青空に羽ばたく鳥の詩 ◆iWNzks43D6


(思ったよりも回復している、まだ痛むが……まだやれる。俺はやれる)

博物館にいて休憩していた国崎往人は今は離れD-2の公園の近くに来ていた。
2時間以上も休憩したお陰か体力も大方回復していた。
だが骨折した左腕は痛みが止まる気配がない。
(ちっ……左は使い物にはならないか……だが右は大丈夫なんだ。右さえあれば銃が撃てる!)

右の手にあるのは黒光りするリボルバー――コルト M1917――。
この銃で4人も殺した。
エルルゥ。
佐祐理。
エスペリア。
アルルゥ。
この島で皆懸命に生きていた。
そんな人達を自分の手で殺した。
ただ観鈴を護る為。

(こんな自分、観鈴には見せられないな……いや俺は常に冷酷な仮面を付けてないといけない、観鈴にどう言われてもだ)

自分はただの冷酷な殺人者でなければいけない。
人を殺すことに自分が傷ついても、観鈴だけは護る。

それが国崎往人の信念。
もう人を殺すことに戸惑いはない。
それはただ観鈴の為。

(ここは俺が佐祐理を殺した場所……ってあれは!?)

公園に来た往人が見たもの。
それは忘れらない姿。
金髪のポニーテール。
そう、それは

「観鈴!!!」

その瞬間、往人は駆け出した。





 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





「……悠人さん、遅いですね」
食事を終えジュースを飲んでいた観鈴がそう呟いた。
「そうね、でももう少ししたらくると思うわよ」
瑛理子はエスペリアの首輪を調べながら答えた。

その時公園を見回っていたハクオロが帰ってきた。
「ふう、ただいま、見つけたのがあるのだが、その前に何か飲み物をくれないか?」
「おかえりなさい、はいどうぞ」
観鈴が飲み物を渡した。
ハクオロが飲もうとするが、
「あの……観鈴? どんなにすっても出てこないのだか?」
ハクオロが飲もうとしていたものは

「美味しいですよ、これ」
「だからそれ以前に出てこないのだが……」

どろり濃厚だった。

瑛理子が訝しげに
「本当にでないの? 貸してハクオロ」
「ちょっと待ってくれ、勝手に取るな」
「あ、本当に出ない……観鈴なんであなた飲めるの?」
「普通にしてるだけですよ……瑛理子さん、それ間接キスですよ」
瞬間、瑛理子の顔が赤くなり
「ちょっちょっと観鈴何言ってるの! もう、ハクオロ貴方のせいだからね!」
「何故私のせいなのだ……」
「あははは」

そこにはとても微笑ましい光景があった。
その光景に割り込む一つの声。

「観鈴!!!」

その声が聞こえた時ハクオロは銃を構え警戒する。
その声の持ち主はこれから会おうとしていた者だった。
そう

「往人……さ……ん」

国崎往人その者だった。
往人は観鈴から10メートル近い所で止まり
「観鈴、無事だったんだな」
さらに近づこうとするが、
「動くな、そこで止まれ」
ハクオロが銃を向けそれを止めた。

「何故止める……お前は!?」
「そうか、お前が観鈴を……って言う事は観鈴、まさか俺が……」
「うん……知ってるよ。往人さん殺し合いに乗ってるんだよね」
「……ああ、そうだ」


往人は辛かった。
自分が殺し合いに乗っていることを観鈴が知ってることに。
自分が殺し合いに乗っていることを知っていることで観鈴が苦しんでいるだろう。
そして自分に殺し合いをやめる様説得してくるだろう。
それがたまらなく嫌だった。
決意が揺らいでしまいそうで。


そして往人の予想通り観鈴は説得を始めた
「往人さん! 人殺しなんてやめようよ!」
「……嫌だ……俺はやめない」
往人は顔を背け言った。
「どうして!? そんなの往人さんらしくないよ! 往人さんは優しい人だもん……人殺しをして平気な訳ないよ!」
「買い被り過ぎだ……俺は人殺しをして平気な人間だ」
「違うよ! 優しい人だよ、だって私の為に殺し合いをしているのでしょう!」
「ああ、そうだよ……」
「なら、止めて! 私は嬉しくない!」

