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Lunatic snow ◆VtbIiCrJOs


 ――雪、積もってるよ


 ――そりゃ、ニ時間も待ってるからな


 七年ぶりに再会したいとこの男の子はもうここにはいない。
 遠い、遠い所へ行ってしまった。

 わたしは歩く。 
 何も考えることが出来ないまま。

 わたしは抜け殻になっている。

 祐一のいない世界にもはや意味なんかない。
 だから壊すの、全て憎いから。
 わたしからすべてをうばったあの娘。
 わたしと祐一をひていしたこの世界がにくい。

 くらい倉庫に眠っているそれはとてもおおきくて、とてもたよりになる存在だった。
 この世界を壊す大いなるちから。
 これさえあればみんな壊すことができる。
 大石さんと乙女さんを殺してもなお、のうのうと生き続けるあゆちゃんを壊してやる。
 祐一がいなくなった世界でのうのうと生き続けるみんなを壊してやる。


 わたしはショベルカーにお気に入りのぬいぐるみと同じなまえをあたえてあげた。
 これからいっしょにこの世界を壊すパートナーだもの、飛びっきり良い名前をつけてあげないとね。
 わたしはけろぴーにエンジンキーを挿し込む。
 動かし方は頭に叩き込んだ。
 あとはけろぴーを目覚めさせるだけ。
「行くよ、けろぴー」
 キーを回すとうなり声をあげてけろぴーが産声をあげた。
 生まれたことを後悔する呪いの産声、
 でも、大丈夫、わたしがついている、心配しなくていいよ。
「まずはここからでないと……ね」
 この程度の壁なら簡単に崩せるはず。
「さあ、あなたの力を見せてけろぴー!」
 けろぴーは壁に向けてその鋼鉄の爪を振るう。
 轟音と共に砕け散る倉庫の壁、壁のはへんが、ガラスの破片が舞い上がる。
 わたしはその光景を恍惚の表情でみつめていた。
「あはっ……あははははは」
 これならいける……いけるよ!
 わたしがいちばんけろぴーを上手く使えるんだ!

「あは、あっははっははははははは! これで! みんな! 殺してやるうううううっぅぅぅぅぅぅ!」

 わたしはいつまでもおかあさんや祐一に守られているばかりじゃない。
 みんなしんでしまえ。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 外に出たわたしに目に入る景色、
 まぶしい太陽のひかり。
 澄みきったあおいそら。
 ほのかに香る草のにおい。
 倉庫にはいるまえとなんの変わりがないはずなのに、
 わたしのめに写るせかいは一変していた。
 やさしい風が、祝福の風がわたしのながい髪をゆらす。
 生まれ変わったわたしとけろぴーを世界が祝福している。

 そうだよね、みんなつらいんだよね。
 この世界でいきることがつらいから――
 まちがったこの世界がゆるせないから――
 まちがったせかいに生まれてしまった自分がゆるせないから――
 だからこのせかいをこわすちからを持ったわたしの再誕をまち望んでいたんだよね。

 この世界の祐一はいなくなってしまったけど、大丈夫、また会えるよ。
 ひとりを殺したらつぎは二人、ふたりを殺したら次は四人。
 このせかいに存在するすべてのものを滅ぼしつくしたはてに訪れる黄金郷で。
 そこではお母さんがいて、祐一がいて、真琴がいて、
 朝寝坊しそうになるわたしを祐一が起こしに来てくれる。
 そして家族でなかよく朝ごはん。
 時計を見たらけっこう時間がぎりぎりになってしまい、走って学校へ。
 わたしは陸上部の部長さんだからこれくらいのダッシュは余裕だけど、祐一はへとへとになって教室にすべりこむの。
 その光景をみた香里が「相変わらずね二人とも」と笑ってる。
 そんなありふれた、だけど幸せな毎日が続いてる世界。
 昨日までそこにあったしあわせなせかい。


 ぽたっ……ぽたっ……
 わたしの頬を伝う水のしずく。
 おかしいな……どうして泣いているのかなわたし。
 悲しくなんかないのに、全てが終わればそこにいけるのに。
 はらりと包帯がほどけ、膝の上におちる。
 ぽたりと赤い涙が膝に染みをつくる。
 右眼に打ち込まれた楔が疼く。

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い痛い憎い憎い憎い
 憎い憎い痛い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
 痛い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い痛い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い痛い憎い憎い憎い憎い憎い憎い痛い憎い

