄惨な奪い合いが始まった。卵子は精子の雲霞に埋まってどこにも逃げ出せず、震えながら運命の瞬間を待つしかなかった。
 それは生命の結合という神聖な営みとは思えないほどの陵辱劇であった。
 やがて、狂争から抜きん出た精子がライバルの攻撃にも負けず、尻尾で卵子をしっかりとくるんだ。そして唯一開けた箇所にぐっと尖頭を突き刺す。卵核を守る被膜が破けてゆく――
 卵子が悲痛に揺れ動く。これは求めるものとはあまりにも違う。だが、彼女に選択する余地はなかった。
 悪魔の運命が始まった。
 あまりにも酸鼻を極める強制結合――カオスなる惨状――おぞましいバケモノの遺伝子がフェザリアンの少女の遺伝子を搦め取り、陵辱し、異種族の生命誕生を果たしてゆく――
 そのさまは、科学至上の有翼人たちであっても神という存在に呪詛を投げつけるであろう、この世で最も淫靡な光景であった。
 モニカには、胎内でそんな生命の悲劇が起こった確かな実証があったわけではないが、理性も論理的思考も超えて原始の本能がそれを感じ、告げている気がした。
 頭を力なく垂れると、股の間からどろどろと滝のように溢れて流れ落ちる白濁液が逆さまに見えた。まだ出しているのである。それはもはや射精というより、膣内を洗浄するためか、それとも精液を溜める容器にしているかのようでもあった。
(ああ……こんなにいっぱい……熱くて濃い精子が……私の子宮に……)
 その光景を、モニカは虚ろな目でながめ続けた。

 

 


 長い長い時間が過ぎ、やがてようやく射精を終えて、力の無くなった触手が引き抜かれた。はじめ入った時はあんなに苦しんだのが嘘のように、ぬぽっと軽い音を立てて出てきた。満足そうに胴震いする触手。


 ブピュッブピュッブピュピュピュピューーーーー……


 栓の外れた肉孔から、今度はモニカが射精するかのように、膣内に残留する白濁液が噴出してきた。
「ア……ア……ア……♥」
 それはせめてもの慰めというように、排泄感に似た甘美な感覚をモニカに与えた。抵抗の気力が尽きていたモニカの精神に、安らぎのような快感が広がってゆき、憔悴しきった顔に気持ちよさそうな笑みが浮かぶ――
 あらかた出尽くし、ほかほかと湯気を立てる肉唇からひとすじの糸が垂れるのみにまでに落ち着くと、再び触手たちが蠢きはじめた。股は大開きにしたままモニカのからだを垂直にし、秘裂に細い触手が群がる。
(今度は……なに……?)
 膣口がまた拡げられる。柔らかくほぐれた膣肉を掻き分けながら中に細い触手たちが入ってゆき、膣粘膜にぴたりと取り付いたかと思うと、中にまるまる空洞ができるほど押し拡げる。そして、子宮口に集まった先端が入り口をこじあけた。
 中に溜まっていた夥しいザーメンがどろどろと溢れ出てきた。
「うあ……う……あ……あ……♥」


 ドロ……ドロ……ドロドロ……


 白い塊が粘つきながらも肉孔を垂れ落ちてゆき、子宮に残っていたザーメンが外に排出されていく。
(も……もうだめ……)
 モニカは今度こそフッと意識が遠のき、完全な暗黒の中へと堕ちていった。
 甘い匂いにすがりつきながら――──

 

 

 

 

 

 

  4




 ………………
 …………
 ……


 モニカが意識を醒ましたのは、下半身に違和感を感じたからであった。


 「…………ぅ…………うぅ…………?」


 急速に覚醒する。うっすらと目を開けた。
 眠って、いた……?
 いや。
 段々とはっきり覚醒してくる。
 気を失っていたのだ。
 瞬時に、最後の光景が脳裏にまざまざと描かれた。


 犯された。バケモノに。
 出された。バケモノの子種を。
 たっぷりと、胎内に。


 暗澹とした気分で目を開けると、真っ暗闇だった。ランプの光源はどこにも見当たらない。何も見えなかった。
 ただ、目の前に何か巨大なものが息づいており、それがあの肉塊であろうことは容易に想像できた。お腹の中で熱く疼く痛みは、先の惨劇の名残りのようで、今は異物が暴れている様子はなかった。
 しかしもう、どうでもいい感じだった。あの醜悪な姿を見ないで済むのが何よりだった。
 甘い匂いと、すえるような淫臭が混じり合って漂っていた。
 ここが先ほどの袋小路でないことは明らかだった。何処に連れて来られたんだろうか。もう中空に吊り上げられてはいないようで、何か地面ではないものの上に乗っかってもたれかかっているようだった。背中と足の下に生温かい感触があるのだ。坑道の土壁ならもっと冷たいはずだった。手で触ってみるとブヨブヨと柔らかく、じっとりと湿って温かかった。そしてこの場所自体、裸でも寒さを感じない気温が保たれていた。
 裸。
 そう、モニカは全裸だった。何一つ身につけていなかった──リング・ウェポンも。赤いリボンも。
 だが、一つだけ付いているものがあった。
 首に何かが巻かれた感触……手で触れてみると、それは首輪だった。柔らかい。まるで、壁や床と同じ材質――どんなに力を入れても取れなかった。
 首輪からは触手のようなロープが伸びており、お尻の裏辺りの床に繋がっていた。首輪の部分も床の部分も、どう探っても繋ぎ目らしき手触りは見つからなかった。床から直接伸び、長さはそれなりにある。ただ、どこを引っ張っても叩いても弾力豊かにはじき返されるだけだった。
「ああ…………」
と、モニカは半ば諦めたため息をついた。
(このバケモノは、私をここに繋ぎとめて……)
 その先は考えたくもなかった。
(私、どうなるんだろう…………)
 放心状態でそう考える。唯一の望みは、スレイン達が助けに来てくれることだった。
 お腹にそっと手を添える。意識すると、ズキリと痛んだ。初潮があったのは一年ほど前。妊娠してもおかしくなかった。
 もし、助けられても、もう……。
 モニカは震える肩を掻き抱き、我が身に降りかかった陰惨な運命に泣いた。
 すると、モニカが意識を取り戻したのに気付いたのか、バケモノが肉をくゆらす音がし、触手がまた陰部に集まる気配があった。秘裂に熱い塊が幾つも当てられる感触がする。
「まだやるの……? もうやめて……うっ……!」
 一本、はっきりと分かるものがずりずりと入ってきた。さっきよりは一回り小さい。また痛みが走ると思ったが、鈍い痛痒感が湧き上がるだけで、耐えきれず声を発するほどのものではなかった。
 それでももう厭と、モニカは闇の中その触手を探り当て引き抜こうとした。触手の群れの中にあったが、他の触手は邪魔をしなかった。少し奇妙に思いながらも、粘液にぬめったその触手を引っ張る。ずるっと少し抜けた。しかし、触手はまたその分膣内に潜る。その摩擦で、痛みよりも甘い疼きがゾクゾクと背筋を走った。
「うんっ……!」
 また引く。また潜る。「くぅ……ん……!」
 遊ばれていると思った。
 モニカは立ち上がろうとした。足腰に力が入らない。後ろの壁を支えにしながら立った。フラフラしたが、歩けないことはなかった。
 だが、何歩も歩かないうちに触手に背中を押された。それだけで倒れた。ベチャッと音を立てて、湿った地面に突っ伏す。甘い匂い。
 それから、肉塊はうつ伏せになったモニカの手足を押さえつけ動けなくし、腰を上げさせ股を強引に広げると、再び淫頭付きの触手を秘裂にあてがい、埋めていった。「うっ……!」しみるような痛み。
 今度は荒々しくはなく、ゆっくりとした抽送がはじまった。
「いや……いや……いやあ……」
 モニカは泣きじゃくったが、何の抵抗もできず、ただそれを受け入れるしかなかった。
 痛みと悲しみ、そしてわずかの肉の疼きがないまぜになった時間が過ぎ──また膣奥で熱く爆ぜる感触。
「ん……!」
 腰がびくびくと反応する。また――子宮にたくさん注ぎ込まれてる……。バケモノの精液は無視できないほど熱く、夥しい量だった。
 一回出しただけでは全然収まらないというように、それからも一本の触手が何回も続けて精を吐き、やっとそれが抜かれたかと思うと、次の触手が休む間もなくずにゅずにゅと埋まり、肉襞を擦り上げて膣内を往来し、また気持ちよさそうに白濁液を吐き出す。
 比較的静かに始まった姦辱は、だが、なかなか終わる気配を見せなかった。肉塊は執拗に膣出しを繰り返した。ただ、最初の時のような、無理矢理太いものがえぐりこまれることはなく、モニカの小さな秘裂でも抵抗なく挿れられるサイズのものだけだった。おかげでモニカは、痛みより快感の方が段々と増してゆき、膣内も子宮も白濁液で満杯になるころには、すっかり膣肉も柔らかくほぐれ、性器を擦り上げ揺すぶられる快感にからだを火照らせてわななき、息も絶え絶えという状態になってしまった。
(私……こんなに適応力あったんだ……)
 モニカはなすがままにされながら、自嘲するように笑った。
 力の入らなくなった四肢を支えられながら、精液と愛液でなめらかになった肉孔を触手でぐちゃぐちゃと掻き回され、くぐもった嬌声を上げるモニカ。
「あう……んう……ん、んん……! んは……んあ……んああ……!」
 しかし、バケモノのザーメンが流し込まれる以上に、モニカの体から何かが流れ出していくようで、その目も声も虚ろだった。
 数え切れないほど膣内射精される中、またゆっくりと、モニカは気を失っていった。