観鈴が悲痛な顔をし叫ぶ。

(やめろ! 観鈴、もう俺にそんな事言うな……頼むから!)
往人にはもう耐えられなかった。
これ以上聞いてると人殺しを止めそうで。
でも観鈴のためには止めることはできない。
だから

「観鈴、もういい。俺はどんな事でも止めない。だから黙っていてくれ。決着をつける」

そう拒絶し突き放した。

「往人さん!」
「お願いだ。黙ってくれ。もう一度言う、俺はどんな事でも殺し合いを止めない。お前の為に、だ」
「そんな……往人さん、止めてよ、お願い……お願いだから! 嫌だよ……往人……さん」

観鈴は耐えられなくなり泣き出した。
往人の説得が失敗したことに。
往人がもう止まれない所まで来ていることに。
自分には往人を止める力がないこと。
そしてこれから起こるであろう戦闘にただ涙を流した。





往人は泣いてる観鈴が気になったが、ハクオロに銃を向け
「そういう事だ、ハクオロ。俺は冷酷な殺人者だ。今まで観鈴を護っていた事に礼を言う。後は俺が護る。お前達には死んでもらう」
「結局、お前は変わらなかったのか。60人以上の命を引き換えに観鈴を生かそうというのか? 観鈴に罪を負わせようというのか?」
「ああ、俺はどんな手を使ってでも観鈴を生かす」
「愚かな……何というエゴを持っているんだ。それに私もお前が冷酷だとは思わない」
「何だと?」

ハクオロは観鈴に目をむけ
「観鈴が話をしている時、お前は苦しそうだった、本当は殺人をすることは嫌なんじゃないか?」
「そんな……そんな事ない! 俺は……俺は観鈴のためなら殺すことに戸惑いはない!」
「そうには見えんがな……まあいい、お前に聞きたいことがある。アルルゥを殺したのはお前か?」
「……ああ、おれがやった」、
「……っ、そうか、お前が大切な家族を殺したのか」
「家族? そうなのか……なら教えよう。エルルゥを殺したのも俺だ」
「何だと!?」

ハクオロは怒りに身を任せようとしたが

(だめだ、怒りに任せてはいけない、落ち着け、今は観鈴と瑛理子を守るのが先決だ)
瞬時に怒り納め

「そうか、ならもう言葉を交わすこともないだろう」
「ああ、決着を」

ハクオロと往人は互いに銃を向け合った。
もう言葉は要らない。
後は力にて自分の信念をぶつけるだけ。

そこに今まで黙っていた瑛理子が
「なら私も力を貸すわ、借りも有るしね」
だがハクオロは
「いや、私1人で戦う。瑛理子は怪我をしてるしな」
「でも!」
「大丈夫だ、瑛理子。私は負けない」
ハクオロの気迫に押され
「……わかったわ。観鈴は任せて」
瑛理子は観鈴をつれ、少し2人から離れた位置に向かった



瑛理子が離れたのを観てハクオロは改めて銃を向け
「さあ始めようか、往人。エルルゥやアルルゥ達の為にも、観鈴や瑛理子の為にも、私は負けない。往人、お前を倒す」

往人もハクオロに改めて銃を向け
「ああ始めよう、ハクオロ。観鈴を俺の力で守り通す為にも、俺は絶対負けない。ハクオロ、お前を殺す」


目的は一緒。二人は大切な人を仲間を護りたいだけ。
ただ向かうベクトルが違った。
ハクオロは仲間と力を合わせここからの脱出。
往人は参加者を殺し、大切な人を優勝させる。
ただそのベクトルの違いで2人は戦うことになった。
大切なものを護るため。
そして始まる。
互いの信念をぶつける戦いが。





 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・




互い銃を向け合ってからどれくらい経ったのだろうか?
5分経ったかもしれないし、三十秒しか経っていなかいもしれない
そして

「止めてください! ハクオロさん、往人さん、戦わないで! 嫌だよ! 2人とも死んで欲しくない! 嫌だよぉぉぉぉ!!」

戦いは二人が護るべき少女の叫びを持って始められた。
観鈴の思いとは反し二人は殺し合いを始める。


まず動いたのはハクオロ。
銃を持ってない手で陽平から奪った投げナイフを往人に向かって投擲する。

「くっ、やはり銃以外にも武器はあったか」
往人はすかさず左方向に飛び避けたが

「まだだ」
ハクオロがもう銃を構えていた。
「くそっ、中々やる!」
ハクオロが銃を撃つ刹那、往人はさらに左へ避けていた。
銃弾は往人の元のいた位置を通った

打っては避け、打っては避けを3,4回繰り返したのだろうか。
往人は焦っていた。
(くそ、ハクオロに完璧に遊ばれてるな。あいつ、相当戦いなれてやがる……いずれ弾は尽きる、そこを待つ)
それは仕方ないかもしれない。
往人がこの島で沢山戦ってきたとはいえ、ハクオロは国の皇として戦場で何度も命のやり取りしてきたのだ。
その差が大きくハクオロを有利にしていた。

