無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s
瑞穂のハンカチを涙と鼻水だらけにした蟹沢は、自己紹介を終えると、どうして叫びながら走っていたか語り始める。
最初にあっけなく殺されたフカヒレの死、そして出会う事無く放送で流れたレオの死。
さらに病院で待ち合わせるといった稟とも、未だ合流できないままでいる苛立ち。
大事な仲間の二人を失ったことや、約束に間に合わない焦りで、自分でもどうしたら良いか判断できなくなっていた。
抗う事の出来ない現実に、心は押し潰されつつある。
ようやく全てを吐き出した蟹沢は、堰を切ったように叫んだ。
「こんなん面白くもなんともねぇよ! 誰か何とかしろよー!」
精一杯の虚勢を張って瑞穂に八つ当たりする。
「お前何とかしろよぉ! だいたい、なんでボクがこんな目に会わなきゃいけないんだよ!」
誰かの所為にして楽になりたい。だから、身近に居た瑞穂に罵声を浴びせた。
彼女に文句を言うのは見当違いと分かりながらも、言葉は止まらない。
それなのに、泣き叫んだ蟹沢を瑞穂はそっと抱きしめた。
「なっ――」
罵倒した蟹沢を拒絶するでも、無視するでもなく、ただ強く抱きしめた。
「頑張ってって、気安く言うつもりはないけれど」
「……」
「でも、諦めたらそれで終わりよ」
「ッ……ぅぅ」
「ね。一緒に帰りましょう」
「ぐすッ……帰りてぇよぉ……ちくしょぉぉ……」
瑞穂の胸の中で、蟹沢は声を忍ばせ泣き続けた。
涙の中で受け入れる。レオには二度と会えない事を。
そして、涙を流し終えた時にはまた頑張ろうと心に誓う。
涙が枯れ、瑞穂の体からそっと体を離す。
そこで、一度も会話をしていなかったアルルゥと視線がぶつかる。
ずっと瑞穂に抱きしめられ、泣いていたのが恥ずかしいのか、誤魔化すように文句を口にする。
「んだよ、こっちみんなよぉ~」
涙を袖で拭い、覗き見るアルルゥを手で追い払う。
「……」
だが、アルルゥは何も言わずただじっと蟹沢の顔を見ているだけ。
「おめぇ、ボクの顔がそんなに面白いかのよ! 泣いて悪いのかよ!?」
「アルルゥもお姉ちゃん死んだ」
「あ? 誰が死んだって?」
聞き間違いかと思った蟹沢は、以下の言葉をもう一度問いただす。
「お姉ちゃん。死んだ」
「……っ」
「カルラおねえちゃんも死んだ」
淡々と語る言葉に、蟹沢は何も答えられない。
この自分より一回りも小さいような少女も、大切な人間を失っていたのだ。
「でも」
その瞳は、全てを諦め始めた蟹沢と違い力強く感じられる。
だから、蟹沢は何も言い返さずアルルゥの言葉を聞き続けた。
「アルルゥおとーさんに会いたい。一緒に帰る」
「……」
「瑞穂おねーちゃんも、トウカおねーちゃんも、アカサカも、みんなみんな一緒」
「……」
「だから、カニっちも一緒に帰る」
「んだよぉ」
こんなに小さいのに、大好きだったであろう人を失ったはずだろうに。
彼女の笑顔は太陽のように暖かだった。
「ボクは蟹沢きぬだ!」
「だからカニっち。アルルゥあだ名付けた」
「じゃあお前はチビだな!」
「アルルゥとカニっち同じくらい」
「うるせぇダボが! ボクの方がさり気なく大きいんだよ!」
「アルルゥ、これからのびる」
「嫌味か!? 嫌味なのかこんにゃろぉぉぉ!」
逃げるアルルゥを、蟹沢は一生懸命追いかけ……気付いた。
(ボク、まだ元気じゃん)
と、悲劇のヒロインの如く苦笑いを浮かべた蟹沢の周囲が、突然暗くなる。
「あり」
太陽が隠れたのかと周囲を見渡すが、陰っているのは蟹沢のいる地点のみだ。
「カニっち」
追いかけていたはずのアルルゥが近寄ってくる。
「お、ようやく降参か? へへん。お仕置きしてやっからそこに座りな!」
「上」
「んぁ?」
アルルゥが上に向かって手を差し出すのにつられて、手の先を追うように空を見上げる。
視線の先にいたのは、空中から落下してくる青い髪の女。どう考えても避けられない。
「ばっ、オメーそう言う事は先に――」
文句を言い終わる前に、重い音を響かせて蟹沢は少女の下敷きとなった。
一連の出来事を遠くから見ていた瑞穂が、慌てて近付いてきた。
「だ、大丈夫!?」
「アルルゥ平気」
「下敷きになったボクを心配しろよな!」
「カニっち無事」
「無事じゃないだろダボ! てか、早くこのアマどかせよぉ~」
「あ。はい!」
二人のコントの様なやり取りで噴き出してしまった瑞穂は、誤魔化すように青い髪の女をどける。
押し潰されたへばっている蟹沢を放置して、落ちてきた方に注目する。
「外人さん……かしら」
ここまで綺麗な青髪を、瑞穂は見たことがない。アルルゥも、興味深そうに覗き込んでいた。
「どりどり。おお、見たことねー外人だな」
淡く白い肌を突付きながら、目を閉じている女を見下ろす。
気絶しているのか、呼びかけてもなかなか反応しない。
すると、突然アルルゥが首を横に振り出す。そして、蟹沢の小指を掴むと一気に走り出した。
「アルちゃん!?」
「いだだだだだ! ちょ、いきなり何すんじゃボケぇ!」
「おしっこ」
その場で立ち上がる瑞穂と、小指を掴んで痛がる蟹沢に短く用件を伝える。
それを聞いた瑞穂は、不安になりながらも二人を送り出した。
本当は追いかけたいが、そんな事をしたらただの変態である。
「あまり遠くにいっちゃ駄目だからね!」
二人の姿は、木陰の中へと消えていった。
最初にあっけなく殺されたフカヒレの死、そして出会う事無く放送で流れたレオの死。
さらに病院で待ち合わせるといった稟とも、未だ合流できないままでいる苛立ち。
大事な仲間の二人を失ったことや、約束に間に合わない焦りで、自分でもどうしたら良いか判断できなくなっていた。
抗う事の出来ない現実に、心は押し潰されつつある。
ようやく全てを吐き出した蟹沢は、堰を切ったように叫んだ。
「こんなん面白くもなんともねぇよ! 誰か何とかしろよー!」
精一杯の虚勢を張って瑞穂に八つ当たりする。
「お前何とかしろよぉ! だいたい、なんでボクがこんな目に会わなきゃいけないんだよ!」
誰かの所為にして楽になりたい。だから、身近に居た瑞穂に罵声を浴びせた。
彼女に文句を言うのは見当違いと分かりながらも、言葉は止まらない。
それなのに、泣き叫んだ蟹沢を瑞穂はそっと抱きしめた。
「なっ――」
罵倒した蟹沢を拒絶するでも、無視するでもなく、ただ強く抱きしめた。
「頑張ってって、気安く言うつもりはないけれど」
「……」
「でも、諦めたらそれで終わりよ」
「ッ……ぅぅ」
「ね。一緒に帰りましょう」
「ぐすッ……帰りてぇよぉ……ちくしょぉぉ……」
瑞穂の胸の中で、蟹沢は声を忍ばせ泣き続けた。
涙の中で受け入れる。レオには二度と会えない事を。
そして、涙を流し終えた時にはまた頑張ろうと心に誓う。
涙が枯れ、瑞穂の体からそっと体を離す。
そこで、一度も会話をしていなかったアルルゥと視線がぶつかる。
ずっと瑞穂に抱きしめられ、泣いていたのが恥ずかしいのか、誤魔化すように文句を口にする。
「んだよ、こっちみんなよぉ~」
涙を袖で拭い、覗き見るアルルゥを手で追い払う。
「……」
だが、アルルゥは何も言わずただじっと蟹沢の顔を見ているだけ。
「おめぇ、ボクの顔がそんなに面白いかのよ! 泣いて悪いのかよ!?」
「アルルゥもお姉ちゃん死んだ」
「あ? 誰が死んだって?」
聞き間違いかと思った蟹沢は、以下の言葉をもう一度問いただす。
「お姉ちゃん。死んだ」
「……っ」
「カルラおねえちゃんも死んだ」
淡々と語る言葉に、蟹沢は何も答えられない。
この自分より一回りも小さいような少女も、大切な人間を失っていたのだ。
「でも」
その瞳は、全てを諦め始めた蟹沢と違い力強く感じられる。
だから、蟹沢は何も言い返さずアルルゥの言葉を聞き続けた。
「アルルゥおとーさんに会いたい。一緒に帰る」
「……」
「瑞穂おねーちゃんも、トウカおねーちゃんも、アカサカも、みんなみんな一緒」
「……」
「だから、カニっちも一緒に帰る」
「んだよぉ」
こんなに小さいのに、大好きだったであろう人を失ったはずだろうに。
彼女の笑顔は太陽のように暖かだった。
「ボクは蟹沢きぬだ!」
「だからカニっち。アルルゥあだ名付けた」
「じゃあお前はチビだな!」
「アルルゥとカニっち同じくらい」
「うるせぇダボが! ボクの方がさり気なく大きいんだよ!」
「アルルゥ、これからのびる」
「嫌味か!? 嫌味なのかこんにゃろぉぉぉ!」
逃げるアルルゥを、蟹沢は一生懸命追いかけ……気付いた。
(ボク、まだ元気じゃん)
と、悲劇のヒロインの如く苦笑いを浮かべた蟹沢の周囲が、突然暗くなる。
「あり」
太陽が隠れたのかと周囲を見渡すが、陰っているのは蟹沢のいる地点のみだ。
「カニっち」
追いかけていたはずのアルルゥが近寄ってくる。
「お、ようやく降参か? へへん。お仕置きしてやっからそこに座りな!」
「上」
「んぁ?」
アルルゥが上に向かって手を差し出すのにつられて、手の先を追うように空を見上げる。
視線の先にいたのは、空中から落下してくる青い髪の女。どう考えても避けられない。
「ばっ、オメーそう言う事は先に――」
文句を言い終わる前に、重い音を響かせて蟹沢は少女の下敷きとなった。
一連の出来事を遠くから見ていた瑞穂が、慌てて近付いてきた。
「だ、大丈夫!?」
「アルルゥ平気」
「下敷きになったボクを心配しろよな!」
「カニっち無事」
「無事じゃないだろダボ! てか、早くこのアマどかせよぉ~」
「あ。はい!」
二人のコントの様なやり取りで噴き出してしまった瑞穂は、誤魔化すように青い髪の女をどける。
押し潰されたへばっている蟹沢を放置して、落ちてきた方に注目する。
「外人さん……かしら」
ここまで綺麗な青髪を、瑞穂は見たことがない。アルルゥも、興味深そうに覗き込んでいた。
「どりどり。おお、見たことねー外人だな」
淡く白い肌を突付きながら、目を閉じている女を見下ろす。
気絶しているのか、呼びかけてもなかなか反応しない。
すると、突然アルルゥが首を横に振り出す。そして、蟹沢の小指を掴むと一気に走り出した。
「アルちゃん!?」
「いだだだだだ! ちょ、いきなり何すんじゃボケぇ!」
「おしっこ」
その場で立ち上がる瑞穂と、小指を掴んで痛がる蟹沢に短く用件を伝える。
それを聞いた瑞穂は、不安になりながらも二人を送り出した。
本当は追いかけたいが、そんな事をしたらただの変態である。
「あまり遠くにいっちゃ駄目だからね!」
二人の姿は、木陰の中へと消えていった。
◇ ◇ ◇ ◇
トロッコで移動していたアセリアは、予想以上のスピードとうねりで頭がくらくらしていた。
戦場では縦横無尽に駆ける彼女も、こんな乱暴な乗り物に乗るのは生まれて初めてだ。
かれこれ一時間は走ったのだろうに、トロッコの勢いが止まる気配がない。
いつ到着するか解からない終着点まで、ただただ動き続けるのだろう。
そんな考えを考えながら、アセリアは今のうちにと休息を取るべく体を楽にした。
だが、タイミングの悪い事に、楽になった途端にトロッコは急停止してしまう。
そして、急停止した反動でアセリアの体は、空高く放り出されることとなった。
空を舞う力のないアセリアは、ただ地面へと落下していく。
落下するさなか、地面の方から二つの気配を感じた。気になったので、なんとか空中で首を捻り下を見る。
するとそこには、オルファと変わらないくらいの小さな少女達が大地を駆け回っていた。
一人はこちらに気付いていないが、黒髪の少女とは視線が重なる。
その瞬間、アセリアの中で何かが駆け巡った気がした。
瞳から目を逸らす事無く、アセリアは少女を見続けていた。
黒く輝く瞳の中に見える何かが、アセリアの警戒を解いていく。
少女の目を見ているだけで、どういうわけか胸がざわめく。
手を伸ばす少女につられて、アセリアもゆっくり手を伸ばす。あと少しで触れられる。
が、少女に触れる前にアセリアは地面へと墜落した。
目が回っていた所に加えられた衝撃に、視界がゆっくりと溶けていく。
全てが溶けきる瞬間、アセリアは少女と再び目が合った。
(お腹すいた?)
