『冒険者で寝取られ』 中編2

 

 

 

 

 

 

 

   1

 

 

「覗いてたのか?」

 

 ベンゼマにそう問われたアスリナンは、持っていた杖をギュッと握り、叱られて泣きそうな子供のように身をすくませました。

 

「おっとすまん、怯えさせたか。別に咎める気はないんだ」

 

と、ベンゼマはアスリナンの頭を撫でました。

 

「悪い悪い。なんで覗いてたのかただ聞きたかっただけなんだ」

 

 それでアスリナンはホッとしたような表情になりましたが、すぐにまた赤くなり、顔を伏せてしまいました。ですがそれでベンゼマの逞しい腹筋やさらにその下の“もの”が視界に入ってしまい、さらに真っ赤になり、杖に顔を隠すようにして目を逸らしました。ベンゼマは素っ裸のままだったのです。

 

「あ……あ……」

 

 上がってしまい喋れなくなるアスリナン。

 

 恥ずかしがる少女と対照的に、ベンゼマは己が一物をさらけ出していてもまったく平然としていました。

 

「もしかして……興味があったのかい?」

 

 アスリナンは耳まで赤くなりました。

 

「ハハ、なんだそうだったのか。アスリナンちゃん、だっけ?」

 

「ちゃんは……いい……」

 

「そうか。じゃあアスリナン」

 

 ベンゼマは彼女の名前を呼ぶと、その小さな躰を抱き寄せました。

 

 まさか……!?

 

「あっ……!?」

 

 アスリナンは男の厚い胸に抱かれ、驚いて固まってしまったようでした。

 

 その耳元にベンゼマは囁きました。

 

「俺とレスティアが甘く語らっていた時も覗いていただろう。君は隠れるのが下手だから、気付いていたんだ。二回目は行為の真っ最中で気付かなかったけどね」

 

 アスリナンの眼鏡の奥の瞳がしきりに泳ぐのが分かりました。何か言い訳を出そうとしているのか、口をぱくぱくさせていましたが、何も喋れませんでした。

 

「いや、さっきも言った通り咎める気はない。アスリナンは何も悪くないからな。こんな夜半に散歩がしたいと、君が見張りに立っている時にレスティアと出かけてしまったのはこちらだ。心配で見に来たんだろう?」

 

 助け舟を出されコクコクと頷くアスリナンに、ベンゼマはフッと笑って、

 

「だが同時に、俺とレスティアの行為に興味があった。だから一旦は帰っても、また覗きに来てしまったんだろう? いや、否定しなくてもいいんだ。

 見た感じ、君は奥手そうだけど、年頃の娘として人並みに恋愛してみたいし、セックスにも興味ある。けれど性格が邪魔してまだ機会がないんだろう。意気投合して急接近し、ついには躰を結び合った俺とレスティアを見て、ドキドキしてしまったんじゃないか? 自分もあんな風になれればって、そう羨望したんじゃないのか?」

 

「………………」

 

 そう言われて、アスリナンはもうすっかり顔が赤くなったままになってしまい、もじもじしていましたが、なぜかベンゼマの抱擁をはね除けようとはしていませんでした。

 

「やっぱりか。でも恥ずかしがらなくていいんだ。その年じゃごくごく普通の想いだ。むしろ、ない方がおかしい」

 

と、ベンゼマはアスリナンの顎に指をかけ、つ──と、上を向かせました。

 

 眼鏡の奥にある瞳孔はいっぱいに開き、吸い込まれるようにして、アスリナンはベンゼマと見つめ合いました。ハァハァと息が上がっていました。

 

「アスリナン、君は魔法使いだって? 魔法の習得は大変そうだ。でも、人生には魔法の他にも色々学ぶべきことがある。そうは思わないか? 特に君の年代は色んなことに興味が出てくる。それらを経験して、吸収することが成長に繋がっていく」

 

「……お……思う…………」

 

「だろう」

 

 ベンゼマはニッコリと笑みました。そして、

 

「実は、今、俺は君に欲情しているんだ」

 

と、臆面もなく言い放ちました。

 

「こんなに可愛らしい乙女をこの腕に抱いていて、男として何も思わないわけがない。君と結ばれたいと恋い焦がれている」

 

 びっくりしているアスリナンの手を取り、自分の胸へ当てました。

 

「どうだい、ドキドキしてるだろ? 君のせいだ」

 

 そしてその手を下げてゆき、股間へと招き入れました。

 

「……!」

 

 アスリナンの身がこわばりますが、肉茎に添えられた指が離れることはありませんでした。

 

 僕もベンゼマのペニスの全体をまともに見るのはそれが初めてだったのですが、僕のペニスとは大違いでした。

 

 ヘソ近くまで反り返りながら雄々しく隆起した肉の湾曲刀は、逞しい筋肉の塊のようでした。肉茎がどす黒く変色していて、そのくせ亀頭は真っ赤で……何だと思いました。目の前にしているアスリナンも、そんな感想を強く抱いたのではないでしょうか。

 

 それは見るからに凶悪そうでした。僕は、まあ、人並みサイズですが、僕のよりずっと大きかった。長かった。立派な屋根がついていた。ぶら下がってる双つの球体も丸々と肥えていて。

 

 存在感が違う気がしました。歴戦の勇士という風貌でした。

 

 真っ裸で勃起している姿なんて、普通、間抜けに映るものだと思います。ですが、顔、肉体、陰茎、どれも自信に溢れたベンゼマは、同性の僕が見ても実に堂々として立っていました。

 

「どうだ、固くて熱いだろう。これが大人のペニスだ。年頃の娘である君を間近にして、君の好い匂いを嗅いで、昂奮しているんだ」

 

「そんな……」と、アスリナンは眼鏡の奥の目を細めました。うるっとなったような気がしました。「私が……?」

 

「何言ってるんだ、さっきも言っただろう。君はとても魅力的だ」

 

 ベンゼマはアスリナンの分厚い縁の眼鏡を取り、そのすべらかな頬を撫でました。アスリナン本人は自分に自信を持ってないようでしたが、その素顔がとても愛らしいことは、僕も知っていることでした。

 

「そして、君は男を知っても何ら問題ない年齢でもある。いや、経験してなければおかしいぐらいの時期だ」

 

 ベンゼマは眼鏡を戻し、話し続けながらもアスリナンの手を腹筋から胸板まで往来させ、自分の肌や筋肉を触らせました。アスリナンはベンゼマの逞しい肉体をうっとりとした目で見つめていました。

 

「アスリナンもさっき聞いたかも知れないが、残念ながら俺には生殖機能がない。子供は作れないんだ。だが、それがかえって都合良いこともある。君みたいにチャンスを待っていて、待ちすぎて人生で一番良い時期を逃しそうな子に、遠慮なくアプローチできるという好都合がね。そう考えればまったく悪くない話だ。怖いかもしれない。でも君はこれから恋や愛を知っていくだろう。その前に男が一体どういうものなのか、自分は女としてどう男を迎えればいいのか──リスクがないのなら、そういうことを学んでも損はないじゃないか。そうは思わないか?

