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再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) ◆guAWf4RW62


茜が倒れ、土永さんが飛び去った戦場に未だ残っているのは四人。

狂人、鳴海孝之。
魔物を狩る者、川澄舞。
ブルースピリット、アセリア。
そしてエルダー・シスター、宮小路瑞穂。


「茜さん……そうね……こんな悲しい世界は、もう終わりにしなくちゃね……」

茜の亡骸を優しく地面に横たえてから、瑞穂は静かに立ち上がった。
その瞳は貴子の死を知る以前と同じ――否、それ以上の光が宿っていた。

自分は……鏑木瑞穂は、貴子を守れなかった。
鏑木瑞穂は貴子の死に耐え切れず、道を踏み外して、茜までも死なせてしまった。
学園で皆の羨望を集めているのは自分自身でなく、あくまで宮小路瑞穂という幻影に過ぎぬ。
本当の自分はどうしようも無いくらい脆弱で、皆に支えて貰わねば何も出来ない人間なのだ。
それは覆しようの無い事実。
それなら、もう本当の自分なんて捨て去ってしまえ。
エルダー・シスター宮小路瑞穂を演じきってしまえ。
この場で、エルダー・シスターである宮小路瑞穂がやるべき事は一つ。

「アセリアさん……本当に申し訳ありませんでした。一つお願いがあるんですけど、舞さんを食い止めて頂けませんか?」
「ん……分かった。けど……ミズホはどうするつもりだ?」
「私はこちらの方を――鳴海孝之さんを倒します。この方は、私が倒さなければいけないんです」

そう言って瑞穂は、少し離れた所に直立している孝之を眺め見た。
見れば孝之は何時の間にか、長柄の大型ハンマーを手にしていた。
顔が真っ青に染まっても、全身の至る所から血が噴き出していても、左腕が千切れ落ちかけていても、尚孝之は哂っていた。
その姿は明らかに異常、異質、異様。
最早完全に精神が崩壊し切った、異世界の住人だ。

「……ミズホ、気をつけろ。あの男は、普通じゃない」
「はい、分かっています。それでは――行きましょうか」

視線は各々の敵に固定したまま、二人は頷き合う。
多くの言葉は要らない。
今は目の前に立ち塞がる敵を、自分達が持ち得る全戦力で排除するのみ。
アセリアが大地を蹴ると同時、瑞穂は投げナイフを構えて縦一文字に疾走した。

「鳴海さん――貴方は私が止める!」
「ヒャハッ? お前も起こされたいのかあああ!?」

陽光すら届かぬ森の中で、二つの影がぶつかり合う。
先に攻撃を繰り出したのは、リーチで大幅に勝る孝之の方だった。
孝之は右腕一本で大型ハンマーを振り上げて、迫る瑞穂目掛けて思い切り叩き落す。
それは余りに単純な動作。
何の技術も知性も感じさせぬ、子供でも出来る原始的な動作。
だがその動作も、圧倒的な腕力と武器の質量を兼ね備えていれば、必殺の一撃となる。

「っ…………!?」

轟く爆音。
攻撃を躱した瑞穂の顔が、驚愕に大きく歪む。
孝之の振り下ろした大型ハンマーは、瑞穂の傍にあった大木を幹から砕いていた。
それは、大口径の拳銃すらも凌駕する威力。
通常の人間では決して出し得ない破壊力。
これ程の威力があるのならば、掠っただけでも間違いなく死んでしまう。
それでも瑞穂は勇気を振り絞り、ナイフが届く間合いまで接近してゆく。
横一文字に振るわれた大型ハンマーを掻い潜り、身体を起こしながらの反撃。

「はっ…………!」

三発。
瑞穂は旋風の如き速度で、次々と剣戟を繰り出してゆく。
孝之の身体に、瑞穂の放った斬撃が叩き込まれた。
決して浅いとは言えぬ裂傷が、孝之の身体に刻み込まれる。
だが孝之は止まらない。
どれだけ己の身を傷付けられようとも、彼にとっては夢の中の出来事に過ぎぬのだ。
だから、まだまだ戦い続けられる。
哂いながら、狂いながら、目に映る全てを破壊し続けられる。

