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信じる者、信じない者(Ⅱ)◆guAWf4RW62


住宅街の一角で、未だ周囲に立ち込めているドス黒い煙。
焼け焦げた肉より放たれる、酷く吐き気を催す悪臭。
激戦の傷痕が深く刻み込まれた地で、状況説明を受けた前原圭一は苛立たしげに声を洩らす。

「クソッ! 武さん、一体どうしちまったんだよ……っ」

先の死闘で、自分達は堅い信頼関係を活かして咲耶を打倒し、難敵佐藤良美すらも撤退せしめた。
倉成武は窮地に陥っていた自分を救ってくれたのだ。
その武が突如暴走し、事もあろうに手榴弾まで投げつけてきたと云う事実は、圭一に大きな衝撃を与えていた。

(焦るな……クールになれ、前原圭一!)

圭一は奥歯を噛み締め、ともすれば溢れ出しかねない感情の奔流を必死に抑え込む。
否定したかった。
武が仲間に攻撃を仕掛ける筈が無いと、全力で声を張り上げて主張したかった。
だが出会ったばかりの白鐘沙羅はともかく、遠野美凪が嘘を吐くとは考え難い。
それに何より焼け焦げた大地の惨状が、此処で爆発があったという事実を証明している。
今は目の前の現実を認め、的確に対処しなければならない時だ。

「ク……こうしちゃいられねえ! 早く武さんを探しにいこう!」

武を捜し出し、凶行の理由を聞き出す――それが圭一の判断だった。
だが駆け出そうとした圭一の後ろ手を、しっかりと沙羅が掴み取る。

「ちょっとアンタ、落ち着きなさいよ! 何処に行ったのかも分からないのに、無駄に走り回ってもしょうがないでしょ!」
「っ…………」

沙羅の言葉に対し、圭一は何の反論も返せなかった。
事実自分達は武を完全に見失っており、今何処に居るかまるで把握出来ていない。
そんな状況で闇雲に捜し回った所で、悪戯に体力を浪費するだけなのは明白だった。
圭一は今度こそ頭を冷やし、一つの結論を弾き出す。

「なら最初の予定通り神社に向かおう。俺達は、殺し合いに乗った土見禀を止めなくちゃいけない」
「倉成さんはどうするんですか?」
「……行き先が分からない以上、今は探しても仕方無い。神社で合流出来る可能性に賭けよう」
「……分かりました」

不安の種は尽きぬものの、まず神社に向かうという方針で一致する美凪と圭一。
だがそこでまたも沙羅が制止の声を上げる。

「それは危険なんじゃないの? 武は、圭一達が神社に向かおうとしていたのを知っている……。
 もし武が殺し合いに乗ってるなら、待ち伏せされる可能性があるわ」
「な――! 武さんがそんな事する訳……」
「――無いとは言い切れない、でしょ? 私と美凪は実際に攻撃されたんだから」

仮にも探偵助手、予測可能な不安要素は決して見逃さない。
圭一の言葉を途中で遮り、己の心に沸き上がった疑心を吐き出す沙羅。
自分は何もしていないにも関わらず、問答無用に手榴弾で攻撃されたのだ。
運良く無傷で済んだものの、一歩間違えれば殺されてしまっていたかも知れない。
そのような蛮行に及んだ武など、信用出来る筈も無い。
同じ目に遭った美凪もまた、沙羅の言葉を否定出来ないまま俯いている。
だがそんな二人の疑心を吹き飛ばす程の勢いで、圭一は心の奥底から思い切り叫んだ。

「違う――――そんな風に考えちゃ駄目だ!! 武さんは殺し合いに乗ったりしない!!!」

圭一の心より溢れ出る怒号が、周囲一帯の空気を振動させる。
その凄まじい剣幕、凄まじい語気を目の当たりにし、思わず沙羅は息を呑んだ。

「いきなり攻撃された沙羅が、武さんを疑いたくなるのも無理は無いさ。でも……それでも!
 皆で力を合わせなきゃ、この殺し合いは止められない! 信じるのは難しいけど、信じなきゃ始まらないんだッ!!」

