「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-64d

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
ピエロ  廃工場にてから続き】

 どうするか
 慶次は必死に考える
 一応、天地に緊急連絡のメールはいれた
 この場に、誰かしら駆けつける可能性はある、あるのだが

(問題は、「誰」が来るか……)

 ある程度戦闘ができる人員が向けられるはずではある
 だが、「ある程度」しか戦闘が出来ないのでは、この場は駄目だ
 もっと、理不尽に立ち向かえるような、そんなレベルでなければどうにもならないのではないか
 そのように、慶次は感じたのだ
 天地がこちらに向かわせることができる人員で、そんな奴はいただろうか……

 そうして、必死に思考を巡らせていた、その時だった
 何か、聞こえてくる
 その音は、外から聞こえてきていた
 様々な音が混ざり合っているが、具体的に言うと暴走族が乗っていそうなバイクのエンジン音と走行音、何かと何かがぶつかったような音と絶叫

 ……バイクの音+何かと何かがぶつかった音+絶叫?

 慶次以外にも、その音ははっきりと聞こえていた
 そして、それらの音を聞いた全員が、外で起こっている何かに気づいたのだろう
 誰もが一瞬………本当に、ほんの一瞬だったはずだ………この建物の入口を見たのと、それは、ほぼ同時だった

 工場の入口から、シルバーなメタリックが飛び込んできた
 耳にうるさい爆音を響かせながら、その銀色に輝く改造バイクは工場内にいたピエロメイクの者逹へと、一切合切遠慮なしの突進を開始する
 バイクを運転しているライダースーツに銀髪の男の背後に、もう一人誰か乗っているようで、白衣がはためく

(………白衣?)

 白衣である
 見間違いでなければ、白衣だ
 ……まさか

 ギギギギギギッ、と嫌な音をたてながら、バイクが慶次逹の前で急ブレーキをかけて停まり………その白衣が、降りた

「やぁ、カブトムシの青年!天使の御仁に行けと言われたから来たよ!」
「よりによっててめぇか、くそ白衣ぃいいっ!!」
「うん、それだけ叫べるならとりあえず大丈夫だな!」

 あっけにとられている様子のかなえやひかりに構う様子なく、「先生」は朗らかに笑う
 緊張感あふれるこの場にやってきたのだと言う自覚などさっぱりないのではないか、と疑いたくなるような朗らかな笑顔だ

「まぁ、そちらのお嬢さんが怪我しとるのはなんとかしたいが………ん、んー、先にあっちを片付けねばならんかね」

 つ、と
 「先生」がタートルネックの男とスーツの男を見た
 眼鏡の奥で、血のように赤い瞳が興味深げに彼らを見つめる

 向こうも、突然の闖入者に流石に驚いているようだった
 いきなり、こういう場に都市伝説能力なしで(なしのはずだ。さっきの轢き逃げアタックは都市伝説能力が働いているようには見えなかった)突撃してくる馬鹿がいるとは思わないだろう
 都市伝説能力者であれば、都市伝説能力を使って乱入してくるものだろう
 何故、バイクで轢き逃げした
 ちらり、とバイクを運転していたそいつを見ると、銀髪にサングラスにライダースーツ
 ……慶次は見覚えが合った
 戦技披露会の会場に来ていた「レジスタンス」のメンバーだ。確か、「ライダー」とか呼ばれていたはず

「……待て。なんで天地がよこした人員なのに、「レジスタンス」の奴がいやがる?」
「天使の御仁から連絡きた時、ちょうど診療所にいたので足代わりに」
「バイク改造してもらった分の代金代わりにここまで連れてきたぜ」

 さらりと、「先生」と「ライダー」はそう答える
 そう言うのであれば、恐らくそうなのだろう。何かが引っかかるが

 ようやく、相手は混乱から回復したのだろうか
 タートルネックの男が声を上げる

「これはこれは………「死毒」アハルディア・アーキナイトに、「レジスタンス」の「ピーターパン」の部下が一人、「ライダー」とは。「死毒」がこの街に来ていた事は知ってたけれど、まさか「ライダー」までとは」
「……懐かしい呼び名だね」

 タートルネックの男の言葉に、「先生」はやんわりと微笑む
 苦々しい表情、ではない。本当に懐かしそうに、やんわりと微笑んでいた
 彼にとって、「死毒」とは発狂時代の色々とやらかしていた頃の異名であり、苦い思い出しか無いはずなのだが……
 ……否、違う
 彼にとっては、発狂時代の事もまた「苦々しい思い出」ではないのだろう
 俺の過去として。ただ「あった事」として飲み込んでしまっているだけなのだ

