「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 誘拐と人食い-14

最終更新:

Elfriede

- view
だれでも歓迎! 編集

誘拐と人食い 14


一人ずつ
一人ずつ
端から順に消されていく『ソニー・ビーン一家』の子供達
狩りの作戦を立てていた者も
それを遂行するための鍛錬をしていた者も
狩りのための武器を作っていた者も
獲物を家族の食事へと加工していた者も
分け隔てなく端から順に
認識する事の出来ない交通標識に引き摺り込まれ
自分達が獲物である家族以外の人間にやってきたように
喰われる肉へと加工されていく
『いつ』という認識を自在に操る『フライング・スパゲッティ・モンスター』の能力により、すぐ隣で家族が消えたとしても
それが『いつ』だったのかという認識を狂わされ、疑問に思う事すら出来なかった
ただ一人
家長である『ソニー・ビーン』ただ一人を除いて

―――

子供達の数が次々と減っている
だが子供達からは敵襲の報告は無い
例え『無敵』の状態でなくとも、そう簡単に倒されるような性能ではない
そうなるように、きちんと計画的に交配をさせ、優秀な戦闘要員を作り上げてきたはずなのだ
ガスか、病毒か、姿無き暗殺者か
捕えたかつての娘が与していたであろう事から、無差別攻撃は仕掛けてこないという油断をしていたのだが
捕まった事すら、彼女諸共『ソニー・ビーン一家』を殲滅する為の作戦だとしたら、猶予は無い
早急に退路を確保しなければならないという事だ
だが彼はふと気が付く
子供達は、確実に『一人ずつ』減っている
常に集団行動をしている子供達が無差別攻撃によって倒されるのならば、1グループずつでしか有り得ない
そして、減っている子供はまず『この下水道から消えて』から『何処かへ転移して一瞬で殺されている』
「なるほど、やるものだ」
『ソニー・ビーン』は薄く笑うと、子供達が次々と消えている方へと直線的に視線を向け
檻の中で虚ろな目付きで転がっているポーラへ、皮肉げな声でそう告げる
その言葉が届いたのか、ポーラは僅かに身動ぎし己の唇を貪る少女を押し退け、唇の端を僅かに歪めて笑い
「……ですとろーい」
「まだそのような口が叩けるか」
その言葉を、未だ彼女を堕とせぬ叱責と受け取ったのか、少女達は今までよりも熱心にポーラの身体を舐り始めた
「ぃっ! ん、ぅっ! ひぅんっ!?」
浮かせた腰を挟み込むように顔を埋めた少女達が、一心不乱にポーラの体液を啜り唾液を粘膜に擦り込んでいく
「私を、父と認めるかね?」
「あっ、ひぁ、っ! ふくっ……ふぁっ、きん、しりあるきらー……っ!」
その言葉もただの強がり、折れる直前の跳ね返りに過ぎないと認識している『ソニー・ビーン』は薄い笑みを浮かべて檻を離れていく
愛する家族を害する者を排除するために

―――

「これで何人かなー?」
血と脂で彩られたキッチンに積み上げられた人骨を、『人肉饅頭屋』の女が指差し数えていく
「そろそろ50、半分ってとこかしら?」
「まだまだペースを上げても大丈夫だがね」
返り血一つ浴びていない綺麗なコックコート姿で、悠々と語る『殺人肉屋』の男
「それじゃ、次いきますよー」
『交通標識のモデル』がのんびりと次のターゲットを攫うべく、その身体を掴んだ瞬間
《手を離せ!》
無線から飛び込んできたピーターの焦燥の声
「へ?」
その言葉は一瞬遅かった

―――

ピーターが、その一角に居た最後の子供に近付いたその時だった
交通標識から膨れ上がった怪人が子供の身体に触れた瞬間
下水道の闇の奥から、突然湧き上がるようにして現れた『ソニー・ビーン』が、交通標識に引き摺り込まれかけた我が子の足を掴んだのだ
「そんなまさか!? 僕達が『いつ』存在しているかの認識は、完全にずらしてあるはず!」
聞こえていないはずの言葉を、『ソニー・ビーン』は嘲笑う
「何処の誰が何をしているかは知らないが、私は常に我が子達の状態を認識しているのだよ」
ずるりと交通標識に引き摺りこまれる子供に続いて、『ソニー・ビーン』もまた交通標識へと飛び込んでいく
状況は一瞬
対策を簡潔に実行させるべく、ピーターは無線に向かって思い切り叫んでいた
「手を離せ!」

