「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-12

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
   たとえ 世界のすべてが 君の敵になろうとも

   君に、その覚悟はある?




               Red Cape









 かつて、学校町では恐ろしいほどの頻度で都市伝説事件が起きていたらしい
 しかし、ここ十数年、「組織」や他の都市伝説集団などの努力のかいもあり、事件数は減少傾向にあった
 それが、今になって再び増加傾向にある

「どういうことなんでしょうね」

 高校生程の容姿の少女が、少し不安げな表情でそう呟いた
 高校生程………と言うか、彼女はまだ高校生だ
 紅 かなえ。中央高校に通う一年生。そうであると同時に………「組織」所属の、契約者
 ぎゅっ、と薙刀の柄を握り、少し緊張している様子だ

「………さぁな。また昔みたいに、学校町で何かやらかそうとしている奴でもいるんじゃないのか?」

 慶次がそう答えると、かなえの表情が少し強張った
 薙刀を握る手に、少し力がこもったように見える

 ………またやってしまったか、と慶次は少し、後悔した
 怖がらせたい訳ではないのだが………どうにも、自分は彼女を怖がらせてばかりだ

「やれやれ。あんまり怖がらせないでやってくれないか?」

 そして、こうして怒られるまでが、形式美のようになってしまっている現実が、解せない
 かなえの背後に控えていたゴシックロリータ風衣装に身を包んだ黒服が、呆れたように慶次を見上げている

「確かに、その可能性は否定出来ないのは事実ではあるが。何も、今、言わずともいいだろう?」
「警戒心抱かせるのは必要だろうが」

 どうにも、この黒服は苦手である
 この黒服の言葉には、反射的に反論してしまう
 やれやれと、肩をすくめられた

「……まぁ、いい。かなえちゃん、そろそろ、ヤツが出没する時間帯だ。いつでも戦えるようにしておくんだよ」
「は、はいっ…………大丈夫、です」

 かなえの長い黒髪が、揺れる
 薙刀を構え、静かに深呼吸し…………ぼぅっ、と。その薙刀が、一瞬、ブレた
 そこから、僧兵のような服装の巨体の男が姿を現した

『主ぃ、仕事か?』
「はい………慶次さんが迎え撃って。それで倒しきれなかったら、私が。岩融さん、補助をお願いします」
『心得た』

 岩融………武蔵坊弁慶が使っていたと言われる武器。形状については諸説あるが、彼女の使うそれは薙刀の形をとっている
 そして、武蔵坊弁慶の姿を真似たかのような「岩融」の意識がこうして、人の形をとって出現する
 普段はかなえがふるっているが、いざとなれば岩融自身が己を振るって戦うのだという
 ………何か、そう言うアニメ作品だかゲームだかがあったようななかったような、と言う記憶が慶次にはあった
 案外、そこら辺の影響でも受けたのだろうか

「………、来た」

 と、ゴスロリの黒服が、そう呟いた
 ぶぅんっ、と、慶次は傍らにカブトムシを出現させる

 三人が立っている道の、その前方から………何か、来る
 聞こえて来るのは、バイクのエンジン音
 暴走族めいたバイクが、たった一台で走っているような、そんな音
 やがて、姿が見えてくる。真っ黒なライダースーツを身にまとったライダーの乗ったバイク

 ただ、そのライダーには
 あるべきはずの首から上が、なかった

「出やがったな、首なしライダー!」

 ……先手必勝!
 具現化させていたカブトムシを放つ慶次
 ひゅんっ、と目にも留まらぬ早さでカブトムシは首なしライダーに向かって飛んでいった、が

 キラリッ、と
 夜の暗闇の中、しかし、何かが光った
 それがワイヤーであると気付き、慌てて、カブトムシの進路を変える
 急に進路を変えたせいかカブトムシの速度が落ちてしまい、ライダーに直撃したものの、ダメージにならない
 …「カブトムシと正面衝突」の欠点だ
 相手にダメージを与えるには、飛ばしたカブトムシが十分な速度が出ていなければいけない

「下がって!」

 かなえが、一歩前に出た
 薙刀を構えるその姿に、岩融の化身がふっ、と重なる
 真正面からやってくるその首無しライダーに向かって、かなえは薙刀を振るった

 金属と金属がぶつかり合う、鈍い音
 首無しライダーが周囲に展開していたワイヤー毎、一気に首なしライダーを切断にかかる

「………っきゃ!?」
「かなえっ!」

 が、首無しライダーの方が一枚上手だった
 首無しライダーは己の体が切断される直前、バイクを捨てたのだ
 バイクを足場に、だんっ!と大きくジャンプする
 ……「首なしライダー」にとって、バイクは大切なものだろうに、よくもまぁあっさり捨てられるものだ
 とにかく、首無しライダーがバイクから離れたせいで、かなえの体勢が崩れた
 かなえの振るった岩融は首無しライダーのバイクを真っ二つに切り裂く
 飛び上がった首無しライダーが、狙うのは………

「危ないっ!」
「きゃぅ!?」

 慶次は、とっさにかなえを抱きかかえるようにして跳んだ
 一瞬後に、先程までかなえが立っていた場所に、ライダーが強烈な蹴りを放ちながら着地する

「っの、糞が!!仮面ライダーとでも混合してんのか!?」

 逃げられるわけにはいかない
 倒されるわけにはいかない
 ………かなえを、傷つけさせる訳にはいかない

 しかし、かなえは体勢を立て直し、前に出ようとする
 ……仕方ないのだ
 「カブトムシで正面衝突」は接近戦向きの都市伝説ではない
 対して、かなえの契約している「岩融」は、完全なる接近戦向きなのだ
 ともに戦うのならば、かなえが前に出て戦う、当たり前の事
 …それでも、かなえが傷つくリスクが高まる事が、慶次は嫌だった

 出現させたカブトムシを構える
 首無しライダーは、ゆらり、とその身を揺らす
 ひゅんひゅんと、首無しライダーの周囲でワイヤーが踊る様子が、見えて

「………させないよ」

 ゴスロリの黒服が、動いた
 首無しライダーが展開するワイヤーに向かってわざと突進し………すぱぁんっ、と、その肉体が、胴体から横真っ二つに斬られる
 しかし、血は流れない
 切り飛ばされた上半身は、そのまま首無しライダーに突進する
 ゴスロリ黒服の体当たりを食らった首なしライダーは、予想外の攻撃だったようでまともに弾き飛ばされる
 その体が、どんっ、と、自動販売機にぶつかった

 ………がしりっ、と
 二つの自動販売機の隙間から、手が、伸びる

「はぁい、捕まえたよ」

 少し、おばさんめいた声と共に、手が、首なしライダーをとらえた
 自販機と自販機の間の隙間から、ずるり、と慶次の担当の黒服が姿を現した

 かなえの担当であるゴスロリ黒服は「てけてけ」、慶次の担当のややおばさんくさい黒服は「すきま女」
 ……どちらも、担当契約者のために控えていて、しっかりとサポートに入った

 今回の相手の首無しライダー相手は討伐、もしくは捕縛が目的であった
 できれば捕縛したいところだが、殺されそうになってまで捕縛する必要はなく、討伐してしまっても問題ない、そんな任務だった
 それを考えれば、慶次の「カブトムシと正面衝突」による攻撃が不発に終わったのは、正解だったのかもしれない
 なにせ、慶次は首なしライダーの心臓目掛けて、カブトムシを放ったのだから

(こいつも、ここんとこ学校街を騒がせている連中の仲間かもしれないから、情報引っ張りだすって理由はあるんだろうが……)

 ………それでも、こうした人間の敵となっている都市伝説相手に、慶次はどうにも手加減ができない
 どうしても、殺す方向へと動いてしまう
 両親を都市伝説に殺された恨みは消化されず、常に慶次の中でくすぶり続けているが故に………こうした任務の際に、どうしても表に出てしまうのだ

(………それに)

 ちらり、と、呼吸を整えているかなえを見る
 彼女に傷ついてほしくなかったからこそ、余計に、「さっさと仕留めたい」とそう考えてしまった
 その事実を、否定はできなかった

「かなえ、怪我ないか?」
「あ、は、はい。大丈夫です」

 声をかけると、こくり、と頷いてくるかなえ
 …そうか、良かった
 慶次がほっとした………その、直後

「ーーーっな!?」

 聞こえてきた担当黒服の声に、慌ててそちらに目を向ける


 ワイヤーが、街灯に照らされて輝く
 首無しライダーが具現化させたそのワイヤーは、そのまま、首なしライダーへと絡みついて
 その肉体は、辺りに血の花を咲かせながら、一瞬で肉片と化した


「………っ」
『主、見るな』

 かなえの視界を、岩融が塞いだ
 慶次は、肉片と化したそれが光の粒子へと変わっていく様子を、呆然と見つめる

「んな………どうして」
「…情報が漏れるのを、阻止したようだね」

 ゴスロリの黒服が、悔しそうにそう呟く
 つまり………首なしライダーは、自らが情報源となることを恐れて自決した、と……そう言う、事なのか

(そうまでして、知られたくないってのか)

 このところ、学校街を騒がせているその大本を、そこまで知られたくなかったと言うのか
 慶次にはその心理は理解できず、ただ呆然とすることしか、出来なかった








   人ならざる者の心理を人が理解するなど、できるはずもない




               Red Cape





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