「「ライダー」がいると言う事は、「ピーターパン」も?」
「安心しな、ちょろい上司ランキングナンバー1なうちの上司は、只今アヴァロン補修に駆り出されてて日本に来る暇もねぇよ」

 バイクのエンジンをふかしながら「ライダー」はタートルネックの男にそう答えた
 そうかい、と男は笑う

「それは良かった。彼もまた、イレギュラーと言うべき厄介な存在だからね。これ以上イレギュラーに増えられてはこまる」
「それは同感だな。あの御仁にこっちに来られると我々も困る」

 うんうん、と何故か「先生」がタートルネックの男の言葉に同意している
 ……どうやら、「ライダー」の上司とやらは、ひかり同様イレギュラーになり得る存在であるらしい
 「レジスタンス」の上位幹部ともなれば「組織」の上位幹部と同じくらいのとんでもクラスがいる事は確実なので、あまり驚きはしないが

「あ、あの、「先生」……」

 かなえが、怯えたように、不安そうに声を上げた
 「先生」は、かなえに優しく笑いかける

「あぁ、大丈夫だよ、お嬢さん。少なくとも、お嬢さん逹はちゃんと逃がすさ。そういう事は、大人の仕事だからね」
「逃がす?ここから?」

 スーツの男が、「先生」をじっと見つめる
 そうだよ、と、「先生」は笑う

「どうやら、お嬢さん逹のメンタル面にあまり良くなさ気な者がたくさんいるみたいだしねぇ」

 とんとんっ、と「先生」が床を軽くつま先で叩いた
 その瞬間、「ライダー」の乗るハデッハデなバイクの傍らに、地面からサイドカーが生えた
 違う、生えたのではない
 「先生」が、廃工場の床を材料に、瞬時に錬成したのだ

「「賢者の石」、厄介ですね。あなたもある種、イレギュラーと言っていい」
「おや、私はそこまで万能ではないよ………万能だなんて、そんな「猛毒」、残念ながら私は手に入れられなかったよ。なにせ、天才ではなく凡人なのでね」

 ゆるゆると笑いながら、ついでにヘルメットを錬成する
 出来たヘルメットは、三人分

「薙刀の御仁、一度、お嬢さんの中に戻ってくれるか。サイドカーをつけたとは言え、流石に君が乗る余裕はあるまい。サイドカーにお嬢さん逹2人、「ライダー」の御仁の後ろにカブトムシの青年一人。それで希望の明日へレディゴーしようか」
「おじちゃま?……おじちゃまは、どうするの?」

 ひかりが、「先生」を見上げて問う
 …その通りだ
 先程「先生」が言ったように「ライダー」のバイクに乗り、ここを離脱するのだとしたら「先生」はどうするのか
 この場に、取り残される事になる

「なぁに問題ない、なんとかなるさ」

 ひかりの問いにも、「先生」は普段と何も変わらぬ様子で答えた
 穏やかな表情も、優しく笑う表情も、何もかもそのままだ

「ずいぶんと余裕だね」
「いやぁ。君達こそ、余裕であろ?ここまでのおしゃべりやら準備やら、きっちり見逃してくれているではないか。うん、実に優しい!とりあえず初手でこちらの脳天にバズーカぶっぱしてきた天使の御仁とは違う」

 にこにこと「先生」は笑う
 はいはい、と慶次逹にヘルメットを渡すと、す、と「ライダー」の前に立つ
 この場にいる全員、自分が相手しよう、とでも言うように

「ほら、早く行きなさい……と言うか、行ってくださいお願いします。私は戦うこと自体ヘタであるし、そのせいか年頃のお嬢さんに見えていい戦い方ではないのだよ」
「…てめぇの場合、戦いのうまいヘタの問題じゃねぇだろ」

 ぼやきつつ、慶次は半ば強引に、かなえとひかりにヘルメットを被せていく
 そうしながら、「岩融」に告げた

「一旦、戻れ……離脱するしかねぇからな、ここは」
『……っわかった。主、戻るぞ』

 ふっ、と「岩融」の姿が掻き消えた
 完全にパニックからは脱出しきれていないかなえを急ごしらえのサイドカーに載せ、その膝の上にひかりも載せた
 慶次自身もヘルメットをかぶると、「ライダー」の後ろへと乗る

「逃がすとでも……」
「逃げるさ!」

 ライダーが、バイクのハンドルについていたスイッチを押す

 ………ハンドルに、スイッチ?

