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守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(後編)◆guAWf4RW62


蒼の妖精と、この島に於けるラスト・ガンナー白鐘沙羅が再度衝突しようとしている頃。
時を同じくして、梨花とあゆも熾烈な戦いを繰り広げていた。

「ほら、どうしたのさ? でかい口叩いてた癖にこの程度か?」
「……勝手に吼えてなさい。すぐに目にモノ見せてやるわ」

罵倒の言葉を浴びせられつつも、梨花はベレッタM92Fのトリガーを引き絞る。
しかし先程撃たれた左肩の傷が影響して、思うような位置に銃弾を撃ち込めない。
見当違いの方角に放たれる銃弾は、あゆの身体を掠めすらしなかった。

「…………ッ!!」

今度はあゆのS&W M10が火を噴いて、梨花の傍にあるコンクリートの破片が弾け飛んだ。
子供並の身体能力しか持たぬ梨花は、塔の残骸を遮蔽物として利用する事で、何とか命を繋いでいた。
対するあゆは遮蔽物を利用するまでもなく、楽々と梨花の銃撃を躱している。
それなりに場数を踏んでいるあゆと、まともな銃撃戦を初めて経験する梨花では、銃撃の精度が違い過ぎるのだ。

あゆは前傾姿勢を保ったまま、円を描くような軌道で走り回り、徐々に梨花との距離を縮めてゆく。
その間にも梨花が、遮蔽物の影から数度に渡って発砲したが、やはり当たる気配は無い。
そして両者の間合いが五メートル程まで近付いた時、梨花のベレッタM92Fが弾切れを迎えた。

「……次っ、――――!」

弾切れを予測していた梨花は、すかさず鞄からミニウージーを取り出そうとした。
しかし直ぐにその動作を中断して、形振り構わず大地を蹴って離脱する。
その一秒後には、あゆが遮蔽物の裏側にまで回り込んで来ていた。

「――逝けや!!」

あゆが握り締めたS&W M10の銃口から、連続して銃弾が撃ち放たれる。
早めの回避行動が功を奏して、梨花は何とか銃撃を躱す事に成功した。
窮地を凌いだ梨花は、そのままあゆに飛び掛る。
あゆも直ぐに銃を構え直そうとしたが、僅かに梨花の方が早い。

「……たああぁぁぁぁあああああっっ!!」
「――――くあっ!?」

梨花はあゆの左足に組み付いて、思い切り両腕で引っ張った。
あゆは身体を支え切れずに、雑草が生い茂る地面へと背中から倒れ込む。
間髪置かずに梨花は次の動作へと移行し、馬乗りの形であゆに覆い被さった。

「こんな程度で、私を抑え込めるとでも……」
「――聞きなさいっ!!!」

あゆが強引に撥ね退けようとしてきたが、その前に梨花は大声で叫んだ。
既に戦いは始まってしまっているが――未だ、誰一人として死んではいない。
今なら取り返しは付く筈だ。

「ことみは人殺しなんかしていない。私はソレが事実だという『証拠』を、ちゃんと持っているわ」
「……どういう事さね?」

当然の如く訝しげな声が返って来る。
だが梨花の云っている事は、その場凌ぎの嘘偽りなどではない。
互いの吐息を感じ取れる程の距離で、梨花はあゆの瞳をじっと見詰めながら、静かに言葉を続けてゆく。

「私が持っているノートパソコンにはね、『殺害者ランキング』という物が付いてるのよ。
 それさえ見れば、ことみが殺人者かどうかが分かるわ」
「……見せてみろや」

梨花はこくりと頷くと、あゆの上から身体を退けて、パソコンを立ち上げる作業へと移った。
雑草を掻き分けて、空いた場所にノートパソコンを配置する。
ノートパソコンの電源を入れて、あゆと肩を並べたまま暫く待つ。

(これで大丈夫。きっと誤解は解ける筈よ)

言葉による説得はまるで効果が無かったが、物証となれば話は別。
実際に証拠を見せ付ければ、流石にあゆも信じざるを得ないだろう。
梨花は説得の成功を確信しつつ、『殺害者ランキング』のアイコンをダブルクリックしたのだが――
次の瞬間梨花の目に入ったのは、信じられないような光景だった。



――殺害者ランキング八位、一ノ瀬ことみ。
――殺害した相手、双葉恋太郎、時雨亜沙。



「……嘘、何で――――」

梨花は自身の表情が、奇妙な形へと歪んでいくのを感じていた。
ノートパソコンに表示された文字は、ことみが殺人者であるという情報を示していたのだ。

「――はっ、嘘吐きの仲間は嘘吐きって事かい」

怒りの表情を浮かべたあゆが、冷たい銃口をこちらに向けてくるが、それさえも梨花の視界には入らない。
梨花は混乱し切った頭を懸命に鎮めて、必死に思案を巡らせていた。

有り得ない、これは絶対に有り得ない。
ことみは殺人遊戯を肯定するような人間では無い。
第一ことみが殺人者で無い事は、以前ランキングを調べた時に確認してあるのだ。
なのに、一体どうして――そこまで考えた梨花は、一つの推論に思い至った。

「……鷹野だわ。鷹野が私達を陥れる為に、嘘の情報を流したのよ!」

恐らくは、それで間違いない筈だった。
首輪すらも解除してのけた自分達は、鷹野からすれば完全な抹殺対象。
執念深い鷹野ならば、あらゆる手段を用いて、様々な角度から攻撃を仕掛けてくるだろう。
ノートパソコンに嘘の情報を流す事くらい、十分に有り得る話だった。
しかしそのような推論、今のあゆに理解して貰える筈も無い。

「今更言い訳なんかしても、通用すると思うか? もう終わりにしようや」
「…………っ」

最早完全に説得は不可能。
銃口を向けられているこの状態では、反撃も間に合わない。
アセリアも、疲れ果てている今の状態では、沙羅を振り切って助けに来るのは困難だろう。
それは梨花とあゆ、双方に共通した見解。

「糞虫――最後に何か、言い残す事はあるか?」

あゆは時間的猶予があると判断し、最後の問いを投げ掛けた。
金色夜叉の眼光が、標的を真っ直ぐに射抜く。
死を目前に控えた梨花が語るのは、弁明の言葉か。
それとも、理不尽な襲撃に対する罵倒の言葉か。
否――そのどちらでも無かった。

「貴女は、人の手で奇跡を起こせると思う? 魔法みたいな超常現象の事を云ってるんじゃないわ。
 定められた運命を打ち破るような、本物の奇跡を起こせると思う?」
「…………あん?」

予想外の言葉が返ってきて、あゆは一瞬呆けたような表情を浮かべた。
余り悠長に考えている暇は無い。
直ぐに鋭い表情へと戻って、自分なりの答えを口にする。

「……無理さね。運命なんてモノに干渉出来るのは、本物の神だけだ」

あゆが答えたのは、至極真っ当な回答だ。
この島に於いて、あゆは様々な超常現象を目にしたものの、只の人間に奇跡は起こせないと思っていた。
しかしそこで、梨花が唐突に微笑を浮かべた。

「……普通なら、そう考えるでしょうね。でも――私は信じてる」

梨花は告げる。
百年を超える人生の中で学んだ、『奇跡の起こし方』を。


「――何よりも強い意思と、仲間を信じる心さえあれば、奇跡だって起こせると信じてる!!!」


梨花の魂から漏れ出た叫びが、周囲一帯に木霊する。
その直後、あゆは後方から近付いてくる足音に気付いた。
慌てて対応しようとするが、遅い。


「ガッ――――!?」


背中に強い衝撃を受けたあゆは、S&W M10を取り落とす。
驚愕と共に振り返ると、そこには――ことみの姿。


「――――い、一ノ瀬ええええええぇぇッッ!!!」
「梨花ちゃん、今なのっ!!!」


幾ら負傷しているとは云え、仲間の危機を前にしては、隠れてなどいられない。
故にことみは傷付いた足を酷使して、あゆの背中に体当たりしたのだ。
即座に梨花は反応して、ベレッタM92Fに銃弾を装填すると、あゆの脇腹目掛けて撃ち放った。
強固な意志を籠められし銃弾が、金色の夜叉へと食らい付く――!!