 あいつが……っ、あいつがッ!
 こんなモノを突き刺して。
 いたいよぉ……すごくいたいよぉ……
 あはっあははははははははははははははは。
 たかが右眼が潰れただけじゃないか!
 人間の眼はふたつあるんだよ?
 片方だけ潰しても意味がないんだよ?
 そんなコトもわかんないのかなあ、あゆちゃんは。
 鬱陶しい……こんなものがいつまでもわたしの目の中に存在しているのがッ!
 こんな汚らわしいものは排除しないといけない。
 なあに、もう奥にメスが突き刺さっているんだよ?
 いまさら指の一本や二本突っ込んだところでなんてことはないよ。

「……っぎぃ!」

 止まりかけていた血がぶしゅっと噴き出す。
 一センチ……二センチ……
 痛い痛い痛い。
 脳あっ激痛であっあっショーあっあっあっあっト。
 三センチ……あった! あったよ! あっははははははははははは!
「ぃぃぃぃぃぎぎぎぎぃぃいいぃぃぃ」
 あっあっあっつかんだあっメスあっなかなあっあっ抜け抜け抜けない。
 ぎぎぎぎぎぎぎ、血が血が血があふれぃぃぎぎぃぃぃ。
 抜け抜けろ抜けろ。うあっうあっ祐一祐一祐一祐一たすけてたすけてたすけて。
 だめだよ祐一に頼っちゃああああああああああ。

 ずる……

 やあっ……動いた外れたぎぎぃぃぃぃぎぎぎぎいっひぁぁぁぁ。
 ごぽっごぽっ……
 やったもうすこしだよほらあとニセンチぇぇぇあぎぎぎぃぃぃぃぃ。
 おかあさんおかあさん見て見ぎぎぎ。
 ぶしゅぅ……
 いひぁぁぁぁぁああ抜けた! 抜けたよ!
「あっははははははははッわたしは抜いたよ! あんな奥に突き刺さっていたのに抜けたよっ! どうだどうだどうだ!
くやしい!? くやしい!? せっかく突き刺したのに簡単に抜かれちゃったよ! これがわたしのちからだよ!」
 血とぐちゃぐちゃになった右眼がこびりついたメスを片手ににぎりしめて、
 穴の開いた右の目からはごぽごぽと赤い涙があふれてきて、
 わたしは歓喜の雄叫びを上げた。
 痛かったよ、すごく痛かったんだからね……
 危なかったんだよ……もう少しメスが深く入っていたらわたし、死んじゃってたんだよ。
 だからこのメスはあゆちゃんに返してあげないといけないよね、わたしよりも深いところに突き刺してあげないとね。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 いやなものを引きずり出せたわたしはしあわせ。
 だれのたすけもなく汚いものはわたしの中から出ていった。
 ねえ、おかあさんおかあさん、見てた? わたしはひとりでできたよ。
 祐一もみてた? わたしはひとりでできたよ。
 包帯もきちんとひとりで巻けたよ、すごいでしょ。
 わかってるよ、お母さんも祐一もここにはいないのはわかってるよ。
 でも……でもね、けろぴーはここにいるから、心配しないで。
 けろぴーがわたしを見守ってくれているから、わたしはがんばれる。

 けろぴーの背中にゆられてわたしは歩く。
 けろぴーの大きなからだは小さな木々をなぎ倒してすすむ。
 そういえばわたしはどこへいくつもりだったんだろう。
 ……神社だったかな?
 でも、どうして神社に行こうとしてたんだろう?
 まあいいや、どこに行っても最後は同じところにいくんだから。
 わたし、がんばるよ。
 ふぁいと、だよ。





【E-6 森/1日目 夕方】

【水瀬名雪@kanon.】
【装備:槍 手術用メス 学校指定制服(若干の汚れと血の雫)けろぴーに搭乗(パワーショベルカー、運転席のガラスは全て防弾仕様)】
【所持品:支給品一式 破邪の巫女さんセット(弓矢のみ(10/10本))@D.C.P.S.、乙女と大石のメモ、乙女のデイパック】
【状態:疲労大。出血。右目破裂(頭に包帯を巻いています)。頭蓋骨にひび。発狂。】
【思考・行動】
1:全参加者の殺害
2:月宮あゆをこれ以上ないくらい惨いやり方で殺す
【備考】
※名雪が持っている槍は、何の変哲もないただの槍で、振り回すのは困難です(長さは約二メートル)
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※古手梨花・赤坂衛の情報を得ました(名前のみ)
※ハクオロという人物を警戒(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※乙女と大石のメモは目を通していません。
※自分以外の全ての人間を殺し合いに乗った人物だと思っています。


139:瓶詰妖精 投下順に読む 141:約束の場所へ
139:瓶詰妖精 時系列順に読む 141:約束の場所へ
120:サプライズド・T・アタック(後編) 水瀬名雪 147:一ノ瀬コトミの激走






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