未知との遭遇 ◆g8qXEEkC.6


「もうすぐ、夜が明ける時間ね……」
薄く開かれた窓から星空を見上げながら、私は小さく呟く。
淡い月明かりに照らされた、真っ赤な椅子に身を委ねながら軽く一息。
ごみ山での襲撃からはすでに数時間が経っていた。

耳の長い少女から逃げ果せた後、島の最北西エリアへと移動した私は、すぐに仲間達の探索を再開したのだが……
所詮は小娘の体と言うべきなのだろうか、想像以上の疲労に限界を感じ、工場の一角で休息を取っていた。
おそらくは事務所なんだろう、机や棚の立ち並ぶ小部屋。その窓辺にあった長椅子に体を預け、私は一息を吐く。
これでワインがあれば言う事無しなのだが、それはさすがに贅沢という物だろう。
襲撃と全力疾走とで疲れ果てた頭と体を休ませながらも、私はこれからの事について考え始めていた。

もちろん、最優先は仲間達との合流だろう。
彼等が末期症状へと陥り、暴走の末に死亡する可能性を消すという目的もそうだが、
あの槍を持った少女のような、殺し合いに乗った危険人物に対処するためにも信頼できる仲間で集まったほうがいい。
それから、羽入の事もある。この島に来てから一度も姿を見せない彼女も探さなければならない。
(けど、焦っては駄目ね。死んでしまっては元も子もないもの)
そう、自分が死んでは意味がないのだ。
羽入が姿を現さない以上、ループはできない可能性が高い。
むしろ、やり直しは効かないと考えるべきだろう。犀は常に最悪の方向に転がるのだから。
チャンスは一回だけ。何の予備知識もなし。だからこそ、慎重に行動しなければならない。
(とりあえずは放送までは休憩ね……)
そして放送が終了した後に、仲間達を捜しながら、参加者が集まるだろう新市街へとC-1経由で移動する。
この計画の問題点は一つ。人が集まるということは、危険人物も集まるという事だ。
(身を守るための武器が必要ね)
殺し合いに乗った人間に対する自衛策が無ければ、非力な小娘に過ぎない自分は瞬く間に餌食となるだろう。
先程のように、相手が自分の外見に油断するとは限らないのだ。

「そういえば、あの二つも一応当たりって名目だったわね」
ふと残った自らの支給品へと思考が行き当たる。
一見、使えるようには見えない二つの物品。
しかし、説明書に書かれていた非現実的な説明が事実だとすると、それらは武器になりえる物なのだ。
(考えててもしょうがないわね。そもそも、私自身の人生が非現実的なわけだし……
 それに、明らかに人じゃないのまで参加してるんだから、信じてみる価値もあるかもしれないじゃない)
そう自分に言い聞かせながら私は足元に置いていた鞄を開き、中から二つの物体を取り出した。
「ヒムカミの指輪、ねぇ……」
そのうちの一つ、紅い宝石の付いた指輪を私はしかめっ面で眺める。
なんでも、これを嵌めた者は三回だけ炎を放つ事――要は魔法を使う事ができるらしい。
……確かに、宝石の中に小さい炎のような物が見え、神秘的な指輪ではある。だが正直、どう考えても眉唾物だ。
湧き上がる疑心を押さえ込み、右手の人差し指に嵌める。
「まあ、嘘でも損はしないだろうしね」
小さく呟きながらもう一つの物へと目を向けた。
こんな物がどうやって入っていたのか……
などと、おそらく考えるだけ無駄であろう事を思いながら、私はそれをじっくりと観察する。
――それは、私よりも大きな、可愛らしい色の物体だった。
付属していた説明書によると、これは船外活動服――いわゆる宇宙服のような物らしい。
それにしては授業で聞いた月面着陸の話とは、あまりにもかけ離れている気もするが。
ともかく、この宇宙服にも信じられない機能があるらしい……説明書を見る限りでは。
「と……とりあえず、試してみようかしら?」
誰にとも無くそう呟いて、私はその桃色の物体に袖を通すことを決めた。

数分後、私の目の前には見知らぬ少女が立っていた。
白を基調にしたセーラー服に身を包んだ、長い黒髪の少女。
彼女は少し緊張したような驚いたような面持ちで、壁に吊られた鏡の向こうからこちらを覗きこんでいた。
「本当にこんな事ができるなんて」
分厚い服に全身を包みながら、私は思わず感嘆の声を漏らす。
これこそがピンク色をした宇宙服の力。
説明書にはイメージコンバータだの偽装体だの難しい言葉が使われていたが、それは俗に言う変身能力だった。
ただし、誰にでも変身できるわけでは無く、なれるのはこの姿のみのようだし、
精密機器であるがゆえ、水に濡れると故障する危険性が高いらしいのだが……
それでも、この服は充分に“当たり”だった。
「少し暑い気がするけどね」
呟きと共に宇宙服の変身機能を解除する。
私の目の前にピンク色の熊が現れると同時、耳障りな音が耳に届いた。
窓から外を眺めると、空はすでに青い色に変化している。
昇りきった太陽に照らされる赤いソファーに身を委ねて、私はあの女の言葉に耳を傾けた。


【A-1 工場事務室/1日目 早朝】

【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:催涙スプレー@ひぐらしのなく頃に祭、ヒムカミの指輪(残り3回)@うたわれるもの 散りゆく者への子守唄
    紫和泉子の宇宙服@D.C.P.S.】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
 1)放送を聞く
 2)部活メンバー及び羽生の捜索とL5発症の阻止
 3)赤坂・大石の捜索
 4)2~3のため、C-1経由で新市街へと向かう
【備考】
 皆殺し編直後の転生
 ネリネを危険人物と判断(容姿のみの情報)

※ヒムカミの指輪
 ヒムカミの力が宿った指輪。近距離の敵単体に炎を放てる。
 ビジュアルは赤い宝玉の付いた指輪で、宝玉の中では小さな炎が燃えています。
 原作では戦闘中三回まで使用可能ですが、ロワ制限で戦闘関係無しに使用回数が3回までとなっています。

※紫和泉子の宇宙服
 紫和泉子が普段から着用している着ぐるみ。
 ピンク色をしたテディベアがD.C.の制服を着ているというビジュアル。
 水に濡れると故障する危険性が高いです。
 イメージコンバータを起動させると周囲の人間には普通の少女(偽装体)のように見えます。
 (この際D.C.キャラのうち音夢と杉並は、偽装体をクラスメイトの紫和泉子と認識すると思われます)
 純一とさくらにはイメージコンバータが効かず、熊のままで見えます。
 またイメージコンバータは人間以外には効果が無いようなので、土永さんにも熊に見えると思われます。
 (うたわれの亜人などの種族が人間では無いキャラクターに関して効果があるかは、後続の書き手さんにお任せします) 

 宇宙服データ
 身長:170cm
 体重:不明
 3サイズ:110/92/123

 偽装体データ
 スレンダーで黒髪が美しく長い美人
 身長:158cm
 体重:不明
 3サイズ:79/54/80


071:童貞男と黒タイツ女 投下順に読む 072:第一回定時放送
071:童貞男と黒タイツ女 時系列順に読む 072:第一回定時放送
041:彼女の決断、彼の選択 古手梨花 095:忘れていた感情







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