『冒険者で寝取られ』 中編1

 

 

 

 

 

 

 

   1

 

 

 少年とは幼い頃から常に共にいて強い絆のある少女と、思わぬ再会を果たした盗掘団の首領が、肉体関係を持っていた──

 それは、話を聞いていた私からしても唐突で、衝撃的な出来事であった。その現場を偶然目撃してしまった少年の心情が如何ばかりだったかは察するに余りある。

 だが、驚きと同情が入り交じった気持ちを覚えながらも、私は狐につままれたような感も拭えなかった。

 将来を誓った相手が、じつは別に恋人や愛人がいた、などという話は、世間ではよくあることだ。世の中は美しい倫理観で満ち溢れているわけではない。各地の世俗を見聞している身から言わせてもらえば、どちらかというと神もお嘆きになる乏しさであろう。

 しかし生きることに精一杯な生活をしながら寄り添い支え合ってきた人間とくればどうだろうか。そのような人間がこんな背徳行為をするのだろうか? 血を分けた肉親にも劣らない絆は、そんな簡単にほつれてしまうものなのだろうか?

 それまでの話の中身を思い出す限りは、このペティという少女もパーティーを支えるなど誠実な面があり、少年を裏切っている印象はない。だからこその唐突感もある。

 判断するにはまだ少し材料が足りないと私は思った。

 そう考え、気に掛かるところ──情事中の少女の様子やベンゼマという男が喋った幾つかの言葉、そういった部分から導き出される予想を訊ねることにした。

「逢瀬のやり取りを聞いてると、どうも、その……君が常に行動を共にしていたペティという少女は……実際は、盗掘団にいた時代から、そのベンゼマという男と……すでに関係があったのでは?」

「……はい。結論から言うと、そうでした……」

 クラストは沈痛な面持ちで独白を続けた。

 

 

 

 

 

 

   2

 

 

 盗掘団には何人か女盗賊がいました。当時の僕はそういったことにまったく疎く、知りもしなかったんですが、彼女達はベンゼマや幹部の情婦みたいなものだったんです。やはりベンゼマはかなりの女好きだったんです。僕は彼女達もこの稼業の先輩だとばかり思ってましたが、確かに後から考えてみれば、ダンジョンに潜る時も彼女達は留守番や外の見張りを任されることが多く、仕事中に何か役立ったところを見たことはほとんどありませんでした。

 

 盗掘団が壊滅する一年ほど前のことです。ペティが十二になったばかりの頃、ベンゼマに呼ばれてこう言われたそうです。

 

「罠避けの仕事はもうクラスト一人でも十分だ。あいつには才能がある。だがそうするとお前はどうするな? 無駄飯食らいは居させられねえって、お前を女衒(ぜげん)に売り飛ばすか、他の団員に回すかって話が持ち上がってるんだ。お前がもう女になってることは聞いてる。お前に興味がある奴もいるんだよ」

 

 絶望に暮れるペティに近付き、ベンゼマは小さな肩を抱き寄せて言葉を続けました。

 

「ペティ、ここがお前の人生の分かれ道だ。俺としてはお前を守りたいし、クラストとずっと一緒にいさせてもやりたい。だがろくな仕事もねえ奴を理由もなく置いといたら、頭領の俺が突き上げをくらっちまうんだ。物騒な連中は何をしでかすかわからねえ。場合によっちゃ、見せしめにお前の片割れであるクラストの方を狙うかもしれねえぞ。解決できる道は一つしかねえ」

 

 ──なんとなく想像が付くでしょう? ええ、そうです。

 

 ペティは、その時点で、ベンゼマの情婦の一人にされたんです。

 

(十二歳の情婦か、と、心の中で無常を感じながら、君はそれに気付かなかったのかい? と訊くと、はい、と、悔しそうに返事をした)

 

 ペティが僕には黙っていてくれと頼んだそうです。だから僕だけが知りませんでした。それまでも頭領であるベンゼマの身の回りの世話はペティの役目でしたし、彼女がベンゼマの傍にいるのは自然なことだったんです。僕の日常は何も変わらなかった。

 

 盗掘団では立場に応じて部屋が割り当てられてました。僕らは納屋や馬小屋でしたが、頭領はアジトでも宿屋でも個室です。そこに引っ込んで人を遠ざけてしまえば、中で何をしているかなんて誰も分からないんです。

 

 まだ子供だった僕には想像もつかなかった。帰ってきても仕事を与えられて、大人達の顔色を窺うのにも忙しく、気にする暇もなかったのです。疑惑の欠片すら抱くことはありませんでした。

 

 でも、僕が雑用や日課の練習をしている間、ペティは……。

 

 

 ……彼女は、ベンゼマとベッドを共にしていたんです。

 

 

 彼とセックスしてた──いや、というより、調教……か。

 

 

 (フッと遠い目をして自嘲気味に笑う)

 

 十二です。当時のペティは、やっと大人の入り口に立っただけで、男を喜ばせるほどのからだつきをしているとは、お世辞にも言えませんでした。趣味が趣味な奴なら喜ぶかも知れませんが。あの頃はまだ胸も膨らみかけでした。

 

 ああ、でもベンゼマは、食事だけは満足に与えてくれてたか。おかげで孤児の時に辛かったひもじさとは無縁になって、ペティも血色が良くなって、街の子と変わらないぐらいにはなってたっけ。引ったくりをしてた頃は頬もこけてたけど、そういう痩せ方をした部分がペティの躰から消えて嬉しかった記憶があります。

 

 それでもまだ躰の細いペティを、でも、ベンゼマは決して乱暴にはせず、優しく扱ってくれたそうです。

 

(少女嗜好があったのかという私の問いに)

 

 そうかもしれません。間口が広いというか、そこまで含めて女好きだったような気がします。ただ、ペティに関しては、先程も言った通り、調教──未成熟な女の子を開発していく、というところに愉しみを見出していた感があります。だから無理をしなかった。無理はしなかったけど、ペニスだけはしっかりと受け入れられるように、上の口、下の口、そこだけは丹念に時間がかけられて…………。

 

 女の扱いに長けたベンゼマに、時には他の情婦も混じえて、それこそ何時間、何ヶ月もかけられて………………。

 

 ……………………。

 

 おかげで、まだ十ニのペティが、半年も経った頃には。ペニスの抜き差しがすっかり心地好くなり、おしゃぶりも上手くなっていたそうです。大人の激しさを受け止めるのはまだ無理だったようですが、それでもセックスというのは成立してしまうんですね。回り道をしているようで、実は、一番の近道だったんです。

 

 そのさらに数ヶ月後には、初めてのオルガスムスも覚えてしまって……。

 

 男と女のこと。そのひと通りを、ペティはベンゼマに教え込まれていったんです……。

 

 