 さあ、俺と魔法の時間を過ごさないか……?」

 

「………………」

 

 アスリナンは真っ赤なままでしたが、その瞳が潤み、ベンゼマが話している間もじっと見つめ上げていました。

 

 話し終え返事を待つ段になったベンゼマの口も閉じられると、二人に沈黙が降ります。ですが気まずさとは違う沈黙でした。

 

「わ──わた、わた────」

 

 何か言おうとするアスリナンの唇に、ベンゼマの人差し指がそっと置かれました。

 

 そしてそれが離れると、代わりにベンゼマの唇で塞がれました。

 

 アスリナンは、その口づけを──しずかに目を閉じ、受け入れました……。

 

 

 

 

 

 

   2

 

 

 そして……ペティとレスティアだけにとどまらず、アスリナンもベンゼマに食べられてしまったのです。

 

 初めの長いキスが終わった時点で、アスリナンの目の色は変わっていました。彼女のマントを敷いて、そこで恋人のような交歓が始まったのです。

 

 性格や態度は違えど、アスリナンもレスティアと同じようなものでした。ベンゼマを好ましい男と勘違いして、初めてとは思えないぐらいの積極さで彼からのキスや愛撫を受けていました。いつもパーティーの一番後ろに控えているような彼女と思えないぐらいの積極さでした。

 

 キスと愛撫だけが一時間あまりも続いたでしょうか。言葉にすればたったそれだけの間に、キスから始まった行為はしばらくもしないうちにペッティングに移り、熱い吐息をつくアスリナンは服を脱がされながら、そのほっそりとしたからだを弄られまくりました。あいつは彼女の足の指先まで丁寧に舌を這わせたのです。ベンゼマのそういった愛撫に、アスリナンの眼鏡の奥は潤みきり、本気で感じてしまっているようでした。

 

 その時間の最後にはアスリナンはとうとう真裸にさせられ、小さいですが良い形をした胸を包み込むように揉み撫でられ、その尖頂が充血するまで刺激されました。そして、股を開いてベンゼマのクンニを受けながら、切なそうに腰を揺らめかせ、喘ぎまくっていたのです。

 

 後半はもうほとんどアスリナンの秘部に責めが集中していて、クンニされるか指を第二関節ぐらいまで入れられるかまでいっていました。アスリナンは両脚を拡げて、悦が射した表情でベンゼマの指や舌を感じていました。処女のはずの彼女のアソコが、もうトロトロになっていました。

 

 ですから、ベンゼマがいよいよペニスの肉茎を擦り、十分に濡れたアスリナンのヴァギナにその先端を当てがっても、

 

「ああ……!」

 

と、感に堪えない声を上げるだけで、ほとんど怖いという様子は見られなかったのです。それどころか、やや怯えた目をしながらも、あのアスリナンが自分から大きく脚を開いて、ベンゼマに貫かれる瞬間を待ち望んでいたのです。

 

「いくぞ、アスリナン」

 

 コクリと頷き返すアスリナンのからだに、ジュブプブと卑猥な水音たっぷりに、ベンゼマの剣が埋没してゆきました。

 

「ンッアッ、アァッンアッ──!」

 

 アスリナンの顔が苦痛に歪み、強くからだをわななかせました。やはり痛いものは痛いのでしょう。

 

 ですが、彼女はそれに耐えていました。ベンゼマに貫かれる痛みは、耐えられる、耐えようとする痛みだったのです。

 

「ひとつになれたな、アスリナン……」

 

「ベンゼマ……」

 

 二人は互いの名を呼び、微笑み合いました。

 

 ボクは歯を噛み締め、拳を震わせながらその光景を見つめました。

 

 ついさっきまでエルフの美少女を楽しんでいたペニスは、奥ゆかしい魔法使いの娘を破瓜し、その柔肉に己が存在を誇示したのです。

 

「おお……お前の中がヌルヌルだ……初めてなのに、俺をこんなに熱く迎えてくれて……たまらない心地だよ……」

 

「私も……痛いけど……気持ちいいの……♥」

 

「俺に貫かれて、俺を感じて、たまらないか……?」

 

「うん……♥」

 

 アスリナンは嬉悦の涙を流していました。

 

 ベンゼマはゆるやかに動き始めました。

 

「あっ……うんっ……んっ…………!」

 

「痛いか……我慢できなければ言うんだぞ……お前の躰を壊してまですることじゃない……」

 

「だっ……だいじょうぶ……いいの…………我慢できる…………ううっ……!」

 

「そうか……だが、ゆっくりやってやるからな……」

 

 アスリナンを気遣うように優しく振舞うベンゼマ。その正体を現すようなことはしていませんでした。むしろどこからどう見ても恋人を思いやる男でした。

 

 

 

 

 虫の音も遠い森の中で、アスリナンとベンゼマが一つになりながら、ゆったりとした抽送が続いていました。

 

「あっ……あっ……あっ……あっ……」

 

 アスリナンの表情が段々と蕩け出していました。ベンゼマが孔の中を往来しても、痛みでからだに強張りが走ることが少なくなっていきました。

 

 ベンゼマはしばしば腰を止め、繋がったままアスリナンを抱き、キスをしたり、ペッティングしたり、愛を語らったりします。休憩にもなり、アスリナンはその方が気持ち好さそうでした。

 

 そしてまた動き始めると、アスリナンの声の潤みも高まるのです。

 

 両者の呼気は荒くなる一方で、もはや二人の──いえ、二人が一つになる世界に没頭していました。

 

 そうしているうちにベンゼマもいよいよ快感を抑え込めなくなってたようで、

 

「アスリナン……俺のザーメンを受ける気はあるか……」

 

と、息を弾ませながら彼女に問いかけました。

 

 アスリナンは躊躇わず頷き、

 

「出して……私の中に……あなたのザーメン、受け止めるから……♥」

 

「たっぷりと出すぞ。お前を孕ませたいと思ってたっぷりと出すぞ?」

 

「うん……♥ 私も────!」

 

 その先は言葉が続かなかったのですが、ベンゼマを見つめる熱い目は、彼女が何を言わんとしていたのか、如実に語っていました。

 

「ようし、アスリナン、お前を俺のものにするからな。愛が結ばれる場所で、俺のザーメンをたっぷりと味わうんだ」

 

 ベンゼマはアスリナンの膝裏に腕を通して屈曲位にし、貪るように腰を振り始めました。

 

 一転しての激しい抽送に、「あううっ!」と、アスリナンは苦痛に顔を歪ませ悲鳴を上げ、痺れたようにからだを震わせましたが、初めの痛みが過ぎると、額に汗を浮かべながらも目をうっすらと開き、微笑んでベンゼマを見つめました。その顔はもう、女になっていました。ベンゼマを受け止める女になっていました。

 

 一旦スピードを緩め、ベンゼマは言いました。

 

「いい顔だアスリナン……お前は紛れもなく俺とセックスしてるんだ、男の子種を受け止めようとしてる顔だ……いくからな、お前の中に俺の子種をぶちまけるからな……俺の愛を受け止めるんだ…………!」

 

 そして腰を押し込むようにして、忙しなく刻み始めました。

 

「んっ、んっ、んっ、んっ、んっ♥!!」

 

 アスリナンの両脚が肩につくほど腰が曲げられ、痺れてるように上体を広げてゆき──

 

「オオッ──!!」ベンゼマが短く呻き、動きを止めました。「──オオオ────ッ!!」

 

「ッアッ……! アアッ……♥♥!!」

 

 ──とうとうその瞬間が到来してしまいました。

 

 出されているのが分かるのでしょうか。アスリナンはからだをぶるぶると震わせ、胸を緩やかに波打たせながら、目を瞑りながらも陶然とした表情で声を漏らします。

 

 二人の下半身の強張り──子種の受け渡しをしているという意志を帯びているような、甘い緊張感に包まれたわななき。

 

 あのアスリナンが……豊富な知識で僕達に助言し、戦いでは冷静に的確な魔法を唱え、パーティーの絶大な要となっていた魔法使いの少女が……

 

 喜んでベンゼマに処女を捧げたのみならず、孕ませられる真似事までしているのです……!

