Crazy innocence ◆Qz0e4gvs0s
トイレをせがむ春原を物理的に黙らせ、茜は始まった放送に耳を傾けていた。
死者の名前が読み上げられると、彼女は倒れるように地面に座り込む。
それに引きずられる様に、春原も中腰になってしまう。
「お、おいおい。ォォゥ……僕はトイレ行きたんだよ! 座るなよな」
「……」
「そっちだっとぇ、お、ここで、ァゥ、漏らすのは嫌だォォン!」
「……」
「ちょぉぉぉんん! へ、返事ぃいくらいぐぅ! しろヨン!」
がに股で踏ん張っていた春原に対し、茜は攻撃的な叫びを発する。
「黙れ!」
「!!」
その怒声にびびって、春原は尻餅をつく。が、尻に与えた衝撃でまた飛び上がる。
睨み返すと、茜は涙を流して睨んでいた。冗談ではなく、本当に怒っている表情で。
先程の放送で、藤林杏が死んだことを告げられたが、考える余裕はなかった。
それは生理現象というだけでなく、放送後しゃがみ込んだ茜が気になったからだ。
「だって瑞穂さんも、厳島さんも、倉成さんも生きてるし。あ、も、もしかして、知ってる奴が死んだ……とか?」
呻き声を必死で抑え、春原は遠慮がちに質問する。
すると、流していた涙の何倍もの雫が瞳から滝のように流れだす。
「うぁ、あ……ああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!」
手で覆っても、指の隙間から涙が抜け落ちて地面へと落下する。
出会ってから強気だった茜が初めて泣いた事に、春原はどうしたら良いのか分からなくなっていた。
自分にとって藤林杏が泣くほどの存在じゃないとは言わないが、涙は流れたりはしない。
そんな春原からの慰める言葉も励ましの言葉も、今の茜にはどれも届かないだろう。
だが、春原とてここでただ立っている訳にもいかない。
臨界点はとっくに破られて、今は呼吸すら苦しい状況になっているのだ。
だから、相手が女だろうが泣いていようが、大切な人を亡くしたのだろうが叫ぶ。
「ほら、さっさとトイレに行くぞ。誰か変な奴に見つかって、トイレにも行けないまま死にたくないからな」
「こんな時にふざけた冗談言わないで!」
「ふざけてねぇよ! 俺は真剣だ! 真剣にトイレに行きたいんだよ!」
「なっ!」
「だから、お前が歩いてくれなきゃ、僕は野糞垂れる羽目になっちゃうんだよ! へっ、そんなのお断りだね!」
「な――」
「僕は人間だ! ドカンと便器に腰を下ろして、我慢してるものを吐き出したい! だから一緒に来てくれ!」
顔を真っ赤にして自分の感情の全てをぶつける。これで動かなければ、もうどうしようもない。
「……春原さん、女の人にモテないでしょ」
「そ、そんな事ねーよ!」
「そうですね。泣いていたって始まらないですもんね」
「ま、泣くなとは言わないけどサハゥぇ!!」
本音も混じっていたが、今の叫びは春原なりのメッセージだった。
理由はどうあれ、ここで立ち止まっても仕方がないのだ。やるべき事はたくさんある。
春原に背を向け、涙に濡れた頬を袖で拭う。姉の死を受け止め、茜は笑顔を取り戻す。
「行きましょう。約束もありますしね――って、春原さん? ひッ」
振り返った茜が見たのは、目が完全に泳いで泡を吹き始めた気持ち悪い男だった。
「み、見える……なんか変なお花畑が……うひひ」
「ちょ、目を覚まして下さい! ほら、走って!」
不気味な動きで走る春原から目をそらし、茜は新市街を目指す。
(姉さん。そっちに行くの、もう少し遅くなるから)
そして、引っ張られるように蠢く春原は別のことを考えていた。
(あれ、岡崎に杏。なんで僕の夢に出てきてんの? なんだよ手招きして。気味が悪いな)
考えていたと言うより、生と死の狭間を彷徨っているだけだった。
死者の名前が読み上げられると、彼女は倒れるように地面に座り込む。
それに引きずられる様に、春原も中腰になってしまう。
「お、おいおい。ォォゥ……僕はトイレ行きたんだよ! 座るなよな」
「……」
「そっちだっとぇ、お、ここで、ァゥ、漏らすのは嫌だォォン!」
「……」
「ちょぉぉぉんん! へ、返事ぃいくらいぐぅ! しろヨン!」
がに股で踏ん張っていた春原に対し、茜は攻撃的な叫びを発する。
「黙れ!」
「!!」
その怒声にびびって、春原は尻餅をつく。が、尻に与えた衝撃でまた飛び上がる。
睨み返すと、茜は涙を流して睨んでいた。冗談ではなく、本当に怒っている表情で。
先程の放送で、藤林杏が死んだことを告げられたが、考える余裕はなかった。
それは生理現象というだけでなく、放送後しゃがみ込んだ茜が気になったからだ。
「だって瑞穂さんも、厳島さんも、倉成さんも生きてるし。あ、も、もしかして、知ってる奴が死んだ……とか?」
呻き声を必死で抑え、春原は遠慮がちに質問する。
すると、流していた涙の何倍もの雫が瞳から滝のように流れだす。
「うぁ、あ……ああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!」
手で覆っても、指の隙間から涙が抜け落ちて地面へと落下する。
出会ってから強気だった茜が初めて泣いた事に、春原はどうしたら良いのか分からなくなっていた。
自分にとって藤林杏が泣くほどの存在じゃないとは言わないが、涙は流れたりはしない。
そんな春原からの慰める言葉も励ましの言葉も、今の茜にはどれも届かないだろう。
だが、春原とてここでただ立っている訳にもいかない。
臨界点はとっくに破られて、今は呼吸すら苦しい状況になっているのだ。
だから、相手が女だろうが泣いていようが、大切な人を亡くしたのだろうが叫ぶ。
「ほら、さっさとトイレに行くぞ。誰か変な奴に見つかって、トイレにも行けないまま死にたくないからな」
「こんな時にふざけた冗談言わないで!」
「ふざけてねぇよ! 俺は真剣だ! 真剣にトイレに行きたいんだよ!」
「なっ!」
「だから、お前が歩いてくれなきゃ、僕は野糞垂れる羽目になっちゃうんだよ! へっ、そんなのお断りだね!」
「な――」
「僕は人間だ! ドカンと便器に腰を下ろして、我慢してるものを吐き出したい! だから一緒に来てくれ!」
顔を真っ赤にして自分の感情の全てをぶつける。これで動かなければ、もうどうしようもない。
「……春原さん、女の人にモテないでしょ」
「そ、そんな事ねーよ!」
「そうですね。泣いていたって始まらないですもんね」
「ま、泣くなとは言わないけどサハゥぇ!!」
本音も混じっていたが、今の叫びは春原なりのメッセージだった。
理由はどうあれ、ここで立ち止まっても仕方がないのだ。やるべき事はたくさんある。
春原に背を向け、涙に濡れた頬を袖で拭う。姉の死を受け止め、茜は笑顔を取り戻す。
「行きましょう。約束もありますしね――って、春原さん? ひッ」
振り返った茜が見たのは、目が完全に泳いで泡を吹き始めた気持ち悪い男だった。
「み、見える……なんか変なお花畑が……うひひ」
「ちょ、目を覚まして下さい! ほら、走って!」
不気味な動きで走る春原から目をそらし、茜は新市街を目指す。
(姉さん。そっちに行くの、もう少し遅くなるから)
そして、引っ張られるように蠢く春原は別のことを考えていた。
(あれ、岡崎に杏。なんで僕の夢に出てきてんの? なんだよ手招きして。気味が悪いな)
考えていたと言うより、生と死の狭間を彷徨っているだけだった。
◇ ◇ ◇ ◇
双樹の死体のもとに戻った孝之は、死んだ双樹を抱き起こし一生懸命話しかけていた。
「な、双樹ちゃん。ここは危ないからあっちに行こうよ」
だが、死体が返事をする訳もなく、双樹と呼ばれる死体は孝之にされるがままだった。
「ねぇ、早く起きてよ……双樹ちゃん」
双樹の開いた瞳孔には、さぞ滑稽に見えているだろう。
だが、孝之を苦しめる出来事はまだ終わっていなかった。
定時放送に時間となり、死者の名前が次々と挙げられていく。
そこには、ずっと好きだった一人の女性の名前があった。
「は、遙?」
意味もなく周囲を見渡す。双樹の死体を投げ捨て頭を抱える。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! 遙は死んじゃいない!」
誰もいない路地で、孝之はひたすらに喚き散らした。
彼の中では双樹も死んでいない。だから、遙も死ぬ訳がないのだ。
ならば答えは一つしかない。放送なんて嘘で双樹も遙も生きている。
「そ、そうだ! そうだよな!」
自分自身に言い聞かせ一安心する。誰も死んでいないなら悲しむ事はない。
参加者名簿に死者のチェックを入れず、地図の禁止エリアだけを記入した。
地図を戻そうとした時、デイパックの中で何か硬いものが指に当たる。
「いたっ」
取り出そうとしたところ、突然背中から声を掛けられる。
「鳴海……さん?」
振り返ってみると、そこには妹のように可愛がっていた少女と、全裸の男が立ち竦んでいた。
「あ、茜ちゃん!」
「止まって!」
近付こうとする孝之を怒鳴り声で制す。孝之にはなぜ叫んだか分からなかった。
「ど、どうしたのさ茜ちゃん」
「鳴海さん……その服、どうしたんですか?」
茜に指摘されて始めて気付いた。白いシャツには、知らぬ間に赤黒いペイントが施されていた。
「し、知らないよ! ホントだよ!」
「なら、なんでその二人は死んでいて、鳴海さんの服は血で染まっているんですか!?」
茜の言葉が孝之を攻め立てる。せっかく心のどこかに葬った記憶が蘇ってくる。
「し、死んでないよ! 双樹ちゃんは死んでないよ!」
茜に証明しようと、双樹の首根っこを掴んで勢いよく突き出す。
その拍子に、双樹の千切れかかっていた腕が重い音を立てて地面に落ちる。
「あ、腕取れちゃったね」
「な、ぁぁ――」
一生懸命に双樹の腕を結合させようと頑張る孝之。それは、見るに耐えられない光景だった。
腕を押し付けては肉片や皮膚が零れ落ち、骨は徐々に剥き出しになっていく。
押し付けては離れ、また押し付けては離れ……その作業を、孝之は至極真面目な顔で続ける。
茜は込み上げて来るものを抑えきれず、地面に嘔吐する。
そんな様子を見た全裸の男が、顔面を真っ青にしながらも怒りの声をあげた。
「アンタ、いい加減にしろよ! 何考えてんだよ!」
「え?」
双樹の死体から目を離し、二人の方を見て驚く。
「茜ちゃん。どうしたの? 大丈夫?」
「来るなよ!」
茜を庇うように、孝之と対峙する全裸の男。
「どけよ変態。俺は茜ちゃんと話しをしてたんだぞ」
「うるせぇ! 僕達……厳密に言うと、僕には行かなくちゃならない場所があるんだぼぶぅッ!」
最後まで喋る前に、全裸の男は茜に跳ね除けられた。そして、尻を突き出して痙攣を始める。
それを無視して立ち上がった茜は、孝之の真意を探るべくゆっくりと質問する。
「鳴海さん。さっきの放送は聞きましたか?」
「うん? 聞いたよ。ほら、地図もチェックしたし」
