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泥の川に流されてたどりついたその先に ◆rsExvlHLf.


ひとまずは新市街に出て情報を集めることに決めた智代とトウカ、二人は現在C-3の森を北上している。
もちろん移動しながらの情報交換は欠かしていないのだが――いまいち捗っていない。。
まずはお互いの出自からと始めたのがまずかった。
なにしろ片や小国トゥスクルの忠臣、片や日本の一高校の生徒会長、話が噛みあうはずがない。
さらに二人とも生真面目な性格であるため、相手の話で分からない箇所があれば遠慮せずに質問をする。
その結果現在までの移動時間の大半をお互いの自己紹介に使う羽目になってしまった。
しかも、トウカは智代の立場を「遠国日本の一集落、光坂高校の長」と解釈し、
智代はトゥスクルやエヴェンクルガの名称や文化に聞き覚えが無いのを自分の無知故と片付けると何かずれている。
しかし話は理解できなくとも、お互いについての理解は問題なく深まった。
目を輝かせて語るトウカの姿は、彼女がハクオロ皇とその彼が治めるトゥスクルをどれだけ愛しているのかを伝えていたし、
何かを堪えるように俯きながらも恋人の話をする智代の姿は、恋人の死で彼女が受けた衝撃の大きさを如実に物語っていた。
何はともあれ自己紹介によって距離を縮めた二人。
続いてこの島に来てからの事を話しあおう、と決めた…………第三者が現れたのはそんな時だった。

遠くから誰かが走ってくる足音にいちはやく気づいたのはトウカ。智代に注意を促し、本人も目を細めて神経を尖らせる。
トウカから来訪者の旨を伝えられた智代、彼女も口を閉ざしてあたりに気を配る。二人揃って構えをとり、襲撃者に対する備えは万全だ。
だがそれは念のために過ぎない、なにせ派手に足音を立てながら迫ってくる襲撃者というのは考えがたいからだ。
果たして姿を見せたのは襲撃者などではなく、智代のよく知る男――春原陽平だった。

懐かしい顔に出会えた事で智代の頬が緩む。相手が知り合いである事を告げ、対応を自分に一任して欲しいと智代はトウカに求める。
しかし返ってきた答えはどうも煮え切らない。竹を割ったような性格のトウカにしては珍しい事だ。
どうやらトウカは春原と出会った事があるらしい。しかもその時に春原はトウカを欺こうとしたとの事だ。
付き合う相手は選んだ方がいいとトウカは智代を諭す。小悪党のような行動、呆れるほどいつも通りの春原に智代は苦笑する。
「ああ、たしかにあいつはしょうがない奴なんだ。でも悪い奴じゃない、私が保証する」
ここは私に免じて退いてくれないかと智代は頼みこむ……今度はトウカも断らなかった。
(春原――朋也の親友だったお前なら私と共に朋也の死を悼んでくれるだろう、おまえに会えて私は嬉しいぞ――)


 ◇ ◇ ◇


眩しい――燦燦と注ぐ日光に耐え切れず目が覚めた、気分は最悪だ。
何せ僕の身体は見覚えの無い芝生の上に横たえられていて、寝慣れたベッドは影も形もない。
身体の節々が痛みを訴え、背中に刺さる芝生もチクチクと僕の痛覚を刺激する――これは紛れもない現実だ。
さらに僕に夢遊病の癖はないし、もちろん地べたで寝る趣味もない。だがこんな辺鄙な所で寝ている理由は一つだけ思いつく。
その一つを否定する材料を脳内から探してみる、だが見つかるのは肯定する情報ばかりだ。
最早ごまかしようがない……今までの事は全て現実、僕は殺し合いのゲームに巻き込まれている。
現状を理解はした。次に知らなくちゃいけないのは何でこんなところで寝ていたかだ。記憶の整理を始める。
(瑞穂さん達を見捨てて逃げ出して、逃げた先で観鈴達に出会って、そしたら放送が始まって――)