 

 腰を密着させたままの姿勢でベンゼマは両手をつき、アスリナンの唇を奪いました。二人は手を結び、荒い息を何度も吐きながら口づけを繰り返し、だいぶ長い間そのままでした。

 

 ベンゼマはアスリナンの額や頬に張り付いた短い髪を指で整えながら、

 

「──頑張ったな、アスリナン……最後まで気持ち好く出せた……すべてお前の中に注ぎ込んだ……最高だったぞ……」

 

「ベンゼマ……♥」

 

 そうしてまたディープキスする二人。

 

「ああ……もっとお前が欲しい……もっとお前を俺のものにしたい……いいよな……?」

 

「私ももっと……あなたが欲しい……♥」

 

「嬉しいじゃないか……まだ立てるか? 今度は立ってやりたいんだが」

 

「うん……」

 

 アスリナンはフラフラしていましたが何とか立ち上がり、樹の幹に誘導され、両手を胸の前に添えるように置いて脚を拡げました。ちゃんと年頃の女らしい曲線を帯びてはいますが、細いからだでした。よくベンゼマを受け止められたと思います。

 

 お尻をやや突き出す姿勢にされると、ベンゼマによって処女を散らされ、赤いものが混じった淫液にまみれた秘裂が僕の視界にも映りました。アスリナンの純潔が穢された何よりの証拠でした。ですが、すぐベンゼマの躰が重なって遮られました。

 

「いくぞ……」

 

 アスリナンの小ぶりなお尻を掴むと、ベンゼマはまたゆっくりと入っていったのです。

 

「んん…………!」

 

 ぶるっと一回わなないたアスリナンでしたが、あとは切ない吐息をついただけでした。

 

 そうしてまた一つになった二人は、ベンゼマの余裕を持った抽送が始まり、突かれるたびに小柄なからだが揺れ、完全に身を委ねたアスリナンの甘く切ない喘ぎが周りの闇に染み込んでゆくことになりました。

 

 アスリナンがさらに、ベンゼマのものになってゆく時間でした……。

 

 

 刺激的なやり取りが幾つかありました。

 

「俺のモノがお前の中で動いているのが感じるか? アスリナン……」

 

「うん……感じる……あなたを感じる……♥」

 

「奥まで行くぞ……」

 

 そう言ってベンゼマがぐっと深く腰を押し進めると、

 

「あっ……♥! ああっ……♥!」

 

 アスリナンは切なく叫び、からだを甘くも強く震わせました。

 

「どうだ、感じたか……?」

 

「うん……すごい……♥」

 

「そうか、もっとやってやる」

 

 ベンゼマは深い突き入れも動きのレパートリーに加え、アスリナンを甘く責め続けました。

 

 

 

 アスリナンの喘ぎ声が段々と蕩け始め、切なさに潤いが帯びてゆきます。

 

「お前からも動いてみろよ……」

 

「あぁ……こう……?」

 

 ベンゼマが止まると、魔法使いの少女は自分から腰を前後に動かし始めました。その覚束なさがまた可愛らしく、男を発奮させるものがありました。

 

「そうだ……こういうのは頭で考えず、からだが命じるままに……気持ち好い所を探るんだ……」

 

 そう言いながらベンゼマも抽送を再開し、アスリナンに動きを合わせて彼女の中に突き入れます。

 

「あっ……あっ……ああっ……♥」

 

「気持ち好い所があるか……?」

 

「うん……ああっ……あ、そこ……ああ……♥!」

 

「よし……いくぞ……」

 

 アスリナンが背をしならせ、ひときわ高い声を漏らし出しました。

 

 

 こうしてベンゼマとアスリナンの交歓は次第に淫らさを帯びはじめ、眼鏡が掛かった頬を真っ赤に染めながら少女は何度も身を震わし、ベンゼマの精悍なペニスを受け止め続けていきました。

 

 レスティアの時と似ています。二人はいよいよ本格的なセックスに、男と女の交わりに移りだしたのです。

 

 パン、パン、パン、パン、と打ち付ける音が辺りに響きします。

 

 急速にほころびてゆくアスリナン。

 

「あっ、あっ、あっ、あっ……! だっ、だめっ、なんか……おかしい……おかしくなるの……♥!」

 

 恍惚の表情が出てきた彼女は泣きながら何度もそう悶えますが、ビクビクと弾む腰を押さえ、ベンゼマは離してはくれません。それどころか、ますます粘質的に突き入れてゆくのです。

 

「おお、アスリナン、君のヴァギナがますます火照っていくのがわかるぞ……このまま駆け上がるからな……!」

 

「だめっ、だめ、あっ、あっ、ああっ……♥!」

 

 射精に向かうピストン運動の始まりに、少女の声がはっきりと潤いと艶めかしさを帯びました。きっとヴァギナも熱く潤ってベンゼマを奥まで迎え入れているのでしょう。

 

「おおっいいぞ、アスリナン……また君に種付けたい……種付けるほど射精したい……!」

 

 ベンゼマの腰振りはすぐに忙しく切羽詰ったものになってゆき、アスリナンも男に貪られる昂奮に乱れた声を上げました。

 

「アスリナン、イクぞ……ッ!!」

 

 ベンゼマの動きが最高潮に達した時、アスリナンの胎内で熱い迸りが噴き上がり、彼女の唇からもまた官能にぬかるんだ悦びが迸ったのです。

 

「──アアッ……アアアッ…………♥♥!!」

 

 グッ、グッ、と、アスリナンを樹幹に縫い付けるように、彼女の最奥に到達したくてたまらないような突き上げが何度も繰り返されます。二人の脚の間からボタボタと、粘液のようなものが垂れ落ちるのが見えました。

 

 ベンゼマの二度目の射精も、また劇(はげ)しいものでした。本当にアスリナンを孕ませたいという気が満ち満ちているようでした。そして、アスリナンは籠の中に囚われた小鳥のようにベンゼマの躰に包まれ、体奥でしっかりとその想いを感じてしまっていました…………。

 

 そのまま時止めの魔法にでもかかったようにじっとしていた二人は、やがて、ベンゼマがこう耳打ちするのが聞こえました。

 

「……良かったよアスリナン……慣れていけば、もっと気持ち好くなる……俺がさせてやる…………」

 

 アスリナンは顔をベンゼマに向け──

 

 頬が緩み、目はぬらぬらとこれまで見たこともない深みを帯びました──。

 

 

 

 

 ──こうして、寡黙だけど可愛い魔法使いの少女も、ベンゼマの手に堕ちてしまったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

   3

 

 

 樹の根元に座ってマントを一緒に羽織り、ピロートークを始めた二人に気付かれぬよう静かに後退し、もう多少音を立てても届かないところまで来て、僕はやっと普通の足取りになり、カンテラを照らして森をとぼとぼと歩き出しました。

 

 頭の中が麻痺したようにボーッとしていました。回転が鈍い中、本当にこれでいいのかと自問しました。何で無理矢理にでも止めに入らなかったのか。アスリナンも、レスティアも、そしてペティも……。

 

 言い訳になりますが、機会を掴めなかった。どのタイミングで入り込めばいいか分からなかったんです。その場の雰囲気に──男女の世界に──足を踏み入れる勇気と思い切りが湧かなかった……。冒険者として修羅場を潜り抜ける自信はついてきたのに、性的な密会には怖気づく──情けないことです。

 

 すると、暗い森の中、前方に光が見えました。こちらと同じカンテラの灯火でした。

 

