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連載 - 我が願いに踊れ贄共・翡翠色の目の司祭-10

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 ひらり、ひらり
 漆黒の蝶が飛ぶ
 雪降る白い風景の中、その闇の底のような黒はよく目立つ
 ざくざくと雪を踏みしめながら駆けていく

「……どうしたって言うんだ」

 蝶を追いかけながら、呟くカイン
 今まで、自分以外の「教会」関係者からは、極力姿を隠していたはずだと言うのに
 なぜ、あぁも堂々と
 はっはっ、と吐き出す息は、寒さのせいか白い

 ひらひら、ひらひらと
 やがて、蝶はもう使われなくなったマンションのロビーへと入り込んでいった
 カインもそれを追いかけ、中に入り込む
 ……人間の気配はない

「カラミティ?」

 呼びかけてみる
 すると、一頭だったはずの漆黒の蝶が、一瞬で群れへと変わった
 そして、いつも通り、その群れの中からカラミティが姿を現す

「…カラミティ、一体、どうしたんだ。カイザー司祭は苦手だから、あの人の前には出たくないと言っていたのはお前だ………」

 ろ、と言おうとしたところで
 がば!!…と、カラミティに抱きつかれた
 その勢いで、そのまま壁に押し付けられ、押し倒されるような状態になる

「なっ………な、何をする!?」

 とっさに、カラミティを殴り飛ばそうと拳を握りしめるカイン
 ……が、その動作は、途中で止まった

「…カラミティ?」

 様子が……おかしい
 カインを抱きしめてきている体が、震えている
 カインの肩に顔を押し付け、小さく、小さく、震えて

「…………………い、だ」

 ぽつり、と
 小さく、呟きが、漏れ出した

「……ッセシリア、なんて………嫌いだ。大嫌いだ……!」

 泣いているような声
 ……いや
 はっきりと、泣いている声だ

 事情を察して、カインは握りしめた拳を解いた
 そっと、カラミティの背中に腕を回すと、ぽんぽん、とあやすように、背中をなでる

「…また、そのセシリアという女性と、喧嘩してきたのか?」
「喧嘩……する、つもりなんて、なかった。手伝いたかっただけなのに………信じて、くれなかった」

 えぐえぐと、泣きながら答えてくるカラミティ
 ……まるで、小さな子供のようだ

 姿こそ大人だが、カラミティの精神面は、幼い面が強い
 カインはそういった面もすべて理解した上で、カラミティの友人を、もう10年近くも続けていた
 すでに、その扱い方は慣れたものだ

「信じてもらえなかったのか?」
「うー………信じて、くれなかった。いつもいつも……セシリアは、俺の言う事を信じてくれない……」

 あの時からずっと、と
 小さく、付け足した声が聞こえた

 ぽんぽん、と
 カインは優しく、しゃっくりあげる背中をなで続ける

「そうか……でも、カラミティ。それは、お前の日ごろの行いにも、原因があるんだからな」
「……?俺様、何か、悪いことをしたか?」
「…昨年のクリスマスに、あんな派手な魔法を使ったのは誰だ。彼女にも迷惑をかけただろう」
「喜んでた連中、一杯いたぞ?」

 ……あぁ、もう、こいつは
 カインは、困ったように、小さく苦笑する

 ………カラミティには、「罪悪感」というものが存在しない
 そして、何が「悪いこと」なのか、よくわかっていない面もある
 他の者との、感覚のズレ
 ゆえに、誤解を招いてしまう事もしばしばなのだ

「確かに、喜んでいた者もいたかもしれないが。あそこまでおおっぴらに力を使うのは、控えたほうがいい。俺も、普段から言ってるだろう?」
「……うー……」
「それに…お前、そのセシリアという女性を、痛めつけたことも一度や二度じゃないだろう」

 カラミティの周囲の悪魔達から、カインは何度か聞いたことがあった
 カラミティとセシリアという二人の魔法使いの、魔法合戦を
 たいていは、引き分けかカラミティの勝利で終わるというその勝負
 その際、カラミティは常に容赦なく、セシリアに魔法を放っていたという

「殺そうとなんて、してない。ちゃんと手加減はしてるぞ」
「お前な…」
「セシリアが遊びを仕掛けてきたから、俺様はそれに答えてただけで。向こうがこっちに会いに来てくれたから、遊びたくて。俺様も、同じように遊ぼうと思っただけなのに」

 ……あぁ
 カラミティにとっては、あの魔法合戦すら「遊び」でしかない
 やはり、セシリアと決定的に、考え方がズレてしまっているのだ

 どうやれば、それを修正できるだろうか
 カインとしては、悩みの一つだ

「……カイン」
「うん?」
「カインは、俺様の事、信じてくれるか?…セシリアみたく、疑ってくるんじゃなくて…………姉さんみたく、信じてくれるか?」

 じっと
 カラミティの金色の瞳が、カインを見つめてくる
 不安そうな、不安そうな
 捨てられた、子犬のようなまなざし

 ……その、まなざしに

「…信じるさ。信じるに決まっているだろう」

 躊躇する事なく、カインは手を差し伸べる
 それが、当たり前の事であるかのように

「お前は、俺の親友だ。意味もなく疑ったりしないさ」
「…俺様は、カインには嘘をつかない、絶対に。カラミティ・ルーンの名前にかけて、嘘なんてつかない。だから、疑う必要なんてないぞ」
「………そうだな」

 まだ、完全には泣き止んでいないカラミティ
 ぽんぽん、ぽんぽん、と背中をなでてやりながら


「-------」


 カラミティの耳元で、何事か囁く
 ぴくん、と、小さくカラミティの体が、はねて………落ち着きを、取り戻しだす

「大丈夫だ。世界中のすべてがお前を信じなくとも、俺がお前を信じる。世界中のすべてがお前を許さなくとも、俺はお前を許す………だから、もう泣くな。お前は笑っているのが、一番似合う」
「………カイン」

 ぱふん、と
 また、カインの肩に顔を押し付けたカラミティ
 もう、泣いてはいない
 だが、まだ精神が不安定で、離れたくないのだろう
 そのまま、動こうとしない

 体の大きな子供に、カインは小さく苦笑しながら
 あやすように背中をなで続け、好きなようにさせてやったのだった




to be … ?




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