2007年ワークショップ記録3

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pearlharborworkshop

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ワークショップ実践報告

執筆:神戸市立六甲アイランド高校 高野剛彦先生

※当報告書はこちらからもダウンロードできます。(MS-Word形式)

単元名(活動名)

戦争の記録と記憶(米国高校生との交流を通じて)

対 象:

神戸市立六甲アイランド高等学校(全日制単位制)社会科学系2年次生
学校設定科目「社会科学入門」履修生徒(男子21名,女子6名)

教科領域との関連性:

日本史B
世界史B
政治経済


実施時期:

2007年11月6日(火)〜12月18日(火)

総時数:

10時間(全5回,フィールドワーク1回を含む)

単元(活動)目標:

本単元では、戦争の記録が人々の中でどのように記憶されているか、記録を記憶としてとどめるためにどのような人々が、どのような活動を行ってきたかを解き明かすことで、あらためて戦争と平和について考えていこうとするものである。日米双方の高校生で同時にプロジェクトを進行し、相互に経過や意見を交換させることで、主観的・一面的になりがちな戦争記憶を相対化・客観視させることをねらいとする。

キーワード

  • 真珠湾攻撃
  • 神戸空襲
  • 神戸の空襲を記録する会
  • ICT学習
  • 記念碑
  • 国際理解教育

単元について

2007年7月、米国ハワイ州のハワイ大学東西センター(East West Center)で行われた「パールハーバー 歴史と記憶」と題するワークショップに参加させていただく機会を得た。1週間のプログラムの中で、ハワイ・真珠湾の歴史について米国人・ハワイ人・日系人・日本人などさまざまな立場から掘り起こし、戦争の記録と記憶について高校生たちにどのように伝えていけばよいか、日米40人ほどの高校教師が討論し、学習プログラムを作成するというものであった。ワークショップ終了後、プログラムで知り合ったKimberlee Johnsen氏と交流授業を実施することで合意し、内容についてメールで詰めながら授業を実施していった。

展開計画・展開記録

第1次 (11月6日) 「火垂るの墓」と神戸大空襲
  1. 5限:映画「火垂るの墓」鑑賞(映画は編集済み)
  2. 6限:講演「神戸空襲について」(神戸空襲を記録する会 中田代表)
  3. 自己紹介メール作成(宿題として)

留意点:自己紹介は英語で記入。戦争観・平和観に関するメールは日本語で記入し,翻訳ソフトを使用

第2次(11月13日) フィールドワーク
  1. 生田神社(空襲の痕が残るクスノキ)
  2. 東遊園地(旧捕虜収容所)
  3. 旧居留地(建物に残る焼夷弾・機銃掃射の痕)
  4. 戦没した船と海員の資料館(戦時中に徴用され沈没した船についての資料,復元模型,乗員名簿)

留意点:「神戸空襲を記録する会」の中田代表の案内・コーディネートによる

第3次 (11月20日) プレゼンテーション作成
  1. フィールドワークで撮影した写真や資料,絵画,素材等を用いて神戸空襲の記憶と痕跡を英文で紹介するプレゼンテーションを作成
  2. 各班のテーマは「神戸空襲の概要」「生田神社」「捕虜収容所」「旧居留地の弾痕」「戦没した船と会員の資料館」「真珠湾攻撃と神戸空襲」「戦争を語り伝える意義」「テロとの戦い」

留意点:3人1組の9班に分け,(1)プレゼンテーション資料(パワーポイント)、(2)読み上げ原稿を作成させる

第4次 (12月4日) プレゼンテーション作成2
  1. 完成したプレゼンテーションのアテレコを行い,ビデオ撮影
  2. 交流先の米高校生からの自己紹介メールを翻訳,返事を書く

留意点:翻訳ソフトを用いて日英翻訳

第5次 (12月18日) まとめ
  1. ニュージーランドからの交換留学生に完成したプレゼン作品を見てもらう
  2. 交換留学生の戦争観・平和観を聞く
  3. 交流先の米高校生の戦争観・平和観のメールを翻訳,それに対する意見・コメントを英文で書く

評価:

  • 神戸空襲の概略,戦争中の捕虜取り扱いに関する基本事項を理解しているか
  • 戦争の原因を多角的に考察し,被害・加害の実相について客観的・公平に判断することができたか
  • 生徒のメールに見られる戦争観や意見が学習を通じてどうのように変化していったか
  • 戦争を語り継ぐ意義を理解し,自らも積極的に語り継いでいく意欲をもてたか
  • 現在おこっている戦争について,学習成果を活かし,予防・解決への方策を見出そうとしているか

苦労した点

  • 英文メールでの打ち合わせ
  • 授業の進度や学期(ターム)の相違によるスケジュール調整
  • 残念ながら,途中から米側の返事が来なくなり,途中で打ち切りとなった

改善するとしたら

学期や授業進度の違いについては,事前によく確認・相談しておくこと。
メールによる交流は,生徒一人ひとりにアドレスを配布できない現状(セキュリティ上の問題から)では,教員の負担が大きい。
翻訳ソフトを用いるとしても,簡単な自己紹介等はともかく,意見交流となると語学力の点で敷居が高い。

授業づくりのための参考資料

スタジオジブリ『火垂るの墓』
神戸空襲を記録する会『神戸大空襲 戦後60年から明日へ(のじぎく文庫)』
森達也,姜尚中『戦争の世紀を超えて その場所で語られるべき戦争の記憶がある』
田中伸尚『「戦争の記憶」その隠蔽の構造 国立戦争メモリアルを通して』

学びの軌跡(感想文、作品、ノートなど)

  • 感想文,作品,単元案等は別紙を参照
  • 米側との共通フォーマットは以下の通り。

STEP ONE (Students can email one another)
お互いを良く知るための質問
Name: 
1.) What is your home/school life like?
   あなたの家庭生活、学校生活は?

2.) What are your views on American/Japanese culture? What do you know?
   アメリカの文化について、何を知ってますか?どう思っていますか?

3.) What cultural differences exist? What cultural similarities exist?
   日米の文化にはどんな違いや共通点がありますか?

4.) What do you like to do for fun? ...
   あなたの楽しみ・趣味って何?

5.) (...They can ask any final questions here that they are curious about...)
   他にアメリカのことについて何か興味のあることがあれば…

The lesson questions can begin here.
   授業に関する質問
6.) How do people respond to tragic events? How do people cope with tragic events? How does the media play into peoples' emotions?
   悲劇的な出来事に対し、人々はどんな反応を示すか。悲劇にどう立ち向かうか。メディアは人々の感情にどういう役割を果たすか。

7.) How do you view the atomic bombing of Hiroshima and Nagasaki?
   広島・長崎の原爆投下をどう考えるか。

8.) How do you view on the Pearl Harbor attack?
   日本の真珠湾攻撃をどう思うか。

9.) How do you view on the War on Terror?(esp. Iraq)
   テロとの戦いをどう思うか。

10.) What do you think the purpose of a memorial?
   記念碑の目的は何だと思うか。

15. 備考(授業者による自由記述)

今回は上記のように,途中から双方のスケジュールがうまくかみ合わず,メールでのやり取りが途切れがちになり,最終的にはまったく返事が来なくなるという,最悪の結果で終わった。
週1回の授業でのメールを用いての学習は,どうしてもタイムラグができてしまう。相手側からの返事も同様で,最初の自己紹介のやり取りだけでも約半月を要した。
2校での相互学習ではやはり限界があるといわざるを得ない。今後は,ワークショップ中にプロジェクトを立ち上げ日米双方に複数の参加校を募るとよいのではないか(日本側参加者には,アメリカのカリキュラムや学校制度など交流を実施するうえでの基本的事項についてレクチャーが欲しい)。また,今回のようなトラブルに備え,日米双方にコーディネーターの存在が不可欠であると痛感した。




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