「アハハハハ……アーハッハッハッハッハッハッ!!」

瑞穂の攻撃が旋風だとすれば、孝之の攻撃は全てを巻き込む暴風だ。
大型ハンマーによる、落雷さながらの一撃が振り落とされる。
こんな物はナイフ如きで受け止められる筈が無いし、たとえ瑞穂の武器が頑強な名刀であったとしても、それは同じだろう。
ならば受け止めなければ良い――瑞穂は刹那のサイドステップで、孝之の攻撃を掻い潜る。
恐怖心に負けて下がるのでは無く、あくまで前に進みながら、ぎりぎりの所で回避する。
ダンと一歩深く踏み込んで、全身全霊の力でナイフを一閃する――!

「セッ――――!」
「ガアアアアアアアアッッ!?」

狙いは左肩口。
千切れ落ちかけていた孝之の腕を、とうとう斬り落とす事に成功する。
左腕は心臓からそう遠くない――それを切断されてしまえば、どうなるか。
孝之の左肩から滝のような鮮血が勢い良く噴き出す。
人間の生命を維持するのに絶対必要なモノが、零れ落ちてゆく。
それでも狂人は最後まで、自身に課した任務を遂行しようとする。

「ききき、貴様ァッ! なななな何するんだよぉ!!!」

一発、二発、三発――孝之は縦横無尽に大型ハンマーを振り回した。
緩慢に過ぎるその攻撃は、俊敏な動作を見せる瑞穂に命中したりはしない。
ハンマーは空しく空転し、大地や近くの木を粉砕し、その度に孝之の右手の指が、一本、また一本とひしゃげる。
指が折れた所為でハンマーの柄を固定し辛くなり、孝之の攻撃は速度も威力も弱まってゆく。

「…………」

瑞穂は回避を続けながら、哀れみの目で孝之を眺め見ていた。
今の孝之を人が見れば何と表現するだろうか。
狂人、狂戦士、精神異常者、恐らくはその辺りだろう。
だが自分は、そう思わない。
茜の話によれば、孝之もある意味自分と同じ――恋人が死んだ所為で、狂気に飲み込まれてしまったのだ。
そして恐らくは自分と違って、誰にも救いの手を差し伸べて貰えなかったのだろう。
目の前の男は、只の、犠牲者だ。
誰にも助けて貰えず、理解して貰えず、止めて貰えず、狂気の世界に逃げ込んだ、只の哀れな男だ。
終わらせなければならない。
此処で、終わらせて上げなければならない。

「糞! 糞糞糞ぉぉぉぉ!! 俺は神の戦士なんだ!!! 絶対に負ける訳が無いんだ!!!」

孝之は尚も諦めずに、嵐の如き連撃を繰り出してゆく。
残り少ない己の余命を犠牲にしながら、何度も何度も大型ハンマーを振り下ろす。
それを確実に見切って、最小限の動作で躱してゆく瑞穂。
このまま回避し続けていれば、瑞穂の勝利は疑いようが無い。
しかし敢えて瑞穂は、時間切れによる、ある種他力本願的な勝利を否定する。
翻る金色の長髪、大地を駆け抜ける疾風。
瑞穂はナイフを鞄に戻し、自分から孝之の間合い深くへと踏み込んだ。
しっかりと孝之の目を見据えて、告げる。

