夢と決意と銃声と―― ◆Noo.im0tyw


(……もうどのくらい走っただろうか?)
服には、ところどころに汚れが付き、顔面には大量の汗が噴いている。けれども走ることを彼はやめようとしなかった。
走ることをやめてしまったら、そこで自分の人生が終わってしまう。そんな予感がしたからだ。

「こんなことになるなら、ちゃんと運動をしておくべきだったな…」
走るのに疲れ、それでも歩むことをやめないまま、彼――――朝倉純一は後悔する。
普段から『かったりぃ』が口癖の純一だ。部活はもちろん毎日たいした運動もせずにダラダラ過ごしていたツケが廻ってきた。ただそれだけのコト。
純一は頭では理解していても、込み上げる怒りはどうしようもなかった。傍にあった木を殴りつけ、気持ちを静める。
そしてふと、後方を見つめた。民家があったであろう方角には、既に何も見えなくなっており、また、誰かが追ってくるような足音も聞こえてこない。


(大分離れることができたみたいだな…)
ふぅ…と1つ溜息をつき、歩みながら思考する。
…なぜあんなコトになってしまったのか?自分の注意は完璧だったはずだったのに…と、後悔ばかりが純一の頭によぎる。しかし、後悔以上に許せない事があった。
「水澤摩央って言ってたな…。クソっ!あいつめ……!」
事件の一部始終を思い出し、また怒りが込み上げる。水澤さえいなければ、自分は今頃、楓と共に行動しているはずだった。
だが、そんなifの話を考えていてもしょうがない。
とにかく今は先に進むしかなかった。しかし、1つ腑に落ちない点があったコトで純一の歩みは止まる。



「――――どうして俺は生きているんだ?」
(確かにあの時、俺は銃で撃たれていたはずだ。でも俺は生きている。銃で撃たれて死なない人間なんているのか…?いや、それはない。じゃあ何でだよ……?)
頭の中をグルグルと疑問が駆け巡る。しかし、純一は1つの結論に辿りつく。
(俺は生きている、ただ…それだけなんだ…)
答えとしては、限りなく不十分であっただろう。しかし、元々、頭を使うのが得意じゃない純一にとってそれは己がたどり着ける最高の答えだった。
それにより脳内がクリアになり、また歩み始める。
だが、夜が明けていない上に、闇雲に走ってきたせいもあって今いる位置がほとんどわからなくなっていた。とりあえず民家のあった場所から北に進んでいたはずだったのだが、自分の周りは木の他に目印となるものがなく、途方にくれる。

「ふぅ…。かったりぃ…。」
こんな台詞はいている場合ではなかった。早くどこかに辿り着き、信頼できる仲間を探さなきゃならない。だが、染み付いた癖はなかなか離れないものだ。こんな時にこんなセリフを吐く自分に嫌気が差す。
けれども、久々につぶやいたそのセリフはどこか心地良かった……。




◇ ◇ ◇




どこかもわからない道を私は独りで歩き続けていた。
身を隠しながら進んだ結果、ここまで参加者の誰にも会わなかったのは不幸中の幸いとでも言うべきなのか。
時計の針もビル前を出発してからそんなには進んでいなかったが、自分の居場所がビル前からかなり離れていることは、なんとなくだがわかっていた。

「何で誰もいないのっ!?」
小声だが、『白鐘沙羅』は怒気を含ませ言う。誰か人がいなければこのFDを渡すことも、一緒に脱出を計画することもできない。でも危ない人には逢いたくない。でもやっぱり、仲間は欲しいし……。と、沙羅は苦悩する。
年頃の女の子がこんな矛盾を抱えていても誰も文句は言えないだろう。
そして、これだけ人がいないと、もしかしたら、ここら辺付近の人は皆死んでしまったんじゃ…と、不安を募らせる。
(でも私だって、恋太郎や双樹と一緒にいろんなコトをしてきたんだ…。そんな簡単に殺されるなんてあるはずない!)
強がってみるが、ただの女子高生が、男の人や力の強い人に挑まれたら結局、何もできずに終わる。それを嫌なくらい頭で理解していた。それが歯がゆかった。
ドンドンと気持ちが沈んでゆき、次第に下がっていく目線が片手に握られている銃で自然に停止する。

―――――手に持った銃は果たして、ちゃんと自分を守ってくれるのか。これから逢うであろう参加者は、私をどうするだろうか。双樹や恋太郎はまだ生きているだろうか…。もしかしたら二人はもう……。

沙羅は身体を震わせながら、その場に立ち止まるがそれも一瞬。
(ダメだ、ダメだ、ダメだ!こんなの私じゃない!)
自分に喝を入れ、ブンブンっと頭を振り、沙羅はネガティブな考えを払拭する。

