5月17日(2日目)
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早朝の朝食を終えてSさんが「少しお散歩してくる
ね」と言った
同行としてあたしを指名する
朝から歩くのは正直面倒だったが一緒に散歩す
ることにした
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アパートを離れてSさんは「Rちゃんの記憶のこと
で話したいことが」と口を開いた
近くの公園に入ってベンチに腰をかけた
Sさんは衝撃な事実を打ち明けた
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「Rちゃんの思い出した記憶は正しいものじゃな
いです」
姉さんが思い出した記憶は真実とは異なっている
というのがSさんの言葉だった
Sさんが覚えている記憶と、姉さんの思い出した
記憶は異なるというものだ
何故それをメールのやりとりのときに言わなかった
のかを聞いた
Sさんは「先に言ったらLちゃん、Rちゃんの記憶
は偽りって決め付けちゃうと思ったから」と返し
てきた
あたしはSさんに記憶が正しくないと言われた時点
で姉さんの記憶に疑いを持っていたので、なにも
返す言葉がなかった
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あたしの考えでは姉さんの記憶は被害妄想から
生まれた作り物じゃないかとう疑い生じたために
それをSさんに話した
Sさんは「そう思うと感じたから言わなかったの。
Rちゃんの記憶はほぼ真実だよ」と返してきた
それじゃSさんが言った異なるとはどういう意味
なのかを問う
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Sさんの話しでは確かに姉さんから相談を受けた
らしい
姉さんの記憶ではSさんは数名の仲間を連れて
となっているが、Sさんは二人の親友しか連れて
いなかったそうだ
また、姉さんの記憶では元父親と友人7名とな
っているがそれも違っていて、ワゴン車一台で
元父親とその友人一名しかいなかったという
Sさんは「Rちゃんの記憶は混合しちゃってる
から、まだ思い出せない記憶と重なってるんだね」
と話していた
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ここからはSさんが語った真実の話し
Sさんと親友二名は張り込んで、姉さんを乗せた
ワゴン車に突撃したそうだ
元父親の友人には逃げられたらしい
親友ニ人かかりで元父親を抑え込もうとしたそう
だが二人の親友はそれぞれ一撃を受けて戦意喪
失状態になったという
姉さんを連れて場を離れようとしていたSさんは
二人が戦意喪失になったのを見て驚いたらしい
姉さんに「一人で逃げて」といって元父親を抑え
ようとしたのだそうだ
元父親と1対1での喧嘩になったらしいが圧倒的
に不利だったらしく奥歯二本が抜けて肋骨1本の
負傷をおったらしい
痛みで立てなくなったところ元父親がSさんに馬
乗り状態になったらしく、護身用として持ってた
スタンガンで一撃を与えたというもの
さらに親友の一人が携帯電話で警察に通報して
るふりをしたため元父親は逃げたのだそうだ
Sさんいわく「相手は中年のおじさんだってなめ
てたのが悪かったねぇ」と話していた
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その後、姉さんは突然高校へ来なくなったらしい
Sさんは連絡先とかも分からなかったために教師
に姉さんのことを尋ねたそうだ
その時に言われたのが「自主退学」だったらしい
Sさんは姉さんのクラスの生徒から連絡網を借り
て電話番号を調べた後、すぐに姉さんの自宅へ
電話をかけたそうだが母親や兄らしき男性に
取り次いでもらえなかったそうだ
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「それからは他のトラブルで対処してるうちに
Rちゃんのことを忘れてたのが本当のこと」
と話していた
ほぼ偶然らしいがSさんの親友の一人がこの報告
を読んでいて、頭文字の「R」と家庭環境を結びつ
けて姉さんじゃないかとSさんに連絡を入れたそう
だ
Sさんはすぐにネットカフェからここの報告を確認
して、悪戯に掲載していたあたしのアドレスを見つけ
てメールしたという
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あたしは「姉さんの記憶に出てる複数人の男って
どういう意味?」と聞いてみた
Sさんは「父親の他のことで相談を受けてたよ。
兄さんの友達に襲われるって」という話しを聞かされ
た
姉さんはSさんに相談していたのは元父親による
性的虐待と同時に兄の友人等による暴行のこと
を打ち明けていたそうだ
初耳であるあたしが「どういうこと?」と聞くとSさん
は「お金で売られてたんじゃないかな?」と答えた
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姉さんの兄で該当するのは長男さん、次男さん、
三男のいずれの3人になる
この中で一番怪しいのは三男だ
あたしは「三男さんか」とボヤいた
対してSさんは鼻で笑って冷たい視線を向けてき
た
もっと考えろ、と言わないばかりの空気
「違う?」と問うとSさんは「私もどの兄さんという
話しは聞いてません。でも、Rちゃんの言語を
考えると憶測はつくね」と返してきた
ここで分かった人はいるだろうか?
あたしはまったく分からなかった
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Sさんの解釈ではこうなる
姉さんは……
長男さんを呼ぶ時=兄さん
次男さんを呼ぶ時=次男兄さん
三男さんを呼ぶ時=三男兄さん
姉さんがSさんに相談したときの言葉は……
兄さんの友達に襲われる
Sさんの憶測では「長男さん」となる
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あたしは即座にそれを否定した
そんなことがあるはずがない
だがSさんは「それは長男さんがいい人だという
Lちゃんの中の先入観が否定してるんじゃないか
な?」と指摘してきた
姉さんが好きになった人であって、姉さんの中で
は一番優しい人であって……
Sさんはこう言った
「長男さんの失踪の原因は、Rちゃんが記憶を
戻し始めたことの恐怖心という考え方も出来る
よね」
「今まで長男さんがRちゃんに優しくしていたの
は報告上、「母親に言われたから」って書いて
あったけど、私はそれだけじゃないと思ってる。
長男さんは自分が犯した罪をRちゃんの記憶と
共に封じて道化してるようにしか見えないね」
Sさんは長男さんを確実に疑っていた
失踪している以上、確認のしようもないと言うと
Sさんは「今夜、暴くから」とニッコリと微笑んだ
この人は有言実行のタイプの人だと気づかされ
ることになる
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一気に飛んで昼過ぎ
次男さんのいないアパートで姉さんとSさんと
あたしは無駄な談話をしていた
突然、姉さんが泣き出してSさんに色々な弱音
を吐いていた
「家族になって幸せになりたいだけなのに」とか
「兄さん達がまだ怖いって思っちゃう」とか
あたしにさえ言わなかった弱音をSさんには話す
Sさんは「よく頑張ってきました。大丈夫だからね」
と優しく励ましてた
溜め込んでいた不安とかをすべて吐け出せたの
だろう姉さんは倒れるように眠ってしまった
Sさんいわく「相当無理してるみたいだね。この
ままだとRちゃん、また入院になっちゃう」
「早期決着つけなきゃ」と言っていた
姉さんは翌朝まで起きることなく眠っていた
ほんとうに精神的に溜め込みすぎていたのだ
と思い知らされた
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姉さんに代わってSさんが家事全般を担当してい
たのだが物凄い器用だった
夕食もSさんが冷蔵庫の中から消費期限のきれ
そうなものを選びながら、足りない材料を買い出し
にいって作ってくれたのだが、姉さんに劣らない腕
を持っていた
「一流シェフの見習い研修生だもん」とか嘘言って
たけど……通用しそうなほど美味しかった
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夕食後、リビングでSさんと次男さんとあたしの三
人での会話になった
開口したのはSさんだ
「幾つか質問したいんだけど、答えたくなかったら
スルーしていいから、時間もらえませんか?」と
優しく問う
一目惚れしてる次男さんにとってSさんから声を
掛けられたのが実はこの日が初めてだ
かなり嬉しそうだった
が、これは地獄絵図の始まりでしかない
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ニコニコした優しい笑顔から無表情になったSさ
んは姉さん以上に冷たいものを持っている
最初の質問は「次男さんはRちゃんに手を出した
回数は何回くらいかな?」というものだ
性的の意味での手出しを意味している
次男さんは回答をせず黙っていた
スルーしたいのだろう
だがSさんは視線を次男さんに向けたまま黙殺
を続けていたために耐えれなくなった次男さんは
「ジジィに脅されて4回」と答えた
答えたくなかったらスルーと言いながら答えさせ
る技を持ってるSさんって怖すぎ……
Sさんを恋人にしたら「かわいい彼女」で自慢は
出来るが浮気をしたら最期かもしれない……
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Sさんの視線の動きは尋問の警察官やカウンセ
ラーのような動きをしていた
嘘を見抜くのに身体全体の動きを監察する
少しでも動揺が見えたらそこを突くというやつ
この人は手馴れていた
次の質問は「自分の妹に手を出すことに抵抗
はなかったの?」というものだった
逃れられないと分かっているのだろう次男さん
は「1回2回は抵抗はあったと思う。3回目あたり
からは進んでってところがあった」と回答した
