シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMI
――殺した。
あんなに小さな子供を。
しかも、明らかにユズハよりも年下の少女を、だ。
俺は戦士だから。無抵抗であれ、目的のために男を殺す事に躊躇はしない。
今までもそうして生きて来た。
あんなに小さな子供を。
しかも、明らかにユズハよりも年下の少女を、だ。
俺は戦士だから。無抵抗であれ、目的のために男を殺す事に躊躇はしない。
今までもそうして生きて来た。
だが、何の抵抗もしない人間を殺した事は今まで一度も無かった。
当たり前だ。俺はそこらの蛮族とは違う。兄者に出会う前は義賊として、そして出会った後はトゥスクル国の将軍として働いて来たのだ。
そして、その行程には確かに信念があった。正義があった。それも大義の中の死、と全てを割り切ることが出来ていた。
当たり前だ。俺はそこらの蛮族とは違う。兄者に出会う前は義賊として、そして出会った後はトゥスクル国の将軍として働いて来たのだ。
そして、その行程には確かに信念があった。正義があった。それも大義の中の死、と全てを割り切ることが出来ていた。
では今の俺は何なのだろう。
最後に彼女、四葉のために自分が"兄"であると偽り、笑顔で逝った彼女を見てちっぽけな良心を満たしている。
これを偽善と言わずして何と言うべきか。
兄者のために捧げた剣を、本当にこんな事のために使ってしまって良いのか。
最後に彼女、四葉のために自分が"兄"であると偽り、笑顔で逝った彼女を見てちっぽけな良心を満たしている。
これを偽善と言わずして何と言うべきか。
兄者のために捧げた剣を、本当にこんな事のために使ってしまって良いのか。
「くそッ!!」
思わず足元の石を全力で蹴り飛ばした自分自身に嫌悪感を覚える。
コレではまるで、どこぞのチンピラだ。
兄者のため、そしてユズハのため、俺は一人の少女をこの手に掛けた。
だがそれはある意味、二人を人を殺すための免罪符にしているだけではないのか。そんな反意論が生まれてくる。
義の中から生まれた死でも無く、自らの生と直接的に関わってくる死でも無い。
当面俺が生き抜くために、彼女の死が本当に俺にとって必要だったとは思えない。
兄者を守るために危険な人物を排除する、と言う事に疑いは無い。
だが明らかに無力な人間を殺める必要があるのか――。
コレではまるで、どこぞのチンピラだ。
兄者のため、そしてユズハのため、俺は一人の少女をこの手に掛けた。
だがそれはある意味、二人を人を殺すための免罪符にしているだけではないのか。そんな反意論が生まれてくる。
義の中から生まれた死でも無く、自らの生と直接的に関わってくる死でも無い。
当面俺が生き抜くために、彼女の死が本当に俺にとって必要だったとは思えない。
兄者を守るために危険な人物を排除する、と言う事に疑いは無い。
だが明らかに無力な人間を殺める必要があるのか――。
ゾワッと全身の血が、一瞬で身体の中でもんどり打ったような感覚。
気配がした。人の気配だ。
頭の中が瞬時に切り替わる。戦士としての俺に。
誰かの接近を感じ取った瞬間、冷静さを取り戻す自分が悲しくも、虚しくもある。
自らが積上げてきた戦い、命のやり取りの経験に助けられたという実感。
俺がどれだけ激情に身を焦がしても、頭の中ではどこか常に冷めた眼で辺りを見回しているのでは無いかと考えるとゾッとする。
気配がした。人の気配だ。
頭の中が瞬時に切り替わる。戦士としての俺に。
誰かの接近を感じ取った瞬間、冷静さを取り戻す自分が悲しくも、虚しくもある。
自らが積上げてきた戦い、命のやり取りの経験に助けられたという実感。
俺がどれだけ激情に身を焦がしても、頭の中ではどこか常に冷めた眼で辺りを見回しているのでは無いかと考えるとゾッとする。
だがオボロはボリボリと頭を軽く掻いて、そしてもう一度神経を研ぎ澄ました。
今やるべきことをやる。ウダウダ言うのはもう少し余裕がある時の話だ。
更に耳を澄ませてみると、逆方向から耳に入る風の音に混じって、コツコツという何か硬いもので地面を叩いているような音が聞こえて来た。
心臓が一度、ドクンと大きく拍を打った。
今やるべきことをやる。ウダウダ言うのはもう少し余裕がある時の話だ。
更に耳を澄ませてみると、逆方向から耳に入る風の音に混じって、コツコツという何か硬いもので地面を叩いているような音が聞こえて来た。
心臓が一度、ドクンと大きく拍を打った。
この無用心な靴音だけで分かったことが一つ。
明らかにこの音の主には戦闘経験が無い、そんな事実だ。
普通隠密行動や従軍経験などがある者は必ずソレ相応の歩き方、というものを修得している。
長い距離を歩行しても疲れない歩法、足音を立てない特別な歩法など歩き方といっても幾つもの種類がある。
"歩行"は戦闘の基本だ。どんな分野であろうと、足遣いを疎かにする流派は無い。
故に聞こえてくるソレは幾分の迷いも無く、素人のものだと断定出来る。
明らかにこの音の主には戦闘経験が無い、そんな事実だ。
普通隠密行動や従軍経験などがある者は必ずソレ相応の歩き方、というものを修得している。
長い距離を歩行しても疲れない歩法、足音を立てない特別な歩法など歩き方といっても幾つもの種類がある。
"歩行"は戦闘の基本だ。どんな分野であろうと、足遣いを疎かにする流派は無い。
故に聞こえてくるソレは幾分の迷いも無く、素人のものだと断定出来る。
さぁどうする、どうするべきだ。
ひとまず、相手がどんな人物なのかを確認するべきか。
知り合いである可能性も……無くは無いのだ。
先程の放送で読み上げられた『エルルゥ』と『カルラ』を除いて、やって来たのが武人では無いアルルゥの可能性もあるのだから。
