ギャルゲ・ロワイアル@ wiki内検索 / 「大地に降り立つ一人の戦士」で検索した結果
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◆eCIyafgL6c 氏
... 時刻 位置 17 大地に降り立つ一人の戦士? 高嶺悠人、白鐘沙羅、園崎詩音 1日目 深夜 作品の感想 名前 コメント -
羽の交錯
羽の交錯 ◆d3XW23vJps 暗い木々の間を一陣の疾風が駆け抜ける。 デイバッグを肩から下げ、一振りの剣を手に握り締めたそれは、一人の女の姿をしていた。 エヴェンクルガの武士にしてトゥスクルに仕官する将の一人、トウカ。 彼女が案ずるのは無論、同じくこの地に居る仲間達の事だ。 トゥスクルの軍でも一騎当千の実力を持つ、オボロやカルラはまだいい。 戦う術を持たないエルルゥとアルルゥの姉妹、そして彼女の仕える主であり、命に代えても守らねばならない人物、トゥスクル皇のハクオロとは早急に合流しなければいけない。 (聖上、エルルゥ殿、アルルゥ殿。どうか、ご無事で……) 不安に身を焦がしつつ、武人は駆ける。探し人が何処に居るのかは解らない。 だが、この島内の何処かに居るのならば、草の根を分けても探し出す。 そして、彼等を守り通す。それこそがエヴェンクルガの誇り... -
知る者、知らざる者
知る者、知らざる者◆g8qXEEkC.6 急な石段を昇り切ると、そこは古ぼけた神社だった。 「アカサカ殿はまだいらしていない様だな」 無人の境内を見回しながら呟かれたトウカの言葉に答を返す物は無い。 彼女の同行者の一人である千影は顔を青くしながら頷き返し、 もう一人のオボロに至っては、ただ何かに憑かれたように黙りこくっているだけだった。 「ま、まあ、まだ約束の時刻までには時間があるようだからな……さ、千影殿、奥の社で休息をとりましょう」 続くトウカの言葉にも二人は同じ反応を示し、社に向かう三人の間には再び沈黙が舞い降りる。 (……まったく。千影殿はともかく、オボロはいったいどうしたというのだ?) 思えば、この島で再会した時からオボロの様子はおかしかったのだ。 千影殿と互いの支給品等について会話していた時も、何か心に引っかかる事でもあったのか、終始上の空な様子だった。 ... -
求めのアセリア/Lost Days(後編)
求めのアセリア/Lost Days(後編) ◆guAWf4RW62 それまでの喧騒が嘘かのように、辺りは静寂に包まれた。 アセリア達のすぐ前方には、大きなクレーターが形成されており、先程の衝突がどれだけ激しかったかを物語っている。 向こう側には、地に倒れ伏す悠人。 さしものエトランジェも、マナの殆どを使い果たしては、もう戦いを続行するなど不可能だった。 「――アセリアさん、『時詠』を」 「…………ん!」 瑞穂に促されて、アセリアは大きく頷いた。 先の戦いで大きくマナを消耗してしまったが、未だウイング・ハイロゥを展開するくらいの余力は残っている。 『求め』にマナを注ぎ込んでから、大地を思い切り蹴り飛ばした。 「ユート、今助けるっ…………!」 天高く舞い上がり、十分な助走距離を確保してから突貫する。 狙いは、悠人の傍に転がっている『時詠』だ。 ... -
散りゆくものたち
散りゆくものたち◆/Vb0OgMDJY 和机にうず高く積まれた紙の山。 それは机と言う領域を乗り越え、床の上にまで侵食し、そこに机の上のそれと同等の高さにまで山を築き上げている。 その山の一つが、シャッ、シャッと紙を捲る音と共に、一定の間隔で低くなっていき、その隣に同じ間隔で新しい山が築き上げられる。 その音の発生源は、一人の男。 和机の前に腰を下ろした男が、片方の手で一心不乱に紙の山を減らし、もう片方の手に握った筆で何事かを書きつけ、その横に積み上げる事によって音が奏でられている。 …やがて、一つの山が完全に姿を消し、そこにあった山が隣に同じ大きさの山を築き終わる。 そして、男は間を空けずに、次の山を崩しに掛かる。 男は、その作業を延々と続けていたが、ある時ふと顔を上げた。 ドスドスっという徐々に大きくなる異音が、男の居る部屋へと近づいて来たからである。 その... -
聖者の行進
聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s 傷を治療するため、商店街の南部の薬局に入った圭一と美凪は、包帯や消毒液を回収する。 圭一の肩にある刺し傷には、赤黒い塊が付着していた。 美凪は、そこに消毒液を染み込ませると、手早く包帯を巻いていった。 「遠野さん。ありがとうな」 「えっへん」 和ませるように、胸を張って自慢する。 先程まで沈んでいた圭一の心にも、温かい炎が宿る。 二人は薬局から出ると、大きく深呼吸して気持ちを改めた。 「よし! それじゃあ仲間を集めるために学こ――」 圭一の宣言を掻き消すような衝撃音が、二人の耳に届く。 「な、何だ!?」 「前原さん……あれ」 美凪が指差した先は、煙の上がった建物――自分達が行く先を残した場所だった。 「燃え、てる?」 「たぶん病院です」 圭一は悩むより走り出そうとしていた。 もし誰かいるならば、もしそこで誰かが争ってい... -
再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編)