 


 次に気付くと、肉塊の気配は無かった。モニカは安堵に胸を撫で下ろした。
 モニカは汚臭を放つ水たまりに浸かっていた。肉塊の射精だけでできたザーメンプール。どれぐらい吐き出されたんだろうか。股間に手を伸ばして確かめてみると、恥部は粘液でべちゃべちゃの状態であった。少しためらったが、中まで指を入れてみる。
「ん……」
 ヌロォ……と、指はおろか手が見えなくなるぐらいにヌトヌトになった。
 こんなになるまで……
 笑いたくなるぐらいだった。
 真っ暗闇の中、モニカは何とか立ち上がってこの場所を探ろうとした。バケモノのザーメンにまみれた柔らかい床をぐちょぐちょと踏みしめながら、縛めが届く範囲いっぱい歩いてみた。
 どうやら、ここは肉塊の巣穴のようだった。壁と床は厚いクッションのようになっていた。内壁となって巣の中を暖かく保つ効果があるようだ。なんとなく、脂肪膜が連想された。モニカが素裸でも体調を崩さないのは、これのおかげらしい。嬉しくも何ともなかったが。
 ここは巣穴でも一番奥まった場所らしく、縛められ届かない向こうに穴は続いていた。おそらく、そちらの方に出入口があるのだろう。だが、縛めの長さが倍あっても出られない気がした。
 首輪もロープも柔肉のようなのに爪一つ立てられないほど固く、またどんなに引っ張ってもびくともせず、どう足掻いても抜け出せなかった。
 モニカはその場にへたり込み、呆然とした。
(どうすればいいの……)
 暗闇の中で独りぼっち。
 次々と衝撃的な出来事が起こり、心が麻痺していて投げやりな気持ちになりつつあるが、こうして闇の中に独りでいると、今置かれた状況がにわかには信じられなかった。
 しかし、首に填められた縛めの感触も、全身に残る触手の感触も、甘い匂いも、すえた臭いも、そして……あれだけ膣内に出された精液の感覚も――幻でも何でもなく、現実のものであった。
(もう……ここから出られないの……?
 外にも出られず……ここで……一生を終える…………バケモノの慰みものになって…………?)
 改めて考えてみると、そのあまりに無惨な自分の運命に、絶望の慄(おそ)れと怯えがじわじわと湧き上がり、モニカの精神を蝕んでいった。
 もう一度首輪を引っ張ってみる。
 しばらく格闘が続いた。
 だが、どんなに力を籠めてもだめだった。
 モニカは脱力し、すとん、と腕を落とした。
 目が虚ろになってゆく。


 私……ここで終わるんだ……独りぼっちで死んでいくんだ……


 小さい頃家を出て行った父のおぼろげな姿が脳裏に浮かぶ。亡くなった母。両祖父。ポーニア村の人々。ミシェール。フェザリアンたち。そして、ここに一緒に来た仲間達の姿。
 助けに来てくれるだろうか。時空融合計画にはもう時間がないのだ。私のことは後回しにするかもしれない。
 そして、スレイン達がここを離れてしまえば、この国には最早、一つの街、一つの村すらなく──人っ子一人もいなくなってしまうのだ。


 他にだれもない。私しか。この真っ暗な地の底で。


 独りぼっち。

 

 


 私だけ、独りぼっちで──

 

 


 その想像は、身も心も凍りつくほど恐ろしかった。
 本当の独りぼっち。
 真っ暗闇の中、モニカは震えながら両肩を掻き抱いた。
(そんな……いや……いや……いやよ……)
 ダンジョンの何処とも知れない奥底で、まったく助けを期待できずに、このまま誰からも遠く離れ、本当に独りぼっちに……
 そして、あのバケモノに死ぬまで辱められる……
 これが、私の運命――?
 瞳孔が開いた目から、ポロポロと大粒の涙があふれた。
「いや……いやよ……こんなのいや……誰か助けて……助けて……」
 まるで幼児に退行したかのように、モニカは体を縮こませて丸まり、静かにいつまでも泣いていた。

 


