「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-58x

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匿名ユーザー

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「いやはや、派手にやったよねぇ、彼も。流石と言うべきか」

 等と口にしながら、「先生」はてきぱきと怪我人逹の手当てを終えていた
 次いで、行っているのは何やら服の作成

 ……くしっ、とくしゃみの音が治癒室に響き渡った
 ザンとのスペシャルマッチは挑戦者側の勝利となった訳だが、ザンが返した「クイーン・アンズ・リベンジ」の大砲の弾が降り注いだ「良栄丸」と「クイーン・アンズ・リベンジ」は見事に撃沈した
 そんな中でも、重傷者が出なかったのは幸いだ
 あの場に居た誰頭が、とっさに防御でもしたのかもしれない
 一番の重傷者は大砲の弾の直撃を受けたらしいサキュバスだが、契約者ではなく都市伝説(それも、結構な実力者)であるおかげか、意識が飛んだ状態であったものの今はすぷー、と心地よさ気な寝息を立てている
 どちらにせよ、船が撃沈した以上、そこに乗っていた者逹は水中に落ちたのだ
 スコール+クラーケン召喚の際に付属するらしい海水に落ちてしまえば、ずぶ濡れにならない方がおかしい
 よって、スペシャルマッチ参加者のほとんどがずぶ濡れ状態になり、大きなバスタオルに包まっている状態だ
 着替えはあまり、どころかほぼ用意されていなかった為、また「先生」が作っているのである
 …………なお、「具体的にきちんとリクエストしておかなければ、どんなデザインの服が出されるかわからない」と言う事実は、灰人が一気に運ばれてきた怪我人の治療に専念した為、伝え忘れたままである
 今現在、白衣が作ってる服は思いっきりフリルたっぷりの物なのだが、はたして誰用なのだろうか

 もっとも、大半がバスタオルに包まっている中、そうではない状態の者もいる
 一人は、ゴルディアン・ノット
 その出で立ちのせいもあり、ずぶ濡れ度はかなり高いのだが「大丈夫ダ」の一点張りだ
 「先生」は「後でちゃんと診察させてもらうよ」と言っていたのだが、それに関しても「大丈夫」と告げている
 大砲の弾を受けこそしたが、ダメージを受けた際の形態が形態だった為か、さほど大きなダメージとならなかったのだ
 一応、水分は絞ってきた……つもりであるし、急いで着替える必要もないはず、と当人は判断しているのかもしれない
 もう一人、ずぶ濡れの服を脱ごうともせず、バスタオルにも包まっていない人物
 それは、スペシャルマッチにてザンに一撃を当てる事に成功した忍び装束の人物だった
 目元がかろうじて見えるだけのその忍び衣装は、スコールに晒された為にぐっしょりと濡れている
 ゴルディアン・ノット同様、一応絞って水分は落としたようであるが、忍び装束越しでも小柄で細身とわかる体付きの為、心配そうに見ている者もいる(主に、まだ治療室から出ていなかった憐)

「…お前ハ、ソロソロソの装束を脱いデ、着替えた方ガ良いのデハないか?」

 ゴルディアン・ノットがそう声をかけたが、その忍びは声を発する事もなく、ふるふる、と首を左右にふるだけだ
 ぽた、ぽた、と水滴が床に落ちる

 この忍び、治療室に来てからと言うもの、一言も言葉を発していない
 「先生」が治療を行う為に診察しようとした際も、手で軽く制してふるふる、と首を左右にふってみせた
 診察なしでの治療は困難……と思われたが、憐が治療室にばらまいてしまった治癒の羽がまだあった為、それで治療をしたから怪我はもう問題ないだろう
 ただ、そのずぶ濡れ状態では風邪を引きかねない
 そして、ずっと口を聞く様子がない
 声を出せない、と言うよりも、むしろ……

「そういえば、試合中も身振り手振りだけで話していなかったような………声がでない?」

 ずぶ濡れの髪をタオルで拭きながら深志が問うたが、ふるふる、とまた首を左右に振ってきた
 「喋れない」のではなく「喋らない」。そういうことなのだろう
 顔は隠す。体型も、細身とはわかるが忍び装束ゆえ細部はわからない。そして声も出さない、となると