 あちらも気付いているのか、まっすぐこちらへやって来て、人影の判別がつく距離まで近付くと、それがペティだと分かりました。

 

「クラスト!」

 

「ペティ……どうしたんだい」

 

「何言ってんのよ、それはこっちの台詞でしょ」

 

と、少し怒ったように彼女は言いました。目が覚めて見張りの僕の姿がないことに気付き、探しに来たというのです。

 

 とっさに言い訳する言葉が思いつかず、「ごめん、ちょっと歩きたい気分だったんだ」と、謝ると、

 

「ホントにもう」

 

 ペティはしょうがないといった風に苦笑しました。

 

 その笑顔に、僕はどうしようもなく安心館を抱いてしまうのでした。

 

 

 

 そうして二人で洞穴に戻る時のことです。

 

「ねえ、クラスト……。ちょっと話があるんだけど……いい?」

 

「……なに……?」

 

「えっとね……この仕事が終わったら……冒険者を辞めて……開拓地にでも行かない?」

 

「え……?」

 

 一瞬、ペティが何を言いたいのか理解できず、立ち止まってしまいました。

 

 彼女も立ち止まって僕に向きました。

 

「ほら、いつか酒場で、アラサほどじゃないけど、遠い東から来たっていう冒険者が話してたじゃん。魔物の土地を切り開いてる民がいるって……。危険と隣り合わせだけど、そこならお金がなくても土地も生活権も得られるって」

 

(ひょっとしてサビタメニュアレブのことかい?)

 

 そうです。《勇ましきメニーダの栄光城》。東の端っこにあるというメニーダ王国が領土を増やすべく軍を進め、国事としてそこを開拓しているとか。魔物との争いには事欠かないので、腕に自信のある者は歓迎されるし、勿論、腕前関係なく労働者の到来も喜ばれる。その分死が近い危険な土地とも言えるが、持たざる者にチャンスが与えられる場所の一つ。

 

 そこへ行こうとペティは誘いかけて来たのです。

 

(私より詳しいじゃないか、と感心すると、ええ、まあ、と、なぜか寂しそうな笑いを浮かべた)

 

「もう冒険も辞めてさ……二人でまた新しい生活を見つけない?」

 

「突然どうしたんだよ、一体」

 

と、僕は言いました。昨晩の出来事を知らないはずである僕はこう言うしかありません。

 

「ベンゼマ……あの人にまた関わっちゃったら、私達、また、悪の道に走らされるかもしれないわ。あの人は危険なのよ。そういう匂いをさせてる男」

 

「……彼のこと、よく知ってるんだね」

 

「え? そ、そりゃあ、……昔、一緒にいたんだから……クラストだってそうでしょ。私はあの人の世話係だったもん。その人柄も近くで見てたのよ」

 

「ああ……でも、偶然再会しただけだ。今となっては過去の話だろう。僕達とベンゼマはもう別々の道を辿っている。何をそんなに考える必要があるんだい」

 

 ペティは僕に抱きついてきました。

 

「怖いのよ」

 

 暖かい躰。ペティのからだとにおい。愛しさが溢れて、僕も抱き締め返さずにはいられませんでした。

 

「彼は今後も私達に関わってくる。考えられることでしょ」

 

「……そうかな」

 

「そうよ。ねえ、クラスト。あなた、散歩に行ってたって本当? 歩くにはちょっと離れすぎてるわ、ここ。レスティアとアスリナンは何処? 本当はあなた、何処へ行ってたの?」

 

「…………それは…………」

 

「だいたい分かる、私。あいつ、レスティアとアスリナンにも手をかけたんでしょ」

 

 ペティはそう言って僕の目を見つめました。僕は俯いてしまいました。

 

「……やっぱり。許せない。あいつはそういう奴なのよ。こうなっちゃったら、もう、私達、これからもあいつに引っ掻き回されるわ。もしかしたら私達の仲間に加わろうとするかもしれない。そしたらパーティーは滅茶苦茶よ」

 

 ペティの言うことは尤もに聞こえました。ベンゼマに滅茶苦茶にされる、それは僕も同じ気持ちでした。

 

 でも、彼女自身が、そのベンゼマと関係してるじゃないか──あんな爛れたセックスする関係までに──僕は心の中でそう思わずにはいられませんでした。

 

 君のお胎(なか)の中にはまだあいつのザーメンが残っているんじゃないのか。君のからだにはあいつのザーメンが染み込んでいるんじゃないのか。

 

 子種がなくても、あんなにあいつのザーメンを望みやがって……! そんな状態で、よく、僕にそんな事が言えるな──。

 

 彼女に対する不信が僕の中で増して、僕は彼女の躰を離してしまいました。

 

「クラスト……?」

 

「レスティアとアスリナンは……彼女達自身が同意しての上だよ……」

 

「そうやって誑かすのがあの人の手口なのよ。信用できるわけないでしょ」

 

「ペティ……この件は、オーク退治が済んで、時間ができてからにしよう。僕もレスティアとアスリナンが心配でここまで来た。そして、ショックで疲れてるんだ……。混乱もしてる。見張りにも戻らないといけない。今ここでそんな大事な相談は出来ないよ。仕事が終わった後でゆっくりと、ベンゼマも交えて話しをしよう」

 

「え…………ええ………………」

 

 それでその夜の出来事は終わりました。僕とペティは洞穴に戻り、彼女は寝直しました。その後僕もアラサと交代し、ペティの背中を見ながら寝袋に入りました。僕もなんとなく背を向けてしまいました。眠りに落ちるまで、ついに、レスティアとアスリナンは戻って来ることはありませんでした。

 

 アスリナンはまだベンゼマとやっているのか。レスティアはあのままなのか。それとも、二人ともベンゼマに……一緒に気持ち好くされて、まだまだ交互にザーメンを注がれて、あいつに蕩かされていたりするのか……。

 

 そんなことを考えているうちに、いつしか眠りに落ちていました。

 

 

 

 

 

 

 

   4

 

 

 朝日が昇る前、まだ薄暗い時間に、アラサに起こされました。いつの間にか全員が揃ってました。敵がオークと言えども、いよいよモンスターとの戦いの日を迎えたのです。

 

 レスティアとアスリナンの様子をさりげなく窺うと、いつもとは違う陽気さというか、明るさというか、精気があるというか……きびきびとしていて、やはり昨日までとは違ったような印象がありました。どんよりしているのは僕ぐらいなものでした。

 

 洞穴の外に出て隅の方で剣と盾を構え、動きながら調子を確かめます。躰にどこか鈍さがあって、絶好調とは言い難いものでした。とろいオーク相手ならまず問題はないでしょうが、自分のコンディションに満足できるものではありませんでした。

 

「どうしたでござるか。昨日から元気が無いように見える」

 

 振り返ると、アラサと、その後ろからチェニーがパッと現れ、ニヒヒ! と、小さな少女は僕に笑いかけ、

 

「クッラスト~!」

 

と、飛びついてきました。

 

「わあっ! あ、ああ、うん。大丈夫だよ」

 

 何とか押し倒されずに踏ん張り、頬ずりしたりペロペロ舐めてくるチェニーの頭を撫で返しました。家族と呼べるような存在はペティしかいなかった僕にとって、無邪気な妹が出来たようでとても嬉しかったのですが、躰をすりつけてきて、毛皮越しに伝わってくる胸の感触がそれなりにあって、それが困りものでした。その時、アラサが昨日と言ったことに気付きました。アラサは僕の異変に気付いてたのです。

 