つぶらな瞳は、何故かそう語りかけている気がした。
(ちょっと)
だがら、アセリアも答える。そして伝わるのを確認する前に視界から全てが消えた。
戦場では縦横無尽に駆ける彼女も、こんな乱暴な乗り物に乗るのは生まれて初めてだ。
かれこれ一時間は走ったのだろうに、トロッコの勢いが止まる気配がない。
いつ到着するか解からない終着点まで、ただただ動き続けるのだろう。
そんな考えを考えながら、アセリアは今のうちにと休息を取るべく体を楽にした。
だが、タイミングの悪い事に、楽になった途端にトロッコは急停止してしまう。
そして、急停止した反動でアセリアの体は、空高く放り出されることとなった。
空を舞う力のないアセリアは、ただ地面へと落下していく。
落下するさなか、地面の方から二つの気配を感じた。気になったので、なんとか空中で首を捻り下を見る。
するとそこには、オルファと変わらないくらいの小さな少女達が大地を駆け回っていた。
一人はこちらに気付いていないが、黒髪の少女とは視線が重なる。
その瞬間、アセリアの中で何かが駆け巡った気がした。
瞳から目を逸らす事無く、アセリアは少女を見続けていた。
黒く輝く瞳の中に見える何かが、アセリアの警戒を解いていく。
少女の目を見ているだけで、どういうわけか胸がざわめく。
手を伸ばす少女につられて、アセリアもゆっくり手を伸ばす。あと少しで触れられる。
が、少女に触れる前にアセリアは地面へと墜落した。
目が回っていた所に加えられた衝撃に、視界がゆっくりと溶けていく。
全てが溶けきる瞬間、アセリアは少女と再び目が合った。
(お腹すいた?)
つぶらな瞳は、何故かそう語りかけている気がした。
(ちょっと)
だがら、アセリアも答える。そして伝わるのを確認する前に視界から全てが消えた。
再びアセリアが目を覚ますと、青い空と鮮やかな木々が揺れ動いた。
すぐに自分が仰向けになっている事を理解した。それにしては地面が柔らかい。
目線をずらすと、長髪の女の顔がそこにあった。
(敵)
即座に動こうとしたが、どこか打ったのか起き上がれない。
アセリアが目を覚ましたのに気付いた長髪の女は、アセリアの青い髪を梳きながら口を開いた。
「お目覚めかしら」
その微笑みは、どこかエスペリアを連想させる。
襲ってくる気配も殺気もない。とりあえずもう少し様子を見ることにした。
女は何も語らず、ただアセリアの髪を梳き続けた。
(ん)
妙にくすぐったいが、悪い気はしない。
しばらく身を任せていると、小さな茂みが揺れる。
警戒するため立ち上がろうとするが、頭が痛んでよろめいてしまう。
「あ、まだ寝てなきゃ駄目よ」
女に支えられ、アセリアは再び膝枕の体制に戻る。
(ダメージの回復が遅い)
カルラとの戦いでも感じたが、肉体の損傷の回復が遅過ぎる。
それに永遠神剣が無いとは言え、身体能力もかなり低下しているようだ。
そんな事を考えていると、先程揺れた茂みから二人の少女が飛び出してきた。
「きゃっほぅ~! アルルゥ一番」
「ゴラァ! このクソチビがぁ! のわぁぁ!」
後から来た少女は、怒りの表情で前の少女を追いかけて、石に躓いて転倒した。
(こいつも強そうじゃない)
一瞬でそう判断しつつ、最後にその前を走る少女を見てアセリアは目を大きく開く。
その顔は、気絶する前に見た少女だった。またも胸がざわめく。
「起きたか」
少女がこちらに気付いて走り寄ってくる。そして、ぺたぺたと体中を触りだす。
ただ触られているだけなのに、不快な感じはしない。
「痛い?」
「ん」
お互い言葉が伝わったのか、少女はアセリアの後頭部を撫で始める。
不思議と、頭の鈍い痛みが軽くなっていくように錯覚する。
しばらく続いた沈黙を破ったのは、倒れていた少女だった。
目尻に涙を浮かべ、両腕を挙げ突進してくる。
「おめぇら、ボクの心配もしろよな!」
「カニっち無事」
「だから無事じゃねぇーよ! 見ろよこの傷! どんだけ刺されたと思ってるんじゃい!」
「ど、どうしたのその傷!?」
「おー聞いちくれよ。実はな――」
威勢のいい少女は、早口で先ほどまでの出来事を語りだした。
すぐに自分が仰向けになっている事を理解した。それにしては地面が柔らかい。
目線をずらすと、長髪の女の顔がそこにあった。
(敵)
即座に動こうとしたが、どこか打ったのか起き上がれない。
アセリアが目を覚ましたのに気付いた長髪の女は、アセリアの青い髪を梳きながら口を開いた。
「お目覚めかしら」
その微笑みは、どこかエスペリアを連想させる。
襲ってくる気配も殺気もない。とりあえずもう少し様子を見ることにした。
女は何も語らず、ただアセリアの髪を梳き続けた。
(ん)
妙にくすぐったいが、悪い気はしない。
しばらく身を任せていると、小さな茂みが揺れる。
警戒するため立ち上がろうとするが、頭が痛んでよろめいてしまう。
「あ、まだ寝てなきゃ駄目よ」
女に支えられ、アセリアは再び膝枕の体制に戻る。
(ダメージの回復が遅い)
カルラとの戦いでも感じたが、肉体の損傷の回復が遅過ぎる。
それに永遠神剣が無いとは言え、身体能力もかなり低下しているようだ。
そんな事を考えていると、先程揺れた茂みから二人の少女が飛び出してきた。
「きゃっほぅ~! アルルゥ一番」
「ゴラァ! このクソチビがぁ! のわぁぁ!」
後から来た少女は、怒りの表情で前の少女を追いかけて、石に躓いて転倒した。
(こいつも強そうじゃない)
一瞬でそう判断しつつ、最後にその前を走る少女を見てアセリアは目を大きく開く。
その顔は、気絶する前に見た少女だった。またも胸がざわめく。
「起きたか」
少女がこちらに気付いて走り寄ってくる。そして、ぺたぺたと体中を触りだす。
ただ触られているだけなのに、不快な感じはしない。
「痛い?」
「ん」
お互い言葉が伝わったのか、少女はアセリアの後頭部を撫で始める。
不思議と、頭の鈍い痛みが軽くなっていくように錯覚する。
しばらく続いた沈黙を破ったのは、倒れていた少女だった。
目尻に涙を浮かべ、両腕を挙げ突進してくる。
「おめぇら、ボクの心配もしろよな!」
「カニっち無事」
「だから無事じゃねぇーよ! 見ろよこの傷! どんだけ刺されたと思ってるんじゃい!」
「ど、どうしたのその傷!?」
「おー聞いちくれよ。実はな――」
威勢のいい少女は、早口で先ほどまでの出来事を語りだした。
◇ ◇ ◇ ◇
用を足すためと連れて来られた蟹沢は、大木の下で欠伸をしながらアルルゥを待っていた。
「おーい。まだかチビー」
「まだ」
「早くしろよなぁ。まさか、おっきい方じゃないだろーな! ボク紙持ってないぞ!」
これでもう何度目になるか分からないやりとりを、二人は続けていた。
待たされていてもご機嫌なのは、アルルゥがどこかから見つけた蜂の蜜をくれたからだ。
そんな蟹沢の周囲を、小さな蜂が威嚇するように飛んでいる。
「シィィィィィ! これはボクんだぞ!」
威嚇返しをすると、蜂は恐れたのか遠くに飛んでいった。
が、また別の蜂が何匹か現れて、蟹沢を囲むように飛び回る。
「ケンカうってんのか? 来るなら来いやぁ!」
若干ビビリつつも、力んでみる。だが、数は減るどころか徐々にに増えていく。
冷静になった時には、蜂が群れて黒い塊となっていた。
「お、おい! チビ~! 早くしろって……」
怖くなって急かそうと後ろを向いた蟹沢は、石を投げようとしているアルルゥと目が合う。
投げるモーションの最中だったのか、石はアルルゥの手を離れ蟹沢の真上にある蜂の巣に当たる。
そこから飛び出した何匹もの蜂が、黒い塊に潜り込んで行く。
「何しとんじゃボケェェ!!」
「カニっち前」
「あ?」
アルルゥから蜂の大群に目を移すと、さっきまで少し離れた場所にいた大群が迫ってきていた。
「のわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
慌てて逃げ出す蟹沢。それを追いかけるように蜂の大群は猛攻を続ける。
「いでぇ! やめ、ボクを刺すなぁ!」
その隙に、アルルゥは木にぶら下がっていた蜂の巣を取るとデイパックにさっさとしまう。
そして、デイパックを引きずりながらもと来た道に戻ろうとしたいた。
「カニっち。帰ろ」
「帰ろ……じゃねぇ! いだ! どうにかしろよこれぇ! あいでぇ!」
「走って振り切る」
「おお! よっしゃぁぁぁああ!!」
アルルゥと蟹沢は、力の限り森を駆け抜けた。
