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「彼女の決断、彼の選択」(2007/07/18 (水) 11:37:58) の最新版変更点
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**彼女の決断、彼の選択 ◆7NffU3G94s
月の光が当たりを照らす、古手梨花は呆然とうず高く積まれたゴミ山を眺めていた。
彼女の求める人物である竜宮レナ、梨花はレナが向かいそうな場所をここと定め、真っ先に走ってきたというのに……彼女を出迎えたのは、レナとは似つかない容貌の少女であった。
「……こんな小さな子まで、参加させられてるんですね」
風が少女の長くて美しいストレートの髪を揺らす、大人びた表情だけ見れば梨花は彼女の年齢を誤認してしまったかもしれない。
そして、後れ毛の間から覗く特徴的な耳。『人間ではない』ネリネの証が目に入り、梨花は顔を歪ませた。
梨花はこのような特徴的な耳を見たことがなかった、しいて言うなら北条沙都子と二人で見るアニメにでも出てくるキャラクターのような印象を得る。
……もしくは、羽生のような神々しい存在。そんな可能性しか、梨花は見出すことが出来ない。
だがネリネが何者なのかという疑問など、梨花にも……そして、当の本人ネリネにさえも、今は全く意味のない類のものである。
お互いが首輪をつけているということ、バトルロワイアルの参加者を表すあるそれが二人を同等な立場であることを示していた。
「どうやら勘は外れたみたいね」
一つ息を吐きながら呟く梨花、話し合いの余地があるならば梨花は向かい合う少女に猫なで声を上げいつも通り媚を売るつもりだった。
しかし予想以上に冷たい視線が梨花を射抜こうとするかの如く向かってくる、梨花は甘い考えを捨てるしかなかった。
また、それ以上に梨花にとって脅威に思えたのが、ネリネの手にする槍であった。
美しい装飾は綿流しの祭の際梨花が手にする鍬を彷彿させる、梨花はそれに対し妙なプレッシャーを感じていた。
トンッと身軽な動作でネリネがゴミ山から舞い降りる構図、槍の出す雰囲気と相まってそれは本当に美しい情景を描きだす。
空からは降り注ぐ月の光、それを受けたネリネが少しずつ梨花を追い詰めるように歩みだした。
「ごめんなさい、最初に謝らせてください……容赦をする訳には、いかないんです」
それは宣言であり、梨花がネリネに協力を求められないと理解するしかなくなる決定打でもあり。
言葉が終わると同時に、梨花は脱兎の如く一目散に今来た道を戻るように走り出していた。
追ってくる足音は勿論ネリネのもの、体格差だけを考えても梨花が逃げ切れる可能性などなかった。
でも、それでもあがくことしか、梨花にはできない。
「冗談じゃないわ、こんな所で終われないわよ……っ」
振り返ることなくただ前を見て、梨花は必死に走り続けた。
ネリネも無言で梨花を追う、その距離がどんどん詰まっていくことに対する罪悪感を勿論彼女だって感じている。
それを上回る目的達成への意志だけが、ネリネを凶行へと走らせていた。
……そして、そんな彼女等を見つめるもう一つの視線。
杉並もまた、無言で二人の後を追うのだった。
結論から言うと、事はやはり予想通りの展開を迎えた。
取り押さえられる梨花と、マウントポジションを決め梨花に槍をつきつけるネリネという図式はあっという間に構成される。
(もう、だから子供の体ってイヤなのよ……っ!)