 女丈夫のアラサはベンゼマと同じぐらい上背があって、ブレストプレートのような、でもそれより遙かに自由に躰を動かせる板張りの鎧を纏(まと)い、一本の刀で戦うスタイルを取ってました。素早い身のこなしや刀、肩楯を使ったいなしなどで敵の攻撃を躱したかと思うと、その次の瞬間にはもう反撃が入っているのです。剣の達人と言いましょうか。見ている方が呆気に取られるほどでした。肩幅が広く颯(そう)とした顔立ちや雰囲気がとても格好いい女性でした。

 

 チェニーは狼の毛皮を着ていました。でも彼女はシルバリオですから、それは同族の皮膚を身に付けていることになります。それはどうなんだろう、と、私達からすると考えがちですが、その毛皮は大変勇敢で闘志に溢れた大狼から作ったもので、チェニーはその狼と一人で戦って倒したのです。彼女の一族にとって最も誇らしい物の一つでした。彼女はペティやアスリナンより躰が小さいのですが、爪と牙の鋭さといったら鍛えられた名剣より厄介なぐらいで、またアラサより体力やすばしっこさがあるものですから、本能の塊で暴れ回られると手が付けられないぐらいでした。でも普段は歳相応の天真爛漫な少女で、出し入れ可能な爪牙は本気にならないと伸ばさないので、事故などは起こりませんでしたよ。

 

「チェニー、ちっとあっちへ行っててくれぬか」

 

「やだ!」

 

「後で秘蔵の飴玉をやろう」

 

「行く!」

 

 ドヒュンッと四足で森の中へ駆け入って行くチェニー。向こうでバタバタギャーギャーと鳥達が飛び立つ羽ばたきや鳴き声がしました。

 

「あの男……」

 

 アラサは洞穴の方を見やりました。ベンゼマはまだ中にいて、レスティアとの会話が弾んでいる楽しそうな声が聞こえてきます。

 

「それにレスティアとアスリナン。昨夜、私が見張りに出てしばらくするとバラバラに帰ってきたが、明らかに何かあったようだな」

 

 僕をチラッと見ました。

 

「……二人ともベンゼマが気に入ったみたいです」

 

「……ふむ。……そうか……。……まあ、おぬしにはペティがいる」

 

と、アラサはボクの背中をドンと叩きました。

 

「もしレスティアとアスリナンがこの徒党を離れることになっても、拙者はおぬしについていくからな。まだまだこの地で旅と修行がしたい。チェニーもおそらく同様であろう」

 

「飴玉!?」

 

 また森から駆け出して来た狼少女がアラサに飛びつきました。

 

「こらこら、仕方ないな……もう残り少ないのだから、大切に食べろよ」

 

「んま~!」

 

 黒く光る小さな玉を貰って口に放り投げたチェニーは、頬を膨らませながら歓喜に跳ね回りました。蜜を練って作られたアラサの国伝来の甘いお菓子だそうです。それを見ながらアラサはカラカラと笑い戻って行きました。

 

(ペティすらとも別れたら……)

 

 あの二人はそれでも僕についてきてくれるだろうか、と思った後、僕は首を振りました。

 

 その時になったら、問題はあの二人がついてくるかどうかじゃない。僕が冒険者を続けるかどうかになるだろう、と。

 

 そしてその時はおそらく……間違いなくやってくる。

 

 でもあれこれ考え出したらきりがない。頭をぐちゃぐちゃにせず、何もかも抑え、今は目の前のことに集中しなければ──

 

 そう思いながら、また剣を振り始めました。

 

 ですがそう簡単に割り切れるものではない。つい一昨日降って湧いたばかりで、あんな衝撃的な場面を幾つも見てしまったのですから。まだ若輩の僕にはとてもこんな短時間で整理できない問題でした。

 

 ですからいくら考えようとも、問題を先送りにすることしか思い付かなかったのです。

 

 僕の悶々とした胸のわだかまりはいつまでも消えず、それはオークの根城に潜入してからも、つまりいつまでも燻っていたのです。

 

 

 

 

 

 

 

   5

 

 

 ここまで語り終えると、少年は空になったカップをまたエールで満たし、ちびちびとやり始めた。

 酒場の外はすっかり暗くなり、照明の灯された店内は溢れる酔客でごった返し、陽気な歌がそこかしこで唄われたり、どっと笑いが沸いたり、カップを掲げ乾杯を叫ぶ大声、まさに宴もたけなわといった風情であった。

 その中で、この酒場の片隅だけが別空間になっているかのようであった。

 懐の財布を探って、今まで飲んだ分の代金をカウンターの上に出した私に少年は気付き、「あれ、お帰りですか?」と意外そうに訊いてきた。

 私は激しく頭(かぶり)を振った。

「とんでもない。話はまだ続くのだろう。まだこの席を他の奴に譲る気はないよ。長っ尻になりそうだから、今まで飲んだ分の支払いさ。君の分も含めてね」

 いかつい給仕がその硬貨と空のカップを回収し、私の前にもエールのおかわりを置いた。

「ありがとうございます。とは言え、話もそろそろ終わりに近付いてます。語る部分は少なくもないが、多くもない。この一杯を飲み干すまでに済むでしょう」

「僕としては、仲間を次々と略奪された君が下した結論が気になるね」

「略奪ですか、それは大げさな気も……。いえ、彼女達を軽んじているつもりはありません。僕の大切な仲間でしたし、ベンゼマも許せない奴でした。だけど今までの話に限っては、ペティは別として、レスティアとアスリナンは、確かに僕も好きでしたが、それは仲間としてであって……彼女達の自由恋愛の範疇とも言えることでしたから……。

 ……それに、結論は、自明じゃないですか。ここにいる僕がその結論です……」

「逃げた、ということが結論なのかい?」

「はい……。現実から逃げた。逃げざるを得なかった……。恐ろしく痛ましい現実から…………」

 何度となくした遠い目をする少年。

「僕達はついにオークどもの巣窟へ辿り着きました。ここまで来れば後は醜悪な豚どもをやっつけるだけです。僕は調子が良くないのを隠し、何でもない風に装ってました。実際、気分が悪いだけと言ってしまえばそうでしたし。

 豚退治など簡単にこなせる、早く済ませてペティとじっくり話そう。何もかもケリをつけよう。そう考えながらいつものように先頭に立ちました」

 

 

 

 

 

 

 

   6

 

 

 朝食を済ませた僕達が野営地を出発し、ベンゼマの案内で山奥深くにあるダンジョンに到着したのはまだ日がそう昇っていない、魔物退治を始めるには絶好の時間でした。

 

 中腹に発見した、山の中を掘って作られたらしいダンジョンの入り口には何もいませんでしたが、奥に続く暗闇からは何か不吉な気が漂ってくる感じがしました。ただ、それはダンジョンを眺めた時には必ず感じる不安でした。

 

 盗掘団が壊滅したダンジョンは、大したモンスターは棲息していないという話だったところに、青天の霹靂のように強力な魔族が現れました。ただ、それは運が悪かったか、それとも天罰か──と、僕はベンゼマの横顔を盗み見ました。冒険者になってダンジョンの話をよく聞くようになると、浅い階層に桁外れに強い敵が出てくるのは稀にあるそうで、そういう時は諦めるしかないのだそうです。

 

 なぜ強い敵はダンジョンの奥ばかりにいるのかという不思議をベテランに訊ねた事があるのですが、「人間も偉い奴ほど会い難い場所にいるだろ」と答えられ、何となくなるほどと納得してしまったことがあります。

 