「鳴海さん――貴方は負けます。貴方の悲しい夢は……此処で終わります」
「ふざけるなああああ!!! お前も双樹ちゃんと同じようにグッチャグチャにしてやるぅぅぅ!」

激昂した孝之が一際大きな動作で、思い切りハンマーを振り上げる。
今までの攻防よりも、両者の距離が遥かに近い。
後一歩踏み込めば、お互いの肌が触れ合う程の距離。
この状態では、幾ら瑞穂でも孝之の攻撃を避け切るのは難しい。
勢いが随分衰えたとは言え、それでも孝之の振るうハンマーは信じ難い破壊力。
僅かでも先端が掠ってしまえば、それは即致命傷に繋がるだろう。
回避は困難、ナイフを取り出した所で良くて相打ち。
だが瑞穂には確かな勝算がある。
正面から孝之を打倒し、彼の創り上げた苦界を終わらせる算段がある。

孝之の右腕がピクリと動き、眼前の瑞穂を打ち砕くべくハンマーが振り落とされる。

そこで瑞穂は後方に大きく跳躍する。

「貴方の悪夢は、私が終わらせるっ…………!!」

天空より迫り来る凶器に向けて――切り札を、投擲した。

瑞穂が投げたのは、参加者に取り付けられていた爆弾内蔵型の首輪。
大き過ぎる衝撃を与えれば、爆発してしまう首輪だ。
一秒後には首輪とハンマーが衝突して、激しい爆発が巻き起こされた。

「うぎゃあああああああああァァアアァァっ!!!」

予め爆発に備えていた瑞穂と違い、孝之は何の対策も打てなかった。
開け放たれたままの瞳を爆風が襲い、孝之の双眸は悉く破壊し尽される。
唐突に視界を奪われ、爆発で武器も吹き飛ばされ、獣のように暴れ回る孝之。


――その胸に、すとんと小さな衝撃が奔った。


「……お休みなさい、鳴海さん」

哀れみの色が入り混じった声で、呟く瑞穂。
瑞穂の手に握り締められたナイフは、正確に孝之の心臓を貫いていた。
それを引き抜くと、これまで以上の勢いで孝之の身体から血が噴き出した。
見る見るうちに、地面に血溜りが形成され、孝之はその中心に倒れ込んだ。
木々の間から漏れ出た陽光が、血色を失った孝之の顔に降り注ぐ。
孝之の両目からは、血で形成された紅い涙が零れ落ちていた。
恋人を失い、正気を失い、左腕を失い、それでも尚無意味な戦いを続けた、哀れな男。
鳴海孝之は、ようやく休息の時を迎えた。



だが生き残った者には休んでいる暇も、感傷に浸っている暇も無い。
瑞穂はすぐさま次の行動を開始する。
まずは周囲を見渡してみたが、アセリア達の姿は何処にも見当たらない。
断続的に聞こえてくる銃声から察するに、少し離れた場所へと戦場を移したのだろう。
急いで駆け付けて、加勢しなければならない。
瑞穂は素早く孝之のデイパックを回収し、茜の元へと駆け寄る。
茜のデイパックと武器を拾い上げて、そのまま走り始めようとし――足を止めた。
改めて見下ろすと、茜の寝顔は酷く悲しげなものだった。
茜の両手を胸の前で組ませてから、静かに言葉を紡ぐ。

「茜さん、今まで有り難う御座いました。それでは行ってきます。
 悲しみの連鎖を、終わらせてきます」

簡素な、けれど万感の想いが篭められた、別れの挨拶。
そして瑞穂は駆け出した。
その目尻に浮かぶは、今日だけでもう何度流したか分からない涙。


    ◇     ◇     ◇     ◇


瑞穂が孝之と決戦を行っている場所から、少しばかり移動した森の中。
その地を舞台として、青の妖精と赤い装束を纏った少女が鬩ぎ合う。
頑強な鉄パイプと、絶対の死を齎すニューナンブM60――凌ぎを削る二つの凶器。
狙いは全て急所。
容赦も躊躇も無い攻撃が、何度も何度も必殺の意思を持って放たれる。

「…………っ!!」

全力で上体を捻る。
アセリアの頭上付近を、黒い殺意の塊が通過してゆく。
ぎりぎりの所で銃弾を回避したアセリアは、何とか敵の間合いへと侵入した。

「ぃやあああああっ!!」

アセリアは雄叫びを上げて、鉄パイプによる斬撃を次々と打ち込んでゆく。
それは一発一発が確かな技術に裏付けされた、流れるような連撃。
無駄の無い動きで行われる剣舞は、見惚れてしまいそうな程に美しい。
だが繰り出された攻撃の数々は、一発として舞の身体を掠めもしない。
それどころか、守勢に回らせる事すら出来ていない。

「……遅い」

アセリアが放った刺突の一撃を、舞はくるりと身体を廻してやり過ごす。
そのまま横に一回転して、アセリアの脳天にニューナンブM60を向ける。
轟く銃声。

「――――――――!」

至近距離から襲い掛かる銃撃を、咄嗟に跳躍して躱すアセリア。
その後を追うようにして、二発目、三発目の銃弾が放たれ、アセリアは後退を余儀無くされる。

「ハア…………ハ、――――ハァ――――ハァ――――」

危機的状況を脱し、アセリアは乱れる呼吸を鎮める事に専念する。
拮抗した勝負を続けてきた二人だったが、勝敗の趨勢は徐々に舞の方へと傾きつつあった。
アセリアの疲労が原因な訳ではない。
疲弊し始めているのは舞も同じ。
アセリアの執拗な連撃を捌き続けるのは、常人には計り知れぬ程重労働だ。
では何が二人の戦力に、明確な差を生み出しているのか。
それは得物の違いに尽きるだろう。
どれだけ疲弊していようとも、ニューナンブM60の引き金を絞るだけならば問題無い。
使い手がどのような状態かなど関係無く、必殺の威力を伴った銃弾が放てるだろう。
だがアセリアの持っている鉄パイプは、非力な者では扱えぬ程に高重量。
疲弊した状態で振るおうとすれば、それだけ速度も威力も格が落ちる。
当然ながらアセリア自身も、その不利は感じ取っていた。
このまま正面勝負を続けるだけでは、いずれ敗れてしまう。

「……それなら、やり方を変えるだけ」

アセリアは腰を低く落とし、地面に手を突き、所謂クラウチングスタートの態勢となった。
クラウチングスタート――陸上の短距離走で、スタート時に用いられる方法。
瞬発力を最大限に引き出すという意味では、これ以上無い程に優れたスタート法。
アセリア程の瞬発力を秘めた者が行えば、正しく矢の如き速度で疾駆出来るだろう。
だが標的とされている舞に、焦りの色は一切見られない。

「…………」

舞は無表情を崩さぬまま、アセリアに向けてニューナンブM60を構えた。
こんな遠距離から銃弾を撃って、貴重な弾丸を無駄にするような愚は犯さない。
相手が向かってくるというのなら迎え撃つだけだ、と言わんばかりに待ち構える。
両者の距離は三十メートル。
この島でも屈指の実力を持った戦士達が対峙する。
周囲に漂う緊張感が極限まで膨れ上がり、木々に生い茂る葉がざわざわと揺らぐ。
睨み合う事、数秒。
そしてアセリアの足元が、爆ぜた。


「たあああああああああっ!!」

アセリアはあらゆる物を吹き飛ばす彗星と化し、眼前の難敵目掛けて疾駆する。
十分な予備動作を経たその動きは、間違いなくこの島で最速。
視界に映る景色が一瞬で流れてゆき、舞の姿だけがどんどん近付いてくる。

「アセ、リア――――!」

此処でようやく舞が動く。
照準をしっかりと敵の胴体中心に合わせる。
牽制など不要。
この敵を沈め得るのは、万全を期した必殺の一撃のみ。
アセリアの鉄パイプが届く距離になる寸前で、引き金を絞ろうとして――
そこで舞の眼前に、何か茶色い霧のような物が飛来してきた。

「――――つあっ!?」

アセリアの放り投げた土――クラウチングスタートの際に拾い上げていた物――が、舞の目に降りかかる。
舞は驚異的な反射速度で瞼を閉じたが、それでも一瞬視界は奪われる。
そしてその一瞬はアセリアからすれば、勝負を決するのに十分過ぎる時間……!