 救いの福音──ではなかった。
 あの這いずる音だった。
「ひっ!」
 悲しみと絶望にくれた心に、気丈な気持ちはもうなかった。
 心が折れそうで、それを支えるのが精一杯だった。ガクガクと恐怖に身を震わせる。
 また……また……
 モニカは捨てられた子猫のように奥に逃げ、端っこに縮こまった。
「いや……いや……来ないで……来ないで……」
 脚を固く閉じ、汚液にまみれた秘部を隠す。
 かろうじて心の片隅にかすかに残っていた理性と勇気が、なんでこんなに恐怖を顕わにするのか、となじってきた。こんなみっともなく怯えて震えるぐらいなら、他の手段を考えろと。だが、今はもう、逃げられない事も何ら抵抗する手段もない事も充分にわかっている。唯一残ってるとすれば、自らの命を絶つこと――
 だが、モニカはまだ十二歳の少女だった。
 死にたくなかった。こんなところで、こんな惨めに死にたくなかった。
「いやあ……いやよ……」
 心が……折れそう……折れちゃいそう……
 祈る。時間よ止まって。もう、私に酷い事しないで。
 しかし──肉が這いずる音が間近まで来た。あの甘い匂い。触手が蠢く音。
「ひっ……ひいぃ……!」
 モニカは頭を上げなかった。
 仲間達と一緒に戦っていた時の勇姿など微塵もなく、モニカは腕で頭とお腹をかばいながら、縮こまって震えて泣いた。
 無力。
 魔法はまだ使えるはずだった。しかし勝てる見込みなどないのだ。そんな事をすれば、代えって怒らせるだけだろう。モニカの生殺与奪は、もはやこの肉塊が全て握っている。あの地獄の鞭のような触手が淫虐の代わりに殺意を籠めてモニカの体に振り落とされれば、それで終わりなのである。
 モニカはガタガタと震えた。
(死にたくない……死にたくないわ……!)
 だから、モニカはこの肉塊に、言いようのない恐怖を感じずにはいられなかったのである。
 自分はもっと感情が少ないと思っていた。もう幾つもの激闘を経験し、この鉱山でも何回も戦闘を潜り抜けた。その中で死ぬ覚悟はできたと思っていた。敵に倒されてもし死ぬことがあっても、それも自分の選んだ道だと。
 違った。全然違った。怖い。死にたくない。
 死にたくない。
 こんなところで──独りで──死にたくない――!
 肉塊の触手がのびてきた。
「ひっ……」
 腕に巻き付かれ、引っ張られる。体が開かれていく。逆らうことなどできないほどの力。
(いや……いや……)
 モニカは顔をくしゃくしゃにして弱々しく首を振ったが、引っ張られるままによろよろと歩き出るしかなかった。
 肉塊の前まで引き出され、前も後ろも、左も右も、頭の上も脚の間も、無数の触手で囲まれた。震え上がる。どこにも逃げられない。
 甘い匂い──
「あ……あ……あ……」
 肉塊の醜悪な姿を見上げながら、へなへなとくずおれる。足腰に力が入らなかった。股の下から生暖かい液体が広がっていく。
 こわい。こんなところでしにたくない。こわい。こんなところでしにたくない。こわい。こんなところでしにたくない……
 そんな少女のからだに、日没を迎えた花びらが閉じていくように、触手達が包み込んでゆき、その姿が触手の群れの中に消えた……


 やがて淫猥な音と哀切なあえぎ声が聞こえる。


 ………………
 …………
 ……
 

 

 

 

 

 

  5


 

 モニカがこの肉の巣に置かれてから、何日かが経とうとしていた。この真っ暗闇の中では何も時を計るものがないため、モニカは次第に時間の感覚を忘れていったが、この間は少女にとって地獄の処罰に等しいものであった。肉塊はその間ほとんど傍を離れることなく、このフェザリアンの混血少女を犯し続けたのである。
 モニカの肉孔はすっかりこなれた。バケモノの触手とザーメンにいやというほどなじまされ、すりこまれた。子宮内に太い触手をねじ込まれても痛みをあまり感じなくなるまでになった。口腔も同様だった。喉の奥まで突き込まれ無遠慮に射精され、苦く臭いザーメンにむせいで吐き垂れ流す。
 肉塊は直接子宮の中で射精するのがお好みらしかった。これだけ膣内射精どころか子宮内射精をされていては、確実に孕むわね……、とモニカはぼんやりと思った。妊娠の恐怖はさんざんに味わい、麻痺してしまった。子宮のどこかで自分のように、バケモノの精子にさんざん陵辱された卵子が着床しているような気がした。それともザーメンと一緒に流れ出てくれただろうか。
 食事は――バケモノの精液だった。初めは頑なに拒否したが、無理矢理口をこじ開けられて流し込まれた。甘かった。あの匂いの味。どうやら普通のザーメンとは違うようだった。どう抵抗しても結局は身体を縛り上げられて無理に流し込まれるので、やがて諦め、ザーメンミルクを出す触手が差し出されれば、まるで母乳に吸い付くように大人しく飲むことにした。苦い方を吐くまで流し込まれるよりは遙かにマシだった。
(いつもこっちを飲ませればいいのに)
 それ以外に食料は無かったが、衰弱することはなかった。かえって気分が安らぐ感じすらした。この甘い液体を飲むと、ぼうっとしてきて、お腹の中に感じる液体の温かさが心地よいのだ。


 モニカは一回だけ、わざと激しく抵抗して、バケモノを怒らせて打たれ殺されようとした。消極的な自殺。だが、肉塊は力加減を心得ていて、意識を失わないほどに、だが滅多打ちに打ちのめした。そして、それから数日はモニカを手酷く扱った。死に至らしめることはなかったが、モニカはトラウマになるほどの痛みと出血と恐怖に泣きじゃくり、しばらくは触手を見ると身がすくみ、厭な汗と涙が出た。それ以降、逆らわなくなった。
 残された手段は本当の自殺だったが、方法はあまりにも少なかった。
(舌を噛むぐらいね――)
 そう思うのだが、実行に移せなかった。殺されようとはしたくせに、自ら死ぬことが出来なかった。自殺してもおかしくないぐらい身も心も絶望に包まれているはずなのに――
 なぜ、こんなにまで酷い目にあって、まだ死にたいと思わないんだろう。怖い。確かに怖かった。あれだけ打擲されて……痛くて……死にそうだった。もういや……死にそうな目に遭うのはもういや……。
 だけど、それとこれとは違うような気がした。ちょっと気持ちを押すだけで死ねる気がする。だけど死ねない。
 なんでだろう。
 死ぬ気も起こらないほどの自棄状態になってしまったんだろうか。
(なんで私、死なないんだろう……)
 そう思いながら、食事の時間になると、摩滅した意識で差し出された触手に吸い付き、ぼんやりと甘いザーメンミルクを飲む。食事と休眠の時間だけが安らぎを与えてくれる。
 モニカは気付いていなかったが、彼女は何の躊躇もなく、喉を鳴らして甘い液体を嚥下して、お腹の中で温かく感じるのを無意識に楽しんでいた。

