童貞男と来訪者達 ◆guAWf4RW62


青色の空は何処までも澄み渡っており、その中心では太陽が己の存在を誇示し続けている。
日光。
それは人にとって――否、殆ど全ての生物にとって必要不可欠な、正しく生命の源とも云えるモノ。
だが、何事にも例外は存在する。
様々な恵みを齎す太陽も、全ての存在に対して等しく微笑み掛ける訳では無いのだ。

「ふう……やっと着いたわね」

一つ息を吐いてから、額に浮かび上がっていた汗を拭い取る。
あらゆる病原体を超越し、時の流れによる老化現象すらも克服した純キュレイ種、小町つぐみ。
生命力と云う一点に絞って考えれば、彼女はこの島で最も秀でた存在だろう。
だが紫外線を弱点とする彼女にとって、真昼間の行動は決して楽な物では無かった。
直接日光を浴びていた時間はごく僅かだというのに、つぐみの顔には少なからず疲労の色が滲み出ている。
その様子を見て取った朝倉純一が、不安げな表情で問い掛ける。

「なあつぐみ、大丈夫か?」
「このくらい平気よ。それより今は、周囲に注意を払いなさい……此処に殺人鬼が潜んでいる可能性だってあるんだから」

そう云ってつぐみは、前方に聳え立つ百貨店へと視線を移した。
百貨店の大きさは縦横約四十メートル、高さは約二十メートルといった所――デパートとしては比較的小規模な部類である。
入り口である自動ドアの向こう側からは、何の光も漏れ出ていない事から、少なくとも1階部は消灯されているのだと分かる。
つぐみは少し考え込んだ後、すっと横に手を伸ばした。

「……純一、私が先行して安全を確認するわ。貴方は少し時間を置いてから入ってきなさい」
「え、何でだ? 二人で同時に行った方が安全だろ?」
「そうとも限らないわよ? 私、暗い場所で動き回るのは得意なのよ」

赤外線を視覚で捉える事の出来るつぐみは、光の届かぬ場所での行動を得意とする。
その長所があったからこそ、圧倒的武装を誇る園崎詩音に襲撃された時も、何とか逃げ切れたのだ。
再生力や身体能力が軒並み抑えられたこの島でも、赤外線視力だけは健在。
ならば自分の得意とする環境下で、つぐみが先行しようとするのは至極当然の判断だ。
有り体に云えば、夜目の効かぬ純一が傍に居ては、緊急時に足手纏いとなる可能性がある。

「うーん……でも、まともな武器が無きゃ流石に危ないだろ? せめてコレを持っていってくれ」
「そう? じゃ、借りるわね。貴方にはこの釘撃ち機を渡しておくわ」

つぐみは純一の差し出したミニウージーを受け取ると、慎重な足取りで百貨店の中へと歩を進めていった。
一階は衣類や雑貨類を中心とした売り場のようで、様々な服や日常用品が規則正しく陳列されている。
昼だと云うのに建物の中は薄暗く、人の気配が無いのも相俟って不気味とすら感じられる。
フロアをぐるりと一周したつぐみは、此処には誰もいないと判断し、次の階を調べるべく階段へと移動した。

(……見た感じ、この百貨店は新築のようね。とても使い古された建物だとは思えない。
 そうなるとまさか、今回の殺し合いの為だけに建てられた……?)

考察を行いながらも、つぐみは階段を注意深く一歩一歩昇ってゆく。
昇り切る手前で周囲を改めて見回し、見える範囲では誰も待ち伏せていない事を確認してから、二階に足を踏み入れた。

「…………ッ!?」

そこで何の前触れも無く訪れた異変に、大きく息を呑む。
足元のタイルを踏み締めた瞬間、上方より何かが飛来してくる気配がした。
つぐみは咄嗟の判断でミニウージーの銃口を上に向け、向けた時にはもうトリガーを絞っていた。
規則正しいタイプライターのような音が鳴り響き、黒色の飛来物――フライパンが粉々に弾け飛ぶ。

「これは……トラップ?」

足元を良く見ると、タイル目に合わせて細い糸が何重にも張り巡らされている。
恐らくはこれを踏むと、先程のような罠が発動するという仕掛けだろう。
そしてこのような罠が設置されているという事は、何者かがこの地に潜んでいるという事。
その人物が殺し合いに乗っているのかどうか、それは分からない。
だが一つだけ、確実に云える事がある。
この地は敵のテリトリーであり、幾多もの罠が用意周到に張り巡らされている筈。
飛来してくる物体は致命傷となるようなものでは無いが、食らってしまえば動きが鈍らされるだろう。
そして糸を踏めば罠が発動するという仕掛けは、薄暗いこの環境下に於いて十分過ぎる程驚異的。
しかしあくまでそれは、常人ならばの話だ。
視界さえ十分ならば、そして仕組みさえ分かっていれば、見え見えの糸を踏んだりしない。
キュレイウイルスを体内に宿した自分にとって、この程度の罠など只の子供騙し――!