「そっか、岡崎はもういないのか……」


岡崎と二人でなら何かを成し遂げられる気がしていた。岡崎がいるからつまらない学校にも通い続ける事ができた。
だがそれももう終わり、岡崎は死んでしまったらしい。残された春原は哀れな一匹狼に逆戻りというわけだ。
しかし、一度眠ったからだろうか、僕の与り知らない場所で起きた事だからだろうか、岡崎の死がなにか他人事のように思える。
岡崎はたしかに親友だった。当然彼の死は悲しい、悲しくないはずはない。
だが仇を討とうと思う、突然の訃報に慟哭する、……そういう気分になれない。死という現象にいまいち実感がわかない。
それこそ僕が生き残るための方法を考えなくてはいけない事に比べたら、岡崎の死なんて大事の前の小事だ、とすら思えてしまうくらいに。
もの悲しいものがある、親友として失格だとも思う。
しかし同時に考えてしまう、もしかしたらこれが人間として普通の反応なのかもしれないと。
仲間が死ぬたびに絶望や挫折を味わっていては生きていけない。特に今のこの島のような闘争の場ではなおさらだ。
そして儚すぎる岡崎の死は計らずも僕の考えを肯定してくれた。やはり死んだら何も残らない――死んだら終わりなのだ。

(だから僕は生きる、どんな手を使ってでも生き残ってやる! 岡崎の死を悲しむのは後だ、今は生き残ることだけを考えるべきなんだ!)

改めて決心をした僕はすごい、すぐに一つの重要な事が分かった。それは放送直後の錯乱状態では気づけなかった事だ。
敵だらけのこの島で、武器を持たない無力な僕が生き残る。そのためには僕の事を守ってくる人、所謂仲間が必要不可欠。
そして本来ならその仲間を慎重に選びたいところだが、今の僕は選り好みできる立場じゃない。
僕が見捨てた三人の中で放送で死亡が告げられたのはアルルゥだけ、瑞穂さんと茜ちゃんは生き残っている――僕への恨みを抱きながら。

その他にも冷酷な殺戮者国崎往人、僕に良い感情を抱いているとは思えないトウカ、と出会った敵は多い。
それに対して出会った味方は皆無だ、味方と呼べるのは武くらいだろうか。だがその武も頼れない。
貴子が死んで武だけが生き残っているのは不自然極まりなく信用し難いし、そもそも明朝まで会えない者に僕を守ることはできない。
ならば誰に守ってもらうのか――気は進まないがハクオロ達に守ってもらうしかないだろう。
なぜなら彼らは殺し合いに乗っていない。メモの件もあるし、彼らを襲った僕がまだ生きているのが何よりの証拠だ。
そして路上で気絶させられたはずの僕を公園まで運んできてくれているという事実、それはまだ話し合う余地があるという事だ。
それなら僕の得意の話術で何とかする自信がある。しかし……何度もいうが気が進まない。
仲間を見捨てた僕を非難した二人、
鋭い眼で睨み、人を心から震え上がらせる怒号をぶつけてきたハクオロ。
ゴミを見るかのような酷薄な眼を向け、関わりたくないという態度を貫いた二見瑛理子。
あれはすでに非難ではなく糾弾だった。今もあの時のことを思い出すと震えが止まらない。
けれども今の僕には彼らが必要だ。僕を一蹴する実力者ハクオロ――彼といればしばらくは安泰だろう。
だから、土下座してもいい、靴を舐めろと命じられれば舐める。生き延びるためなら何だってやる。
何としてでも仲間に加えてもらわなければならない。

だがここで疑問が一つある。彼らはどこにいるのだろうか?
僕が目を覚ましたのに一向に接触してこないのはおかしい。
運ばれただけ運ばれて放置されたのだろうか? もし置いていかれたのだとしたら大問題だ。
守ってくれる仲間とかそれ以前の問題で、食料の入っているデイパックを取り上げられる事は命に直結する。
しかしわざわざここまで運んだ上で置いていくとは考えがたい。まだ近くにいると考えるのが自然だ。