心の中で毒づく梨花は、上がった息を隠そうともせず大きく呼吸をし続けていた。
それで少しでも同情してもらえれば儲けものである、実際息一つ乱していないネリネと自分の差という物を梨花は懸命に表現しようとしていた。
しかし、それでも表情を凍らせたネリネに隙は現れない。
無言で槍を振り上げるネリネ、梨花の心に焦りが走る。
「……みぃ」
発せられるのはお決まりの台詞、梨花は最後の最後で命乞いを試みた。
「みぃ!」
ネリネの眉間に皺がよる、梨花はじたばたともがきながら懸命に訴える。
自分が弱者であることを、か弱い女の子だということをとにかくアピールするしかない、それで隙でも作らない限り梨花には勝機を作ることなどできなかった。
もしかしたら意味のないもので終わるかもしれなかったそれ、しかし諦めないでひたすら鳴き続けていた梨花の目の前でついに変化が起こり出す。
「……っ」
仮面が溶けかける、無表情だったネリネの顔に戸惑いの色が生まれ始めた。
ここがチャンスだと粘りを上げる、梨花はさらに声を張り上げネリネの感情を揺さぶりにかかった。
「みぃ、みぃ!」
「っ!」
「………みぃ、みぃみぃ!!」
「ごめんなさい……」
しまいには同情の言葉さえも口にするネリネの変容に、梨花は彼女の甘さを見る。
それは優しさと言い表してもいいかもしれない、しかしこの場でそんなものを出してくるネリネの人の良さは現時点では仇以外の何物でもなかった。
槍を振り下ろすことに対し躊躇しだすネリネ、今がチャンスだと梨花はもがいていた際咄嗟につっこんだスカートのポケットから取り出したそれをネリネに向かって噴射した。
「みぃー……なーんてね」
「え、きゃ、きゃあ?!!」
怯えて泣き叫ぶ一歩手前と言った梨花の表情が一瞬で変化する、その異変をネリネが悟りきる暇さえ与えず梨花はすぐさま行動に出た。
プシャーっと勢いよく放たれた霧状の液体を顔面に受け怯むネリネ、生まれた隙を有効活用するべく梨花はとっとと体勢を整え直す。
「ふふっ、やっぱり油断したわね。こういう使い方なら、この容姿は本当に役に立つわ。誰でもこの手にひっかかるもの」
「いた、痛っ!! ……あ、あなた一体何を……!」
ほくそ笑む梨花に対し、痛みと共に溢れる涙が止められない状況に陥ったネリネは混乱するばかりである。
それが催涙スプレーだとネリネが気づく前に、梨花は離脱する準備を整えた。
「しばらく目は使えないわよ、残念だったわね。……ふんっ、非力な女の子に襲いかかった罰よ」
「ま、待ちなさい!」
そんなネリネの叫びを背に受けながら、梨花は振り返ることなくこの場から脱出するのだった。
「とんだ、失態です……」
視力の回復したネリネが、傍らに落としてしまった永遠神剣を拾い上げたのはそれから数分が経ってのことだった。
勿論周囲に梨花のいる気配などある訳ない、完全な凡ミスによる失態はネリネのプライドに一直線のヒビを入れる。
ネリネ自身、やはり相手がいたいけな少女だったということで気を緩めていた面があるのも自覚するしかないが、その結果がこれであるならば後悔してもしきれない。
ぎゅっと握りこぶしを作るネリネの表情は苦渋に満ちたものである、何せシアのために……そして稟のためにも刃を振るうという誓いを立てた矢先がこれである。
自分の不甲斐なさに対し、ネリネはやりどころのない怒りが込みあがっていくのを抑えることができないでいた。
「もう、容赦しません……例えどのような方が現れましても、全力で薙ぎ払ってみせます」
瞳を閉じて精神を統一するネリネ、再び眼を開けた彼女の瞳に映るのは真の殺戮者になることを決意した修羅のそれであった。
……梨花がどちらの方面に逃げたかを判断する材料をネリネは持ち得ない、また今更追うことも不可能であろうと判断したネリネは自分の進路を南部へと取った。
元々辿ってきた道を戻るのも仕方ないという、それだけの理由で、である。
しかしそれは、これでネリネがしばらくの間梨花に出会うことは無いことにないことを決定付ける選択となった。
そう、梨花が逃げるのに取った進路は北部であった。……結局、運を味方につけたのは最後まで梨花だった。