ひとまず、相手がどんな人物なのかを確認するべきか。
知り合いである可能性も……無くは無いのだ。
先程の放送で読み上げられた『エルルゥ』と『カルラ』を除いて、やって来たのが武人では無いアルルゥの可能性もあるのだから。
若干の間を置いて、オボロは自分が身を隠している場所を相手が通り過ぎるのをじっと待った。
足音からその他に、相手が女であること、そしてある程度年齢のいった落ち着いた女性、と評しても良い人物ではないかと言う予想を立てる。
足音からその他に、相手が女であること、そしてある程度年齢のいった落ち着いた女性、と評しても良い人物ではないかと言う予想を立てる。
相手が通り過ぎた。注意深く対象を確認する。
彼女の左斜め後方、数メートルの距離を保ちながら分析する。
足音からはある程度歳を取った落ち着いた女性をイメージしたのだが、意外なことにまだ相手は、あどけない年頃の少女だった。
やや紫がかった髪を頭の高い位置でまとめ、裾が長いヒラヒラした服を着ている。
右手には飾り物にしか見えない茶色の掛かった短剣。
ナイフとも違う。あんなもので人が殺せるのかというくらい無骨で、"斬る"という能力に欠けているように見えた。
少女はおそらく十代半ばぐらいの年頃だろう。
だがその面持ちはまるで整った氷像。外見から判断できる年齢以上に大人びて見えた。
黒や紫、赤色とドギツイ色の服の色が目に毒だ。見慣れない衣装から先程自分が殺した四葉の事を思い出す。
また、少し胸が痛んだ。
彼女の左斜め後方、数メートルの距離を保ちながら分析する。
足音からはある程度歳を取った落ち着いた女性をイメージしたのだが、意外なことにまだ相手は、あどけない年頃の少女だった。
やや紫がかった髪を頭の高い位置でまとめ、裾が長いヒラヒラした服を着ている。
右手には飾り物にしか見えない茶色の掛かった短剣。
ナイフとも違う。あんなもので人が殺せるのかというくらい無骨で、"斬る"という能力に欠けているように見えた。
少女はおそらく十代半ばぐらいの年頃だろう。
だがその面持ちはまるで整った氷像。外見から判断できる年齢以上に大人びて見えた。
黒や紫、赤色とドギツイ色の服の色が目に毒だ。見慣れない衣装から先程自分が殺した四葉の事を思い出す。
また、少し胸が痛んだ。
だが。
既に俺は、戻れない場所まで来てしまった。
俺はもう無力な少女を一人殺しているのだから。
ここで妙な良心に捉われて、妙な行動を取ることが本当に最善とは思えない。
断定は出来ないが、もはやするべきことは決まっている。
だから。
既に俺は、戻れない場所まで来てしまった。
俺はもう無力な少女を一人殺しているのだから。
ここで妙な良心に捉われて、妙な行動を取ることが本当に最善とは思えない。
断定は出来ないが、もはやするべきことは決まっている。
だから。
――今更、後悔しても遅い。
ボウガンに矢を装填する。
ボウガンに矢を装填する。
――誰かに言われた訳でも無い。
矢ばねを巻く。
矢ばねを巻く。
――俺は"俺の意思"で四葉を殺した。
準備完了。よく狙え。
ボウガンは連射が効かない。コレを外したら後が無い。
準備完了。よく狙え。
ボウガンは連射が効かない。コレを外したら後が無い。
――これから先、華やかに咲き乱れるであろう大輪の芽を摘み取ったのだ。
背後から数メートルの距離……。
確実に取れる、はずだ。
背後から数メートルの距離……。
確実に取れる、はずだ。
――だから、もはや後戻りは出来ない。
いけ。
いけ。
■
瞬間、俺は自分の目を疑った。
思わず乱暴に瞼を手でゴシゴシと擦り合わせる。
だが、当然目の前の事実に変化があるはずも無かった。
当たり前だ。起きてしまった事象を改変することなど不可能だ。
そうだ、認めるしかない。
思わず乱暴に瞼を手でゴシゴシと擦り合わせる。
だが、当然目の前の事実に変化があるはずも無かった。
当たり前だ。起きてしまった事象を改変することなど不可能だ。
そうだ、認めるしかない。
避けられた、その事実を。
馬鹿な!有り得ない!そんな悪態が心の中を駆け回る。
確かに矢は狙いと寸分違わず、少女の後頭部目掛けて飛んで行った。
急所から逸れていても致命傷は確実、一瞬で命を奪い去る可能性が多分に含まれる会心の一撃だった。
だが。
少女は『旋風が通り抜けるのを見ている』ような、凄まじい身のこなしで狙撃を回避したのだ。
馬鹿な!有り得ない!そんな悪態が心の中を駆け回る。
確かに矢は狙いと寸分違わず、少女の後頭部目掛けて飛んで行った。
急所から逸れていても致命傷は確実、一瞬で命を奪い去る可能性が多分に含まれる会心の一撃だった。
だが。
少女は『旋風が通り抜けるのを見ている』ような、凄まじい身のこなしで狙撃を回避したのだ。
「誰だッ!!」
狙い撃たれた少女が振り返り、甲高い声で叫ぶ。
オボロは焦った。そして逡巡する。
オボロは焦った。そして逡巡する。
失敗した。マズイ、何だこれは。
もう一度殺す?いやボウガンの矢を装填している時間が無い。
ならば接近して、あの支給品を使うか……?
だが化け物ように重量のある剣だ。カルラならばともかく、俺では完全に使いこなすことは出来ない。これも駄目だ。
……肉弾戦?アホか、リスクがでか過ぎる。あの男のように妙な武器を相手が持っていたらどうする?わざわざ殺されに行くようなものだ。
ただでさえ少女は、こちらの完全な死角からの狙撃を回避している。
目測を誤った。足音だけで相手を戦闘の素人だと侮って油断をした俺の失態だ。
相手はああ見えて相当なやり手。下手な攻撃は自身に危険を招く可能性が高い。
もう一度殺す?いやボウガンの矢を装填している時間が無い。
ならば接近して、あの支給品を使うか……?