 ペティはどんどん生まれ変わっていったそうです。まだ十二歳とは思えないほどのスピードでいやらしさを覚えていって。細い腰をがっしり掴まれてグッグッとペニスを押し込まれても感じてしまうぐらいに。脈打つペニスが吐き出すザーメンの温かさがわかってしまうぐらいに。口内で出されてもコクコクと飲み干せるぐらいに……。

 

 僕がたまに暇をみつけて外でボケッとしながら、ペティと遊びたいなあと思っていた時、壁の向こうにあるベッドの中で、ペティはベンゼマと汗だくになりながら、ひと足先に大人になっていたんです。彼のモノをしゃぶり、しゃぶったモノを出し入れされ、まだ幼さが残る肢体を開発されて、感じてしまって大人の女が出すような声を上げて……。

 

 彼はいやらしい悪戯を度々しました。大抵は宝箱の罠解除の練習でしたが、適当な用事を言い付けられて隣室に呼ばれるんです。僕はこの壁の向こうに今、ペティがいるんだなあと思いながら箱をいじくっている。でもそのすぐ向こう側では、恍惚となったペティが愛液を垂らしながら、ベンゼマによって弄られていたんです。彼と肌を重ね、いつもより執拗に責められる気持ち好さに蕩けた声を上げていたそうです。

 

 その頃はもう、子宮の入り口付近にピットリと亀頭をくっつけられながらベンゼマのザーメン噴射を直接子宮に叩きつけられるのが、そうされてる自覚はなかったけれど、ペティは癖になるほど気持ち好かったそうです。さんざん掻き回された後、ベンゼマのペニスを小さなヴァギナいっぱいに感じ、脈動して熱いものがお腹の奥に広がるのが、頭が真っ白になるほど気持ち好くて、手足の先まで痺れて仕方なかったと言っています。

 

 僕からほんの一、二メートルのところで、ペティはそんな風に夢心地になりながら、柔らかくほぐされた幼い秘肉でベンゼマのペニスを懸命に包み込んで、濃厚なザーメンをまだちっちゃな子宮にドクドクと注がれていました。

 

 彼女にも隣に僕がいることは教えられてた。僕達は壁一枚隔てて意識し合っていたんです。でも、ペティは僕を意識しながらもベンゼマのものになっていたんです。弱いところを丹念に責められて、ベンゼマの熱くて固いペニスで彼女に合ったペースでぐぽぐぽされては、調教されたからだは発情を抑えられず、僕がいる気配を壁向こうに微かに感じながらも、それ以上にベンゼマのペニスを感じまくり、彼と一緒にイキまくり、お腹の中は子宮まで火照って、中出しされる心地に酔い痴れていたんです。

 

 

 ペティという宝箱は何もかも剥ぎ取られてすっかり解錠され、蓋が開ききって。

 

 中のお宝を余すところなくベンゼマにいただかれてしまっていたんです……。

 

 

 僕が隣にいると分かりきった上で、ベンゼマは気持ち好いか、俺の子を孕みたい気分か、と問い、十二歳の口から、すごい気持ち好いの、あなたの赤ちゃん孕んじゃってもいい──と、快楽に突き動かされた言葉を涎まみれで。でも嘘でない証拠に、ペティのヴァギナはさらに熱く火照ってベンゼマを締め付けました。子宮にピットリとペニスの先端を当てられて熱いものをぶちまけられると、つま先立ちにまでなって下半身をひきつらせながら、ベンゼマのペニスをキュウキュウと搾り上げ、自分から腰を押し付けてベンゼマのザーメンを飲んでいたのです。僕がいることを知りつつ、彼のザーメンを少しでも逃すまいと、ペティの本能はそれを最優先したのです。十二歳の子がですよ。火照って膨らんだ子宮にベンゼマのザーメンが満たされていって。ベンゼマもそんな彼女にしっかりと突き入れて注ぎ込み、その瞬間だけは、二人は何もかも忘れて完全に一つとなっていました。ペティは僕そっちのけでベンゼマだけを感じ、彼と一つに溶け合っていました。アジトは厚い石壁の造りだったので、盗賊の耳でも隣の部屋の物音はほとんど聞こえませんでした。

 

 盗掘団には幌馬車が一台あって、そこに荷物やら女性やらが詰め込まれて移動しました。僕はその後ろから徒歩で付いていってたんですが、幌の幕が降りている時は、ああ、女の人達は休んでいるのか、ペティもあそこに加われるようになっていいなあ、などと考えていたのですが、そこはベンゼマ達が乳繰り合う場でもありました。当然、ペティもベンゼマとセックスしていたんです。他の情婦や幹部にニヤニヤと環視される中、恥ずかしい所を大開きにされながらベンゼマと繋がり、ガタガタ揺れる轍の振動だけでイッてしまったり。彼女の方からも求めさせられて、ベンゼマの上で腰を振ったり。野営時もペティは馬車の中で寝ることを許されてましたから、夜もベンゼマのペニスを抜き差しされて恍惚となりながら腰を振り続け、何遍も熱いザーメンを注がれていたんでしょうね。

 

 まだ成長しきってないヴァギナが愛液に濡れて熱くほぐれ、ベンゼマのペニスを滑らかに受け入れ、性的昂奮を覚えて、中出しされ、絶頂を迎えて。それが幾度も繰り返され。

 

 可愛らしい顔に恍惚の表情を浮かべて。

 

 ベンゼマの腕の中で女になって……!

 

 ペティの初めての恋人はベンゼマだったんです。僕よりベンゼマの方がペティと深く付き合うようになってたんです。

 

 ただ、ペティの気持ちは常に僕にあったということですけれども……どんなにベンゼマに好い気持ちにさせられ、アソコを濡らしまくって昂奮で頭が真っ白になりながら一緒に昇り詰めようとも、ね……(と、目を落としながらまた自嘲的に笑む)。

 

 その当時から、ベンゼマは躊躇うことなくザーメンをペティの中に注いでいました。

 

(傍目にはそれだけやっているなら妊娠してバレるんじゃないかと思ってしまうけど、と言うと、)

 

 ああ、その答えは簡単です。

 

 種なしだったんです。ベンゼマは。

 

(なるほど。あっけないがそういう事だったのか、と、私は得心した)

 

 僕がそれを知ったのはだいぶ後で、それまではもう、ベンゼマは種付けることも目的に入れて、慾望のままに中出ししていたのだとばかり思ってました。だから先ほどの話の中でも、そんな風に言ったんです。

 

 ただ……ベンゼマは分かっててやってたと思うんです。中出しは男にとって気持ち好いものですし、女にとっても気持ち好いものらしい。

 

 理性の板子一枚下は本能です。沈んでしまったら本能には逆らえない。ベンゼマは女たらしとして、女の本能の揺さぶり方を熟知していたんでしょう。彼は並の健常男子よりよっぽどザーメンを武器にしていた。

 

(子作りは快楽によってなされる、ならば子作りが快楽を呼ぶこともまた然り……)