それはループ世界での経験による恩恵か、もしくは彼自身が元より持ち合わせていた資質なのか。
美凪ですら疑心を捨て切れぬ今も尚、圭一は武を――仲間を信じようとしていた。
そして圭一の言葉は子供のような主張にも聞こえるが、道理が通っている部分もある。
実際問題この殺人遊戯を覆すには、出来るだけ多くの戦力が必要となるだろう。
その為には、己の内に巣食う猜疑心を捨て去らなければならないのだ。
迸る想いを真正面より向けられた沙羅は、呆れたかのような溜息を洩らす。

「はあ……分かったわよ。しょうがないから、アンタのやり方に付き合ってあげる」

未だ武への疑惑が晴れた訳では無いが、今の圭一を説得するのは不可能だろう。
それに何より――何処までも純粋な圭一の想いが、自分もまた人を信じてみようという気にさせる。
親しい人間を殺し尽くされてしまった自分にすら、そう思わせる。

「そうと決まったら、こんな所でグズグズしてても仕方無いよね。急いで神社に行こう」
「……サンキュー、沙羅」
「お礼なんて要らないわ。ほうもう、早く車に乗って!」

ぶっきらぼうな言葉を返す沙羅だったが、その表情は心無しか柔らかくなっている。
それは沙羅が、圭一を仲間として認めた証なのかも知れない。
沙羅達は手早く荷物を纏め、出立の準備を整えた。
まず最初に沙羅が運転席へと乗り込み、遅れて美凪と圭一が車の後部へと移動する。

「救急車なんて運転した事無いけど……何とかやってみる。圭一と美凪は後ろで休んでていいわよ」
「おう、悪いな」
「……ご苦労様で賞、進呈します」

特殊車両の操縦経験がある者など居ないのだから、誰が運転しても大差無いだろう。
故に運転は五体満足である沙羅が請け負い、疲労の色が濃い圭一達は後部座席で休憩するという形になった。
沙羅が慎重にアクセルペダルを踏み込むと、救急車はゆっくりと動き出した。

「ふう……ちょっと疲れたな……」

戦場を離れた事でやっと緊張が解けたのか、圭一は珍しく弱音を零す。
それも仕方の無い事だろう。
思えば第一回放送以降、緊張と戦いの連続だった。
佐藤良美と二度に渡る激闘を行い、病院では土見稟の襲撃を受けた。
その全てを仲間達とのチームワークで乗り切ったものの、流石に無傷という訳にはいかなかった。
ナイフで刺され銃弾で貫かれた左肩は酷く痛み、全身の至る所には細かい傷が刻み込まれている。
限界寸前まで酷使された圭一の身体は、満身創痍と表現するに相応しい状態なのだ。

圭一が憔悴し切った表情を浮かべていると、すぐ横から優しい声が聞こえてきた。

「……大丈夫ですか、前原さん? お疲れのようでしたら、もう少し眠りますか?」
「――遠野さん」

振り向いた圭一の目に飛び込んできたのは、気遣うような視線を送ってくる美凪の姿。
だが良く注視すれば美凪もまた、疲弊の色を隠し切れぬ様子となっている。
それは何故か――考えるまでも無く、先の戦いで名雪との激闘を繰り広げた所為だろう。
美凪は、圭一の周りには居なかったタイプの女の子。
底無しに優しい、お世辞にも戦いに向いているとは言えぬ女の子なのに、それでも懸命に戦ってくれた。

(こりゃヘコたれてる場合じゃないな……。こんなトコをレナや魅音に見られたら、絶対怒られちまう)

そうだ――こんな時こそ男である自分が、周囲を元気付けてやらねばならないのだ。
圭一は己の心を強引に奮い立たせ、にこりと笑ってみせた。
そのままおもむろに手を伸ばし、美凪の艶やかな髪を無造作に撫で回す。

「平気平気。遠野さん、いつも心配してくれて有り難うな」
「え、あの……っ!?」

予期せぬ圭一の行動を受け、美凪は見る見るうちに頬を紅潮させてゆく。
圭一はその事に気付かぬまま、続けざまに口を開く。

「俺、この島に来てから何度も遠野さんに助けられた。レナや詩音が死んだ時も、遠野さんのお陰で立ち直る事が出来たんだ。
 改まって言うのも何だけど、本当に感謝してる」
「……前原さん」

嘘偽りの一切無い純真な言葉が、疲弊した美凪の心を癒してゆく。
髪の毛越しに伝わる圭一の体温が、美凪の心を暖めてゆく。
美凪は圭一の手を優しく握り締めて、言葉一つ一つの意味を噛み締めるように、ゆっくりと想いを伝える。

「……私だって何度も前原さんに助けられました。
 突然殺し合いを強要されて……それでも前原さんが居てくれたから、これまで生きてこれました。
 だから、感謝してるのは私も一緒です」

殺人遊戯の開始以来、ずっと行動を共にし続けてきた二人。
その道中で二人はお互いに支え合い、庇い合い、信頼を深めていった。
今や圭一も美凪も互いに対して、仲間と云う枠組みを超越した感情を抱きつつある。

「…………」
「…………」

二人は顔を赤らめたまま、それでも笑顔を浮かべて見つめ合う。
互いの手を取り合い、様々な想いが籠められた視線を交錯させる。
それは傍目から見ればきっと、仲睦まじい恋人同士のように映るだろう。

だが――そこで圭一はある事を思い出し、運転席の方へと身体を動かした。
疑問の表情を浮かべる美凪を余所に、圭一はゆっくりと右手を伸ばし、運転中の沙羅の頭を撫で回す。

「沙羅も有り難うな。出会ったばかりなのに、もう何回か助けられちまった」
「ちょちょちょ、ちょっと圭一!? うう、運転中にそんな事したら危ないよ!」
「あ……そうだな。悪い悪い、運転に集中してくれ」

感謝の気持ちを伝えるのは大切な事だが、それが原因で事故を引き起こしてしまっては元も子もない。
運転の邪魔をするのは不味いと判断し、圭一はすぐに手を引き戻した。
再び視線を後方に向けると、そこでは何故か美凪が不機嫌そうな顔をしていた。


土見稟を止める為に、武との再会を果たす為に、神社へと向かう圭一達。
だが圭一達は知らない――武は未だ住宅街で気絶しているという事実を。


 ◇  ◇  ◇


多くの命が散った惨劇の地に、今尚留まり続ける一つの影。
血染めの巫女装束を纏った少女――佐藤良美は足音を押し殺し、住宅街を慎重に進んでいた。
民家の塀を存分に利用し、身を隠しながら目標地点に近付いてゆく。
良美の耳に爆発音が届いたのは、約二十分程前の出来事だった。
聞こえてきた方角、場所は、先程圭一達と一戦交えた地点の辺りだ。

(圭一君達どうしちゃったのかな? 誰か新しい襲撃者が現れたのかな?
 それとも――仲間割れしちゃったのかな?)

可能性は幾つか考えられるが、いずれにせよ爆発音が圭一達に関係しているのは確実。
これは自分にとって、またとない絶好のチャンス。
人数の面では圧倒的に不利だが、今の圭一達はこれ以上無い程に消耗し切っている筈。
そこを漁夫の利の形で急襲すれば、労せずして殲滅する事が出来るだろう。

(待っててね、圭一君。まだ死んじゃ駄目だよ……貴方は私が殺すんだから)

間もなく訪れるであろう再戦の時に思いを馳せ、良美は凄惨に口元を吊り上げる。
全てを失った良美にとって、未だ仲間と行動を共にする圭一は許し難い存在だった。
自分はもう二度と幸せになれぬと云うのに、何故圭一だけが次々と仲間を得ているのだ。
的確に動いてきた筈の自分だけが不幸になるなど、絶対に認めない。
ただのお人好しに過ぎぬ圭一が幸福になるなど、絶対に許さない。
どのように絶望させてやろうかと、どのように殺してやろうかと、そんな事ばかりが頭に浮かんでくる。
だがそんな良美の思考は、突如視界に入った男の姿によって中断される。

「この人は確か……武さん、かな?」

良美の前方10メートル程の路上に、圭一と行動を共にしていた男――倉成武が倒れていた。
見れば武は身体の至る所に傷を負っているが、生きてはいるようである。
恐らくは先の爆発音がした時に戦闘となり、必死に逃げてきたのだろう。
この男も圭一の仲間である筈だから、優先殺害対象だ。
手早く排除して、本命である圭一を殺しにいかなければならない。
そう判断した良美は鞄の中から地獄蝶々を取り出して、その切っ先を武の首に押し当てた。
そのまま武の首を貫こうとして――刹那のタイミングで、最高の名案を思い付いた。
……思い付いてしまった。

「うん、そうだよね。このまま殺しちゃうなんて勿体無いよね」

自身が考え出した案に満足した良美は、嬉々とした様子で周囲の状況を確認し始めた。
付近を歩き回ってみたが、自分と武以外の人影は見受けられない。
耳を澄ましてみても何も聞こえて来ないのだから、この近辺で戦闘が行われているという事は無い筈。
恐らくはもう皆移動して、何処か別の場所に戦場を移したのだろう。
ならば無理に遠くまで移動する事もあるまい。

「うーんと……、やっぱり拘束する為の道具が欲しいかな」

幸い此処は住宅街、一般人が持ち得る範囲の道具ならばすぐ手に入る。
良美は近くにあった民家の小屋に侵入し、程無くしてロープを発見した。
それを用いて、武の両腕両足をしっかりと拘束する。
作業中に意識を取り戻してしまうのでは無いかと云う危惧もあったが、それは杞憂に終わった。
かくして全ての準備を済ませた良美は、おもむろに足を振り上げて――武の顔面を思い切り蹴り飛ばした。


 ◇  ◇  ◇


「……うがあああああッッ!?」

顔面を強打された武が、悲痛な呻き声を洩らしながら跳ね起きようとする。
だが両手両足を拘束されている所為で、起き上がる事は叶わず、ただ地面を転げ回るに留まった。
激痛に悶える武の視界に入ったのは、少し前に戦ったばかりの良美の姿だった。

「ぐっ……お前は、佐藤良美……!」
「――お早う武さん。駄目だよぉ、こんな路上で寝てちゃ」

のた打ち回る武を見下ろしながら、心底愉しげに微笑む良美。
慌てて武は臨戦態勢を取ろうとするが、縛られてしまっている以上それは不可能だ。
キュレイウイルスの恩恵で、常人より多少優れた膂力を持っているとは云え、力任せにロープを引き千切れる程では無い。
精々、倒れたままの態勢で相手を睨み付けるのが精一杯だった。

「畜生、こんな事になるなんてっ! 俺をどうする気だ……このまま嬲り殺すつもりか!?」

自分が気絶するまでの経緯は、朧げではあるが覚えている。
自分は一時の激情に身を任せて暴走し、圭一達の下を離れてしまった。
そして酷く消耗した状態での全力疾走が長続きする筈も無く、すぐに意識を失ってしまったという訳である。
恐らくはそこを良美に発見され、無防備のままに縛り上げられてしまったのだろう。
孤立無援、身動きが取れぬ状態での、殺人鬼との対峙。
掛け値無し、正真正銘の絶体絶命的状況だ。
しかし取り乱す武を余所に、良美は冷静な口調で話を進めてゆく。

「落ち着いてよ武さん。私のお願いさえ聞いてくれれば、別に何もしないよ?」
「お願い……? それはどういう事だ……?」

良美の意図を図りかねて、訝しげな表情となる武。
良美にとって自分は邪魔者でしか無い筈なのに、何故すぐ殺そうとしないのか理解出来なかった。
だがそんな武の疑問は、次の良美の言葉で一瞬にして吹き飛ばされる事となる。

「前口上なんて意味が無いし、単刀直入に言うね。武さん――――私の下僕として働いてくれないかな?」
「下僕……だと?」
「そう。私の命令通りに人を騙し、裏切り、殺し続ける操り人形になって?
 勿論、ずっととは言わない。圭一君を殺すまでで良いよ」