再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) ◆guAWf4RW62 茜が倒れ、土永さんが飛び去った戦場に未だ残っているのは四人。 狂人、鳴海孝之。 魔物を狩る者、川澄舞。 ブルースピリット、アセリア。 そしてエルダー・シスター、宮小路瑞穂。 「茜さん……そうね……こんな悲しい世界は、もう終わりにしなくちゃね……」 茜の亡骸を優しく地面に横たえてから、瑞穂は静かに立ち上がった。 その瞳は貴子の死を知る以前と同じ――否、それ以上の光が宿っていた。 自分は……鏑木瑞穂は、貴子を守れなかった。 鏑木瑞穂は貴子の死に耐え切れず、道を踏み外して、茜までも死なせてしまった。 学園で皆の羨望を集めているのは自分自身でなく、あくまで宮小路瑞穂という幻影に過ぎぬ。 本当の自分はどうしようも無いくらい脆弱で、皆に支えて貰わねば何も出来ない人間なのだ。 そ... -
クレイジートレイン/約束(中編)
クレイジートレイン/約束(中編) ◆guAWf4RW62 「――――千影ぇぇッ!!」 「…………悠人、くんっ!?」 現われたのは、ショベルカーの後を追い掛けていた高嶺悠人だ。 悠人は状況を把握すべく全体を見渡し、最初に千影の姿を発見した。 見れば千影は、息を切らしながらも懸命に、巨大なショベルカーと戦っている。 「ク――待ってろ千影、今助ける!!」 再会を祝っている暇など無い。 一も二も無く悠人は疾走し、ショベルカー目掛けてベレッタM92Fを撃ち放った。 だが当然の如く銃弾は防弾ガラスに弾き飛ばされ、大した戦果を挙げぬまま無力化した。 驚きの表情を浮かべる悠人に、千影が警告を投げ掛ける。 「悠人くん、駄目だっ……! あの機械に銃は効かない!」 「分かった!」 悠人は直ぐにベレッタM92Fをデイパックへと戻し、代わりに日本刀――トウ... -
私たちに翼はない(Ⅱ)
私たちに翼はない(Ⅱ) ◆tu4bghlMI 一対一 先攻はまたしても沙羅だった。 流れ弾があゆ達に当たらないように舞を中心に時計回りで走り出す。 獲物は彼女の支給品ワルサーP99。弾丸補給に優れたマガジンタイプの自動拳銃だ。 マガジンに残された弾薬は六発。 弾倉を入れ替えるべきか、躊躇う微妙な残弾数である。 だが、彼女は眉一つ動かさず、マガジンをパージする。そして新たに十六発を装填。 心も身体も理解している。残りの弾薬を全て使い切るくらいの力を注ぎ込まなければ彼女を御することなど出来る筈もないと。 対する舞は沙羅の動きを警戒しつつ、自らの力を最大限に発揮出来る永遠神剣第七位"存在"を横に薙いだ。 魔力を帯びた刀身はそれだけの動作で空気を揺るがし、森を奮わせる。 そして――舞が動いた。 先ほどまでとは違い、&q... -
守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編)
守りたいもの/さよならの囁き(Ⅱ)(前編)◆guAWf4RW62 ひゅうひゅうと風が吹いていた。 鮮やかな夕日が、眼下に広がる孤島を赤く照らし上げている。 真っ赤に染まった孤島の姿はまるで、多くの人間が流した血に塗れているかのようであった。 「――――っ」 大剣を携え、幾重にも連なる雲の真下で飛翔しているのは、アセリア・ブルースピリットと呼ばれる妖精である。 圧倒的な加速力を生み出す純白の翼と、只の人間では及びもつかぬ凄まじい身体能力。 第四位の永遠神剣『求め』と契約し、オーラフォトンの力すらも手に入れたアセリアは、生存している参加者中で間違いなく最強の存在。 しかしその最強の妖精の表情が、今は悲痛に大きく歪んでいた。 「お願いだミズホ……どうか持ち堪えてくれ……!」 呟くアセリアの腕の中には、血塗れになった宮小路瑞穂の姿。 瑞穂の口から放た... -
武人として/鮮血の結末 (後編)
武人として/鮮血の結末 (後編)◆guAWf4RW62 「ウオオオオオオオッッ!!」 「え――――!?」 誰もが驚愕した。 オボロが――死んだと思われていたオボロが、ネリネの背中に当身を食らわせていた。 その衝撃でオボロの肩口から、益々激しく鮮血が噴出する。 それでもオボロは倒れずに、寧ろ勢いを増してネリネに殴りかかる。 盾のように突き出された献身の柄へ、次々と拳の連撃が打ち込まれる。 早鐘を打ち鳴らすような音が連続して鳴り響き、ネリネの腕に激しい衝撃が伝えられる。 そこでようやく、事態に取り残された形となっていた三人が動いた。 トウカは素早く起き上がって、地面に捨てた剣へと走り寄る。 千影もまた、ネリネとの戦いで取り落としてしまった時詠を拾い上げる。 そして楓は――オボロの無防備な背中に向けて、容赦無く発砲していた。 「鬱陶しいです……死に損... -
解放者――ウィツァルネミテア――(中編)
解放者――ウィツァルネミテア――(中編)◆guAWf4RW62 規格外の巨体に加え、凄まじいまでの魔力を帯びたディー。 人間離れした身体能力を誇る仮面兵達が、瑞穂達を包囲する。 「舞台は整った。さあ、汝等の力を見せてみるが良い――!」 完全なる異形と化したディーが、死闘の開幕を告げた。 狼狽しているような時間も、作戦を練る時間すらも与えられない。 アヴ・カムゥと同等の巨体が、六体もの仮面兵が、一斉に沙羅達へと襲い掛かる。 「くぅ――――」 焦りの表情を隠し切れぬ沙羅に対して、疾風と化した一体の仮面兵が迫る。 沙羅も高度な射撃技能を活かして、ワルサー P99で仮面兵を撃ち抜こうとするが、弾丸は一発たりとも命中しなかった。 仮面兵は銃弾を正確に視認して、獣の如き俊敏さで躱してゆく。 距離が離れた状態で幾ら銃弾を撃っても、当たる可能性は殆ど無いだ... -
うたかたの恋人(前編)
うたかたの恋人(前編) ◆tu4bghlMI 「……ミズホ、大丈夫?」 「平気です、アセリアさん。それよりも――」 「……ああ。先回りしてケイイチの手助けをする。それが……一番」 ミズホは小さく一度、こくりと頷いた。 彼女、ミズホは……凄いと思う。 相当スピードを出しているにも関わらず、しっかりと私に付いて来るし疲れた表情もまるで見せない。 同じ女、しかも彼女はスピリットでもない筈なのに一体どうしてなのだろう。 私は不思議だった。 「ここが……病院?」 「そのようですね、建物自体は二つあるようですけど……」 私達はそんな事を話しながら、周囲に気を配った。 タケシは確実に私達より早くこの病院という建物にやって来ている筈。 二人が初めて会った場所――その表現では厳密な位置は断定出来ない。 病院の屋上かもしれないし、そこの広場かもしれない。具... -