そして往人は気付いていなかった。
ハクオロがじょじょに往人との距離を縮めていたことに。

そしてハクオロが最後の銃弾を放った。
「当たってたまるか!」
往人がその銃撃をかわした時、往人は驚愕した。
「何!?」
ハクオロが往人に向かって突進してきたのだ。
その時やっと往人は距離が縮まっている事に気付いた。
が、もうその時には遅かった。
「うおおおおぉぉ!!」
「がぁあ!」
もろに突進を直撃させそのままハクオロは
「はあ!」
鳩尾を殴りそして
「終わりだ!」
「ぐあああ!」
あいた背中に手刀を加えた。

それは往人を倒すために考えた策。
ハクオロは完璧に往人を気絶させることができると思っていた。
観鈴の叫びを聞いた時、もう往人を殺す気はなかった。
だがそれは甘かった



(畜生! 俺は負けるのか。観鈴を守ることはできないのかよ!)
薄れ行く意識の中で往人は自分の不甲斐無さを呪った。
「なんだ、往人、お前の信念はそんなものなのか? 買い被りすぎたか」
ハクオロがそう呟くのが聞こえた。
(違う! 俺は負ける訳にはいかない! こんな所で死ぬわけにいかないんだ!)
今にも落ちる意識をとどめ
(俺が、俺自身の力で観鈴を護るんだ。どんなことでも! 護るしかないんだ! くたばる訳には行かないんだ)

だから

「俺が!! 観鈴を! 護るんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」

往人は完璧に意識を覚醒させた。




往人の予想外の覚醒にハクオロは反応できかなかった。
覚醒した往人はハクオロに突進し、
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ぐっ!」
蹴り飛ばした。
蹴られたハクオロは尻餅をつき立ち上がった時もう遅かった。
少し離れた所に銃を構えた往人がいた。避けられる位置ではなかった。
「チェックメイトだ」
往人がそう告げ
「何か、遺言があるか?」
それは全力で戦った人間への敬意だった。

ハクオロは
「そうだな、観鈴をよろしく頼む。それとまだ瑛理子を生かしておいてくれ」
「何故だ?」
「彼女は首輪を解除できる力がある、首輪解除できればきっと突破口がみつかるはずだ、頼む、往人」
往人は少し考え
「わかった、善処する」
往人にとってもこの首輪は邪魔だった。
なによりも今まで観鈴を護ってくれた人間の願いなのだ。
だからハクオロの願いを聞き入れた。

ハクオロは満足そうにうなずき
「そうか……礼言う、それと観鈴、瑛理子護れなくて本当にすまない」
「ハクオロ!」
「ハクオロさん!」
2人の叫びが聞こえた。ハクオロはそれに答えずに
「やってくれ。往人」
目を閉じた。
浮かぶのはエルルゥたちと過ごした日々。観鈴、瑛理子と過ごした数時間。
(観鈴、瑛理子護れなくて本当にすまない、エルルゥ、アルルゥ、カルラ、オボロ、今行く。トウカ、後を頼む)
「ああ、後は任せろ、ハクオロ」

その掛け声とともに1発の銃声が鳴った。
その直後鮮血が流れた。




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





だが、鮮血を流したのはハクオロではなく――――



「駄目ぇーーーーーーーーーー!!!」


その瞬間に観鈴がハクオロのまえに飛び出した。

そう、血を流したのは――


「観鈴ーーーーーーーーーーーーっ!!!!」



観鈴だった。


弾は観鈴の腹部の中央辺りを貫いていた。誰が見ても致命傷だった。

往人は信じたくなかった。
自分が撃った銃で観鈴が死んでしまうことに。
そう自分が観鈴を殺すという最悪のケースを。

そんな最悪の考えを振り払い往人は観鈴の傍に駆け寄る。
ハクオロも瑛理子も観鈴に駆け寄った。
「この馬鹿……なんでこっちに来るんだよ!」
往人が泣きそうな顔し言った。
「だって……往人さんに人殺しをして欲しくなかった……ハクオロさんに死んで欲しくなかった……」
「だからって観鈴が身代わりになる必要があるかよ……いやだ、俺は観鈴は殺したくない……!」
往人は耐えられなくなり泣き出す。