 入り口には見張りも何もいませんでしたが、念のため岩陰に隠れながら中の様子を窺い、確認をしました。

 

「遙か昔、魔族が別荘に作ったらしい迷宮だ。今は打ち棄てられ、何度も盗掘にあって何もない感じだが、最近オークどもがやってきて棲み着いている、というわけだ。中は大体石造りで何階層かに分かれ、意外と広いが、オークどもしかいないから罠もそう張られていないし、警戒も穴だらけだ。だから俺も一人で仲間の所まで辿り着き、一応は脱出させることができた。その後はご覧の通りだがな」

 

 ベンゼマは宿屋の打ち合わせの時のようにそう語りました。

 

「俺が見た限りでは優にニ、三十匹はいた。実力の大したことないパーティーではとても捌き切れる数ではなかった…………」

 

 オークは基本的に少数の群れに分かれていて、これまで僕が見たオークの集団も、多くて十数匹がせいぜいでした。数はいれども大集団を形成しているという話は聞いたことがありません。

 

 ベンゼマは女性陣を見渡して言いました。

 

「オークは女と見れば昂奮して襲いかかってくる。繁殖力が強く、他が殺された分まで性欲衝動に突き動かされるんだ。そして増える。だからあちこちでよく見かけるんだよ。人間やエルフの女の匂いが嗅ぎ分けられる。だから俺の仲間達もあんな目に遭った……。美醜まで判別できるのか、むしろ同族の女より好む始末だし、まるで人間のようなセックスをする。奴らは雑魚と考えられがちだが、腕力や体力自体は人間の女より上だというのを忘れないで欲しい。オークは人間やエルフと交配できるし、今言ったように繁殖力が強いから……君達だって十分注意しなければならないんだぞ」

 

「ベンゼマ、そんな風に言わないで。想像するだけでおぞましい……」

 

 レスティアが少し青ざめた顔をしながら我が身を抱きました。他の皆んなも不安げな顔つきになっていました。

 

「すまない。君達がオークごときに遅れを取らないことは分かってる。だが君達の身を案じてるんだ。俺は昔、弱い魔物しかいないダンジョンと甘く見て死にかけ、今また弱いと侮った魔物にやられて酷い目に遭った。恐怖感を与えたかもしれないが……これで君達も油断がなくなったろう」

 

 確かにペティ達の目から緩みが消えた気がしました。

 

 ベンゼマの話を聞いていたら、僕も何だか彼女達をオークの巣などに入らせたくなくなってきましたが、ここまで来て、「引き返そう」などと言うわけにもいきません。彼女達も冒険者としての覚悟をして来ています。それに、今言われたオークの数よりモンスターの総数が多かったダンジョンをこれまでに何度も制覇してきましたし、その自信を思い出して僕は気を奮い立たせました。

 

 今はプライベートのことなど関係ない──

 

 行こう、と号令をかけ、僕達はダンジョンに潜っていきました。

 

 

 

 ダンジョン内は静かで、石壁が迷路のように続き、たまにある部屋はもぬけの殻でした。

 

「おかしいわ」

 

と、クロスボウをいつでも撃てるよう抱えているペティが呟きました。

 

「奴らの匂いは残ってる。けど姿がないなんて」

 

「一匹も見当たらないというのは変ね。ああ、土壁や未加工だったらノームを喚んで話を聞けるのに。ここでは何も喚べないわ」

 

 レスティアはそう言って重々しい石の壁を撫でました。一応こういう時でもカンテラや水袋から火と水の精霊を召喚できますが、この場所の情報を持ってるわけではありません。

 

「オークというのが女に目がないのであれば、仮の話だが、拙者達が女を連れて行ってしまったから、それを追って出払ってる、という事は?」

 

「それでも全部いなくなるだろうか……? 少しは残っていてもおかしくないと思うが」

 

と、ベンゼマは髭を擦りました。「何にしろ、まだ見てない場所も多い。最深部まで廻ればはっきりするだろう」

 

「うー、くさい。オス豚の臭いばっかり。絶対イッパイいるよ!」

 

 チェニーがしきりに鼻を掻いてました。

 

 普通、ダンジョンのモンスターは思い思いに生きています。そこかしこに散らばり、テリトリーに入る侵入者を殺そうとします。それでなくとも、オークどもはここを根城にしているのですから、それが一階まるまる一匹も姿がないという事態は珍妙でした。

 

 僕も頭を掻きました。何かがおかしい。どこかがおかしい……。そういう気持ちはあるのですが……頭の働きが鈍く、ちっとも閃きませんでした。ペティやベンゼマの様子ばかり気になってしまうのです。この暗くて狭い空間の中、二人が躰を近付けるのを過剰に意識してしまったり……。

 

 頭のどこかで符合しそうな気もするのですが、上手く咬み合わない……。なぞなぞやクイズがあと少しで解けない感覚。そういうのってありますよね。

 

 階段を発見して下に降り、同じように続く迷宮を注意しながら進みました。

 

 先頭は僕の役目です。気分があまり優れないため勘が鈍るのを恐れたんですが、

ダンジョンに入ったらそこだけはいつものように意識が鋭くなり、細かい注意を払えるようになりました。

この時ばかりは盗掘団で徹底的にしごかれた毎日に感謝しなければなりません。

 

 奇妙な違和感や内心の懊悩は解消できませんでしたが……。

 

 階段を発見して下に降り、同じように続く迷宮を注意しながら進みました。

 

 先頭は僕の役目です。正直、気分はあまり優れませんでしたが、ダンジョンに入ったらいつものように意識が鋭くなり、細かい注意を払えるようになりました。この時ばかりは盗掘団で徹底的にしごかれた毎日に感謝しなければなりません。

 

 相変わらず完全に打ち棄てられた廃墟のように、永久の闇と静寂が辺りを包んでいました。淀んだ空気。饐(す)えた匂い。たまにこういった雰囲気がたまらなく好きな人種がいますが、まるで冥府に降りていくような感覚です。これがダンジョンの雰囲気だと言えばそうなのですが、今回はいやに不気味でした。

 

 そんな時です。

 

 もう何個目かわからない空部屋──と思ったその奥に、奇妙な白い物体がある──と、カンテラを向けてすぐにそれが何なのか分かりました。

 

 白い裸体。女性。数人の若い女性が寄り添うようにして奥の壁にうずくまっていたのです。

 

 即座にベンゼマの仲間の女性達の姿が脳裏に浮かび、重なりました。別人でした。しかし状態はまったく同じようでした。

 

 別の犠牲者──僕達は驚いて介抱に当たりました。正確には女性陣が介抱し、僕とベンゼマは入り口を警戒しながら後ろに立っていたのですが。

 

「こんな……オークって本当に最低な生き物ね……。こんなのって、絶対に許せないわ……」

 

 レスティアがそう憤り、他の皆んなも同じ気持ちだという顔をしていました。どうやらその女性達の身に降り懸かっていた惨状は、ベンゼマの仲間の女性達と同じだったようです。

 

 彼女達にはそんな目に遭って欲しくない。そう思わずにはいられませんでした。

 

 ところで、新たに見つかった女性達の後ろに隠されていたように、片腕で抱えられるほどの大きさの年代物らしい丸壺が置かれていました。それどころではないので皆気を払ってなかったのですが、ベンゼマが気付き、「これは何だ?」と、壺に寄って蓋を開けて中を覗き込みました。

 

「粉が入っている、やけに紅(あか)いな」

 

 不注意な行動をすると思っていると、それまでぐったりとしていた女性達がいきなり立ち上がり、その壺に手を突っ込み、粉を掴んで周囲に撒き散らし始めたのです。

 