そう言って、デイパックから地図を取り出す。だが、名簿は取り出さない。
「なら聞いていたでしょう? 姉さん……死んじゃったんですよ」
悲痛な表情で事実を告げる茜に対し、孝之は自然な表情で返答した。
「何言ってるの茜ちゃん? 遙は死んでないよ?」
「え?」
「遙だけじゃない。この双樹ちゃんだって、今は寝てるけど生きてるよ」
生きている事をアピールしたいのか、双樹の死体を左右に振り回す。その度に、肉片が周囲に飛び散る。
その様子を見て茜は顔を背けた。そんな態度に気付く事無く、孝之は死体と踊り続けた。
やがて、心の内で重大な決断を決めた茜は、孝之に背を向け一言だけ告げる。
「分かりました……行きましょう春原さん。ここには、もう居たくありません」
「ォエ! と、トイレは!? 着替えは!?」
「トイレは博物館まで待ってください! 着替えは、これでもどうぞ!」
露店を構えていた婦人服店の籠から、適当なものを掴み取り春原に投げつけ歩き出す。
春原もそれを慌てて拾い、茜に従うように尻を押さえながら歩き始めた。
「ま、待ってよ! 茜ちゃん!」
「ついて来るな!!」
沙羅の死体と共に近寄ってきた孝之を拒絶する。
今まで見たことのない、悲しみと怒りと侮蔑を込めた顔だった。
「鳴海孝之。二度と私の前に現れないで下さい」
「ぁ、ぁぁぁ~……」
力なく崩れ落ちる孝之。茜との距離は確実に広まっていく。
追いかければ間に合うが、拒絶された事実が孝之の心を奈落へと落としていた。
「な、双樹ちゃん。ここは危ないからあっちに行こうよ」
だが、死体が返事をする訳もなく、双樹と呼ばれる死体は孝之にされるがままだった。
「ねぇ、早く起きてよ……双樹ちゃん」
双樹の開いた瞳孔には、さぞ滑稽に見えているだろう。
だが、孝之を苦しめる出来事はまだ終わっていなかった。
定時放送に時間となり、死者の名前が次々と挙げられていく。
そこには、ずっと好きだった一人の女性の名前があった。
「は、遙?」
意味もなく周囲を見渡す。双樹の死体を投げ捨て頭を抱える。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! 遙は死んじゃいない!」
誰もいない路地で、孝之はひたすらに喚き散らした。
彼の中では双樹も死んでいない。だから、遙も死ぬ訳がないのだ。
ならば答えは一つしかない。放送なんて嘘で双樹も遙も生きている。
「そ、そうだ! そうだよな!」
自分自身に言い聞かせ一安心する。誰も死んでいないなら悲しむ事はない。
参加者名簿に死者のチェックを入れず、地図の禁止エリアだけを記入した。
地図を戻そうとした時、デイパックの中で何か硬いものが指に当たる。
「いたっ」
取り出そうとしたところ、突然背中から声を掛けられる。
「鳴海……さん?」
振り返ってみると、そこには妹のように可愛がっていた少女と、全裸の男が立ち竦んでいた。
「あ、茜ちゃん!」
「止まって!」
近付こうとする孝之を怒鳴り声で制す。孝之にはなぜ叫んだか分からなかった。
「ど、どうしたのさ茜ちゃん」
「鳴海さん……その服、どうしたんですか?」
茜に指摘されて始めて気付いた。白いシャツには、知らぬ間に赤黒いペイントが施されていた。
「し、知らないよ! ホントだよ!」
「なら、なんでその二人は死んでいて、鳴海さんの服は血で染まっているんですか!?」
茜の言葉が孝之を攻め立てる。せっかく心のどこかに葬った記憶が蘇ってくる。
「し、死んでないよ! 双樹ちゃんは死んでないよ!」
茜に証明しようと、双樹の首根っこを掴んで勢いよく突き出す。
その拍子に、双樹の千切れかかっていた腕が重い音を立てて地面に落ちる。
「あ、腕取れちゃったね」
「な、ぁぁ――」
一生懸命に双樹の腕を結合させようと頑張る孝之。それは、見るに耐えられない光景だった。
腕を押し付けては肉片や皮膚が零れ落ち、骨は徐々に剥き出しになっていく。
押し付けては離れ、また押し付けては離れ……その作業を、孝之は至極真面目な顔で続ける。
茜は込み上げて来るものを抑えきれず、地面に嘔吐する。
そんな様子を見た全裸の男が、顔面を真っ青にしながらも怒りの声をあげた。
「アンタ、いい加減にしろよ! 何考えてんだよ!」
「え?」
双樹の死体から目を離し、二人の方を見て驚く。
「茜ちゃん。どうしたの? 大丈夫?」
「来るなよ!」
茜を庇うように、孝之と対峙する全裸の男。
「どけよ変態。俺は茜ちゃんと話しをしてたんだぞ」
「うるせぇ! 僕達……厳密に言うと、僕には行かなくちゃならない場所があるんだぼぶぅッ!」
最後まで喋る前に、全裸の男は茜に跳ね除けられた。そして、尻を突き出して痙攣を始める。
それを無視して立ち上がった茜は、孝之の真意を探るべくゆっくりと質問する。
「鳴海さん。さっきの放送は聞きましたか?」
「うん? 聞いたよ。ほら、地図もチェックしたし」
そう言って、デイパックから地図を取り出す。だが、名簿は取り出さない。
「なら聞いていたでしょう? 姉さん……死んじゃったんですよ」
悲痛な表情で事実を告げる茜に対し、孝之は自然な表情で返答した。
「何言ってるの茜ちゃん? 遙は死んでないよ?」
「え?」
「遙だけじゃない。この双樹ちゃんだって、今は寝てるけど生きてるよ」
生きている事をアピールしたいのか、双樹の死体を左右に振り回す。その度に、肉片が周囲に飛び散る。
その様子を見て茜は顔を背けた。そんな態度に気付く事無く、孝之は死体と踊り続けた。
やがて、心の内で重大な決断を決めた茜は、孝之に背を向け一言だけ告げる。
「分かりました……行きましょう春原さん。ここには、もう居たくありません」
「ォエ! と、トイレは!? 着替えは!?」
「トイレは博物館まで待ってください! 着替えは、これでもどうぞ!」
露店を構えていた婦人服店の籠から、適当なものを掴み取り春原に投げつけ歩き出す。
春原もそれを慌てて拾い、茜に従うように尻を押さえながら歩き始めた。
「ま、待ってよ! 茜ちゃん!」
「ついて来るな!!」
沙羅の死体と共に近寄ってきた孝之を拒絶する。
今まで見たことのない、悲しみと怒りと侮蔑を込めた顔だった。
「鳴海孝之。二度と私の前に現れないで下さい」
「ぁ、ぁぁぁ~……」
力なく崩れ落ちる孝之。茜との距離は確実に広まっていく。
追いかければ間に合うが、拒絶された事実が孝之の心を奈落へと落としていた。
◇ ◇ ◇ ◇
黙々と歩き続ける茜は泣き続けていた。
自分が受け止めた事実を、よりにもよって姉の恋人は受け入れられなかったのだ。
ただ沈んでしまっていただけならば、茜も支えになってあげられたかもしれない。
だが、あそこまで狂気的に現実逃避した人間には何を言っても無駄だろう。
だからこれ以降、茜は自身の思い出から鳴海孝之を消し去る事に決めた。
(さようなら孝之さん。私の好きだった人……)
大切な姉と死に別れ、大好きだった人と決別し、茜の精神はボロボロだった。
それでも、足だけは博物館を目指して歩き続ける。
やがて市街地から離れたあたりで、茜の足は突然ストップする。
原因は、先程から片手で持った衣類を見つめ、もう片方の手で尻を押さえる春原だ。
何度か小言を呟きながら、唸り声を挙げている。いい加減腹が立ってくる。
「ほら、いい加減その服着ないさいよ! なんでまだ全裸でいるのよ!?」
「そ、そんな事言ったって」
色々な意味でモジモジしながら、春原は衣類を背中に隠す。
「分かった。私は後ろを向いてるから。早くしてよね!」
「き、着替えるよォォォィェィ」
背中越しに、衣類のこすれる音がする。数秒後にはシンと静まり、着替えは終了した。
茜は振り返ると、今までの鬱憤や怒りや悲しみを一瞬で忘れてしまった。
「ひ、あっはっはははははははははは……ゲホッゲホッ、はぁはぁ、な、なんて格好してるのよ!?」
「そりゃ僕が聞きたいよ! なんでこんなの掴んだんだよ!?」
春原の姿は、全裸に黒のガーターベルト(ラメ入り)に金メッキの網タイツ。そしてビチビチの紫のTバック姿だった。
もちろん、上半身は今まで通り裸のまま。もう、笑わせるつもりとしか思えない。
「なんで、ひぃーお腹痛い……じ、自分で、おかしー、駄目よ、目をあわせられない!!」
「選んだのも着替えろって言ったのもそっちだろ!?」
お互いに違い意味で涙を浮かべながら、ひたすら不毛なやりとりを繰り返していた。
そして数分後、思い出したように尻を押さえだした春原を見て茜は思い出す。
「ごめん。トイレ行けなかったね……」
市街地での事を思い出し、若干暗くなる。
「いーよ。俺だってあんな所じゃトイレって気分になれないさ」
そっぽを向いて励ますように言葉をかける。
そんな態度に感謝の気持ちを込めてありがとうと伝えるつもりだったが、どうしても笑ってしまう。
「ぷっくふふ……ぷぷ」
「だ・か・ら!! もう笑うなよ! 良いから、早く行くぞぉぉぉぉぉもほふぅ!」
太陽を背に受け身悶える春原は、誰がどう見ても変態であった。
自分が受け止めた事実を、よりにもよって姉の恋人は受け入れられなかったのだ。
ただ沈んでしまっていただけならば、茜も支えになってあげられたかもしれない。
だが、あそこまで狂気的に現実逃避した人間には何を言っても無駄だろう。
だからこれ以降、茜は自身の思い出から鳴海孝之を消し去る事に決めた。
(さようなら孝之さん。私の好きだった人……)
大切な姉と死に別れ、大好きだった人と決別し、茜の精神はボロボロだった。
それでも、足だけは博物館を目指して歩き続ける。
やがて市街地から離れたあたりで、茜の足は突然ストップする。
原因は、先程から片手で持った衣類を見つめ、もう片方の手で尻を押さえる春原だ。
何度か小言を呟きながら、唸り声を挙げている。いい加減腹が立ってくる。
「ほら、いい加減その服着ないさいよ! なんでまだ全裸でいるのよ!?」
「そ、そんな事言ったって」
色々な意味でモジモジしながら、春原は衣類を背中に隠す。
「分かった。私は後ろを向いてるから。早くしてよね!」
「き、着替えるよォォォィェィ」
背中越しに、衣類のこすれる音がする。数秒後にはシンと静まり、着替えは終了した。
茜は振り返ると、今までの鬱憤や怒りや悲しみを一瞬で忘れてしまった。
「ひ、あっはっはははははははははは……ゲホッゲホッ、はぁはぁ、な、なんて格好してるのよ!?」
「そりゃ僕が聞きたいよ! なんでこんなの掴んだんだよ!?」
春原の姿は、全裸に黒のガーターベルト(ラメ入り)に金メッキの網タイツ。そしてビチビチの紫のTバック姿だった。
もちろん、上半身は今まで通り裸のまま。もう、笑わせるつもりとしか思えない。
「なんで、ひぃーお腹痛い……じ、自分で、おかしー、駄目よ、目をあわせられない!!」
「選んだのも着替えろって言ったのもそっちだろ!?」
お互いに違い意味で涙を浮かべながら、ひたすら不毛なやりとりを繰り返していた。
そして数分後、思い出したように尻を押さえだした春原を見て茜は思い出す。
「ごめん。トイレ行けなかったね……」
市街地での事を思い出し、若干暗くなる。
「いーよ。俺だってあんな所じゃトイレって気分になれないさ」
そっぽを向いて励ますように言葉をかける。
そんな態度に感謝の気持ちを込めてありがとうと伝えるつもりだったが、どうしても笑ってしまう。
「ぷっくふふ……ぷぷ」
「だ・か・ら!! もう笑うなよ! 良いから、早く行くぞぉぉぉぉぉもほふぅ!」
太陽を背に受け身悶える春原は、誰がどう見ても変態であった。
◇ ◇ ◇ ◇
すぐ傍でを観察していた杉並は、死体を抱えた男を見て鳥肌を立てていた。
(平常な人間のする事じゃないな)
男を追ってみたものの、しているのは死体に話しかけたり周囲に喚き散らしなど。
おおよそ、情報の得られそうな状態では無かった。
(しかし、これは死体の反応も拾うのか)
三人いると思ってたが動いていたのは一人だけ、あとは動かぬ屍だ。
それだけは、ここに来て有益だと思えた情報だった。
あとは、この場から立ち去るだけだ。そう思った瞬間、反応が二つ増える。
(誰か来たのか)
とりあえず、もう少し様子を見るべく物陰に隠れる。
暫くすると、手錠をかけた女と全裸の男が、男に声をかけた。
(会話が聞き取れないな……もう少し近付くか)
幸い、男女三名は話に夢中で杉並の気配に気付く事はなかった。
気配を殺して、三人の会話に耳を傾け集中する。
「ま、待ってよ! 茜ちゃん!」
「ついて来るな!!」
数十秒後、少女の叫びと共に会話は打ち切られた、男女が遠ざかっていく。
一方の男は、デイパックを抱えブツブツと何かを呟いていた。
(潮時だな)
もうこれ以上この男を観察して得るものはない。次のターゲットは、あの二人組でいいだろう。
そう結論付けてゆっくりと男から離れ――杉並は地面に崩れた。
(平常な人間のする事じゃないな)
男を追ってみたものの、しているのは死体に話しかけたり周囲に喚き散らしなど。
おおよそ、情報の得られそうな状態では無かった。
(しかし、これは死体の反応も拾うのか)
三人いると思ってたが動いていたのは一人だけ、あとは動かぬ屍だ。
それだけは、ここに来て有益だと思えた情報だった。
あとは、この場から立ち去るだけだ。そう思った瞬間、反応が二つ増える。
(誰か来たのか)
とりあえず、もう少し様子を見るべく物陰に隠れる。
暫くすると、手錠をかけた女と全裸の男が、男に声をかけた。
(会話が聞き取れないな……もう少し近付くか)
幸い、男女三名は話に夢中で杉並の気配に気付く事はなかった。
気配を殺して、三人の会話に耳を傾け集中する。
「ま、待ってよ! 茜ちゃん!」
「ついて来るな!!」
数十秒後、少女の叫びと共に会話は打ち切られた、男女が遠ざかっていく。
一方の男は、デイパックを抱えブツブツと何かを呟いていた。
(潮時だな)
もうこれ以上この男を観察して得るものはない。次のターゲットは、あの二人組でいいだろう。
そう結論付けてゆっくりと男から離れ――杉並は地面に崩れた。
◇ ◇ ◇ ◇
茜に拒絶された孝之は、頭の中が真っ白になっていた。
(なんで茜ちゃんは俺にあんな事言ったんだ?)
理解できない。普段の茜ならばあんな顔はしない。
(茜ちゃん……どうしちゃったのかなぁ)
頭で必死に考えながら、意味もなくデイパックに手を突っ込む。
そこで先程取り出そうとしたノートパソコンが地面に置かれる。
だが、取り出した本人は別の事を考えていた。
(なんであんなあんなあんなあんなあんなあんな――あ)
そこで孝之に天啓が閃く。真っ白にしたからこそ得られた答えだった。
(これは夢なんだ、だから茜ちゃんは俺にあんな態度をとったんだ)
答えが解かれば茜の態度も頷ける。そう勝手に自分の中で結論付ける。
その後は、あれよあれよと思考が構築されていった。
(そうだ。これが俺の夢なら、死んだ人はつまり目が覚めただけなんだ)
ありえない理論も、孝之の中では平然と決定付けられていく。
(つまり、双樹ちゃんも遙も目が覚めたって事だよな。うん!)
何も心配する事は無かった。これは夢だから壊れても『蘇る』のだ。
(こんなおかしな世界にいたらみんな大変だよな。そうと分かれば話は早いぜ)
至極当然のように、孝之は誓いを立てる。
(みんなを『起こして』あげよう!)
そこで、ようやく勝手に起動していたノートパソコンに気付く。
「なんだコレ」
(なんで茜ちゃんは俺にあんな事言ったんだ?)
理解できない。普段の茜ならばあんな顔はしない。
(茜ちゃん……どうしちゃったのかなぁ)
頭で必死に考えながら、意味もなくデイパックに手を突っ込む。
そこで先程取り出そうとしたノートパソコンが地面に置かれる。
だが、取り出した本人は別の事を考えていた。
(なんであんなあんなあんなあんなあんなあんな――あ)
そこで孝之に天啓が閃く。真っ白にしたからこそ得られた答えだった。
(これは夢なんだ、だから茜ちゃんは俺にあんな態度をとったんだ)
答えが解かれば茜の態度も頷ける。そう勝手に自分の中で結論付ける。
その後は、あれよあれよと思考が構築されていった。
(そうだ。これが俺の夢なら、死んだ人はつまり目が覚めただけなんだ)
ありえない理論も、孝之の中では平然と決定付けられていく。
(つまり、双樹ちゃんも遙も目が覚めたって事だよな。うん!)
何も心配する事は無かった。これは夢だから壊れても『蘇る』のだ。
(こんなおかしな世界にいたらみんな大変だよな。そうと分かれば話は早いぜ)
至極当然のように、孝之は誓いを立てる。
(みんなを『起こして』あげよう!)
そこで、ようやく勝手に起動していたノートパソコンに気付く。
「なんだコレ」
≪6時間生存オメデトウ!≫
このメッセージを読んでいるという事は、君はまだ生きているのだな。
素晴らしい、実に素晴らしい! もっと楽しませてくれ!
そんな君に、僕からのささやかなプレゼントだ。受け取りたまえ。
今回の追加機能は、指定した参加者の首輪を通して電磁波を流せる機能だ。
これを喰らえば、どんな参加者とて3分程度は地面に這い蹲る。
そこをどうするかは、賢明な君なら理解してくれるだろう。
だが、一度使うと3時間の充電時間が必要になるぞ。タイミングを見誤るなよ。
ああ、それとプレゼントは毎回6時間ごとに送ってあげよう。
有効に使ってくれる事を期待しているよ。
このメッセージを読んでいるという事は、君はまだ生きているのだな。
素晴らしい、実に素晴らしい! もっと楽しませてくれ!
そんな君に、僕からのささやかなプレゼントだ。受け取りたまえ。
今回の追加機能は、指定した参加者の首輪を通して電磁波を流せる機能だ。
これを喰らえば、どんな参加者とて3分程度は地面に這い蹲る。
そこをどうするかは、賢明な君なら理解してくれるだろう。
だが、一度使うと3時間の充電時間が必要になるぞ。タイミングを見誤るなよ。
ああ、それとプレゼントは毎回6時間ごとに送ってあげよう。
有効に使ってくれる事を期待しているよ。
差出人:「&@;」。#
メッセージを読み終えると、画面が名前で埋め尽くされたものに切り替わる。
(おお! 面白そうだぜ!)
試してみたいが、近くには『起きた』双樹ともう一人の少女しかいない。
茜に使おうか考えるが、それは最後の楽しみに取っておく事にした。
(最初は……目に付いた名前でいいや。ん~、これでいいや)
名前の部分をクリックしようとするが、手が滑って斜め上の人物をクリックしてしまう。
それと同時に、建物の陰で何かが倒れる音を聞いた。
ノートパソコンを片手におそるおそる近付いてみると、制服を着た男が痙攣して倒れていた。
「も、もしも~し」
呼びかけてみるが反応は鈍い。近くに落ちていた鉄パイプで突っついてみる。
「ぁが」
「あ、もしかして間違ってクリックしちゃった人? おー、凄いなこれ」
ノートパソコンを安全なところに置くと、孝之は鉄パイプを男に突き刺した。
「うごッほッ」
「おいおい。夢なんだから一発で貫通ぐらいおまけしてくれよなぁ」
自分の夢に文句を言いながら、孝之は先程よりもさらに鋭い一撃を男の胸に撃ち込む。
その瞬間、空気の破裂するような音と金属音が孝之の耳に届いた。
鉄パイプは見事に男の心臓部分に突き刺さっている。僅かな隙間から、空気の抜ける音が聞こえた。
一仕事終えた孝之は、気持ち良さそうに汗を拭った。
「ったく、もっと簡単にすませるものないかなぁ」
不気味に痙攣を続け、口笛を吹くような男の声を無視して、孝之は周囲を探索する。
そして、ある場所に目がとまると、昔観た映画を思い出した。
「え~っと……おお、コレだコレだ!」
孝之が入ったのは金物屋。手に取ったのは、電動式のチェーンソーだった。
「一度やってみたかったんだよな。現実にやったら犯罪だけど、夢ならいいだろ」
備え付けの説明書を読み、難なく電源を入れる事に成功した。
風を切り刻む金属音が、孝之の心を昂らせる。
「よっと、意外と重いけど慣れればそうでもないかな……えっと」
金属音を響かせながら、名も知らぬ少女の腹部に刃を押し当てる。
すると、動かないはずの少女が地面でダンスを踊り始める。
ファンサービスとばかりに、血や肉片を辺り一面にばら撒いて。
「いいねぇ! こいつは下手なゲームよか楽しィィィィなぁ!」
嬉しさのあまり、自分で放り投げた双樹の顔に刃がめり込む。
眼球や鼻がミキシングされ、顔面は血という名のイチゴジャムだらけになっていた。
「あひゃひゃひゃひゃ! 双樹ちゃん顔が真っ赤だぁ! ごめんよぉ!」
散らばった鼻を顔だった中心に埋め込む。眼球はどちらも砕けていたため見つからなかった。
「ん~。銃も撃ってみたいけど、この興奮はやめられれれれれれれれれれれれれれれ」
さえずりながら、最後に鉄パイプを突き刺した男のところまで行く。
既に事切れているのか、男は痙攣すらやめていた。
「じゃじゃーん! かっいったっいショーーーーーーーー!!」
チェーンソーを高々と振り上げると、男の頭上から股の部分まで一気に刃を引く。
左右バラバラに踊る男は、手足をばたつかせ徐々に切断されていった。
「半分にするのって、意外と簡単だぁ」
ようやくチェーンソーの電源を落とし、背伸びして笑い出す。
「あはははははははっはっはっは……いやぁぁぁぁぁっはははははははははーーーーーー!」
人を切り刻む興奮を覚えた孝之は、今までの暗い気持ちから脱却していた。
(自由だ! ここではどんな悪い事しても大丈夫なんだ! だってこれは夢なんだから!)