去っていくネリネの背中を見やるのは、ここまで一切の主張を表に出さなかった杉並である。
すぐ傍のゴミ山にて、杉並はじっと一連の様子を窺い続けていた。
自身の危険を顧みてまで見知らぬ少女を助けようとするような善人でもない杉並は、あそこで梨花が尽きたならば尽きたでまた新しい策を考えるつもりであった。
しかし予想を裏切り、あの一見何の害も無さそうな少女は見事な反撃を繰り出したのだ。
あのようなやり口でネリネを退けた梨花を杉並も評価するしかない、人は見かけによらないものだと杉並は改めて認識するのだった。
梨花が逃げて行ったのは北部であり、今まで彼女と二人杉並も歩いてきた道である。
既に地図で確認を取っている、あの経路だと最終的にはC-1を通らなければいけないことは杉並も分かっていた。
相手は小さな女の子ということもあり追いつくことなら容易くできるだろう、そう踏んだ杉並はとりあえずネリネの観察を続けることにした。
杉並が今最も求めているのは「情報」である。
遠目から見てもネリネが危険人物だということは分かりきった事実であるが、杉並はそれを逆手に取り何か良い案を出せないかと必死に頭を動かしていた。
そこで杉並が思ったのが、力のある者の近くにいた場合自身がそのような人間と衝突した際に巻き込んで双方を処理できるかもしれないという一つの可能性だった。
ゴミ山の中から鉄パイプを見つけ、徐にそれを拾い上げる杉並の表情はひどく硬い……梨花がネリネを撃退できたのは、あのスプレーというアイテムがあったからこそである。
そう考えると利便性に優れたアイテムや武器の類を持たない杉並にとって、「いざという時」に対する警備を固めなければいけないという危機感は、否が応でも沸いてくるものだった。
……これ以上悩んでいる時間はない、既にネリネの背中も遠いものになっている。
一応安全策、いつでも追いつくことの出来る梨花か。
一か八か、明らかに殺し合いに乗っていると判断できるネリネか。
結局、杉並が選んだ尾行の相手は………
【A-2 スクラップの山/1日目 黎明】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:催涙スプレー@ひぐらしのなく頃に祭】
【所持品:支給品一式、ランダム武器2つ不明】
【状態:健康】
【思考・行動】
1)部活メンバー及び羽生の捜索とL5発症の阻止
2)赤坂・大石の捜索
【備考】
皆殺し編直後の転生
ネリネを危険人物と判断(容姿のみの情報)
※梨花は北部(A-1方面)へと逃げました。
【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身”】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康、催涙スプレーの効果は何とか消えた】
【思考・行動】
1:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し(もう容赦は一切しない)
2:稟を守り通して自害。
【備考】
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。
※永遠神剣“献身”によって以下の魔法が使えます。
尚、使える、といっても実際に使ったわけではないのでどの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー 回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、防御力を高める。
ハーベスト 回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。
古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※ネリネは南部(A-3方面)へ移動を開始しました。
【杉並@D.C.P.S.】
【装備:鉄パイプ】
【所持品:支給品一式、首輪探知レーダー】
【状態:健康】
【思考・行動】
1)主な目的は情報収集