 

 だと思います。ベンゼマによってペティは女にされ、そこからさらに女にされていった……。

 

 ベンゼマは確かに、ある意味、ペティを守りました。彼のものになれば他の連中もペティを手篭めにはできませんし、望まぬ妊娠もない。今さらもしも、などとは意味ないことですが、もしベンゼマがペティに興味を示さなかったら、ペティは今頃──

 

(言いかけた言葉を止め、クラストは黙ってしまった。頭を振った。間があり、やはり今さらとなっては詮無いことです、と、消え入るように呟いた)

 

 ベンゼマはペティを守る、という口実代わりに、青い果実を楽しんだ。僕という存在がある青い果実を。自分の手で早期熟成させ、食べられるようにして。

 

 彼の腕の中で僕のことなど忘れ、ヴァギナいっぱいに彼のペニスを迎えて昇り詰めてゆくペティを見るのが何より愉しかったそうです。

 

 段々とセックスに慣れ、まだ稚(おさな)いからだで彼のペニスをすっかり受け入れ、その快楽に浸(ひた)ってゆくペティの調教が愉しかったそうです。

 

 ぺティは……ペティもまた、自分を守るのに必死だったのではないかと思います。僕はまだ子供で頼りになりませんでした。ベンゼマに取りすがらなければもっと悲惨な運命が待っています。未熟な少女を淫らにしてゆくための仕組まれた優しさであっても、それだけがペティに用意された存在意義であり、唯一の寄る辺になってしまったのです。ペティはベンゼマを受け入れるしかなかったのです。

 

 だけど、この時、もし僕がペティを救ってあげられたら──と思います。なぜ僕に相談しなかったのかと思います。そしたらあんなところからは抜け出して、またどこかの街の孤児グループにでも入れてもらって、いやどこかの農場でも何でも、食うや食わずやの生活でもいいから、ペティと一緒に暮らせていたら…………。

 

 ……はは、これも詮無いことですね……。

 

 それでも僕は今でも考えます。ペティが苦しい素振り一つ見せなかったのは、僕が気付いてやれなかっただけのことなのか。それとも、情事の時に与えられる優しさで和らぐ程度のことだったのか。ベンゼマと彼女の関係、ベンゼマとセックスする日々は、彼女にとって許容できる範囲のことだったのか。彼女にとって彼は、本当はどんな存在だったのか。ベンゼマをどこまで受け入れていたのか……。

 

 

 

 

 

 

   3

 

 

 目を座らせて淡々と語る少年は、そこはかとない怖さがあった。

「……ひとつ気になるのは、君に対するペティの気持ちだね。君と彼女の関係は偽りだったのかい? 孤児だった頃からの仲など、そうそう切れる縁ではないと思うのだが。それとも、ベンゼマの調教で人が変わってしまった?」

 クラストはわずかに首を振った。

「冒険者になってからも、僕とペティはとても良い仲でした。いい意味で人が変わったようにペティは甲斐甲斐しく働きました。それは誓って本当です。ベンゼマが再び現れてから狂ったのです。

 彼女の気持ちは変わらずにずっと僕にあった、そうペティが言った時、その目は、嘘ではない……と、僕は思えました…………」

「だが、再会してすぐ関係が戻ったというのは……」

「美しい娘に育っているペティを見て慾望が首をもたげたベンゼマは、村に引き返えしていた晩に、見張りをしていたペティに迫ったんです。旧交を温めよう、と。ペティはもう昔とは違う、僕と将来を誓い合った仲になっているのと言って拒みました。ですがそれを逆手に取って、僕に昔の関係をバラしていいのかとベンゼマは脅したのです」

「そういうことか……」

「それに、ベンゼマがペティを抱きすくめてそのからだに手を這い回すと、思ったより反応が良く、熱くなっていくことに彼は気付きました。その頃、彼女は僕とペッティングまでするようになっていて、それまで抑え込んでいた情欲がからだを疼かせ始めていたのです。

 彼に仕込まれたペティのからだが若い性欲を持て余している、そう勘づいたベンゼマは、なぜだ、そうか、と、すぐに察しました。僕とペティがまだ完全な肉体関係まで至ってないのだ──と。その理由はおそらく妊娠に対する不安だろうと。

 セックスに慣れた十代の娘なんて、世間ではかなり積極的だそうですね。まあ十代も半ばを過ぎれば結婚していてもおかしくない年齢ですし。

 その上、健康的に正しい帰結として、冒険で培った体力が性欲を増進させる。

 

 生殺しはペティも同じだったのです。

 

 そんな状態で何かの拍子にスイッチが入ってしまったら、からだの疼きが悶々としたものを呼んでもおかしくありません。

 彼は狡猾でした。ここで名目を掲げました。

 これは単なる性欲処理だと考えればいいと、ペティに囁いたのです。

 僕としてしまえば勢いで一線を越え、子供が出来てしまうかもしれない。その点、種なしのベンゼマとならいくら歯止めを失っても孕みはしない。以前のように秘密にすれば僕との関係も崩れることはない。

『俺は約束を守る男だ。クラストはついに俺達の関係を知ることはなかった。そして、ペティ、お前とも躰だけの関係に留め、クラストと一緒にいさせてやったじゃないか──』

 ゆるやかな愛撫を続けながら、滔々とそんな理屈を彼女の耳元で述べたのです。

 クラストとはしたくてもできないんだろう。なら俺が代わりにその欲求不満を解消してやる。この世で唯一、お前にそうできるのは俺だけだ。俺と過ごした時間、ペティ、お前はリラックスしていた。ベッドの中では恋人だったじゃないか。自分からしっかり腰をくっつけて大人顔負けの表情で俺の射精を受け止めていたお前を、俺はいまだに覚えているぞ。さあ、あの続きをしようじゃないか。多少声を出しても届かぬぐらいの所まで行こう。そこを俺達の愛の巣にして、またあの甘いひと時を過ごそう。同意するならこの手を拒むな──

 

 

 そう言われて、ペティは……ああ、僕のペティ…………

 

 

 彼女は…………ベンゼマの手を…………

 はね除けませんでした………………。

 

 

 ベンゼマにしっかりと抱かれ、隷(したが)うように、彼と共にペティは森の中へ入っていったのです…………」

 

 

 

 

 

 

   4

 

 

 声の届かない場所といっても、寝ている僕達からそう離れていない樹下で、ベンゼマに言われせればその場限りという、ベンゼマとペティの愛の営みが始まったんです。

 

 ベンゼマはまずペティを脱がし、そのからだをじっくりと愛撫していきました。

 

 ペティはしきりにくねりながら熱い吐息を漏らしました。

 

 ベンゼマはペティのからだを熟知していましたから……辺りが真っ暗でも関係ありません。覚えているのは指や舌です。彼の指の動かし方は、舌の使い方は……すぐにペティをたまらない気持ちにさせていったのです。