そこで、孝之は男の傍に落ちていた小さな機械を拾い上げる。見てみると、白く光る点が四つ。
「これって」
試しに、孝之自身が移動してみる。すると白い点の一つが他の三つから離れていく。
「発見器……これ、夢の中の神様が俺に頑張れって応援してくれてる証拠だよなぁ!」
周囲の人間がどこに居るか分かる。相手の名前さえ知れば、電磁波を流せる。
パソコンの充電やチェーンソーの予備は忘れてはいけない。焦るのは気持ち良くない。
近くの紳士服店の窓ガラスに、少女の死体を投げつけガラスを粉々にする。
遠慮無く土足で奥まで入り込み洗面台を探す。服は全て脱ぎ捨てて、顔を洗い髪型をセットし直す。洋服もおしゃれに決めてみた。
鏡に映った自分の表情は頼もしくみえる。これで準備万端だ。やりたい事は一つ。
「生きた人間にチェーンソーォォォォォォォォォぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおゥゥゥ!!」
欲求に逆らう必要は皆無。なぜならコレは、全て夢なのだから。
(おお! 面白そうだぜ!)
試してみたいが、近くには『起きた』双樹ともう一人の少女しかいない。
茜に使おうか考えるが、それは最後の楽しみに取っておく事にした。
(最初は……目に付いた名前でいいや。ん~、これでいいや)
名前の部分をクリックしようとするが、手が滑って斜め上の人物をクリックしてしまう。
それと同時に、建物の陰で何かが倒れる音を聞いた。
ノートパソコンを片手におそるおそる近付いてみると、制服を着た男が痙攣して倒れていた。
「も、もしも~し」
呼びかけてみるが反応は鈍い。近くに落ちていた鉄パイプで突っついてみる。
「ぁが」
「あ、もしかして間違ってクリックしちゃった人? おー、凄いなこれ」
ノートパソコンを安全なところに置くと、孝之は鉄パイプを男に突き刺した。
「うごッほッ」
「おいおい。夢なんだから一発で貫通ぐらいおまけしてくれよなぁ」
自分の夢に文句を言いながら、孝之は先程よりもさらに鋭い一撃を男の胸に撃ち込む。
その瞬間、空気の破裂するような音と金属音が孝之の耳に届いた。
鉄パイプは見事に男の心臓部分に突き刺さっている。僅かな隙間から、空気の抜ける音が聞こえた。
一仕事終えた孝之は、気持ち良さそうに汗を拭った。
「ったく、もっと簡単にすませるものないかなぁ」
不気味に痙攣を続け、口笛を吹くような男の声を無視して、孝之は周囲を探索する。
そして、ある場所に目がとまると、昔観た映画を思い出した。
「え~っと……おお、コレだコレだ!」
孝之が入ったのは金物屋。手に取ったのは、電動式のチェーンソーだった。
「一度やってみたかったんだよな。現実にやったら犯罪だけど、夢ならいいだろ」
備え付けの説明書を読み、難なく電源を入れる事に成功した。
風を切り刻む金属音が、孝之の心を昂らせる。
「よっと、意外と重いけど慣れればそうでもないかな……えっと」
金属音を響かせながら、名も知らぬ少女の腹部に刃を押し当てる。
すると、動かないはずの少女が地面でダンスを踊り始める。
ファンサービスとばかりに、血や肉片を辺り一面にばら撒いて。
「いいねぇ! こいつは下手なゲームよか楽しィィィィなぁ!」
嬉しさのあまり、自分で放り投げた双樹の顔に刃がめり込む。
眼球や鼻がミキシングされ、顔面は血という名のイチゴジャムだらけになっていた。
「あひゃひゃひゃひゃ! 双樹ちゃん顔が真っ赤だぁ! ごめんよぉ!」
散らばった鼻を顔だった中心に埋め込む。眼球はどちらも砕けていたため見つからなかった。
「ん~。銃も撃ってみたいけど、この興奮はやめられれれれれれれれれれれれれれれ」
さえずりながら、最後に鉄パイプを突き刺した男のところまで行く。
既に事切れているのか、男は痙攣すらやめていた。
「じゃじゃーん! かっいったっいショーーーーーーーー!!」
チェーンソーを高々と振り上げると、男の頭上から股の部分まで一気に刃を引く。
左右バラバラに踊る男は、手足をばたつかせ徐々に切断されていった。
「半分にするのって、意外と簡単だぁ」
ようやくチェーンソーの電源を落とし、背伸びして笑い出す。
「あはははははははっはっはっは……いやぁぁぁぁぁっはははははははははーーーーーー!」
人を切り刻む興奮を覚えた孝之は、今までの暗い気持ちから脱却していた。
(自由だ! ここではどんな悪い事しても大丈夫なんだ! だってこれは夢なんだから!)
そこで、孝之は男の傍に落ちていた小さな機械を拾い上げる。見てみると、白く光る点が四つ。
「これって」
試しに、孝之自身が移動してみる。すると白い点の一つが他の三つから離れていく。
「発見器……これ、夢の中の神様が俺に頑張れって応援してくれてる証拠だよなぁ!」
周囲の人間がどこに居るか分かる。相手の名前さえ知れば、電磁波を流せる。
パソコンの充電やチェーンソーの予備は忘れてはいけない。焦るのは気持ち良くない。
近くの紳士服店の窓ガラスに、少女の死体を投げつけガラスを粉々にする。
遠慮無く土足で奥まで入り込み洗面台を探す。服は全て脱ぎ捨てて、顔を洗い髪型をセットし直す。洋服もおしゃれに決めてみた。
鏡に映った自分の表情は頼もしくみえる。これで準備万端だ。やりたい事は一つ。
「生きた人間にチェーンソーォォォォォォォォォぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおゥゥゥ!!」
欲求に逆らう必要は皆無。なぜならコレは、全て夢なのだから。
あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃあひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃあひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
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あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃあひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
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あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃあひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃあひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃあひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃあひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ――
【杉並@D.C.P.S. 死亡】
【B-3 新市街東 /1日目 朝】
【春原陽平@CLANNAD】
【装備:投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式 ipod(岡崎のラップ以外にもなにか入ってるかも……?)】
【状態:別の意味で瀕死、瑞穂に一目惚れ、未だ生理現象緊急指令発令中】
【思考・行動】
0:どうみても限界突破です。本当にありがとうございました
1:手錠をどうにかしたい
2:今度こそまともな衣類を手に入れたい
3:博物館を目指し、脱出のための協力者を探す
4:瑞穂を守る。茜も守ってやるさ!
5:瑞穂と合流したい。
6:知り合いを探す
【備考】
※右手首に手錠がかかっており、茜とつながれています
※手錠の鎖は投げナイフ程度の刃物では切れない。銃ならたぶん大丈夫
※瑞穂が自分に好意を持ってると誤解
※現在靴を除いて全裸に黒のガーターベルト(ラメ入り)と金メッキの網タイツに紫のTバック(女性用)状態です
※腹をくだしました
【装備:投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式 ipod(岡崎のラップ以外にもなにか入ってるかも……?)】
【状態:別の意味で瀕死、瑞穂に一目惚れ、未だ生理現象緊急指令発令中】
【思考・行動】
0:どうみても限界突破です。本当にありがとうございました
1:手錠をどうにかしたい
2:今度こそまともな衣類を手に入れたい
3:博物館を目指し、脱出のための協力者を探す
4:瑞穂を守る。茜も守ってやるさ!
5:瑞穂と合流したい。
6:知り合いを探す
【備考】
※右手首に手錠がかかっており、茜とつながれています
※手錠の鎖は投げナイフ程度の刃物では切れない。銃ならたぶん大丈夫
※瑞穂が自分に好意を持ってると誤解
※現在靴を除いて全裸に黒のガーターベルト(ラメ入り)と金メッキの網タイツに紫のTバック(女性用)状態です
※腹をくだしました
【涼宮茜@君が望む永遠】
【装備:国崎最高ボタン、投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式、手製の廃坑内部の地図(全体の2~3割ほど完成)】
【状態:健康、若干の苛立ち】
【思考・行動】
1:諦めずに、必ず生き残る
2:手錠をどうにかしたい
3:春原をトイレにぶち込みたい
4:博物館へ行き、瑞穂と合流
3:鳴海さんとは二度と会いたくない
【備考】
※左手首に手錠がかかっており、陽平とつながれています
※手錠の鎖は投げナイフ程度の刃物では切れない。銃ならたぶん大丈夫
【装備:国崎最高ボタン、投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式、手製の廃坑内部の地図(全体の2~3割ほど完成)】
【状態:健康、若干の苛立ち】
【思考・行動】
1:諦めずに、必ず生き残る
2:手錠をどうにかしたい
3:春原をトイレにぶち込みたい
4:博物館へ行き、瑞穂と合流
3:鳴海さんとは二度と会いたくない
【備考】
※左手首に手錠がかかっており、陽平とつながれています
※手錠の鎖は投げナイフ程度の刃物では切れない。銃ならたぶん大丈夫
【B-3 新市街中心 /1日目 朝】
【鳴海孝之@君が望む永遠】
【装備:首輪探知レーダー、電動式チェーンソー】
【所持品:支給品一式 ノートパソコン(六時間/六時間)、ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×6】
【状態:元気百倍! 勇気満点! 精神崩壊! 嗚呼自由!】
【思考・行動】
1:あひゃひゃひゃひゃ!(一人の相手には名前を聞いてから殺す)
2:ひゃっはーーーーーーーーー!(大勢の場合、無害を装って一人ずつ時間をかけて殺す)
3:あんなこ~とイイなッ!で~きたらイイなッ!
4:最後は茜をひ、ひひ、ひひひ、ひひいひひひひひひひひッッ!
【備考】
※パソコンの新機能「微粒電磁波」は、3時間に一回で効果は3分です。一度使用すると自動的に充電タイマー発動します。
また、6時間使用しなかったからと言って、2回連続で使えるわけではありません。それと死人にも使用できます。
※チェーンソのバッテリーは、エンジンをかけっ放しで2時間は持ちます。
※顔を洗い、服は綺麗なものに着替えました。着ていた服は【B-3】の紳士服店のゴミ箱に入っています。
※竜宮レナ、白鐘双樹、杉並の死体は【B-3】中心部で判別不可能な状態になっています。
【装備:首輪探知レーダー、電動式チェーンソー】
【所持品:支給品一式 ノートパソコン(六時間/六時間)、ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×6】
【状態:元気百倍! 勇気満点! 精神崩壊! 嗚呼自由!】
【思考・行動】
1:あひゃひゃひゃひゃ!(一人の相手には名前を聞いてから殺す)
2:ひゃっはーーーーーーーーー!(大勢の場合、無害を装って一人ずつ時間をかけて殺す)
3:あんなこ~とイイなッ!で~きたらイイなッ!
4:最後は茜をひ、ひひ、ひひひ、ひひいひひひひひひひひッッ!
【備考】
※パソコンの新機能「微粒電磁波」は、3時間に一回で効果は3分です。一度使用すると自動的に充電タイマー発動します。
また、6時間使用しなかったからと言って、2回連続で使えるわけではありません。それと死人にも使用できます。
※チェーンソのバッテリーは、エンジンをかけっ放しで2時間は持ちます。
※顔を洗い、服は綺麗なものに着替えました。着ていた服は【B-3】の紳士服店のゴミ箱に入っています。
※竜宮レナ、白鐘双樹、杉並の死体は【B-3】中心部で判別不可能な状態になっています。
081:博物館戦争(後編) | 投下順に読む | 083:童貞男の苦悩と考え |
081:博物館戦争(後編) | 時系列順に読む | 083:童貞男の苦悩と考え |
061:下半身に罪はない!~トイレを求めて全力疾走~ | 春原陽平 | 094:瞬間、心、重ねて/さよならの囁き(前編) |
061:下半身に罪はない!~トイレを求めて全力疾走~ | 涼宮茜 | 094:瞬間、心、重ねて/さよならの囁き(前編) |
062:それぞれの失敗? | 鳴海孝之 | 089:童貞男の孤軍奮闘 |
062:それぞれの失敗? | 杉並 |