武を眷族として従え、圭一やその他の邪魔者達を排除する――それが良美の目的だった。
そちらの方が、武一人を殺すよりも遥かに有益だ。
優勝を目指す上でも、圭一を苦しませて殺すといった意味でも、これ以上無いくらい最高の一手だ。
しかし当然武も素直に頷いたりはしない。

「ふん、馬鹿らしい。そんな条件、俺が呑むとでも思ってるのか?」
「まさか断る気? それなら此処で殺しちゃうよ?」
「……殺したきゃ殺せよッ! 俺はお前みたいな奴の悪事に加担する程、落ちぶれちゃいねえんだ!」

雛見沢症候群の影響もあり、冷静な判断力を欠いている武だったが、それでも我が身惜しさで屈服したりはしない。
たとえどれだけ痛めつけられようとも、道を曲げるつもりなど毛頭無かった。
だがこの武の反応は、良美の予想通り。
圭一と組むような偽善者の懐柔が容易で無いのは、火を見るより明らかだ。
故に良美は、間髪置かず本命の策を発動させる。
頑強な意思を秘めた人間さえも陥落させ得る、悪魔の策を。

「ふーんそっか、断っちゃうんだあ……。一つ確認するけど、貴方は武さんだよね?」
「ああ、そうだよ! 俺は倉成武、こう見えたって人並み程度の正義感はあるつもりだ! 絶対お前なんかに屈したりしねえ!」

良美の機嫌一つで殺されかねない状況だというのに、気丈に啖呵を切る武。
そして――良美の口より放たれる、武にとって最悪の言葉。


「そんな事言って良いのかな? もうちょっと慎重に発言しないと、貴方の大切な人まで死んじゃうよ?」

紡がれた言葉が鼓膜を震わせ、情報として脳に伝達される。
良美が言わんとする事を正しく把握するや否や、武は掠れた声を絞り出した。

「――――な……ん……だと……?」

大切な人とは誰か――そんなの決まっている。
自分にとって大切な人間は、何を差し置いてでも守るべき者は、小町つぐみ以外に存在しない。
良美は、そのつぐみの身に何らかの異変が起きたと示唆しているのだ。
武はカッと目を見開くと、あらん限りの声で絶叫した。

「お前、それはどういう事だッ!!! つぐみに……つぐみに何かしやがったのか!?」
「……だいぶ前に会った時、今の貴方と同じように拘束させて貰ったよ。
 凄い分かり辛い場所に隠してきたから、誰かに発見されて殺されるって事は無い思う。でもね――」

言葉を途中で止めて、良美は鞄の中から島の地図を取り出した。
もう禁止エリアに指定された場所を指差しながら、何処までも愉しげに告げる。

「この殺し合いには『禁止エリア』っていうのがあるよねえ? 
 拘束された状態で自分の居る場所が禁止エリアになったら、どうなるかな?」
「――――――――!!」

そこまで聞いた武は、全身から血の気が引いていく感覚を覚えた。
実際に試した訳では無いが、主催者が嘘をついていない限り、禁止エリアに入れば首輪は爆発してしまう筈。
このまま放って置けば、いずれつぐみは禁止エリアにより殺されてしまうかも知れないのだ。

「『つぐみ』さんを助ける方法はたった一つ……ここから先は、わざわざ言わなくても分かるよね?
 もう一度言うよ――私の下僕になって。私の命令通りに動いて邪魔な連中を、圭一君を殺してよ」
「けど……お前が本当の事を言ってるとは限らない――あのつぐみがそう簡単に捕まるとは思えない」
「なら試してみる? 別に私はこの場で貴方を殺して、そのままつぐみさんを殺しに行っても構わないんだよ?」
「ぐっ…………!」

余裕の表情で見下ろされ、武は忌々しげに奥歯を噛み締める。
勿論良美が虚言を吐いているという事も考えられるが、真実である可能性もまた否定出来ない。
もし真実であった場合、この広大な島の中、巧妙に隠された人間を見つけるのはまず不可能。
そしてつぐみの居場所を知る人物は、今の所良美だけだ。
即ち良美の助力を得ない限り、つぐみは救えないという事になる。
此処で良美に従わなければ、自分は確実に殺されるだろうし、つぐみも死んでしまうかも知れない。
それでも――それでも、武は懸命に抗おうとする。

「それでも圭一を殺すなんて……そんなの出来る訳ねえだろ! 知らない奴を殺すのはまだ良いさ……。
 だけど圭一は一緒に行動した仲間なんだ、裏切れねえよ!」
「へえ……」

正義感という名の城壁は、つぐみの命を握られてしまった所為で粉々に打ち砕かれた。
最後に武を支えるのは、これまで圭一と培ってきた信頼関係。
仲間として行動する事により育まれた、掛け替えの無い大切な友情だ。
だが良美は――少女の皮を被った悪魔は、それすらも易々と破壊してのける。

「本当に立派な心掛けだね。でも報われないと思うよ? 何しろ、圭一君は武さんを見捨てたんだから」
「何……? 圭一が俺を見捨てただと?」
「だってそうじゃない。何で武さんは、こんな所で眠ったまま放ったらかしにされていたの?
 何で圭一君は、何時まで経っても助けに来ないの?」
「それ……は……」

武はどうにかして反論しようとしたが、適切な言葉が何も思い浮かばなかった。
良美の言う通り、誰も助けに来ないのはおかしいのだ。
確かに自分は信じられないような蛮行をしでかしてしまったし、美凪と沙羅に見限られるのは分かる。
しかし圭一には攻撃を仕掛けていないし、先刻の戦いでは命を救いもしてやった。
それならば当然圭一は、命の恩人である自分を信じようとしてくれる筈だ。
にも関わらずその圭一すらも助けに来ないのは、一体どういう事か。

「ま……まさか……圭一は……」

思い起こされるは、救急車のミラー越しに垣間見た圭一の表情。
悪鬼の如き笑みを湛えた顔。
そうだ――そうだったのだ。
あの時から感じていた圭一に対する僅かな不信感は、決して気のせいなどでは無かった。
あの時から既に、本当の意味では信用などされていなかった。
自分はこれまでずっと、騙され続けていたのだ。
圭一にとって自分は、生き延びる為の駒でしか無かったのだ。

「ふ、はははははは……そうか……そうだったのかっ…………。圭一は……ずっと俺を騙してたのか……!
 善人面して、莫迦なお人好しを利用し続けてきたって訳か……っ!!」

そこまで気付いてしまえば、怒りよりも寧ろ笑いがこみ上げて来た。
年下の子供にアッサリと騙され、良いように利用された自分自身が、滑稽で仕方無かった。
傷の痛みも気にならなくなる程に、目に映る物全てを破壊し尽くしたくなる程に、可笑しかった。
最早良美の提案を拒む理由など、何処にも存在しない。
所詮こんな島で作り上げられた信頼関係など、偽物に過ぎなかったのだ。
見せ掛けだけで実の伴わぬ、薄っぺらいハリボテのようなものだ。
それは相手が宮小路瑞穂であろうが、涼宮茜であろうが、春原陽平であろうが変わらない。
共に死地を潜り抜けた圭一ですら裏切ったのだから、もう他人など信用出来る筈も無い。
どれだけ努力して信頼を得ようとしても、最後には裏切られてしまうだけなのだ。
信じられるのは自分自身と、愛しいつぐみのみ。
つぐみと共に生き延びる為ならば、誰だって殺してやろう。
一頻り笑い終えた武は、もう何の躊躇も無く、それこそ雑草を踏むくらいの気軽さで言い放つ。

「分かったよ、良美……お前の提案に乗ってやるよ。俺は絶対に圭一を殺す。
 他の連中も全員殺して、つぐみと一緒に生き延びてやるっ……!」

とうとう放たれた服従の言葉に、良美は満面の笑みを以って応える。

「――うん、期待しているよ武さん」

良美は思う――予想以上に上手くいったと。
言うまでも無く良美はつぐみを拘束などしていないし、そもそも出会ってすらいない。
ただ適当な出鱈目を並べただけに過ぎぬ。
良美が行った作戦は、そう複雑なものでは無い。
あたかも相手の想い人の命を握っているかのように振る舞い、上手く行けばそのまま従属させる。
何らかの理由により目論見が失敗したならば、その場で撃ち殺してしまえば良いだけの事。
つまり良美はリスクの無い賭けを行い、そして勝利を掴み取ったのだ。