「残念だけど……相手が悪かったわね!」

赤外線視力を有している自分ならば、糸の仕掛けられている位置が正確に見て取れる。
つぐみは足元に張り巡らされた糸を避けながら、勢い良くフロアの中へと飛び込んだ。
足は決して止めずに、首だけ左右へと大きく動かすと、視界の端に小さな人影が映った。
その人影――小学生くらいの少女が向かう先に照準を定め、ミージーウージーを撃ち放つ。
陳列されていた電子機器類が炸裂音と共に破壊し尽くされ、敵の足が止まった。

「動かないで。もし下手な真似をしたら、容赦無く撃たせて貰うわ」

つぐみは銃口を敵の胸部へと向けながら、威圧するような声で告げる。
これ程手の込んだ罠を、あんな子供が仕掛けたのは驚愕すべき事実だったが、こうなってしまえば勝負は決しただろう。
仮に敵が悪足掻きを試みたとしても、即座にミニウージーの銃弾を放ってしまえば良いだけの事。
完全なるチェックメイトの筈だった――敵が、一人だけならば。
突如真横より聞こえてきた複数の足音が、つぐみの鼓膜を震わせる。

「ク――――」

つぐみは思い切り地面を蹴飛ばして、一旦後方へと離脱した。
トラップに対して細心の注意を払いながら着地し、新たに駆けつけてきた敵へ視線を寄越す。
つぐみが眺め見る先、立ち並ぶテレビの隙間から姿を現したのは二人。
一人は先程の少女より幾分か年上に見えるものの、やはり小柄な少女。
そしてもう一人は、大型拳銃を携えた茶髪の少年、齢は恐らく高校生といった所か。


「……梨花ちゃん、大丈夫かっ!」

第二守衛室から飛び出してきた少年――北川潤が伊吹風子と共に、梨花の横へと並び掛ける。
監視カメラのお陰で、北川達はいち早くつぐみの侵入に気付く事が出来た。
だというのに何故話し合おうとせず、これまでずっと姿を隠していたのか。
それらの原因は全て、つぐみが握り締めているミニウージーにあった。
例え姿を出して話し合おうとしても、万が一つぐみが殺し合いに乗っていたとしたら、ミニウージーで一網打尽にされて終わりだ。
だからこそ罠を利用してつぐみの戦闘力を奪い去り、それから落ち着いて話し合うつもりだった。
しかし罠は回避され、様子を直接確認しに行った梨花が発見されてしまった。
そしてつぐみがミニウージーを撃ち放った所為で、北川達の緊張は極限まで高まっている。


(三人、か……。さて、どうしたものかしら)

一方のつぐみは絶え間なく動き回りながらも、何処までも冷静に思案を巡らせていた。
敵は三人いる上に、数多くの罠が仕込まれた危険地帯が舞台。
数と地形だけに着目すれば、自分の不利は明白だ。
だが、問題無い。
敵の二人は何も武器を持っていない以上、脅威となるのは拳銃を持った少年のみ。
そして銃器の性能でも、恐らくはそれを扱う使用者本人の実力でも、自分は敵を圧倒している。
相手が殺し合いに乗っているとは限らないが、一先ず殺さない程度に痛め付け、当面の安全を確保する必要がある。
まず始めにつぐみは斜め後方へと駆け、一際大きな冷蔵庫の後ろに身を隠した。
この程度で銃弾を完全に防げるとは到底思えぬが、未だ遮蔽物を利用してない敵に比べれば、圧倒的に有利な状態だ。
そのままミニウージーの照準を、北川の脚部に合わせようとして――

「やめろおぉぉぉぉぉォォォッ!!」

その瞬間、周囲の空気を振動させる程の叫び声が、フロア一帯に木霊した。
つぐみも、北川達も凍ったかのように戦いを止め、ほぼ同時に声がした方へと振り向いた。
すると階段の辺りから、必死の形相をした朝倉純一が駆けて来ているのが見えた。

「つぐみもお前達も、莫迦な真似は止めるんだ! こんな事をしても何にもならないだろ!」

純一は何の迷いも無く、両者――即ちつぐみと北川達の間に割って入る。
新たなる侵入者の登場に驚いた北川が、コルトバイソンの銃口を純一に向ける。
だが純一は銃口から身を躱そうともせず、逆に己の武器である釘撃ち機を投げ捨てた。
自殺行為とも云えるその行動に、当然ながらつぐみは驚愕する。