2)他者と行動を共にするつもりは現状無い
【備考】
レーダーは半径500mまでの作動している首輪を探知可能。爆破された首輪は探知不可
古手梨花を要注意人物・ネリネを危険人物と判断(共に容姿のみの情報)
※杉並がどちらの尾行をするかは後続の方にお任せします。
|040:[[希望は爆発と共に]]|投下順に読む|042:[[宣戦布告]]|
|039:[[利用する者される者]]|時系列順に読む|042:[[宣戦布告]]|
|012:[[動く者、動かざる者]]|古手梨花|071:[[未知との遭遇]]|
|016:[[彼女の“献身”]]|ネリネ|048:[[『其処』に似たこの場所で― Exist ―]]|
|012:[[動く者、動かざる者]]|杉並|048:[[『其処』に似たこの場所で― Exist ―]]|
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**彼女の決断、彼の選択 ◆7NffU3G94s
月の光が当たりを照らす、古手梨花は呆然とうず高く積まれたゴミ山を眺めていた。
彼女の求める人物である竜宮レナ、梨花はレナが向かいそうな場所をここと定め、真っ先に走ってきたというのに……彼女を出迎えたのは、レナとは似つかない容貌の少女であった。
「……こんな小さな子まで、参加させられてるんですね」
風が少女の長くて美しいストレートの髪を揺らす、大人びた表情だけ見れば梨花は彼女の年齢を誤認してしまったかもしれない。
そして、後れ毛の間から覗く特徴的な耳。『人間ではない』ネリネの証が目に入り、梨花は顔を歪ませた。
梨花はこのような特徴的な耳を見たことがなかった、しいて言うなら北条沙都子と二人で見るアニメにでも出てくるキャラクターのような印象を得る。
……もしくは、羽生のような神々しい存在。そんな可能性しか、梨花は見出すことが出来ない。
だがネリネが何者なのかという疑問など、梨花にも……そして、当の本人ネリネにさえも、今は全く意味のない類のものである。
お互いが首輪をつけているということ、バトルロワイアルの参加者を表すあるそれが二人を同等な立場であることを示していた。
「どうやら勘は外れたみたいね」
一つ息を吐きながら呟く梨花、話し合いの余地があるならば梨花は向かい合う少女に猫なで声を上げいつも通り媚を売るつもりだった。
しかし予想以上に冷たい視線が梨花を射抜こうとするかの如く向かってくる、梨花は甘い考えを捨てるしかなかった。
また、それ以上に梨花にとって脅威に思えたのが、ネリネの手にする槍であった。
美しい装飾は綿流しの祭の際梨花が手にする鍬を彷彿させる、梨花はそれに対し妙なプレッシャーを感じていた。
トンッと身軽な動作でネリネがゴミ山から舞い降りる構図、槍の出す雰囲気と相まってそれは本当に美しい情景を描きだす。
空からは降り注ぐ月の光、それを受けたネリネが少しずつ梨花を追い詰めるように歩みだした。
「ごめんなさい、最初に謝らせてください……容赦をする訳には、いかないんです」
それは宣言であり、梨花がネリネに協力を求められないと理解するしかなくなる決定打でもあり。
言葉が終わると同時に、梨花は脱兎の如く一目散に今来た道を戻るように走り出していた。
追ってくる足音は勿論ネリネのもの、体格差だけを考えても梨花が逃げ切れる可能性などなかった。
でも、それでもあがくことしか、梨花にはできない。
「冗談じゃないわ、こんな所で終われないわよ……っ」
振り返ることなくただ前を見て、梨花は必死に走り続けた。
ネリネも無言で梨花を追う、その距離がどんどん詰まっていくことに対する罪悪感を勿論彼女だって感じている。
それを上回る目的達成への意志だけが、ネリネを凶行へと走らせていた。
……そして、そんな彼女等を見つめるもう一つの視線。
杉並もまた、無言で二人の後を追うのだった。
結論から言うと、事はやはり予想通りの展開を迎えた。
取り押さえられる梨花と、マウントポジションを決め梨花に槍をつきつけるネリネという図式はあっという間に構成される。
(もう、だから子供の体ってイヤなのよ……っ!)