蜂の大群が、何故か蟹沢だけに標的を絞って攻撃を仕掛けたのは謎であるが。
そうしてなんとか蜂を振り切った二人は、ようやく瑞穂達の所に帰ってきたのである。
「おーい。まだかチビー」
「まだ」
「早くしろよなぁ。まさか、おっきい方じゃないだろーな! ボク紙持ってないぞ!」
これでもう何度目になるか分からないやりとりを、二人は続けていた。
待たされていてもご機嫌なのは、アルルゥがどこかから見つけた蜂の蜜をくれたからだ。
そんな蟹沢の周囲を、小さな蜂が威嚇するように飛んでいる。
「シィィィィィ! これはボクんだぞ!」
威嚇返しをすると、蜂は恐れたのか遠くに飛んでいった。
が、また別の蜂が何匹か現れて、蟹沢を囲むように飛び回る。
「ケンカうってんのか? 来るなら来いやぁ!」
若干ビビリつつも、力んでみる。だが、数は減るどころか徐々にに増えていく。
冷静になった時には、蜂が群れて黒い塊となっていた。
「お、おい! チビ~! 早くしろって……」
怖くなって急かそうと後ろを向いた蟹沢は、石を投げようとしているアルルゥと目が合う。
投げるモーションの最中だったのか、石はアルルゥの手を離れ蟹沢の真上にある蜂の巣に当たる。
そこから飛び出した何匹もの蜂が、黒い塊に潜り込んで行く。
「何しとんじゃボケェェ!!」
「カニっち前」
「あ?」
アルルゥから蜂の大群に目を移すと、さっきまで少し離れた場所にいた大群が迫ってきていた。
「のわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
慌てて逃げ出す蟹沢。それを追いかけるように蜂の大群は猛攻を続ける。
「いでぇ! やめ、ボクを刺すなぁ!」
その隙に、アルルゥは木にぶら下がっていた蜂の巣を取るとデイパックにさっさとしまう。
そして、デイパックを引きずりながらもと来た道に戻ろうとしたいた。
「カニっち。帰ろ」
「帰ろ……じゃねぇ! いだ! どうにかしろよこれぇ! あいでぇ!」
「走って振り切る」
「おお! よっしゃぁぁぁああ!!」
アルルゥと蟹沢は、力の限り森を駆け抜けた。
蜂の大群が、何故か蟹沢だけに標的を絞って攻撃を仕掛けたのは謎であるが。
そうしてなんとか蜂を振り切った二人は、ようやく瑞穂達の所に帰ってきたのである。
◇ ◇ ◇ ◇
「って事でよぉ~。まだヒリヒリするぜコンチクショウ」
「た、大変だったわね」
「面白かった」
「面白いかボケぇ! 刺されたボクの身にもなってみろや!」
「アルルゥも刺された」
「チビは2箇所だけだろ!? ボクなんか十何箇所も刺されたんだぞ!」
涙を浮かべながら文句を叫ぶ。
「カニっち泣いてる」
「泣いてない! 泣いてないもんね!」
こんな二人を、青い髪の女はただジッと見つめていた。
それに気が付いたアルルゥは、デイパックから蜂の巣を取り出す。
そして、近くにあった鋭い石で巣を割ると、女に差し出した。
「食べる」
ここにハクオロやエルルゥがいれば驚いたであろう。
瑞穂の時もそうだったが、極度の人見知り屋であるアルルゥが、初対面の相手に積極的なのだから。
アルルゥ自身も、なぜ怖がらないのか分かってはいない。
ただ、この青い髪の女に惹かれているのは事実である。
それを例えるなら、ムックルやガチャタラと接するように。
お互い無言のまま見つめあうが、アルルゥは気にせず女に差し出し続ける。
「ばっかおめぇ、こんな気色悪いもん食うかよ」
小馬鹿にする蟹沢をよそに、女はゆっくりと手を伸ばしてきた。
そして、躊躇う事無く半分を口に含んだ。
「美味い」
ただ一言そう呟くと、残った半分も口に放り投げる。
その様子を見ていた蟹沢は、興味を惹かれたように蜂の巣に手を伸ばす。
が、そのもぞもぞと蠢く幼虫を見て手を引っ込める。
「はい」
そんな事をしている間に、アルルゥは瑞穂にも蜂の巣を割って渡す。
貰ったときはどうしようか悩んでいた瑞穂だったが、目を瞑って口に含む。
「あ。美味しい」
目を輝かせ、少しずつ割りながら口に含んでいく。
それを満足気に確認したアルルゥは、残った蜂の巣にむしゃぶりつく。
「んふぅ。まぁまぁ」
戦利品に批評をつけながら、小さな口で蜂の巣をかじる。
そんな三人を見て我慢できなくなった蟹沢は、もの欲しそうにアルルゥを見る。
「食べる」
その視線に気付いたアルルゥは、まだ大きな蜂の巣を割って蟹沢に差し出す。
「しょ、しょうがないから食べてやるよ」
そして、力一杯目を閉じると意を決して口に放り込む。
「お、なんだコレ。超うめぇ~ぞ!」
見た目こそ気持ち悪かったが、食べてみるとそんな印象は一瞬で吹っ飛んだ。
一気に食べ終えると、まだアルルゥの手元で残っている蜂の巣に手を伸ばす。
だが、それを阻止するように蜂の巣をデイパックにしまうアルルゥ。
「だめ」
「ケチケチすんなよぉ」
アルルゥをくすぐりながら、なんとか蜂の巣を奪おうと必死になる。
が、アルルゥは首を横に振りそれを退けた。
「残りはおとーさんの分」
その言葉に、蟹沢は手を出せなくなる。そんな蟹沢に、瑞穂は自分の残りを差し出した。
「はい。私は十分堪能したから」
「お、さんきゅう」
瑞穂の手から受け取ると、蟹沢は一気にそれを食べ尽くした。
「た、大変だったわね」
「面白かった」
「面白いかボケぇ! 刺されたボクの身にもなってみろや!」
「アルルゥも刺された」
「チビは2箇所だけだろ!? ボクなんか十何箇所も刺されたんだぞ!」
涙を浮かべながら文句を叫ぶ。
「カニっち泣いてる」
「泣いてない! 泣いてないもんね!」
こんな二人を、青い髪の女はただジッと見つめていた。
それに気が付いたアルルゥは、デイパックから蜂の巣を取り出す。
そして、近くにあった鋭い石で巣を割ると、女に差し出した。
「食べる」
ここにハクオロやエルルゥがいれば驚いたであろう。
瑞穂の時もそうだったが、極度の人見知り屋であるアルルゥが、初対面の相手に積極的なのだから。
アルルゥ自身も、なぜ怖がらないのか分かってはいない。
ただ、この青い髪の女に惹かれているのは事実である。
それを例えるなら、ムックルやガチャタラと接するように。
お互い無言のまま見つめあうが、アルルゥは気にせず女に差し出し続ける。
「ばっかおめぇ、こんな気色悪いもん食うかよ」
小馬鹿にする蟹沢をよそに、女はゆっくりと手を伸ばしてきた。
そして、躊躇う事無く半分を口に含んだ。
「美味い」
ただ一言そう呟くと、残った半分も口に放り投げる。
その様子を見ていた蟹沢は、興味を惹かれたように蜂の巣に手を伸ばす。
が、そのもぞもぞと蠢く幼虫を見て手を引っ込める。
「はい」
そんな事をしている間に、アルルゥは瑞穂にも蜂の巣を割って渡す。
貰ったときはどうしようか悩んでいた瑞穂だったが、目を瞑って口に含む。
「あ。美味しい」
目を輝かせ、少しずつ割りながら口に含んでいく。
それを満足気に確認したアルルゥは、残った蜂の巣にむしゃぶりつく。
「んふぅ。まぁまぁ」
戦利品に批評をつけながら、小さな口で蜂の巣をかじる。
そんな三人を見て我慢できなくなった蟹沢は、もの欲しそうにアルルゥを見る。
「食べる」
その視線に気付いたアルルゥは、まだ大きな蜂の巣を割って蟹沢に差し出す。
「しょ、しょうがないから食べてやるよ」
そして、力一杯目を閉じると意を決して口に放り込む。
「お、なんだコレ。超うめぇ~ぞ!」
見た目こそ気持ち悪かったが、食べてみるとそんな印象は一瞬で吹っ飛んだ。
一気に食べ終えると、まだアルルゥの手元で残っている蜂の巣に手を伸ばす。
だが、それを阻止するように蜂の巣をデイパックにしまうアルルゥ。
「だめ」
「ケチケチすんなよぉ」
アルルゥをくすぐりながら、なんとか蜂の巣を奪おうと必死になる。
が、アルルゥは首を横に振りそれを退けた。
「残りはおとーさんの分」
その言葉に、蟹沢は手を出せなくなる。そんな蟹沢に、瑞穂は自分の残りを差し出した。
「はい。私は十分堪能したから」
「お、さんきゅう」
瑞穂の手から受け取ると、蟹沢は一気にそれを食べ尽くした。
◇ ◇ ◇ ◇
「えっと、自己紹介がまだだったわね。私は宮小路瑞穂です」
「かにさ――」
「アルルゥ。カニっち」
「てめぇ、ボクの自己紹介を勝手にやるなぁ! てか、それ名前じゃねーぞおい!」
「アセリア・ブルースピリット」
「おめぇも素通りするんなや!」