 


 さらに何日か経った。
 モニカはあまり動かなくなった。その方が楽だった。
 触手がのびてきて求められれば、足を開き、口を開く。
 もっとも、それしかやることはなかったのだが。
 肉塊はいまだモニカにつかず離れずで、モニカが気をやるか、限界を迎えてピクリとも動けなくなると、何処かへ消えた。


 モニカの反応は日に日に乏しくなっていった。
 からだの中も外もザーメンまみれにされ、ザーメン汁の海に漬かり、むせ返るような精臭に包まれても、ちょっとも動かず、表情が変わらなくなった。


(あー……)
 モニカはホッとした。
 このままなら、何もしなくても死ねそう。
 これなら、楽でいい……
 このまま……

 


 と──


 匂いがした。


 匂いなどもうとっくに気にしなくなっていたのだが、あの甘い匂いが鼻に漂ってきた。
(……?)
 思わず意識が深い絶望の泥沼から引き起こされるほど、濃密かつ凝縮された鮮烈な匂いだった。
 あの匂いで、あの匂いではなかった。
(なに……この濃い匂いは……?)
 チクリと、首筋に何かが刺さった。
「……!?」
 一瞬、何が起こったのか分らなかった。
 首を回して見ると、耳のすぐそばに一本の細い管のような触手が揺らめいており、その先端には淫頭ではなく、まるで注射針のような鋭く細長い針がついていた。どうやらこれで刺されたらしい。そして、この強烈に薫る匂いの正体は、この触手だった。あの注射針の先だ……あそこから薫ってきているのだ。
 こんな細い一本の触手から……?


 ドクン――
「え……?」
 ドクン――
「あ……? あああ……!?」
 ドクンッ!
「あ、あ――あああああ~~~ッ!?」


 モニカのからだの中で、何かが爆ぜた。身体が一気に過熱する。
 世界が変わってゆく。
「あ……あ……あ……」
 心臓の鼓動が。
 血の脈動が。
 筋肉の収縮が。
 骨のきしみが。
 内臓のうねりが。
 神経の細部までが。
 一つ何かが動くたびに、ドクンドクンと熱を発散し、甘美な官能に変わった。
「あ……あ……あ……」
 身体を動かすだけで、それだけでイッてしまうだろう。動かなくとも、からだの内奥からとめどもない性感が源泉のように湧き出てきた。それを抑えてイクのを耐えるだけで精一杯であった。
「あ……あ……あ……」
 だが、モニカが動かなくとも、肉塊が触手を動かす。
 集まってきた触手が、ヌチュリと、秘孔に触頭を埋めてゆく。
 入り口を擦られただけで、凄まじい快感がモニカのからだ中を突き抜けた。
「ふああああああッッッッッ!!!!」
 脳の裏側で起こる激しいスパーク。ショート寸前までホワイトアウトする。
「――あ、あ、あ……」
 脳天を突き刺すような快感に歪むモニカの顔。「――あたまが、あたまがわれるううぅ……!!」
 あたまが、からだがおかしくなりそうだった。どうにかなってしまいそう!
「ダメェ、ダメ、ダメエエェェェッッッ!!!!」
 ジュップ、ジュップとモニカの肉壺を掻き回すような荒々しいピストン運動がはじまった。ザーメンの海が荒波を立ててモニカのからだが揺さぶられる。
 それだけで白い国に飛ばされる。だが、次から次へと肉欲が湧き出し、それらがモニカの意識をもとのところへ連れ戻すのだった。
「イ"ア"ッ、イ"ア"ッ、イ"ア"ア"ア"ア"ッッッ!!!!!!」
 モニカはザーメンの飛沫をはね散らかしながら、白いからだをくの字つの字にくねらせ、熱狂死するような肉悦に喘ぎ悶えた。
「なにこれなにこれッなにこれへえええェェェッッッ!!!???」
 頭を、胸を、お腹をかきむしる。しかし、そんな事をしても少しも収まらない。全身の肌が桃一色に染まり、甘く薫る汗がとめどもなく吹き上がる。
「死ぬっ死ぬっだめへえッだめへえッ!! 死んじゃうしんじゃうしんじゃうううううッッッ!!!!!!」
 モニカの幼い媚肉を嬲っていた触手が限界を迎え、喜々としたように膣奥でザーメンを吐き出した。


 ドビュビュビュリュリュリュッッッ!!!!
 ビュビュルルルルルルルッッッッッ!!!!


「あああああッッッ!!?? ン"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッッッ!!!!!
 ア"ア"ア"ア"ア"ーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!」
 ひぐううううッッッ!!!! だめッだめッだめへええぇぇッッッッッ!!!!!!
 ア"ッア"ア"ッア"ア"ア"ア"ア"ーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!」


 理性の砕け散った恍悦の表情で、モニカは手足の指の先まで痙攣させ、あられもない言葉をまき散らしながらイキまくった。

 

 


 それから後のことはよくおぼえていない。


 モニカの腹の中はまるでどろどろのシチューになったように熱くとろけ、一切の痛みを感じなくなった。痛みの全てが快感になったのだ。やがてお腹の中だけでなく、全身の感覚が完全に狂った。どこを触られても弄られてもからだがとけるような官能しか得られなくなる。理性が浸食され、思考が全停止し、フェザリアンの血が創った優れた頭脳は、ただ性と肉の悦びを感じるだけの動物以下の機能となった。
 触手が腹を突き破らんまで貫いても、一本また一本と太いのが侵入してきて肉孔を無理矢理拡げられても、生じるのは気がおかしくなるほどの官能だけ。ただ、感覚だけが狂った証に、無惨に掻き回されて秘孔が裂けたらしく、赤い血が流れたが、それすら大量の愛液と精液に飲み込まれほとんど見えなくなった。膣肉は熱く茹だったようにふにゃふにゃになり、そこへさらに熱いザーメンをのべつまくなしに射精され、さらにぐちゅぐちゅにふやけていく。肉襞はただただ熱狂に駆られて触手を擦り上げ、どこで射精されても悦んで迎え入れて歓喜に震えた。触手たちはザーメンをまき散らしながら暴れ回り、モニカの至るところを犯辱してゆく。幾つもの触頭で膣奥や子宮口をこづき、ブシュブシュと濃厚なザーメンを浴びせる。
「あうっ、あうっ、あうあああ~~~~~ッッッ♥♥♥!!!!」
 普通のよがりようではなかった。目、鼻、口すべてからはしたない体液を垂れ流し、気が狂いそうなほどの快楽に顔いっぱいに喜悦をひろげ、モニカは甲高い嬌声を上げて悶え狂った。
「イグッ! イグッ! イ"ッチャウ"ウ"ウ"ウ”~~~~~ッッッッ♥♥♥!!!!」
 極短の間隔で何度も何度も絶頂に投げ込まれる。
 二次性徴を経ていた子宮が、原始の本能に孵(かえ)っていた。子宮口をこじ開けて内部にまで触手がねじり入ってくると、その茹だるような熱気に発情し、精子を欲するように蠕動した。媚液によって敏感になったからだで、モニカは小指の爪の先までその感触を克明に感じた。