 

「あぁ……あ、だめ、そこ……あぁ……♥!」

 

「フフ……腰も、胸も、アソコも……順調に育っているじゃないか。弱いところも変わっていない。嬉しいぞペティ、また俺の愛撫を感じてくれて」

 

「ああ……♥!」

 

 十分ほど弄っただけで、ペティの乳首はプックリと膨らみ、ベンゼマの指や口の周りはびしょ濡れになりました。ヴァギナに指が根元まで入ってしまうまでになっていました。指の抜き差しに合わせてペティの腰は自然に揺れ、鼻にかかった声が絶えず漏れていたのです。

 

「たまらなくなってきたかペティ。そろそろ俺のコレが欲しくなってきたんじゃないのか」

 

と、ベンゼマも裸になり、隆起したペニスをしごいてペティに見せつけます。

 

 その頃にはもうお互い闇に目が慣れていましたから、ペティは胸を大きく上下させながら、潤んだ瞳でそれを見つめました。

 

「さあ、孕む心配もないんだ。迎える準備はいいな」

 

「はぁ……あぁ……!」

 

 ベンゼマはペティの片脚を持ち上げ、先端をヴァギナの入り口にあてがい、クレバスをほじるようにして亀頭を上下に動かします。

 

「おぉ……久々のペティの熱いヴァギナだ……何年ぶりだろうな……? たっぷりと味わわせて貰うからな。お前も俺のペニスを存分に味わうんだ。……いいな?」

 

 涙を溜めたペティがコクンと頷くと。

 

 ペティの中にベンゼマがズブズブと柔らかく入ってゆき、二人は数年の時を越えて再び一つになったのです。

 

 ペティの唇から切なさに満ちた吐息が上がりました。

 

 

 久しぶりのベンゼマのペニスを迎えたペティは……自分でも信じられないほど乱れてしまったそうです。以前よりも気持ち好くなっていることに気付いたのですが、からだの奥から湧き上がる肉悦に負けて、やめたくてもやめられなかった。

 

 最初はゆっくりだったのが、すぐに数年前とは比べものにならないほど激しくなって、でもそれが気持ち好くってペティは喘ぎまくりました。ベンゼマもペティの締まる蜜孔をひたすら突き擦りました。

 

 二日目の晩と同じです。

 

 ペティは自分でも信じられないぐらい昂奮を覚え、ヴァギナを締め付け、なんとベンゼマより早くイッてしまいました。

 

 強くうねり搾ってくるヴァギナの感触でベンゼマもそれに気付きました。

 

「なんだペティ、もうイッてしまったのか」

 

「あッ……あぁ……♥!」

 

 あまりの気持ち好さにペティは涙を流しています。

 

「まだまだやれそうだな」

 

 今度はバックの姿勢にされ、再びベンゼマの突き入れが始まります。奥まで押し寄せる逞しいペニスに、ペティは急速にいけない気持ちになっていくのを抑えられませんでした。合わせるように腰を動かしてしまうのをとめられませんでした。

 

 真っ暗な森で二人は熱く絡み合いました。言葉はなくとも躰が雄弁に語っていました。ペティのヴァギナは何年か振りの挿入とは思えないほどスムーズにベンゼマのペニスを迎え入れ、愛液が内股を幾筋も伝うぐらい溢れ出ていました。ペティはベンゼマのペニスに痺れきってました。

 

 段々とベンゼマの動きが早くなっていきました。

 

「イクぞペティ、またお前の中に出してやるからな、たっぷりと俺のザーメンを出してやるからな! しっかりと味わうんだ!」

 

 そう言うと共に、ベンゼマはグッと押し上げるようにひときわ深く突き入れたのです。

 

「ンアッ──ンンァ──ッ♥♥!!!!」

 

と、乱れた声を出しながら、以前より濃い絶頂感に包まれ、ペティはベンゼマと一緒にイッてしまいました。

 

 どくどく、どくどく、と、ベンゼマの射精の勁(つよ)い脈動をひどく感じてしまいました。

 

 それは懐かしさすら覚えてしまう鼓動と熱気でした。

 

 ──事が終わり、一旦はペティから離れたベンゼマですが、オルガスムスが抜けきらずぐったりしているペティを彼は抱き寄せ、もっとしないか、と、その耳元で囁きました。

 

 同じです。快楽にぬかるむ頭で、ペティは了承してしまいました。

 

 ベンゼマとペティのからだの相性は、すっかり合ってしまっていたんです。

 

 それからベンゼマは体位を変えながら立て続けに三回もペティの中で果て、子種がないとは思えないほどしっかりとペティの子宮に熱いザーメンを浴びせかけました。ペティのヴァギナは嬉々としてうねり、負けないぐらい熱く火照ってベンゼマを迎えたのです。

 

 理性が剥げ、むき出しになった本能で、ペティもベンゼマを求めました。ベンゼマのペニスでヴァギナを擦られるのがたまらなく、ベンゼマのザーメン放出を心地好く感じてしまいました。頭が真っ白になって、僕達に聞こえてしまうのではないかというほどの声を出してしまったそうです。

 

 その時まだ、僕はペティの胸までしか触ったことがありませんでした。

 

 結婚を誓い合った僕がまだ入り口の形すら知らないというのに。そこまで見たことも触れたもなかったというのに。

 

 ペティのヴァギナはあっという間に、奥の奥まで、その日再会したばかりのベンゼマのものとなってしまったのです。

 

 ベンゼマのペニスとザーメンの味を覚えていたヴァギナは、再びその味に酔い痴れてしまったのです。

 

 戦いが終わって、三十分ほど繋がったまま休んでいると、ベンゼマが復活し、最後にもう一回ということになって、またペティの中を往来し始めました。

 

 ペティは、「あぁ、だめ、もうこれ以上は……!」と頭(かぶり)を振ったそうですが、全身の力が抜けていて、奥を突かれる心地好さに、もう下半身は動きを合わせ始めていました。

 

 ベンゼマはペティの肉の締まりをじっくりと堪能するように、忙しさを抑えて抜き差しし、女性にとってはそちらの方がたまらないものですから、ペティはまた乱れていってしまいました。

 

 そして、

 

「ペティ、今この瞬間だけは、お前は俺のものだ。俺のザーメンに子種が詰まってると思って受け取ってくれ」

 

 そう言いながら、ベンゼマは子作りの本能に付き従うように、最後は今まで以上の求め方でペティの中を往来し、限界が来ると深々と突き刺して、膣奥射精したのです。今までで一番勢いのいいザーメンをぶちまけたのです。

 

 ペティは涙をこぼしながらギュウギュウと入り口までヴァギナを締め付け、何度も絶頂を味わう中でベンゼマのザーメンを受け取りました。

 

 射精が尽き、オルガスムスが引いても、二人はまたずっと繋がっていて…………

 

 昂ぶっていた気が落ち着いてきて、二人だけの旧交を温める言葉を交わしているうちに、ベンゼマが三たび回復し、最後だと言っていたのにまたゆっくりと動き出して。

 

 ──でも、ペティも完全に女の声になってました。

 

 ザーメンとアクメの余韻にまみれてグチャグチャになったペティの雌肉を貪るベンゼマ。声もからだも蕩けさせて悦びに包まれ、ヴァギナだけは強く締め付けるペティ。

 

「どうだペティ、俺のペニスは最高だろう」

 

「なんで──こんな──アァ──ッ♥♥!」

 

「フ、まだ素直には答えないか。だがお前のヴァギナも最高だぞ、こんなに男のエキスを搾り取るようになりやがって。本当にクラストの奴とはやってないんだろうな? まったく信じられん」

 

「あなただけよ……私はあなたしか……! クラストともまだ……こんなコトしてないのに……ああっ……♥!」

 

 ベンゼマはニヤリと笑いました。

 

「なんだ、入れさせすらしてないのか?」

 

「だって、子供が出来たら……んんっ……冒険できなくなっちゃう……♥」

 

「ふん……なら、俺とお前が再会したのは偶然じゃないかも知れんな、ペティ。いずれクラストの種を迎えるまで、俺がお前をもっといい女にしてやるよ。アイツとその時が来るまで、俺のペニスとザーメンをたっぷり味わえばいい。女らしく育ってからアイツに種付けられれば、何人でも元気な子供を孕めるってモンだろうよ。それはクラストのためにもなるじゃねえか」

 

「そんな……んっ……あっ……あぁ……♥!」

 

 もう何度となく放っているのにベンゼマのピストンの勢いは精力さを取り戻し、ペティは甘く身悶え、仰け反りました。

 

 そうしてベンゼマがペティの体奥でまたドクドクと精を放った時には、ペティはだらしなく惚けた顔をベンゼマに見つめられながら、全身の肌が触れるだけでイッてしまうほどピリピリと痺れきった状態で、その熱い迸りを受け止めたのです。

 

「じゃあな、ペティ。時間があれば、明日からもまたな」

 

と、ベンゼマが先に立ち去りましたが、ペティはがに股気味に拡げた脚を投げた格好で樹の根元に座り、ホカホカと湯気の立つベンゼマのザーメンを滾々と溢れさせながら、何十分もその場から起き上がれませんでした。

 

 

 

 

 

 

   5

 

 

 盗掘団にいた頃から開発されていた。そして邂逅した最初の夜からこうでしたから、その翌日にはもう恋人同士のように甘くセックスしていたのもまったく不思議ではなかったのです。

 

 僕のため? 冗談じゃない。詭弁です。ペティと寄りを戻すためのまったくの弄言です。

 

 本当は僕も無理にでも押し倒して一つになりたい、ペティとそういう関係になりたい、性欲を持ったごく普通の男子として、心の底ではそう思ってました。でもその後の責任を考えると、それができる稼ぎのない僕は、我慢するしかなかったんです。

 

 当時の僕は事情が分かっていなかったため混乱を極めていました。でもプライベートの問題でオーク討伐を取り止めるわけにもいきません。二人とは仕事を終えてからじっくり話をしようと決め、体調は最悪でしたが準備に入りました。

 

 ですから、途中でベンゼマが部屋に戻って来ても、反吐が出そうになる気分を抑え、朝までペティと一緒だったのか気掛かりで仕方ない気持ちを封じ、いつもの態度を取り、何気ない挨拶を交わしただけでした。ベンゼマは上機嫌でした。

 

 その後ペティに会うと、昨晩あれだけのことをしていたとは思えないほどの元気さで、

 

「おはよう、クラスト! 昨日はよく眠れた? 疲れてるあなたを気遣ってベンゼマが代わりに見張りをやってくれたのよ」

 

と、しゃあしゃあと言ってきました。でもその笑顔の明るさはいつものペティ、いや、いつも以上の魅力を感じてしまいました。

 

 でも昨日までのペティとは違って見えました。表情が色っぽく、腰の辺りがいかにも充実していて、女のフェロモンが感じられるような──

 

 吹っ切れたのか──昨日の朝は暗い顔してたのに、二日でもう──

 

 ベンゼマに抱かれることを許容して、割り切って、欲求不満を解消できて晴れ晴れとしてるのか──それがまた悔しかったです。

 

 子種がないとはいえ、こうして目の前にいるペティのお胎(なか)の中には、ベンゼマのザーメンが二日分も溜まっている、子種のないあいつの体液をペティは自分の中で大事にしまっている。そう思うと、悔しくて仕方なかったです。

 

 移動中は上の空でした。今のところはオーク以外野生の動物しか見かけない平和な土地でしたので、天候も良くハイキング同然で、他のメンバーもお喋りに気を取られながら歩き、僕の様子に気付く者はいませんでした。

 

 誰も僕がおかしいと気付かなかったのは、ペティがいつものように僕のすぐ後ろを歩いていて、何か発見すれば彼女がすぐ注意を呼んでいたからというのもあります。ペティの足取りは軽く、溌剌(はつらつ)としていました。

 

 あと、会話が盛り上がっていたというのもあります。僕はまったくといっていいほど加わりませんでしたが、ベンゼマとレスティアが中心でした。前日もこの二人が主に楽しく語り合っていました。

 

 エルフというと、吟遊詩人さん、あなたの方が色々と詳しいのではないでしょうか。

 

(妖精の一族。洗練された独自の文化。森の奥に住まう神秘的な長寿の民。人間など足元にも及ばない美しさだという。お伽話や神話伝承では、人間に手助けしたり、エルフの姫と人間の騎士が恋仲になったり、人間の味方、憧憬対象として描かれることが多い──などと、私は適当に羅列した)

 

 人間の味方ですか。実際には、エルフ達は人間にはうんざりしているのが多いんですって。エルフがちょっと人の多い街に出ると、まるで見世物のように人が集まってくる。中には誘拐など企む人間もいるそうです。人間が何かとちょっかいをかけてくることも一因で、人も立ち寄れない森の奥に暮らすようになったとレスティアは言ってました。

 

 有名な《ポーフェンの森》のエルフ、開放的なエルフとして、人間社会で見るエルフは大抵あそこ出身ですが、あれは例外なんだそうです。レスティア自身は良い場所だと気に入っていましたが、年のいったエルフなどは人間との混血が進み恐ろしいことだとポーフェンのエルフを忌み嫌っているとか。どこの世界の年配者も考えることは固いようですね。

 

 彼女が言うには、エルフの暮らしというのは、『寿命が尽きる日までわずかな貯えで慎み深く穏やかな生活を送る老人』だそうで。若く社交的で好奇心の強いレスティアには我慢ならなかったそうです。それで禁を破って世界を見て回ることにしたんだとか。

 