三人でいたい(Ⅰ)
三人でいたい(Ⅰ)◆tu4bghlMIw 《LeMU第二層「ツヴァイト・シュトック」ファンタジーランド(第四区画)――アリス・イン・ナイトメア》 ひたり、 ひたり、 ひたり、 血が落ちる。クリーム色の歩道を赤い斑点が汚した。 被弾した脇腹に応急処置は施したが、もはや純白の包帯は赤く染まり用を為さなくなっていた。 ひたり、 ひたり、 ひたり、 血が落ちる。ゆっくりと、掻き消えるように意識が虚無へと向かう。 少女が持っている武器は一本の剣だけだった。 拳銃は遊戯を通して百発以上の弾丸を全て撃ち尽くし、ただのガラクタとなった。 最強の武器として島に殺戮の雨を振りまいた重機関銃の弾も一発だって残っていない。 小さな手斧も鎌もとっくに向かってきた兵士に投擲してしまった。 永遠神剣第七位「存在」――幾人もの人の血を啜りながら、未だ美... -
彼女の見解
彼女の見解 ◆guAWf4RW62 「――――っ」 燦々と降り注ぐ日光の下、広大な草原に一陣の疾風が吹き荒れる。 月宮あゆは永遠神剣で身体能力を強化して、恐るべき速度で駆けていた。 向かうべき場所は只一つ、島の最北西に位置する工場だ。 工場まではまだまだ距離があるが、今の自分ならば然程時間を掛けずとも辿り着ける筈だった。 永遠神剣による強化は脚力のみに留まらず、基礎体力にまで及ぶ。 一息の休憩すらも必要とせずに、流れてゆく景色の中を一心不乱に走り続ける。 だがある事に気付いたあゆは足を止めて、周囲をゆっくりと眺め見た。 「此処は……ボクが最初に飛ばされた場所……?」 大草原の中にポツリと存在する、乱暴に踏み荒らされた藪。 見間違う筈も無い。 今あゆが立っているのは、初めてこの島に降り立った時の場所だった。 あゆは静かに目を閉じて、今まで自... -
ワライ
ワライ ◆0Ni2nXIjdw 「…………ん」 牢獄の中に少女はいた。 冷たい壁に背を預け、体を動かすことなく座っている。 瞳を閉じて、じっと待っていた。時間が過ぎるのを……沼に潜んだ竜が天に昇る時節を待つように。 (五秒前……三、二、一……うん、時間は経過したね) この監獄に時計はない。 だから体内時計を利用しているだけに過ぎないのだが、大体の目測は立っている。 そろそろ起動するはずだ。 鈴凛が2034年の技術を追加して作り上げた、自慢の切り札……メカ鈴凛が。 「……鈴凛くん、無事かい?」 「うん、まだ大丈夫だよ、富竹さん」 自分の牢獄の隣、もうひとつの牢獄から同志の声がした。 富竹ジロウ。自分と同様に疑われ、そして私と手を組み、捕まって投獄された男。 かなりの拷問を受けているようだったが、それでも... -
エスペリア
エスペリア 【出典】永遠のアセリア-この大地の果てで- 【声優】カンザキカナリ 【性別】女 【人称】 一人称: 二人称: 三人称: 【関連人物への呼称】 高嶺悠人→ユート様 アセリア→アセリア 【能力】 【キャラ紹介】 ラオキスに属するスピリット。 前スピリット隊の唯一の生き残りで経験豊富であることからスピリット長を務め、悠人がスピリット隊隊長となった際にはその補佐役を任されている。 召還直後の事件で身動きが取れなくなった悠人を献身的に世話し聖ヨト語習得のための教育係にもなる。 スピリットの館では炊事、洗濯、掃除と家事全般をこなす(本人曰く料理には多少自身はあるがそれ以外は他にやる者がいないからとの事)。 その他、館の敷地に薬草園を造っていて、その収穫でさまざまなブレンドのハーブティーを煎れてくれる。 一見しっかり物のように見... -
オープニング
オープニング 「往人さん、起きて、起きてーーーっ!」 (ん……?) 光無き暗闇の世界に一人の少女の声が木霊する。 暗いのは自分が眠っていたからだと国崎往人が気づいたのは、今自分を起こしている少女、神尾観鈴が彼の体を揺さぶり始めた時であった。 「ふぁ……。なんだよ観鈴?」 まだ眠り足りないとばかりにとろんとしていた己の目を手でごしごしとこすって覚醒させながら往人はゆっくりと起き上がった。 「ん……?」 完全に目を覚ました往人は次の瞬間、頭の上にハテナマークを浮かべ、ひとつの疑問を口にしながら周囲を見回した。 「――ここは……何処だ?」 そう。今往人が目を覚ました場所は、普段彼が寝泊りしている神尾家の納屋ではなく、薄暗い見知らぬホールであった。 どうやら、そこには往人や観鈴の他にも大勢の人――その数は数十人といったところだろうか――がいるらしく、ざわ... -
カルラ
カルラ 【出典】うたわれるもの 散りゆく者への子守唄 【声優】田中敦子 【性別】女 【人称】 一人称:わたくし 二人称:あなた 三人称:あなた方 【関連人物への呼称】 ハクオロ→あるじ様 エルルゥ→エルルゥ アルルゥ→アルルゥ オボロ→オボロ トウカ→トウカ 【能力】 特殊な能力はなし。 ただし、身体能力は戦闘に特化した民族だけあって驚異的。 原作中では人間を素手で引きちぎったりするほどの怪物っぷりを披露している。 しかし本ロワではその身体能力は制限の対象となり現実的なレベルに抑えられている。 【キャラ紹介】 戦闘に特化した肉体を持つギリヤギナ族の女剣奴(ナクァン)。 鎖つきの大きな首輪が特徴の怪力娘で、男5人がかりでないと運べないほど重くとても頑丈で巨大な剣を片手で軽々と振り回す。 人離れした強靭な力はカルラの素質もあ... -