 それはまるで赤い霧が立ち篭めてゆくようでした。

 

 何をしているのかと皆、呆気に取られましたが、正体も分からないものを吸引するのはまずいと離れました。しかし、その時すでにもう粉は僕のところまで届いていて、全員吸い込んでしまっていたのです。

 

 血を粉末にしたような鉄くさい、そして酸っぱさがある味でした。

 

 皆、口々に止めてと言ったのですが、女性達は何かに取り憑かれたように僕達めがけて粉を撒くのを止めませんでした。あっという間に室内に満ちました。咳き込みながらも強引に取り押さえると、抵抗せずに簡単に静かになりました。

 

「皆んな大丈夫?」

 

 ペティがそう確認すると、皆、大丈夫と口を揃えました。

 

「ぺっぺっ、何ともない。気が狂ってふざけたか……!?」

 

と、ベンゼマはかかった粉を払い落としながら、また大人しくなり寝転がってしまった女性達を睨み付けました。「彼女達は違うの?」とのレスティアの問いに首を振ります。

 

「知らん。……俺の仲間達とはまた別に捕まっていたんだろう」

 

 僧侶がいない僕達のパーティーは薬だけは十分に常備していましたので、念のため解毒薬を飲み、どうしようかという相談になりました。

 

 気がおかしくなっているとはいえ、新たな犠牲者らしい人間を発見したからには見捨てることもできません。これはまた一旦村まで戻った方がいいだろう、ということになりました。

 

 オークどもが出てくる前にダンジョンを抜けることにしました。

 

 女性達は暴れるようなことはせず、ペティ達が渡したマントを羽織って大人しくついてきてくれました。ですがまた何をするか分からないので、どう扱おうかと困ってしまいました。

 

 そうして、階段へ続く一本道の通路を辿っていた時です。

 

「……おかしいわ……」

 

と言ったのはレスティアです。

 

 振り返ると、彼女の力のない表情が目に映り、思いがけない艶色を感じてドキッとしてしまいました。

 

 「あ、あれ……?」と、その隣でぺたんと床に座ったのはペティです。まるで腰が抜けたような感じで、表情もレスティアと同じように緩んでいました。

 

「クラスト、何か躰がだるくはないでござるか」

 

 アラサに言われて、僕もはじめて体の芯に倦怠感のようなものがねばり付いてるのに気付きました。

 

 僕は言われてみて気付いた程度でしたが、皆んな大小様々な症状が出始めていました。

 

 もっとも軽いのは僕とアラサ、チェニー、ベンゼマで、躰にだるさを覚えていました。次いでレスティアとアスリナン、彼女達は頭もぼうっとすると訴え、一番酷いのはペティで、何とか手を借りて立ち上がったものの、目に見えてフラフラとしていました。

 

「きっと、さっきの……粉末よ、これ……なに……躰に……思うように力が入らない……」

 

と、焦点がぼやける目で言うペティを、倒れないようアラサが肩を支えます。

 

「あれは罠だったのか」ベンゼマがすまなそうに顔を歪めます。「すまん、俺が不用意に開けたばかりに」

 

「今さらそんなこと言っても仕方ない。最寄りの──さっきの部屋か、戻ろう。ペティ、レスティア、アスリナン。そこまで我慢して、ありったけの種類の解毒薬を飲むんだ。他の皆んなは症状が軽い、入り口を警戒しよう。彼女達にもだ」

 

 僕は女性達を睨みました。変わらない無表情の奥には、僕達を貶めようとする意思は見て取れませんでした。ですが、心神喪失しているものとばかり思っていましたが、彼女達が何らかの意思で動いたのはほぼ間違いありません。事故とは思い難い状況です。

 

 何かがおかしい──。

 

 僕の知らないところで、静かに歯車が狂い始めている気がしました。

 

 何かが闇に紛れて、見えないところから蝕むように、何かが──背後から短剣を隠して忍び寄ってきているような──

 

 ペティはレスティアとアスリナンに肩を貸してもらい、移動しようとした時です。

 

 チェニーがフーッと尻尾を逆立てて唸り、アラサが通路の闇の奥を眇(すが)めながら、チン、と、鯉口を切りました。

 

 それぞれ正反対の方角へ。

 

 周囲を漂う空気が急速に重く、冷えていく感じがしました。

 

 あの耳障りな息遣いが聞こえてきます。来た方向からも、行く方向からも。

 

 

 そして──闇の中から滲み出てくるように、オークどもが。

 

 

 通路の両方から、十……二十……三十……まだまだいそうでした。

 

 合わせてではありません。

 

「……これは……」

 

 アラサの眉がひそみました。

 

 カンテラの灯りに照らされた奴らは、一匹としてボロ切れ一枚まとっておらず、一匹として手にも何も持っておらず、そして、一匹残らず、股間から突き立ったモノを怒張させていました。

 

 明らかに殺意とは違う意識で目を爛々と輝かせ、ゴフッゴフッと闘争心ではない昂奮に満ちた息をついて。

 

「うう……」

 

 アスリナンが魔法を唱えようとしましたが、はぁはぁと苦しげな息をはいて杖にすがり、今にも倒れそうでした。

 

「なんで……頭が……ぼうっとして……呪文が……」

 

 レスティアは何とかカンテラから火の精霊を喚び出しましたが、アスリナンと同じ様子でした。「だめ……これ以上喚ぶ気力が出ない……お腹が……脚が……」

 

 床に片膝をついたペティが、その姿勢のままクロスボウを撃ちました。

 

 通路に詰まっていたオークの一匹に当たり、豚の悲鳴を上げて斃(たお)れました。

 

 プギイィィィ!

 

 それを合図にしたように、オークどもが口々に鳴き、仲間の死骸を踏み付けてこちらへ殺到してきました。反対側からも。

 

 アラサは稲妻のようにオークの群れへと駆け入っていきました。チェニーも一声吠え猛り、爪牙を最大限に伸ばして逆から来る方へ。

 

「ベンゼマ、アラサの方を頼む! 後衛は壁に寄れ! レスティア、目を狙ってひるませろ! アスリナン、簡単な魔法でもいいから一つずつ使うんだ! ペティ、一発でも多く撃て! 皆んな踏ん張るんだ!」

 

 そう指示しながらも、僕の心の中では恐怖と絶望が渦巻き始めていました。自分が死ぬかもしれないということに対してではありません。それよりももっと恐ろしい事に対してです。こういう状況になると、自分の命など優先的ではなくなるのです。

 

 皆んなの顔にも恐怖が浮かんでいました。

 

 罠の後の一斉襲撃。オークがこんなに知恵が回り、こんな集団行動できるなんて聞いたことありません。

 

 何かがかざした短剣が歯車の隙間に突き立てられ、そこから錆びが生まれ、歯車の歯を蝕んでゆき、ついにはボロボロと崩れ使い物にならなくなっていく──

 

 僕らの歯車は何も力を生み出せなくなり、からからと虚しく回り始めたのです。

 

 アラサに、チェニーに、オークども群がり、何匹か斃(たお)したのが限度で波に没するように豚の肉の海へ姿が消えます。

 

「くうっ! 離せ!」

 

「やあーッ!!」

 

「アラサ! チェニー!」

 

 そう叫んだ僕もたった一人で肉の津波を防ぐことなど出来ず、弾き飛ばされるように押し倒され、次々と肥満体であるオークに踏み付けられました。

 

「ぐほっおぶっぐうぉっへぶっ」

 

 これだけで僕は瀕死の重症を負ってしまったのです。

 

 濁流のように押し寄せるオークどもがペティ、レスティア、アスリナンにも襲いかかり、

 

「いやあ…………ッ!!」

 

「やめてぇー……ッ!!」

 

「触らないで……!」

 

 彼女達の必死の声は、オークどものたるんだ肉に吸い込まれてほとんど響きませんでした。

 

 何度も踏まれて床に打ち付けられグラグラと割れそうな頭の中に、彼女達の悲鳴が届きました。ベンゼマの言葉が蘇りました。彼の仲間や先程の女性達のむごい姿を思い出しました。

 

 オークは人間やエルフと交配でき、同族の女より好む。まるで人間のようなセックスをする。そして繁殖力が強いから──

 

(みんな………………!!!!)