そしてその予想は当たっていた。
耳を澄ましながら周囲を歩き回ったところ、茂みのむこうから物音が聞こえてきた。
早速影から覗いてみると、休憩所の机でハクオロと二見が何か作業をしているのが見えた。
声をかけるのを躊躇うほどに、二人は何かをいじるのに熱中している。
彼らをそれ程までに真剣にさせる物とは何なのだろうか? 身を乗り出してそれが何だかを見極める。
(何だあれ、つるつるした輪っかってところか? 見覚えがあるような感じもするけど……そうか!)

それは『首輪』だった。

見覚えがあって当然だ、実際にそれは今も僕の首にも嵌っているのだから。
だが正体が分かった事で逆に不安になる。なぜ彼らは首輪を持っているのだろうか?
一人に一つしか首輪はない、なら答えは簡単だ。彼らは他の誰かから奪ったに違いない。
しかし問題のブツは首輪だ。首と首輪は密着している、首か首輪を切り取らなければ首輪は奪えない。
そして首輪には爆弾が仕掛けられているため切断は不可能だ。つまるところ?

ハクオロと二見瑛理子は人を殺した経験がある――彼らは紛れも無い人殺し!

「う、あ、ぁぁぁぁぁ」
信じていた相手が実は危険人物だったという衝撃の事実に息が詰まる。
無意識に後ずさってしまう。茂みは葉を揺らし、足音が鳴る。
春原の存在に気づいた二人が共に驚いたような顔をする事で疑心はどんどん膨らんでいく。

(僕を連れてきたのはお前らだろ、何でそんなに驚くんだよっ!
 それに何で二人しかいないんだよ、観鈴ちゃんはどこに…………ってまさか!!)

二人の怪しい態度、いなくなった観鈴、不自然に存在する首輪――結びつく答えは一つ。

(はははっ、そんなはずないよ。だって三人とも仲良さそうだったじゃん。
 こ、殺すだなんて、あはははは。第一にあんな可愛い子を殺す理由が無いじゃないか)

怖ろしい考えを否定したい、それは当然の欲求。だが春原は知っているのだ。
たった今、ハクオロが自分に任せろとでも言うように、目で二見に合図を送った。
これと同じ光景を以前にも見ている。国崎が殺し合いに殺し合いに乗っている事を告げた時、

――ハクオロと二見瑛理子は神尾観鈴に隠れてアイコンタクトをとっていた――

ハクオロと二見は組んでいる、間違いない。だが観鈴は彼らに利用されていただけだったのではないか……?
利用目的があって一時的に組んでいたが、観鈴の探し人が殺戮者だと知るやいなや危険分子として切り捨てた。
辻褄はあう。冷静に考えればあんな冷たい目を持ってる奴らが善人のはずが無かったんだ。まんまと騙された。
そして理解する。このままだといつかは僕まで同じように捨てられて殺されてしまう。逃げないといけない。
しかし果たしてあの手練のハクオロから逃げられるのか? 逃げるのに失敗したら即座に殺されるのではないか?
ハクオロが薄っぺらな笑顔を浮かべながら、観鈴がどうたらと話しかけてくる。だが僕は耳を傾けない。
(ぼ、僕を油断させようったってそうはいかないぞ。僕は観鈴とは違うんだ、お前らの思い通りになるものか!)
よく観察すると好漢ぶってるハクオロの後ろでは二見が僕を睨んでいる事が分かる。やはり彼らは害意しか持っていないのだ。

だが二人の思惑が分かったところで打つ手がないのが悔しい。なけなしの勇気を振り絞って睨みつけるのが春原の限界だ。
しかしその勇気すらも長くは続かなかった。
僕が口を噤み続けていることに業を煮やしたハクオロが立ち上がってこちらに向かってきたのだ。
そして僕は初めてハクオロと正面から向き合うことになって――

――彼の衣服、その一部が血で紅く染まっているのを見た。
形ばかりの笑顔を浮かべながら迫ってくる血染めの男、その姿は不気味な面とあいまって……

「お、鬼だぁぁぁぁぁぁ! ひぃ、殺されるぅぅぅぅぅ」

振り返るやいなや一目散にその場から逃げ出した。
これ以上彼らの前に立っていると殺される前に恐怖でおかしくなってしまう。限界だった。
(良い人に見せかけて人を襲う鬼、そんな奴が他にいない保証はない。もう他人をなんか信じちゃ駄目なんだ――!)
サッカーで鍛えた脚だけを頼りに、後ろから聞こえる足音から春原は全力で逃げ続けた。


 ◇ ◇ ◇


去るものは追わず、春原にとって幸運な事にハクオロは春原を追いはしなかった。
逃がすまい、と一度は追う体勢はつくったものの、十歩も追わないうちに断念した。
それはなぜか? もしかして春原の足が速すぎたからなのだろうか?
たしかに理由の一つに春原の足の速さが水準以上だった事は挙げられる。だがそれは決定打ではない。

姿の見えない観鈴の事を心配する気持ち、瑛理子を無防備な状態で残す訳にはいかないという責任感。
仲間を想う気持ちがハクオロをその場に押しとどめたのだ。
そして決断したハクオロの行動は迅速だった。ただちに瑛理子の下へと戻りまずは観鈴の安否を確認する。
「瑛理子、観鈴はっ!?」
「まだ見つかっていないわ。無事だといいんだけど……」
「くそっ、やはり二人きりにしてはならなかった。判断を誤ったか――!」
「観鈴に何かあったら……あいつ、許さない……」
珍しい事に冷静沈着なハクオロが取り乱している。尤もそれは無理もない。
短い間とはいえ同じ時間を共にし、同じ志を持つ大切な仲間。そんな仲間の安否が不明――心が騒ぐのは当然だ。
しかもハクオロにとっての観鈴は必ず守り通すと心に誓った仲間以上の存在だ。不安で気が気ではない。
さらにそもそも春原と観鈴を二人きりにしてしまった事の一因はハクオロの見通しの甘さだ。

少し前に起きた春原の扱いについての一悶着。
ハクオロと瑛理子は彼を包帯で厳重に拘束した上で目の届く場所に置いておくつもりだった。
だが観鈴はその案に猛反対した。
「縛るなんて酷いです」
「ハクオロさんだって言ってたじゃないですか、春原さんは大切な人が死んじゃた悲しさで錯乱してただけなんです」
「悲しんでる人にそんな事したら可哀相です……私は春原さんを慰めてあげたい」
さらにその上で、春原が落ち着くまで自分が一人で面倒を見ると主張した。
もちろんハクオロと瑛理子は大慌てで諌めた、危険だからやめなさいと。だが観鈴は折れなかった。
「私に任せてください、必ず春原さんを説得してみせます!」

何か仲間の役に立ちたいという考え。そして春原を、往人を、つらい思いをしている人達を放っておけないという想い。
瞳を通して伝わってくる観鈴の決心、ハクオロにはそれを否定する事ができなかった。
ハクオロが折れてしまえば決着はついたようなものだ。しょうがないなぁとばかりに瑛理子も観鈴の案を是認した。

状況を楽観視していた事は否定できない。
春原が再び思い切った行動に出る可能性は低いと見積もっていたし、観鈴も危険になったら自分達に助けを求めるだろうと思っていた。
だから春原を全面的に観鈴に任せ、ハクオロと瑛理子は首輪の調査に集中していたのだ。
だが問題は発生した。春原は観鈴を連れずに一人で自分達の下に姿を見せたのだ。
それだけでも不安を煽るのには十分、しかも春原は挙動不審な行動をとった上で逃走した。
観鈴の身に何かあったとしか思えない状況だ。最悪の事態さえ考えなくてはならないのかもしれない……
二人の焦燥は際限なく積もっていく。