温泉に集いし者たち(前編)
温泉に集いし者たち(前編) ◆4JreXf579k そこは温泉。 それ以上の何者でもないはずであった。 もしもこの島が観光地などであったなら、ガイドブックには美辞麗句に彩られた宣伝がなされていたかもしれない。 日頃の疲れを体の垢と共に洗い落とし、夜はうまい酒でも飲み、浮世の世知辛さを忘れることもできたであろう。 しかし、ここはリゾート地などではなく殺し合いをさせられるという絶望の孤島。 そんな状況でのんびりと温泉を楽しむ余裕などありはしない。 地図を見渡せば百貨店、学校、図書館、その他etc…… 温泉より重要そうな施設などそれこそ山ほどある。 しかし、何の因果かここに多数の人間が集うこととなるのだ。 ある者は必要に迫られて、ある者は探し人を求めて、ある者は神様のちょっぴり意地悪な偶然とともに…… これは時の中に刻まれた、温泉に集いし7人の戦士の物語である。 ... -
残酷な罰が降り注ぐ
残酷な罰が降り注ぐ ◆/P.KoBaieg 住宅地の中を一人の少女が足を引きずりながら走り続ける。 少女の名は月宮あゆ。 目的地は海の家。 なぜ走り続けているかって? それは極めて単純明快。 彼女は逃げているのだ。 自分自身の犯した罪から。 (もう……もう嫌だよ……。全部もう嫌…………) 彼女の心は悲鳴を上げ、疲れ果てていた。 体が痛い。 左肩が、右足が痛む。 だが、それ以上に心が痛かった。 もう自分は名雪には許してもらえない。 それどころか自分を守ってくれた美凪や圭一に武、沙羅ですら今の自分が戻ったところで許してはくれないだろう。 そう考えるだけであゆの心はその苦痛に悲鳴をあげていたのだ。 理性では逃げるべきではないというのを判っていた。 だが、あゆは逃げてしまった。 名雪の眼を見... -
解放者――ウィツァルネミテア――(後編)
解放者――ウィツァルネミテア――(後編)◆guAWf4RW62 「ハ――フ――――ハア、――――――ハア……」 きぬは乱れた呼吸を整えながら、倒れ付す仮面兵の亡骸を眺め見た。 強敵だった、と云って良い。 仮面兵が見せた身体能力は、完全に生物の限界を凌駕していた。 今回は何とか打倒する事が出来たが、自分一人ではとても勝てなかっただろう。 こうしている間にも、他の仲間達は苦戦しているに違いない。 きぬは直ぐにでも助太刀しに行こうとしたが、そこで優の視線があらぬ方向へと注がれている事に気付いた。 「おめー、何処見てんだ?」 「…………」 声を投げ掛けてみても、返事は無い。 仮面の奥に見え隠れしている優の瞳は、明らかな戦慄の色に染まっている。 きぬは事態を把握すべく、優の視線を追って――瞬間、呼吸が死んだ。 「ディー……」 意図せずし... -
彼女は戦士だった
彼女は戦士だった ◆tu4bghlMIw 「痛ッ……」 頬骨の辺りの強烈な痛みで私は眼を覚ました。 眠って……いたのだろうか。意識がハッキリしない、あやふやだ。 辺りを見回しても誰か他の人間がいるわけでもない。 少しだけ地肌が露出した草原、肉眼で確認できる距離には砂浜もある。 どうして私はこんな場所にいるのだろう。 そして、どうしてこんな場所で寝ていたのだろうか。 爽やかな涼風というよりも塩の匂いが染み込んだ、潮風の存在が強く意識される場所。 水の精霊である自分にとって、水辺は特別な場所である。 とはいえ、こんな場所で意味も無く寝てしまうような悪癖は持っていない。 「なぜ……こんな、場所で? …………ああ」 ――敗北。 脳裏に浮かんだのはこの二文字。 昏倒し、眠りへと落ちて行った意識の中でも、この言葉だけはは... -
私たちに翼はない(Ⅰ)
私たちに翼はない(Ⅰ) ◆tu4bghlMI 「やべえええええええええええええ!! おい、お前ら早くしろって!! 追いつかれちまうだろ!?」 きぬが吼える。 「こいつ――ッ!! アホかッ!! お前があんな大声出したからだろうが!!」 あゆがきぬのあまりにも身勝手な発言に反感を覚え、怒鳴りつける。 「んだとコラァッ!!! んなわけあるかっ!! 言い掛かりつけんのもいい加減にしろや、テメェ!?」 「ああッ!? 威勢だけは上等じゃないか、この糞チビ!!」 結果として、それは口論に発展した。 言い争う金髪の女と橙色の髪の女。そのやり取りは非常に荒々しく、そして幼い。 本来ならばもっと高度なやり取りが出来る筈の彼女達も、切羽詰まった状況で混乱し切っていた。 そして、 「……最悪」 一人、最低の現状を実感する少女の姿。 色彩で表すな... -
求めのアセリア/Lost Days(前編)
求めのアセリア/Lost Days(前編) ◆guAWf4RW62 「…………ハ、ハァ、ハァ、フ――――――」 広大な草原の中、アセリアは海の家を目指して走り続ける。 上空では轟々と大気が渦巻き、止め処も無く風が吹き荒れている。 決して平穏と云えぬその天候は、アセリアの心情を代弁しているかのようであった。 (私は……どうすれば良い……?) どれだけ考えても答えが出ない。 永遠神剣を持った高嶺悠人に対抗し得るのは、永遠神剣で武装した自分だけ。 これは揺るぎ無い事実。 只の人間が何人束になって立ち向かおうとも、間違い無く悠人には敵わない。 ならば、自分が悠人を止めるしかない。 悠人もそれが分かっているからこそ、わざわざ自分を指名したのだろう。 だが、どうやって止めれば良い? 勿論、つぐみが云った通り、助けられるのならそれが最善だ。 自分... -
阿修羅姫と夢の国の王様