喚く蟹沢をなだめながら、瑞穂はアセリアに質問を投げかける。
「アセリアさんは、どうして空から降ってきたのかしら」
「ん……飛んだ」
「飛んだ?」
「トロッコに乗っていたら飛んだ」
「どゆこと?」
頭上にハテナマークを浮かべながら、蟹沢は首を捻る。
いまいち要領を得ない内容に、瑞穂は再び質問を重ねた。
「どうしてトロッコに乗っていたのかしら」
文句を言う事無く、アセリアはぶっきらぼうに語りだした。
自分がカルラと戦い敗れた事。その後トロッコに乗ってここまで来た事。
これから強い相手を探す事。強いと思われるハクオロを探す事。殺し合いに乗る事。
殺し合いに乗っていると聞いて警戒した瑞穂や蟹沢と違い、アルルゥは静かだった。
反応したのは、ハクオロとカルラの名前を聞いた時だけで、それ以外で騒ぎはしなかった。
全て語り終えたアセリアも、カルラが死んでいた事を残念に思っていた。
まだ負けた借りを返さないうちに、勝逃げされたと言う事になる。
ハクオロの名前が出てから黙り続けていたアルルゥは、質問を一つ投げかけた。
「おとーさんいじめるか?」
「?」
その「おとーさん」が誰を指す言葉か理解できない。その言葉を解説するように、瑞穂は言葉を繋げる。
「ハクオロさんって、アルちゃんのお父さんなの」
その事実を聞いて、改めてアルルゥを見つめる。
アルルゥは、ただただ先程の質問の答えを待っていた。
「強い相手と戦いたい」
アセリアは本音を語った。
「おとーさん強い。けど死ぬのやだ」
こちらも、淡々と本音を語る。
瑞穂も蟹沢も、二人に割って入るような事はしない。
先に口を開いたのはアセリアだった。
「殺さなければ戦っていいか?」
「……みんな一緒に帰ったら後ならいい」
「ん」
「だから約束。この島でおとーさん殺さない」
アルルゥの出した条件は、最初に出された命令と相反するものだ。
そんな約束を飲み込めるはずがない。それなのに、彼女の言葉は有無を言わせない。
暫く悩んだ後、アセリアはゆっくりと答えを出した。
「この島から出たら必ず戦うか?」
「アルルゥ約束する」
力強い宣言に、アセリアは納得してしまう。
「約束」
二人は互いの目を見つめながら、その約束を心に刻んだ。
そんな二人を見ていた蟹沢が意を決したように呟く。
「おい瑞穂」
「あ、ごめんなさい。お腹すいたのかしら」
「ちげーよ! 欠食児扱いすんなや! ……ボクさ、病院に行くからな!」
「ど、どうして!?」
「あのヘタレと約束したんだ。病院で待ち合わせるって……約束だからな」
「でも、一人じゃ危険よ」
「大丈夫だって! ボクの瞬発力を舐めるなよ!」
「だけど!」
「……んだよ」
「え?」
「約束したっつってんだよ! 絶対に病院で待ち合わせるってよぉ!」
凄む蟹沢に、瑞穂は必死で食い下がる。この島で単独行動させるのは危険過ぎる。
それに話によれば、約束した時間はとうに過ぎてしまっているのだ。
それを理解しつつも、カニは折れる事無く瑞穂に食い下がり続けた。
あれだけ沈んでいた顔に、生気が宿っているのが良く解かる。
結局、瑞穂が全面的に折れる事となった。
「解かりました。けど、必ず戻ってくるって約束して頂戴」
「おお! 泥舟に乗ったように安心しとけ」
「……これを」
瑞穂は二本しかない投げナイフのうち、一本を蟹沢に託す。
「何があっても無理はしない事。必ず私達の所に戻る事」
「大丈夫だって。ボクを信じろよな……あ」
蟹沢は、大切にしまっておいたギャルゲーを瑞穂に手渡す。
「ナイフと交換でこれを預けとくからよ。無くすんじゃねーぞ!」
「ええ」
「じゃ、行って――」
「瑞穂おねえちゃんしゃがむ!」
全て言い終わる前に、アルルゥが瑞穂を押し倒す。
その直後、乾いた音が瑞穂の後ろにあった大木に突き刺さる。
それが何者かからの攻撃だとに気付いた瑞穂とアセリアは、即座に木陰へと避難した。
蟹沢とアルルゥも、瑞穂のスカートを掴んで同じところに隠れた。
冷静に周囲を見渡すと、視線の先では銃を構えた少女がこちらを睨みつけていた。
「かにさ――」
「アルルゥ。カニっち」
「てめぇ、ボクの自己紹介を勝手にやるなぁ! てか、それ名前じゃねーぞおい!」
「アセリア・ブルースピリット」
「おめぇも素通りするんなや!」
喚く蟹沢をなだめながら、瑞穂はアセリアに質問を投げかける。
「アセリアさんは、どうして空から降ってきたのかしら」
「ん……飛んだ」
「飛んだ?」
「トロッコに乗っていたら飛んだ」
「どゆこと?」
頭上にハテナマークを浮かべながら、蟹沢は首を捻る。
いまいち要領を得ない内容に、瑞穂は再び質問を重ねた。
「どうしてトロッコに乗っていたのかしら」
文句を言う事無く、アセリアはぶっきらぼうに語りだした。
自分がカルラと戦い敗れた事。その後トロッコに乗ってここまで来た事。
これから強い相手を探す事。強いと思われるハクオロを探す事。殺し合いに乗る事。
殺し合いに乗っていると聞いて警戒した瑞穂や蟹沢と違い、アルルゥは静かだった。
反応したのは、ハクオロとカルラの名前を聞いた時だけで、それ以外で騒ぎはしなかった。
全て語り終えたアセリアも、カルラが死んでいた事を残念に思っていた。
まだ負けた借りを返さないうちに、勝逃げされたと言う事になる。
ハクオロの名前が出てから黙り続けていたアルルゥは、質問を一つ投げかけた。
「おとーさんいじめるか?」
「?」
その「おとーさん」が誰を指す言葉か理解できない。その言葉を解説するように、瑞穂は言葉を繋げる。
「ハクオロさんって、アルちゃんのお父さんなの」
その事実を聞いて、改めてアルルゥを見つめる。
アルルゥは、ただただ先程の質問の答えを待っていた。
「強い相手と戦いたい」
アセリアは本音を語った。
「おとーさん強い。けど死ぬのやだ」
こちらも、淡々と本音を語る。
瑞穂も蟹沢も、二人に割って入るような事はしない。
先に口を開いたのはアセリアだった。
「殺さなければ戦っていいか?」
「……みんな一緒に帰ったら後ならいい」
「ん」
「だから約束。この島でおとーさん殺さない」
アルルゥの出した条件は、最初に出された命令と相反するものだ。
そんな約束を飲み込めるはずがない。それなのに、彼女の言葉は有無を言わせない。
暫く悩んだ後、アセリアはゆっくりと答えを出した。
「この島から出たら必ず戦うか?」
「アルルゥ約束する」
力強い宣言に、アセリアは納得してしまう。
「約束」
二人は互いの目を見つめながら、その約束を心に刻んだ。
そんな二人を見ていた蟹沢が意を決したように呟く。
「おい瑞穂」
「あ、ごめんなさい。お腹すいたのかしら」
「ちげーよ! 欠食児扱いすんなや! ……ボクさ、病院に行くからな!」
「ど、どうして!?」
「あのヘタレと約束したんだ。病院で待ち合わせるって……約束だからな」
「でも、一人じゃ危険よ」
「大丈夫だって! ボクの瞬発力を舐めるなよ!」
「だけど!」
「……んだよ」
「え?」
「約束したっつってんだよ! 絶対に病院で待ち合わせるってよぉ!」
凄む蟹沢に、瑞穂は必死で食い下がる。この島で単独行動させるのは危険過ぎる。
それに話によれば、約束した時間はとうに過ぎてしまっているのだ。
それを理解しつつも、カニは折れる事無く瑞穂に食い下がり続けた。
あれだけ沈んでいた顔に、生気が宿っているのが良く解かる。
結局、瑞穂が全面的に折れる事となった。
「解かりました。けど、必ず戻ってくるって約束して頂戴」
「おお! 泥舟に乗ったように安心しとけ」
「……これを」
瑞穂は二本しかない投げナイフのうち、一本を蟹沢に託す。
「何があっても無理はしない事。必ず私達の所に戻る事」
「大丈夫だって。ボクを信じろよな……あ」
蟹沢は、大切にしまっておいたギャルゲーを瑞穂に手渡す。
「ナイフと交換でこれを預けとくからよ。無くすんじゃねーぞ!」
「ええ」
「じゃ、行って――」
「瑞穂おねえちゃんしゃがむ!」
全て言い終わる前に、アルルゥが瑞穂を押し倒す。
その直後、乾いた音が瑞穂の後ろにあった大木に突き刺さる。
それが何者かからの攻撃だとに気付いた瑞穂とアセリアは、即座に木陰へと避難した。
蟹沢とアルルゥも、瑞穂のスカートを掴んで同じところに隠れた。
冷静に周囲を見渡すと、視線の先では銃を構えた少女がこちらを睨みつけていた。
◇ ◇ ◇ ◇
鷹野から指令を受けた舞は、標的を探すため走り続けていた。
のんびりしている時間などどこにもない。
早く佐祐理を助けるため一刻も早く他の参加者を殺さねばならないのだ。
そんな時、山のほうから叫び声が聞こえた気がした。
(誰かいる)
誰か生きている参加者がいるなら、すみやかに殺さねばならない。
舞は先程よりもさらに加速して山を駆け巡った。
一時間ほど走ったか、額に汗が滲み始めたところでようやく標的を発見する。
(四人)
まだ遠く離れているが、舞の視界には四人の女性が映っていた。
もう少し近づく事も考えたが、気付かれるのを警戒して踏みとどまる。
そして、躊躇なく木の茂みから狙いを定める。
(佐祐理のため、死んで)
一発で殺そうと慎重にトリガーを引いたが、狙っていた女が地面に倒れ外れてしまう。
さらに間の悪い事に、青い髪の女がこちらに気付いてしまった。
舞は奇襲を諦め、発砲しながら強襲する事にした。
銃声が響く中、着実に足を前に運ぶ。
相手からの反撃を警戒したが、こちらが誘い込むように発砲を控えても、動きがない。
(敵意がなくても容赦しない)
絶対に殺すと心に誓い、舞は殺意を銃弾に込め、一気に走り出した。
のんびりしている時間などどこにもない。
早く佐祐理を助けるため一刻も早く他の参加者を殺さねばならないのだ。
そんな時、山のほうから叫び声が聞こえた気がした。
(誰かいる)
誰か生きている参加者がいるなら、すみやかに殺さねばならない。
舞は先程よりもさらに加速して山を駆け巡った。
一時間ほど走ったか、額に汗が滲み始めたところでようやく標的を発見する。
(四人)
まだ遠く離れているが、舞の視界には四人の女性が映っていた。
もう少し近づく事も考えたが、気付かれるのを警戒して踏みとどまる。
そして、躊躇なく木の茂みから狙いを定める。
(佐祐理のため、死んで)
一発で殺そうと慎重にトリガーを引いたが、狙っていた女が地面に倒れ外れてしまう。
さらに間の悪い事に、青い髪の女がこちらに気付いてしまった。
舞は奇襲を諦め、発砲しながら強襲する事にした。
銃声が響く中、着実に足を前に運ぶ。
相手からの反撃を警戒したが、こちらが誘い込むように発砲を控えても、動きがない。
(敵意がなくても容赦しない)
絶対に殺すと心に誓い、舞は殺意を銃弾に込め、一気に走り出した。
◇ ◇ ◇ ◇
「あれは?」
瑞穂と別の木陰に隠れたアセリアは、見た事のない武器に興味を惹かれていた。
普通ならば銃を知らないのかと疑問に思う所だが、その疑問を飲み込み質問に答える。
「あれは銃です」
「銃?」
説明するため木の陰から顔を出すが、それを目ざとく見つけた女は銃口をこちらに向けて銃弾を放つ。
「あの女の子が持っている黒いものが銃です。あの先端から――」
瑞穂を覆い隠す大木に、次々と鋭い傷が付いていく。
「こうやって一瞬で遠くに攻撃できます」
「ん」
納得したのか、アセリアは一言呟いたあと押し黙った。そして、何度か首を出したり引っ込み足りを繰り返す。
そんな意味不明な行動を無表情で続けていたが、何度目かにしてその動きを止め呟く。
「あれなら倒せる」
「倒せるって……だって、銃ですよ!?」
「平気。目で追える」
「そんな馬鹿な」
アセリアの言葉に驚愕の表情を浮かべる。
一緒に聞いていたカニも、非常識な発言に眉をひそめる。
「おめー、ホントに見えてんのか?」
「ん」
嘘偽りなく、アセリアはただ一言だけ返した。
瑞穂は思案する。このまま持久戦に持ち込んでも誰かが助けてくれる訳でもない。
停戦を呼びかけたいが、いきなり撃ってきた上、未だに攻撃を続けている相手にそれは無理な話。
第一、今は一刻も早くカニを病院に向かわせ、自分達は茜と春原の二人と合流したいのだ。
それに、最悪この銃声を聞いて誰かがやってくるかもしれない。
殺し合いに乗っていない参加者ならば銃声を聞けば近寄る事はないだろう。
だが、その逆の参加者ならばどうするだろうか。
「……私も、及ばずながら協力します。その間に二人を逃がしましょう」
困惑するカニとアルルゥを抱きしめながら、別の木に隠れたアセリアに呼びかける。
だが、アセリアは瑞穂とアルルゥを見比べて呟いた。
「いらない」
「え?」
「私一人でいい……ミズホも行け」
「でも、銃相手に単独で危険過ぎます!」
「ん……飛んで来れば避ければ良いだけ」
「そんな――」
あくまで食い下がろうとする瑞穂を制したのは、アルルゥだった。
「アルルゥに任せる」
「?」
「アルルゥ達、博物館に行く?」
「あ、ええ」
突然の質問に困惑しながらも、瑞穂は答える。そして、それを確認したアルルゥはアセリアに向かって声を掛けた。
「アセっち。アルルゥ達博物館で待ってる。だから来る」
「おめー……こいつにもあだ名つけたのかよ」
いつの間にか、アセリアに対してもあだ名をつけていた。
けれど、アセリアはそんな些細な事で訂正する事は無かった。
「……ん」
理解したのか、コクリと頷く。
そんな二人を見て文句を言おうとしたが、アルルゥの無垢な瞳に反論できないまま口を閉じてしまう。
諦めた瑞穂は、アルルゥを抱きかかえつつ、カニに立ち去る準備をさせる。
そんな中、アルルゥはアセリアの瞳を見つめ、友達とお喋りする様に語りかけた。
「アセっち」
「……ん?」
「またアルルゥと蜂の巣食べる」
「……ん」
アルルゥの提案に小さく頷く。それだけで十分だった。
瑞穂も意を決してアルルゥを抱きかかえる。カニも荷物を持って万全の状態だ。
銃声が止んだのをきっかけに、瑞穂達は女を注意しつつ北へと向かって走り去っていった。
またそれとは別に、カニも東に向かって全力で駆け出していった。
二手に分かれて困惑する女を、隣の木陰から飛び出し牽制する。そして、鉄串で空気を薙ぎ払い戦闘の構えをとった。
命令でも強制でもない。それなのに、アルルゥの言葉はアセリアを虜にした。
自分よりも小さい姿をしていながら、その纏った不思議な雰囲気は彼女を大きく感じさせる。
アセリアを優しく包むそれは、海や川から得られる気持ち良さとはどこか違う。
瑞穂と別の木陰に隠れたアセリアは、見た事のない武器に興味を惹かれていた。
普通ならば銃を知らないのかと疑問に思う所だが、その疑問を飲み込み質問に答える。
「あれは銃です」
「銃?」
説明するため木の陰から顔を出すが、それを目ざとく見つけた女は銃口をこちらに向けて銃弾を放つ。
「あの女の子が持っている黒いものが銃です。あの先端から――」
瑞穂を覆い隠す大木に、次々と鋭い傷が付いていく。
「こうやって一瞬で遠くに攻撃できます」
「ん」
納得したのか、アセリアは一言呟いたあと押し黙った。そして、何度か首を出したり引っ込み足りを繰り返す。
そんな意味不明な行動を無表情で続けていたが、何度目かにしてその動きを止め呟く。
「あれなら倒せる」
「倒せるって……だって、銃ですよ!?」
「平気。目で追える」
「そんな馬鹿な」
アセリアの言葉に驚愕の表情を浮かべる。
一緒に聞いていたカニも、非常識な発言に眉をひそめる。
「おめー、ホントに見えてんのか?」
「ん」
嘘偽りなく、アセリアはただ一言だけ返した。
瑞穂は思案する。このまま持久戦に持ち込んでも誰かが助けてくれる訳でもない。
停戦を呼びかけたいが、いきなり撃ってきた上、未だに攻撃を続けている相手にそれは無理な話。
第一、今は一刻も早くカニを病院に向かわせ、自分達は茜と春原の二人と合流したいのだ。
それに、最悪この銃声を聞いて誰かがやってくるかもしれない。
殺し合いに乗っていない参加者ならば銃声を聞けば近寄る事はないだろう。
だが、その逆の参加者ならばどうするだろうか。
「……私も、及ばずながら協力します。その間に二人を逃がしましょう」
困惑するカニとアルルゥを抱きしめながら、別の木に隠れたアセリアに呼びかける。
だが、アセリアは瑞穂とアルルゥを見比べて呟いた。
「いらない」
「え?」
「私一人でいい……ミズホも行け」
「でも、銃相手に単独で危険過ぎます!」
「ん……飛んで来れば避ければ良いだけ」
「そんな――」
あくまで食い下がろうとする瑞穂を制したのは、アルルゥだった。
「アルルゥに任せる」
「?」
「アルルゥ達、博物館に行く?」
「あ、ええ」
突然の質問に困惑しながらも、瑞穂は答える。そして、それを確認したアルルゥはアセリアに向かって声を掛けた。
「アセっち。アルルゥ達博物館で待ってる。だから来る」
「おめー……こいつにもあだ名つけたのかよ」
