※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

第六回定時放送 ◆/Vb0OgMDJY


恐慌、
困惑、
激怒、
失望、
消沈、
様々な感情が私の中に溢れ出して、やがてそれは一つ文章を形作った。

(駄目だこいつら…早く何とかしないと…)

まるで熱病に冒されたかのように、激しい頭痛が襲い掛かって来る。
(まさか…)
驚愕が全身を支配して、指一本動かすことが出来ない。
(まさか……)
体中の力が抜けて、自然とコンソールに体が傾いて行く。
(本気で言っていたなんて……)
俯いて、両手で頭を抱えた。

何となく嫌な予感はしてはいた。
でも、筆談の内容までは解らないし、そんなことは無いだろうと思っていた。
口では最低限のことと、疑われない為の雑談を行い、肝心の内容はもっと確信に迫る物だと思っていた。
いや、言い直そう。
肝心の内容はもっと確信に迫る物だと『期待』していた。 が正しい。
……その期待はあっけなく裏切られた訳だけど……


(もう…駄目かも……)
全身を虚脱感と倦怠感が襲う。
いや、この程度で駄目だなんて本気で思ってないよ?
でも、
でもねぇ、
今一番期待できるチーム、ううん、今となっては唯一期待できるチームと言ってしまえるかもしれない人達から、こんなアホな意見が飛び出そうとは……。

(逆に、聞かないほうが楽だったかもしれないわね……)
さっきまで、
そう、ほんの数分前までは、この幸運に感謝していた。
首輪解除を期待でき、高い戦力を持つ、宮小路瑞穂、一ノ瀬ことみ、アセリアの三人と、
ノートパソコンを所持しており、羽入を通してこちらの意思を伝えられる相手、古手梨花。
この双方の遭遇は、間違いなく僥倖だった。
古手梨花の首輪を通して、宮小路瑞穂の声が届いて来るまでは。

あそこで彼女達が遭遇さえしていなければ、こんな絶望を覚えずに済んだかもかもしれない。
転送装置の影響で盗聴器が使用不能になった事で、希望を持ち続けられたかもしれない。
彼女達は真実に近い場所に居るという希望に浸り続ける事が出来たかもしれない。


……
…………
………………いや、落ち着こう、冷静に、COOLに、KOOLになれ鈴凛。
今なら、今だからこの程度で済んだ。
これから先、もっと重要な、それこそ一分一秒が生死を分ける時に、あんな勘違いをされていて、それでジ・エンド。
と、いう事態が未然に防げた。
その幸運に感謝するべき。
それに、口で言っている内容は全てブラフで、本当の考えを筆談で語っている可能性も……
うん、無い。
……でもでも、羽入が梨花に接触さえすれば、正しい情報が伝わるのだから問題は無い。
羽入任せという時点で激しく問題だらけのような気もするけど……

て、言うかそもそも羽入が微妙なアイテムばかり選ぶのが悪い。
私には理解出来ない深遠な理由があるのかもしれないけど、それにしたってもう少しなんとかならなかったのか。
特にあの国崎最高ボタンは意味不明すぎる。
ことみさんと瑞穂さんが躊躇うことなく否定した時は思わず突っ込んでしまったけど、冷静に考えると多分私も否定しそう、というかする。
あんだけ仰々しい暗号文を書いといて、実はただのダジャレでした、と言われて納得は出来ない。
アレを選ばないといけない理由でもあったのだろうか?

(そういえば、そもそもアレは誰が造ったのかしら?)
支給品は、基本的には武器等の殺し合いに役立つものと、参加者に関係のあるアイテムが選ばれる。
この場合のアイテムとは所持品の事で、服とかアクセサリーとか、あるいは趣味で愛用している物品を意味する。
なので、私も見せしめになった少年の趣味であるゲームに偽装して、特殊プログラムを忍び込ませたのだが……、
アレは、国崎往人本人とは何の関係も無いし、作られた記録も無い。
殺し合いに使える可能性は……まあ、ゼロじゃないけど使う人間はいなそう。
(だから、誰かがわざわざ作ったのだろうけど……)
目的がまるで見えてこない、と考えた所で、


「鈴凛、ちょっといい?」
コンコンというノックの音と共に優さんの声がした。

「えっ、あっはい、……なんですか?」
なんだろう?
倉成武の様子でも聞きに来たのかしら?
慌てて立ち上がり、ドアを半分くらい開け、そこに立っていた優さんの顔を見た。
表情は……駄目、読めない。
ただまあ、纏ってる雰囲気からそんなに重要な問題じゃなさそうかな、と思った所で、

「司令が、読んでるわよ」
優さんの口から用件が発せられた。
鷹野が?
一瞬、”ヤバッ?”と思ったけど、どうも優さんの態度からはそんな気配がしない。
となると……なんだろ?
また、トロッコ関係かな?
と、タイムリーなネタを思い浮かべていたけど、

「『次の放送を、やってみない?』だそうよ」
優さんの一言で全てが凍り付いた。
は、
何…を、
今…何て…………言ったの?
……放送……って無論あれだ。
この時間帯に誰と誰が死んだ、というのを知らせる為の物。
それを……私にやれ?
私に……
私に………
私に、……千影が、死んだ、事を、口にしろ…って言うの?
私の、罪を、悲しみを、後悔を、再び、味わえと?