阿修羅姫と夢の国の王様 ◆iWNzks43D6 「ふぅ……やっと抜けられたようだな」 赤坂達と別れた智代はたった今、森をぬけB-5の北部に来ていた。 あの後からだいぶ経ったが、幸か不幸か誰にも遭遇する事は無かった。 (とりあえず……休憩しよう) いくら智代が普通の女子高生と違うとはいえ、長い間森の中を歩き回って疲れないわけが無かった。 そのまま智代は地面に座り休憩を始めた。 (のんびりしてる暇はないんだが……仕方ないか……エリカ待っていろ、仇は必ず!) 体は休め、されど心は復讐に燃える阿修羅の如く。 修羅になった智代の心が休まる時はもう訪れる事は無い。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (そういえば……まだ残りの支給品を確認してなかったな) 休憩をしながら智代は残りの支給品確認して... -
銀の意志、金の翼
銀の意志、金の翼 ◆VtbIiCrJOs それは本当に偶然だった。 佐藤良美の最期を看取った後、我輩はひとまずこれまでの情報を持ち帰るべく帰路に着いていた。 その矢先だった。 銃声。 怒号。 悲鳴。 我輩の後方よりその音が聞こえてきた。 「……我輩にどうしろと」 何者かが襲われているのは間違いは無い。 だから我輩はどうしろと――? 「くそ……っ」 これは様子を見に行くだけ、 そこから先は我輩の出る幕では無い…… そう自分に言い聞かせ我輩は音がした方向に飛んで行った。 そしてほどなく我輩の眼下に広がる光景、 槍を振り上げた少女。 大地に蹲る少女。 槍を持った少女はつい先ほど佐藤良美を殺害した者。 襲われている者は灰色がかった茶髪の少女。この島で初めて見る顔。 我輩の役目は槍の少女についての情... -
私たちに翼はない(Ⅲ)
私たちに翼はない(Ⅲ) ◆tu4bghlMI 七対七 「ああああああああああああああああッッッ!!!!!」 舞はただ、叫ぶ。 大地に膝を付き、獣のように声にならない声で唸り続ける少女。 身体を抱え、ただ救いを求める体躯は、絵画の中で翼をもがれた天使のそれに似ていた。 そして少女を守るため現れた 魔物 彼らは見えない体を揺らして、その場にいた人間へと襲い掛かる。 かくして、この島でのあらゆる殺し合いの中でも、最も多くの影が入り乱れる大乱戦と相成った。 それもその筈、とにかくどちらの陣営も数が半端ではない。 魔物 と人間の構図――彼らの創造主たる川澄舞を守るように、見えない 魔物 は沙羅達へと迫る。 (なんなのよ……一体っ!!! も、モンスターだって言うの!? それこそ、御伽噺かファンタジー小説のキャラクター... -
週間ギャルゲロワ(No.20~)
第20回週間ギャルゲロワ(11/23) 先週の主な出来事 私にだって……わからないことぐらい……ある ;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;; ヽ ;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;; , ´/ `´ ヽ ;;;;;;;;;; ;;;;;;;;; l !ノノリ))ソ ;;;;;;;;; ;;;;;;; |!(l|TヮTノl| ;;;;;;; ;;;;; ノ, /i _i ノ_i リ .;;;; ;; ( とんU ... -
復讐鬼とブリーフと
復讐鬼とブリーフと ◆guAWf4RW62 たっぷりと血を吸い込んだ地面は、赤く変色しつつある。 周囲は死臭で満たされており、傍らには霧夜エリカと相沢祐一の亡骸が転がっている。 そんな中、坂上智代は大地に膝を付き、がっくりと項垂れていた。 衝撃的な事件から暫く時間が経ち、ようやく智代の思考は僅かばかりの機能を取り戻しつつあった。 あの時――気付いたらもう、エリカが殺されてしまっていた。 そしてエリカを殺害した襲撃者もまた、永久に動かぬ骸と化している。 この男は、自分が殺したのだ。 エリカの仇だとか、殺人鬼を打倒するだとか、そういった明確な意思によるものでは無い。 混乱する思考と恐怖に身を任せ、訳も分からぬままに引き金を引いただけだ。 今になって考えてみれば、様々な疑問が浮かび上がってくる。 何故この男は、すぐに自分を仕留めようとしなかったのだろうか? ... -
【二人の岐路】
【二人の岐路】 ◆GHgj2Ul34M 「一体何なのよ。殺し合い? ふざけてるにもほどがあるってのよっ!」 白鐘沙羅は怒っていた。 突然殺し合いを強要されたら誰だってそうだ。 だが沙羅は一度小さく怒鳴ると、間をおいて深呼吸をする。 その間約十分。 怒りを心の奥に押さえ込んで、落ち着いて、支給品を確認する。 「えーと日本刀と銃。あとは……フロッピーディスク?」 中に入っていた二つは殺し合いの道具に相応しい刀と銃。 だがさらにもう一つ、フロッピーディスクが三枚入っていた。 当然機械が無いので、フロッピーディスクの中身については調べようが無い。 無いなら次にすることは一つ。 フロッピーディスクの中身を調べるためにパソコンがありそうな施設に行くことだ。 空のディスクを支給する事は無いだろう。 そう考えるとディスクの中身を確認... -
回帰~倉成武が還る場所~
回帰~倉成武が還る場所~◆Qz0e4gvs0s 蒼く染まった壁。倉成武の瞳に飛び込んできた最初の光景はそれだった。 何時から此処にいたんだろう。そもそも、ここは元の世界じゃないのだろうか。 頭を振りかぶり、直前までの光景を思い出す。 あの時みんなと別れを告げ、時深の力とやらで不思議な光に包まれたのは覚えている。 だが、そこから先は記憶が無い。外の景色も、現在を刻む時計も、ここにはない。 蒼い壁が広がる十畳程の部屋。出口はおろか繋ぎ目も見当たらない奇妙な場所。 「目が覚めたか?」 「!?」 声の主は、何も無い場所から突然浮かび上がってきた。 いや、もしかしたら最初からいただけで、武が気付かなかっただけかもしれない。 その人物はベルベットの様な光沢を放つ椅子に座り、武に背を向けている。 その状態から微動だにしない所を見ると、こちらを向くつもりは無いようだ。... -