瑛理子が悲痛の顔をしてハクオロに
「ねぇ! 観鈴、大丈夫でしょ……死んだりしないよね……?」
だがハクオロは首を横に振った。
彼も耐えている様だった。
「嘘……お願い、観鈴を助けてよ……やっと出来た友達なのに……ねえ!」
瑛理子も耐えられなくなり泣き出した。
「ねえ……往人さん、最後の願い、聞いてくれるかな……」
観鈴は息も絶え絶えに言った。
「最後じゃない! これからもずっとなんでも聞いてやるから! だからそんな事言うなよ……」
「……往人さん……お願い……もう人殺しなんかしないで……もう自分を苦しめないで……」
「もう私は十分幸せだから……今度は往人さん……幸せになって……」
「馬鹿……まだお前は幸せじゃないだろう……これからもずっとずっと生きて、もっともっと幸せを手に入れるんだよ!」
いまの往人はもう冷酷な殺人者じゃなかった。
ただ愛する者を失おうとする悲しき者だった。

観鈴は言葉を続ける。
「往人さん優しくて、強い人だから……今度は私の代わりに困ってる人を助けてあげて……人殺しなんかしないで」
「往人さんの罪は生きてればきっと償えるから……どれくらいかかるか分からないけど……きっと償えるから」
「だから生きて! 幸せにずっとずっと笑って生きて! これが私の願いです……往人さん約束してください」
観鈴はまっすぐ往人を見ていった。

往人は
「ああ、約束する、だから、だから死なないでくれ、観鈴! 俺は殺したくない!」
「本当に?」
「本当だ! 約束する! 国崎往人はもう人殺しなんかしない! 罪を償う! 俺は幸せにずっとずっと生きる! だから死ぬな、観鈴! 幸せになるにはお前が必要なんだよ!」
「じゃあ……指きりしませんか?」
「ああ、しよう」
2人の指が重なる
「これでもう約束破っちゃだめだよ……往人さん」

観鈴はハクオロと瑛理子の方を向き
「ハクオロさん、瑛理子さん……やったよ……私……往人さん……止めることができたよ……やっと……やっと」
ハクオロはうなずき
「ああ、よかったな……だからもう喋るな……喋らないでくれ」

観鈴はにっこりと笑い

「うん……この島に来ていろんなことがあったけど……つらかったり、苦しかったりしたけど……私、がんばってよかった!」
「往人さんを……止められたのもひとりきりじゃなかったから……ハクオロさん……瑛理子さん、ありがとう……」

そしてハクオロのほうに向き
「ハクオロさん……ありがとう、ハクオロさんのお陰で……ここまで来れた……お父さんみたいでした……ありがとう……瑛理子さんをちゃんと見ていてくださいね、それと往人さんをお願いします」
「こっちもそうだ……観鈴のお陰で助かった……ありがとう……瑛理子のことは任せてくれ」
ハクオロはそう言うと涙を一粒流した。本人は気付いてないのだが。

観鈴は今度は瑛理子のほうを向き
「瑛理子さん……ありがとう……瑛理子さんが友達でよかった」
「私もよ、観鈴が友達でよかった……だから遺言みたいなこと言わないで……!」
「私、瑛理子さんから色々教えてもらった……これからも友達でいてくれますか?」
「もちろん、そうに決まってるじゃない……これからも……ずっと! ずっと! ずっーーと! 友達だよ!」
「えへへ……嬉しいな……私もです……ありがとう」
「こちらこそ……ありがとう」
瑛理子はそう言うとまたぼろぼろと涙を流した。