いやなことを聞いてしまった
Sさんは感情を表に出さずに視線だけで次男さ
んを探っていたが、あたしは確実に表情に不快
を出していただろう
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幾つかのSさんの詰問は繰り返された
その間は一切の回答スルーを許されずに次男さ
んは答えにくいであろうことも答えている
Sさんは「Rちゃんをお金で売ってた兄が存在する
んだけど、それは長男さん?」と問いた
次男さんは「なんでそんなことを?」と聞き返す
対してSさんは「質問してるのは私です」と視線で
威嚇
視線だけでこれまで操作するって……
次男さんは当分黙ったままだったが諦めたように
「確かに兄貴はそういうことやってた」と答えた
あたしは思わず「なんで止めなかった!」と怒鳴って
しまったのだが、Sさんが私の方を向いてニッコリ
微笑んだ
あたしは黙って見守ることにした
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次男さんは「口論でそのことでももめたよ。兄貴
はチビが記憶を戻すのが怖いだけじゃねぇのか
って」ということを話した
Sさんは「ですよねー」と笑顔
だがすぐに無表情に戻って「記憶を戻したら
その時にさえ助けてくれなかった次男さんをも
信用出来なくなると思いますけどね」と言っていた
きつい言葉だが正しいことだ……
そしてそれが一番次男さんにとってダブーである
ことを知っていてSさんは言っているのも確かだ
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Sさんは床から腰を上げると「妹に手を出しておい
て、今更兄さんを偽るのは楽しいですか?」
「Rちゃんが思い出した時、君はどう謝罪するの?
謝罪して癒える傷じゃないと思うけどねー」
など次男さんを追い詰める言葉を吐く
あたしが「Sさん、言い過ぎだって!」と慌てて止め
た
Sさんは「物足りないくらいだけど」と返してきた
物凄い冷酷な一面だ
Sさんは精神的に次男さんを追い込むつもりだった
このままだとヤバイと思い「姉さんはそんなことを
望む人じゃないよ。親友なら分かるでしょうが!」
と怒鳴った
Sさんは無表情から少し呆けた表情で「あ、そう
だよねぇー」と一言
その後、「やり直しが効かない人生はないと思う
から、頑張ってRちゃんを守ってあげてね」と笑顔
で言っていた
なんだかんだでもSさんは優しいのかもしれない
ただ歯止めがきかないだけで……
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一時間も過ぎた頃には殺伐した空気は消えてい
て次男さんも笑うような空気になっていた
すべてSさん影響だ
あれだけのことが嘘のように嵐が過ぎ去った後
のような明るさ
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次男さんが寝た後のSさんとの会話
録音してあるのでその会話を記載
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L
「Sさんってどういう男性が好み?」
Sさん
「会社で上司と部下にいじめられて、お茶組みの
OLに不潔~とか陰口叩かれてて、家に帰ったら
妻と娘に煙たがられて、居酒屋で泣きながらお酒
飲んでるような中年男性が好きです」
L
「……は?」
Sさん
「通勤電車に乗ろうとして、目の前で扉が閉め
られて電車を見送る中年サラリーマンとかは
モロ好みですよ。
あの瞬間の「え、ちょ…俺遅刻しちゃうよ」的
な表情がイカしますね」
L
「……へぇ」
つかみどころのないのは性格だけではなく
好みのタイプまでも、か……
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それでも諦めないあたし
L
「若い男性とかだとどういうのが好み?」
Sさん
「秋葉原でフィギャを両手に持って、パンツ見え
そうだなぁ……いや、でもこっちはブルマー
だし……うーん、でも今月欲しいソフトがあるから
二体は買えない……困ったなぁ…よし、アイフル!
ってやってそうなオタクが好みです」
L
「は?」
Sさん
「ご利用は計画的に」
L
「Sさんは男性選ぶ基準を計画的にしたほうが
いいと思うんだけど」
Sさん
「そうだよねぇー。私が好きになる男ってほぼ
妻子がいるんだよー。不倫関係はいやだしね。
計画的に離婚させる方法ってないかな?」
こえぇーっ!!!!!
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Sさんの男性の好みって全然わからない
ほんと謎多すぎる