 大胆な決断だと思いませんか? 若く美しいエルフの娘がたった一人だけで人間社会に出てくるなんて。

 

(私は相づちを打ち、危ない目には遭わなかったのかと聞いた)

 

 冒険者になって僕達と組むまで何度も遭ったそうです。でもエルフは妖精の末裔、精霊と話したり、念じるだけで喚び出したりすることが出来ますから、それで撃退してきたそうです。

 

 レスティアはベンゼマが気に入ったようでした。彼女の華やかさや高貴さはパーティーのムードメーカーのようなものだったので、レスティアと対等の高さで談笑するベンゼマに、周りはいつの間にか一目置いたような雰囲気になっていました。その辺は腐ってもトップの座にいた風格とでも言うのでしょうか。

 

 確かに、客観的な外面だけなら、ベンゼマは申し分ない男前でした。僕よりひと回り上の体躯はいかにも大人の男らしくがっしりしていて、どこで調達してきたのかサッパリした服と厚手のマントを着込み、髪も髭も整えてありました。渋みが出てきた顔に、人を惹きつけるあの笑みです。

 

 一度、山越えの狭い崖道を進んでいた時、もちろん皆注意していたのですが、レスティアが踏みしめた足場が崩れ、遙か真下に滑り落ちそうになりました。レスティアの悲鳴が上がって、先頭を歩く僕は気付くのが遅れましたが、隣にいたベンゼマがとっさに彼女を抱きとめ、難を逃れました。もしそのまま落ちていたら間違いなく死んでいたでしょう。

 

 レスティアはベンゼマの胸に顔を埋めたまま、しばらく動きませんでしたが、

 

「ああ、びっくりした!」

 

と、笑みを浮かべて安心させるように僕達を見回しました。

 

「危ないところだったな、どこも怪我はないか、レスティア」

 

「ありがとうベンゼマ。あなたのお陰で大丈夫よ」

 

 二人は歯を見せながら笑い合っていました。

 

 

 

 それからは事故もなく道程は捗り、日が没しないうちに奴らのいるダンジョンまであと少しというところまで来ることが出来ました。ですが魔物の多くがそうであるように、オークも夜の方が行動力があります。また、歩き疲れたままダンジョンに入るのは、いかに低級の魔物相手でも無謀ですから、僕達は森の中で使われていない狭い洞穴を見つけ、その日はそこで一夜を明かすことにしました。

 

 完全に暮れる前に落ち葉を敷き詰めて寝床を作り、枯れ枝を集めて焚き火の準備をすると、レスティアが見つけた水場で水を汲み、加熱した方が美味しい保存食とその辺で採ってきた薬草を煮こんで即席スープにし、簡単な食事を済ませました。そしていつものように見張りを立て、交代で眠りにつきました。

 

 やっと休める。移動だけだったのに重い疲労がのしかかっていました。僕はそれだけが救いのように寝袋に潜り込みました。

 

 

 

 

 

 

 

   6

 

 

 揺さぶられているのに気付き、僕は目を覚ましました。

 

 真っ暗な中、アスリナンの厚眼鏡が僕を覗き込んでいました。

 

「交代の時間」

 

 そう彼女の息が頬にかかると、僕は静かに上体を起こし、眠気を飛ばすように頭を振り、洞穴の中を見渡しました。

 

 焚き火は消え、月光が入り口を明るく浮かび上がらせていました。

 

 ぼんやりと、寝袋が三つ空になっているのが見えました。

 

 一瞬、ペティが、と思い青ざめましたが、彼女はすぐ横で眠っていました。

 

「……ベンゼマとレスティアは?」

 

と、僕はアスリナンに訊ねました。いないのはその二人でした。

 

 すると、アスリナンは奇妙な沈黙を経た後、目を伏せ、

 

「…………水場にいる。けど、行かないほうがいい」

 

と、か細い声で言い、そそくさと自分の寝袋に入ってしまいました。

 

 アスリナンは呪文を唱える時はまったく堂々としているのに、普段の会話では長台詞や抑揚を付けるのが苦手です。でも聞き慣れた僕には、彼女の言葉の響きには羞恥心が含まれているのが分かりました。

 

 それだけで彼らが何をしているのか分かってしまったのです。

 

 外に立った僕ですが、気はそぞろでした。しばらくもすると見張りに集中できなくなってきました。

 

 レスティアは顔が美しいだけではありません。エルフといえば痩身を想像しやすいですが、彼女は人間の乙女と変わらない、いやそれ以上に女らしい肢体の持ち主でした。胸もアラサに次ぐ大きさでしたし。酒盛りで躰をくっつけられたり、水浴びしている姿を見てしまったりした僕は、レスティアの心を射止めた男はさぞや幸せな夜を過ごせるんだろうな、と、一男子として羨望せずにはいられませんでした。

 

 水場はやや歩いたところにある、ベンゼマはそこで、今度はレスティアと二人きりで──

 

 あの美しいエルフの少女のからだに、ベンゼマの魔の手が──

 

 そんなことばかりが心に浮かんでしまいました。レスティアは大事な仲間でもあります。あの男にどうされてるのか気になって仕方ありませんでした。ですが同時に、こんなところで揉め事を起こしても、という気持ちもありました。

 

 ずいぶん迷いましたが、とうとう根負けし、様子を見に行くだけだと自分を誤魔化し、水場の方へ足を運んで行ってしまいました。

 

 そしたら、案の定──

 

 しばらく森を歩くと、彼らの姿を見る前に、声が届いて来たのです。

 

「ベンゼマ、素敵、素敵よ、あぁ、おかしくなっちゃう──」

 

 間違いなくレスティアの声でした。だけど聞いたことのない響きがありました。

 

「レスティア、君こそ素晴らしい、こんな素晴らしい女に巡り会ったのは生まれて初めてだ」

 

「あっ、だめ、そこ、そんなに、アァ──!」

 

 また僕はカンテラの火を落とし、そっと水場の間近まで来ました。

 

 茂みから覗くと──

 

 そこはそう高くない切り立った岩の裂け目から流水が落ち、小人の滝といった風情の場所でした。その近くの草むらでマントを褥(しとね)にし、裸同士で絡み合う二人が月明かりに照らし出されていたのです。

 

「あ、あ、あ、あ、ベンゼマ、ベンゼマ……♥」

 

 正上位でお互い掻き抱くように密着し合った二人は、レスティアが感に堪えない声を漏らし続けていました。

 

 ほとんど動いてないようにも見えましたが、ベンゼマの腰が小刻みにリズミカルに揺れていました。たまらないといった様子で、熱に浮かされるように鼻を擦り合わせてキスをしたり、頭の位置を頻繁に変えてお互いの首すじに埋(うず)めたり、昂奮した息をつき、二人とも悦感に浸っているのだと分かりました。

 

「もう痛くないようだな、レスティア」

 