「なっ……純一、貴方何を!?」
「これで良いんだ! 分かり合う為には、まず自分から武器を捨てなきゃいけないんだ!」

純一はそう云うと、北川達の方へと振り向き直した。

「俺の名前は朝倉純一。俺もコイツ――小町つぐみも、殺し合いには乗っていない。
 お前達は乗ってるのか?」
「いや……乗ってないさ。ただ自分と仲間達の身を守ろうとしてるだけだ」
「ならもうこんな事は止めようぜ。俺達が殺し合わなきゃならない理由なんて無い筈だ」
「…………」

純一が諭すように告げると、場に数秒の沈黙が流れた。
北川は暫しの間考え込んだが、やがてコルトバイソンの銃口を下ろした。
つぐみと云う女性はともかく――どう考えても純一は殺し合いに乗っていないだろう。
殺し合いに乗った人間が、己の身を挺してまで停戦しようとする訳が無い。
そして見た所純一とつぐみは、これまで仲間として行動を共にしてきた様子。
ならば純一の云う通り、これ以上戦いを続ける必要など何処にも存在しなかった。

「……ふう。全く純一も無茶な真似をするわね」

北川が銃を下ろしたのを見て取って、つぐみもまた警戒態勢を解いた。
肩から力が抜け、口からは自然と溜息が漏れ出てくる。
先の純一が取った行動は完全な愚行であり、一歩間違えれば取り返しの付かない事態になっていただろう。
だと云うのに、つぐみは純一を責めようという気になれなかった。
苛立ちよりも寧ろ、何か暖かい感情が湧き上がってきていた。


一悶着あったものの、こうして純一達と北川一行は和解に成功した。
純一の揺ぎ無い信念と勇気が、悲劇の到来を未然に防いだのだ。
尤も、今回は偶然こういう形になっただけで――純一の善意が、常に良い結果を手繰り寄せるとは限らないが。


    ◇     ◇     ◇     ◇


あれから北川達は、二階の片隅に在る第二守衛室へと場所を移していた。
円形のテーブルを囲うような形で、一同は腰を落として向き合う。
監視カメラがあるこの部屋でならば、周囲への警戒を怠らぬまま、腰を落ち着けて話し合う事が出来るだろう。
何を話し合うか――そんなモノは分かり切っている。
この島に於いて尚日常を演じてきた北川と云えど、情報の重要性くらいは当然理解している。
新たな仲間が出来たのならば、何よりも最初にまず情報交換をするべきだった。
一同はこれまで各々がこの島で辿ってきた道程を、一切包み隠す事無く語り始めた。

まず北川が最初に伝えたのは、竜宮レナに襲撃された時の一件だった。
嘗て北川はこの百貨店でレナの襲撃を受け、風子を背負いながらも逃げ続け、陰毛投擲という奇抜極まり無い反撃方法により窮地を脱した。
まるでコメディ映画のワンシーンかのように思える出来事だが、それは全て真実なのだ。
戦いの一部始終を聞き終えると、つぐみは呆れ果て、純一は苦笑し、そして梨花は少し辛そうな表情をしていた。

その後も北川の話は続き、名の分からぬ狂人について語った後、話題は役場で発見したパソコンの一件に及んだ。
北川は役場でパソコンを発見したものの、まるで見覚えの無いOSが用いられていた上に、必要と思われるゲームディスクも置いていなかった。
用途不明のプログラム、意味深な擬似恋愛遊戯のアイコン――明らかに主催者達が準備した物であり、何か重要な使い道があるかも知れない。
だが碌な知識を持ち合わせていない北川では、あのパソコンに秘められた謎を探るのは難しい。
だからこそ北川は、パソコンに関して詳しい人物を探し求めていた。
そしてその要望に応えられるだけの技量を持った人物が、この中には存在した。

「パソコンね……私、ある程度の知識はあるわよ」
「えっ、マジか!?」
「嘘なんかつかないわよ。まあ特殊なOSが使われているなら、私だって上手く操作出来るか分からないけどね」

テーブルの上に身を乗り出して問い掛ける北川に対し、つぐみが淡々とした口調で答える。
過酷な人生を歩んできたつぐみは、素人など比べ物にならぬ程の技術力を有しているのだ。
これは図らずして訪れた幸運――北川達一行にとって、間違いなく吉報。
だがそんな時、突然梨花がボソリと呟いた。

「ねえ潤……さっきからぱそこんだとかOSだとかって、一体何の話をしてるの?」
「……へ? 聞いての通りとしか言いようがないけど……梨花ちゃん、パソコンを知らないのか?」
「ええ、そうよ」

あっさりと肯定する梨花に対し、北川は疑惑の念を隠し切れなかった。
梨花は口調こそ大人びているものの、身体的特徴から判断すれば明らかに子供なのだから、OSという言葉を知らなくても仕方無いだろう。
だがパソコンすら知らないというのは、この現代社会に於いて有り得るのだろうか。

「ほらアレだよ、コマーシャルとかでよく映ってないか? インターネットを使ったり、ゲームしたり出来るやつだよ」
「色んなヒトデを検索する事も出来ますっ」
「潤、風子、さっきから貴方達が何を言ってるのか全然分からないわ」
「…………」

北川は顎に手を添えてから、深く考え込むような顔となった。
おかしい。
梨花が嘘をついているようには見えぬし、そもそも虚言を吐く意味など無いだろう。
ならば梨花の言葉は真実であると判断せざるを得ないが、現代の日本に住んでいてパソコンを知らぬ筈が無いというのもまた事実。
これだけ情報が溢れかえっている現代社会で生きていれば、必ずパソコンについて知る機会が在る筈なのだ。
だというのに、一体何故?
そこまで考えて、北川の脳裏にある単語が引っ掛かった。
そうだ――確かに梨花の言ってる事は有り得ない。
『現代』で生きている、という仮定の下ならば。
北川は自身が得た結論を確かめるべく、真剣な表情で梨花に問い掛ける。

「……梨花ちゃん、今は何年だ?」
「え……昭和58年でしょ?」

梨花がそう言った途端に場の時間が停止し、重い沈黙が流れた。
質問をした本人である北川は当然として、つぐみも納得したような顔付きになっていた。
そのまま幾ばくかの時間が経過した後、まるで事情を把握出来ていなかった純一が喋り出す。

「何言ってんだ? 昭和58年って……んな訳無いじゃんか」

純一がそう断言するのも、至極当然の事だ。
そもそも昭和58年といえば、まだ純一はこの世に生れ落ちてすらいない。
にも関わらず今が昭和58年であると言われても、信じられる訳がないだろう。
だがそこでつぐみが、純一の言葉をはっきりと否定する。

「いいえ、多分誰も間違った事は云ってないわ。私は西暦2034年の日本で生きていた。そして梨花は西暦1983年。
 つまり私達は、別々の『世界』から連れて来られたのよ」
「な、そんな事がッ……!?」
「そう考えるのが一番自然。60人以上の人間を纏めてワープさせれる主催者なんだから、何が出来ても不思議じゃない」
「…………」

純一は何も反論しない――つぐみの言う通りだった。
実際に自分達がワープさせられたように、この世には常識で考えられない事など幾らでもある。
自分だって魔法の真似事のような芸当が可能なのだ。
ならば複数の世界を行き来出来る存在が居たとしても、可笑しくは無いだろう。

「そうなると、まさか別の誰かが……? 少なくとも鷹野にそんな力は無い筈……彼女は只の人間なんだから」
「え――――梨花ちゃん、鷹野の事を知ってるのか!?」
「それは……」

問い掛けられた梨花はどう答えるべきか一瞬迷ったが、結局素直に教える事にした。
これ程までに常識外れな事態が続いているのだから、子供の妄言と片付けられる心配も無い。
雛見沢症候群の事も、鷹野三四自身についても、そのバックに付いている秘密結社『東京』の事も話した。


「『東京』……過激派の連中が集まった秘密結社。そして鷹野はその組織の一員で、『山狗』って言う特殊部隊を従えている。
 そんな危ない奴等が日本に潜んでいたなんて……、ああでも梨花ちゃんの世界は、俺が居た世界と別だから……えーと、う~もう訳分かんねえ!」
「残念です。ヒトデの秘密結社なら、風子も参加したんですけど。ヒトデの秘密結社……とっても可愛いです……」

独り頭を抱える北川と、独り空想に耽る風子。
そんな二人を華麗にスルーしながら、つぐみは冷静に自身の考察を述べる。

「でも……妙ね。話を聞く限り、鷹野は雛見沢症候群についての研究を進めたがってるだけなんでしょ?
 それなら私達を――特に梨花を殺し合いに巻き込む必要なんて、何処にも無いじゃない」
「私もそれはずっと不思議に思ってたわ。でもこう考えたら辻褄が合わない?
 鷹野はただの傀儡――黒幕は別に居る。そう、数々の超常現象を自在に引き起こせる黒幕が」