いつの間にか、アセリアに対してもあだ名をつけていた。
けれど、アセリアはそんな些細な事で訂正する事は無かった。
「……ん」
理解したのか、コクリと頷く。
そんな二人を見て文句を言おうとしたが、アルルゥの無垢な瞳に反論できないまま口を閉じてしまう。
諦めた瑞穂は、アルルゥを抱きかかえつつ、カニに立ち去る準備をさせる。
そんな中、アルルゥはアセリアの瞳を見つめ、友達とお喋りする様に語りかけた。
「アセっち」
「……ん?」
「またアルルゥと蜂の巣食べる」
「……ん」
アルルゥの提案に小さく頷く。それだけで十分だった。
瑞穂も意を決してアルルゥを抱きかかえる。カニも荷物を持って万全の状態だ。
銃声が止んだのをきっかけに、瑞穂達は女を注意しつつ北へと向かって走り去っていった。
またそれとは別に、カニも東に向かって全力で駆け出していった。
二手に分かれて困惑する女を、隣の木陰から飛び出し牽制する。そして、鉄串で空気を薙ぎ払い戦闘の構えをとった。
命令でも強制でもない。それなのに、アルルゥの言葉はアセリアを虜にした。
自分よりも小さい姿をしていながら、その纏った不思議な雰囲気は彼女を大きく感じさせる。
アセリアを優しく包むそれは、海や川から得られる気持ち良さとはどこか違う。
そうして、知らないはずの母性愛を受け、アセリアの心は少しずつ変化していた。
けれど、その変化が何なのか分かるはずもない。今は目の前の敵に集中する。
(――強いものと戦えればいい)
本来の目的がようやく叶いそうなのだから。
けれど、その変化が何なのか分かるはずもない。今は目の前の敵に集中する。
(――強いものと戦えればいい)
本来の目的がようやく叶いそうなのだから。
◇ ◇ ◇ ◇
「佐祐理のため……」
「……行かせない」
逃げた三人を追いかけようとしたが、別の場所から飛び出した女に気を取られ逃がしてしまう。
舞は即座に気持ちを切り替えて、目の前の女を殺す事に集中した。
女は一定の距離を保ちながら木々の間を駆け巡る。
それを追うように距離を保ちながら、狙いを女の顔に定める。
だが動く的に対して反応が付いていかず、なかなか狙いが定まらない。
それに、銃をまともに扱った事などない舞にとって、走りながらの射撃は難しかった。
散弾銃や機関銃ではないこの銃では、大雑把に的を絞る事が出来ない。
何とか狙いを定めた一発目と二発目も、女の体を掠るどころか見当違いの方向に流れていく。
さらに面倒な事なのは、銃を警戒してなのかずっと木々を遮蔽物にして、こちらに場所を特定させない。
命中しなければ使い物にならない武器に怒りを覚えながらも、撃鉄を起こす。
女の姿が丸裸になるよう、舞は地を蹴り距離を詰めつつ三発目を撃つ。
相手が弾丸の軌道に目が捕らわれている隙を付いて、遮蔽物のない直線上に女を置く。
女の後ろには大木。逆に、左と右には樹木は存在しない。ここがチャンスだ。
確実に狙いを定めた銃口から、三発分の熱を帯びた銃弾が顔を出す。
それを確認する前に、女は何を血迷ったのか後ろの大木に力強く飛び掛かる。
「……行かせない」
逃げた三人を追いかけようとしたが、別の場所から飛び出した女に気を取られ逃がしてしまう。
舞は即座に気持ちを切り替えて、目の前の女を殺す事に集中した。
女は一定の距離を保ちながら木々の間を駆け巡る。
それを追うように距離を保ちながら、狙いを女の顔に定める。
だが動く的に対して反応が付いていかず、なかなか狙いが定まらない。
それに、銃をまともに扱った事などない舞にとって、走りながらの射撃は難しかった。
散弾銃や機関銃ではないこの銃では、大雑把に的を絞る事が出来ない。
何とか狙いを定めた一発目と二発目も、女の体を掠るどころか見当違いの方向に流れていく。
さらに面倒な事なのは、銃を警戒してなのかずっと木々を遮蔽物にして、こちらに場所を特定させない。
命中しなければ使い物にならない武器に怒りを覚えながらも、撃鉄を起こす。
女の姿が丸裸になるよう、舞は地を蹴り距離を詰めつつ三発目を撃つ。
相手が弾丸の軌道に目が捕らわれている隙を付いて、遮蔽物のない直線上に女を置く。
女の後ろには大木。逆に、左と右には樹木は存在しない。ここがチャンスだ。
確実に狙いを定めた銃口から、三発分の熱を帯びた銃弾が顔を出す。
それを確認する前に、女は何を血迷ったのか後ろの大木に力強く飛び掛かる。
そして、大木に蹴りを放ち三角跳びの要領で舞いに襲い掛かってきた。
「……っ!」
「せぇあ!」
女の蹴りは舞の居た地点の土を抉る。回避したのもも、二人の位置はほぼ零距離。
しゃがんでいた女は、腰から何かを抜き取ると、舞の喉目掛けて突き出した。
高速で迫る光の先端を防ぐため、咄嗟に銃のグリップで弾き返す。光の正体は鉄串だ。
女の攻撃はそれで終わらず、地面スレスレにあった左手が舞の腹部目掛けて昇りあがる。
「はっ」
腹部を防ぐため銃を持っていない片腕でそれを遮る。
だが、勢いのある一撃は腕の防御を貫通して腹部に押し込まれた。
「ごッ……ぉ」
揺らぎながら閉じかける意識を必死で繋ぎ、舞はトリガーを引く。
いくら素早いとは言え、至近距離で銃弾を避けるのは不可能。
思った通り、役に立たなかった鉛は五発目にしてようやく女の耳を削ぎ落とす。
「……」
悲鳴は聞こえなかったが、耳から迸る鮮血と若干変化した表情は、攻撃の成功を意味している。
この隙に、舞は距離を取るべく後ろへ大きく跳ぶ。だが、女はそれを許さない。
「くぅ!」
女の突き出した鉄串が、舞の太腿に傷をつける。貫通こそ避けたものの、太い血管が切れたらしい。
熱くも冷たい痛みを堪え、舞は大きく後ろに跳んでデイパックから呼びの弾丸を探り当てる。
弾丸を装填し終えるのと女の追撃は、女に軍配が上がった。
突き刺すだけと考えていた鉄串を横に薙ぎ、鞭で打った様な音が手の甲から響く。
銃を持っていた手の甲はすぐにみみず腫れとなり、そこに虫がいるよう錯覚させる。
距離を取るにも追撃で離れられない。近距離では銃を撃つタイミングが合わない。
いつの間にか追い詰められたのは、舞のほうだった。
と、視界の端に一本の太い木の棒を発見する。
(あれなら!)
再び横に薙いだ鉄串を後ろに回避して、太い枝に駆け寄って握ってみる。
(硬い……よし)
木の棒を握り締め、背後から迫る女に一撃を見舞う。
手刀と見誤ったのか、距離を詰めすぎた女の腰に木の棒がめり込む。
「はぁぁッ!」
「っ……」
力の限り横に振った木の棒は、女をしっかり捕らえた。
警戒した女は鉄串を構えなおす。一方の舞も右手に木の棒、左手に銃の構えをとる。
(相手は銃を持ってない……あの鉄串だけ)
お互いに相手目掛けて地を蹴る。
「……っ!」
「せぇあ!」
女の蹴りは舞の居た地点の土を抉る。回避したのもも、二人の位置はほぼ零距離。
しゃがんでいた女は、腰から何かを抜き取ると、舞の喉目掛けて突き出した。
高速で迫る光の先端を防ぐため、咄嗟に銃のグリップで弾き返す。光の正体は鉄串だ。
女の攻撃はそれで終わらず、地面スレスレにあった左手が舞の腹部目掛けて昇りあがる。
「はっ」
腹部を防ぐため銃を持っていない片腕でそれを遮る。
だが、勢いのある一撃は腕の防御を貫通して腹部に押し込まれた。
「ごッ……ぉ」
揺らぎながら閉じかける意識を必死で繋ぎ、舞はトリガーを引く。
いくら素早いとは言え、至近距離で銃弾を避けるのは不可能。
思った通り、役に立たなかった鉛は五発目にしてようやく女の耳を削ぎ落とす。
「……」
悲鳴は聞こえなかったが、耳から迸る鮮血と若干変化した表情は、攻撃の成功を意味している。
この隙に、舞は距離を取るべく後ろへ大きく跳ぶ。だが、女はそれを許さない。
「くぅ!」
女の突き出した鉄串が、舞の太腿に傷をつける。貫通こそ避けたものの、太い血管が切れたらしい。
熱くも冷たい痛みを堪え、舞は大きく後ろに跳んでデイパックから呼びの弾丸を探り当てる。
弾丸を装填し終えるのと女の追撃は、女に軍配が上がった。
突き刺すだけと考えていた鉄串を横に薙ぎ、鞭で打った様な音が手の甲から響く。
銃を持っていた手の甲はすぐにみみず腫れとなり、そこに虫がいるよう錯覚させる。
距離を取るにも追撃で離れられない。近距離では銃を撃つタイミングが合わない。
いつの間にか追い詰められたのは、舞のほうだった。
と、視界の端に一本の太い木の棒を発見する。
(あれなら!)