しかし当事者はそんな彼らの心配をよそに、五体満足でマイペースに現れた。
「ハクオロさーん、春原さんがいなくなっちゃんですけど何か知りませんかー?」
何もなかったと如実に語るその姿。最高の事態を前に二人は喜ぶより先に呆然としていた。
「魘されてたから、タオルを濡らしてあげようと思って水飲み場に行ったんです。
 でも帰ってきたら春原さんいなくなってて……ってハクオロさん、瑛理子さん、聞いてますかー?」
間違いなく観鈴だ。ハクオロと瑛理子は二人揃って胸を撫で下ろし、向き合って苦笑した。
「彼なら起きた途端どっかに行っちゃったわよ」
「あー、二人とも春原さんを恐がらせましたね。春原さん、可哀想です」
「人聞きが悪いわね、私達の顔を見て勝手に逃げてったのよ。
 第一に観鈴がどうしても面倒見たいって言うから任せたのに……目を離したら駄目じゃない」
「がお……だってタオルを……」
「水ならペットボトルに入っているわ。たくさんあるのだからそれを使えばいいでしょ」
「が、がお……観鈴ちん、ぴんち」
安心したのか一気に饒舌になる瑛理子、観鈴を叱るその姿はどこか楽しそうだ。
叱られている方の観鈴も困ってはいるものの嫌がってはいない。
傍から見ると、しっかり者の姉とおっちょこちょいの妹のようだ。
二人の様子を優しく見守りながらハクオロは改めて誓う。
オボロ――カルラ――大切な部下であり良い仲間だった。彼らがいなければ今のトゥスクルはなかっただろう。
エルルゥ――アルルゥ――掛け替えのない娘達。命の恩人でもある彼女達を自分は守れることができなかった。
死んでいった彼女達の分も観鈴と瑛理子を守る。二人を必ず元の世界に返してみせる――!
「まあまあ、瑛理子も観鈴を苛めるのはそれくらいにしておくんだ。
 何事もなかったんだ、それでいいじゃないか。それよりもそろそろ二人ともお腹が減っているだろう、食事にしないか」
もちろん文句は出なかった。


衛がスーパーから持ってきてくれた惣菜とジュースの御蔭で豪華な昼食となった。
三人とも朝から碌に食べていなかったので箸が進む、机を埋める食べ物がどんどん減っていく。
歓声をあげながら嬉しそうに唐揚げを頬張る観鈴、そんな彼女の目に瑛理子のデイパックから覗く首輪が映る。
「そういえば瑛理子さん、く」
食事中で気が緩んだのか、思わず首輪の事を口走りそうになり食卓に緊張が走った。
「――! ……衛ちゃんから貰ったものはどんな感じですか」
だが既の所で持ち直し、緊張は安堵へと移り変わる。そして恒例の筆談が開始される。
「ええ、とってもおいしいわ。外でとる食事も案外いいものね」
『首輪の解析は正直なところあまり進行していないわ。大まかな構造しか予測できない上に道具も足りていないのよ。
 だから今できるのは爆薬を刺激しないようにおっかなびっくり外壁を削ることくらいなの』
そう綴る瑛理子の顔には在り在りと不機嫌が浮かんでいる。頭の良い彼女でも首輪の解析は難問らしい。
『見ていた感じは確かにそのようだな。私も何か手伝えればよかったんだが……役に立たなくてすまない』
『別に誰も悪くないわよ、悪いのはあの首輪。そもそも継ぎ目がないなんてふざけてるとしか思えないわ!』
感情を露にして殴り書きをする瑛理子、これは随分とフラストレーションが溜まっているのかもしれない。
楽しそうだった解析を始める前とは大違いだ。でも……、観鈴の頭には疑問が浮かぶ。
『そういえば、なんでいきなり首輪を調べ始めたんですか? たしか工場についてからゆっくりやるって前に……』
痛い所を衝かれたと困った顔をする瑛理子。しかし小考後何を思ったのか、笑顔で軽快に鉛筆を走らせた。
『それはね、貴方達と一緒に博物館に行くからよ。だから今のうちに少しでも調べておきたかったの』
そして笑顔のまま顔をあげてハクオロと観鈴に話しかけた。