だが化け物ように重量のある剣だ。カルラならばともかく、俺では完全に使いこなすことは出来ない。これも駄目だ。
……肉弾戦?アホか、リスクがでか過ぎる。あの男のように妙な武器を相手が持っていたらどうする?わざわざ殺されに行くようなものだ。
ただでさえ少女は、こちらの完全な死角からの狙撃を回避している。
目測を誤った。足音だけで相手を戦闘の素人だと侮って油断をした俺の失態だ。
相手はああ見えて相当なやり手。下手な攻撃は自身に危険を招く可能性が高い。
「ちッ!!」
オボロは咄嗟に顔を隠し、その身を翻す。
逃げる。奇襲に失敗した以上、これしかあるまい。
自分達の外見はどうやら、この島にいる他の人間と比べて目立つものらしい。
顔を見られる前に、俺自身を認識される前に逃げるしかない。
逃げる。奇襲に失敗した以上、これしかあるまい。
自分達の外見はどうやら、この島にいる他の人間と比べて目立つものらしい。
顔を見られる前に、俺自身を認識される前に逃げるしかない。
「待つんだッ!!」
もう一度、女の声が今回は後ろから響いた。
次は俺が背中を向ける番だ。
次は俺が背中を向ける番だ。
■
こんな短時間で全力で走る機会が二度もあるなんて。
千影は今まで体育の授業をまともに受けてこなかった自分を少し恨んだ。
千影は今まで体育の授業をまともに受けてこなかった自分を少し恨んだ。
大声で止まるように呼びかけて、『はい、分かりました』と素直に立ち止まる馬鹿がいたら見てみたいものだ。
例に漏れず、細身の男にこちらの声に応える様子は無い。完全に逃走の形に入っている。
早い。
この森の鬱蒼とした道を凄まじいスピードで走る、走る、走る。
自分の足ではどう考えても間に合わない、直感的にそう思った。
例に漏れず、細身の男にこちらの声に応える様子は無い。完全に逃走の形に入っている。
早い。
この森の鬱蒼とした道を凄まじいスピードで走る、走る、走る。
自分の足ではどう考えても間に合わない、直感的にそう思った。
確かに私は男の放った弓矢を回避した。
これは全く持って嘘偽りの無い真実だ。
目の前を弓矢が通過していった時、心臓が止まってしまうのではないかと思った。
だが、現に私はこうして生きている。それは結果的な真実だ。
とはいえ私には後方から超スピードで飛んでくるボウガンを避けるような特技は無い。
また獣じみた感覚で危険を察知したという訳でもない。衛でもそんな芸当は不可能だろう。
これは全く持って嘘偽りの無い真実だ。
目の前を弓矢が通過していった時、心臓が止まってしまうのではないかと思った。
だが、現に私はこうして生きている。それは結果的な真実だ。
とはいえ私には後方から超スピードで飛んでくるボウガンを避けるような特技は無い。
また獣じみた感覚で危険を察知したという訳でもない。衛でもそんな芸当は不可能だろう。
何と言うか。予感が、したのだ。
日頃から占いをよくする私だが、時々『神のお告げ』のようなものを受け取る事がある。
動物的ではなく、神託的な感覚である。
具体的な事は分からなかったのだが、強烈なまでの身の危険に自然と私の身体が動いた。
振り返ろうとした。
何かが飛んでくる、そんな気配だけ、曖昧だが感じ取った。
しかしそんな啓示のような物を受け取った所で、私の身体が現状に反応出来るか否かは別問題だ。
私は自慢ではないが体力が無い。運動神経も同年代の女子と比べてさえ大して良くはないだろう。
日頃から占いをよくする私だが、時々『神のお告げ』のようなものを受け取る事がある。
動物的ではなく、神託的な感覚である。
具体的な事は分からなかったのだが、強烈なまでの身の危険に自然と私の身体が動いた。
振り返ろうとした。
何かが飛んでくる、そんな気配だけ、曖昧だが感じ取った。
しかしそんな啓示のような物を受け取った所で、私の身体が現状に反応出来るか否かは別問題だ。
私は自慢ではないが体力が無い。運動神経も同年代の女子と比べてさえ大して良くはないだろう。
だから、逆に私は絶望した。
飛来する弓矢の存在に気付いたと同時に『自分がその矢を回避する能力を持ち合わせていない』ことも強く悟ったからだ。
こんな短い時間では結界を張ることも、力をぶつけて撃ち落とす事も出来ない。
既に万策は尽きていたのだ。
飛来する弓矢の存在に気付いたと同時に『自分がその矢を回避する能力を持ち合わせていない』ことも強く悟ったからだ。
こんな短い時間では結界を張ることも、力をぶつけて撃ち落とす事も出来ない。
既に万策は尽きていたのだ。
何と言う皮肉だろう。
自分自身の能力で、待ち受ける未来を把握したまでは良かった。
そのせいで私はその先に霞んでいる、あまりにも絶望的な未来に全心を撃ち抜かれることも理解してしまったのだ。
圧倒的なまでの死の予感。まさに筆舌し難い。
小さな女の身である自分にとって、この短い未来において待ち受ける逃れようの無い死。
自分自身の能力で、待ち受ける未来を把握したまでは良かった。
そのせいで私はその先に霞んでいる、あまりにも絶望的な未来に全心を撃ち抜かれることも理解してしまったのだ。
圧倒的なまでの死の予感。まさに筆舌し難い。
小さな女の身である自分にとって、この短い未来において待ち受ける逃れようの無い死。
だが。
自分でもよく分からないが不思議な事に私の身体はいつもとは違った。
早かった。あの男が野を駆ける速度すら比べ物にならない程に。
考えられないようなスピード、反応速。
まるで『私の中の時間だけその流れが速くなってしまった』ように。