雛見沢症候群と良美の策略により、決して後戻りの出来ぬ道を選んでしまった武。
武は知らない――圭一は未だに自分を信じてくれているという事実を。



【F-4左 住宅街/1日目 午後】
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に祭】
【状態:精神安定、右拳軽傷、体全体に軽度の打撲と無数の切り傷、左肩刺し傷(左腕を動かすと、大きな痛みを伴う)】
【装備:悟史のバット@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式×2、折れた柳也の刀@AIR(柄と刃の部分に別れてます)、キックボード(折り畳み式)、手榴弾(残1発)】
【思考・行動】
基本方針:仲間を集めてロワからの脱出、殺し合いには乗らない、人を信じる
1:まずは神社に向かう。
2:美凪を守る。
3:土見稟の凶行を止める。
4:倉成武との再会を果たす
5:知り合いとの合流、または合流手段の模索
6:良美を警戒
7:あゆについては態度保留、但し大石を殺したことを許す気は今のところない。
8:土見稟を警戒
9:ハクオロを警戒
【備考】
※倉成武を完全に信用しています。
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました
※救急車(鍵付き)のガソリンはレギュラーです。現在の燃料は残り1/2くらいです。
※沙羅の事は信用しています


【遠野美凪@AIR】
【状態:軽度の疲労】
【装備:包丁】
【所持品:支給品一式×2、救急箱、人形(詳細不明)、服(詳細不明)、顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)】
基本方針:圭一についていく
1:まずは神社に向かう
2:知り合いと合流する
3:佐藤良美を警戒
4:土見稟を警戒
※倉成武を信用するかどうかは保留。
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました
※あゆのことは基本的には信用しています
※沙羅と情報交換しました。
※沙羅の事は信用しています


【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
【装備:永遠神剣第六位冥加@永遠のアセリア -この大地の果てで- ワルサー P99 (16/16)】
【所持品:支給品一式 フロッピーディスク二枚(中身は下記) ワルサー P99 の予備マガジン8 カンパン30個入り(10/10) 500mlペットボトル4本】
【状態:軽度の疲労・強い決意・若干の血の汚れ】
【思考・行動】
基本行動方針:一人でも多くの人間が助かるように行動する
1:まずは神社に移動する。
2:情報端末を探す。
3:首輪を解除できそうな人にフロッピーを渡す
4:前原にタカノの素性を聞く。
5:混乱している人やパニックの人を見つけ次第保護。
6:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす。
【備考】
※FDの中身は様々な情報です。ただし、真偽は定かではありません。
下記の情報以外にも後続の書き手さんが追加してもOKです。
『皆さんに支給された重火器類の中には実は撃つと暴発しちゃうものがあります♪特に銃弾・マガジンなどが大量に支給された子は要注意だぞ☆』
『廃坑の入り口は実は地図に乗ってる所以外にもあったりなかったり(ぉ』
『海の家の屋台って微妙なもの多いよね~』
『H173を打たれても早めにC120を打てば症状は緩和されます(笑)』
少なくともこの4文はあります。
H173に基本的な情報や症状についての情報が載っています
場合によってはさらに詳しい情報が書いてある可能性もあります
※“最後に.txt .exe ”を実行するとその付近のPC全てが爆発します。
※↑に首輪の技術が使われている可能性があります。ただしこれは沙羅の推測です。
※双葉恋太郎の銃“S&W M60 チーフスペシャル(5/5)”は暴発しました。
※港には中型クルーザーが停船していますが、エンジンは動きません。
※パソコンに情報端末をつなげるとエンジンが動くというのはあくまでも沙羅の推測です。
※図書館のパソコンにある動画ファイルは不定期配信されます。現在、『開催!!.avi』のみ存在します。
※図書館についてある程度把握しました。
※隠しフォルダの存在を知りました。実際にパソコン内にあるかどうかは書き手さんにおまかせ。
※武たちと情報交換しました。
※圭一と美凪を信用しました。武については保留。