 慶次が疑問に思うよりも早く、彼らの乗るバイクの前方部分に、キュィイイイン……っ、と光が集まって

「ABRACADA…………っ!?」

 タートルネックの男が、「ライダー」が行おうとしている何かを阻止しようとして
 が、その口からは「アブラカダブラ」の呪文ではなく、血が吐き出された
 バチ、バチバチッ、と、いつの間にか「先生」の周囲に赤黒い光が放電するように輝き始めている
 その輝きは、「先生」が手掛けた「賢者の石」が、何かしらの能力を発動する際のもの
 かつて、「先生」も開発に関わった「賢者の石」の出来損ないもまた、それを埋め込んだ人物を再生させる際にそんな光を発していたと言う

 何をされたのか、タートルネックの男は気づく
 瞬間的に、己の周囲の空気を「毒」に変えられたのだ、と

 血を吐き出すというタイムラグのせいで、間に合わない
 「ライダー」の乗る派手な改造バイクに収束された光は、そのまま、どぉん!!という派手な音と共に、レーザービームとして打ち出され
 発射の瞬間、そっと横にそれた「先生」を微妙に巻き込みながら、前方にいた者逹を容赦なく、焼いた
 あまりの眩しさに、かなえやひかりにその様子が見えたかどうかは、わからない

 ごぅんっ!!とエンジンが唸りを上げて、轟音と共に四人を載せたバイクは廃工場から走り去っていってしまった



「うん、腕によりをかけて改造してよかったと言うべきかな」

 バチバチッ、と赤黒い光を発生させながら、うっかりとレーザーに巻き込まれた体を再生させる「先生」
 「ライダー」に頼まれて、あのバイク(「ライダー」の上司の物だった気がする)を改造したかいがあった
 ミサイルだけではなく、やはりレーザーも積んで正解だったのだ
 ミサイルもレーザーも、男のロマンである
 ドリルを詰めなかった事が、若干後悔であるが今後、また改造の機会があったら積ませてもらおう

「……やってくれるね」

 さて、ピエロ連中は轢き逃げアタックや先ほどのレーザーでそれなりに倒したものの、タートルネックの男とスーツの男は、まだ無事だ
 タートルネックの男も、口から血を吐き出し続けてはいるが、まだ軽めの毒であるからか致命傷ではない

「良いのかな?……あなたは確か、正気に戻った後、むやみにどの毒をばらまかないよう、約束させられていると聞いているけれど」
「可愛らしいお嬢さん逹が襲われていたのであるからね。そちらを助けるためならば問題ないさ。誰かを助けるためであれば多少毒をばらまいてもいい、問題ない、と言われている」

 にっこり、「先生」は笑って答えた
 そう、問題ない
 これから自分が行う事も、何も問題はないのだ

「さて、諸君。彼らを追いかけたいかもしれないけれど、駄目だよ」

 毒が満ちる
 この廃工場全体を覆うように、毒が回る
 床も、壁も、天井も、窓も、空気も、何もかも何もかも
 全てを「先生」が毒へと変えていく
 何か動作をする事なく、ただ、「先生」の周囲でバチバチと赤黒い輝きが生まれるたび、高速で錬成がなされていく

「大丈夫、即死はさせない。その前にやらないといけない事もあるからね」

 白衣の内側から、「先生」がメスを取り出す

「多分、素直に口割ってくれないだろうし、一応素直になるお薬も使うが、それでも駄目だったら頭をかっさばいて中身を見ないとね。緊急事態だし、まぁ良かろう」

 「死毒」が笑う
 彼は、ある意味で発狂状態から正気へと戻った存在である
 だが、そもそも、「元から正気ではなかった」とも言える存在である


 彼に罪悪感はない
 どれだけ残虐な事であっても、残酷な事であっても、「必要」と判断したならば、やり遂げる

「さぁ、私のスペシャルな毒のフルコースを、どうぞ」

 致死量の毒が襲う
 人体を麻痺させる毒が、体の機能を殺す毒が、ありとあらゆるものを腐食させる毒が
 一斉に、この場にいる者逹へと襲いかかった




to be … ?


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