「まぁ、大方「レジスタンス」所属だろ。それなら、正体は隠すわな」

 黒髭がそう口にした瞬間
 ぴくり、その忍びの身体が小さくはねた
 黒髭の言葉に、バスタオルに包まっていた黒が首をかしげる

「どういうことだ?」
「あのな、マスター。「レジスタンス」は元々、少数精鋭でのステルスや潜入捜査が得意なんだよ。「MI6」には流石に負けるが、スパイの数もかなりいる」
「正体がバレたらまずい、と」

 なるほど、と真降は納得した様子だ
 中には堂々と「レジスタンス」所属である事実を公言している者もいるが(灰人の母親なんかがその例だ)、「レジスタンス」所属の大半は、おのれが「レジスタンス」所属である事を公言することはないという
 この忍びも、そうした「レジスタンス」の一員であるならば、正体を晒すような真似はしない、そういう事なのだろう

 そうではない、と言う可能性は、この時、治療室に入ってきた男によってあっさりと否定された

「そういう事なんだよ。まだその子は自分の正体バラせるだけの子じゃねーんだわ」

 ひょこり、と治療室に顔を覗かせた大柄な男の姿に、「げ」と黒髭が嫌そうな顔をした
 オールバックにして逆立てた銀髪にサングラス、ライダースーツという出で立ちの、どうやらヨーロッパ方面出身らしい外見の男だ

「おや、「ライダー」殿。会場に来ていたのか」
「おーぅ。お仕事あるんでねー。さて、「薔薇十字団」の「先生」よ、うちの、回収してっていいな?」

 「ライダー」と呼ばれた男は、そう「先生」に告げた
 …黒髭が、先程までは「先生」の視線から黒を守るようにしていたのが、「ライダー」相手からも守るような位置へと移動した事に、気づいた者はいただろうか?


 すくり、と忍びが立ち上がった
 とととっ、と「ライダー」と呼ばれた男性に近づいていき………そっ、とライダーの背後に隠れた
 まるで、人見知りの子供のような行動だ
 単に、「正体が見抜かれる可能性」を減らそうとしただけなのかもしれないが

(……こりゃ、この中に顔見知り、もしくは、少なくともあの忍者が知ってる奴がいる、って事か)

 そのように黒髭は考えた
 ……そう言えば、自分の契約者の方をなるべく見ないようにしている

(マスターの学校関係者か……もしくは近所に住んでいるか。はたまた契約者の親の会社関連か………どっちにしろ、あまり関わり合いたくはねぇな)

 「レジスタンス」にはあまり関わり合いたくない
 それが「海賊 黒髭」としての考えである
 契約者である黒が関わると言うのならわりと全力で止めるだが、今後どうなる事やら

(「レジスタンス」とは何度かやりあってるし、関わり合いたくねぇ……味方にできりゃ心強いだろうが、あそこは支部っつか、「どこに対するレジスタンス」かによって違うしよ)

 ようは、色々と面倒だから嫌だ、と言う理由なのだが
 ……後で、契約者に、もうちょっときっちり「レジスタンス」について説明しよう
 この時、黒髭はそう強く、心に決めた


「一応、服越しとは言え治療はした。ただ、何かあったら、すぐに連絡………こっちに、その子の正体が知られたくなかったら、そちらの治療役に頼んでちゃんと診てもらうように」
「おーぅ。一応、確認はしとくわ。傷残ったら可哀想だし」

 手元で何やら作業しながらの「先生」の言葉に、ライダーは軽い調子でそう返した
 見た目からして日本人ではないようなのだが、日本語ペラペラだ。それを言うなら、「先生」も明らかに日本人ではないのだが

「あんたは、スペシャルマッチに参加しなかったのか」
「いやぁ、本国の上司に参加していいかどうか確認したら「僕は面倒かつつまらない仕事中なのに、そんな面白そうな事参加するなんてズルい」って却下された」

 栄の言葉に、ライダーは肩をすくめながらそう答えている
 どうやら、上司は日本には来ていないらしい
 参加したかったんだがなぁ、とライダーは残念そうだ……どこまでが本心かは不明だが