(ここで私を守ってくれるのはとりあえず今、私しかいない。だったら、この銃はそう―――私自身だ。迷っていたら、『私』はきっと『私』を助けてくれない。だから…)
「この一発は、迷いを断ち切り、嫌な考えを二度としないように。そして、何よりも自分の決意のために――――」
沙羅は銃を天高く、持ち上げる。トリガーには既に指がかかっていて、いつでも撃てるような体勢になっていた。
「私は、この腐ったゲームから皆を助けだして、脱出する!!」
沙羅の決意と共に、トリガーが引かれ夜空に銃声を響かせる。思っていたより大きな音が響き、沙羅は思わず耳を塞ぎ、しゃがみこんだ。
「ちょっと、音が響きすぎたかな……?」
アハハ…と苦笑し、すっと頭の中に考えがよぎる。
「ヤバ…。これじゃあ、自分の位置バレバレじゃん…!?」
良かれと思ってやった行動は、客観的に見れば最悪だった。もしかしたら、凶悪な人が来るかもしれないという不安から沙羅は―――その場をダッシュで離れた。




◇ ◇ ◇



純一はようやく見つけた場所、『港』で休んでいた。ここまで歩むことをほとんどやめなかったせいもあって疲労はピークを迎えていた。港付近からは死角となっている場所で少しばかり休憩をすることにした。
(よく考えたら、このクソったれなゲームが始まってから最初の休憩だな…。)
ここに来させられてから本当にいろんなコトがあった。楓のコト、事件のコト。
(楓…俺が探すまで絶対にい…き…て…)
考えが終わる前に眠りについてしまう。ムリもないだろう、むしろ普通の高校生にしては良くここまで体力がもったと褒めるべきなのだから……。



◇ ◇ ◇



「純一…。起きなさい、純一…」
耳元で女性の声がする。だが、思考は働いておらず、虚ろなままで純一は返答する。
「かったりぃな…。疲れてるんだから寝させてくれよ…」
そう言って、もう一度目蓋を閉じようとするが、
「純一っ!!」
自分の名前を怒鳴りつけられて、ようやく目覚める。
良く見るとさっきまでいた場所とはまるで違う。一言で言えば、そこは虚無の空間であった。しばらくして、純一はようやく理解した。

「夢の中か……。そうなんだろ?祖母ちゃん」
「そうだよ、純一」
『祖母ちゃん』と呼ばれた、女性は優しげな目で純一を見つめ返す。
「悪いねぇ、純一。まさかこんなことに巻き込まれるなんて……」
すまなそうに謝る祖母ちゃんに純一はあえて明るく答えた。
「どうして、祖母ちゃんが謝るんだよ?祖母ちゃんは何もしてないだろ?」
苦笑しながら純一は答える。

「私は、お前がこのゲームに巻き込まれるコトを知っていた。でも、そのことをお前に教えてはならんかった。それは巫女である環ちゃんと一緒。未来を見通すコトができてもそれを伝えてはならん。魔女にとってもそれは同じなんじゃ」
祖母が歯がゆそうに言葉を紡ぐ。祖母が偉大な魔女だというコトを知っていたが、ここまでできるなんて…と、純一は多少驚いていた。


「私は、何にもできん。それにこの島には何か特別なモノが張り巡らされていてね、わかりやすく言えば、結界・フィルターみたいなモノさ。それが私を拒むんだ。今回は私の全魔力を駆使して何とかは入れたが、もう2度と夢の中に現れることもできないだろう」
今度はすまなそうに祖母から謝られる。
「最初からあまり期待してないさ。もうゲームは始まった。祖母ちゃんは何も悪くない」
初めてみる祖母の弱弱しさに、純一は戸惑いながらもしっかりと答えた。
「大人になったねぇ、ありがとう純一」
ニヤリと笑い、嬉しそうな声で祖母が答える。純一も照れくさそうにはにかむが、すぐに話を切り出す。

「わざわざ夢の中にやって来たんだ。言いたいコトは他にもあるんだろ?」
純一のその言葉に祖母の目がスッと細くなり、いつになく真面目な格好で純一を見つめる。

「私には、さっきも言ったが未来を教える権限などない。だけど、起こってしまったこと。これだけは話すことができる。祖母から愛しい孫へのたった一度の伝言だ。神様も許してくれるだろう」
「どうしたんだよ?続けてくれよ」
祖母の話が一時止まるが、純一は祖母の話を促す。
「冷静になって聞いてくれ―――――さくらが殺人者になってしまった」



――――さくらが殺人鬼?
祖母のその言葉に、呆然とするが様々な疑問が込み上げる。あれだけ真面目な表情で言ったのだ。性質の悪い冗談ではないことをすぐさま理解し、声を張り上げて祖母を問い詰める。
「どうしてだ!? なんでさくらが人殺しになってるんだよ!?」
「落ち着け、純一!正確にはまだ人を殺していない!お前を守るために、このゲームに乗ってしまっているだけなのだ」
「俺のため…?」
「そうじゃ。お前のために、ゲームにのっているだけなのだ。頼む!さくらはお前と同じ私の孫。あの子には手を汚して欲しくない。助けてやってくれ!」

