今、この場で生まれた私達の目的の違い ◆7NffU3G94s



「純一くん、あそこに人がいますっ!」

住宅地を歩く男女二人、人影を見つけた芙蓉楓が嬉しそうに声を上げる。
いくつもの無機質な住居がただ整列されているだけのこの場所、隣に頼れる仲間はいるものの不安が拭えたわけではない。
いつ誰に襲われるか、いつ誰が争っているか。もしそんな場面に遭遇してしまったらどうするか。
恐怖心は絶えず楓の心の体力を吸い取っていった、しかしそれと共にちょっとした期待もないわけではない。

土見稟が、ネリネが、時雨亜沙が。大事な友人等がひょっこり目の前に現れるかもしれないという可能性。
びくびくと怯えながら少しずつ移動をしていた楓にとって、それだけが心の支えであった。
それは、非現実な願いとしか言いようがない。
それでも期待せずにはいられないかった、この閑散とした空気の中を彼女はただ切実な願い事を刻んでいくかのごとく一歩一歩進んでいくのだった。

そんな時だった、ふと視界に揺れ動くものが入ったのは。
最初はただの錯覚とも思った、しかしその違和感を簡単に見過ごそうとするほど楓の判断力は鈍くない。
すぐさま隣を歩いていた朝倉純一に声をかける、そっと民家の影に隠れながら二人で覗きじっくりと確認した所。
確かに、そこには人がいたのだった。しかも年は二人とそう変わらないであろう。
人相までは分からない、しかしその人物の身につけている衣服が物語っていた。

ほぼ百パーセントの確立で女子高生だろう、清潔感溢れる白のジャケットが爽やかな夏を予感させる。
少し茶けたみつ編みが、彼女が周囲を見渡すたびに揺れて可愛らしかった。
辺りの様子を窺いながら、用心深く歩いている彼女がまだこちらには気づく気配はない。

(そうですよね、そんな簡単にいきませんもんね・・・・・・)

ネリネや亜沙かもしれないという望みが叶わなかったということに対するショックは隠せない、しかしそれで落ち込んでいては何にもならない。
彼女も、間違いなく被害者なのだ。自分と同じ立場の人間、そう考えれば親近感も自然と沸く。
あんなに周りを気にして、一人だからきっと不安で堪らないのだろう。
可哀想だ、一刻も早く安心させてあげたい。ここに仲間が、自分達がいることを伝えたかった。

楓は目の前の彼女に対し、すぐにでも声をかける気であった。
しかしその考えは、隣で楓と同じように彼女を見やっていた純一の顔つきが視覚に入った所で中断される。

「純一、くん・・・・・・?」

純一は、難しい顔つきでじっと前方を睨んでいた。






楓が彼女の元へ行きたがっているというのは、さすがの鈍いことに定評のある純一でもすぐに気づくことができていた。
しかし、本当にあの少女が殺し合いに乗っていないかなんて判断はつかない。
それこそ楓の時にあれだけ抵抗なく声をかけられたのだって、彼女が殺し合いに乗っていないという確信があったからとれた行動だった。
・・・・・・あの錯乱した姿が演技であったとしたら、純一もそれで終わっていたが。それほど世界は厳しくもない。

だが、目の前の彼女はどうか。
純一の目的は島からの脱出である、そのためには情報を多く得るためにも仲間を増やす必要があるという考えはある。
それでも闇雲に声をかけ自滅しては終わりなのだ、その線引きは難しい。
正直、純一には分からなかった。
本当に彼女は安心できる存在であるのか、その判断基準をどうつければいいか。
分からない。さっぱり、分からない。
とりあえず武器のようなものを所有しているようには見えない、いきなり襲ってくることはないと思う・・・・・・が。

