「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-44f

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匿名ユーザー

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 その日、学校の授業を終えた早渡が「先生」の診療所に向かっていたのは直斗からのメールがきっかけだった

『今日の放課後、みんなで集まって遊ぼうぜ。「先生」の診療所に集合な』

 一方的である
 完全に一方的である
 一応「用事あるなら連絡なしで来なくてもいいよ」とも書いてあったが、確実に「予定なくて来るだろう」と見越しているような内容だった
 とりあえず、実際予定もなかった為、こうして「先生」の診療所に向かっているのだ

 診療所が見えてきたところで、気づく
 「先生」の診療所には小さな駐車場が併設されているのだが、そこに、一台のバイクが停まっていた
 そのバイクがまた、派手なのだ
 めっちゃくっちゃに派手なのだ
 何が派手かと言えば、まず、塗装がシルバーメタリック。それも、綺麗に磨かれていてピッカピッカである。昼間だったら、太陽の光を浴びてギンギラ輝いているんじゃないかと言う色合いだ
 更に言うと、改造というべきか、カスタムと言うべきか……とにかく、原型からかなり色々いじくり回したであろう事が、バイクに詳しくない素人でもわかるレベルの姿になっていたのだ
 こんな見た目のバイク、世界に一台しかないに違いない、そう断言できるレベルのもの。恐らく、学校街を走っていてもかなり目立つことだろう
 こうして診療所の駐車場に停まっている、と言うことは診療所を訪れている患者が乗ってきた物なのだろうか

 何気なくバイクの方を見つつ、診療所から出てきた、短い髪に眼鏡の年下の少女とすれ違いつつ、早渡は診療所に入る

『ーーーーでは、すまないが。もしもの時は頼んだ。こちらが動かんでも、誰頭が動くとは思うが』
『「教会」の凍てつく悪魔辺りが出張ると別な意味で大惨事の予感するしな』
『うん、あの御仁が苛ついて動いた場合は実に危険な予感がするね。どの季節であろうとも』

 と、中に入ると、何やら会話が聞こえてきた
 早渡の英語の聞き取り能力が高ければ、このように聞こえていた事だろう
 一方は「先生」の声。もう一方は、早渡にとって聞き覚えのない声だった
 そのもう一方の姿は、すぐに視界に入ってきた
 「先生」と向かい合って話している男性、この人だ
 真っ赤なライダースーツを着ている辺りを見ると、あの派手派手なバイクの持ち主でもあるのだろう。銀髪をオールバックにし逆立て、サングラスをかけている。明らかに西洋系の人間の顔立ちだ
 その男性が、早渡に気づいて、振り返る

「っと、患者か?悪ぃな、坊主。話は終わったとこだから、「先生」に用事あんならどうぞ」

 男性は早渡に対し、流暢な日本語でそう告げた
 「先生」にそれじゃあ、と声をかけて、診療所を後にする

「おや、迷い子の少年………あ、もしかして、直斗に呼ばれたのかい?」
「はい。みんなで遊ぼうって……いいんですか。この診療所使って」
「オッケーオッケー。以前、君も入った休憩スペース使うんだろうし問題ない………っと、しまった。あっち散らかっていたな」

 片付けないとね、と休憩室の扉を開ける「先生」
 「先生」が言う程に散らかってはいないようだったが、テーブルの上に本が散らばってあったり、煙草の箱がいくつか置かれているのが見える

「あれ、「先生」、煙草吸うんですか?」

 休憩室の机の上に置かれていた、いくつもの煙草の箱を見て何気なくそう口にする早渡
 髪の色や白衣と言う「白」のイメージを他者に与えるこの「先生」に、煙草というイメージが浮かばなかったのかもしれない
 「更級日記」「蛇にまつわる民話全集」「日本書紀」「仁徳記」「遠野物語」「地脈・龍脈」などといった本を休憩室の隅に片付けつつ、「先生」は問いに答える

「いや、吸わないよ。ただ、ちょっと調べたい事があってね。成分とか毒性とか」
「毒性」
「うん、毒性」

 蛇は煙草のヤニを嫌うと言うしね、と独り言のように付け足しつつ、「先生」は本は隅の方の机の上に、煙草はきちんと鍵付きの箱に仕舞い込んだ
 どうやら、診療所には早渡が一番乗りだったらしい
 患者は先程の少女と男性……男性の方は患者と言うより客だったようだが……の他にはいないようだ

「お茶でも淹れてこよう、座って待っているといいよ」
「あ、いいえ。お構いなく……」

 と、早渡が答えた。その時

「あ、早渡。先についてたんだ」

 ひょこり、と、休憩室に直斗が顔を覗かせた
 そして、その直斗の背後から、ぬぅ、と。もっと大柄な少年が顔を出す

「そっちの奴か、お前や灰人が言ってたの」
「あぁ、そうだよ」

 その大柄な少年は、直斗から早渡の事を聞いていたらしい
 早渡に、確認するような視線を向けている

「あ、前、慶次さんや直斗君と一緒にいた人…」
「へーぇ、その人がそうなんだ」

 ひょこ、ひょここっ
 もう二人、今度は少女が顔を出した
 片方の少しぽっちゃりとした少女は、早渡も以前、ちらりとだが顔を合わせている
 早渡がそれを覚えているかどうかはさておき、少女の方は早渡の顔を覚えていたようだった
 もう一人、すらりと細い少女の方は早渡とは初対面
 しかし、彼女もまた直斗から早渡の事を聞いていたようであり、存在を認識している

「え、俺どれだけの範囲に存在広められたの?局地的有名人?」
「俺は友達にちょっと話しただけだよ。面白いのが居たって」
「「面白いの」に関しては意義を申し立てたい」

 直斗の言葉に早渡が突っ込む
 何故、自分が「面白いの」と認識されてしまったのか、早渡自身には理解できない
 …いや、それよりも、だ

「「友達にちょっと話した」って言ったけど、どの程度の範囲だ。本当に、どのくらいの範囲だ」
「大した範囲じゃないって、友達周りだけだから。その後に拡散された場合は知らない」

 そう言いつつ、ちらり、直斗は視線をほっそりとした少女の背後に向けた
 早渡もそちらを見ると、そこには少女にどこか似た顔立ちの少年が居て、スマートフォンを手にしている
 視線に気づいたのか、こてん、と少年は首を傾げる

 スマートフォン+拡散

 なんとなく嫌な予感がしたのは、早渡の気の所為ではないのかもしれない
 そんな早渡の心境とは別に、「先生」は直斗逹に声をかける

「ん、君達も来たね。これで全員かい?」
「いや、龍哉は一旦家に帰ってから来るっつってたし、憐も灰人と用事すませてからくるって」
「そうか。とりあえず、来る予定の人数を教えてくれるかい?その人数分、お茶を用意しよう」

 大柄な少年の返答に、「先生」は笑う
 直斗とともにやってきた少年少女逹も皆、「先生」とは顔見知りであるらしい
 にこり、直斗は早渡に笑い

「せっかくだし、みな、自己紹介しようか。ちなみに、安心しなよ。全員、都市伝説について把握している面子しか今日は来ないから」

 と、そう告げた



「はいはーい、お待たせしましたー、っす」
「あ、みんな先に来てたのね」

 憐や灰人、それに神子が診療所に到着したのは、遥逹の早渡への自己紹介が一段落した頃
 彼らも早渡の事は直斗から聞いていたようで、すでに早渡と言う人物について(微妙に偏った情報ながらも)認識していた
 ただ
 ここに一人……否、一匹、早渡の事を知らないものが連れ込まれた

「…犬?」
「きゅぅん?」

 ぱたぱたぱた
 憐に抱っこされて尻尾をふっている子犬
 首輪に「Ⅺ」のチャームをつけた柴の子犬だ
 早渡を見上げ、愛らしく首を傾げている

「ここ来る前にー、閑古鳥寄ったら、ポチがついてきたそうだったんで連れてきたっすー」
「閑古鳥寄ったのは、ここ借りる場所代買ってきたようなもんだ」
「そういうわけだから、はい、「先生」。閑古鳥のミートパイ。後で食べてね」

 憐、灰人、神子が順々にそう口にした
 はい、と神子からパイが入った箱を受け取り、「先生」は笑う

「あぁ、あそこのミートパイか。自家製のミートソースが美味しいのだよね。ありがとう。冷蔵庫にしまってくるよ。ついでに、君達の分のお茶もいれよう」

 そう言って、休憩室を出る「先生」
 憐はそっと、ポチを床におろした
 ぐぅ~っ、と背伸びをして、ポチは大きくあくびをする

「……と、言うか。子犬を診療所に連れてきて大丈夫なのか?」
「前々から、たまに連れてきてるし大丈夫なんじゃない?」

 早渡のもっともな疑問に、そう答えたのはほっそりとした少女……優だ
 優の言うとおり、ポチもこの場所に慣れているのか、緊張している様子はない
 代わりに、てちてちてち、と早渡に近づいて………すんすんすん、と匂いを確認しだした
 すぐに興味をなくしたのか、ぷい、と早渡にそっぽをむいて憐の足元でじゃれ付き始める

「あとは龍哉逹か」
「…龍哉、遅れるなんて、珍しい」
「それと、直斗。後は誰を呼んだの」
「え?えーと、星夜はメール送っといたけど「忙しいから無理」って返事きて……」
「この時期の受験生を遊びに誘うな」

 灰人の突っ込みに「息抜きって事でいいじゃん」と肩をすくめる直斗
 会話から、彼らの関係性が少し見えてくるかもしれない
 たとえば、星夜が来ないという点にかなえがほっとしたように見えた様子などからも、だ

「咲夜は、今日は少し体調悪いっつってたから参加辞退だし、愛人(まなと)や雀も用事あるって言ってて、東先輩はちょっと遅れるって言ってたから、後は…」

 と、直斗が言葉を続けようとした時だった

「おまたせいたしました」

 休憩室の扉が開き、入ってくる和装の少年、龍哉
 どうやら、一旦家に帰った際に着替えてきたらしい
 それはいい
 龍哉はいいのだ
 問題は、その後ろに連なっている二人

「あぁ、そうそう。後は鬼灯さんと慶次」
「こちらに来る最中に、慶次さんとお会いしたのでご一緒させていただきました」
「うん、龍哉の背後で慶次が鬼灯さんをものすっごい睨んでて、鬼灯さんがそれを完全にからかう目で見てるわよ」

 神子のその突っ込みの通り
 龍哉の背後には鬼灯と慶次の姿があって
 戻ってきた「先生」が「げ、私に対して当たりがきつい者×2」と呟くまで、あと数分であった



 直斗が呼んだメンバーは全員揃った
 龍哉逹が「先生」のいれたお茶を飲んでいる間に、早渡は質問する

「それで、これだけの人数集めて、どんな遊びを?」
「んー?人狼だよ。脩寿、やった事ある?」
「似たようなのなら。人狼はやった事ないな」

 直斗からの返答。続けての質問にそう答える早渡
 「ゾンビー・タウン」と言うパーティーゲームならプレイした事がある彼だが、人狼はやったことがない
 ぼんやりと、役職やらの名前は聞いたことあるかもしれないがしっかりとしたルールはわからない、と言うところだ

「ふむ、なるほど。迷い子の少年は初心者、と………では、通常ルールでやった方がいいね」
「個人的には、今、「先生」がそっと片付けた「闇鍋」って書かれた黒い小箱気になるんですが」
「流石に初心者がいると言うのに闇鍋やろうぜ!と言うほど鬼畜ではないよ」

 す、と「闇鍋」とおどろおどろしい赤文字で書かれた黒い箱を片付ける「先生」
 ……と、言うか

「お前、診察はいいのか」
「休憩中の札かけてきたから大丈夫。この時間なら、一戦くらいは参加できるさ」

 慶次の突っ込みに、「先生」は涼しい顔で答えた
 日頃の患者の来る率から、この時間帯は患者はほとんど来ない、とわかっているらしい

「とは、いえ、GMとして最後まで参加、はできるかどうかはわからん。GMは「通り悪魔」の御仁に任せた。君がここに連れてこられたのも、恐らくはGM任せる為であろうて」
「大体その通りだが、俺だって普通に参加するために来てんだよ。最初くらいはGMやってやってもいいが」

 「先生」に抗議する鬼灯だが、少なくとも最初はGM……人狼と言うゲームにおける、進行役をやってくれるらしい
 ゆらゆらと手元で煙管を弄びながら、何やらカードを受け取っている

「ちなみに、「通り悪魔」の御仁。ここは一応診療所なので煙草は」
「安心しろ。今吸ってるのは緑茶だ。それと白衣、さっきの茶、何いれた。かすかに気配がしたぞ」
「うむ、緑茶なら良し!ちなみに本日出した茶は、全てエリクサー入りだ」
「そうか、わかった。じゃあこの人数なら配役は……」
「待って。突っ込み入れなきゃいけない単語が聞こえた」

 「先生」と鬼灯の会話を聞いていた早渡が、そう声をあげた
 そう、突っ込みをいれなければいけない、先程の会話は
 早渡以外、突っ込みを入れる気配がないがツッコミを入れなきゃいけない予感がしたのだ、彼は
 はて?と「先生」は首をかしげている

「何か、問題があっただろうか。煙管は、煙草以外も吸えるぞ。紅茶とか砂糖とか」
「紅茶はものによっては煙管で吸うとまずいぞ。やめとけ。緑茶はまだいける。砂糖は油断すると粉塵爆発起こすから初心者はやめとけ」
「なるほど、ってそうじゃない。突っ込みはそこじゃない」

 そう、そこじゃない
 突っ込むべきところは、そこではないのだ
 もっと重要単語が聞こえてきていたのだから

「さっき、茶にエリクサーいれた、って」
「うん、君逹に出した分も、全てそうだったよ?」

 なんと言う無駄遣い
 確かに、美味い紅茶ではあったが、無駄遣いだ
 言葉が出てきていない早渡に、神子が告げる

「安心しなさい。この「先生」がいれたんなら、まず本物だから」
「心配点はそこじゃなくて」
「うっかり猫耳とか生える薬を「なんとなく作っちゃったし捨てるのもったいない」って理由でいれられた訳じゃねーっすし、問題ないっすよ」

 憐の続けての言葉に、ますます「待った」と言いたくなる早渡
 他の面子は、かなえを覗いて大体慣れている様子だ
 エリクサーいりの茶に慣れていいのだろうか
 あまり良くない気がする

 ……確かに、なんらかの形で害が出るわけではないので、いいと言えばいいのかもしれないが

「ほんっと、なんで飲まれてないのか不思議よね、この人」
「……飲まれそうで飲まれてない事、わりと、ある。「教会」のカイザーさん、みたいに」

 ぼやくような神子の言葉に、晃がぼそ、ぼそ、と続けた
 契約した都市伝説に「飲まれかけ」、もしくは「どう考えても飲まれるだろなんで飲まれていないんだ」と言う例は、そこそこ存在するのだ
 「先生」も、そうした例の一人である
 当人がその点をどう考えているのか不明だが、少なくとも彼の契約都市伝説は「エリクサー」を気軽に使えるような都市伝説である、と言うことだ

「そこの白衣の行動が理解しがたいのはいつもの事だ。あまり真面目に考えんな、坊主」

 くつくつと、鬼灯はそう言って笑った
 そうして、カードを軽くシャッフルしながら、続ける

「んじゃあ、早速始めるか?」

 カードのシャッフルは、終わった
 ……さぁ、遊戯を始めよう




to be … ?


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