「じゃ、そういう事で。この子の着替えはこっちがなんとかするけど、他のスペシャルマッチ参加者逹は風邪引くなよ」

 そう言うと、ライダーはひらひらと手を振りながら、治療室を後にした
 忍びはその後をついていき………ぺこり、一礼してから、治療室を出た
 不意打ちとはいえ、ザンに一撃を与えたあの忍びは、どこの組織にも所属していなかったのであればスカウトがあちこちからきた可能性があるが、「レジスタンス」にすでに所属していると判明したならば、そういったスカウトも来ないのだろう
 ライダーがわざわざ忍びを迎えに来たのは、そう言ったスカウトの類が来ないように、「レジスタンス」所属の者であると知らしめるために来たのかもしれない

「……ある意味、過保護だねぇ」
「?何が??」

 ライダー達を見送りながら、ぽつり、「先生」が口にした言葉が耳に入ったのか、ひかりは首を傾げた
 「なんでもないよ」と「先生」は笑いながら、作業を続けている
 ひかりはもう一度首を傾げて……が、特に気にする事でもないと判断したのか、思考を切り替える
 彼女が考えることは、一つ

「せっかく、おっきなエビフライ作ったのになぁ……」

 そう、これである
 あの巨大なエビ型クラーケンをせっかくエビフライにしたのに、食べることが出来なかった
 彼女は、それがとっても残念なのだ

「せめて、ひとくち食べたかったな…」

 と、そう口にすると

「ふむ、しかしお嬢さん。あのスコールの中にさらされていたならば、あのエビフライ、水分でぶよぶよになってしまって味が落ちていたのでは?」

 ……………
 「先生」の言葉にっは!?となり、ガビビビビン、とショックを受けるひかり
 そう、誠に残念ながら、「先生」の言う通りだろう
 かなりの水分に晒されたであろうエビフライは、揚げたてさくさくの美味しい状態ではなかったのだ
 美味しく食べる事など、あの試合会場にスコールが降り注いでいた時点で無理だったのだ
 ガーンガーンガーン、とショックで固まった後、若干、涙目でぷるぷるしだしたひかり
 と、そこに「先生」が救いの手を差し伸べる

「さて、お嬢さん。可愛らしい服がずぶ濡れになってしまっているからね。はい、乾くまでこちらを着ているといいよ」

 ひらりっ、と
 「先生」が、先程までずっと作っていたそれを広げてみせると、ひかりが「わぁ」と嬉しそうな声を上げた
 それは、可愛らしい、黒いゴスロリのワンピースだったのだ
 首元のリボンやスカートを見るに少々デザインは古めかしいが、ひかりにぴったりなサイズである

「おじさん、ありがとう!」
「どういたしまして。さて、次作るか」
「だから、せめてリクエスト聞いてから作れ」

 っご、と灰人に脳天チョップツッコミをしたが、「先生」はスルーしてさっさと次の服を作り上げている
 どうやら、また女性物を作ろうとしているらしい。レディーファーストだとでも言うのだろうか
 なんとなく楽しげに、「先生」はその作業を続けていた


(……際立っておかしなところはない、よね?)

 「先生」の様子を何気なく伺いながら、三尾は少し不思議に思っていた
 この「先生」に関して、実は「組織」で少し、話を聞いたことがあるのだ
 三尾が担当する仕事絡みではない為、又聞きだったり噂が大半なのだが、共通している事は一つ
 「あの「先生」は厄介だ」と言う事
 何故、よりにもよって学校町に来たんだ、と、学校町に来た当初、天地が頭を抱えていた様子も見たことあるような。ここで「先生」を見ているうちに、それを思い出した
 ……何故、そのような評価なのか?
 治療の手伝いをしつつ何気なく観察していると、「海賊 黒髭」は自分と自身の契約者に関しては、「先生」に治療されないように、と言うより、接近すらされないようにしている事に気づいた
 契約者の方はともかく、黒髭の方はかなり「先生」を警戒している
 その警戒っぷりは、「先生」が学校町に定住し始めた頃の天地にどこか似て見えて

(彼に聞けば、わかるのかな)

 と、聞く聞かないはともかくとして、三尾はそう判断したのだった


to be … ?



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