「あーもう!・・・・・・くそっ、かったりぃな」
「純一くん、一体どうしたんですか・・・・・・?」

純真な瞳、隣の少女が不思議そうにこちらを見やってくる。
何故行かないんですか? 何故あの子に声をかけないんですか?
視線はひたすら、それを訴えかけてくる。

・・・・・・彼女は余りにも、人を疑おうとしなさ過ぎる。これはこれで危険な兆候でもあった。
そもそも、これは先ほど楓に声をかけた際に感じた疑問だった。
別にやましい思いがあったわけではないが、あんな簡単に受け入れられるとは思わなかったので拍子抜けしたのは事実だということである。

この先一緒に行動する上で、人選を見誤ることもあるかもしれない。
その時一番に被害にあい、そして傷つくかもしれない・・・・・・そんな可能性を、楓は秘めている。
今から言い含めたらいいのだろうか、しかし何て伝えればいいのか良い言葉は思い浮かばない。
その間も、楓は純一の様子をちらちらと窺いながら少女の動向を見つめ続けていた。

そして。ついて痺れを切らした楓が動き出そうとする。

「ちょ、ちょっと待てって! どうする気だよ」
「? 稟くんや、純一くんのお友達のことを聞こうかと・・・・・・」
「いや、落ち着いて考えてみなよ。もしあの子が優勝狙いだった場合、危ないだろ」

純一が何を言ってるか。楓は、すぐには理解できなかったらしい。
きょとんと真顔で彼の瞳を見つめていた。その真っ直ぐさに心が痛む。

確かに、目の前を歩いていた女の子はどう見ても自分達と同年代の普通の子だった。
着用している制服に見覚えはないが、それでも学生同士。疑いたくない思いも純一にだって勿論ある。

「純一くんは、あんな普通の子がそんな悪いことをすると思ってるんですか」

丁寧な口調だからこそ、語気が強くなったことがよく現れた台詞だった。

「相手は女の子ですよ・・・・・・純一くん、ひどいです」

しかし次の瞬間、泣きそうな顔で訴えてくる。純一の勢いを退けるには最高のダブルコンボであった。
だがここでなあなあにしてしまっては彼女のためにもならない、純一は自身にしっかりと言い聞かせる。
全ては彼女のために。自分が、悪役になってしまうかもしれないが、それで彼女の寿命が延びるなら全く問題ない。

一つだけ深呼吸をした後、純一は表情を引き締め改めて楓と見詰め合った。

「・・・・・・勘違いしてるみたいだけど、俺が君に声をかけたのは絶対君が人を襲う子には見えなかったからだ」
「あの子も人を襲う子になんて見えないです」
「いや、分からない」
「な、何でですか・・・・・・?」
「念には念を入れなくちゃいけない、錯乱していた君とはまた違うパターンだし。簡単に信用するわけにはいかないよ」
「り、稟くんでしたらそんなことしません! 困ってる女の子相手に・・・・・・ひどいですよ、純一くん・・・・・・」
「ごめん、俺は『稟くん』じゃないんだよ。君が心配だからこそ言ってるんだ、そんなに簡単に―― 」


純一の言葉はまだ続いている、しかしそれが楓に伝わることはない。
「ごめん、俺は『稟くん』じゃないんだよ」
その言葉が、耳から離れなかった。

自分を救ってくれた純一は、まるで王子様のような存在であった。
稟も同じく。稟は楓にとって全てである、稟が存在しているということ自体が自分が生きる理由と言っても過言ではない。

そんな自分を救ってくれた純一の姿を、どこか面影の似ている稟に全く重ねていなかったと言ったら嘘になる。
だからこそだろうか、こんなにショックを受けているのは

(ああ、そうですよね・・・・・・私は純一くんと稟くんの共通点を見つけてから、いつの間にか純一くんに稟くんを求めていたのかもしれません・・・・・・)

知らず知らずのうちに。
確かに稟の姿を探していたが、殺し合いに参加させられているという恐怖心が薄らいでいたのは隣に仮想された『稟』がいたからかもしれない。

住宅地を歩き回っている間、不安だけど安心だった。隣に『稟』がいたから。
知り合いに会えることなくただ時間だけが過ぎていったが、それでも何とかなると思った。『稟』がいるから。

『稟』なら何でもできると思ったから、そう。この島から有志を募って脱出するという希望を、『稟』なら絶対成し遂げられると信じていた。

しかし『稟』は言う。目の前に現れた庇護する対象と言っても過言でもない少女に対し「簡単に信用してはいけない」と。
確かに誰でもホイホイ誘っていって危険な目に合うのは楓だってごめんだ、だが同年代の少女に対してこれでは納得がいかない。
自分が甘いのだろうか。自分が間違っているのだろうか。
楓の中で葛藤が生まれる。

(でも・・・・・・稟くんなら、稟くんでしたら・・・・・・やっぱり違うと思います・・・・・・っ)

自分に向けられる、あの優しい笑顔が好きだった。
そして、周りにも同じ笑顔を向けている誰よりも優しいあの人が好きだった。
困っている人を見つけたら、必ず手を差し伸べる彼が、楓の『稟』だった。

・・・・・・しかし、目の前の彼はあの人じゃない。『稟』ではなかった。
それではどこにいる? 楓の求める『稟』は、どこにいるのだろうか。

(わ、私は何をしていたの・・・・・・稟くんを置いて、一人で安穏として・・・・・・)

楓の大好きなあの人は、今もこの孤島で一人でいるかもしれない。
誰かに襲われているかもしれない。
・・・・・・もう、遅いかもしれない。

一つ負の考えが描けると、それが連想を生み出しどんどん悪いイメージを楓に植え付けていった。
安らぎは一瞬で掻き消える、自然と起こる全身の震えを楓は止められなかった。

(何より優先することは稟くんなのにっ、わ、私が稟くんを見つけないと、見つけて助けないと、稟くんだけは助け)
「・・・・・・楓?」

そう、こうやって名前を呼び捨てにするから。
会って間もないのに。
いきなり呼び捨てにするから・・・・・・あの人と、同じ笑顔で。

勘違いさせないで、優しくしないで。
あの人は今苦しんでいるかもしれないのに、自分の助けが必要になってるかもしれないのに。
安心させないで、私は守られる立場じゃない・・・・・・稟くんを、守らなくてはいけないんですっ!!

「あのねぇ。さっきからブツブツ言ってるの、全部聞こえてるんだけど」
「うわっ?!」
「きゃあ!!」

いつの間にか影に隠れていた二人の前には、先ほどまでこちらが様子を窺っていたはずの少女が仁王立っていた。
いきなり変容した楓の態度を訝しげに見やっていた純一も、当の本人である楓も。この急な接近には全く気づけなかったようだ。

「お取り込み中悪いわね。ん~、見た感じ皆殺しで帰ろうとしてるようには見えないけど・・・・・・とりあえず、話でもしてみる?」

あっけらかんと言い放つ彼女は、遠くで見ていた時もよっぽど度胸があるように見える。
彼女のペースに上手く乗せられたという感じで、二人はこくこくと頷くのであった。







「とりあえず、ごめん・・・・・・」
「ま、いいけどね。そりゃあんな説明受けた後ですもの、いきなり出てこられてもこっちが困るわよ」

あっけらかんと言い放つ少女は、そのまま自己紹介を始めた。
水澤摩央。輝日南高校三年生、受験生。それが彼女のプロフィールであった。

「何かこそこそとうろつかれてるな~とは思ったのよ、でも何も仕掛けてこないし。
 知らないうちに追い詰められてるんじゃないかと冷や冷やしたわ~」

こんなにも明るい彼女を疑っていたということを恥じる純一、一方楓だけは俯いてだんまりを決め込んでいるようで彼女のみ会話に入ってこようとはしてこなかった。
純一がさりげなく話題を振ったとしても、楓の様子は変わらない。
どうしたものかと困惑する彼をよそに、摩央は二人の間に流れるどこか気まずい空気に気づいていないのか、それともわざと気づかない振りをしているのか。
特に気にせず、一人でもペラペラとしゃべっていた。
その後、純一は自分達が脱出を目指しているということ、そして仲間を募っていることを摩央に話した。

「今、俺達の知り合いだけでもかなりの人数がこの島に連れて来られている状態だ。
 どうすればいいか情報を集められるような人材にも心当たりはある、摩央さんにもぜひ協力して欲しい」
「・・・・・・ねぇ、それってあなた達の友達だったりとか、そういう人ってこと?」
「ああ、うん。摩央さんは?」
「残念、そういう類の人はいないわね」
「ひ、一人も?!」
「ええ」
「・・・・・・・そっか・・・」

それではさぞや心細かっただろう。
もし集められた五十人以上の人間の中に、誰も知人がいないという状態でこの島に放り出されたとしたら・・・・・・考えただけで、不安に押し潰されそうになる。

「その・・・・・・ごめん、俺・・・・・・」

最初から味方がゼロの状態という恐ろしさ。それでも明るく笑い飛ばす、彼女の器の大きさには関心するしかない。

「あははっ、でも大切な子がいないからこそ、できることもあるのよ?」
「そんなもんなの?」
「ええ、そうね。例えば・・・・・・こんな風、とか」

しかしそんなイメージを彼女に持った直後だった、すっと彼女の白く長い指先がデイバッグに伸びたのは。
とても自然な動作だった、そして純一の見つめる目の前で。
摩央は、何の躊躇もなく。取り出した拳銃を、彼に向けて固定した。

純一にとっては、全く意味の分からない展開だった。すぐの反応もできていない。
何故摩央は、銃をこっちに向けている? あれ、さっきまで普通に話してたよね? あれ、あれ??

「ま、摩央さんっ?! な、何でそんな」

そんな戸惑い。疑問を伝えるべく口を開くか、所々裏返ってしまったそれは妙に滑稽なものになってしまう。

「ん? いや、ほら。だから友達とかいないなら、色々ヤっちゃってもいいかなーって思うわけなのよ。どうせバレないだろうし」

慌てふためく純一の様子が可笑しいのか、摩央はくっくっと押し殺した笑いを含めながらも答えてくる。

「言ったでしょ、ここには私の大切なあの子はいないの。
 私には、守らなくちゃいけない人間がいないのよ・・・・・・これは強みよ? 何たって、人質を取られることもないし」

カチャッと、金属音が馳せる。照準が合わせ直された、真っ直ぐ純一の眉間を貫くが如く伸びたしなやかな腕の白さに目を奪われる。
一種の逃避、しかしせまってくる現実が純一を逃すことはない。

「まっ、運がなかったのよ。ごめんね?」

動けなかった。突然の事に対し、何の対処もできなかった。
摩央の言葉に動揺が隠せず、ただ純一は呆然と彼女を見やるだけだった。
猫のような意地悪めいた目が歪む、楽しそうにおしゃべりを繰り返す彼女が、何故いきなりこのような行動に出たのか。
・・・・・・やっぱり、分からなかった。それとも純一が最初に考えていた通りの不安が表に出ただけなのだろうか。
様々な試行錯誤、しかし時間は待ってくれない。

そして。銃声が、鳴る。
倒れゆく自身が何故か他人事のようにも思えるが、これも認めたくない現実逃避に値するのだろうか。
本当に、呆気なかった。そして悔いる暇もなく、それ以上何か思うこともなく・・・・・・純一の思考は、すぐに遮断されるのだった。





「で、あなたは? いいの、逃げなくて」

倒れゆく彼の体が砂を舞わせるその直前、既に摩央はもう一人の参加者・・・・・・楓に、標準を合わせ直していた。

「勿論逃げます、私はここで死ぬわけにはいきません」
「そう、でも随分余裕に見えるんだけど?」
「大丈夫です、私には稟くんがいてくれれば・・・・・・それだけで、いいんです」