「馬……鹿な、こ…と……言わないで!」
その言葉を発した相手でもないのに、優さんに叫んだ。
馬鹿に……ううん、楽しんでるんだ!
私が苦しむのを、苦しんでいるのを!
だから……だから、そんな事を言って、弄ぶつもりなんだ!
私は、私は……

「まあ、そうよね。
 姉妹が殺されて、それを普通に放送なんて出来る訳ないわよね」
再び優さんの声がした。
それで、少し…少なくとも表面的には、落ち着いた。

「うん…、だから……」
「どんな事を口走ってしまうか判らないものね」
お断りしますと続けようとして、遮られた。
「……え?」
「自分の姉妹が死んだのに、なんでまだ他の連中は生きているのか、なんて口にしてしまうかもしれないわね」
「何……を言って?」
「貴方達がさっさと死んでくれれば、私の妹は死なずに済んだとか」
「何を、言っているの! 優さん!!」
再び込み上げる怒りに任せて、優さんの服を掴み上げる。
私は、そんな事は、考えてなんか……
「貴方達だけ首輪を解除するのは気に食わないから爆破しちゃうとか」
けど、優さんは気にせずに続ける。
この……

「何人か、何してるか判らないから念のため殺しちゃうとか。
 首輪を確保しておきながら、間に合わなかったから殺しちゃうとか。
 “つい”そういう“感情に任せたこと”を口走ってしまうかもしれないしね」

(え……?)
黙って、と言おうとしたところで一気に頭が冷えた。
何?
“つい”
“感情に任せたこと”
……え?
でも……ううん、確かに、それなら、けど……


「それで、どうするの?」
少し思い悩んだ所で優さんの声がした。
(……そっか、そういう意味だったんだ)
理解、出来た。
私に告げている訳だ。
“チャンスよ”と。
確かに、今なら、いえ、今この時にしか出来ない行為。
姉妹を全て失い、少し錯乱気味な研究班の主任。
それが放送をするなら、何か変な事の一つや二つ喋ってしまうかもしれない。
そう、“何か”
恨み言かもしれないし、何か重要な機密かもしれない。
つまり、利用しろという訳だ。
千影の死という結果を、機会として利用しろと、そんな残酷な事を言っているわけだ。
私の中に、先ほどまでとは違った怒りが込み上げて来た。
最も、そんなものはあっさりと受け流されておるみたいだけど。

そうして、私は
「いえ、やっぱりやります」
と口にした。

その時、少し、優さんの感情が見えた気がした。



「参加者の皆さん、定時放送の時間だよ。
 今回は私、鈴凛が担当します。
 ちなみに皆さんの首輪は私が作ったものなんだけど、気に入ってくれてるかな?
 もう少しカッコいいデザインにしたかったんだけどね。
 と、まあ余計な話は抜きにして、まずは禁止エリアを発表するよ。

十四時からE-2
十六時からB-6
もう一度言うよ。
十四時からE-2
十六時からB-6
ちゃんと記入出来た?
間違っていても添削とかはしてあげられないから注意してね。

では続いて死亡者を読み上げます。

…高嶺悠人
小町つぐみ
北川潤
二見瑛理子
……千、影
朝倉純一
佐藤良美
土永さん

なんだか知らないけど、今回は頑張ってるみたいだね。
私の知り合いも皆死んじゃったなあ。
残念。
でも、あと一息だからここまで来たら頑張ろうね皆。
支給品とかをちゃんと集めれば、楽勝だよ。
強力な武器とか、お気に入りの物とかがあるからね。
疲れたら、それらで気合を入れたり、適当にゲームとかして遊んだりしてもいいかもね。
て、そんなことしたら殺し合いにならないか、難しいね。
……なんかよく判らなくなったので、この辺りで終わりにするよ。
それじゃあ、また次の放送で」


……上手く、いったかな?
こればっかりはなんとも言えない。
ただ、羽入が接触してくれれば、そこから私の意図を読み取ってくれるかもしれない。
そんな事を考えていると、

「ふふっ、随分妹想いなのね」
今一番聞きたくない声がした。
「……やらないか? って言ったのは司令だよ?
 …それに」
「……それに?」
一瞬、目を瞑る。
私は、既に汚れきった身だ、今更外面なんて気にしない。
「もう、誰が生き残っても興味がないから。
 ううん、むしろ一度くらいは禁止エリアでの首輪の動作テストをしたいかも」
何もかも失って、壊れてしまったヒト。
ゲームの駒に興味のない、冷徹な人間。
そういう風に装う。

「は、」
鷹野は一瞬呆けていたけど、ややあって、
「あは、はははははは!
 そう、ようやく貴女もこのゲームが楽しめるようになったのね」
楽しそうに、
心底楽しそうに語りかけてきた。

「別に、楽しんでなんかいないよ、ただ、誰がどうなっても興味がないだけ」
たとえ演技でも、それだけは許容出来なかった。
だから、続ける。
より、私らしい理由を
「今私に興味があるのは、首輪の完全性。それだけ。
 それを上手くやれば、次以降のゲームで他の姉妹が選ばれても、私の権限で除外出来るようになるかもしれないでしょ」
伝えた。

「あら、そうなの、勿体無いわね。
 でも、それじゃあ仕方が無いわね、せいぜい頑張りなさい。
 貴女の望みが叶うように」
それだけ言って、鷹野は向こうを向いた。
話は終わりということみたい。
私も、鷹野に用なんてない、だから、すぐさま司令室から出ることにした。

……出来ることはした。
後は、祈ることしか出来ない。

どうか、この仕組みが、今回限りでありますように


198:小さなてのひら/第2ボタンの誓い(後編) 投下順に読む 200:ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(前編)
198:小さなてのひら/第2ボタンの誓い(後編) 時系列順に読む 201:ひと時の安らぎ
198:小さなてのひら/第2ボタンの誓い(後編) 鷹野三四 200:ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(前編)
193:贖罪/罪人たちと絶対の意志(後編) 鈴凛 200:ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(前編)
193:贖罪/罪人たちと絶対の意志(後編) 田中優美清春香菜






| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー