「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-64e

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匿名ユーザー

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 毒が満ちる
 辺りの空気そのものを毒へと変えたのだから、通常の生物であれば呼吸すらままならない
 吸い込んでしまえば呼吸器官をやられる。それだけではなく体を内側からどろどろに溶かしてくる
 …そもそも、この現場にいる事自体、危険なのだろう
 空気も、床も、天井も、壁も、窓も
 この場の全てが毒へと錬成され変えられたのだから
 この廃工場の外までは毒は漏れ出していないものの、確実にこの土地は駄目になるだろう
 そのような状況を作り出した「先生」自身が頑張って治せなくもないのだが………少なくとも、現時点でこの「先生」がそこまで考えているかどうか、となると微妙であった
 「先生」の顔に浮かんでいる表情は、明らかに楽しんでいるもの


 久々に、良い実験体が見つかった、と。そうとでも言いたそうな表情だった


 たんたんっ、と「先生」が足元を踏み鳴らす
 踊るように、奏でるように
 バチバチと赤黒い光を放ちながら、毒を生み出していく

 タートルネックの男とスーツの男はまだ、立っている
 しかし、他のピエロ逹は悲惨な状況だった
 溶けているのだ、内側から、外側から
 悲鳴もあげられず、逃げる事もできず、ぐちゃり、と溶けて溶かされ崩れていく
 その状態で死んでいられたならば、きっと楽だったのだろう
 せめて、痛覚だけでも消えていてくれていたならば楽なのだろう
 だが、「先生」の作り上げた毒はそれを許さない
 ピエロ逹は、痛みと言う痛み、苦しみと言う苦しみを味わいながら、生きながらにして溶かされ続けていた

「さすがは「死毒」と言うべきか。残酷な事をする」
「ん?……ふむ。ふむ?」

 スーツの男の言葉に、「先生」は不思議そうに首を傾げた
 その間も、とんとん、たたたんっ、と足元を軽く踏み鳴らし続ける

「ん、んー………あぁ、そうか。これは「残酷」に入るんだったね。まぁ、いいや。我が上司いわく「外道は苦しみながら死ね」との事だから、オッケーオッケー許される」

 うんうん、と何やら自分に言い聞かせるように頷いている「先生」
 残酷、と言うものの基準すら、「先生」はいまいち理解できていない

「生かしたまま溶かすとかも、コーラの御仁もやってるし……うん、やっぱりオッケーだね!駄目だった時は仕方あるまい、私が怒られればそれで終わる」
「本当に、このまま生きてここから帰るつもりらしい」

 タートルネックの男は笑う
 吐き出した血は、拭う事なくいつの間にか消えていた
 足元を踏み鳴らす「先生」を真っ直ぐに見据え、彼は唱える

「ABRACADABRA(私が話す通りになる):毒は全て、アハルディア・アーキナイトへと返る」

 能力が発動する
 「先生」が生み出した猛毒が、全て、「先生」へと返っていく

 返っていっている、はずだった
 しかし、「先生」には何の変化も訪れない

「我が子(毒)に負ける程には、耄碌しておらんよ」
「……まぁ、そうだろうね」

 そもそも、己が生み出す毒に負けてしまうのであれば、今、この場に立っていられたはずがないだろう
 「先生」が生み出した毒は、彼自身には効かないのだ
 たんたんたたたん、ステップを踏みながら、「先生」は更に口を開く

「ABRACADABRA(私が話す通りになる)」

 穏やかに笑みを浮かべて、「先生」がこの言葉を口にする

「君達は逃げられない」

 ほんの少し、悪戯めいた声音でそう告げる
 その瞬間、スーツの男も、タートルネックの男も、自身の足に違和感を覚えた
 足が、重たい
 先程までの毒に侵されていた状態とは、また違う
 まるで、逃げられないように縛り付けられているような、そんな感覚だ

「なるほど、なるほど!ABRACADABRAは、古代には熱病や炎症の治療に使われていた呪文であったと記憶しているが、今はその気になればこんなふうにも使えるのか!なるほど、楽しい!!」
「自身で契約していない都市伝説の力まで使うのはやめて欲しいね」
「魔術要素があるなら、ちょこっとくらいなら許されようよ。私は「賢者の石」の契約者であるからして」

 楽しげに笑いながら、そう告げる
 「賢者の石」は、最高レベルの魔術媒体ともなり得るものだ
 それにくわえて、「先生」は元々、人間であった頃から……「賢者の石」の契約者となる前から、「薔薇十字団」に所属していたのだ
 魔術的教養をある程度身につけており、扱い方を心得ている
 「賢者の石」の使い方としてかなりイレギュラーではあるが、他の魔術的都市伝説の真似事もできるらしい………もちろん、何かしらの制限・制約は存在するのだろうが

「ふむふむ。しかし。君のその「ABRACADABRA」は、事情で現実を上書きすると言う、それこそ間違えば万能足り得るものであるが。流石に制限があるか。できん事もある………いや、時間がかかって、まだ発動しとらんだけかな?」
「何故、そう思うんだい?」
「君のその力が真に万能で何だってできるのであれば、さっさと私を殺せば良いではないか。それをやらん、と言う事は。できないもしくは時間がかかるのだろう?」

 少なくとも、「先生」はそのように理解した
 殺さずとも、さっさと無力化するなりなんなりしてしまえばいいのにやらないのはそういう事なのだろう、と考えたのだ
 それと、と「先生」はスーツの男へと視線を移す

「君は、私に何をしてくれるんだい?……それとも、予知能力・探知系能力・察知系能力に対するカウンターしか出来ないタイプかな?」
「……やっても、すぐに毒で溶かされるだろうし。そもそも、すでに発狂済の相手が更に発狂するかどうか」
「私、今は正気のつもりであるのだけれどなぁ」

 スーツの男の言い分に、解せぬ、と言う表情の白衣
 しかし、すぐにまた、笑顔に戻る
 たんたん、とととん、たん、たたたんっ、と足元で刻み続けるステップは続く
 バチバチ、バチバチと、毒を生み出し続け……

 それだけではないのでは
 タートルネックの男も、スーツの男もそれに気づいたが
 それと同時に、「先生」は緩やかに、穏やかに、笑った

「それじゃあ、この毒もちょっと借りて使おうか」




「ーーーーーっ!」

 一瞬、ざわざわとしたものを「ライダー」は感じた
 この学校町に来てから、ずっと妙にぞわぞわしたものを感じていたのだが……それが、ほんの少し「動かされた」ような「引っ張り出された」ような、そんな感覚

「どうした?」
「いや、なんでも。あえていうなら「先生」がなんかした気がしただけさ」

 それは何かろくでもないことが起きる予兆じゃねぇのか、と背後から慶次の突っ込みが飛んできたが、スルーする「ライダー」
 なんかあったら「ライダー」が怒られたり踏まれたり椅子にされたりするだけだと思うので、「ライダー」的にはあんまり問題がないのだ
 怒られるのを嫌がって、派手なことはしないはずだし、多分

「さて、っと。このまんま「組織」の病院に行くつもりだが。そっちのガールもそれでいいのか?」
「ガールって、私?」
「おう、そうだぜ」

 サイドカーで、かなえの膝の上に座っていたひかりにそう告げる「ライダー」
 彼女が、郁の救出に向かったのだという者と合流するつもりであれば、そちらに送るつもりらしい

「っあ、あの、ら、「ライダー」さん、前方に。また……」

 と、あわあわとかなえが口を開く
 彼らが乗るバイクの前方、ピエロの影が見えた
 どうやら、学校町内で何かしら動き出しているらしい

「オッケー、じゃ、見たくなかったら目を閉じとけ!」
「おい、待」
 て、と慶次が言うよりも早く、「ライダー」がバイクのハンドルを決められた方法でひねった瞬間
 けたましい銃声音が響き渡り、バイクから発射されたガトリングの弾はピエロ達を次々打ち抜き、そのまま道を爆走していったのだった



 毒が沸き立つ
 地面から……地脈から、毒が取り出される
 本来、この土地の地脈の影響をダイレクトに受けるとあるものにだけ通じるはずの毒は、取り出された瞬間に「先生」によって改造される
 改造された毒は、地面からゆるゆると登り上り、スーツの男とタートルネックの男の精神を蝕みだした

「ーーー世界は毒で出来ている」

 バチバチと、自身を中心に赤黒い輝きを放ちながら、歌を歌うように言葉が紡がれる

「世界に満たされた毒を、我々はほんの一部しか知らない。しかして、自覚さえしてしまえば、後はその力を強めれば、その毒はたやすく全てを殺しえる」

 溶ける
 すでに原型すら残さず、細胞のひとかけらすらも残されずに溶かされていったピエロ逹のように、彼ら二人も溶かされ始める
 先程までの毒よりさらに数段上の猛毒が、辺りへと満たされる

「私も、毒なのだろう。君逹もまた、毒だ。毒を持って毒を制せよ。彼らの目的を達成させるためにも、君逹と言う毒は、私という毒にて制圧しよう」

 溶けよ、解けよ、融けよ、と
 ゆるりるりらと言葉は紡がれ、その言葉すら毒になる
 子守唄のように言葉は紡ががれ、耳を心を精神を犯し、眠りにつかせようとする
 二度と目覚めることがないように、最後の子守唄を贈るように言葉を紡ぎ、毒を贈る

「眠りなさい、溶けなさい、消えなさい。舞台から観客席へと突き飛ばさせてもらおう。目覚めてしまわないように、ずっと、その穏やかで苦しい悪夢が続くように」

 タートルネックの男が、何か告げようとした
 スーツの男が、何か告げようとした

 その言葉を遮るように、「死毒」はわらった



「君達がいると、彼らの「物語」に支障が出かねない。彼らが「最初から決まっていた通り」に「物語」を進められるように。障害を排除するのもまた、大人の役目であろうよ」


 溶かし切る
 消し去りきる

 その強い意志を持って、「死毒」は二人を殺しに、否、「消し去り」にかかった




to be … ?



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