観鈴は今度3人を見渡し
「がお……皆……悲しそうな顔してるよ……笑顔だよ……笑ってよ」
「ほら……ぶい」
観鈴は震える手で必死にピースをした。

三人とも笑える状況ではなかった。

でも観鈴が
「ほら……ハクオロさん……ぶい」
「ああ……ぶい」
ハクオロは必死に笑顔を作りピースをした。

次は瑛理子
「瑛理子さん……ぶい」
「ええ…………ぶ……い」
瑛理子は泣きながらも笑顔を作りピースをした。
それはとても綺麗とはいえなかったが 一生懸命に作った心からの笑顔だった。

そして往人
「往人さん……ぶい」
往人は必死に笑顔を作ろうとした。でもその前に涙が出てきてしまいなかなか作れなかった
それでも必死に涙を抑え
ついに

「ああ…………ぶ……い」

心からの笑顔とピースを作った。
この島ではじめて作った満面の笑顔。
確かにこの時、往人は笑っていた。


観鈴は満足そうに
「にはは……みんな……笑顔……とても幸せ」
そして往人に
「往人さん……これからも笑ってください……ずっとずっと幸せに……笑顔で……生きてください」
「ああ……約束する……絶対に……絶対にだ!」
「うん……約束……最後にお願い……」
「何だ……?」

観鈴は一呼吸つき
「キス……してくれませんか」
往人は驚きながらも
「ああ……わかった」
手をつないだ。
どんなに汗が滲んでもずっと手を離さない。
観鈴をそっと抱きかかえ、

「ほら……」


キスをした。
それは永遠とも思える時間。
2人はキスしていた。

そっと往人が離れ
「これからも……ずっとずっと一緒だ」
そういった。
観鈴は満足そうに笑い
「うん……往人さん……ありがとう……やっと……たどり着いた……ずぅーっと……探してた場所……幸せな場所……ずっと……しあわせなばしょ……皆……笑顔……往人さんと一緒……」

そして

「……往人……さん……大……好き…………」

静かに目を閉じた。

「おい……? 観鈴?……冗談だろ……おい……観……鈴……」

もう動かなかった。
観鈴は静かに、けど笑顔で逝った。

「そんな……嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! みすずぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

往人の叫びが悲しく響く。
青空に。




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





にはは、皆、笑顔だったな。
一番好きな人達が笑ってる。
これからもずっと笑顔でいてほしいな。
誰よりも遠くにいってもここからまた笑ってくれるかな?

今私の目に見えるのはあの日の夏。
往人さんと出会った夏。
感じるのはあの日の夏の匂い。

沢山の思い出があります。
他にはなにもいらないぐらいに。
ハクオロさんと笑った事。
瑛理子さんと友達になった事。
往人さんとキスした事。
3人とも素敵な思いでありがとう。
思い浮かぶのは育ったあの海の匂い

誰よりも遠くにいってもここからまた笑ってくれるかな?
瞳を閉じればふっとあの日の青空。



やっとゴールした私、神尾観鈴の生涯は短くてちっぽけのものかもしれないけど、とてもとても笑顔溢れる幸せなものでした。




                  ありがとう。




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・






「俺が……観鈴を……殺した……観鈴を……殺した……」
観鈴が息を引き取ってから往人は絶望していた。
自分が観鈴を殺した。
護るべき者だったのに。
大好きな人だったのに。

「……もう、観鈴もいない……俺はもう……ここに居る……必要もない」
往人は銃を持ち銃口を自分の頭に向けた。
観鈴はもう居ない。
だから自分も居る必要がなかった。
そして
「観鈴……今行くよ」
トリガーを引こうとした。

しかし
「止めろ!」
それに気付いていたハクオロが銃を弾いた。

「……なんで、殺さしてくれない? 俺はもう居たくない」
往人が虚ろな目をしていった。
そんな往人にハクオロは怒り
「馬鹿者っ!!」
「ぐっ」
往人の顔面をもろに殴った。

ハクオロは続けて
「いいか! お前のやろうとしてた事は観鈴への侮辱でしかない!」
「侮辱だと……?」
「ああ、そうだ! 観鈴はお前に何を言った! 幸せに笑顔で生きろと言った! 約束をしたんだろう!」
「それをお前は破ろうとしている! 何の為に観鈴は頑張った? お前に生きてもらいたいから、命を懸けてお前を止めたんだろう!」
「それを何だ、自殺をするだと! お前は観鈴の頑張りを無駄にする気か! ふざけるのもいいかげんにしろ!」
「ああ……そうか、観鈴の約束を破ろうとしていたのか……俺は……最悪だ……」

「それだけじゃない。お前は今までお前が殺めた人間も侮辱したのだ!」
「お前は殺した人間の全てを背負って生きていかなければならないのだ! 今のお前は自分の犯した罪から逃げているだけだ!」
ハクオロは往人にじぶんの思いをすべて伝えた。
全ては観鈴の願いのため。
往人に幸せに笑顔で生きて欲しいと。
だからこの男を死なせてはならない。
そう思った。

「そうか……なら、俺はどうしたらいい? 教えてくれハクオロ」
往人の顔にはもう絶望していなかった。
ただどうしたいいか迷っている子供の様だった。
そんな往人にハクオロは

「なら、生きろ!」
「生きて、生きて罪を償え! 観鈴の約束を守れ! 幸せに笑顔で生きろ!」
「お前はもう殺人をする必要はない!」
「いいのか? 俺は生きていいのか? 俺はもう元にもどっていいのか?」
「ああ、生きていいに決まっているだろう! それが観鈴の願いなのだから」

往人は憑き物が落ちたように
「ああ、もういいのか。 俺はもう仮面を被ってなくていいのか」

そしてついに往人は戻った。
冷酷な殺人者から、本来の心優しい青年に。
そして表れるのは罪の意識。
今まで殺してきた者への。
とたんに心が張り裂けそうになる。
殺人者だった時は感じなかったもの。
それを感じた途端往人は涙が溢れ出し、

「うあ……ごめん……ごめん」

殺した者への謝罪を口にした。
「エルルゥ……ごめん……佐祐理……ごめん」
謝罪するだけでは到底たりないけど
「エスペリア……ごめん……アルルゥ……ごめん」
少しでも届けと口にした。
そして
「観鈴……ごめん」
自らの手で殺した最愛の者にあやまった。
それとあの時伝えられなかった自分の思い、それをを伝えた。

「俺も……観鈴の事……お前に負けないくらい……大好きなんだよーーーーーーーーー!!」

そしてまた泣き出した。
後悔は沢山ある。
でもこれから笑って生きていくために
悲しみを全て吐き出した。
もう泣かないために。







往人が泣いてる時瑛理子は往人に気付かれないように銃を向けていた。
往人を殺すために。
それに気付いたハクオロは
「瑛理子! 何をするんだ!」
瑛理子を押さえつけ止めた。

「ハクオロ、止めないで! 私はあの男を許さない!」
瑛理子は怒りながら言った。
「観鈴は大切な友達だった! なのにあいつは殺した!」

やりきれない思い。
瑛理子はそれを往人への恨みにかえた。

ハクオロは瑛理子を諭すように
「だからといって私は殺すことは許すことは出来ない。そんなことをしても観鈴は喜ばない、悲しむだけだ」

瑛理子は観鈴の名前が出た途端落ち着き始めた
「ハクオロ……あなた、ひどいわ……観鈴の事出されたら何も出来ないじゃない」
「もう殺そうとしない……でも私はあいつを許せない!」
「なら……彼の罪だけ赦さなければいい。他の皆が赦してもお前はその罪を赦すな。それが彼のためにもなる」
「罪を……ええわかったわその役目、私が引き受けるわ。それと少し話を聞いて」

瑛理子は自分の思いを語り始めた。
「私、観鈴と友達となって人との触れ合いのよさ初めって知った」
「観鈴は私から色々教えてもらったと言うけど教えてもらったのは私の方」
「だから観鈴とずっと一緒にいたかった。まだまだ色々教えて欲しかったのに」
瑛理子の声が震え始めた。
「なのに……どうして観鈴が……どうして観鈴が死ななきゃならないのよ……!」
「瑛理子、もう抑えるな、泣いていいんだ」

そして
「うわあああああああああぁぁぁぁぁん!!」
大声上げて泣き始めた。
それをハクオロがそっと抱きしめる。
「やっと……出来た友達なのに……」
「もっと……話がしたかった」
「もっと……笑いあっていたかった」
「なのに……どうして……どうしてぇ……」

瑛理子は泣き続けた。
親友を思って。




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





観鈴が亡くなってから少し時間が経った。
3人とも少しずつ落ち着き始めた。
そんな中ハクオロが往人に
「往人、お前はこれからどうする? 人殺しはしないんだろう?」
「ああ、もうどんな事があっても絶対しない」
そしてこれからするべき事を伝える。
「俺は観鈴との約束どおり困ってる人を助ける。がらじゃないが、約束だからな。それとどんなに時間がかかっても罪を償う」
「そうか、ならそれでいい」
ハクオロは満足そうにうなずいた。
「そのために聞きたい事がある。月宮あゆ、遠野美凪を知ってるか?」
往人が人殺ししないのなら、
あゆ、美凪は助けておきたかった。
あゆは同行者である乙女が死んでるし、美凪は知り合いだったからだ。
2人とも独りでは生きていけないだろう。
だから自分の手で保護しておきたかった。
もう後悔しないために。

ハクオロは残念そうに
「残念だが知らないな」
往人は瑛理子の方を向いた。
そこで瑛理子の髪形が変わってる事に気づいた。
「私も知らないわ……どうしたの?」
「いや……そのリボン」

瑛理子は今観鈴がしていたリボンで観鈴と同じポニーテールにしていた。

「ああ、これ、観鈴から借りたの。観鈴が生きていた事残したくて」
「そうか、似合っている、観鈴も喜ぶだろう」
「ええありがとう……国崎往人、私は他の人が赦しても私はあなたの罪は赦さない。この意味解る?」
「ああ、そういってもらうと助かる。全ての人に赦されるとだめになってしまうかもしれないからな」
「そういう事よ」

瑛理子との会話を終えハクオロの方を向くと
「往人、さっそく罪を償う機会がある。これから私達はエスペリアの仲間と会う事になってる。どうだお前も会うか?」
「本当か!? 会わせてくれ」
瑛理子があわてて
「ちょっと今の悠人さんに会わせて大丈夫なの?」
「大丈夫だ何かあったら往人は私が守る、観鈴に言われたしな」
「そう、ならいいわ」
「そういうことだ、往人。彼はここに来る。それまで待とう」
「ああ、わかった」

「悠人達ぐがるまで、観鈴を埋葬しよう。あと、もう一つ遺体を見つけたんだ。それも埋葬しよう」
ハクオロが提案した。
往人が顔を伏せ
「もう一つはたぶん俺が殺した者のだ。俺に埋葬させてくれ」
そのもう1つの遺体は倉田佐祐理のだった
「ああ、わかった」
ハクオロが了承した。

3人とも観鈴の遺体を見てそれぞれ思いをめぐらせた。





 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・






観鈴。お前には命を救ってもらったな。
ありがとう。
お前の笑顔が救いだった。

向こうに着いたらエルルゥ、アルルゥと仲良くしてくれ。
2人とも私の大切な家族だ。
アルルゥは人見知りをするがお前ならすぐ仲良くなれるだろう。
だから2人と友達になってくれ。

まだそっちにはいけないが
どうか元気で



          ありがとう



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





観鈴、リボン借りたわよ
私はあなたのように似合うか分からないけど
大切に使うから。 

私、あなたの友達でよかった。
だって笑顔でいる事が楽しくなったから。
不思議ね
これからもずーーーーーっと友達だから。
親友と思ってるから
観鈴もそう思ってくれるかな?

私あなたのようにがんばるから
ずっと観ててね



         ありがとう



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



観鈴、ごめんな
辛い思いをさせて。
謝ってすむことじゃないが

俺さ、頑張って生きるから
どんなに辛くても
笑顔で居てみせるから。
そして約束守るから

観鈴が居ないと
さびしけど
幸せになって見せるから
約束だもんな

俺はいつでも笑顔で居るよ。
お前も居てくれよ。
笑顔がとりえなんだから

俺はこれからも
神尾観鈴、
あなたが
大好きです

どうかこの青空の上から
見守ってくれ



          ありがとう



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・




         三人の耳に観鈴の声が聞こえたような気がした
         ふっと3人は微笑んだ。






        ――にはは、ぶいっ!