サプライズド・T・アタック(中編)
サプライズド・T・アタック(中編) ◆4JreXf579k 良美と名雪が同時に襲いかかっているのを見て圭一は肝が冷える。 思わず武に助けを求めようとするが、武は武で咲耶の相手をするのに手一杯といった感じだ。 まさかあゆと美凪に戦えと言うわけにもいかず、圧倒的な人数の不利に晒されることとなった。 こうなったら美凪とあゆだけでも救急車に乗って逃げてもらうしかない。 圭一はそう判断した。 「遠野さん! あゆを連れて救急車で逃げてくれ!」 今ならまだ良美と名雪との距離は離れている。 ここをおいては脱出の機会は二度と訪れない。 そう、今こそが千載一遇のチャンスなのだ。 しかし美凪は圭一の声を無視して、デイパックから金属バットを取り出し圭一の横に並んだ。 「いくら前原さんたちでも、四対二は危険ですよ」 「危険なのは分かってる! でもそうするしかないんだ!」 ... -
覚醒、決意、そして……アサクラジュンイチ(前編)
覚醒、決意、そして……アサクラジュンイチ(前編) ◆4JreXf579k 川澄舞は病院を目指して山の中を歩いていた。 先の戦闘で、戦果を挙げる代償として奪われた右目の治療をするためにだ。 (失敗した……) 山の中、道ならぬ道を歩きながら、痛む右目を押さえて己の失敗を叱責する。 最強の武器、キャリバーで致命傷を負わせたと思っていた相手に手痛い反撃を受けてしまった。 窮鼠猫をかむという諺があるが、今回の戦いはそのとおりの結末になってしまったようなものだ。 右目、すなわち視界の半分を奪われてしまったということになる。 単純な戦闘力は半分程度に落ちてしまったと言っても過言ではない。 万全を期すならもう一度キャリバーか永遠神剣を使えばよかったのだが、あれは極力温存したかったのだ。 キャリバーは言うまでもなく残った弾数の問題、そして永遠神剣は自身の体調の問題であ... -
ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(後編)
ブルーベリー・パニック/決戦の幕開け~宣戦布告~(後編) ◆guAWf4RW62 「は…………羽入っ…………? 羽入なの…………!?」 恐る恐る私が訊ねると、少女はこくりと頷いた。 特徴的な巫女装束に加えて、頭に生えた二本の角。 見間違える筈も無い。 今目の前に居る少女は、間違いなく羽入なのだ。 「羽入、今まで何処に行ってたの! ずっと貴女の事を探してたのよ!?」 「あぅあぅあぅ……ごめんなさいなのです、梨花……。でも、とにかく落ち着いて欲しいのです。 まずは鈴凛について話させて下さい」 話したい事、問い詰めたい事は幾らでもあるが、確かに羽入の云う通りだ。 今は鈴凛の話が真実であるか如何かを確かめるのが、一番重要。 私は何とか気持ちを鎮めて、羽入の話の続きを待つ事にした。 「鈴凛は嘘を吐いていないのです。参加者達を助ける為に、頑張ってく... -
信じる者、信じない者(Ⅲ)
信じる者、信じない者(Ⅲ) ◆UcWYhusQhw 「……ん、ううん? ここは?」 美凪が起きた時、自分に何が起きたかよく把握できなかった。 確か自分は武に襲われてそのまま気を失ったはず。 なのにどうして室内にいて床に寝ている? そんな疑問を吹き飛ばすかのように声をかけてきた者がいた。 「起きたか、美凪」 「え……倉成さん?」 それは武だった。 剣を持ち圧倒的な存在感を出し美凪の前に立っていた。 「……ここは何処ですか? そして私がどうしてここに? 殺さなかったんですか?」 美凪が今、自分のおかれている状況を武に求めた。 あまりに状況が変わりすぎて美凪には理解が出来なかった。 そんな美凪に武が 「ここは病院だ。俺達が始めてあった場所だ、そして全てが決まる場所……まあそれはいい、美凪。今お前は人質ってことだ」 「人質?」 ... -
運命――SADAME――
運命――SADAME――◆guAWf4RW62 「梨花さん――私は右から行きます! 貴女は左から攻めて下さい!」 「ええ、任せておいて。あの醜い顔に、銃弾をお見舞いしてやるわ!」 永遠神剣も持たぬ者が、あのような怪物に近接戦闘を挑むのは自殺行為。 故に瑞穂と梨花は距離を保ったまま、挟み撃ちの形で二度三度と銃のトリガーを引き絞る。 しかし銃弾は標的に届く事すら無く、ウィツァルネミテアの身体を覆う圧倒的な魔力によって掻き消されてしまった。 銃弾が効くか効かないか、以前の問題だ。 生半可な攻撃では、ディーの皮膚に触れる事すら不可能だった。 ならばと、きぬと沙羅は九十七式自動砲――隙を見て回収しておいたもの――を取り出した。 「きぬ、頼むわよ。正確な射撃を行うには、銃身の固定が必須なんだから!」 「分かってるって! おめぇの方こそ、狙いを外したりすんじゃねーぞ!... -
アセリア
アセリア 【出典】永遠のアセリア-この大地の果てで- 【声優】清水香(PC)、浅野るり(PS2) 【性別】女 【人称】 一人称: 二人称: 三人称: 【関連人物への呼称】 高嶺悠人→ユート エスペリア→エスペリア 【能力】 【キャラ紹介】 ラオキスに属するスピリット。その戦闘能力は「ラキオスの青い牙」と呼ばれ、恐れられている。 純真無垢な存在で、元々は戦うことに何の疑問も持たず自身を戦って死ぬための存在だと考えていたが、悠人と触れ合う中で戦う意味と生きることを考えるようになる。 これに関連して、料理にも興味を持つようになりアセリア以外のルートでのエンディングで任務の合間に料理を得意とするべく精進する様子が描かれている。 口数が非常に少なく悠人も当初は何を考えているのかわからず苦労する。 実は、アクセサリーの制作が非常に上手く「聖... -
許せる嘘か? 許されざる嘘か?
許せる嘘か? 許されざる嘘か? ◆Qz0e4gvs0s (稟くん。稟くん。稟くん。稟くん――) 焦点が定まらないまま、楓は知らず知らず住宅街を南下していた。 手には先ほど荷物の中から取り出したベレッタM93R。 先ほどの摩央のように、何の躊躇いもなく撃つ人もいるのだ。 自分は稟に会う前に死ねない。優しい稟に会うため死ねない。 だから武器を持つ。その綺麗な手は武器を持つためにある。 (稟くん。逢いたいです。稟くん。どこにいますか?) 手に持った武器は使ったことがない。使えばどうなるか分からない。 でも、使わないと稟に会えない。稟に会いたいのだ。 その時、背後から爆発音が鳴り響いた。 「ひぃッ」 思わずしゃがみ込む楓。どうやらあちらで何かあったらしい。 やがて爆発音のした方向から、何者かが走ってくるのに気付いた。 (稟くんかもしれな... -
傀儡のアセリア
傀儡のアセリア ◆KZj7PmTWPo 「…………」 塩分を含んだ息吹が鼻を強く刺激させ、耳朶を打つのは静かな小波の音色。 広大で見果てぬ大海が、少女の視界を埋め尽くしていた。 空と海面を区切る水平線は、夜の闇に覆われて判別も付かない。 何処までも深い黒色の水面に浮ぶ月光が、幽鬼のように朧げと揺れる。 その様を、堤防に立つ少女はぼんやりと眺めていた。 自然が奏でる光景をジッと見据える姿は、傍から窺えば無関心と思えるほどに表情の揺らぎが見当たらない。 喜怒哀楽を欠いた様な能面さと淡紫色の長い頭髪が、返って月夜の中では幻想的な程に際立たせていた。 揺らめきのない純粋な瞳は、一体何を想うのか。 彼女は先に述べた“人間”の言葉を脳裏で反芻させる。 ――殺し合いをしてもらうためよ。 そう、言っていた。 『殺し... -
守りたい。ただ貴方だけを。貴方が生き続ける未来を。守りたい。優しさに包まれた、貴方の気高い心を
守りたい。ただ貴方だけを。貴方が生き続ける未来を。守りたい。優しさに包まれた、貴方の気高い心を◆UcWYhusQhw ――崖っぷちに立たされた時 苦難が僕の腕をつかみ 自分自信の在りかがはじめて見えたんだ 「ヒエン……何がおきたってんだよ」 おぼろげな意識の中できぬ殿の声が聞こえる。 自分に何が起きたというのだ? きぬ殿の手を取ろうとして、その後に変な音が聞こえて自分は地に伏せていた。 その疑問に答えるかのように男の声が聞こえてきた。 「やっぱり鷹野様の言った通りだ……この裏切り者め!」 「ああ……元々怪しいと思っていたが」 「なんだよー! お前ら!」 「俺達は山狗の雲雀部隊の者だ。その男、ヒエンが裏切らないか見張っていた」 「案の定裏切りおって……まあ始末はするから問題ない」 ああなるほど……鷹野殿の指図か。 やはり自分は裏切ると思... -
Don't be afraid./散りゆくものへの子守唄(前編)
Don t be afraid./散りゆくものへの子守唄(前編) ◆guAWf4RW62 狭く息苦しい、闇による圧迫。 疲弊した身体を締め付ける荒縄。 重い静寂に包まれた地下室の中で、一人の少女が佇んでいた。 「…………」 千影は柱に縛り付けられた態勢のまま、これからどのように行動すべきか思案していた。 仲間が助けに来てくれるのを待つべきか――否。 そうそう都合良く事が運ぶのは、漫画の世界だけだろう。 自分が囚われているのを知っている者は、ネリネ以外に居ないのだ。 助けが来る可能性は、極めて低いと云わざるを得ない。 ならばこのまま、此処で大人しく捕まっているべきか――否。 それは余りに下策。 ネリネは自分から奪い取った魔力で、人を殺し続ける腹積もりなのだ。 このまま座して待つだけでは、取り返しの付かぬ事態になってしまうだろう。 ならば... -
希望は爆発と共に
希望は爆発と共に ◆A6ULKxWVEc 最初に.txt バトル・ロワイアル攻略情報.txt 最後に.txt 「……これだけ?」 レジャービルの一角のネットカフェに辿り付き、早速FDの中身を確認した沙羅は少々落胆していた。 「もっとこう、フロッピーを一枚差してくごとに、ぶわ~っと魔法が発動して光の柱が登ったりとか、何かそういうの無いわけ?」 どこの葉鍵ロワイ○ルだよ! 残念ながら、突っ込んでくれる筈の恋太郎や双樹はここには居ない。 「ま、いいわ。文句を言うのは中身を確認してからにしましょ」 まずは“最初に.txt”をダブルクリック。 『このフロッピーディスクにはこのバトルロワイアルを生き抜くために役に立つ様々な情報が入っています。やったね!』 「ふ~ん。何か地味ね。」 “情報”という単語に探偵助手としてはあるまじき反応を見せる... -
私たちに翼はない(Ⅳ)
私たちに翼はない(Ⅳ) ◆tu4bghlMI 「血が止まらねぇ……くそ、動脈が完全に逝っちまってる……何で、こんなになるまで放っておいたんだ」 「ボクを……バカにすんじゃねーよ。あんな状況で一人だけ寝てられる訳ねーじゃん」 沙羅は己の愚かさを、そして不注意を呪った。 いや、それだけでは済まされない選択ミスをした。ミス。有り得ない選択肢の不一致だ。 きぬの傷は川澄舞が投げた矢が太股に刺さっただけ……沙羅はそう考えていた。 最初はおそらく、本当にただの小さな刺し傷に過ぎなかったのだろう。 だが、彼女は簡易な手当てだけを済まし、すぐさま戦線に復帰した。 傷口を、労わることもなく。そして走り回り、大地を駆け回った。 人と言うのは大動脈が流れる太股を刺されただけでも十分に死に至る。 あの時、きぬは絶対安静だったのだ。 「智代、包帯と……消毒液、も... -