加速。言葉で例えるならばこの単語しか思いつかない。
そう、私はあの瞬間"加速"したのだ。
自分でもよく分からないが不思議な事に私の身体はいつもとは違った。
早かった。あの男が野を駆ける速度すら比べ物にならない程に。
考えられないようなスピード、反応速。
まるで『私の中の時間だけその流れが速くなってしまった』ように。
加速。言葉で例えるならばこの単語しか思いつかない。
そう、私はあの瞬間"加速"したのだ。
男の背中はドンドン遠くなっていく。当然追いかける。
私も走る、走る。
慣れない事はするものじゃない。枝木に引っかかってスカートの裾が少し裂けた。まるで元々スリットが入っていたみたいだ。
走る。
男はまだ視界の中だ。息が上がる。
……駄目だ、まるで追いつける気がしない。
私も走る、走る。
慣れない事はするものじゃない。枝木に引っかかってスカートの裾が少し裂けた。まるで元々スリットが入っていたみたいだ。
走る。
男はまだ視界の中だ。息が上がる。
……駄目だ、まるで追いつける気がしない。
しかし、このまま追いかけるのを止めてしまっていいのか。
いや、このまま放置する訳にはいかない。
あの男はおそらく、殺し合いに乗った類の人間だ。
そんな人間を野放しにすれば確実に被害は広がる。姉妹にも危険が及ぶかもしれない。
私が男を倒す事が出来なくても、もし近くに人がいるのならば注意を促さなければならない。
だが私の貧弱な身体は既に疲労でクタクタだ。
このままでは地面に座り込んでしまうのも時間の問題。
ならばもう一度あの"加速"の力が使えないか。
チラリと手元の剣に視線を移す。
いや、このまま放置する訳にはいかない。
あの男はおそらく、殺し合いに乗った類の人間だ。
そんな人間を野放しにすれば確実に被害は広がる。姉妹にも危険が及ぶかもしれない。
私が男を倒す事が出来なくても、もし近くに人がいるのならば注意を促さなければならない。
だが私の貧弱な身体は既に疲労でクタクタだ。
このままでは地面に座り込んでしまうのも時間の問題。
ならばもう一度あの"加速"の力が使えないか。
チラリと手元の剣に視線を移す。
あの突然の現象がこの剣の力であることはもはや自明の理。
やはり、コレは魔具だったのだ。しかも相当にハイレベルな。
自分ではコレの力を引き出す自信が無かったのだが、まさかこんな土壇場になって自然にそれが出来てしまうなどとは思わなかった。
『永遠神剣第三位"時深"』一緒に付いてきた説明書にはただソレだけしか書かれていなかった。
名前の通り、おそらくその力は"時間"を操る事なのだろう。
やはり、コレは魔具だったのだ。しかも相当にハイレベルな。
自分ではコレの力を引き出す自信が無かったのだが、まさかこんな土壇場になって自然にそれが出来てしまうなどとは思わなかった。
『永遠神剣第三位"時深"』一緒に付いてきた説明書にはただソレだけしか書かれていなかった。
名前の通り、おそらくその力は"時間"を操る事なのだろう。
時を操る神と言えば、思いつくのはギリシア神話のクロノス。
そしてゾロアスター教の時間神ズルワーン。
ならば、このどちらかの力を汲んだ魔具の可能性が高い。
クロノスにしても大地神ウラヌスの子であるし、ズルワーンはあのアフラ・マズダとアンリ・マユの上に立つ神である。
時間を操るという、圧倒的な力を持つに相応しい上位神なのだ。
実在する魔具だと……カイロスの時計ぐらいか。
時と関係した魔具ほはとんど確認されていない。
『時を越える能力』はまさに禁忌に近い果てしない代物だ。
そしてゾロアスター教の時間神ズルワーン。
ならば、このどちらかの力を汲んだ魔具の可能性が高い。
クロノスにしても大地神ウラヌスの子であるし、ズルワーンはあのアフラ・マズダとアンリ・マユの上に立つ神である。
時間を操るという、圧倒的な力を持つに相応しい上位神なのだ。
実在する魔具だと……カイロスの時計ぐらいか。
時と関係した魔具ほはとんど確認されていない。
『時を越える能力』はまさに禁忌に近い果てしない代物だ。
だがこの儀礼剣はどちらの神ともおそらく関係していない。
三鈷杵状の柄は日本独自のものだ。西洋のサーベルやセイバー、中東辺りのシミターやシャムシールにこのような造形は見られない。
故に、この剣が大陸魔術の影響を受けているとは考え難いのだ。
だが同時に古事記から成る日本の神話において、時間の神の存在は確認されていないのだ。
つまりこの剣が何かしらの神の加護を受けた魔具であるとは考えにくい。
それに第三位という事は他にも位の違う亜種が存在する可能性が高い。
この剣は一体何なのだろう。そして、それら全てが本当に高位の魔具なのだろうか。
三鈷杵状の柄は日本独自のものだ。西洋のサーベルやセイバー、中東辺りのシミターやシャムシールにこのような造形は見られない。
故に、この剣が大陸魔術の影響を受けているとは考え難いのだ。
だが同時に古事記から成る日本の神話において、時間の神の存在は確認されていないのだ。
つまりこの剣が何かしらの神の加護を受けた魔具であるとは考えにくい。
それに第三位という事は他にも位の違う亜種が存在する可能性が高い。
この剣は一体何なのだろう。そして、それら全てが本当に高位の魔具なのだろうか。
もう一つ、問題がある。
先刻、"加速"の力を使用した後から身体に圧し掛かる強い疲労についてだ。
自分に体力が無いことは重々承知だ。
だが、いくらなんでもこの全身のみならず、体内から何かが抜けて行くような、訳の分からない虚脱感は異常だ。
確かに魔力を大量に消耗した訳ではない。連続行使も今の所は問題無しだろう。
しかし、そもそも体系の違う魔術を媒介の力だけで使用するのには無理がある。
あまりこの力に溺れる事は後々多大なリスクを産む予感がする。
先刻、"加速"の力を使用した後から身体に圧し掛かる強い疲労についてだ。
自分に体力が無いことは重々承知だ。
だが、いくらなんでもこの全身のみならず、体内から何かが抜けて行くような、訳の分からない虚脱感は異常だ。
確かに魔力を大量に消耗した訳ではない。連続行使も今の所は問題無しだろう。
しかし、そもそも体系の違う魔術を媒介の力だけで使用するのには無理がある。
あまりこの力に溺れる事は後々多大なリスクを産む予感がする。
「ん、おお!オボロではないか。まさかこんな場所で会えるとは思わなかったぞ」
「な……トウカッ!?」
「な……トウカッ!?」
ハッと我に帰る。声だ。男の走って行った方向から女の声が聞こえた。
思わず貴重な魔具の力を目の当たりにして、その分析で頭が一杯になっていた。
詳しい会話の内容は分からない。聞こえたのは男女の出会い頭の脊髄反応のような会話のみ。
幸いな事に、追い掛ける自分の脚だけは止まっていなかったらしい。
思わず貴重な魔具の力を目の当たりにして、その分析で頭が一杯になっていた。
詳しい会話の内容は分からない。聞こえたのは男女の出会い頭の脊髄反応のような会話のみ。
幸いな事に、追い掛ける自分の脚だけは止まっていなかったらしい。
視界の一端、男がその脚を止め立ち止まっていた。
その目の前には刀を腰に差した女性。
いけない、このままでは彼女が危ない。
それだけは直感的に悟る。
その目の前には刀を腰に差した女性。
いけない、このままでは彼女が危ない。
それだけは直感的に悟る。
千影はあらん限りの声でトウカとオボロに向けて叫ぶ。
まさか、二人が同じ君主に仕える同郷の者だと知ら訳も無く。
まさか、二人が同じ君主に仕える同郷の者だと知ら訳も無く。
「逃げるんだッ!!その男は殺し合いに乗っている!!」
■
「某としたことが……申し訳ない!!
……しかし、千影殿。オボロが殺し合いに乗っているなんてありえない。
それは某が保証いたそう。動物か、もしくは他に襲撃者がいたのでしょう」
「……いや、だけど矢が飛んで来たのは事実なんだ。
避ける事が出来なければ、確実に私は……死んでいた」
……しかし、千影殿。オボロが殺し合いに乗っているなんてありえない。
それは某が保証いたそう。動物か、もしくは他に襲撃者がいたのでしょう」
「……いや、だけど矢が飛んで来たのは事実なんだ。
避ける事が出来なければ、確実に私は……死んでいた」
少し恨めしそうな顔で二人を見つめる。
先程までとは違って一メートル以内の本当に近い距離。
オボロが沈痛な面持ちで、トウカが何とも申し訳無さそうな顔付きで千影の前に立っている。
先程までとは違って一メートル以内の本当に近い距離。
オボロが沈痛な面持ちで、トウカが何とも申し訳無さそうな顔付きで千影の前に立っている。
先程は大変な目にあった。
私が大声で忠告をした後、いきなりこのトウカという女性が『某の仲間を侮辱するつもりか!!』と叫びながら切り掛かって来たのだ。
正直な話……あまりの超展開にマトモな反応を取る事が出来ず、私は本当に死にかけたと言って良い。
咄嗟に身体を捩って刃をかわさなければ確実に刀身が皮膚を突き破り、肉を裂いていたはず。
当たり前だが自分に剣術の才能は無い。
この『時深』も直接斬り合う武器としては明らかに不向きだ。
返す刀で切られる寸前、使いこなせるか分からない永遠神剣の力を使いそうになった――その時。
『トウカ、待ってくれ!!俺が全部悪いんだ!!』と言う声。
私は耳を疑った。まるで予想していなかった人間の言葉が私の命を繋ぎとめたのだ。
私が大声で忠告をした後、いきなりこのトウカという女性が『某の仲間を侮辱するつもりか!!』と叫びながら切り掛かって来たのだ。
正直な話……あまりの超展開にマトモな反応を取る事が出来ず、私は本当に死にかけたと言って良い。
咄嗟に身体を捩って刃をかわさなければ確実に刀身が皮膚を突き破り、肉を裂いていたはず。
当たり前だが自分に剣術の才能は無い。
この『時深』も直接斬り合う武器としては明らかに不向きだ。
返す刀で切られる寸前、使いこなせるか分からない永遠神剣の力を使いそうになった――その時。
『トウカ、待ってくれ!!俺が全部悪いんだ!!』と言う声。
私は耳を疑った。まるで予想していなかった人間の言葉が私の命を繋ぎとめたのだ。
「それはおそらく……うっかりしていたのではないかな。
オボロの本来の得物は刀。石弓など使っている姿はこのトウカ、一度も見た事が無い。
オボロ、そのような具合でござろう?」
「あ、ああ……そうだ。スマン、完全に狙いが……逸れた」
オボロの本来の得物は刀。石弓など使っている姿はこのトウカ、一度も見た事が無い。
オボロ、そのような具合でござろう?」
「あ、ああ……そうだ。スマン、完全に狙いが……逸れた」
千影は二人の言葉に本気で悩んでいた。
……分からない。
まさか本当に誤射だったとでも言うのか?
だがオボロが殺意を持って撃ったと仮定すれば、あのまま私が切り捨てられるのを眺めていればいいのだ。ソレを制止する道理は無い。
それに知り合いであるトウカにならば、何とでも言い訳が出来るはずだ。
……分からない。
まさか本当に誤射だったとでも言うのか?
だがオボロが殺意を持って撃ったと仮定すれば、あのまま私が切り捨てられるのを眺めていればいいのだ。ソレを制止する道理は無い。
それに知り合いであるトウカにならば、何とでも言い訳が出来るはずだ。
「……分かった。信じる事にするよ。
そうだ……二人に聞きたい事があるんだけどいい……かな」
「おお、某達に答えられる事ならば、何でも答えよう」
「……ありがとう。今、私は、姉妹を……姉妹を探しているんだ。
咲耶……衛、それと……」
そうだ……二人に聞きたい事があるんだけどいい……かな」
「おお、某達に答えられる事ならば、何でも答えよう」
「……ありがとう。今、私は、姉妹を……姉妹を探しているんだ。
咲耶……衛、それと……」
咲耶、衛と来てここで言い淀む。
……そんな簡単に認められる訳が無いじゃないか。
自分達は十二人いてこその姉妹なのだから。
まさか一人でもここから欠ける人間が出てくるなんて、考えた事も無くて。
……そんな簡単に認められる訳が無いじゃないか。
自分達は十二人いてこその姉妹なのだから。
まさか一人でもここから欠ける人間が出てくるなんて、考えた事も無くて。
「……まさか」
トウカがハッと息を呑む。
隣のオボロも更に表情を険しくする。
悟ったのだろう。話を持ち掛けたのは自分。少しだけ悪い事をした気分になる。
隣のオボロも更に表情を険しくする。
悟ったのだろう。話を持ち掛けたのは自分。少しだけ悪い事をした気分になる。
「四葉は……もう……いないんだ」
四葉。
妹を殺した人間への強い恨みを込めた声で、私はそう吐き出すように呟いた。
妹を殺した人間への強い恨みを込めた声で、私はそう吐き出すように呟いた。
■
頭がグルグル回る。
頭蓋骨を切り開いて中から脳漿を引っ張り出して捏ね繰り回したくなる。
最悪だ。サイアクだ。こんな事があっていいのか。
俺は……俺は……。
頭蓋骨を切り開いて中から脳漿を引っ張り出して捏ね繰り回したくなる。
最悪だ。サイアクだ。こんな事があっていいのか。
俺は……俺は……。
「永遠神剣……ですか」
「……そう。もし君達にそれが支給されていたら……是非、見せて欲しいんだ」
「……そう。もし君達にそれが支給されていたら……是非、見せて欲しいんだ」
千影。
俺が殺し損ね、皮肉にも命を救った少女の名だ。
そして俺が殺し"損ねなかった"四葉の姉でもある。
俺が殺し損ね、皮肉にも命を救った少女の名だ。
そして俺が殺し"損ねなかった"四葉の姉でもある。
もしも俺が本当に修羅の道に身を委ねた戦士だったならば、何とかして彼女を殺そうとするだろう。
自分が人を殺したと言う事実が他の人間に広まるのは出来る限り避けたい事態だ。
ならば関係人物は全て抹消しておきたいと思うだろう、ソレが普通だ。
自分が人を殺したと言う事実が他の人間に広まるのは出来る限り避けたい事態だ。
ならば関係人物は全て抹消しておきたいと思うだろう、ソレが普通だ。
「待てよ、もしやあの大剣……」
「……これは」
「付随していた紙によると『永遠神剣第七位"存在"』という名の剣らしい。
こちらよりは、もう一つの細めの剣の方が某には丁度良い故、使っていなかったのだ」
「……少し、借して貰ってもいいかい」
「……これは」
「付随していた紙によると『永遠神剣第七位"存在"』という名の剣らしい。
こちらよりは、もう一つの細めの剣の方が某には丁度良い故、使っていなかったのだ」
「……少し、借して貰ってもいいかい」
二人は何やら剣を手にとって、水の力がどうだの、魔力がどうだのと意味の分からない話をしている。
位置的には近くにいるはずなのに、会話の内容が耳から耳へと抜けて行く。
まるで思考力が追いついていない。
位置的には近くにいるはずなのに、会話の内容が耳から耳へと抜けて行く。
まるで思考力が追いついていない。
俺は今の今まで兄者のため、あらゆる障害を取り除く意志を固めていた。
だが結果はどうだ。
殺し合いが始まってから約八時間。その間に一人の無力な少女を不意打ちで殺しただけ。
そして次に出会ったのはその少女の姉。
しかも一度はその事を知らずに彼女を殺しかけた。
トウカが千影に切り掛かって行った時、俺は無意識のうちにトウカを制止していた。
この時点では二人が肉親であると言う事は知らなかったはずなのに。
何故だろうか。
一人の少女の死。
その事実がここまで俺に圧し掛かってくるとは思わなかった。
だが結果はどうだ。
殺し合いが始まってから約八時間。その間に一人の無力な少女を不意打ちで殺しただけ。
そして次に出会ったのはその少女の姉。
しかも一度はその事を知らずに彼女を殺しかけた。
トウカが千影に切り掛かって行った時、俺は無意識のうちにトウカを制止していた。
この時点では二人が肉親であると言う事は知らなかったはずなのに。
何故だろうか。
一人の少女の死。
その事実がここまで俺に圧し掛かってくるとは思わなかった。
「オボロ、おいオボロ聞いているのか!!」
「……う……ああ、スマン……ぼんやりしていた」
「……う……ああ、スマン……ぼんやりしていた」
強めの声で耳元で怒鳴られたおかげで意思が覚醒した。
ノイズにまみれ、まるで機能していなかった脳がようやく少しはマトモに働き出す。
ノイズにまみれ、まるで機能していなかった脳がようやく少しはマトモに働き出す。
「しっかりしろ。千影殿は武人ではござらん。
我々が守って差し上げなければいけないのだぞ」
「守って……?どういう事だ?」
我々が守って差し上げなければいけないのだぞ」
「守って……?どういう事だ?」
俺がそう聞き返すとトウカは心底呆れた様な表情でため息をついた。
千影も苦笑する。
千影も苦笑する。
「はぁ……お前と言う奴は。全く話を聞いていなかったのだな。
いいか、某達はこれから神社へ向かう。某が先程知り合った仲間と一端合流するためだ。
そして、千影殿もそれにご同行される」
「……私は特に……明確な…目的地があるわけじゃないから。
だけどひとまずは……信頼出来る人間と情報を交換したいんだ」
いいか、某達はこれから神社へ向かう。某が先程知り合った仲間と一端合流するためだ。
そして、千影殿もそれにご同行される」
「……私は特に……明確な…目的地があるわけじゃないから。
だけどひとまずは……信頼出来る人間と情報を交換したいんだ」
おかしい。
何故いつの間にか俺も神社へ向かう事になっているんだ?
何故いつの間にか俺も神社へ向かう事になっているんだ?
「な……ちょっと待て!!
俺は兄者と会うために西へ行かなければならない。
神社と言うと……明らかに正反対の方向だろうが」
「西……?オボロ、聖上が何処におられるのか知っているのか!!」
俺は兄者と会うために西へ行かなければならない。
神社と言うと……明らかに正反対の方向だろうが」
「西……?オボロ、聖上が何処におられるのか知っているのか!!」
トウカに言われて気付いた事。
……そういえば俺はどうして西へ向かっているのだろう。
確かどこかで兄者の声を聞いたような気がして、それで……。
……そういえば俺はどうして西へ向かっているのだろう。
確かどこかで兄者の声を聞いたような気がして、それで……。
「いや……何と言うか、E-4エリアで兄者の声が西から聞こえた……ような」
俺がそうシドロモドロに答えるとトウカは先程以上に呆れたような表情でため息をつく。
千影も苦笑する。口元が先程以上にぎこちない。
千影も苦笑する。口元が先程以上にぎこちない。
「……まったく」
「E-4か……ここがC-4とC-5の丁度間ぐらいだから……。
多分……もう入れ違いになってるんじゃないかな」
「E-4か……ここがC-4とC-5の丁度間ぐらいだから……。
多分……もう入れ違いになってるんじゃないかな」
千影の台詞に俺は愕然とした。
膝から全身が崩れ落ちてしまう、そんな感覚だ。
確かに"西から兄者の声が聞こえた"という適当な理由で自分はここまで来た。
その中に確定的な要素はまるで含まれず、ある種予感めいたものが大半を占めていた。
しかも散々ここにやって来るまで辺りを索敵していたのだから。
最悪、方向すら間違っていたのではないかと思わずにはいられない。
膝から全身が崩れ落ちてしまう、そんな感覚だ。
確かに"西から兄者の声が聞こえた"という適当な理由で自分はここまで来た。
その中に確定的な要素はまるで含まれず、ある種予感めいたものが大半を占めていた。
しかも散々ここにやって来るまで辺りを索敵していたのだから。
最悪、方向すら間違っていたのではないかと思わずにはいられない。
「落ち込んでいる場合では無い、オボロ。
こんな場所で油を売っている暇は無い。行くぞ。
エルルゥ殿と……カルラのためにも。立ち止まるわけにはいかないのだ」
「あ、ああ……」
こんな場所で油を売っている暇は無い。行くぞ。
エルルゥ殿と……カルラのためにも。立ち止まるわけにはいかないのだ」
「あ、ああ……」
既にトウカと千影は歩き出していた。
エルルゥと、そしてカルラの名前を口にしたトウカの表情はまるで能面のようで、精一杯悲しみを顔に出さないようにしている事が分かった。
二人はもう、この世にいない。
エルルゥを殺した人間を、俺は絶対許さないと決めた。カルラを殺した人間に対しても同じ事が言える。
まぁ、アイツの事だから一方的にやられた訳では無いだろうが……それでも仇を討ちたいという気持ちに変わりは無い。
エルルゥと、そしてカルラの名前を口にしたトウカの表情はまるで能面のようで、精一杯悲しみを顔に出さないようにしている事が分かった。
二人はもう、この世にいない。
エルルゥを殺した人間を、俺は絶対許さないと決めた。カルラを殺した人間に対しても同じ事が言える。
まぁ、アイツの事だから一方的にやられた訳では無いだろうが……それでも仇を討ちたいという気持ちに変わりは無い。
だが俺の隣にいる千影も、おそらく全く同じ事を考えているはずだ。
『妹の仇を取りたい』
俺達に四葉の死を告げた時の千影の表情は、悲哀以上に激しい憎悪の感情を隠しきれていなかった。
嫌な因果だ。
彼女の気持ちが痛いほど分かるだけに、この連環を呪わずにはいられない。
『妹の仇を取りたい』
俺達に四葉の死を告げた時の千影の表情は、悲哀以上に激しい憎悪の感情を隠しきれていなかった。
嫌な因果だ。
彼女の気持ちが痛いほど分かるだけに、この連環を呪わずにはいられない。
『お前の妹を殺したのは俺だ』
正直にそう告げる事が出来たらどれ程気が楽になるだろうか。
だがソレは決して許されない選択。
業を背負い、修羅道を歩む事を決意した俺にとって自らの犯した罪から逃げる事は許されない。
正直にそう告げる事が出来たらどれ程気が楽になるだろうか。
だがソレは決して許されない選択。
業を背負い、修羅道を歩む事を決意した俺にとって自らの犯した罪から逃げる事は許されない。
ならば贖うしかないのだろう。
迫り来る悪意を持った人間は全て片付ける。
無抵抗の者を殺すつもりは無い。いや、おそらくもう俺には殺せないだろうから。
迫り来る悪意を持った人間は全て片付ける。
無抵抗の者を殺すつもりは無い。いや、おそらくもう俺には殺せないだろうから。
【C-4 マップ左隅森/1日目 朝】
【千影@Sister Princess】
【装備:永遠神剣第三位『時詠』@永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【所持品:支給品一式 バーベナ学園の制服@SHUFFLE! ON THE STAGE
銃火器予備弾セット各100発 バナナ(フィリピン産)(2房)】
【状態:疲労(大)魔力若干消費 時詠使用による虚脱感 スカートに裂け目】
【思考・行動】
基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくるものには手加減しない。
1:神社へ向かう
2:四葉を殺した人間に強い恨み
3:衛、咲耶の捜索
4:永遠神剣に興味
5:相沢祐一、北川潤、月宮あゆ、朝倉純一、朝倉音夢、芳乃さくら、杉並の捜索
6:相沢祐一に興味
7:魔力を持つ人間とコンタクトを取りたい
【装備:永遠神剣第三位『時詠』@永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【所持品:支給品一式 バーベナ学園の制服@SHUFFLE! ON THE STAGE
銃火器予備弾セット各100発 バナナ(フィリピン産)(2房)】
【状態:疲労(大)魔力若干消費 時詠使用による虚脱感 スカートに裂け目】
【思考・行動】
基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくるものには手加減しない。
1:神社へ向かう
2:四葉を殺した人間に強い恨み
3:衛、咲耶の捜索
4:永遠神剣に興味
5:相沢祐一、北川潤、月宮あゆ、朝倉純一、朝倉音夢、芳乃さくら、杉並の捜索
6:相沢祐一に興味
7:魔力を持つ人間とコンタクトを取りたい
※ オボロを若干警戒 トウカは呑気な人間だと評価
第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
【備考】
千影は『時詠』により以下のスキルが使用可能です。
未来視は時詠の力ではありません。
千影は『時詠』により以下のスキルが使用可能です。
未来視は時詠の力ではありません。
タイムコンポーズ:最大効果を発揮する行動を選択して未来を再構成する。
タイムアクセラレイト…自分自身の時間を加速する。
タイムアクセラレイト…自分自身の時間を加速する。
他のスキルの運用は現時点では未知数です。
詳しくはwiki参照。
またエターナル化は何らかの力によって妨害されています。
詳しくはwiki参照。
またエターナル化は何らかの力によって妨害されています。
銃火器予備弾セットが支給されているため、千影は島にどんな銃火器があるのか全て把握しています。
見た目と名前だけなので銃器の詳しい能力などは知りません。
見た目と名前だけなので銃器の詳しい能力などは知りません。
【オボロ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:クロスボウ(ボルト残7/10)】
【所持品:支給品一式 不明支給品1(本人確認済み)、
カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、エルルゥのリボン】
【状態:全身に擦り傷・中程度の疲労・困惑】
【思考・行動】
基本行動方針:襲ってくる者には手加減無し。西へ向かうのは止めた。
1:神社へ向かう
2:敵意を持つ参加者の排除
3:エルルゥを殺した犯人を殺す。
4:千影の扱いに迷い、彼女の妹を殺した事に対する強い良心の呵責(殺す意志は消失)
5:ハクオロ、アルルゥと一度合流。
【装備:クロスボウ(ボルト残7/10)】
【所持品:支給品一式 不明支給品1(本人確認済み)、
カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、エルルゥのリボン】
【状態:全身に擦り傷・中程度の疲労・困惑】
【思考・行動】
基本行動方針:襲ってくる者には手加減無し。西へ向かうのは止めた。
1:神社へ向かう
2:敵意を持つ参加者の排除
3:エルルゥを殺した犯人を殺す。
4:千影の扱いに迷い、彼女の妹を殺した事に対する強い良心の呵責(殺す意志は消失)
5:ハクオロ、アルルゥと一度合流。
※四葉を殺した事をいっそう後悔しています
【トウカ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:舞の剣@Kanon】
【所持品:支給品一式、永遠神剣第七位『存在』@永遠のアセリア-この大地の果てで-、
不明支給品1(本人確認済み)、スペツナズナイフの柄】
【状態:精神的疲労】
【思考・行動】
基本:殺し合いはしないが、襲ってくる者は容赦せず斬る
1:ひとまず神社へ
2:アルルゥを探し出す
3:ハクオロと早急に合流し守る
4:次に蟹沢きぬと出会ったら真偽を問いただす
【装備:舞の剣@Kanon】
【所持品:支給品一式、永遠神剣第七位『存在』@永遠のアセリア-この大地の果てで-、
不明支給品1(本人確認済み)、スペツナズナイフの柄】
【状態:精神的疲労】
【思考・行動】
基本:殺し合いはしないが、襲ってくる者は容赦せず斬る
1:ひとまず神社へ
2:アルルゥを探し出す
3:ハクオロと早急に合流し守る
4:次に蟹沢きぬと出会ったら真偽を問いただす
【備考】
蟹沢きぬが殺し合いに乗っていると疑っています
舞の剣は少々刃こぼれしています
蟹沢きぬが殺し合いに乗っていると疑っています
舞の剣は少々刃こぼれしています
※永遠神剣第七位"存在"
アセリア・ブルースピリットが元の持ち主。両刃の大剣。
魔力を持つ者は水の力を行使できる。
エターナル化は不可能。他のスキルの運用については不明。
アセリア・ブルースピリットが元の持ち主。両刃の大剣。
魔力を持つ者は水の力を行使できる。
エターナル化は不可能。他のスキルの運用については不明。
ウォーターシールド…水の壁を作り出し、敵の攻撃を受け止める。
フローズンアーマー…周囲の温度を急激に低下させ、水分を凍結させ鎧とする。
フローズンアーマー…周囲の温度を急激に低下させ、水分を凍結させ鎧とする。
090:無垢なる刃 | 投下順に読む | 092:聖者の行進 |
085:Sacrifice of maiden | 時系列順に読む | 095:忘れていた感情 |
067:少女連鎖 | 千影 | 102:知る者、知らざる者 |
066:そこには、もう誰もいない | オボロ | 102:知る者、知らざる者 |
061:下半身に罪はない!~トイレを求めて全力疾走~ | トウカ | 102:知る者、知らざる者 |