「この数時間を一緒に過ごしてよく分かったわ。私はあなた達といるのが楽しいの」
勢いで言ったはいいものの、後から恥ずかしくなってきたのか赤面して俯いてしまった瑛理子。
意外そうな顔で呆けたのは一瞬、すぐに満面の笑顔を浮かべてはしゃぎだした観鈴。
終始浮かべていた笑顔は一段上のものに、二人を優しく見守るハクオロ。
公園で食事をとる三人、それは仲の良い家族がピクニックに来ているかのようだった。



「そういえば彼がメモを回収をしていたのは手間が省けてラッキーだったわ、あんな人間でも何かの役には立つものね」
「春原さん……一人で大丈夫かな……」
「あら、私はむしろ他の人が彼に襲われないかの方が心配よ」
「いや、おそらくその心配は必要ない」
「いやに自信満々ね……」「どうしてですか、ハクオロさん?」

「あのタイプの人間は一度手酷く叩けば容易く自信を喪失する、怯えがつき纏う以上彼はもう人を襲う事はできないはずだ」


 ◇ ◇ ◇


走る、走る走る――春原陽平はひたすらに走っている。
最初は走る事はハクオロ達から逃げるための手段でしかなかったはずだ。
だが十分に彼らから離れた今も春原は闇雲に走り続けている、それは得体の知れない何かに突き動かされているかのよう――。
手段と目的が一体化した、いわば走るために走っているように見える状態。何が春原をそうさせているのか?
それは人間不信からくる他人に対する恐怖と、居場所をなくした焦燥、
そして以上二つから導き出される希望のない未来……所謂『絶望』だ。
躊躇なく他人の命を奪う殺戮者国崎、善人のふりをして他人を貪り尽す殺人鬼ハクオロ、彼らに対する恐怖は春原の中に深く根づいている。
またこれまでに出た死者は二十名以上、いくら二人が凶悪であろうとも彼らだけで殺せる人数ではない。
つまり二人のような危険人物がこの島にはまだ何人も潜んでいる――! 
偶然出会った相手が偶然人殺しかもしれない……そんな状況で確実に生き延びるには信用できる者以外の人との接触を断つしかない。
だが春原は瑞穂達を見捨てて、ハクオロ達から逃げた。その二つの行為で春原が島に来てから築いた人間関係は脆くも崩れ去っている。
そして春原には元の世界での信頼できる顔見知りも一人しか残っていない。
そう、人間不信に陥った今の春原が少しでも心を許せる人間は広い島でたったの一人しかいないのだ。
だから他の人間達から逃げながらその一人を探す、そのために走る。
会える確率がどれだけ低かろうと関係ない。元より春原には希望がそれしか残されていないのだから。
だからほんの僅かな可能性を信じて、傍からすると無謀にしか見えない賭けを春原は続け――――幸運な事に賭けに勝った。


疲労でぼんやり霞む視界、それでも彼女の特徴ある銀の長髪は春原の眼に鮮明に映った。
杏が、岡崎が、二人がいなくなった今は春原の唯一の知り合いであり、頼れる後輩。
足が上げる悲鳴もお構いなしに全力で駆け寄り、彼女の元へと倒れこむ。

「助けてくれ、智代っ!」

春原には智代しか見えていない、彼女と共にいるもう一人の人物には気づかない。
そして瞳を見つめ、彼は心の底からの思い――嘘偽りのない純粋な願いを訴える。

「僕を悪い殺人鬼達――国崎やハクオロから守ってくれ!」





【D-2 西部 公園内/1日目 午後】

【工場探索チーム】
基本方針1:現在地で偵察チームと合流。その後、博物館行くチームと待機するor工場へ向かうチームでチーム別け。
基本方針2:首輪の解析をする。
思考: 悠人と衛が心配。
【備考】
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を考えています。
※禁止エリアについて学んでいます。(禁止エリアにいられるのは30秒のみ。最初は電子音が鳴り、後に機械音で警告を受けます)
※博物館で悠人たちを襲撃した相手(ネリネ)の外見と、その仲間と思われる相手の乗っている車について聞いています。
※悠人から、ファンタズマゴリア、永遠神剣、スピリットについて学んでいます。
※島内部の電話が使えることを知っています。
※陽平から博物館での戦闘について聞いています。
※車に乗った襲撃者の一団を警戒しています。


【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備:Mk.22(7/8)、オボロの刀(×2)@うたわれるもの】
【所持品:投げナイフ×2、支給品一式、ランダムアイテム(0~2)】
【状態:精神をやや疲労】
【思考・行動】
基本方針:ゲームには乗らない。
1:観鈴と瑛理子を守る。
2:悠人と合流後は博物館へ、往人と話がしたい。
3:仲間や同志と合流しタカノたちを倒す。
4:トウカがマーダーに間違われるようなうっかりをしていないか不安。
5:悠人の思考が若干心配。(精神状態が安定した事に気付いてない)
【備考】
※校舎の周辺の地形とレジャービルの内部状況を把握済み。
※中庭にいた青年(恋太郎)と翠髪の少女(亜沙)が殺し合いに乗っているかもしれないと疑っています。
※銃についてすこし知りました。また、悠人達から狙撃についても聞いています。
※往人を危険人物として認識しています。


【神尾観鈴@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式×2、予備マガジン(40/40)、スーパーで入手した品(日用品、医薬品多数)、タオル】
【状態:健康、緊張及び若干の恐怖】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:ハクオロと瑛理子と行動する。
2:悠人と合流後は博物館へ、往人の人殺しをやめさせる。
3:陽平の事が心配。
【備考】
※タオルは衛から受け取った日用品の一つです。
※スーパーで入手した品(食料品、飲み物)は消費しました。


【二見瑛理子@キミキス】
【装備:トカレフTT33 8/8+1、ビニール傘】
【所持品:支給品一式、ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭、空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE
     首輪、映画館にあったメモ、家庭用工具セット】
【状態:左足首捻挫、軽度の疲労】
【思考・行動】
基本:殺し合いに乗らず、首輪解除とタカノの情報を集める。
1:とりあえず公園で待機。 悠人と合流後はハクオロと観鈴と共に博物館へ。
2:車に乗った襲撃者の一団が工場に陣取った時、或いは工場が禁止エリアに指定された時の首輪解析方法を思案中。
3:孝之や陽平のように錯乱している者や、足手まといになりそうな者とは出来れば行動したくない。
4:孝之と陽平には出来れば二度と出会いたくない。
【備考】
※往人を危険人物として認識しています。
※パソコンで挙がっていた人物は、この殺し合いで有益な力を持っているのでは? と考えています。
※首輪が爆発しなかった理由について、
1:監視体制は完全ではない
2:筆談も監視されている(方法は不明)
のどちらかだと思っています。
※電話についても盗聴されている可能性を考えています。
※家庭用工具セットについて
観鈴が衛から受け取った日用品の一つです。
ドライバー、ニッパー、ペンチ、ピンセットなどの基本的な工具の詰め合わせである。
なお全体的に小型なので武器には向いていないと思われます。