【永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【永遠のアセリア -この大地の果てで-】 高嶺悠人 18 024 前を向いて ◆ncKvmqq0Bs 053 おいてきたもの ◆H.0vwv7hVs 055 猟人は鬼と獅子 ◆Qz0e4gvs0s 068 せめて、安らかに/高嶺悠人の推理/衛の誓い ◆/P.KoBaieg 081 博物館戦争(前編)博物館戦争(後編) ◆/P.KoBaieg 103 星の館 ◆/Vb0OgMDJY 111 完璧な間違い(前編)完璧な間違い(後編) ◆/P.KoBaieg 121 小さな、とても小さな奇跡。 ◆jWwIlynQcU 133 ミエス・カウート(高位の剣) ◆/Vb0OgMDJY 139 朝焼けと青空の境界線を越えて瓶詰妖精 ◆tu4bghlMIw 144 先の先、後の先。 ◆jWwIlynQcU 152 炎の魔法少女(前編)炎の魔法少女(後編) ◆/P.KoBaieg 154 救心少女夢想(... -
宮小路瑞穂/鏑木瑞穂(後編)
宮小路瑞穂/鏑木瑞穂(後編) ◆guAWf4RW62 「フ――――ハ、ハァ―――」 「――優、さん」 荒々しく呼吸をする優に対して、瑞穂は掠れた声を絞り出す事しか出来なかった。 あの仮面がどのようなモノであるかなど、瑞穂には知る由も無い。 しかし一つだけ、本能的に察知する事が出来た。 今目の前に居るのは、最早人間と呼べるような存在などでは無いと。 瑞穂が只立ち尽くす中、優は圧倒的な脚力で床を蹴り飛ばした。 「――はああああああああああッッ!!」 裂帛の気合を籠めた雄叫びと共に、優が瑞穂の眼前へと迫る。 その速度、その迫力は、常識では考えられぬ程に凄まじい。 それでも瑞穂は何とか反応して、己が日本刀を横薙ぎに一閃した。 優もまた西洋剣を握り締め、瑞穂に向けて渾身の力で振り下ろす。 衝突する二つの剣戟。 本来ならば五体満足の状態である瑞... -
川澄舞
川澄舞 【出典】Kanon 【声優】 【性別】 【人称】 一人称:私 二人称: 三人称: 【関連人物への呼称】 相沢祐一→祐一 月宮あゆ→ 水瀬名雪→ 倉田佐祐理→佐祐理 北川潤→ 【能力】 魔物を生み出す力(但し故意に使えるかは不明な上、ロワ中では制限されている) 蘇生(本人の意思で使えるが、制限されている) 非常に高い身体能力、運動神経 具体的エピソードの一例:満身創痍の状態であったにも関わらず、学校屋上から飛び降りて、 地上にいる魔物を斬り伏せた(本人談によると、魔物を斬った反動で、着地の衝撃を和らげたらしい) 対魔物戦時の使用武器は西洋剣 【キャラ紹介】 祐一の上級生で、夜の学校で祐一と出会う少女。魔物を討つもの。深夜の学校でたった一人で「魔物」と対峙している。 感情表現が苦手で普段は無口で無表情のた... -
魔法少女の探索。
魔法少女の探索。 ◆jWwIlynQcU 「これほどの大きさとは、思ってもいませんでした……」 今、ネリネの眼前にはあまりにも場違いな建物がそびえている。 休息を終えてからネリネの向かった先、そこはホテルだった。 あの放送を聞いたつぐみが博物館に現われる可能性はやはり限りなく低い。 彼女の性格からすれば、音夢の首無し死体を弔ったりするとは到底思えない。 あるとすれば、つぐみが音夢の兄である朝倉純一を発見しており、その上で放送を 聞いていた場合だろうが、その可能性はもっと低いはず。 それならば、いっその事他の場所へ移動し、そこで探索なり潜伏している他の参加者を 殺害するほうが効率ははるかにいい、というのが彼女の導き出した結果だった。 さらに、博物館を除外した残る二つの選択肢――ホテルと学校――のうち他の参加者が 潜伏あるいは拠点として用いる可能性が高... -
陽のあたる場所(前編)
陽のあたる場所(前編) ◆Qz0e4gvs0s 予定された時間に流れた放送は、ハクオロと観鈴の心に衝撃を与えていた。 観鈴は、大勢の人間が死んでしまった事を嘆く。 一方のハクオロは、第一に探したかった女の名前と、頼りになる部下の名前に崩れかかる。 (エルルゥ……カルラ) 傷つき倒れていたハクオロを助けてくれた薬師のエルルゥ。家族として自分を支えてくれた彼女。 時に怒られたりもしたが、家族だからこそ叱ってくれたのは、痛いほど解かる。 その眩しい笑顔と、強い瞳に二度と視線を交わす事は出来ない…… 大切な部下の一人で、奔放な言動と行動で何度も困らせてくれたカルラ。 彼女と契約しても、そのやりとりは変わらなかったが、彼女は常にハクオロを助けてくれた。 その強く美しい微笑と、高潔な瞳に二度と視線を交える事は出来ない…… 出来れば、ハクオロは全てを投げ出したかった。何度迎えて... -
サプライズド・T・アタック(前編)
サプライズド・T・アタック(前編) ◆4JreXf579k 神社へ行くはずの救急車は停止していた。 それはさほど珍しい光景ではない。 今この時間は島のいたる所で悲しみの声が上がっているのだろう。 無論この救急車に乗っている集団にも悲しみの知らせは届いていた。 相沢祐一と大石蔵人の両名が死んだのだ。 しかし、それだけなら問題なく救急車は動いていたであろう。 彼らには神社へ急いで行かねばならない理由があるのだから。 だが、今回のケースは少しばかり勝手が違う。 読み上げられた死者の中にあるべき名前が入ってなかったからのだ。 その人物の名前は水瀬名雪。 「ウソ……名雪さん……生きてるの?」 あゆは思わず両手を口元に当てて驚きの声を上げる。 あゆは瞳にメスを突き立て殺してしまったと思い込んでいたが実際のところは生きていた。 片目を失明という重傷を負っているも... - @wiki全体から「大地に降り立つ一人の戦士」で調べる