【F-4 住宅街/1日目 午後】
【倉成武@Ever17】
【装備:投げナイフ2本、永遠神剣第四位「求め」@永遠のアセリア】
【所持品:支給品一式 ジッポライター、貴子のリボン@乙女はお姉さまに恋してる、富竹のカメラ&フィルム4本@ひぐらしのなく頃に】
【状態:L5侵蝕中。中度の疲労。極度の疑心暗鬼。頭蓋骨に皹(内出血の恐れあり)。頬と口内裂傷。頚部に痒み。 脇腹と肩に銃傷。刀傷が無数。服に返り血)】
【思考・行動】
基本方針:つぐみ以外誰も信用する気はありませんが、人質を取られている可能性がある為、良美の指示には従う。
1:圭一を殺害する
2:良美の指示に従い、他の参加者達を殺害する
3:圭一の殺害後、つぐみを救い出す
【備考】
※キュレイウィルスにより、L5の侵蝕が遅れています、現在はL3相当の状態で若干症状が進行しています。
※前原圭一、遠野美凪の知り合いの情報を得ました。
※富竹のカメラは普通のカメラです(以外と上物)フラッシュは上手く使えば目潰しになるかも
※永遠神剣第四位「求め」について
「求め」の本来の主は高嶺悠人、魔力持ちなら以下のスキルを使用可能、制限により持ち主を支配することは不可能。
ヘビーアタック:神剣によって上昇した能力での攻撃。
オーラフォトンバリア:マナによる強固なバリア、制限により銃弾を半減程度)
※沙羅と情報交換しました。
※キュレイにより少しづつですが傷の治療が行われています。
※つぐみが捕まっているという話を、完全に信じた訳ではありません。

【佐藤良美@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M627PCカスタム(8/8)、地獄蝶々@つよきす、破邪の巫女さんセット(巫女服のみ)、ハンドアックス(長さは40cmほど)】
【所持品:支給品一式×3、S&W M36(0/5)、錐、食料・水x4、可憐のロケット@Sister Princess、タロットカード@Sister Princess、
大石のデイパック、  S&W M627PCカスタムの予備弾53、肉まん×5@Kanon、虎玉@shuffle、ナポリタンの帽子@永遠のアセリア、
日本酒x1(アルコール度数は46)、工事用ダイナマイトx1、発火装置、首輪(厳島貴子)】 】
【状態:軽度の疲労、手首に軽い痛み、左肩に銃創(出血は収まりつつある)、重度の疑心暗鬼、巫女服の肩の辺りに赤い染み】
【思考・行動】
基本方針:あらゆる手段を用いて、優勝する。
1:武を利用し尽くして、優勝を目指す
2:いつか圭一と美凪を自分の手で殺してやりたい
【備考】
※メイド服はエンジェルモートは想定。現在は【F-4】に放置されています。
※ハクオロを危険人物と認識。(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※ネリネを危険人物と判断しました(名前のみ)
※大空寺あゆ、ことみ、亜沙のいずれも信用していません。
※未成年が日本酒を飲んではいけません。
※大石の鞄に、未確認支給品が1~2個入っています。


122:コンパスを失い道に迷った人間は、こんなにも愚かになるの 投下順に読む 125:魔法少女の探索。
126:私の救世主さま(後編) 時系列順に読む 125:魔法少女の探索。
120:サプライズド・T・アタック(後編) 佐藤良美 141:約束の場所へ
120:サプライズド・T・アタック(後編) 倉成武 141:約束の場所へ
120:サプライズド・T・アタック(後編) 白鐘沙羅 141:約束の場所へ
120:サプライズド・T・アタック(後編) 前原圭一 141:約束の場所へ
120:サプライズド・T・アタック(後編) 遠野美凪 141:約束の場所へ






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