「子宮に"ッ、子宮に"い"ッ、はッはい"ッ、はい"ッでぐるう"う"ゥゥゥ~~~~~ッッッッッ!!!!!!」


 膣内もそうだが、子宮の感覚がそれほど鋭くなるのは、普通はあり得ない事である。だが、モニカは確かに感じた。幾つもの触手が子宮孔を拡げ潜って子宮粘膜を擦り、圧し、こねくり回し、灼け爛れるザーメンをところ構わず大量に叩き付けるのを。


「ウ"ア"ッ、ウ"ア"ッ、ウ"ア"ア"ッ!! イグッ、子宮で"ッ子宮で"イグッッ!!
 入っでる"ッ!!!! 入っでる"う"う"ッッッ!!!! 精子がッ、精子がッ!!!!
 精子がッでッ出でイグう"う"う"う"~~~~~ッッッッッ♥♥♥!!!!」


 もはや胎内にバケモノのザーメンをいくら吐き出されようが、おぞましい存在の子種を植え付けられる絶望感は、淫熱に浮かされた激しい絶頂感にしかならなかった。確実に蝕まれていく心が、からだが、あられもない言葉を次々に生み出していく。


「せいしイグッ!! せいえき出てるッッ!! きもちイ"イ"ッきもちイ"イ"よううッッ!!!!
 せいし胎内(なか)でッッッ!!!! いやあッ! だめえッ、だめええッッ!!
 孕んじゃう!! 孕んじゃうッ!! 私まだ子どもなのにッッッ、
 肉の赤ちゃん孕んじゃう"う"う"~~~~~~~~ッッッッッ♥♥♥!!!!!!」


 バケモノの精液の熱蕩に悦び打ち震える子宮。翻弄されるがままの瓦解した理性が、生理的嫌悪感を抱くまでに厭がっていた存在を胎内に受け入れる不条理。生命の本能的欲求が劇薬によって狂走した故の、淫惨な光景であった。
 ぬ"だぬ"だぬ"だぬ"だ――と、淫裂から触手を伝って絶え間なく白濁液が溢れ落ちてゆく。
 ヴァギナに収まりきれずにあぶれた触手たちが、後ろにもう一つ残っていた穴――アヌスに襲いかかる。ほかほか湯気をたてている菊蕾を押し拡げると、一本が抜け駆けし、まったく開発されていない狭隘な孔の中に強引に圧し入っていく。
「い"ぎいぃ! そこッは、はいっちゃダメッダメッ――イ"ア"ッ、イ"ア"ッ、イ"ッイ"ッイ"ッア"ア"ア"ア"ア"~~~~~ッッッ!!!!」
 いくら心身ともに発情化したとはいえ、元は十二歳の未成育な少女の肉体である。お腹が膨らむほどヴァギナに触手を満たした状態で、その上アヌスを圧迫されるのは、快楽神経の限界を超えた。
「いだいッいだいッいだいよう~~~~~ッッッ!!!!」
 快楽に転化しきれない激痛に、死にそうなほどの絶叫を上げるモニカ。触手が千切れるほどに肛門を締め返す。それでも直腸に挿(はい)った触手は、汗のように分泌されてくる腸液と自らの粘液を潤滑油に、えぐるように奥へ奥へと潜り込んでいく。
「う"お"ッう"お"ッう"お"お"ッッッ!!!!」
 ヴァギナとアヌスに挟まった肉壁が触手の蠢動で押し潰されるように擦られ、
「おひりっおひりらめらめらめあああああいだいいだいかんじぢゃうっかんじぢゃああああがあぁらめっらめへぇえぇぇッッッ!!!!」
と、モニカはほとんど言葉にならない絶叫を上げる。
 細い触手一本だけですらその調子なのに、もう一本がさらにアヌスへ突入した。括約筋が限界まで押し拡げられ、二本の触手が直腸をネトネトとした粘液でまみれさせながら絡み合い、蠢き、壮絶な苦痛と快感をモニカに与えた。
「イ"ギッイ"ギッイ"ッイ"ッイ"ア"ッア"ッア"ア"ア"~~~~~ッッッ!!!!」
 ずりゅずりゅ、ずりゅずりゅと腸内をたっぷり擦られ拡げられる感覚に、悶絶寸前のモニカ。
 ぐぱぁ――と菊蕾が二本の触手に拡げられ、ギチギチの孔に隙間が空いた。モニカにとっては、そのわずかな隙間を作られるだけでも、かつて体験したことのない地獄の苦しみである。
「いだいだいだいだいッッッ!!!! おひりっいだいっ!! い"だ――あ、あッ、あけっあけ"ないでぇっひろげないでひろげないでえぇーーーーーッッッ!!!!」
 その隙間に、甘い薫りを放つ媚液注射の触手が潜り込んでゆく。これほどの淫激を与えている強制発情媚液を、腸内にもう一度射とうとしているのである。
 お腹の奥にまた、何か点のような熱い感触があったかと思うと――頭の中で何かがぷつんと切れたように――その瞬間、アヌスに残っていた全ての苦痛が快楽に変わった。
「あ"――あ"――あ"――♥♥♥」
 頭をガクガクと痙攣させるモニカ。泡を吹き、ほとんど白目を剥いている。


「おしりッおしりッおしりッぎでる"う"う"う"う"う"~~~~~ッッッ!!!!
 これッこれッダメッダメッダメエエエェェェ~~~~~ッッッ!!!!
 こわッこわッこわれへええぇッ♥♥♥!!
 うあ"ッうあ"ッウア"ッウア"ッッウア"ア"ッッッッッ
 ア"ア"ア"ア"ア"~~~~~~~~ッッッッッ♥♥♥♥♥!!!!!!」


 全身の毛穴、汗孔が開き、爛れた熱と水分が甘い淫気とともにモニカの肉体から噴散される。媚液注射の触手は役目を終えると引いていったが、二本の触手はそのまま残った。もう一つの淫孔に変貌した祝いとばかりに、先ほどにも増して直腸を盛んに掻き回しはじめる。
「うぎッうぐゅッうぐゅッうぐゅぐゅぐゅううう!!!!
 ウ"ウ"ウ"ア"ア"ア"ア"~~~~~~~~ッッッッッ♥♥♥!!!!!!」


 ドビュッ! ドビュッ! ドビュッ! ドビュッ!
 ドプッ! ドプッ! ドプッ! ドプッ!