「あぐっ…………!」

鉄パイプが奔る。
甲高い金属音と共に、舞の手からニューナンブM60が弾き飛ばされた。
得物を失った舞は懸命に後退するが、追うアセリアの速度はそれを上回っている。

「フ――――」


アセリアは一歩、また一歩と間合いを詰める。
既に鉄パイプを振るえば届く距離だが、確実に仕留めるべく更なる接近を試みる。
そこで突如舞が、自身のデイパックに手を伸した。

取り出すのは拳銃の類いか――問題無い、照準を合わせる余裕など与えはしない。
取り出すのは刀剣の類いか――問題無い、斬り合いなら自分は絶対に負けない。

この状況で有利なのは、誰がどう見ても自分の方だ。
アセリアは一気に勝負を決すべく、更に大きく一歩踏み込んで――――脳裏に、決して無視出来ぬ悪寒が奔った。
数々の戦場を渡り歩いたアセリアだからこそ感じ取れた、死の予感。

「アアアアァァァッ――――!!」

その原因が何なのか、確かめている時間など無い。
アセリアは自身の直感に身を任せ、全力でその場を飛び退いた。
受身も何も考えず、ヘッドスライディングの要領で形振り構わず地面に滑り込む。

そして直後、背後から全てを飲み込むような爆音が響き渡った。
吹き荒れる破壊の嵐は周囲の木々を薙ぎ払い、犠牲となった木片がアセリアの背中に降り注ぐ。

「ク…………」

身体を起こし、じりじりと間合いを広げるアセリア。
その視線の先には、巨大なナニカを抱え上げている舞の姿がある。
舞の持っている物体は、重機関銃ブラウニング M2 “キャリバー.50”。
この島で初めて銃の存在を知ったアセリアは、銃火器に関して詳しい知識など持ち合わせてはいない。
だが舞の前方では、複数の木が無残にも破壊し尽されている。
その光景を見ただけでも、舞の持っている巨大な銃器がどれ程凶悪な物か、容易に推し量る事が出来た。
アレは、悪魔の武器だ。
こんな鉄パイプ一本程度で、対抗出来るような代物ではない。

「…………っ」

一方舞の方も内心穏やかでなく、ぎゅっと唇を噛んでいた。
これまで自分が、最強の切り札であるキャリバーを使用しなかったのは何故か。
それは一重に、キャリバーの弾薬を温存する為だ。
先の乱戦時、キャリバーを使えば全員纏めて屠り去る事は出来た。
アセリアも、瑞穂も、狂人も、一人残らず殺す事は出来た。
だがまだまだ先は長い。
生き残りは三十人以上も居るのだから、こんな所で全てを出し尽くす訳にはいかないのだ。
だからこそ、限界ぎりぎりまでニューナンブM60だけで戦った。
敵が勝利を確信し、防御を軽視したその瞬間に初めてキャリバーを取り出した。
その状況でキャリバーを撃ち放てば、最小限の弾薬消費で難敵アセリアを屠れる筈。
それは絶対の確信、決して変わらぬ筈の定められた運命。
しかしその運命を、目の前の女は――アセリア・ブルースピリットは覆した。
攻撃を完全に放棄し、全ての能力を回避に注ぎ込み、絶対の死を覆したのだ。


睨み合った状態のまま、深く身構える二人。
舞もアセリアもお互いに対し、かつてない程の戦慄を覚えていた。
そんな時、戦場に新たなる戦士が駆けつけた。

「――アセリアさん!」

立ち並ぶ木々の間より現われたのは、斧で武装した瑞穂だった。
瑞穂は舞の手に握り締められている兵器を見て、背筋が寒くなる感覚を覚えていた。
それでもすぐに歯を食い縛って、アセリアの横に並びかける。
アセリアと瑞穂は肩を並べて、前方の舞に鋭い視線を注ぎ込む。

「…………」

新たな敵の出現に、選択を強いられたのは舞だった。
足元に転がっているニューナンブM60を見据えながら、冷静に思案を巡らせる。
ニューナンブM60だけで戦えば、あの二人相手にはとても勝てないだろう。
とは言えキャリバーを使えば、両者纏めて打倒するのは可能だが――まだ早い。
何も貴重な弾薬を大幅に消費してまで、此処で強敵二人と決着をつける必要は無いのだ。
舞はキャリバーをデイパックに戻して、それからニューナンブM60を拾い上げた。

「……此処は引く。また出会う事があったら、その時に決着をつける」
「……ん」

淡々と告げる舞に対し、軽く頷くアセリア。
アセリアからすれば、今舞を引き留める理由など無かった。
もっと強力な武器を手に入れなければ、勝てぬのは明白なのだ。
アセリアの返事を確認した舞は、そのまま戦場から離れていこうとする。
だがそこで瑞穂が、心の中に湧き上がっていた疑問を投げ掛けた。

「舞さん……私にはどうしても貴女が悪い人だと思えない。
 貴女、佐祐理さんという方を人質に取られているのね? それで仕方無く、殺し合いに乗っているのね?」

それは、先程行われていた鷹野と舞の会話から推測したもの。
恐らくはほぼ間違いないであろう、確信だった。
舞は少し考え込むような仕草を見せたが、やがて首を縦に振った。


「一度は殺し合いに乗った私が言えた義理じゃないかも知れないけど……もう、どうにもならないの?
 殺し合いなんてしないで、皆で助け合う――そんな道は選べないの?」
「……選べない。私は、貴女や茜程強くないから。佐祐理が居ないと生きていけないから――」

舞はくるりと踵を返し、背中を向けた状態で告げる。

「次に私と出会ったら、絶対に容赦しないで。私もそうするから、本気で殺しに来て」

それで最後。
破壊の跡が深く刻み込まれた木々の間を、少女が独り歩いてゆく。
舞はもう振り返る事無く、森の奥へ――方角的には新市街地の方へと消えていった。
瑞穂は舞が立ち去ったのを確認してから、隣に居るアセリアへと視線を移した。

「アセリアさん……私は……」

謝らなければならない。
アセリアも、茜も、抜け殻同然だった自分を支えてくれていたのに。
自分はアセリアと茜に対して、酷い裏切り行為を働いてしまった。
自分が暴走した所為で、茜は死んでしまった。
だが自分が取った行動は幾ら謝った所で、決して許されるような物では無い。
どのように償うべきなのか――

「ん……いい」
「――――え?」

瑞穂が話を切り出す前に、アセリアが突然口を開いた。
呆然とする瑞穂をよそに、アセリアは続ける。

「ミズホが元気になったなら……それで良い。アカネも……アルルゥも、きっとそれを望んでる」
「……アセリアさん」

告げられた言葉は、片言の、けれど真摯な想いが籠められたものだ。
瑞穂は、アセリアの美しく澄み通った青い瞳を眺め見た。
アセリアは表情の変化に乏しく、良く知らない者が見れば、ある種機械的な冷たさすら覚えるだろう。
だが瑞穂には、アセリアの瞳に暖かい感情の色が秘められているのを見て取れた。

「……ん。行こう」

そして、二人は歩き出す。
次々に仲間が死んでしまった。
アルルゥも、茜も、もう居ない。
それはとても悲しい事で、辛い事だ。
だが幾度にも渡る凄惨な戦いを経て、二人の絆は確かに深まっていた。