【神尾観鈴@AIR 死亡】






【D-2 西部 公園内/1日目 午後】


【国崎往人@AIR】
【装備:コルトM1917(残り5/6発)】
【所持品:支給品一式×2、コルトM1917の予備弾40、木刀、たいやき(3/3)@KANNON、大石のノート】
【状態:深い罪悪感・精神的疲労・右腕と左膝を打撲・右手の甲に水脹れ
     左腕上腕部粉砕骨折・左肩軽傷・脇腹に亀裂骨折一本・全身の至る所に打撲】
【思考・行動】基本:観鈴との約束を守る、人殺しには絶対乗らない
0:もう人殺しには絶対乗らない
1:困ってる人を助ける
2: あゆ、美凪を探す
3:エスペリアの仲間に謝る。
4:観鈴を埋葬する



【備考】
※大石のノートを途中までしか読んでいません。
 先には大石なりの更なる考察が書かれています
※ハクオロ、瑛理子を信用しました


【工場探索チーム】
基本方針1:現在地で偵察チームと合流。
基本方針2:首輪の解析をする。
思考: 悠人と衛が心配。
【備考】
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を考えています。
※禁止エリアについて学んでいます。(禁止エリアにいられるのは30秒のみ。最初は電子音が鳴り、後に機械音で警告を受けます)
※博物館で悠人たちを襲撃した相手(ネリネ)の外見と、その仲間と思われる相手の乗っている車について聞いています。
※悠人から、ファンタズマゴリア、永遠神剣、スピリットについて学んでいます。
※島内部の電話が使えることを知っています。
※陽平から博物館での戦闘について聞いています。
※車に乗った襲撃者の一団を警戒しています。
※往人を信用しました。


【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備:Mk.22(0/8)、オボロの刀(×2)@うたわれるもの】
【所持品:投げナイフ×2、支給品一式、ランダムアイテム(0~2)
支給品一式×2、予備マガジン(40/40)、スーパーで入手した品(日用品、医薬品多数)、タオル、i-pod、陽平のデイバック】
【状態:精神疲労】
【思考・行動】
基本方針:ゲームには乗らない。
1:瑛理子を守る。
2:悠人と合流
3:仲間や同志と合流しタカノたちを倒す。
4:トウカがマーダーに間違われるようなうっかりをしていないか不安。
5:悠人の思考が若干心配。(精神状態が安定した事に気付いてない)
6:観鈴を埋葬する

【備考】
※校舎の周辺の地形とレジャービルの内部状況を把握済み。
※中庭にいた青年(恋太郎)と翠髪の少女(亜沙)が殺し合いに乗っているかもしれないと疑っています。
※銃についてすこし知りました。また、悠人達から狙撃についても聞いています。
※往人を信用しました
※観鈴の所持品すべてハクオロが持ってます


【二見瑛理子@キミキス】
【装備:トカレフTT33 8/8+1、ビニール傘】
【所持品:支給品一式、ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭、空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE
     首輪、映画館にあったメモ、家庭用工具セット】
【状態:左足首捻挫、軽度の疲労、精神疲労、深い悲しみ】
【思考・行動】
基本:殺し合いに乗らず、首輪解除とタカノの情報を集める。
1:とりあえず公園で待機。 悠人と合流
2:車に乗った襲撃者の一団が工場に陣取った時、或いは工場が禁止エリアに指定された時の首輪解析方法を思案中。
3:孝之や陽平のように錯乱している者や、足手まといになりそうな者とは出来れば行動したくない。
4:孝之と陽平には出来れば二度と出会いたくない。
5:観鈴を埋葬する

【備考】
※往人を信用しましたが罪は赦してません。
※パソコンで挙がっていた人物は、この殺し合いで有益な力を持っているのでは? と考えています。
※首輪が爆発しなかった理由について、
1:監視体制は完全ではない
2:筆談も監視されている(方法は不明)
のどちらかだと思っています。
※電話についても盗聴されている可能性を考えています。
※家庭用工具セットについて
観鈴が衛から受け取った日用品の一つです。
ドライバー、ニッパー、ペンチ、ピンセットなどの基本的な工具の詰め合わせである。
なお全体的に小型なので武器には向いていないと思われます。


134:戦の前。 投下順に読む 137:童貞男と来訪者達
134:戦の前。 時系列順に読む 137:童貞男と来訪者達
114:This is the Painkiller 国崎往人 139:朝焼けと青空の境界線を越えて
130:泥の川に流されてたどりついたその先に ハクオロ 139:朝焼けと青空の境界線を越えて
130:泥の川に流されてたどりついたその先に 二見瑛理子 139:朝焼けと青空の境界線を越えて
130:泥の川に流されてたどりついたその先に 神尾観鈴







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