 腸内をグチョグチョとさんざんに嬲りながら多量のザーメンを吐き出す。不浄なる体液による腸内洗浄。白濁液は茶色いものと混じってでろでろと菊門から流れだし、肉床に垂れ落ちてゆく。
 ヴァギナを嬲っていた触手も負けじとばかりに、さらに淫辱の度合を増して白濁液を吹き出していった。子宮がぱんぱんに膨らみ、ザーメンが逆流を起こす。だが、流れ出す量よりも噴入する量の方が凌駕し、モニカのお腹が臨月を迎えた産婦のようにまるまると膨張していった。
 それすらも気持ちよかった。


「ン"ア"ッン"ア"ッン"ア"ッン"ア"ッン"ア"ア"ア"ア"~~~~~ッッッ♥♥♥!!!!!!」
 背骨が砕けんばかりに仰け反り、脳の回路が焼き切れたように絶叫を上げるモニカ。
「お"な"がッお"な"がッお"な"がッお"な"ががッお"な"ががッ
 とげッどげち"ゃう"どげち"ゃウ"ウ"ウウ~~~~~~ッッッッッ♥♥♥!!!!!!」

 


 だが、全ての触手の動きが止まった。

 


「……!!!???」
 モニカは淫蕩にたゆたう目を開き、驚いて触手と肉塊を見た。
 今までの陵辱劇が嘘のように、静まり返ってしまった。
 気が抜けたように肉孔がゆるみ、今とばかりにザーメンがぼちょぼちょと脱出していき、お腹が萎んでいく。
「ハァ……ハァ……ひゃめ……ひゃめ、ひゃめないでええぇ……!!」
 からだが疼いてしょうがないモニカ。自分から腰を振る。腰をぐりぐりと動かして、膣肉で触手を締め上げる。「ああああんッ♥」と快感にさえずるが、あまりにも昂ぶりすぎたからだは、それだけでは全然満足できない。
「どうしたの!? うごいて!? うごいてようぅ……ああああ!!!???」
 肉体が快楽を欲して気がおかしくなりそうだった。髪の毛先に至るまで快感を求めている。性欲が悦感に餓(かつ)え、官能を貪るのを厳命していた。しかし、どんなにグチュグチュと腰を動かし続けても、中で触手たちに暴れられなければ全く快感を得た気にならなかった。
「たすけてっ、たすけてっ、うごいてえッうごいてよううう!!!! あ、あア、アア、しぬ、しぬ、このままじゃしんじゃううウゥゥゥッッッッッ!!!!!!」
 すると、肉塊がぶるりと一震えしたかと思うと、その震えが伝播したように触手たちも一斉に震えはじめ、その振動がモニカの体内にも伝わってきた。
「あ、あ――あは、あは、あは、あはははあああああ……♥」
 モニカの目に、全ての触手の本体から、肉茎が波打って瘤を運んでくるのが映った。触手を膨らませながら中を通って、何かがこちらにやってくる。モニカにはそれが何かわかった。来る。来る。来る。
 色欲以外死んだ目を輝かせ、
「きて、きて、きてええええ~~~~~ッッッ♥♥♥!!!!」
と絶叫した。
 瘤が体内に入り、ボゴォと破裂せんばかりに下腹部が膨らむ。ヴァギナを、アヌスを、モニカの拳の何個分もある瘤が押し通ってゆく。


「──――~~~~~~ッッッッッッッッ!!!!!!!!」


 想像を遙かに突き抜けた快感に力抜けそうな必死に歯を食いしばって、さらに来るであろうその“瞬間”を待ちかまえる。
 そして――全ての触頭が破裂した。


 ドビュッ! ドビュッ! ドビュビュビュッッッッッ!!!!
 ドビュルルルルルルッッッ!!!!
 ドプッドプッドププププッッッ!!!!!!


「ウ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!!
 ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!!」


 おびただしい大噴射を胎内中はおろか腸内にも浴びせ散らし、淫裂と菊門からまるで瀑布のように白濁液が噴き出してくる。
 触手の射精は外でも起こっている。全てがモニカのからだめがけて、まるで塊のような汚濁液を浴びせかけてゆく。それすらも気が遠くなりそうなほどに気持ちよかった。
 熱いザーメンのシャワーがひっきりなしに噴射され、モニカのからだがザーメンの蝋人形と化すほどに浴びせかけられる。人格を崩壊させるほどの快感に脳髄まで官能に支配されてゆくモニカ。
 ザーメンプールの水位が上がり、本当に溺れそうになるところを、触手がモニカのからだを持ち上げ、さらに浴びせてゆく。


「あづいいいいぃぃぃ!!!! あづう"う"い"い"い"い"い"ッッッ!!!!
 らめぇッ!!!! もうらめええらめええぇッッ!!!!
 もうらめえええええええぇぇェェェッッッッッ!!!!!!!!」


 モニカは苦痛とも快楽ともつかない狂わんばかりの絶叫を上げ続けながら、途方もない快感に身も心も貪られ、徐々に気を失っていった。


 ――が。


 今度もまた、お腹に鮮明な感触を覚えて意識が戻った。
「ハァー……ハァー……ハァー……ハァー……」
 下はもう白く濁る大海になっていた。その海原に溶けてゆくアイスのように全身からザーメンをしたたらせながら、モニカは宙に吊され、さらなる淫辱が咥えられようとしていた。
 アヌスではない。ヴァギナ――でもない。
 おしっこの穴に、細い細い触手が取り付いていた。
 快楽にふやけた意識にも、恐怖が湧き上がってくる。
「……しょ、しょこちがう!? らめ、らめ、しょこはらめぇぇぇ……あ……!!」
 モニカの語尾が上擦った。尿道口の触手が強く吸い込みをはじめたのだ。


 ジュッチュッジュルッジュチュチュチュッ


「あ、あ、ああ……!!?? すわないでえぇ、おひ、おひぃ、おひっこ、おひっこもれちゃうう……!!!!」ガクガクと震えるモニカの顔だったが、すぐに恍惚感に変わってゆく。「ア、アウ、アアウ、ダメ、ダメヘ、オシッ、オシッコ、オシッコもれちゃうウウウゥゥ……♥♥♥!!!!」


 尿道を通って透明な体液が吸われてゆく。じゅるじゅる。じゅるじゅる。甘美な排泄感に、全身の力をも吸い取られていくようであった。


 じゅるじゅる、じゅるじゅる――


「んひゃ、んひゃ、んひゃああああ……」
 言葉にならない。腰がカクカクと震え、膀胱と尿道を中心としたその周りの感覚がとけてなくなっていくようだった。その中で快感だけがハッキリとからだのすべてに浸透していった。これも一種のオルガズムだった。
「んあ、んあ、んはあああ……♥」
 小指の先っぽを動かす力すら出なくなる。触手は美味しそうな音をたてて膀胱に溜まったモニカのおしっこを吸い続け、水面に広がる波紋のようなオルガズムが幾重にも生み出された。


「らめ……らめ……おひっこ……おひっこのんぢゃらめぇ……♥
 おしっこじゅるじゅるのんぢゃらめへぇ……♥
 きもちいひ……おしっこきもちいひいぃぃ……♥
 んお♥ ……んあ♥ ……お、おしっこきもひいひいいぃ……♥♥♥」


 膀胱が空になるころには、モニカは無上の幸せを味わっている表情で、
「ア……ア……ア……♥」
と、うわ言のようなあえぎ声を漏らし、ほとんど忘我状態であった。
 肉塊の責めはまだ続いた。
 今やぱっくりと開いた孔に、さらに触手を埋めていった。ヴァギナだけではない。アヌスにも。そして――尿道にも。
「うあっ……うあっ……うああっ……!」
 同時に三つの孔に触手が入り込んでくる感触に悶え狂うモニカ。さっき初めて肛虐の性感に目覚めたばかりだというのに、今度は尿道強制挿入。狭間の肉壁がたっぷりと擦り上げられるとともに、おしっこを出す管に異様な悦感を覚え、まるでヤスリで削られるように知性が小さくなって、代わりに快楽で塗り固められてゆく。モニカの表情が痴呆同然にゆるむ。
 さすがに身体が条件反射のように反応して激しく暴れようとするが、肉塊は何本もの太い触手できつく縛めてそれを抑え込んだ。モニカは震える唇から涎を垂らしながら中空を凝視した目をいっぱいまで見開き、三つの孔に触手が入り込んでゆく、この世のモノとは思えない性感に、その身体をひっきりなしにビクンビクンと跳ねさせた。
 お腹がどんどん膨らんでいく。水腹ではない。中に入っていたザーメンは、触手が入った体積分、孔から溢れ出していた。体内でとぐろを巻く触手の形がまるでみみず腫れのように浮かび上がっているのだ。
 それでも触手は入り込んでくる。ヴァギナを犯した触手は子宮でとぐろを巻き、アヌスのものは盲腸までも到達し、尿道に入った触手は膀胱を圧迫した。それでもまだまだ余っている。
「うああ……うあああ……ああああッ……!!」
 触手でいっぱいになっていくお腹。前も、後ろも。ザーメンの比ではない重みが心地よかった。でも怖かった。張り裂けちゃう……触手がちょっとでも暴れれば、お腹が破かれちゃう……。
 そしたら、どれぐらい気持ちいいのかな……
「うふ……うふうふ……うふふふ……」
 モニカは快楽とも恐怖ともつかない微笑を浮かべた。
 やがて、モニカの腹は三倍以上にまで膨れあがった。お腹の皮膚が限界まで伸びた破裂寸前のミミズ風船。媚液の効果がなければ、今頃、モニカは激痛でとっくに失神してるだろう。
「あ……が……が……」
 もう、モニカはほとんど白目を剥いて痙攣していた。涎がとまらない。激痛ですら快感に置き換えられているが、痛みを受けているのと変わらなかった。
「も……も……や……や……や……」言葉が出せない。


 このバケモノは何をするんだろう。
 やっぱり、このまま体を引き裂いて食料にするのだろうか。
 いっそのこと、その方が良かった。生きながらさばかれて食べられるのは痛いだろうけど、それでこの地獄が終わるのなら――
 だが、触手の侵入はそこで終わった。
 触手の動きが止まったことに気付くモニカ。
 肉塊は静かになった。
 モニカは、ともすればバラバラになってカタチを成さない思考の中で、何とか言葉を縒り集めて、これから起こることを想像した。
 これ以上……はいらない……やめて……もう限界なの……。こっからお腹を裂くの? 私を食べるの?――いや違う……そんな様子じゃない。
 もしこの肉塊が人語を喋り、これから行うことを教えられたのなら、いくら媚液に侵された肉人形状態のモニカでも、死を予感しただろう。
 その時、三つの穴に埋まった触手が、ちょっとだけ抜かれる感触があった。まるで抜き具合を確かめる予行のように――
「あ……あ……」
 何をやろうとしているのかが……わかった。
「ひっ……ひいっ……ひゃ……ひゃめてえぇ……」
 快楽で呂律の回らなくなった舌で懇願するが、無論、人語は通じない。そうでなくても、そんなことで肉塊が行動を中止するとは思えなかった。それでも言わずにはいられなかった。
 他の触手が昂奮ぎみに揺れた。
「ひゃめてぇ……ひゃめてえぇぇ……」
 頭を左右に振り、泣きながら哀訴するモニカ。
 だが、それを合図とするかのように、三つの孔に埋まった淫虐の触手が、動きを再開した。
 彼らは、一斉に、寸分違わず揃って――

 


 ――引きはじめた。

 


 ズリュルルルルルルルルルルルルルル!!!!!!!!!!
 ヌリュリュリュリュリュリュリュリュ!!!!!!!!!!
 チュルルルルルルルルルルルルルルル!!!!!!!!!!


 膣、腸、尿道――三つの孔いっぱいに広がり、挟まった肉壁を圧迫しながら肉孔の粘膜を擦り上げ、一挙に全ての触手が引き抜かれていく。


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 声など出なかった。想像など軽く絶する快感。いや、快感、と一口で呼べるものではなかった。大人でも簡単に気をやってしまうだろうとてつもないオルガズムが立て続けに何十回も炸裂し、モニカの意識は嵐に舞う羽根のように貪られ弾かれ吹き飛ばされた。からだの境界線が一気に消し飛び、意識の器の輪郭がどこまでもどこまでも膨らんで薄らいでいく。
「――ッ!! ――ッ!! ――ッ!! ――ッ!! ――ッ!! ──――ッッッ!!!!」
 もし、一つの孔でも触手が中で絡まってしまうようなことがあればどうなるか。この勢いで引き出されるのであれば、絡まった部位が抜かれる時に容易く孔を裂傷させるだろう。だがもし抜けないほど絡まってしまったら、どうするのか。中でほどければいいが、もしダメならば、腹を裂いて出るしかない――
 モニカはもう何も考えてなかった。考えられなかった。思考する意識が官能の彼方にトンでるのだ。全身を硬直させ白目を剥きながら快楽の深海、あるいは成層圏で張り裂かれ、恍惚に声にならない口を大きく開き、ガクガクと痙攣していた。
 キモチイイ。何もかもが忘我の彼方に押し流され、均一の白い世界で埋め尽くされていく。キモチイイ。父と母が見えたような気がした。すぐに絶頂の波濤の向こうへ消えてしまった。キモチイイ。何もかもが消えていく。キモチイイ。キモチイイ。痛みの恐怖も束縛の絶望も混血の懊悩も虐待の苦しみも無理解への怒りも孤独の悲しみも――なにもない――ナニモナイ――ナニモ――カモ――キモチ――イイ――


 キモチイイ──
 キモチイイ──
 キモチイイ──


 ズリュルルルルルルルルルルンッッッッッ!!!!!!!!!!
 ヌリュリュリュリュリュリュンッッッッッ!!!!!!!!!!
 チュルルルルルルルルルルルンッッッッッ!!!!!!!!!!