再び横に薙いだ鉄串を後ろに回避して、太い枝に駆け寄って握ってみる。
(硬い……よし)
木の棒を握り締め、背後から迫る女に一撃を見舞う。
手刀と見誤ったのか、距離を詰めすぎた女の腰に木の棒がめり込む。
「はぁぁッ!」
「っ……」
力の限り横に振った木の棒は、女をしっかり捕らえた。
警戒した女は鉄串を構えなおす。一方の舞も右手に木の棒、左手に銃の構えをとる。
(相手は銃を持ってない……あの鉄串だけ)
お互いに相手目掛けて地を蹴る。
――第二ラウンドの開始は、わずかな砂埃と共に訪れた。
◇ ◇ ◇ ◇
アセリアは、相手の攻撃スタイルが変わった事を肌で感じ取っていた。
瑞穂が説明してくれた銃だけならば、集中すればなんとか避わせる。耳を削ぎ落とされたのも許容範囲。
だが、相手は棒切れを持った途端に戦い方を接近戦へと即座に切り替えた。
油断はしていないつもりだったが、一撃貰ったのは事実である。
身のこなしといい、木の棒による太刀筋といい、どうも素人とは考えられない。
それを理由に、脇腹にめり込んだ力は、無駄な部分がなく鋭かった。
少し前までは、接近戦に持ち込めば問題ないと思っていたが、戦い方を改める必要がある。
(力で押し切られる前に押し倒す)
鉄串を構え直し、女に向かって突撃する。
女は突き出した鉄串を弾き返し、中腰の構えから木の棒を横薙ぎに一閃する。
一瞬、鉄串で受ける事を考えたが、耐え切れない上折れては仕方ないので諦める。
女の狙う先は腰……アセリアは体を捻り回避に専念するが間に合わない。
力の掛かった芯こそ外れるが、棒の先端が腰の骨を勢い良く擦る。
体中の骨が一斉に痺れる感覚に陥る。追撃を避けたいアセリアは後ろに飛ぶ。
「ぁぐ」
「……逃がさない」
それより先に、女は木の棒を振り終わった反動で廻し蹴りを放つ。今度も避ける事が出来ない。
蹴りは見事にアセリアの下腹部を捉え抉り込む。
「……!」
「まだ……」
そして、蹴りを放ちつつ後ろへ飛んだ女は、狙いを定めずトリガーを引いた。
この距離ならば外さないと踏んだのだろう。
「せあぁ!」
「!」
それは女の誤算だった。アセリアは避ける事無く突撃したのだ。
銃弾がアセリアの居た位置を通り過ぎるより早く、アセリアの頭が額に突撃する。
「ぅぁ」
予想外の攻撃だったのか、女は木の棒を振りつつ後ろへと大きく距離を取る。
アセリアも、追撃せず一度距離を取った。
お互い息こそ上がっていないが、消耗はかなり激しい。
(力勝負でも分が悪い)
先程の女の一撃で、アセリアは相手に対する認識を再び改めた。
力で押し通すタイプだと思っていたが、どうにもそれは見当違いらしい。
力と力の間に重ねてきた技こそが、本来の戦闘スタイルと思われる。
だからと言って、力押しで勝たせてくれるほど非力でもない。
いくら木の棒相手とは言え、鉄串では鍔迫り合いにならないだろう。
(剣が欲しい)
だが周囲を見渡しても、女が持っているような丈夫な木の棒など見つからない。
鍔迫り合いは駄目。力勝負も分が悪い。離れれば銃弾が飛んでくる。
戦場に慣れているとは言え、この差を埋めるのは難しかった。
そんな考えとは知らず、女は距離を保った状態で銃口をこちらに向ける。
この距離ならば当たる事はないが、こちらが攻撃できないのでは意味がない。
と、そんな余計な考えを浮かべた隙に相手が距離を詰める。
「はぁ!」
「……ふっ!」
女の上段から振り下ろされる一撃を横に避け、女の横腹に鉄串を繰り出す。
瑞穂が説明してくれた銃だけならば、集中すればなんとか避わせる。耳を削ぎ落とされたのも許容範囲。
だが、相手は棒切れを持った途端に戦い方を接近戦へと即座に切り替えた。
油断はしていないつもりだったが、一撃貰ったのは事実である。
身のこなしといい、木の棒による太刀筋といい、どうも素人とは考えられない。
それを理由に、脇腹にめり込んだ力は、無駄な部分がなく鋭かった。
少し前までは、接近戦に持ち込めば問題ないと思っていたが、戦い方を改める必要がある。
(力で押し切られる前に押し倒す)
鉄串を構え直し、女に向かって突撃する。
女は突き出した鉄串を弾き返し、中腰の構えから木の棒を横薙ぎに一閃する。
一瞬、鉄串で受ける事を考えたが、耐え切れない上折れては仕方ないので諦める。
女の狙う先は腰……アセリアは体を捻り回避に専念するが間に合わない。
力の掛かった芯こそ外れるが、棒の先端が腰の骨を勢い良く擦る。
体中の骨が一斉に痺れる感覚に陥る。追撃を避けたいアセリアは後ろに飛ぶ。
「ぁぐ」
「……逃がさない」
それより先に、女は木の棒を振り終わった反動で廻し蹴りを放つ。今度も避ける事が出来ない。
蹴りは見事にアセリアの下腹部を捉え抉り込む。
「……!」
「まだ……」
そして、蹴りを放ちつつ後ろへ飛んだ女は、狙いを定めずトリガーを引いた。
この距離ならば外さないと踏んだのだろう。
「せあぁ!」
「!」
それは女の誤算だった。アセリアは避ける事無く突撃したのだ。
銃弾がアセリアの居た位置を通り過ぎるより早く、アセリアの頭が額に突撃する。
「ぅぁ」
予想外の攻撃だったのか、女は木の棒を振りつつ後ろへと大きく距離を取る。
アセリアも、追撃せず一度距離を取った。
お互い息こそ上がっていないが、消耗はかなり激しい。
(力勝負でも分が悪い)
先程の女の一撃で、アセリアは相手に対する認識を再び改めた。
力で押し通すタイプだと思っていたが、どうにもそれは見当違いらしい。
力と力の間に重ねてきた技こそが、本来の戦闘スタイルと思われる。
だからと言って、力押しで勝たせてくれるほど非力でもない。
いくら木の棒相手とは言え、鉄串では鍔迫り合いにならないだろう。
(剣が欲しい)
だが周囲を見渡しても、女が持っているような丈夫な木の棒など見つからない。
鍔迫り合いは駄目。力勝負も分が悪い。離れれば銃弾が飛んでくる。
戦場に慣れているとは言え、この差を埋めるのは難しかった。
そんな考えとは知らず、女は距離を保った状態で銃口をこちらに向ける。
この距離ならば当たる事はないが、こちらが攻撃できないのでは意味がない。
と、そんな余計な考えを浮かべた隙に相手が距離を詰める。
「はぁ!」
「……ふっ!」
女の上段から振り下ろされる一撃を横に避け、女の横腹に鉄串を繰り出す。
だが、その反撃も女に弾き返されてしまう。弾かれた腕は行き場を失い、体はがら空きとなる。
無防備となった姿を女が逃す筈もなく、蹴りによる追撃を重ねる。
が、そこまではアセリアの考えの内だった。
無防備となった姿を女が逃す筈もなく、蹴りによる追撃を重ねる。
が、そこまではアセリアの考えの内だった。
「てぇ!」
「――」
「――」
がら空きになった筈のアセリアと女の間に、一本の鉄串が現れる。
二人の距離が離れて行くのとは対照的に、鉄串は女目掛けて突き進む。
アセリアは、腕を弾かれると同時に持っていた短い鉄串を投擲したのだ。
女は飛び道具がないと思い込んでいたようで、瞳に驚愕の表情がハッキリと表れている。
それでも、女の心臓に刺さるはずだった鉄串は、肩に突き刺さるだけとなった。
一秒にも満たない時間の中で、女は無理矢理体を屈ませたのだ。
そして、避けたまま地面を転がり再度距離を取られてしまう。
(避けられた)
今の奇襲は、絶妙なタイミングと相手の判断ミスで成功した。二度目はない。
手札が尽きかけた今、あとは互いの武器と肉体が朽ちるまで戦いどちらかが死ぬだけだ。
もし自分が死んだとしても、それは戦場にいればいつかは訪れる最期。後悔はない。
なのに、アセリアの頭には自身の最期ではなく別の事が思い浮かんでいた。
それは、アルルゥの見せた自分を包み込むような瞳と表情。
(蜂の巣……)
もしカルラと戦わなければ。もしアルルゥに出会わなければ。彼女はここで戦いを選んだ。
だが、胸の内で響く二つの声がそれを押し留める。
(私に勝ちたかったら、戦い以外の自分を見つけて出直してくることですわね)
戦い以外の自分を探せと、強い戦士は言い放つ。
(アセっち。アルルゥ達博物館で待ってる。だから来る)
自分を待つと、無垢な少女は約束させる。
(次に会うときに、まるで成長してなかったらそのときは私があなたをぶち殺して差し上げますわ)
殺さずに立ち去った女戦士は、なにを望んだのだろうか。
(またアルルゥと蜂の巣食べる)
あの甘い気持ちは、蜂の巣を食べたからだろうか。
「……解からない」
ここに来る前も、来た直後も、そんな事で悩む必要な無かった。
けれど、今心の中を渦巻いて悩んでいるのは事実だ。それでも、この気持ちは決して嫌いではない。
鉄串を構えたまま、アセリアは初めて女に声を掛ける。
「……名前。アセリア・ブルースピリット」
「……」
「……名前は」
「……舞。川澄舞」
お互い武器を構えながら、体を動かさずに口だけでやり取りする。
と、アセリアは意を決して走り出した……舞とは反対側に。
「あっ」
「武器手に入れたら戦う。それまでおあずけ」
「逃がさない!」
突然の出来事に出遅れた舞だったが、次の瞬間には撃鉄を起こしていた。
だが、アセリアの投げた短い鉄串に気を取られトリガーを引くのが遅れる。
その隙を突いて、アセリアは木々の間へと駆け出していった。
追いかける気配を見せた舞だったが、結局追いかけて来る事は無かった。
二人の距離が離れて行くのとは対照的に、鉄串は女目掛けて突き進む。
アセリアは、腕を弾かれると同時に持っていた短い鉄串を投擲したのだ。
女は飛び道具がないと思い込んでいたようで、瞳に驚愕の表情がハッキリと表れている。
それでも、女の心臓に刺さるはずだった鉄串は、肩に突き刺さるだけとなった。
一秒にも満たない時間の中で、女は無理矢理体を屈ませたのだ。
そして、避けたまま地面を転がり再度距離を取られてしまう。
(避けられた)
今の奇襲は、絶妙なタイミングと相手の判断ミスで成功した。二度目はない。
手札が尽きかけた今、あとは互いの武器と肉体が朽ちるまで戦いどちらかが死ぬだけだ。
もし自分が死んだとしても、それは戦場にいればいつかは訪れる最期。後悔はない。
なのに、アセリアの頭には自身の最期ではなく別の事が思い浮かんでいた。
それは、アルルゥの見せた自分を包み込むような瞳と表情。
(蜂の巣……)
もしカルラと戦わなければ。もしアルルゥに出会わなければ。彼女はここで戦いを選んだ。
だが、胸の内で響く二つの声がそれを押し留める。
(私に勝ちたかったら、戦い以外の自分を見つけて出直してくることですわね)
戦い以外の自分を探せと、強い戦士は言い放つ。
(アセっち。アルルゥ達博物館で待ってる。だから来る)
自分を待つと、無垢な少女は約束させる。
(次に会うときに、まるで成長してなかったらそのときは私があなたをぶち殺して差し上げますわ)
殺さずに立ち去った女戦士は、なにを望んだのだろうか。
(またアルルゥと蜂の巣食べる)
あの甘い気持ちは、蜂の巣を食べたからだろうか。
「……解からない」
ここに来る前も、来た直後も、そんな事で悩む必要な無かった。
けれど、今心の中を渦巻いて悩んでいるのは事実だ。それでも、この気持ちは決して嫌いではない。
鉄串を構えたまま、アセリアは初めて女に声を掛ける。
「……名前。アセリア・ブルースピリット」
「……」
「……名前は」
「……舞。川澄舞」
お互い武器を構えながら、体を動かさずに口だけでやり取りする。
と、アセリアは意を決して走り出した……舞とは反対側に。
「あっ」
「武器手に入れたら戦う。それまでおあずけ」
「逃がさない!」
突然の出来事に出遅れた舞だったが、次の瞬間には撃鉄を起こしていた。
だが、アセリアの投げた短い鉄串に気を取られトリガーを引くのが遅れる。
その隙を突いて、アセリアは木々の間へと駆け出していった。
追いかける気配を見せた舞だったが、結局追いかけて来る事は無かった。
木々の間を駆け抜けながら、アセリアは博物館を目指していた。
殺し合いを降りるつもりはない。戦いを放棄するつもりもない。
だが、あのアルルゥにもう一度会うまで、それは保留でもいいと考え始めていた。
あのアルルゥの瞳は、どう言う訳かアセリアの心を虜にする。
それは、永遠真剣を握っている時とも戦っているときとも違う。
その不思議な気持ちを確認したいがため、先の戦いを放棄した。
彼女の心は少しずつ……だが、確実に変わり始めている。
それが何をもたらすか、今はまだ誰も知らない。
殺し合いを降りるつもりはない。戦いを放棄するつもりもない。
だが、あのアルルゥにもう一度会うまで、それは保留でもいいと考え始めていた。
あのアルルゥの瞳は、どう言う訳かアセリアの心を虜にする。
それは、永遠真剣を握っている時とも戦っているときとも違う。
その不思議な気持ちを確認したいがため、先の戦いを放棄した。
彼女の心は少しずつ……だが、確実に変わり始めている。
それが何をもたらすか、今はまだ誰も知らない。
◇ ◇ ◇ ◇
最初は立ち去ったアセリアを追いかけるつもりだったが、肩と太腿の傷がそれを拒んだ。
あのまま追いかけて再戦したとしても、五体満足で勝てるとは思えない。
下手に固執するより、別の殺せそうな標的を探すほうが時間短縮になると考えたのだ。
デイパックから水を取り出し、首に巻いたスカーフをほどく。
太腿に水で湿らせたスカーフを巻きつけ、肩の傷はスカートを破いて縛る。
皮がめくれて血豆が破けた右手にも、スカートの切れ端で覆っておく。
応急処置だが、そのまま放置するよりましだ。
スカートが短くなり下着が見えてしまっているが、そんな事に構っている暇はない。
「佐祐理……待ってて」
銃と木の棒を持ち直し、舞も駆け出した。
たった一人の親友を救うため。そのためだけに、大勢の人間を殺す。
そこに後悔も罪悪感も持ち合わせたりはしない。
彼女はただ、誰かを殺すために生き続ける。
あのまま追いかけて再戦したとしても、五体満足で勝てるとは思えない。
下手に固執するより、別の殺せそうな標的を探すほうが時間短縮になると考えたのだ。
デイパックから水を取り出し、首に巻いたスカーフをほどく。
太腿に水で湿らせたスカーフを巻きつけ、肩の傷はスカートを破いて縛る。
皮がめくれて血豆が破けた右手にも、スカートの切れ端で覆っておく。
応急処置だが、そのまま放置するよりましだ。
スカートが短くなり下着が見えてしまっているが、そんな事に構っている暇はない。
「佐祐理……待ってて」
銃と木の棒を持ち直し、舞も駆け出した。
たった一人の親友を救うため。そのためだけに、大勢の人間を殺す。
そこに後悔も罪悪感も持ち合わせたりはしない。
彼女はただ、誰かを殺すために生き続ける。
【E-5 廃線上/1日目 午前】
【蟹沢きぬ@つよきす】
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:なし】
【状態:精神安定。両肘と両膝に擦り傷。数箇所ほど蜂に刺された形跡。】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:待ってろよヘタレ(土見稟と合流)
2:稟と合流後、博物館へ急ぐ(宮小路瑞穂達と合流)
3:鷹野に対抗できる武器を探す。
4:スバル、乙女さん、姫、よっぴーのうち誰かと合流したい。
【備考】
※レオの死を乗り越えました
※アセリアに対する警戒は小さくなっています。
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:なし】
【状態:精神安定。両肘と両膝に擦り傷。数箇所ほど蜂に刺された形跡。】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:待ってろよヘタレ(土見稟と合流)
2:稟と合流後、博物館へ急ぐ(宮小路瑞穂達と合流)
3:鷹野に対抗できる武器を探す。
4:スバル、乙女さん、姫、よっぴーのうち誰かと合流したい。
【備考】
※レオの死を乗り越えました
※アセリアに対する警戒は小さくなっています。
【C-4 森の北部/1日目 午前】
【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:支給品一式、フカヒレのギャルゲー@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:アルルゥを絶対に守る
2:涼宮茜達と合流するため博物館へ(アセリアを待つ)
3:その後、新市街へ行き脱出のための協力者を探す。
4:再び博物館で蟹沢きぬを待ち、合流したら次の場所を目指す。
4:ハクオロ・トウカ・オボロ・赤坂を探す。
5:知り合いを探す。
【備考】
※陽平には男であることを隠し続けることにしました。
※アルルゥにも男性であることは話していません。
※蟹沢きぬにも男性であることは話していません。
※アセリアにも男性であることは話していません。他の人にどうするかはお任せ
※アセリアに対する警戒は小さくなっています。
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:支給品一式、フカヒレのギャルゲー@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:アルルゥを絶対に守る
2:涼宮茜達と合流するため博物館へ(アセリアを待つ)
3:その後、新市街へ行き脱出のための協力者を探す。
4:再び博物館で蟹沢きぬを待ち、合流したら次の場所を目指す。
4:ハクオロ・トウカ・オボロ・赤坂を探す。
5:知り合いを探す。
【備考】
※陽平には男であることを隠し続けることにしました。
※アルルゥにも男性であることは話していません。
※蟹沢きぬにも男性であることは話していません。
※アセリアにも男性であることは話していません。他の人にどうするかはお任せ
※アセリアに対する警戒は小さくなっています。
※フカヒレのギャルゲー@つよきす について
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。
【アルルゥ@うたわれるもの】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式(コンパス、時計、ランタン以外)、ベネリM3の予備弾、蜂の巣(半分)】
【状態:健康。腕に二箇所蜂に刺された痕】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:瑞穂についていく。
2:おとーさんに会いたい。
3:アセリアと約束。
4:カニと再開。
5:知り合いと会いたい。
【備考】
※エルルゥたちの死を理解しました。
※アセリアが人間でなくスピリットである事を本能で理解しています。
【装備:なし】
【所持品:支給品一式(コンパス、時計、ランタン以外)、ベネリM3の予備弾、蜂の巣(半分)】
【状態:健康。腕に二箇所蜂に刺された痕】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:瑞穂についていく。
2:おとーさんに会いたい。
3:アセリアと約束。
4:カニと再開。
5:知り合いと会いたい。
【備考】
※エルルゥたちの死を理解しました。
※アセリアが人間でなくスピリットである事を本能で理解しています。
【C-5 山頂付近/1日目 午前】
【アセリア@永遠のアセリア】
【装備:鉄串(長、かなり損傷)】
【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、ひぐらし@ひぐらしのなく頃に、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:疲労大。右耳損失(出血はおさまりつつある)。軽い頭痛。ガラスの破片による裂傷。殴られたことによる打撲】
【思考・行動】
1:アルルゥと再開するため博物館へ
2:ハクオロと戦う(ただし殺さない)
3:強者と戦う
4:殺し合いは取り合えず保留(相手がその気なら殺す)
5:永遠神剣を探す
6:丈夫な武器を手に入れる
【備考】
※アルルゥが「森の母」である事を本能で理解しています。
【装備:鉄串(長、かなり損傷)】
【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、ひぐらし@ひぐらしのなく頃に、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:疲労大。右耳損失(出血はおさまりつつある)。軽い頭痛。ガラスの破片による裂傷。殴られたことによる打撲】
【思考・行動】
1:アルルゥと再開するため博物館へ
2:ハクオロと戦う(ただし殺さない)
3:強者と戦う
4:殺し合いは取り合えず保留(相手がその気なら殺す)
5:永遠神剣を探す
6:丈夫な武器を手に入れる
【備考】
※アルルゥが「森の母」である事を本能で理解しています。
※フカヒレのコンドーム
アレでナニをする時に使う道具。12個入り。
パッケージの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してある。
レオがエリカルートの屋上でフカヒレから手渡された思い出の品。
薄型がウリでフィット感が凄い、らしい。
アレでナニをする時に使う道具。12個入り。
パッケージの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してある。
レオがエリカルートの屋上でフカヒレから手渡された思い出の品。
薄型がウリでフィット感が凄い、らしい。
※ひぐらし
雛見沢に生息するひぐらしを瓶に無理やり詰め込んだもの。
全て生きています。
雛見沢に生息するひぐらしを瓶に無理やり詰め込んだもの。
全て生きています。
【C-6 橋の北側/1日目 午前】
【川澄舞@Kanon】
【装備:ニューナンブM60(.38スペシャル弾5/5) 学校指定制服(かなり短くなっています)】
【所持品:支給品一式 ニューナンブM60の予備弾74 バナナ(フィリピン産)(3房)】
【状態:疲労大。肋骨にひび、腹部に痣、肩に刺し傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、太腿に切り傷(止血済。痛いが普通に動かせる)】
【思考・行動】
基本方針:佐祐理のためにゲームに乗る
1:佐祐理を救う
2:全ての参加者を殺す
3:相手が強い場合、無理はしない
【装備:ニューナンブM60(.38スペシャル弾5/5) 学校指定制服(かなり短くなっています)】
【所持品:支給品一式 ニューナンブM60の予備弾74 バナナ(フィリピン産)(3房)】
【状態:疲労大。肋骨にひび、腹部に痣、肩に刺し傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、太腿に切り傷(止血済。痛いが普通に動かせる)】
【思考・行動】
基本方針:佐祐理のためにゲームに乗る
1:佐祐理を救う
2:全ての参加者を殺す
3:相手が強い場合、無理はしない
089:童貞男の孤軍奮闘 | 投下順に読む | 091:シャムロックを散らした男 |
089:童貞男の孤軍奮闘 | 時系列順に読む | 092:聖者の行進 |
078:彼女は戦士だった | アセリア | 094:瞬間、心、重ねて/さよならの囁き(前編) |
084:私にその手を汚せというのか | 川澄舞 | 105:武人として/鮮血の結末 (前編) |
079:涙をこえて | 蟹沢きぬ | 099:CROSS††POINT |
079:涙をこえて | 宮小路瑞穂 | 094:瞬間、心、重ねて/さよならの囁き(前編) |
079:涙をこえて | アルルゥ | 094:瞬間、心、重ねて/さよならの囁き(前編) |