 

 ビリビリと布を裂く音。続く悲鳴。霞む視界に、奴らの足の隙間から、ペティ達が無数のオークに服を引き裂かれながら床へ押し倒され、スカートを剥がれて脚を拡げられ、ショーツにも手が掛けられるのが見えました。

 

(やめ────!!)

 

 願う間もあらばこそ──

 

 ビリィッ! と、高い音を立てて、力任せにちぎられたショーツの残骸が散らばり、いともあっけなく彼女達の秘裂がオークどもの目の前にさらけ出されました。

 

 わずかたりとも閉じさせてもらえることなどなく、むしろ開かれてゆくばかりの太股。

 

 その付け根へ、三人の秘裂の中心へ、はちきれんばかりに怒張し、先走り汁を溢れさせたオークのペニスがあてがわれたのです。僕より遙かに長く反り返ったペニス。ベンゼマのを少し細くしたぐらいでした。ペティ達のヴァギナの奥まで届きそうなペニス……!

 

 三人並べて。三者三様の秘裂に、微妙に大きさと形の違うオークのペニスが。

 

「ヒイィ……ヒイィイ……!」

 

「やめなさい! やめなさいってば……!」

 

「やめてぇー……! オークの仔なんて、産みたくないぃ……!!」

 

 三人の泣訴など何処吹く風に、荒い鼻息をつくままに狙いを定めたオークどもは、先端をクレバスの中に埋(うず)め、位置を探るようにして──

 

 そして────

 

 

 

「「「「「ン"ア"ア"ア"ア"ッ"ッ"ッ"ッ"ッ"!!!!!!!!!!」」」」」

 

 

 

 ────五つの絶叫が────上がりました────。

 

 わずかに動く頭をずらして見ると、アラサとチェニーも服や鎧をボロボロにされ、前後二匹の立ったオークに挟み抱えられるようにして、ヴァギナとアナルを二穴同時に貫かれていたのです。チェニーの毛皮もアラサの鎧も、無残に裂かれて棄てられていました。

 

 そして目を戻すと、レスティア、アスリナン──ペティも……!

 

 オークどもに貫かれ、泣き狂いながら、腰を振り立てられていました。奴らが引き抜く度に結合部が見え、オークのペニスがしっかりと彼女達の中を往来していることが分かりました。いきなり挿入されたため、アスリナンからは血すら出ていました。

 

(ああ…………………………)

 

 僕は頭から足の先まで熱く、どの部位でも少しでも動かすと全身が悶えるような激痛が走りました。口中や鼻の奥にねっとり生温かいものを感じます。意識が遠のいていきます。躰が動きません。オークどもももはや、誰も僕になど関心を抱いていませんでした。

 

 一番手の報奨を得て腰を振るオークどもが、周りで見ているオークどもが、口々に昂奮にまみれた鳴き声を張り上げます。涎を撒き散らします。

 

 泣き悶えるペティ達のヴァギナを容赦なく責め立てるオークどものペニスは、ますますいきり立ち、彼女達の内奥を盛んに掻き回します。

 

 

 悪夢。

 

 この光景を言い表すならば、ただ、それだけしかありませんでした。

 

 

 五人が泣き叫んでいました。苦しみに身悶えていました。絶叫を上げていました。ですが何匹いるかすら分からないオークどもに身動き一つできないほど取り押さえられ、股を広げられ、何もできずに、ただただ、オークの怒張を、長さだけはあるペニスを突き入れられていました。

 

「痛い、痛い、抜いて、抜いてぇ…………!!」

 

「ひぎっ、あぐぅ……んがっ、んあぁ、あぐぅぅ……!」

 

 五人の若い肢体が下等な魔物にのしかかられ、密着され、生殖器と生殖器を奥深くまで繋ぎ合わされて、その拷問のような刺激に仰け反っていました。

 

 そうするうちに早くも、五人の中に侵入しているオークどもが、ひときわ高い鳴き声を上げ、激しい抽送に変わり始めました。

 

「やだぁ……やだあぁ……! ださないで……ださないでぇ……! オークの赤ちゃんなんてやだあああ……! 助けてクラスト……ベンゼマァ……!」

 

 ペティの悲痛な叫び声が聞こえ、僕は這いずって躰を動かしました。

 

 奴らが群がっている中へ割り込もうとしましたが、林立するオークの足、足、足。一本すら退ける力が出ませんでした。

 

「ペ…………ティ…………!!」

 

 流血で赤く染まる僕の視界にもはっきりと見えました。

 

 ペティ、レスティア、アスリナンにのしかかるオークどもが。

 

 アラサ、チェニーを突き上げるオークどもが。

 

 昂奮の限りに愉しんだ豚どもの腰の動きが最大限に小刻みになり、彼女達の悲鳴も限界まで達し、そして、オークどもの下半身が張り詰め、痺れたように止まって────!

 

 

 プギップギイイィイィィィッッ!!!!!!!!!!

 

 

 奴らの快感の極地に達した鳴き声がダンジョンに反響しました。

 

 悪魔の励声。

 

「やだあああああああああ…………!!!!」

 

「いやっ……あっ……あああああああ………………!!!!」

 

「ひっ……ひいっ……ひいぃ…………!!!!」

 

 五人の絶望と苦悶の叫びが、それに混ざりました──

 

 ベンゼマの時に見たように、何度も何度もオークの腰がグッグッと突き押されて。その一回一回の度に、オークのザーメンが彼女達の胎内に噴き出しているのだとわかりました。長いオークのペニスがペティ達の膣深くまで達し、濃厚なオークの精子を彼女達の子宮に叩き付けているのです。旺盛な繁殖力に漲るオークの子種が…………!!

 

「あ…………あぁ……ああぁ………………」

 

 呆然としたペティの声────

 

 射精を終えたオークどもは、最後に気持ち好かったと言わんばかりにひと鳴きすると、その身を離しました。

 

 ぬ"るんとペニスを抜かれたペティ達のヴァギナは、少し肉孔が広がっていましたが、その中から垂れ流れてくるザーメンの量はほんの少しでした。ほとんどは奥に溜まってしまったのです。

 

 次のオークどもが同じ位置に陣取り、ペニスをそこへあてがいます。

 

「もうやだ……おねがい、もう──いやあああぁ……!!」

 

 誰もがもう止めてと願い、誰もが願いを叶えられず。

 

 またオークどもが彼女達の中に入り、激しく動き出しました。

 

「あああぁぁぁ…………!!!!」

 

 脚を閉じることも出来ず、おぞましい豚人間にヴァギナを掻き回され、狂ったように泣き叫ぶ少女達──

 

 その声を聞きながら、僕の意識は今度こそ闇の中に遠ざかっていきました。

 

 ごめん、と、心の中でつぶやきながら────

 

 

 

(つづく?)

 

 

 

 

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最終更新:2020年02月23日 17:22