 三つの孔全てから触手が一本残らず出し尽くされ、大きな肉洞が三つ生まれた刹那、別次元に飛ばされるぐらい圧倒的な快感に、声も上げられなかった口から、


「――ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!
 ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!
 ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ーーーーーーーーーッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」


 ――下等生物のごとく、性と肉にまみれた絶叫が誕生した。


 いつまでも、いつまでも。

 

 


 ビク――ビクビク――
 まるで陸に上がった魚のように痙攣するモニカ。白目を剥いている。酸欠状態が長く続いたための、その寄せ返しだった。
 意識を失ったのはどの段階からだろうか。絶頂が下がるごとに新しい絶頂が起爆し、引いては寄せるを繰り返した。徐々には収まっていったのだが、その間、モニカはどれほど死にそうなほどのオルガズムに狂い続けたか。途中で気を失ったのは精神の自衛策であった。肉欲の極みを垣間見たその顔は恍惚そのもので、淫悦の涎をいつまでも垂れ流していた。


 ニュジュル――


 肉塊はようやく落ち着きはじめたモニカの様子を見定めるように、だらんと垂らしていた触手を持ち上げた。
 大股に開きっぱなしのまま伸びて反応が無くなったモニカのからだに取り付くと、湯気のたつ赤く爛れた淫裂をネチョッと割り、再び何本もの触手を膣内に潜り込ませていった。緊張を失った女性器は、何の抵抗もなしにそれらを飲み込んでいく。
 しばらくもしないうちに、モニカのお腹がビクビクと揺れた。反応したわけではない。触手が子宮の中で蠢き、卵巣めがけて射精したのだ。卵管も卵巣もバケモノの精液であますところなく陵辱された。
 モニカの子宮が肉塊のザーメンで溢れかえるのにそう時間はかからなかった。
 お腹を気持ちよく満たす熱いモノに、モニカのとろけた顔がピクリと微笑むように反応する……


 そうして徹底的に犯され尽くしたフェザリアンの混血少女は、それからも何日も何週間も何ヶ月も犯され続けた。肉の巣からは出られなかった。助けも来なかった。反応が弱まれば強烈に甘く薫る媚液を注入され、全身性感帯になったからだの隅々まで触手に犯されまくり、ついには脳の随まで肉欲にまみれ、どろどろに溶けながらバケモノと交わり続けた。生殖活動以外のことは許されず、モニカの子宮は常にバケモノの触手と精液で満たされ続けた。そのうち媚液を注入されなくても、モニカの血肉は甘く薫るようになった。そして、どんなにいたぶられても悦びに享受する、柔らかくとろけるようなからだに成り果てた。
 いつしか快楽のことしか考えられなくなった。
 やがてバケモノの仔を産んだ。陣痛はなく、むしろ巨塊が子宮や産道を押し分けながら通り抜ける尋常でない快感に、悶え狂い泣き叫んだ。ベチャリと産み落としたのは、肉塊の仔だった。仔は産み出されてからしばらくの間は母体よりも甘く薫っていた。
 それからも何度も何度もバケモノの仔を孕らませられ、何匹も産み落とした。
 モニカはおぞましい生物の生殖母胎となったのだ。
 フェザリアンの混血少女は、バケモノの仔が体外に出るたびに、その濃密な匂いを嗅ぎ、
(おなかまたからっぽになった……うれしいまたからだのおくまでいっぱいいじめてくれる……ずりゅずりゅずりゅずりゅってやってくれるわ……うふ……うふ……うふふ……)
と、穴という穴から淫辱の体液を垂れ流しながら、肉虐の悦びにいつまでも満たされていったという……


 

 

 

 

 

 

  6


  

 モニカがようやく助け出されたのは、何年か経った後であった。スレイン達の活躍によってローランド王国が復活し、鉱山を再開するために徹底的なモンスター討伐がなされた。ダンジョンの奥深くに隠されていた肉の巣からモニカが発見された時、視力は弱まり、皮膚からも色素が抜けて真っ白になっていたが、命に別状はなかったという。母胎として良好に生かされていたため、健康面に問題はなかったのだ。彼女の主と仔どもは残らず退治され、鉱山の外に死骸を晒されているのをモニカは見たが、特に何も言わなかった。
 助け出された夜、発見した隊のリーダーが静養所にこっそり訪ねてきた。夜這いであった。男はモニカがどんな目に遭っていたのかを薄々感づいていた。太い触手でさんざん拡張され肉塊の仔を何匹も産んだ性器で、今さら人間が満足できるはずもないとモニカは思ったが、からだが疼いてしょうがないこともあり、彼の相手になった。意に相違して彼女の性器はまるで絞り上げるように肉棒を包み込んだ。男はとろけるように柔らかく、また甘く薫るからだを抱いて、深い満足に何度も精を吐き、朝方までモニカのからだから離れることがなかった。その次の夜には隊の男全員がやってきた。救助してくれた恩もあり、また、収まらない肉欲に悶えていたモニカは、肉塊から与えられた快楽を返すようにして男たちに奉仕した。全ての男たちがモニカにむしゃぶりつき、透き通るような白いからだに狂ったように精を放った。
 モニカが完全に快復するまでに何ヶ月もかかったが、二ヶ月目の夜、お腹に痛みを感じ、そっと静養所の裏庭に回った。下着も脱いでしゃがむと、激しい陣痛が襲ってきた。すっかり狭まった膣孔を掻き分けながら、最後の仔が出てきたのである。産褥の激痛に霞む目に、短い触手を揺らしながら茂みの中へ消えていく小さな肉塊の姿があった。その後背部には、今までの仔にはなかった翼が、ちんまりとついていた。
 甘い薫りがいつまでも漂っていた。

 


 モニカが歩き回れるほどまでになると、噂を聞きつけて夜な夜なやって来る男たちの数は、鉱山街の成人男子人口のほとんどに達した。全て街の人間であり、スレインやヒューイの姿などはなかった。
 いるはずもないと分ってながらも、ここにいればそのうち噂を聞きつけて来てくれるかしら、とも思ったが、ひとまわり小さくなったように見える翼をわずかに揺らし、数日のうちに彼女の姿は鉱山街から消えていた。
 以来、町から町へ流れる少女のようなフェザリアンの娼婦の噂があちこちで囁かれるようになった。そのからだは天使のように純白で甘い蜜のような薫りがし、どんな女を抱くよりも素晴らしい快楽に包まれ、天国のような一時を約束されるというのである。だが、それがモニカであったかどうかは定かではない。その後しばらくして、ぷっつりと途絶えるようにその噂が消えてなくなったからである。
 話しによれば、彼女は旧知の知り合いと再会して平穏な暮らしに戻ったとも言うし、甘い匂いを放つ奇妙なモンスターが棲息するという薄暗いダンジョンの中に、独りで入ってついには帰ってこなかったとも言われている。 




(完)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終更新:2020年02月23日 13:16