祖母の迫力はすごかった。おとなしく話を聞いていた純一だったが、答えは既に決まっていた。
「さくらは俺の大事な幼馴染だ。アイツが暴走しているなら、それを止めるのは俺の役目だ」
しっかりとした口調で答える。それに安心したように祖母の顔が緩む。
「任せたぞ、純一…。さくらもそうだが、お前も自分の……」
突然、祖母の声が聞こえづらくなり、いつの間にか俺は現実へとフィードバックしていた。最後に何を言おうとしていたかはよくわからない。
でも、やらなきゃいけないコトがまた1つ増えた、これだけは確かなことだ。
『さくらの救出』これだけは俺が、俺自身が成し遂げないといけない。

(任せろよ、祖母ちゃん…!!)
強い決意を胸に、立ち上がる。―――そんな時だった。
『パァァァーン!!』と銃声が遠くで響く。
「さくらかっ!?」
その音を聞き、純一はさくらを連想する。だが、
――――――――――チリン。
鈴の音が頭の中に響いてくる。その鈴の音は妹に自分がプレゼントしたチョーカーが出す音そのものだった。その音に純一はハッとする。
(音夢…。クソっ!! どうしろってんだよ!? どっちか選べなんてできるはずないだろ!?)
恋人である『音夢』と幼馴染であり自分のために暴走している『さくら』、その二人を天秤にかけることが純一には出来なかった。
(迷ってたらどっちも救えないかもしれないだろ…!? 今は音夢の情報はまだ何もつかめてない…。だったら少しでも可能性のあるかもしれないさくらを探す!)
唇を血が出るくらいにかみ締め、苦渋の決断をするが、頭の中に音夢が寂しげに笑っているのが見えまた思いとどまる。

「許してくれ音夢…。少しだけ待ってろ。絶対にお前も見つけ出すからな!」
音夢に心の中で謝罪し、まだ見ぬ少女への思いを馳せながら、純一は音のした方向へと走っていった――――。





【G-3 港付近 1日目 早朝】
【朝倉純一@D.C.P.S.】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式 エルルゥの傷薬@うたわれるもの オオアリクイのヌイグルミ@Kanon】
【状態:体力回復・強い決意・音夢への謝罪】
【思考・行動】
基本行動方針:人を殺さない
1.何としてでも音夢を探し出して守る。
2. さくらの暴走を何としても止めさせる。
3.ことり、さくら、杉並を探す。
4.楓も可能なら探したい
5.殺し合いからの脱出方法を考える。
6.水澤摩央を強く警戒
7.音のした方向へと向かう。
【備考】
芙蓉楓の知人の情報を入手しています。
純一の参加時期は、音夢シナリオの初キス直後の時期に設定。
鉄扇を失くしたコトにまだ気付いていません。


【F-2 道の上/1日目 早朝】

【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
【装備:永遠神剣第六位冥加@永遠のアセリア -この大地の果てで- ワルサー P99 (16/16)】
【所持品:支給品一式 フロッピーディスク二枚枚(中身は下記) ワルサー P99 の予備マガジン8】
【状態:逃走中】
【思考・行動】
1:首輪を解除できそうな人にフロッピーを渡す
2:恋太郎と双樹を探す。
3:前原を探して、タカノの素性を聞く。
4:混乱している人やパニックの人を見つけ次第保護 。
5:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす。
6:この場所から逃げ出す。
基本行動方針
一人でも多くの人間が助かるように行動する

※FDの中身は様々な情報です。ただし、真偽は定かではありません。
下記の情報以外にも後続の書き手さんが追加してもOKです。
『皆さんに支給された重火器類の中には実は撃つと暴発しちゃうものがあります♪特に銃弾・マガジンなどが大量に支給された子は要注意だぞ☆』
『廃坑の入り口は実は地図に乗ってる所以外にもあったりなかったり(ぉ』
『海の家の屋台って微妙なもの多いよね~』
少なくともこの3文はあります。
※“最後に.txt .exe ”を実行するとその付近のPC全てが爆発します。
※↑に首輪の技術が使われている可能性があります。ただしこれは沙羅の推測です。

※双葉恋太郎の銃“S&W M60 チーフスペシャル(5/5)”は撃とうとすると暴発します。
※沙羅の銃声は辺りいっぺんに響きました。沙羅がどの方向へと逃げるかは後続の書き手さんにお任せします。


049:二人だけの音楽会― Concerto ― 投下順に読む 051:そして走り始めた影
043:戦い、それが自由 時系列順に読む 053:おいてきたもの
037:兄と妹 朝倉純一 076:暁に咲く詩
040:希望は爆発と共に 白鐘沙羅 080:はばたく未来







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