俯いたままもそもそと話す楓、彼女は倒れた純一を見ようともせずただ虚空を見つめていた。
一方「稟」という固有名詞に聞き覚えのない摩央は、首をかしげるだけである。

「えっと、ならこの子・・・・・・朝倉君、だっけ? この子は別に死んじゃっても構わないよ~とか思うわけ?」
「いえ、純一くんには死んで欲しくなかったです。悲しいです」
「ん、んん?? なら、なーんでそんな冷静にいるのよ・・・・・・」
「悲しいですけど、稟くんではないです。ですから平気です」

意味が分からないといった感じで眉をハの字に寄せる摩央に対し、楓は淡々と告げるだけだった。
銃を向けられているのに飄々とした態度を変えることのない彼女の様子も、どこかおかしく感じる。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!」

慌てて声をかける、楓は普通に背を向けここを去ろうとしていた。

「ほらこれ、私あなたに銃向けてるのよっ・・・・・・後ろから撃たれるとか、そういうの考えないのっ?!」
「考えません」
「何でよっ!」
「撃てるものなら撃ってみてください、あなたはさっきからこうやって私を足止めしようとしているようにしか見えません」

言葉が、詰まった。
何がこの大人しそうな少女にこれだけのことを言わせているのか、何故こんなにも肝が座っているのだろうか。

「これ以上引き止めるとおっしゃるんでしたら、私も考えがあります。
 稟くんのために使いたいので、無駄な支出は増やしたくありませんが・・・・・・容赦なく、私も撃たせていただきます」

そう言ってベレッタを構える姿も、非常に絵になっていて。
そこに摩央が付け入る隙はない、鋭い目つきは異様な光を湛えながらも興味なさそうに彼女から視線を外す。

「では、失礼します。稟くんにお会いしましたら、芙蓉楓が探していたとお伝えください」

颯爽と、軽やかな足取りで駆けて行く少女の姿を、摩央は静かに見送るしかなかった。





「あーあ・・・・・・やっちゃった」

ポツンと漏れたそれは、やけに味気ない響きだった。
獲物を逃したということと、仕留めたということ。恐らく両方の意味が込められているであろう。

「仕方ないじゃない、それとももっと手際よく生きて帰る方法があるのかしら?」

皮肉ったように摩央が吐く、しかしそれに答えられる人間はここにはいない。
取り残された摩央の隣には、彼女が手にかけた純一が横たわるだけで。
・・・・・・楓があのような態度に出たというのはまさに計算外、これならば先に手を売っておけばと今更ながらに後悔する。

「あなたは、正に見た感じそのまんまだったけどね」

躯と化した純一が再び動き出す気配はない。
しゃがみこみ、その顔を覗き込む。安らかな、まるで眠っているような表情だった。

「優しいわね、でも優しいからこそ簡単につけこまれちゃうのよ?」

つんっとおでこを指先で弾く、頭に刺さったままのそれを摩央は弾いた。
瞬間、まだ温い人の温度も一緒に伝わってきた。それが無性に物悲しい。
手を汚すことがこんな簡単にできるなんて、摩央自身自分が信じられなかった。

・・・・・・と、思っていたが。何故か不思議に思うところがあった。
摩央は確かに眉間を打ち抜いたのに、血がほんの少ししか出ていないということ。いや、それ自体は当然のことなので問題ない。
問題は、純一の胸が上下していることの方で。
口に耳を当ててみる。うん、きちんと呼吸しています。

「ありゃりゃ、これが神様の与えてくれた運命ってヤツなのかしら?」

今一度、手にする拳銃・・・・・・もとい、拳銃形麻酔銃を摩央は見やるのだった。

彼女の支給品は、この麻酔銃とそれぞれ違う種類の薬が入っているらしい注射器の入ったケースであった。
薬物については、説明書の類がなかったので彼女にとってはさっぱりである。
そのうちの一つがこの、今純一が打ち込まれた麻酔薬だった。眠らされるだけで特に外傷を与えるものではない。

「ちぇっ、毒薬か何かかと思ったのに~。じゃあこっちが当たりだったとか?」

麻酔薬の入っていたケースとは別のケースを見やる、「H173」という刻印があるだけでやはり何の薬を刺しているかは摩央には皆目検討もつかない。
純一を始末した後、その恐怖で震えている楓もちゃっちゃと始末してしまう、というのが摩央の立てた属に言う作戦だった。
銃に仕込める注射器は一発のみ、しかしそれでも脅せば何とかなると読んだ摩央の甘さが結果に出てしまっただけである。

・・・・・・楓の所持している拳銃の魅力は、摩央でも認めるしかない。
彼女が銃身をこちらに向けてくるようなタフさを持っていたこと自体が計算外だったのだ、仕方ないと割り切るしかないだろう。

とにかく、摩央の強みはこのゲームに知人が参加していないことである。
ある程度の無茶は承知で、生き残ることだけが先決されることだった。
それこそ自らゲームに乗らなくとも、逃げ延びさえすれば優勝するチャンスは出てくるかもしれない。

「光一、待っててね。こんな所でくたばる程あんたのお姉ちゃんは柔じゃないんだからっ」

可愛い弟分の名前を呟き、渇を入れなおす。
・・・・・・しかし、さしあたって問題となるのはこの摩央自身が眠らせてしまった純一の存在であって。

「ん~、どうしよ。やっぱヤっちゃった方がいいのかしらって、何これ、鉄扇? この子の支給品?
 ・・・・・・やだ、こんなの振り回すなんて怖くてできないわよ~。血とかいっぱい出そうじゃないっ、無理無理!!
 でもでも、かと言って放っておいて変な噂流されても困るわよね・・・・・・」

ここにきてオタオタとする摩央の姿は、やはり年頃の少女の持つ雰囲気そのものだった。



【F-4の市街地/1日目 深夜】

【朝倉純一@D.C.P.S.】
【装備:ハクオロの鉄扇@うたわれるもの】
【所持品:支給品一式 エルルゥの傷薬@うたわれるもの オオアリクイのヌイグルミ@Kanon】
【状態:麻酔銃により眠らされている】
【思考・行動】
基本行動方針:人を殺さない
1:音夢、ことり、さくら、杉並を探す。
2:楓の友達(凛、ネリネ、亜沙)を探す。
3:殺し合いからの脱出方法を考える。

【備考】
芙蓉楓の知人の情報を入手している。


【芙蓉楓@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:ベレッタ M93R(21/20+1)】
【所持品:支給品一式 ブラウニング M2 “キャリバー.50”(ベルト給弾式、残弾200) ベレッタ M93Rの残弾40】
【状態:とにかく稟を探す】
【思考・行動】
基本方針:稟の捜索
1:何が何でも、最優先で稟を探す
2:できればネリネや亜沙とも合流したい

【備考】
稟以外の人間に対する興味が希薄になっている
朝倉純一の知人の情報を入手している。
水澤摩央を危険人物と判断

【水澤摩央@キミキス】
【装備:麻酔銃(IMI ジェリコ941型)】
【所持品:支給品一式 麻酔薬入り注射器×4 H173入り注射器×5】
【状態:純一をどうするか考え中】
【思考・行動】
基本方針:何としても生き延びる
1:ゲームに乗ろうとしたが、気が逸れた今はまだ分からない

【備考】
麻酔銃について。
装弾数は1で、一回一回のコッキングが必要になります。
注射器について。
麻酔の効力は後続の書き手さんにお任せします。
H173は雛見沢症候群を引き起こす劇薬ですが、摩央はH173自体が何の薬だか分かっていません。


022:天才少女、探偵少女、ヘタレ男 投下順に読む 024:前を向いて
022:天才少女、探偵少女、ヘタレ男 時系列順に読む 024:前を向いて
001:勇気ある者の選択 朝倉純一 037:兄と妹
001:勇気ある者の選択 芙蓉楓 052:許せる嘘か? 許されざる嘘か?
水沢摩央 037:兄と妹







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