心の中で毒づく梨花は、上がった息を隠そうともせず大きく呼吸をし続けていた。
それで少しでも同情してもらえれば儲けものである、実際息一つ乱していないネリネと自分の差という物を梨花は懸命に表現しようとしていた。
しかし、それでも表情を凍らせたネリネに隙は現れない。
無言で槍を振り上げるネリネ、梨花の心に焦りが走る。
「……みぃ」
発せられるのはお決まりの台詞、梨花は最後の最後で命乞いを試みた。
「みぃ!」
ネリネの眉間に皺がよる、梨花はじたばたともがきながら懸命に訴える。
自分が弱者であることを、か弱い女の子だということをとにかくアピールするしかない、それで隙でも作らない限り梨花には勝機を作ることなどできなかった。
もしかしたら意味のないもので終わるかもしれなかったそれ、しかし諦めないでひたすら鳴き続けていた梨花の目の前でついに変化が起こり出す。
「……っ」
仮面が溶けかける、無表情だったネリネの顔に戸惑いの色が生まれ始めた。
ここがチャンスだと粘りを上げる、梨花はさらに声を張り上げネリネの感情を揺さぶりにかかった。
「みぃ、みぃ!」
「っ!」
「………みぃ、みぃみぃ!!」
「ごめんなさい……」
しまいには同情の言葉さえも口にするネリネの変容に、梨花は彼女の甘さを見る。
それは優しさと言い表してもいいかもしれない、しかしこの場でそんなものを出してくるネリネの人の良さは現時点では仇以外の何物でもなかった。
槍を振り下ろすことに対し躊躇しだすネリネ、今がチャンスだと梨花はもがいていた際咄嗟につっこんだスカートのポケットから取り出したそれをネリネに向かって噴射した。
「みぃー……なーんてね」
「え、きゃ、きゃあ?!!」
怯えて泣き叫ぶ一歩手前と言った梨花の表情が一瞬で変化する、その異変をネリネが悟りきる暇さえ与えず梨花はすぐさま行動に出た。
プシャーっと勢いよく放たれた霧状の液体を顔面に受け怯むネリネ、生まれた隙を有効活用するべく梨花はとっとと体勢を整え直す。
「ふふっ、やっぱり油断したわね。こういう使い方なら、この容姿は本当に役に立つわ。誰でもこの手にひっかかるもの」
「いた、痛っ!! ……あ、あなた一体何を……!」
ほくそ笑む梨花に対し、痛みと共に溢れる涙が止められない状況に陥ったネリネは混乱するばかりである。
それが催涙スプレーだとネリネが気づく前に、梨花は離脱する準備を整えた。
「しばらく目は使えないわよ、残念だったわね。……ふんっ、非力な女の子に襲いかかった罰よ」
「ま、待ちなさい!」
そんなネリネの叫びを背に受けながら、梨花は振り返ることなくこの場から脱出するのだった。
「とんだ、失態です……」
視力の回復したネリネが、傍らに落としてしまった永遠神剣を拾い上げたのはそれから数分が経ってのことだった。
勿論周囲に梨花のいる気配などある訳ない、完全な凡ミスによる失態はネリネのプライドに一直線のヒビを入れる。
ネリネ自身、やはり相手がいたいけな少女だったということで気を緩めていた面があるのも自覚するしかないが、その結果がこれであるならば後悔してもしきれない。
ぎゅっと握りこぶしを作るネリネの表情は苦渋に満ちたものである、何せシアのために……そして稟のためにも刃を振るうという誓いを立てた矢先がこれである。
自分の不甲斐なさに対し、ネリネはやりどころのない怒りが込みあがっていくのを抑えることができないでいた。
「もう、容赦しません……例えどのような方が現れましても、全力で薙ぎ払ってみせます」
瞳を閉じて精神を統一するネリネ、再び眼を開けた彼女の瞳に映るのは真の殺戮者になることを決意した修羅のそれであった。
……梨花がどちらの方面に逃げたかを判断する材料をネリネは持ち得ない、また今更追うことも不可能であろうと判断したネリネは自分の進路を南部へと取った。
元々辿ってきた道を戻るのも仕方ないという、それだけの理由で、である。
しかしそれは、これでネリネがしばらくの間梨花に出会うことは無いことにないことを決定付ける選択となった。
そう、梨花が逃げるのに取った進路は北部であった。……結局、運を味方につけたのは最後まで梨花だった。
去っていくネリネの背中を見やるのは、ここまで一切の主張を表に出さなかった杉並である。
すぐ傍のゴミ山にて、杉並はじっと一連の様子を窺い続けていた。
自身の危険を顧みてまで見知らぬ少女を助けようとするような善人でもない杉並は、あそこで梨花が尽きたならば尽きたでまた新しい策を考えるつもりであった。
しかし予想を裏切り、あの一見何の害も無さそうな少女は見事な反撃を繰り出したのだ。