恐るべき力を持った何者かが、裏で鷹野を操っている――それが梨花の推理だった。
羽入という異能者が身近に居るからこそ、数少ない情報から推測出来た。
黒幕の目的は何なのか、といった疑問は残るが、推理自体は良い線をいってるように思えた。
誰もその推論に異を唱える事は無く、情報交換は進んでいく。
その結果ネリネという少女が危険人物であり、それは梨花を襲ったのと同一人物である事が分かった。
他にも危険人物は何人か居たが、既に放送で死亡が確認された後だった。
プールで発見した暗号文に関しては、全員で少し考えてみたものの、現段階以上の進展は見られなかった。
そのまま一同は各々の道程を語り続けて、情報交換という意味合いでの話は終わった。
後は今後の方針決定だが――つぐみからすれば、先に解決しておかねばならぬ問題がある。

「そう言えば潤……貴方は凄い評価されてるみたいよ。優勝者予想をしようって趣旨の投票サイトがあったんだけど、貴方一位だったわ」

つぐみは鉛筆を準備して、紙の上に文字を書き綴る。

【……盗聴されてるかも知れないから、少し首輪を調べてみたいの。何も喋らなかったら怪しまれるから、適当に話を合わせてくれないかしら。
 重要な会話は筆談の方でお願い】
「――――ッ!?」

驚愕の表情を見せる北川達に構わず、つぐみは純一の首輪を丹念に調べ、続いて紙に鉛筆を走らせてゆく。
他のメンバーも慌てて筆記用具を取り出し、何時でも筆談に応じれるような態勢となる。

【やっぱり盗聴されてるわ。首輪に集音マイクの小さな穴が付いているもの】
【そうか……これで鷹野は俺達を監視していたんだな……】

北川はそう書くと、自身に取り付けられている冷たい首輪を撫でた。
もし盗聴器に気付かぬままだったならば、仮に主催者打倒の糸口を発見出来たとしても、即座に露見し殺されてしまっていただろう。
そう考えると、背筋に寒い感覚が奔るのを禁じえない。

「でも実際に会って見たら、全然そんな感じじゃなくて拍子抜けしちゃった。
 此処に来てから、潤に関するイメージが180度近く変ったわ」
「……私もよ。私が襲う振りをした時、シリアスな顔で格好の良い事言ったと思ったら……いきなり風子と漫才始めるんだもの。
 潤の株が、世界恐慌で大暴落って感じ」

梨花は口頭上で話を合わせながら、鉛筆をぎゅっと握り締めた。
若干涙目になっている北川をよそに、つぐみとの筆談を開始する。

【つぐみ、これからどうするつもり?】
【良い? この殺し合いを潰すのに絶対必要な条件は三つ。
 1――情報収集……特に島の謎と、鷹野や黒幕について。戦場に関する仕組みと、相手の事が分かっていなければ、対策の建てようがないわ。
 2――味方戦力の確保。鷹野が特殊部隊を従えてるというのなら、こちら側もそれなりの人員と装備を揃えなきゃいけない。
     尤も人をワープさせたり、別世界から拉致出来るような奴が黒幕なら、どれだけ戦力があっても足りないかも知れないけど……。
 3――首輪解除。首輪を外す方法と、どうやって鷹野に悟られないよう外すのかが問題ね。
 それで、具体的にどうするかと言うと……】

紙が文字で埋め尽くされてしまった為に、つぐみは新たな用紙を取り出した。

【私は武を探さないといけないし、此処に留まってはいられない。だから私は純一と一緒に、島の中を動き回るわ。
 暗号文の解読、廃抗別入り口の探索、禁止エリアでカモフラージュされた何か、電力の供給源、首輪の解除方法。
 それから……座礁したフェリーなんかが地図に載ってるのも怪しいわね。
 私達はこの辺りを重点的に探ってみようと思う。逆に貴女達には、此処に留まって居て欲しい】
【どうして? 私達も一緒に行った方が良いんじゃない?】
【必要な条件は三つあるって言ったでしょ。
 私達の役目が情報収集と首輪解除だとすれば、貴女達の役目は味方戦力の確保。
 この百貨店を拠点にして、戦力を増やしていって欲しいの。
 勿論何処かで圭一や赤坂を見付けたら、梨花が此処に居る事を教えるから】

それは若干の違いこそあるものの、梨花が思い描いていた作戦と同じだった。
出来れば自分自身の手で圭一達を探したい所だが、贅沢など云っていられる状況では無いだろう。
子供の身体しか持たぬ自分よりも、先の戦いで驚異的な身体能力を見せたつぐみの方が、明らかに外で行動するのに向いている。
そう判断した梨花は、ゆっくりと首を縦に振った。

その後も少し筆談が続き、百貨店が禁止エリアになった場合の拠点などについて決められた。
もっぱらつぐみと梨花の二人で協議していたが、時折北川や純一も意見を挟んでいた。
そして十数分後、長きに渡った作戦会議が終焉の時を迎え――――

「おし、そんじゃそろそろ行くか」

そう云って純一が席を立ち、それに倣いつぐみも立ち上がった。
純一は残る三人に視線を送りながら、告げる。

「北川、古手、伊吹。俺達は生き延びる……絶対にだ! 次に会う時まで、どうか無事で居てくれよ」

この島ではもう、余りにも多くの人が死に過ぎてしまった。
殺し合いは今も尚続いており、強者とおぼしき人間も次々に命を落としている。
次の放送でこの場に居る誰かが呼ばれたとしても、何も不思議ではない。
それでも純一は、決して弱気になったりしなかった。
最後まで希望を捨てず、凄惨な殺人遊戯に立ち向かっていくつもりだ。
そんな純一の想いに応えるように、北川はにやりと笑って見せた。

「ああ、分かってるよ。一応ちっこいお姫様二人の護衛役を任されてんだ、そう簡単に死ねないさ」

純一は北川の返事を確認すると、つぐみと共に階段の方へと歩き出した。
長々と別れを惜しんでいる時間など無いのだ。
先程の戦闘の際投げ捨てた釘打ち機を拾い上げ、そのまま階段まで歩を進めようとして――

「アッー!?」
「……忘れてたわ」

フロアに響き渡る絶叫と金属音。
つぐみの真横では、純一が頭を抑えて屈み込んでいる。
純一はフロア中に張り巡らされていた罠を踏んでしまい、後頭部に中華鍋の直撃を受けたのだ。


    ◇     ◇     ◇     ◇


「……」

被弾部を押さえ、かったるいと呟きながらも歩いてゆく純一達。
そんな二人を見送りながら、風子は思う。
正直な所つぐみの思考力と、純一の強い信念には驚かされた。
『前回』の殺人遊戯で集められたのは、良くも悪くも普通の人間ばかりだった。
つぐみ程頭の良い人間は居なかったし、純一程真っ直ぐな姿勢を貫いた人間も居なかった。
だが今回は違う。
純一の話によれば、魔法を使える人間すらも居たらしいし、異能者も参加対象になっているのだろう。
明らかに前回よりも、参加者の質は上だ。

これなら――皆で力を合わせれば、何とかなるかも知れない。
『仲間』と一緒に、元の世界に帰れるかも知れない。
自分だって前回の経験により、罠や銃火器に関する知識を一通り身に付けている。
やろうと思えばもっと強力な罠を仕掛ける事も可能だ。

だがその一方で、決して見過せぬ不安も残る。
もし飛び抜けた力を持った異能者が、殺し合いに乗っていたら?
純一の信念を逆手にとるような、姑息極まりない人間が居たら?
そんな者達が存在したとしたら、殺し合いを止めるのは非常に難しいと云わざるを得ない。
全ての希望が潰えてしまった時、自分はどうすれば――どれだけ考えても、答えは出そうに無かった。






【A-3 百貨店二階第二守衛室/1日目 午後】

【北川潤@Kanon】
【装備】:コルトパイソン(.357マグナム弾6/6)、首輪探知レーダー、車の鍵
【所持品】:支給品一式×2(地図は風子に奪われまたまま)、チンゲラーメン(約3日分)、ゲルルンジュース(スチール缶入り750ml×3本)
     ノートパソコン(六時間/六時間)、 ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:殺し合いには乗らない。というかもう乗れねーつーの!
1:百貨店内の探索&トラップ
2:信頼できる仲間が来るのを待つ
3:百貨店を拠点とし、風子と梨花を守る
4:水瀬名雪や信用できそうな人物を捜索したいんだけど、二人(風子達)をわざわざ危険に晒すわけにもいかないからなぁ
5:そろそろ『童貞男』シリーズも終わるさ……そう思っていた時期が俺にもありました
【備考】
※チンゲラーメンの具がアレかどうかは不明。
※チンゲラーメンを1個消費しました。
※梨花をかなり信用しました。 風子、純一、つぐみも信用しています。
※ネリネと鳴海孝之(名前は知らない)をマーダーとして警戒しています。
※パソコンの新機能「微粒電磁波」は、3時間に一回で効果は3分です。一度使用すると自動的に充電タイマー発動します。
 また、6時間使用しなかったからと言って、2回連続で使えるわけではありません。それと死人にも使用できます。
※チェーンソのバッテリーは、エンジンをかけっ放しで2時間は持ちます。
※首輪探知レーダーが人間そのものを探知するのか、首輪を探知するのかまだ判断がついてません。
※車は百貨店の出入り口の前に駐車してあります。(万一すぐに移動できるようにドアにロックはかけていません)
※車は外車で左ハンドル、燃料はガソリン。
※一連の戦闘で車の助手席側窓ガラスは割れ、右側面及び天井が酷く傷ついています。
※電線が張られていない事に気付きました。
※『廃坑』にまだ入り口があるのではないかと考えています。
※禁止エリアは、何かをカモフラージュする為と考えています。
※ノートパソコンの二回目の新機能は確認していません。
※幼女に目覚めました
※百貨店のある場所が禁止エリアに指定された場合、拠点をホテル、教会、学校の優先順位で変える。
※盗聴されている事に気付きました
※雛見沢症候群、鷹野と東京についての話を、梨花から聞きました。
※鷹野を操る黒幕がいると推測しています
※自分達が別々の世界から連れて来られた事に気付きました


【伊吹風子@CLANNAD】
【装備】:無し(コルトパイソンは潤に預けたまま)
【所持品】:支給品一式、猫耳&シッポ@ひぐらしのなく頃に祭、赤いハチマキ(結構長い)、風子特製人生ゲーム
【状態】:健康。満腹
【思考・行動】
0:今まで通り『伊吹風子』を演じる(受動的)
1:北川と梨花と、行動を共にする。
2:北川さんは風子がいないと本当に駄目ですね。やれやれです
3:もし殺し合いが止めれそうに無かったら、その時は……?
【備考】
※状況を理解していないように装っています
※トラップと銃火器に関して、かなり高度な知識を持ち合わせています。
※他にどれだけの知識や経験があるかは、後の書き手さんにお任せします
※北川をかなり信用。梨花、つぐみ、純一も信用しています。
※盗聴されている事に気付きました


【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:催涙スプレー@ひぐらしのなく頃に 祭  暗号文が書いてあるメモの写し
     ヒムカミの指輪(残り2回)@うたわれるもの 散りゆく者への子守唄
     紫和泉子の宇宙服@D.C.P.S. 】
【所持品:支給品一式】
【状態:頭にこぶ二つ】
【思考・行動】
基本:潤と風子を守る。そのために出来る事をする。
1:捜索、トラップ仕掛けを潤と一緒に行う(風子のトラップ技術を評価)
2:百貨店に誰かが来るのを待っている
3:潤達と一緒に居る
4:死にたくない(優勝以外の生き残る方法を見付けたい)
【備考】
※皆殺し編終了直後の転生。鷹野に殺されたという記憶はありません。(詳細はギャルゲ・ロワイアル感想雑談スレ2>>609参照)
※ネリネと鳴海孝之(名前は知らない)をマーダーとして警戒しています。
※探したい人間の優先順位は圭一→赤坂の順番です。
※北川、風子をかなり信用しています。つぐみと純一の事も信用しました。
※電線が張られていない事に気付きました。
※『廃坑』にまだ入り口があるのではないかと考えています。
※禁止エリアは、何かをカモフラージュする為と考えています。
※百貨店のある場所が禁止エリアに指定された場合、拠点をホテル、教会、学校の優先順位で変える。
※盗聴されている事に気付きました
※鷹野を操る黒幕がいると推測しています
※自分達が別々の世界から連れて来られた事に気付きました
※ヒムカミの指輪について
ヒムカミの力が宿った指輪。近距離の敵単体に炎を放てる。
ビジュアルは赤い宝玉の付いた指輪で、宝玉の中では小さな炎が燃えています。
原作では戦闘中三回まで使用可能ですが、ロワ制限で戦闘関係無しに使用回数が3回までとなっています。
※紫和泉子の宇宙服について
紫和泉子が普段から着用している着ぐるみ。
ピンク色をしたテディベアがD.C.の制服を着ているというビジュアル。
水に濡れると故障する危険性が高いです。
イメージコンバータを起動させると周囲の人間には普通の少女(偽装体)のように見えます。
朝倉純一にはイメージコンバータが効かず、熊のままで見えます。
またイメージコンバータは人間以外には効果が無いようなので、土永さんにも熊に見えると思われます。
(うたわれの亜人などの種族が人間では無いキャラクターに関して効果があるかは、後続の書き手さんにお任せします)

宇宙服データ
身長:170cm
体重:不明
3サイズ:110/92/123

偽装体データ
スレンダーで黒髪が美しく長い美人
身長:158cm
体重:不明
3サイズ:79/54/80


【小町つぐみ@Ever17】
【装備:スタングレネード×9、ミニウージー(16/25)】
【所持品:支給品一式 天使の人形@Kanon、バール、工具一式、暗号文が書いてあるメモ】
【状態:若干の疲労】
【思考・行動】
基本:武と合流して元の世界に戻る方法を見つける。
1:純一と共に情報を収集する
(暗号文、廃抗別入り口、禁止エリアでカモフラージュされた何か、電力の供給源、首輪の解除方法、座礁したフェリー)
どれから調べ始めるかは、次の書き手さん任せ。
2:純一と共に武を探す。
3:ゲームに進んで乗らないが、自分と武を襲う者は容赦しない
4:圭一、赤坂を探す(見つければ梨花達の事を教える)
5:稟も一応探す。
【備考】
赤外線視力のためある程度夜目が効きます。紫外線に弱いため日中はさらに身体能力が低下。
参加時期はEver17グランドフィナーレ後。

※音夢とネリネの知り合いに関する情報を知っています。
※純一 とは音夢の死を通じて絆が深まりました。
※音夢と純一の関係について、疑問を持っています(純一には未だ話していません)
※北川、風子、梨花をある程度信用しました。
※投票サイトの順位は信憑性に欠けると判断しました。
※盗聴されている事に気付きました
※雛見沢症候群、鷹野と東京についての話を、梨花から聞きました。
※鷹野を操る黒幕がいると推測しています
※自分達が別々の世界から連れて来られた事に気付きました
※暗号について
 暗号に書かれている3つ集めると主催者達への道がつうじると考えていますが、他の書き手の皆さんが変えてもかまいません。
 正義を持つ虫を食べた魔物=オオアリクイのヌイグルミ@Kanon
 神の使いの羽=天使の人形@Kanonか羽リュック@Kanonと考えていますが他の書き手の皆さんが変えてもかまいません。
 国を裂く事ができる最高の至宝=国崎最高ボタン
 と全体的には考えていますが、他の書き手の皆さんが変えてもかまいません。
※つぐみと武の首輪はキュレイ対策のため、爆薬が他の首輪よりも多く積載されている可能性があります。
 そのため他の首輪と比べて構造に不備が出来ている可能性があります。

※「少年少女殺し合い、優勝者は誰だ!?」について
殺害数ランキング、最新死者一覧などは第二回放送前の時点では未更新。
優勝者予想の最終中間投票だけが更新されています。投票はまだ出来ます。
時間帯としては楓が死亡した直後を想定。
優勝者予想の最終結果が出るのは第三回放送以降です。

※プール内のパソコンについて。
ゴミ箱の中にNO1からNO100のフォルダがあります。
NO17のフォルダにテキスト「大神への道」が入ってます。
他のフォルダに何か入ってるかどうかは他の書き手しだいです。

【朝倉純一@D.C.P.S.】
【装備:釘撃ち機(20/20)、大型レンチ】
【所持品:支給品一式 エルルゥの傷薬@うたわれるもの オオアリクイのヌイグルミ@Kanon】
【状態:後頭部にたんこぶ・強い決意・血が服についている】
【思考・行動】
基本行動方針:人を殺さない 、殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出
1:つぐみと共に情報を収集する
(暗号文、廃抗別入り口、禁止エリアでカモフラージュされた何か、電力の供給源、首輪の解除方法、座礁したフェリー)
どれから調べ始めるかは、次の書き手さん任せ。
2:つぐみと共に武を探す。
3:つぐみを守り通す
4:ことり、圭一、赤坂を探す。
5:さくらをちゃんと埋葬したい。
【備考】
芙蓉楓の知人の情報を入手しています。
純一の参加時期は、音夢シナリオの初キス直後の時期に設定。
※つぐみとは音夢の死を通じて絆が深まりました。
※つぐみとは年が近いと思ってます
※北川、梨花、風子をかなり信用しました。
※ネリネと鳴海孝之(名前は知らない)をマーダーとして警戒しています。
※盗聴されている事に気付きました
※雛見沢症候群、鷹野と東京についての話を、梨花から聞きました。
※鷹野を操る黒幕がいると推測しています
※自分達が別々の世界から連れて来られた事に気付きました
※純一達の車にキーは刺さっていません。燃料は軽油で、現在は約三分の一程消費した状態です。
百貨店の近くに停車してあります。


136:蜃気楼の旅路へ~宣戦布告~ 投下順に読む 137:Hunting Field(前編)
135:青空に羽ばたく鳥の詩 時系列順に読む 136:蜃気楼の旅路へ~宣戦布告~
123:童貞男と幼女の部屋 古手梨花 151:童貞男の疑心暗鬼
123:童貞男と幼女の部屋 北川潤 151:童貞男の疑心暗鬼
123:童貞男と幼女の部屋 伊吹風子 151:童貞男の疑心暗鬼
129:死を超えた少女、それ故の分析 小町つぐみ 142:カニとクラゲと暫定ヘタレの出会い
129:死を超えた少女、それ故の分析 朝倉純一 142:カニとクラゲと暫定ヘタレの出会い







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