【C-3 森/1日目 午後】

【春原陽平@CLANNAD】
【装備:無し】
【所持品:無し】
【状態:肉体的疲労大、重度の人間不信、朦朧状態、空腹、右手首に手錠、上はTシャツ、下はジーンズを着用】
【思考・行動】
基本方針:死にたくない。
1:智代、助けてくれ! ヘルプミー、智代!
2:智代に会えてよかった……これで一安心だね!
3:智代なら……智代なら何とかしてくれる!
4:ああ智代、今は君が女神に見えるよ!
5:いやっほーう! 智代最高ー!
【備考】
往人とハクオロと瑛理子を危険人物と認識しています。


【坂上智代@CLANNAD】
【装備:無し】
【所持品①:支給品一式×3、サバイバルナイフ、トランシーバー×2、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、十徳工具@うたわれるもの、スタンガン、
 催涙スプレー(残り4分の3)、ホログラムペンダント@Ever17 -the out of infinity-】
【状態:中度の疲労、血塗れ、左胸に軽度の打撲、右肩刺し傷(動かすと激しく痛む・応急処置済み)、少量の失血、ゲームに乗った人間に対する深い憎悪】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いに乗っている人間を殲滅する(無謀な行為は極力避ける)。一応最終目標は主催者の打倒。
0:???
1:体調が回復するまでは、トウカと行動を共にする。(回復後は不明)
2:ひとまず新市街に出て情報を集める。
3:自身の基本方針に、僅かながら迷いがある。
【備考】
※蟹沢きぬが殺し合いに乗っているかもしれないと疑っていますが、疑惑は薄れています。
※ネリネと舞を危険人物として認識しています。
※『声真似』の技能を持った殺人鬼がいると考えています。
※トウカからトゥスクルとハクオロの人となりについてを聞いています。


【トウカ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:舞の剣@Kanon(少々の刃こぼれ有り)】
【所持品:支給品一式、永遠神剣第七位『存在』@永遠のアセリア-この大地の果てで-】
【状態:全身に軽い打撲、胸に中度の打撲、右脇腹軽傷(応急処置済み)、中度の肉体的疲労】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いはしないが、襲ってくる者は容赦せず斬る。
0:某は――!
0-1:言うに事欠いて聖上が悪道に身を染めただと! 性懲りもなく下劣な嘘をっ!! 
0-2:しかし、今のこの男の眼は嘘を言っている眼とはとても思えない。それにオボロの例もある……。
1:ハクオロと千影、千影の姉妹達を探し出して守る。
2:ネリネを討つ。
3:命の恩人である智代を守る。
4:ひとまず新市街に出て情報を集める。
5:可能ならば赤坂と合流。
6:次に蟹沢きぬと出会ったら真偽を問いただす。
【備考】
※『声真似』の技能を持った殺人鬼がいると考えています。
※蟹沢きぬが殺し合いに乗っていると疑っていますが、疑惑は薄れています。
※陽平を嘘吐きであると判断しています。
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※永遠神剣第七位"存在"
 アセリア・ブルースピリットが元の持ち主。両刃の大剣。
 魔力を持つ者は水の力を行使できる。
 エターナル化は不可能。他のスキルの運用については不明。
 ウォーターシールド…水の壁を作り出し、敵の攻撃を受け止める。
 フローズンアーマー…周囲の温度を急激に低下させ、水分を凍結させ鎧とする。


129:死を超えた少女、それ故の分析 投下順に読む 131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(前編)
129:死を超えた少女、それ故の分析 時系列順に読む 131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(前編)
115:憎しみの環の中で トウカ 145:心の瑕、見えないもの
115:憎しみの環の中で 坂上智代 145:心の瑕、見えないもの
122:コンパスを失い道に迷った人間は、こんなにも愚かになるの 春原陽平 145:心の瑕、見えないもの
122:コンパスを失い道に迷った人間は、こんなにも愚かになるの ハクオロ 135:青空に羽ばたく鳥の詩
122:コンパスを失い道に迷った人間は、こんなにも愚かになるの 神尾観鈴 135:青空に羽ばたく鳥の詩
122:コンパスを失い道に迷った人間は、こんなにも愚かになるの 二見瑛理子 135:青空に羽ばたく鳥の詩







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