「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - わが町のハンバーグ-46e

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だれでも歓迎! 編集
「えぇい、目的地はまだか!」「落ち着いてください!ロボの限界ぎりぎりの速度出してますから!」

「都市伝説能力開発研究所」に向かって超起動兵器店舗『アナザーモアー』は進む。

「結局昆虫少年と連絡も取れんし…とにかくQナンバーの基地へ向かってみるしかないんだ!」
「でも、大丈夫…?」「んあ、何が?」

「Qナンバーがいくら少数と言っても『組織』の黒服。いくらこのロボでも戦力的に厳しくない…?」
「…問題ない」こっちゃんの問いかけに店長がにやりと不敵な笑みを浮かべる。


「こんなこともあろうかと…多人数戦に備えて新たなウエポンを用意してある」

「え!?」「…初耳」
「まぁまだ言ってないし実践では未使用だからな…なんとかなるっしょ♪」「そんな暢気な…」


「まぁ最悪外側からぶっ壊せばいいだろ?」「…中の雪歩は、どうなるの…?」

……

「……」「店長?忘れてたからって黙らないでください」


……


「……右か!」ダッ!

ダダダダダ…

「今度は…後ろっ!」ドッ!

ドガン!

「…一か所にとどまってられんぞ、これ…」
友人が先ほどまでいたところは既にハチの巣とクレーター状態となっている。
『虫の知らせ』による第六感が無ければ避けられなかっただろう。

「しかし…弱点らしい弱点もなし、疲労の色も見せない…どうやって倒しゃいいんだ」


「フフフ…なかなか苦戦してるみたいじゃんか」
不意に、Q-No.0の声が響く。
「うっせーな、すぐにこの部屋抜けてお前のところに行ってやるから、覚悟しとけや」
「フン、その威勢がいつまでもつかね…?どうせ傷一つ付けれてないんだろう?」
スピーカーの向こうで嘲笑っているのが目に見えるような口調で言葉を続ける。
「何も言葉が帰ってこないな…図星か!ハッハッハッハ…そりゃそうだろうなぁ!
 なんたって俺の最強の僕なんだもんなぁ!それよりも前に俺に楯つこうなんて所k」バリーン!

「何だ?」……「少しの間だけでいい、彼女の気を引いてくれ」

急に音声が途絶えた。かと思うと、今度は別の人の声が聞こえる。
だが先ほどの部屋全体に響き渡るような声ではなく、耳元でささやかれてるような声。
「誰だ?誰の声だ?」「とにかく彼女の意識をお前にだけ向けさせるんだ。そしたら後は俺が何とかする」

初めて聞いたはず。だがどこか懐かしさを感じさせるような声。
誰かさえもわからないのに、妙な安心感を覚えてしまう。


「今は…藁にでもすがりたい気分だ。何とかしてくれるっていうなら、やってもらう、ぜっ!」ダッ!

そして友人が再びサボテンに向かって走りかかる。今度は、右腕全体にGをまとって。
「おらぁっ!」

ガッ…!
初撃と同じように、拳は蔦で受け止められる…が。
「同じ手は二度食わん!」
腕に纏ったGが、拳を覆う蔦を覆い返し、それを伝いサボテンのほうへとGが侵食を始める…
「…!」モゾモゾ…
それに反応してか、今まで微動だにしなかったサボテンが動き始めた。


だが、サボテンにはGを振り払おうという動きはない。
ゆっくり、ゆっくりと腕を動かし…そして……

ドムッ!
「かは…っ!」


先ほどまでと打って変わって、目視が難しいほどの速度で拳が振り抜かれ、友人の下腹部をとらえる。
友人の顔が苦痛にゆがみ、友人のダメージに反応するように、Gの動きが止まる。


…が。

「…なんつって♪」
先ほどまでの表情が一転、けろりとした表情でサボテンにニヤリと笑みを浮かべる。

「…?!…!」ドムッ!ドムッ!

何度もサボテンは腹部へと拳を打ち込むが、友人は全く痛がる様子を見せない。
「俺のGの鎧は、何よりも厚いぜ…!」
そうしてる間にも、Gはサボテンの全身を覆い尽くそうと広がる。



ザシュンッ!




不意に、風が走った。


その後には、全体を茶色に染められたサボテンと、それから切り落とされた巨大な花。
そして、それをただ呆然として見る友人。

「…何が、起こったってんだ…?」
突然何かが過ぎ去ったと思ったら、サボテンと花が切り落とされていた。
しかも、何が過ぎ去ったのかさえも全く見えなかった…

「よし、メインの寄生花を落としたから彼女を解放してやってくれ」


まただ。さっきと同じように、誰かにささやかれてるように聞こえる妙な声。
サボテンを見ると、全体がGの下でもぞもぞと動き、サボテンがはがれるように落ちかけていた。

「…お前、そろそろ正体見せてくれてもいいんじゃないか?」
「んー、そうだな。目的は一つ果たしたし、その褒美に見せてあげよう」

ばさり。
返事の後、後ろのほうで布を取り払うような音が聞こえた。


黒服。


ちょうど、この施設の前で見張りをしていた奴らと同じ格好。ということは…
「…『組織』の黒服…なのか」「んー、そうなりはするんだが、厳密にはちょっと違うな」

厳密には?

「正確には『組織の黒服』の姿を借りた全く別の都市伝説、だな」
「ということは…ドッペルゲンガーとかの変身する能力なのか?」「うんにゃ、それとは違う」

「俺がこの存在として生まれてきた時はすでに本来の青狸みたいなのじゃなくてこの姿だったな。
 ま、俺を産み出した契約者が思う『正義の味方』がどこぞの黒服だったんだろうな」
サボテンに包まれていると思われる少女をちらりと見て、言葉を続ける。

「特性上、彼女が植物人間状態でないと俺は存在できないことになってるんだ。
 その植物人間になった状況のおかげかそのせいか、姿も本来とは違うし使命を思い出すのにも時間を要した…
 …まぁ俺の生まれてきた使命は契約者を守る事だからな、この姿のほうが都合はいい。
 実際には、俺が契約者の存在を知った時にはすでにこんな姿になっちまってたけどな…」

その契約者と思われる人からは、サボテンはすでに剥がれ落ち、少女がそこに立っていた。


「なんにせよ、彼女を救ってくれてありがとな」
「いやいや、むしろ助けられたのはこっちのほうだぜ」

「あのままだったら俺はどうやっても彼女に勝てなかっただろうし、この先に進むこともできなかったさ」
いつの間にか部屋を覆っていた蔦は崩れ去り、今は無機質な壁と通路へと続くドアがあるだけだ。


「……まぁ、お互いさまってことにしといて、お前は早くNo.0のところに行け。出来るだけ急いだほうがいい」
「っと、そうだな。本当にありがとさん」
礼を言って、そのまま次へと進むドアへと向かう。

「待ってろやQ-No.0…絶対にお前を倒して、雪歩ちゃんを助け出す…!」



戦いの終わった第三の箱…そこに残るは男が一人と少女が一人。
「…やっと会えたな、契約者」
男が話しかけるが、少女からは返事は帰ってこない。

「あんたがこんな状態じゃないと、俺が存在できないなんてなんだか悲しいな…
 ま、そんなこと言ってちゃ俺の存在自体否定することになっちまうか」
男が笑いかけるが、やはり少女から返事は帰ってこない。

「……これから…今までの分含めずっと、俺が守ってやるからな…とりあえず今は寝かせてやるか」
そういうと男は少女を抱え、ポケットから何かを取り出す。


それは、明らかにポケットには入りきらないピンク色のドア。
そのドアの向こうには、病室のような空間が広がっている。
「もう、誰かに勝手に動かされることもないだろ…?だから、今はゆっくり休めよ」


男がドアを閉めると、

まるで最初から誰もいなかったかのように、第三の箱は静寂に包まれた。



「やっと…やっとたどり着いたぞ、おい」

部屋に入った瞬間、目に入るのは巨大なモニター。それと何本もの観葉植物。
そしてそのモニターの前に、男が一人イスに座ってじっとモニターのほうを向いている。

「いきなり通信機が破壊されたから何事かと思ったけど…結局、ここまで来ちゃったか」
回転いすをクルリ、とこちらへと向けて振り向く。

「お初にお目にかかるね。俺が、ここ『都市伝説能力開発研究所』所長かつQナンバー最高幹部、Q-No.0だ」
「てめぇが…てめぇが、雪歩ちゃんをっ!!」ダッ!
唐突に友人はNo.0に向かって走り、G達によって高速にまで速度をあげたその拳をふるう。
「てめぇは一発、いやお前が死ぬまでぶん殴るっ!」シュンッ!
その拳は、No.0の顔面を捉える。


はずだった。

パシィッ…
「やれやれ…最近の若者は血気盛んだなぁ。でも、少しくらい俺の話につきあってくれても…いいじゃんか?」グググ…
「な…っ!」

速度も角度も申し分なかった。
確実に奴の顔面を捉えるはずだった。
だが、その拳は今、No,0の右手にすっぽりと収まっている。

「ちょいと提案があってね。君にデメリットはないと思うんだけど」「何…?」

「簡潔にいうけど、君が俺の手駒になってくれればいいんだ。そうすればNo.28も能力覚醒の必要が無くなるし、君の力ならきっと俺の目的も達成できる。
 君の元の生活には何ら影響を及ぼさないし、No.28だって君の元へと返してあげるよ」

…つまり、俺が雪歩ちゃんの代わりに…ってことか…?
No.0が友人の拳を受け止めたまま、そんなことを言う。

「どうだい?悪い条件ではないと思うんだけど…」

「……お断りだ」「…ふぅん?」

「ここまでに、何人かの人からお前を止めるように約束されてんだ。だから、そんな話には乗らん。
 それに、雪歩ちゃんだって、きっとこんなことは望んじゃいないだろうしな」

「ふん、とんだバカだな。せっかくNo.28を返すチャンスをやったのに、そのまま投げ返すなんてな」
「バカはどっちだ。他人に頼って『組織』を変えようなんつー考えのほうがよっぽど馬鹿げてると思うがな」
できるだけ、不意の攻撃に対応できるようにゆっくりとNo.0から距離を置く。


が。

「お前なんかに…何が分かる…!駄目なんだよ…変えなきゃ…!人のためには…!」


予想に反していきなり、No.0は叫ぶ。

「お前なんかに、何がわかる!全てが上層部のエゴで出来ている、『組織』の何がわかるってんだ!
 俺はエゴイストだらけの社会がたまらなく嫌いだった!だから、そんな世界から俺自身を隔絶するために、俺は都市伝説になった!
 なのに…なのに『組織』は!自分勝手な野郎しかいないエゴイストの固まりに俺を閉じ込めた!

 だから…だから!俺はエゴイズムを、今の『組織』をぶち壊す!
 そして俺が、アルトルイズムな『組織』…他人のためになる『組織』をつくるんだ!」

泣きながら、思いの丈をNo.0はぶちまける。それを、哀れむような、怒るような顔で友人は黙って聞く。


しばらくの沈黙…

「…下らねぇ」


先に口を開けたのは、友人だった。

「てめぇが『組織』に何の恨みがあるかなんて知らねぇけど…てめぇだって1人のエゴイストじゃねぇか…
 人のためとか言って、結局は自分のために自分勝手やってるだけじゃねぇか。自分の願望のために好き勝手やってるだけじゃねぇか。
 みんなエゴイストなんだよ…俺だって!ただ雪歩ちゃんを助けるっていう俺の願望のためだけに動いてるだけなんだよ!
 俺だってお前だって、自分の願望のために動く、自分勝手なエゴイストなんだよ!」

「ぐっ…!」


一瞬、友人の言葉にたじろいだNo.0だが、すぐさま怒りの言葉を返す。
「お、お前みたいな…お前みたいな何も知らない若い野郎に、説教なんざされたかない!
 もういいさ!お前みたいなバカを引き込もうとした俺が間違いだった!今すぐにでもお前を殺して、計画を実行n」ドゴーン!
 いきなり、部屋の壁が爆発した。部屋内が土煙に包まれる。
「な、なにをしやがった!」「し、知らん!俺はなにも…ぐはっ!?」




「……な、何故だ…皆、何故俺を裏切る…!No.10も、No.1も…そして、No.28…お前まで…」

土煙が晴れたとき、そこには3人がいた。

一人は友人。もう一人は膝をつき苦しんだ様子のNo.0。それと…


「……雪歩ちゃん?」

良く見知った…だが、どこか雰囲気の違う、雪歩が立っていた…
                …続く



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