「ええ、初めてなのに、ちっとも痛くなんてないわ、だからもっとしていい……いえ、してちょうだい……!」

 

「もっと深くまで突いてもいいのか」

 

「ええ、お願い、もっと奥まで……!」

 

「俺も君の奥まで貪りたい。レスティアのからだの奥の奥まで感じたいんだ。そして、君にも、俺をからだの奥から感じて欲しいんだ……」

 

「ああベンゼマ……! いいわ、来て、もっと奥まで──ああ♥!」

 

 ベンゼマの動きが速くなると、レスティアは白い喉を晒し、喜びを放つように大きな声を震わせました。

 

「いいのか、痛くないか」

 

「いいの、いいの、ああっ、そこっ」

 

 ベンゼマにギュッとしがみつくレスティア。

 

「ん、奥も感じるのか?」

 

「ええ、そこ、ああ、だめ、だめっ、おかしい、おかしくなっちゃうっ」

 

「おおっ、すごい締まりだ……こんなに美しく、おまけに感じやすい体質とは……完全無欠じゃないか……」

 

「いや、恥ずかしい、そんなの言わないで」

 

「何を言うんだ、素晴らしい事だ。君は最高の女だよ、レスティア」

 

「ホント……?」

 

「勿論だ。君のような女性を抱けるのは最高に嬉しいことさ」

 

 そう言うとベンゼマは上体を起こし、綺麗な流線を描くレスティアの腰を少し持ち上げ、さらに情熱的に、リズミカルに、ピストン運動を続けました。

 

「あっ、あっ、あっ、あんっ、あんっ、ああっ♥!」

 

 からだの上が空になったことによって、レスティアの胸が露になり、ぷるぷると揺れているのが丸見えになりました。女性の乳房とはあんなに柔らかいものなのかと目を疑うほどの揺れ方でした。左右別々に動いていて。ベンゼマは自分の動きによって生まれているその光景を、愉しそうに見下ろしていました。

 

 盛んに突かれているレスティアは、眉根を寄せて苦しそうでもあるとも言えましたが、それ以上にベンゼマのペニスの感触が好いようでした。その感じ方は、男を誘う肢体もあって、初体験とは思えないほどでした。頬が緩み、唇が半開きになり、そこから赤い舌が覗いていて、あっ、あっ、あっ、と、常に切ない吐息を漏らしていました。からだからは力が抜けていました。初めての女性は大抵痛いものだと聞いていたので、本当にレスティアには男性経験がないのかと疑ってしまうぐらいでした。

 

 それにしても、レスティアのからだは想像以上に淫靡な艶やかさでした。水浴びの時に見た彼女のからだは、正直、ペティより目が移ってしまいそうでしたが、こんなにいやらしかっただろうか、と。

 

 それも含めて、ベンゼマの精力とテクニックがレスティアを初めてでもここまで蕩かし、いやらしくさせているのだとしたら──などと考えると、男として何か敗けたような気分になりました。出会って間もない女性とここまで──僕にはとても真似できない芸当です。自分とベンゼマとの間にとてつもない差がある、と、感じずにはいられませんでした。

 

 その間にベンゼマからも次第に余裕がなくなってゆき、やがて何かを堪えるような顔つきになって、

 

「おお……くう、初めて男を迎えたばかりなのに、なんて熱く絡み付くんだ……!」

 

と、感嘆を帯びた呻き声を上げました。そんなにレスティアのヴァギナは気持ちいいのか、いいんだろうな、と、僕は生唾を飲み込んでしまいました。

 

「もう限界だ、イク、イッてしまう。レスティア、君の中に俺のザーメンを流し込ませてくれ」

 

と叫ぶように言いました。

 

「ああ、いけない、それだけは……!」

 

「俺が種なしだって信じてくれないのか?」

 

「あぁ、でも…………!」

 

「信じてくれレスティア、俺は誓って嘘はつかない。種はないが、ないからこそ注がずにはいられないんだ。レスティア、君の初めての男として、君のヴァギナに俺のペニスを味わわせ、君の子宮に俺のザーメンを飲ませたいんだ」

 

「ああ、ベンゼマ……♥!」

 

 レスティアのからだから力が抜けました。好きにして、という意思表示にしか見えませんでした。

 

「よし、イクからな、レスティア、俺の熱いザーメンを受け取ってくれッ!」

 

 そう叫ぶとベンゼマはレスティアの太股を持ち上げて膝を入れ、腰高位になって小刻みに突き入れ始めました。

 

「アッアッアッアッアッ♥!」

 

 ついに、ペティに続いて、レスティアの胎内にもベンゼマのザーメンが注ぎ込まれる時が来たのです。子種はなくとも、ベンゼマの存在がレスティアのからだの中に染み込んでいってしまう時が。

 

「これが男の射精だ、子種があればこれで孕むんだ、本当はお前を孕ませたくって仕方ないが、代わりにその気持ちを籠めて出すからな、俺の子を孕むと思って受け取ってくれッ!」

 

「アッ、アッ、アッ、アッ♥!!」

 

 孕ませる気持ちを籠めると言われて、レスティアの反応もより大きくなりました。

 

「クッ────オオォォォ………………!!!!」

 

「ッ──ア~~~────ッッ♥♥!!!!」

 

 ──絶頂の瞬間が来ました。

 

 ベンゼマの躰が強張り、次いでレスティアのからだも同じくガクガクと震えました。どちらの躰も弓なりにしなり、喉の奥からオルガスムスの声を迸らせました。

 

 美しいレスティアのヴァギナに、今、ベンゼマのザーメンが溢れ返っている。ビュクビュクと勁(つよ)く脈動して、ヴァギナの奥、レスティアの子宮があるところに浴びせかかっている。

 

 人間の男が、エルフの女を孕ませるような射精をしているんです。

 

 それはいわば、庶民など指一本触れることの出来ないお姫様を、子沢山だけが取り柄の貧民が征服し、種付けているような光景──と言えばいいでしょうか。

 

 しばらくどちらも固まったままでしたが、グッ、グッ、と、ベンゼマが夢遊病者のように腰を前後に揺らし始めます。

 

 からだから緊張が抜けるにつれてレスティアの顔には恍惚が広がり、ベンゼマが腰を押し込む度に、「あっ……あっ……♥」と、指を甘噛み、高貴なエルフとは思えないほど本能にまみれた蕩け声を漏らします。金色の髪が月光を反射して美しく輝いてました。

 

「オオ……まだ出てやがる……こんなビュルビュルと……オオッ…………!」

 

 そう呻きながらベンゼマは何度も何度もグイグイと腰を押し進め、最後の一滴が出尽くすまでレスティアの中にザーメンを注ぎ続けました。彼もエルフの娘とセックスし、その子宮に己が存在を刻み込むのは初めてだったのです。

 

「どうだレスティア……初めて射精を受けた気分は……?」

 

「あぁ……あなたのペニスがお腹の奥でドクドク脈打ってて……それが……おかしな気分になりそう……♥」

 

「俺の子種が欲しいと思ったか?」

 

「何言ってるのよ……私達、出会ったばかりなのに……子供なんて……」

 

「本能的な話だよ。理屈は置いといて、欲しいと思ったかどうか、正直に教えてくれ」

 

「あぁん……思ったわよ……あなたのが欲しいって……ドクドク温かいのが広がってるのが……もっと奥まで来て欲しいって…………」

 

「ありがとうレスティア。種なしの俺には最高の言葉だ」

 

 レスティアは、あ、と気付くような表情になり、何ともいえない微笑みを返しました。

 

 僕は、神秘と理知、高貴と清明を兼ね備えた美しい妖精であるレスティアを、密かに憧れていました。レスティアを見た人間なら普通に抱く感情だと思います。そんな彼女が、ベンゼマみたいな最低の男のザーメンを流し込まれて……心では契りを結んだ男女の如くその種を欲したなんて……思った以上のショックを受けました。

 

 おそらく初めは彼女らしい好奇心だったのでしょう。話すのが楽しく、ハンサムで男性的魅力にも溢れてる人間。会ってたった数日の男を高く評価してしまったために騙され、つい気を許してしまったのだと思います。しっかりと決意したわけではなく、そそのかされてその肉体を開いてしまったのでしょう。

 

 エルフも人間と変わらず、性欲があるのです。若いなら尚更に。経緯はどうあれ、レスティアはベンゼマのペースに嵌められて淫情を覚えるままに、肉体の交わりまで行ってしまった。密やかに閉じられていた花園は醜悪な肉の剣で錠前を破られ、上辺だけは丁寧に、麗しい庭園は好き放題に荒らされてしまった。ですがその上辺にエルフの少女は痺れてしまい、甘い囁きと接吻、花園を念入りに馴らされる心地好さ、淫靡な悦びに搦め捕られてしまったのです。

 

 そして、劣情を極めた末に生まれる最も大きな快感と、その副産物である穢らしい体液を歓喜に沸く肉の奥に撒き散らされ、本能を揺さぶる感覚を味わわされてしまったのです。

 

 穢れなき乙女は、男に求められる女の悦びを、開花“されて”しまいました。

 

 後は、堕ちるだけだったのです……。

 

 

 

 ペティの時のように、レスティアとベンゼマの情交は一回では終わりませんでした。ベンゼマにとってはここからが本番みたいなものでした。少し休みを置いただけで彼がまた求めると、レスティアは喜んで同意し、今度は四つん這いにされて後ろから貫かれたのです。

 

「イヤ、こんな、獣みたいな……アァ……♥!」

 

 そうは言ったものの、レスティアの昂奮度は先ほどよりも深く、本当に獣になったように二人は本能にまみれて交わりました。

 

「体位の数だけ愉しみがあるんだ、レスティア。中出しされる感覚もまた違うぞ」

 

 また絶頂に昇り詰めたベンゼマが、後背位のままレスティアに種付けめいた中出しをします。

 

「ああっ……んあっ……ま……また……♥♥!!」

 

 レスティアは小さな悲鳴を上げましたが、すっかり蕩けたヴァギナの奥でベンゼマのザーメンを注がれている間じゅう、快美感にからだを震わせ、その場から微動だにしませんでした。

 

 四つん這いになったままベンゼマの中出しを深く受け止めるレスティアは、赤い舌を垂らし、目の焦点は霞み、もはや、僕の知っている顔をしていませんでした。一匹の牝と化してました。

 

 ベンゼマはレスティアを膝の上に乗せて背面座位になると、三回目に突入しました。

 

 レスティアのふっくらとした唇から出てくるのはもはや喘ぎ声だけです。

 

 揺さぶられるように突き上げられていると、段々と乱れ方が激しくなり、

 

「ンンッ、だ──だめぇ……だめッ──ッアッ──アァッ……♥!!」

 

と、ついには泣きながら腰を浮かし、ビクビクとからだをわななせました。

 

「オオッ……!!」

 

 強く締まったのでしょう、ベンゼマの律動も一旦止まりましたが、

 

「イッたか、よし、俺も出すからな……!」

 

と、再び突き上げ、「オオーッ!!」と、すぐに彼も胴を震わせ始めました。

 

 仰け反った姿勢のまま、ビク、ビク、と、からだを弾ませるレスティア。先ほどより大きなオルガスムスでした。胸の双つの半球が張り詰め、頭頂が痛々しいほど勃っているのが見えました。

 

 絶頂を迎えたヴァギナに三たび、熱い精液が注がれてゆきます。本当にベンゼマは膣内射精が好きなのです。

 

 ベンゼマは女を堕とす秘訣を知っているのでしょうか。中出しがその秘訣とでも言うのでしょうか。それとも、女性はこんなにあっけないものなのでしょうか。

 

(中出しが秘訣かは首をひねるが、残りの二つはどちらも言える、と、私は答えた。少なくとも一夜の行為だけで男に嵌る女など掃いて捨てるほどいる)

 

 そうですか……もし秘訣があったとしても、僕にはとても盗める自信はありません。一夜で女性を虜になんてできそうにもないですね……。

 

 ……とにかく、レスティアはやがてぐったりとベンゼマにからだを預けました。昇り詰め合った二人は、永劫とも思えるぐらいの時間、そのままじっとしていましたが、気付くと、レスティアはそのまま眠りに落ちてしまっていました。

 

 

 

 

 

  7

 

 

 なんだ眠ってしまったのか、と、ベンゼマがレスティアをそっとマントの上に寝かせ、自分の上着を水場で濡らしてレスティアの股間を拭き、服を着せてやっていると、彼の背後、僕の位置からは少し離れたところで、不意に茂みがガサガサと不自然に鳴りました。

 

「誰だ!?」

 

と、ベンゼマが立ち上がるのと、落ち葉を踏んで走り去る音がしたのは同時でした。

 

 僕の他に誰かが覗いていたのです。

 

 ベンゼマはすぐ追いかけ始めました。

 

 僕はレスティアが気に掛かりましたが、ベンゼマがちゃんと服を着せてマントをかけてやっていたので、その辺の気配りは憎たらしいと思いながら、彼に気付かれなぐらいの距離を取って後を追うことにしました。

 

 ですが、追跡劇はあっけなく終わりました。

 

 不審者は真っ暗な森に不慣れな様子で、方向を見失ったのかまごついているうちに瞬く間にベンゼマが追いつき、飛びかかって組み伏せられてしまったのです。

 

 ですが、彼はすぐ手を放しました。

 

「君は……」

 

 僕のいる位置からは最初見えなかったので何だろうと思いましたが、のろのろと立ち上がって、その正体が分かりました。

 

 

 

 アスリナンだったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

(つづく?)

 

 

 

 

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最終更新:2020年02月23日 17:23