「……がああぁぁぁあああああああああっ!!」

この状況、この距離では狙いを外す筈が無い。
着弾による衝撃は半端で無く、あゆの身体がくの字に曲がって、後方へと吹き飛ばされてゆく。
あゆはそのまま、背中から地面に沈んでいった。




「殺したの……?」
「いいえ、ちゃんと急所は外してあるわ。後で治療すれば多分助かる筈よ」

梨花がそう答えると、ことみは安堵したように息を吐いた。
ことみにとって、あゆは謂れの無い言い掛かりを付けて来た、憎むべき敵だ。
とは云え、幾ら敵であろうとも、同じ人間である事に変わりは無い。
殺さずに済むのならば、それが最良だった。

「さて、次は――あっちを何とかしないとね」

梨花はそう云って、ベレッタM92Fを深く構えた。
銃口が向いている方角には、アセリアと戦っている最中の沙羅の姿。
アセリアが踏み込む瞬間に合わせて、引き金を絞る。
梨花の放った弾丸は、沙羅の足元に着弾して土埃を舞い上げた。

「――――ッ!?」

突如銃撃を受けた沙羅が、驚愕に一瞬硬直する。
それはアセリアにとって、勝負を決めるのに十分過ぎる程の時間。
仲間によって作り出された好機を活かすべく、蒼の妖精は勇猛果敢に斬り掛かる。

「ぃやあああああっ!!」
「しまっ……」

雌雄を決す一閃は、疾く速く。
雄叫びと共に振るわれた大剣が、沙羅のワルサー P99を弾き飛ばした。
更にアセリアは、体勢を立て直す時間など与えんと云わんばかりに、沙羅の左腕を掴み取る。
そのまま強引に押し倒して、問答無用で関節を極めた。

「くっ……放しなさいよ!」

必死に沙羅が暴れ回るが、この状態になってしまっては如何ともし難い。
相手が只の素人ならばともかく、今沙羅を抑え付けているのは、数多くの死地を潜り抜けてきた強者なのだ。
飛び抜けた怪力など持たぬ沙羅では、脱出しようが無い。

取り敢えず、沙羅を無力化するという目的は果たされた。
しかし未だ、解決すべき問題はもう一つ残っている。

「ちゃんと話を聞いて欲しいの。私は――」
「嫌よ! 恋太郎を殺した奴の話なんて、聞きたく無い!」

ことみが弁明しようとしたものの、沙羅はまるで聞く耳を持とうとしない。
誤解の解消。
事態を収束させるには、それが絶対必須条件なのだが、今の沙羅を説き伏せるのは容易な事では無い。

「……違う、コトミはそんな人間じゃない。一緒に居た私には分かる……コトミは、とても優しい」
「そんなのアテにならないわよ。表面上では幾ら善人面してたって、裏では何を考えてるか分からない。
 あの女――月宮あゆは無害そうな顔をしてた癖に、土壇場で私と瑛理子を裏切ったんだから!」

アセリアの言葉も、疑心暗鬼に陥っている今の沙羅には届かない。
嘗て裏切り行為に遭った時の怒りと、二見瑛理子の死を知った時の無念。
それが、沙羅の疑念をより一層駆り立てる。

現状は、両者共にある意味手詰まりだと云える。
アセリア達からすれば、説得は困難。
沙羅からすれば、独力での脱出は不可能。
即ち、場を大きく動かすには、外部からの干渉が必要だ。
そして、それは何の前触れも無く起こった。


「ッああああ――――!?」

銃声がしたかと思った次の瞬間には、梨花の身体が揺らいでいた。
左足を撃ち抜かれた梨花は踏み留まる事が出来ず、ゆっくりと地面に崩れ落ちてゆく。
その最中に梨花は見た――陽が落ちた草原の中、大空寺あゆがS&W M10片手に屹立しているのを。

「……やってくれたねえ、糞虫共。でも、まだまだ詰めが甘いさね」

あゆは地面に座り込んだ梨花を見下ろしながら、勝ち誇ったように言い放った。
その姿は、先程鉛球を撃ち込まれた人物のものだとは到底思えない。
状況を理解出来ぬことみが、意図せずして驚愕の声を漏らした。

「そんな、どうして……」
「忘れたのかい、一ノ瀬。私が佐藤に撃たれた時、どうして助かったのかを」
「……ッ、まさか――」

そこまで云われて、ことみは何故あゆが五体満足でいるのかを理解した。
この殺人遊戯に於ける、最高の防具――防弾チョッキ。
あゆは防弾チョッキで胴体部を守っていたからこそ、こんなにも早く戦線に復帰する事が出来たのだ。
これは完全に、ことみの失策。
もう少し慎重に思案を巡らせていれば、防げた筈の事態。

「じゃあな――嘘吐き女。恨むんなら精々、その糞虫に騙された自分の愚かさを恨んでくれや」

あゆは冷たく告げると、梨花の頭部に向けてS&W M10を構えた。
一番目にことみを狙うような真似はしない。
一発の銃弾で即死させるなんて、絶対にしてやらない。
最大の怨敵であることみは、出来る限り苦痛を与えてから殺したい所。
故にまずは、ことみを擁護するような愚か者達から排除する。

「……リカァァァッッ!!」

アセリアが無我夢中で駆け出したが、梨花との距離は二十メートル以上もある。
とても、間に合わない。
冷え切った風が吹き荒れる草原の中、あゆは何の躊躇いも無く引き金を引いた。




「……………………え?」




驚きの声は、きっと一人を除いた全員のものだ。
梨花の頭部には、今も掠り傷一つ付いていないし、他の箇所に被弾した様子も無い。
では放たれた銃弾は、一体どうなったと云うのか。


「――やっと、守れた」


ぼそりと、少女が声を漏らした。
腹部を真っ赤に染め上げながらも、満足気な笑みを浮かべている。
定められた死の運命を覆した、心優しき少女の名は――

「こ、ことみぃぃぃぃぃぃ!!!!」

叫びを上げるや否や、梨花が直ぐにことみの元へ駆け寄ろうとした。
しかしことみは両の足で屹立したまま、手で梨花の動きを制した。
視界もまともに定まらない状態で、それでも思い切りあゆを睨み付ける。

「私の事は……もう良いの。疑いたいのなら、勝手に……疑えば良い。殺したいのなら……殺せば良い。
 その代わり――」

まだ倒れられない――今にも崩れ落ちそうな身体を、気力だけで支える。
呼吸器官から湧き上がる血液を強引に飲み込んで、精一杯の声で叫ぶ。


「これ以上、皆に……手を出さないで!! 梨花ちゃんが! アセリアさんが! どれだけ優しい人かも知らない癖に!
 私の……大切な仲間を傷付けないでッ!!!」


それで、限界。
云い終えると、ことみは静かに地面へと崩れ落ちて行った。
だが彼女の言葉は確かに、あゆの耳にまで届いていた。

「一ノ瀬――お前、何やってんだ…………? 自分が撃たれちゃあ……今まで人を騙してきた意味が……無いさ……」

あゆは呆然とした表情をしたまま、弱々しく唇を震わせている。
目の前の光景が、正しく理解出来なかった。
否、理解したくなかった。
そんなあゆの態度に激昂した梨花が、張り裂けんばかりの叫びを上げる。

「貴女まだ分からないの!? ことみは……私を庇って撃たれたのよ!
 仲間の為に命を投げ出せるような人間が、悪人な訳無いじゃないっ!!」

自らの命を犠牲にしてまで、凶弾から仲間を庇う。
それは、正体を偽っているだけの殺人鬼ならば絶対に出来ない事だ。
自身の命よりも、仲間の命に重きを置いているからこそ可能な、献身的行動だ。
そのような行動を取る人間が、殺し合いに乗っている筈も無い。
疑う余地など、最早欠片も無い。

「ことみ……しっかり! しっかりして!!」

梨花はことみを抱き上げると、懸命にその身体を揺さぶった。
するとことみは静かに腕を伸ばして、梨花の頬に優しく手を添えた。

「ぁ……梨花ちゃん……無事で良かったの」

――もう助からない。
背中に回した梨花の手が、赤い血でべっとりと濡れていた。
出血量から判断するに、ことみが受けた傷は間違い無く致命傷だ。
だが仲間の安否のみを気遣うその姿、その言葉には、何の後悔も見受けられない。
在るのは、ようやく仲間を守り切れたという安堵だけだ。
そんなことみの姿を目の当たりにして、あゆも沙羅もようやく一つの事実を認めた。

「……アアアアァァァァァァァァアアアアアアアアアッッ!!!!」

あゆは天を仰ぐと、凄まじいまでの咆哮を上げた。
今まで自分が取っていた行動は、完全に間違いだったのだ。
自分は何の罪も無い人間に、何度も何度もあらぬ疑いを掛け、命まで奪ってしまったのだ。
自らの罪業に気付いたあゆは、只唯叫び続ける。

一方沙羅は、全速力でことみの元へ駆け寄って、徹頭徹尾に謝っていた。

「ごめん……本当にごめんッ! アンタは何も悪くなかったのに……。
 私、怒りで頭が真っ白になって……恋太郎の仇だって決め付けちゃって…………!」

どれだけ謝っても許されるような罪ではない。
一時の激情に身を任せ、善良な人間達に武器を向けた罪は、それ程に重い。
だというのに。

「……ううん。分かってくれれば……良いの。憎しみは、何も……生み出さないから……もう良いの。
 それよりも……これからは、……皆と仲良くして欲しいの」

ことみは罵声の一つすら浴びせる事無く、沙羅を許してのけた。
沙羅はボロボロと涙を零しながら、何度も首を大きく縦に振っている。
続けてことみは、あゆの方へと視線を向けた。
ことみにとっては、この島で一番因縁深い宿敵であるし、致命傷を負わされた相手でもある。
だが――ことみは憎しみを捨てて、ゆっくりと言葉を紡いでゆく。

「大空寺さんも……お願い。私の事はもう良いから……二度と同じ間違いを犯さないで。
 私の仲間を……傷付けないで」

決して、楽な選択では無かっただろう。
積み重ねられた遺恨は相当な物だろう。
それでもことみは聖母の様な慈悲を以って、あゆを許したのだ。

「……ああ。絶対……絶対にだッ! 私はお前の仲間を傷付けないし、誰にも傷付けさせはしない!!」

叫ぶあゆの瞳は、一目で見て取れる程に潤んでいる。
あゆがことみを見る目には、もう何の憎しみも篭められていない。
憎悪に囚われし金色夜叉は、余りにも不毛な戦いを経て、ようやく人間の少女へと戻っていた。

そこで、一行の下へと近付いて来る新たな足音。

「……ことみさんっ!? これは一体……」
「――ミズホッ!」

振り返ったアセリアの瞳には、宮小路瑞穂の姿が映っていた。
応急処置やオーラフォトンによる治療を施され、数時間に渡って休眠も取った瑞穂は、かろうじて動ける状態にまで回復したのだ。
瑞穂は直ぐに梨花から説明を受けて、大体の事情を把握した。


「聞いて、瑞穂さん……。私、四葉ちゃんも……恋太郎さんも……亜沙さんも……衛ちゃんも……守れなかった……。
 大好きだった朋也くんも……死んじゃった……。でも……今度こそ、やっと守れたの」

ことみはそう云ってから、傍らに居るアセリアの手を取った。
自身の血に染まった右手を使って、優しく握り締める。

「ごめん、コトミ……。私はコトミを……守れなかった……」
「良いの……、アセリアさんがどれだけ頑張ってくれたかは、ちゃんと分かってるから……。
 これからも……皆を守ってあげて欲しいの」
「うん……大丈夫。皆を守る……それが、私の生きる意味だから……っ」

少女の想いを受け取ったアセリアが、表情を歪めながらも、強く、強く、頷いた。
次にことみは空いてる方の手で、梨花の手をしっかりと握り締めた。

「ことみ……お願いだから死なないで! 後ちょっとじゃない……もう少しで、皆一緒に生きて帰れるのに!!
 私は嫌なの! 瑞穂も! ことみも! アセリアも! 誰か一人でも欠けたら嫌なのっ!!!」
「梨花ちゃん……泣かないで。別れは……何時か必ず、訪れるものなの。
 それでも……例え別れが悲しみを残したとしても……私達はそれ以上に大切な物を……築けたんだから……っ」
「ことみ……っ、ぅああ……うわああぁぁぁぁああああっ…………!!!」

ポタリポタリと、梨花が流した涙がことみの頬へと降り注ぐ。
その涙はとても悲しいものだったが、命の息吹を感じさせる暖かさも秘めている。
降り注ぐ涙は、ことみが確かに仲間を守り切った証だった。

「アセリアさん……梨花ちゃん……瑞穂さん……、みんな私の大切な仲間達。やっと……守れたの」

血に塗れし少女は、口許を綻ばせて誇らしげに微笑む。
身体の感覚は既に消えかけているけれど、この島で初めて仲間を守り切れた喜びが、ことみの胸を満たしていた。

「ねえ瑞穂さん……最後に一つ……お願いして良い?」
「良いわよ……。私に出来る事なら、何でも云って頂戴」
「初めて出会った時みたいに……ギュッとして欲しいの。瑞穂さんの胸の中は……とても暖かいから……」
「……ええ、分かったわ」

瑞穂は直ぐに両腕を伸ばして、ことみの身体を優しく抱き寄せた。
瑞穂の心中にあるのは、深い悲しみと、途方も無い程の後悔だ。
間に合わなかった。
ことみを守ると誓っていた筈なのに、気付いた時には全てが終わっていた。
そんな自分がどのような言葉を掛ければ良いのか、瑞穂には分からなかった。

「変だよね……私、ことみさんに、いっぱい……云わなきゃいけない事がある筈なのに……。
 なんにも……なんにも言葉が……出て、こないよ……」
「ううん……云わなくたって、私には分かるの。だって、瑞穂さんは……こんなにも優しいから……」

ことみの瞳が徐々に光を失い、ことみの声が、徐々に掠れて小さくなってゆく。
それでもことみは大きく息を吸い込んで、自身の想いを言葉へと変える。

「私は……沢山貰ったの。瑞穂さんから……沢山、温もりを貰ったの……。だからっ…………!」

――出会ったばかりの自分を慰めて、心の底から信じてくれたから。
――全てを失ってしまった自分に、再び温もりを与えてくれたから。
溢れんばかりの感謝と想いを籠めて、告げる。

「――ありがとう、瑞穂さん……大好きだったの」
「私も、っ…………、僕もだよっ……。僕もことみさんの事が……、本当に大好きだったよ……っ!」

瑞穂は止め処も無い涙を流しながら、ことみを一層強く抱き締める。
機能が停止した少女の神経では、もう瑞穂の抱擁を感じ取れないかも知れない。
それでも少女は、とても穏やかな微笑みを浮かべていた。

「ふふ……本当に、暖かいの……」


――やっと守れた大切な場所で、少女は眠る。
――大好きな仲間達に囲まれて、確かな暖かさを感じながら。




【一ノ瀬ことみ@CLANNAD 死亡】





【C-5 電波塔周辺の草原/二日目 夜】

【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
【装備:ワルサー P99 (2/16)】
【所持品1:S&W M36(3/5)、ワルサーP99の予備マガジン1 カンパン30個入り(10/10) 500mlペットボトル4本、双眼鏡、医薬品】
【所持品2:支給品一式×2、ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭、空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE、往人の人形】
【所持品3:『バトル・ロワイアル』という題名の本、、映画館にあったメモ、家庭用工具セット、情報を纏めた紙×12、ロープ】
【状態:疲労極大、深い罪悪感、肋骨にひび・強い決意・若干の血の汚れ・両腕に軽い捻挫、両肩間接に軽い痛み】
【思考・行動】
基本行動方針:一人でも多くの人間が助かるように行動する
0:まずは暫くの間休憩を取る
1:仲間を守る
2:混乱している人やパニックの人を見つけ次第保護。
3:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす
【備考】
※きぬを完全に信頼。
※あゆを完全に信頼。
※フロッピーディスク二枚は破壊。地獄蝶々@つよきすは刀の部分だけ谷底の川に流されました。
 エスペリアの首輪、地獄蝶々の鞘はC-6に放置。


【大空寺あゆ@君が望む永遠】
【装備:S&W M10 (1/6) 防弾チョッキ 生理用品、洋服】
【所持品:支給品一式x9、ホテル最上階の客室キー(全室分) ライター 懐中電灯、食料(パン等食べやすいもの)、大型レンチ】
【所持品2:、ヘルメット、ツルハシ、昆虫図鑑、スペツナズナイフの柄 虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-、ベレッタ M93R(10/21)】
【所持品3:オオアリクイのヌイグルミ@Kanon、Mk.22(3/8)、予備マガジン(8)x3】
【所持品4:ビニール傘、クマのぬいぐるみ@CLANNAD、スーパーで入手した品(日用品、医薬品多数)、タオル、i-pod、 分解された衛の首輪(NO.35)、情報を纏めた紙】
【所持品5:ローラースケート@Sister Princess、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数】
【状態:生理(軽度)、深い罪悪感、中度の肉体的疲労、肋骨左右各1本亀裂骨折、左脇腹に重度の打撲、強固な意志、左前腕打撲(多少は物も握れるようになってます】
【思考・行動】
行動方針:殺し合いに乗るつもりは無い。
0:まずは暫くの間休憩を取る
1:何があっても、ことみの仲間達(瑞穂、梨花、アセリア)を守り切る
2:殺し合いに乗った人間を殺す
3:甘い人間を助けたい
4:川澄舞に対する憎しみ
【備考】
※支給品一式はランタンが欠品 。
※生理はそれほど重くありません。ただ無理をすると体調が悪化します。例は発熱、腹痛、体のだるさなど
※きぬを完全に信頼。
※沙羅を完全に信頼。


【アセリア@永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【装備:永遠神剣第四位「求め」@永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、鉄パイプ、国崎最高ボタン、高嶺悠人の首輪、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-、
 情報を纏めた紙×2】
【状態:恐怖、肉体的疲労限界、魔力残量皆無(自身の存在維持のみ可能)、左肩と右わき腹に深めの切り傷(応急処置済み、動かすと痛み、鎧の該当部位損失)、
 全身に切り傷、右耳損失(応急手当済み)、左上腕部打撲、両腕に酷い筋肉痛、ガラスの破片による裂傷(応急手当済み)、首輪解除済み、「求め」と契約】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない、仲間を守る
0:まずは暫くの間休憩を取る
1:ミズホとリカを守る
2:無闇に人を殺さない(殺し合いに乗った襲撃者は殺す)
3:存在を探す
4:川澄舞を強く警戒
5:沙羅とあゆに対する複雑な思い
6:瑞穂に対する罪悪感
【備考】
※アセリアがオーラフォトンを操れたのは、「求め」の力によるものです
※制限の低下によって、「求め」と契約しました。 これにより全体的に能力が上昇しています。
※神剣との同調率は多少回復しましたが、マナが無い所為でスキルは使えませんし、身体能力も強化不可能です
※オーラフォトンブレイクについて
 「世界」のサポートスキル、広範囲に破壊を巻き起こし、相手の行動を封じる力を持つ。
※永遠神剣第二位「世界」について
 「求め」が、「誓い」のマナを吸収したことによって、本来の「世界」へと変化しました。
 しかし、覚醒直後に大量のマナを消費した事と、僅かに残っていた制限が加わって、現在は「求め」の姿に戻っています。
 それに伴い、「世界」の一部である青い刃が六本、アヴ・カムゥの残骸の傍に刺さっています。
 再び接触した際に変化が起こるかは不明です。


【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:ベレッタM92F(9mmパラベラム弾13/15+)、バーベナ学園女子制服@SHUFFLE! ON THE STAGE、豊胸パットx2】
【所持品1:支給品一式×9、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、斧、レザーソー、投げナイフ5本、
 フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)、茜手製の廃坑内部の地図(全体の2~3割ほど完成)、情報を纏めた紙】
【所持品2:バニラアイス@Kanon(残り6/10)、暗視ゴーグル、FN-P90の予備弾、電話帳】
【所持品3:カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、竹刀、トウカの刀@うたわれるもの、懐中電灯】
【所持品4:単二乾電池(×2本)バナナ(台湾産)(1房)】
【所持品5:手術用メス、パワーショベルカー(運転席のガラスは全て防弾仕様)】
【所持品6:破邪の巫女さんセット(弓矢のみ10/10本)@D.C.P.S.、乙女と大石のメモ、麻酔薬、硫酸の入ったガラス管x8、包帯、医療薬】
【状態:全身打撲、全身に魔法によるダメージ(応急処置済みだが、激しく動き回るのは不可能)、強い決意、即頭部から軽い出血(処置済み)、脇腹打撲、首輪解除済み】
【思考・行動】
基本:エルダー・シスターとして、悲しみの連鎖を終わらせる(殺し合いを止める)
0:まずは暫くの間休憩を取る
1:アセリアと梨花を守る
2:川澄舞を警戒
3:沙羅とあゆに対する複雑な思い
【備考】
※アセリアに性別のことがバレました。
※他の参加者にどうするかはお任せします。
※この島が人工島かもしれない事を知りました。


【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:猫耳&シッポ@ひぐらしのなく頃に祭、ミニウージー(16/25)
     ヒムカミの指輪(残り0回)@うたわれるもの 散りゆく者への子守唄 】
【所持品:風子の支給品一式(大きいヒトデの人形 風子特製人生ゲーム(元北川の地図) 百貨店で見つけたもの)】
【所持品2:支給品一式×2(地図は風子のバックの中)、チンゲラーメン(約3日分)、
     ノートパソコン、 ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7、出刃包丁、首輪の解除手順に記したメモ、
     食料品、ドライバーやペンチなどの工具、治療用具一式、他百貨店で見つけたもの 、首輪探知レーダー(現在使用不能)、車の鍵 】
【状態:頭にこぶ二つ、中度の肉体的疲労、精神的疲労小、左肩と左太股に銃創(動かせるが痛みを伴う)、強い決意、首輪解除済み】
【思考・行動】
基本:潤と風子の願いを継ぐ。
0:まずは暫くの間休憩を取る
1:瑞穂とアセリアを守る
2:きぬが心配
3:仲間を集めたい
4:沙羅とあゆに対する複雑な思い
【備考】
※皆殺し編終了直後の転生。鷹野に殺されたという記憶はありません。(詳細はギャルゲ・ロワイアル感想雑談スレ2>>609参照)
※梨花の服は風子の血で染まっています
※レーダーは現在電池切れ、 電池(単二)が何本必要かなどは後続の書き手に任せます
※ノートパソコンの微粒電磁波装置や現在地検索機能、レーダーは使用不可能(電波塔の半壊が原因)
※ノートパソコンの『殺害者ランキング』は、鷹野によって情報を改竄されました
※催涙スプレー、ゲルルンジュース×3、チンゲラーメン、コルトパイソン(.357マグナム弾2/6)が塔の南側に落ちています。


【備考】
※電波塔は破壊されました(正確には半壊状態だが、復旧はほぼ不可能)。破壊された時刻は18時前です
その為、首輪の機能は完全に無効化されています。
※瑞穂達のすぐ近くに赤色の車が停車しています(キーは刺さっている)。残燃料は70%程です。


206:守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 投下順に読む 207:牢獄の剣士(Ⅱ)――夢想歌――(前編)
206:守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 時系列順に読む 207:牢獄の剣士(Ⅱ)――夢想歌――(前編)
206:守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 宮小路瑞穂 We Survive(前編)
206:守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) アセリア We Survive(前編)
206:守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 一ノ瀬ことみ
206:守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 古手梨花 We Survive(前編)
206:守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 大空寺あゆ We Survive(前編)
206:守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編) 白鐘沙羅 We Survive(前編)






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