―――

キッチンに引き摺りこまれた子供の手足が、先程までと何ら変わる事なく簡単にもぎ取られる
「どうしたネ?」
「どうしたヨ?」
動けなくなった子供の下へ、とてとてと駆け寄る『達磨女の見世物小屋』の双子少女
拾い上げようとした片足の足首を、大人の手が掴んでいた
「―――」
少女が何か言おうとした
少女が何かしようとした
瞬きした時にはその手は既に視界から消えていて
「え、きゅぐっ」
交通標識から飛び出してきた『ソニー・ビーン』が、鶏でも絞めるように少女の頚骨を捻り折り
もう一人がそれに気がついた瞬間、その喉笛に喰らいつき
「か、は」
ぐちゃりと音を立てて食い千切った
折り重なって倒れる双子の少女には目もくれず、床に転がされた我が子の姿に眉を顰める
口の中に残った少女の喉笛をくちゃくちゃと咀嚼し、ごくりと飲み下して『ソニー・ビーン』は宣言した
「48人。貴様らが殺したであろう我が子達の数だ」
血に塗れた口元を歪め、『ソニー・ビーン』は高らかに宣言する
「お前らはその数を取り戻すまでの栄養となれ」
その言葉を挑戦と受け取ったのは、『人肉饅頭屋』の女と『殺人肉屋』の男の2人
それぞれ中華包丁と肉切り包丁を手に、臨戦体制を取る
「舐めるな、三下が」
『ソニー・ビーン』そう呟くと、子供達が持っていたものとは違う、大振りな金属製のナイフを両手に握る
「私は家長であり、一族の一家の主だ。家族を教え、導き、守る存在であり」
ずるり、と
『殺人肉屋』の身体が、ずれた
「な、が、あぶ」
輪切りにされ、失敗した達磨落としのようにその場に崩れ落ちる『殺人肉屋』
「何より一族としての『名』を持つ私は、貴様ら十把一絡げの殺人都市伝説とは格が違うのだよ」
「くっ……!」
相当な戦闘能力を持つ者でも、そうは見切れない速度で放たれた、重く肉厚な中華包丁の斬撃
その尽くが質量では遥かに劣るナイフにより弾き落とされる
「私を、数による無敵性さえ無ければ大した事は出来ない、ただの殺人都市伝説だとでも思ったか?」
ぱきゅん、と
軽い音を立てて、鉛弾が弾き逸らされる
「お喋りに夢中になってりゃ当たると思ったんだがな」
拳銃を構えたサロリアスが、舌打ちする
「だがまあ、今ので判った」
「何がだね?」
「わざわざ銃弾を弾いたって事は、死ぬような攻撃が当たりゃ素直に死ぬって事がだよ」
銃口をぴたりと『ソニー・ビーン』に向け、咥えていた煙草を床に吐き捨てる
「音門の、儂を巻き込むでないわい」
「ジジイ、手前ぇの作戦だろうが。どうせ最後にゃアレを仕留めなきゃいかんのだろうがよ」
ぼやいたものの、このままではどうしようもないと考えたのか
「人さえ喰わなきゃ、産めよ増やせよなところは気が合うと思うんじゃがのぅ……どっこいせ」
がっしりとした体格に似合わない古めかしい楢の木の杖をついて、のんびりと立ち上がる老人
「儂、自衛しかせんぞ。本気で戦ったら嫁にこの町に隠れてるのがバレるでの」
「死んで喰われるのと嫁に見付かるのとどっちが恐いってんだ」
「嫁に決まっとろうが」
そんな駄話の合間に、『ソニー・ビーン』の背後に巨大な影が迫る
「小賢しい」
両手のナイフが迫るものを寸刻みにするほどに斬りつける
が、その影は意に介した様子もなく迫りその身体を掴もうとする
「人体やそれに類するものを殺すのは得意そうだけど、そうでないものとかはどうかな?」
交通標識から膨れ上がる、人攫いの男の影
だが攻撃こそ通用しないものの、その少々鈍重な動きは『ソニー・ビーン』を捉える事は出来ていない
「本体を殺せば問題あるまい」
一瞬で死角に潜り込み、『交通標識のモデル』の延髄にナイフを突き立てる
思い切り捻りを入れて中身を攪拌した感触が手に伝わってきたのを確認し
「なるほど、厄介だ」
即座に身を引いて、膨れ上がった人攫いの男の影の間合いから逃れる
「便利だから人型をしてるけど、僕は契約者じゃなくて都市伝説そのものだからね」
ミンチになった延髄など気にした様子も無く、シルエットのように色を無くしていく『交通標識のモデル』
「喰えん輩は放置して、順に片付けていくか」
『ソニー・ビーン』背後を取った『人肉饅頭屋』が、中華包丁をその脳天に振り下す
だがその一撃は届く事無く腕が刻み落とされ、十字に抉られた腹から腸が零れ落ちた
どちゃりと自らの血と腸の中に倒れ込む『人肉饅頭屋』の女
「あと2人を殺してから、ゆっくりとお前を殺す手を考えるとしよう」
そう言って『ソニー・ビーン』はナイフの血を振るい落とし、サロリアスと老人の元へと悠然と歩を進めていった


前ページ   /   表紙へ戻る   /   次ページ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー