「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 舞い降りた大王-X05

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hayata0328

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~~~閻魔の間~~~

 死ねるものへの、最後の審判。それのひとつが、『閻魔の間』。
 その魂にふさわしい道を【閻魔大王】が判決する。

 ギリシャ神話が死の神・タナトスは、件の報告のため、そこへ訪れた。

閻魔「どうした、タナトス。今日は1人連れてくるのではなかったのか。」

 そこへ、油を売っていた【鬼】と【死神】が横やりを入れる。

鬼「珍しいねぇ、あんたが仕事失敗かい?」
死神「まさか死者を横取りされたんじゃあるめぇな?きっひっひ!」

 それに対して全く動じず、タナトスは淡々と説明する。

タナトス「その、まさかです。」
鬼「なっ!?」
死神「お、おい!そりゃあ……。」

 【閻魔大王】は顔をより険しくし、口を開く。

閻魔「『同業者』の横取りなら、先に当人が来ている筈だが、それらしい者は来ていない。
   それでも死者の横取りが発生したというならば……。」

死神「『黄泉帰り』……!」
鬼「命の理に抗い、天に唾を吐く行為……。
  黄泉の掟により、『黄泉帰り』の力を持つものは、その名を明示し、
  闇雲な力の行使をしてはならぬというのに……!」

閻魔「その死者、あるいはその身内に、『黄泉帰り』の力を持つものがいたのか?」
タナトス「私もその瞬間まで気付きませんでした。」

 少し溜めた後、タナトスは呟く。

タナトス「『彼』の、ようです。」

鬼「『彼』……?」
死神「心当たりがあるんなら、はっきりと……。」

 不意に、【閻魔大王】が手元の台帳を開く。開いたページには、丁度[黄昏正義]と記されていた。その下には彼の来歴があり、【閻魔大王】はその半ばに目を止める。



―――『死亡』と記された行に二重線が引かれ、訂正印が押されていた―――



閻魔「……帰って良いぞ、タナトス。『こちらの手違い』だったようだ。」
タナトス「……了解しました。」

鬼「な、どういう事ですか閻魔様!?」
死神「手違いって、閻魔帳に偽りが載るわけが……!」
閻魔「お前等も仕事に戻れ。お前等に暇などないはずだ。」
鬼「しかし……!」

タナトス「止めておけ。言うだけ、無駄だ。」
死神「……おう……。」

 それ以上言葉はなく、タナトスは外へといった。

閻魔「全く、面倒なものだ……。」

 ぽつり、【閻魔大王】は呟いた。












~~~世界~~~


 正義の蘇り、大王の帰還。
 その2つの出来事で、場の空気が変わったように感じられる。

 勇弥達は、現実を確認するために、正義と大王に近づく。

勇弥「正義ィ! 大王さん!」
楓「大王様! よくぞご無事で!」
大王「……すまない、お互い死に損なった。」
正義「未練もあったし、仕方ないよ。……ごめん、皆。心配をかけて。」
奈海「正義くん……。」



麻夜「何故だ……!? 我の予言と違う……! 何故、お前まで生きている!?」
大王「俺も予想外だ。せっかくの覚悟が無駄になり、少々恥ずかしいと思っていたところだ。
   もっとも……お前を倒さずに消えることの方が恥ずかしいか。」
正義「そういうこと。……【太陽の暦石】、覚悟はできた?」

大王「……会長。」
楓「はい!」
大王「正確にはカウントに、だが……質問がある。」
楓「……はい?」

正義「勇弥くん、奈海!」
勇弥「ん!」
奈海「なに、正義くん!?」
正義「……勝とう。【太陽の暦石】に。そして麻夜ちゃんを助けよう。」



正義「……みんなの力で……!」



勇弥「……あぁ! 任せとけ!」
奈海「うん、やろう!」

 空中で、正義と大王が横に並ぶ。
 今まで見慣れた光景のようで、どこか違う。きっと、それは服装のせいではないだろう。

正義「行くよ、大王!」
大王「任せろ、正義!」



 2人は同時に【太陽の暦石】に斬りかかる。
 しかし動揺しながらも、【太陽の暦石】はその鎧で2振りの剣を弾く。

麻夜「……我の予言は狂わぬ! 生き返ったというなら、また死んでもらうまでだ。」
正義「それはどうかな?」
麻夜「何……?」

 2人の波状攻撃が【太陽の暦石】に襲い掛かる。
 【太陽の暦石】は拳に風を纏い、剣を華麗にあしらう。

 正義の剣と【太陽の暦石】の拳がぶつかり合い、お互いを弾き飛ばす。
 そのまま正義は距離を取り、持っていた剣を投げ飛ばす。その軌道は、予言などなくとも避けるには容易かった。

麻夜「この程度の攻撃……。」

 しかし避けた瞬間……真上から、大王が降ってきた。
 大王は剣を振り下ろし、鎧となった【太陽の暦石】を斬りつけた。

大王「ふぅ……まずは1本。」
麻夜「なん……だと?」

 大王は後退し、正義の横につく。
 互いにチラリと視線を視線を合わせ、微笑んだ後、改めて【太陽の暦石】を睨む。

麻夜「……何故だ、奴はどうして上から……!?」

 【太陽の暦石】が頭上を見ると、そこには白雲が広がっていた。

麻夜「これは奴の……しかし、何故気付かなかった……!?」

 しかし【太陽の暦石】には予言の力がある。
 例えば、『正義の投げた剣に気を取られ、大王の存在に気が付かなかった』など、ありえないのだ。
 そんな小細工など、今まで何度も予言し続けて、対処し続けてきたのだから。

大王「なに、簡単な話だ。お前の認識に1つ、間違いがある。」
麻夜「何……? 我に間違いなどない!過去も、未来も……!」
大王「お前の予言は、『俺達の予言』に勝らない。」
麻夜「ッ……!?」

 正義は頭上に白雲を生成し、そこから2振りの剣を取り出す。

正義「ボクが……ボク達が! お前の未来を、滅ぼす!」



勇弥「大王さん! ちょっと来てくれ!」
大王「……正義、ここは任せた。」
正義「了解。」

 大王が消えたかと思うと、勇弥の傍に黒雲が広がり、大王が降ってくる。

大王「さて、用件を聞こうか。」
勇弥「前々からやってみたかったことがあるんだ、黒雲を貸してくれ。」
大王「ふむ、それなら……。」

 そう言いかけると、勇弥の近くに白雲が広がった。

大王「これを使った方がいい。」
勇弥「了解、ではさっそく……。」

 勇弥は白雲に触れる。すると、白雲は0と1のヴェールを纏って淡く光る。

勇弥「第一段階成功、続きまして……。」

 その様子を見て、改めて戦闘に向かおうとすると、楓が引き止める。

楓「大王様!」
大王「む……なんだ?」
楓「刀を1振り……お借りしたいのですが。」
大王「その程度なら、俺でもできるか。」

 大王は黒雲を生成し、楓の前に鞘に入った刀を降らせる。楓はそれを受け取り、鞘を腰に当て、構える。

楓「手によく馴染む……いい刀ですね。」
大王「どうも、死んで覚え直したようでな。そういった物ならいくらでも出せるぞ。」
楓「ありがとうございます。ですが、この1振りだけで充分です。」

 楓はその場で目を瞑り、精神を統一する。

大王「……これで布石は完了か。では。」

 改めて、大王は黒雲を生成し、正義の近くへ瞬間移動する。
 同時に、【太陽の暦石】に斬撃を試みるが、予知により受け止められた。

大王「不意打ちは無意味か……。」
麻夜「何故だ……? 予言が使えないわけではない、なのに、何故……?」
大王「ふむ、では予言勝負と行こうか。」
麻夜「なんだと?」
正義「大王?」
大王「(奴の精神を乱すのも攻撃の内だ。)さぁ、先手は御本家様に任せよう。」
麻夜「……いいだろう、どうせ口にしたところで何も変わらん。」

 【太陽の暦石】は一瞬集中し、開眼する。

麻夜「まず、日向勇弥とやらは、あそこでただ妙な機械を妄想するだけで何もしない。
   次に、十文字楓とやらは、あそこで剣を振るうが、当然何も斬れはせん。
   そして、お前達は我には勝てない、絶対に。」
大王「……ふむ、ずいぶん具体的で、分かりやすい予言だ。」
麻夜「さて、お前の番だ。我の動きを読めるか?」



大王「お前の予言は外れる。」



麻夜「なに……?」
大王「はてさて、どちらの予言が当たるかな……?」
正義「話はそこまで。そろそろ始めるよ。」

 正義と大王が同時に【太陽の暦石】に斬りかかる。
 大王の攻撃は目視もせずに受け止めたが、正義の攻撃は受け止めるのに若干手間取った。
 さらに大王の言葉が、【太陽の暦石】をさらに惑わせる。
 しかし、今は正義の攻撃と大王の攻撃を受け止めるのが精一杯だった。



勇弥「―――エネルギー制御システム、砲門耐久度、シミュレート完了。そのまま実装。
   各種構成、再チェック……OK。エネルギーケーブル……接続開始!」

 そう言い終わって間もなく、勇弥の傍にあった白雲から、大砲のような巨大兵器が降ってくる。
 それの後端にはケーブルのようなものが繋がっており、その先は白雲から出てこないようだ。
 勇弥はそれを何とか受け止め、すこしよろめく。

麻夜「なに!?!?」
勇弥「……重量シミュレートを怠った……。まぁいいや、エネルギー充填。
   10%……20%……。」

 ケーブルが淡く光り、巨大兵器に何かを注ぐ。
 【太陽の暦石】はその光景に理解が追いつかなかった。
 予言とは違う光景、かつ、自分が知りえないモノの存在。
 おそらく、その時【太陽の暦石】が覚えた感情は……。

大王「余所見を、するなァ!」
正義「てぇぇぇえええい!」

 その感情に支配されるより前に、正義達の攻撃が襲い掛かる。
 【太陽の暦石】は我に返り、攻撃を受け止める。

勇弥「80……90……100%!」

勇弥が持つ兵器が輝きだし、奇怪な電子音を鳴らし始める。

勇弥「行くぜェ……バースト!」

 おもむろにその兵器の引き金を引くと、その砲身から光が放射線状に飛び出す。
 光は【太陽の暦石】の方へ向かい、あっという間に【太陽の暦石】を飲み込んだ。

麻夜「ぐわああああああぁぁぁぁぁぁ……。」

 数秒後、光が小さくなり、やがて消える。同時に、兵器は煙を出し、音を立てて崩壊した。

勇弥「……やっぱり冷却装置に問題があったか。あとエネルギーも全然現実的じゃねぇや。
   【恐怖の大王】パワー様様だよ、まったく。
   おっと……ターゲットは……。」

 【太陽の暦石】を見ると、鎧自体はそれなりのダメージを受けているようだった。
 しかし、どうも麻夜には、何も悪影響は無いようだった。

勇弥「計画通り……かね。正義は……心配するまでもないか。」

 その瞬間、白雲より正義と大王が同時に現れる。

正義「でえりゃあああぁぁぁ!」
大王「だぁぁぁあああ!」
麻夜「くっ……!?」

 反応が遅れ、【太陽の暦石】に2人の斬撃が命中した。先ほどの攻撃と比べれば個体へのダメージは僅かかもしれないが、精神へのダメージは充分だった。

麻夜「……何故だ、あれは何処から出てきた……?」
正義「次……いくよ!」



楓「(十文字流……その極意は、南を目指すものの道しるべなり。)
  (力を求めるものは、見てくれに騙され大きな剣を取る。)
  (しかし真の『道』は、小さくとも鋭く、確実に目的を貫く……【心】。)」

 楓は刃を【太陽の暦石】に向けながら心の中で呟く。やがて納刀し、ゆっくりと目を瞑る。

楓「(たとえ、この身が5つに別れようとも、『道』で繋げば1つのしるべとなる。)
  (十文字をつくる星がひとつ、【技】により砥がれた刃を【体】で制御せよ……!)」

 不意に、楓の姿がそこから消えた。かと思うと、【太陽の暦石】の前の白雲から降ってくる。

楓「十文字秘伝……地平一閃!」
麻夜「なっ……!?」

 高速の抜刀と同時に、鋭い一太刀が【太陽の暦石】に命中した。
 ただの刃だったが、食らうと同時にダメージが増幅され、【太陽の暦石】が苦しみだす。
 【太陽の暦石】は反撃を試みるが、紙一重で楓の姿が消えた。

麻夜「小癪な真似を……。」
大王「小癪な真似に引っかかる、予言者様には言われたくないな。」
麻夜「何故だ……何故、我の予言が外れた!?」
大王「簡単な話だ。」






正義「お前の予言では……ボクが死んでいるからだ!」



 不意に、正義が【太陽の暦石】に斬りかかる。
 反応が遅れたのか、その斬撃は【太陽の暦石】に完全に命中した。

正義「お前の予言と、現実……その中で最も大きな変化が『ボクの存在の有無』。
   いない人間の行動は予言する必要がない。だからお前には、ボクの行動が予言できない。」
大王「予言の絶対性が裏目に出たんだろう。お前は『もしも』を推測できないんだ。
   己の予言は、絶対だからな。」
麻夜「ッ……!」

 【太陽の暦石】は怒りと屈辱の表情を浮かべる。
 しかしやがて、その表情は笑みへと変わる。

麻夜「……なるほど、我の予言を破ったことは褒めてやろう。
   だが、お前達にとって『これ』は大事なものであろう?傷つけていいものか?」

 そう言いながら自分を、いや、麻夜を指さす。
 それを見て、正義と大王は……堪えきれずに笑い出す。

麻夜「……何がおかしい?」
正義「まさか、気付いてすらいなかったとはね。」
大王「まったく、もしそうだとしたら、俺達は攻撃などしないぞ。」

 その様子に、【太陽の暦石】は全く理解はできなかった。
 理解させる暇も与えず、正義と大王の猛攻が始まる。



コイン「ふぅん……分かると思ったんだけど。分かってても、理解できないのかな?」



陰「(次の攻撃は30秒後です。準備してください。)」



伯爵「(カウントまでもう少し時間がかかります。攻撃を控えてください。)」



大王「(正義!まだ攻撃できないのか!?)」



コイン「(私たちが正義くんに情報を送ってることに。)」



 正義くんに与えられた忌まわしき縁、「黄昏の呪い」。
 正義くんには都市伝説の心を読む力が与えられている。
 そのおかげで、正義くんの命中精度や回避能力が底上げされているんだけど……。

 この力は、敵に向けるだけのものではない。
 元々、大王さんと言葉なく息を合わせたりする事だってできた。
 【アンゴルモアの大王】となった今なら、この乱れ飛ぶ情報を、全て整理できる。……らしい。
 私達が、自分と契約者の動きを伝えれば、正義くんはそれに合わせくれる。

 勇弥くんが武器を造った時、正義くんは微妙な動きで攻撃のタイミングを調整していたの。
 【数秒ルール】が発動できるタイミングになるまで、ね。
 カウントが、【数秒ルール】で麻夜ちゃんを守ってる時間を報告。
 陰さんは、勇弥くんの行動について解説。
 そして私は……。



コイン「(正義くん!火炎弾が来るから、斬り払ってほしいんだけど……。)」

 このように近未来予知を飛ばして。

麻夜「第三の破滅……『トロメア』!」
正義「遅いッ!」

 正義くんに対策してもらう。



 1人1人は離れているけど、皆の心は確実に繋がっている。

 互いが互いを信頼しているから。

 これが、「絆」の力。

 あなたには無い、「絆」の力。

 これでも、あなたに勝ち目はあるの?【太陽の暦石】



正義「(でも……『まだ倒せない』のは本当だ。)」



 仮にこのまま倒したとしても、麻夜ちゃんの心が無事は保証できない。
 どのような手段で操っているかは分からないけど、場合によっては麻夜ちゃんの心は戻ってこない。
 「心」を取り戻せなければ、おそらく麻夜ちゃんを救うことはできない。

 なにより……この力は、強すぎる。
 始めに当てた時、【数秒ルール】の壁を貫きかけた。
 どうやらその気になれば、あらゆるものを滅ぼすことができるらしい。だから今は、力を可能な限りセーブして戦っている。

 ……これでは、勝てない。
 精神的に追い詰めてはいるけど、あいつを滅ぼすには「本気」を出す必要がある。
 その力を、完全に制御できる自信はない。
 しかし、持久戦にも限界がある。ボクはどうか分からないけど、あいつよりも奈海達が倒れる方が早いだろう。
 早く終わらせないといけない。



 『麻夜ちゃんの心と体を解放する』……その方法って?



大王「ッ……!少年!」



正義「……あっ……!」



 そうか……!まだ、希望はある。



 彼なら、きっと……。



正義「漢くん……!」






マヤの予言編第X4話「キズナ」―完―



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