【涼宮茜@君が望む永遠 死亡】
【鳴海孝之@君が望む永遠 死亡】


【C-3 森/1日目 午後】

【土永さん@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:最後まで生き残り、祈の元へ帰る
1:もっとまともな操り人形を探す。争いの種をまく。
2:自分でも扱える優秀な武器が欲しい、爆弾とか少量で効果を発揮する猛毒とか。
3:どこか一箇所留まったままマーダー的活動が出来る場所を探す
4:基本的に銃器を持った相手には近づかない
5:川澄舞を警戒
【備考】
土永さんの生徒会メンバー警戒順位は以下の通り
よっぴー>>>>(越えられない壁)>カニ


【C-3 森/1日目 午後】

【川澄舞@Kanon】
【装備:ニューナンブM60(.38スペシャル弾5/5) 学校指定制服(かなり短くなっています)】
【所持品:支給品一式 ニューナンブM60の予備弾32 バナナ(フィリピン産)(3房)、ブラウニング M2 “キャリバー.50”(ベルト給弾式、残弾45) 】
【状態:疲労(大)、肋骨にひび、腹部に痣、肩に刺し傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、太腿に切り傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、後頭部にたんこぶ】
【思考・行動】
基本方針:佐祐理のためにゲームに乗る
0:新市街地に向かう。
1:佐祐理を救う。
2:全ての参加者を殺す。ことりも殺す。
3:相手が強い場合、無理はしない。



【C-3 森/1日目 午後】
【女子二人】
1:今後の方針は不明

【アセリア@永遠のアセリア】
【装備:鉄パイプ(頑丈だがかなり重い、長さ二メートル程、太さは手で握れるくらい)】
【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、ひぐらし@ひぐらしのなく頃に、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:悲しみ、肉体的疲労大。右耳損失(応急手当済み)。頬に掠り傷。ガラスの破片による裂傷(応急手当済み)。殴られたことによる打撲】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
0:エスペリア以外にも知り合いがいるかも
1:仲間を守る
2:無闇に人を殺さない(但し、クニサキユキトとエスペリアを殺した相手と襲撃者は殺す)
3:ハクオロに蜂の巣を届ける
4:ハクオロと戦う(ただし殺さない)
5:強者と戦う
6:永遠神剣を探す
7:もっと使い勝手の良い武器を手に入れる
【備考】
※茜と情報交換を行いました

※フカヒレのコンドーム
アレでナニをする時に使う道具。12個入り。
パッケージの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してある。
レオがエリカルートの屋上でフカヒレから手渡された思い出の品。
薄型がウリでフィット感が凄い、らしい。
※ひぐらし
雛見沢に生息するひぐらしを瓶に無理やり詰め込んだもの。
全て生きています。


【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:斧】
【所持品:支給品一式×3、フカヒレのギャルゲー@つよきす-Mighty Heart-、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、斧、レザーソー、投げナイフ3本、
 フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)、国崎最高ボタン、茜手製の廃坑内部の地図(全体の2~3割ほど完成)】
【状態:悲しみ、決意、血塗れ(孝之の返り血によるもの)、中度の肉体的疲労】
【思考・行動】
1:エルダー・シスターとして、悲しみの連鎖を終わらせる(殺し合いを止める)
2:アセリアを守る
3:川澄舞と国崎往人を強く警戒
【備考】
※陽平には男であることを隠し続けることにしました。
※蟹沢きぬにも男性であることは話していません。
※アセリアにも男性であることは話していません。他の人にどうするかはお任せ

※フカヒレのギャルゲー@つよきす について
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。

【備考】
※レザーソー1本、両手持ちの大型ハンマーは大破。


131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(中編) 投下順に読む 132:If...~I wish~ -you-
131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(中編) 時系列順に読む 132:If...~I wish~ -you-
131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(中編) 涼宮茜
131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(中編) 鳴海孝之
131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(中編) アセリア 139:朝焼けと青空の境界線を越えて
131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(中編) 宮小路瑞穂 139:朝焼けと青空の境界線を越えて
131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(中編) 川澄舞 145:心の瑕、見えないもの
131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(中編) 土永さん 149:桃源の夢







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