あのようなやり口でネリネを退けた梨花を杉並も評価するしかない、人は見かけによらないものだと杉並は改めて認識するのだった。
梨花が逃げて行ったのは北部であり、今まで彼女と二人杉並も歩いてきた道である。
既に地図で確認を取っている、あの経路だと最終的にはC-1を通らなければいけないことは杉並も分かっていた。
相手は小さな女の子ということもあり追いつくことなら容易くできるだろう、そう踏んだ杉並はとりあえずネリネの観察を続けることにした。
杉並が今最も求めているのは「情報」である。
遠目から見てもネリネが危険人物だということは分かりきった事実であるが、杉並はそれを逆手に取り何か良い案を出せないかと必死に頭を動かしていた。
そこで杉並が思ったのが、力のある者の近くにいた場合自身がそのような人間と衝突した際に巻き込んで双方を処理できるかもしれないという一つの可能性だった。
ゴミ山の中から鉄パイプを見つけ、徐にそれを拾い上げる杉並の表情はひどく硬い……梨花がネリネを撃退できたのは、あのスプレーというアイテムがあったからこそである。
そう考えると利便性に優れたアイテムや武器の類を持たない杉並にとって、「いざという時」に対する警備を固めなければいけないという危機感は、否が応でも沸いてくるものだった。
……これ以上悩んでいる時間はない、既にネリネの背中も遠いものになっている。
一応安全策、いつでも追いつくことの出来る梨花か。
一か八か、明らかに殺し合いに乗っていると判断できるネリネか。
結局、杉並が選んだ尾行の相手は………
【A-2 スクラップの山/1日目 黎明】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:催涙スプレー@ひぐらしのなく頃に祭】
【所持品:支給品一式、ランダム武器2つ不明】
【状態:健康】
【思考・行動】
1)部活メンバー及び羽入の捜索とL5発症の阻止
2)赤坂・大石の捜索
【備考】
皆殺し編直後の転生
ネリネを危険人物と判断(容姿のみの情報)
※梨花は北部(A-1方面)へと逃げました。
【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身”】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康、催涙スプレーの効果は何とか消えた】
【思考・行動】
1:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し(もう容赦は一切しない)
2:稟を守り通して自害。
【備考】
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。
※永遠神剣“献身”によって以下の魔法が使えます。
尚、使える、といっても実際に使ったわけではないのでどの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー 回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、防御力を高める。
ハーベスト 回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。
古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※ネリネは南部(A-3方面)へ移動を開始しました。
【杉並@D.C.P.S.】
【装備:鉄パイプ】
【所持品:支給品一式、首輪探知レーダー】
【状態:健康】
【思考・行動】
1)主な目的は情報収集
2)他者と行動を共にするつもりは現状無い
【備考】
レーダーは半径500mまでの作動している首輪を探知可能。爆破された首輪は探知不可
古手梨花を要注意人物・ネリネを危険人物と判断(共に容姿のみの情報)
※杉並がどちらの尾行をするかは後続の方にお任せします。
|040:[[希望は爆発と共に]]|投下順に読む|042:[[宣戦布告]]|
|039:[[利用する者される者]]|時系列順に読む|042:[[宣戦布告]]|
|012:[[動く者、動かざる者]]|古手梨花|071:[[未知との遭遇]]|
|016:[[彼女の“献身”]]|ネリネ|048:[[『其処』に似たこの場所で― Exist ―]]|
|012:[[動く者、動かざる者]]|杉並|048:[[『其処』に似たこの場所で― Exist ―]]|
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