~~~黄泉への道~~~
死にゆくもののための、たった一つの理。
ギリシャ神話が死の神・タナトスと会話している少年、黄昏正義は、この道の果てへと歩もうとしていた。
正義「タナトス、外で何があったの!?」
タナトス「違う、外ではない!何者かが、この空間に干渉しようとしている……!?」
タナトス「違う、外ではない!何者かが、この空間に干渉しようとしている……!?」
改めて集中してみるが、正義は何も感じ取れない。
タナトス「これほどの力に、少年が気付かないのか……?」
正義「うん、あ……。」
正義「うん、あ……。」
その時、空間が歪み、裂け目が生まれた。
裂け目の向こう側には、見慣れた景色が広がっている。
裂け目の向こう側には、見慣れた景色が広がっている。
地上の景色だ。
この瞬間、黄泉は、現世と繋がっている状態になった。これは許されない事態である。命の理に背く、それは禁忌と言ってもいい。だがそれ以上に困難なことである。
黄泉への出入りが可能なものは、【タナトス】や【鬼】のような一部の都市伝説のみ。そしてそれらの都市伝説のほぼ全ては、黄泉の世界に監視されているか、なんらかのポストに就いている。
黄泉への出入りが可能なものは、【タナトス】や【鬼】のような一部の都市伝説のみ。そしてそれらの都市伝説のほぼ全ては、黄泉の世界に監視されているか、なんらかのポストに就いている。
つまり、これほどの力を持つものが、黄泉の世界の監視を潜り抜けていたことになる。
そこまでして生者と死者をひっくり返すような事をする。その理由は大方悪事と決まっている。そうでなくとも、現状は危険だ。
タナトス「少年、逃げ―――」
言う間もなく、正義は謎の光に包まれていた。
その光の中で、正義は気を失っているようだった。
タナトスは正義を助けようと近づくと、光に弾き飛ばされて、裂け目へと叩き出されてしまった。
その光の中で、正義は気を失っているようだった。
タナトスは正義を助けようと近づくと、光に弾き飛ばされて、裂け目へと叩き出されてしまった。
―――正義が気を取り戻すと、辺りは真っ暗だった。
光に包まれる瞬間の記憶はあったので、現状に疑問というよりも不安が湧いた。
思わずタナトスを呼ぼうとしたが、どうも声が出ている心地がしない。
思わずタナトスを呼ぼうとしたが、どうも声が出ている心地がしない。
正義「(ここはいったい……?)」
ふと、目の前に見慣れた姿が現れた。
自分の倍近くある背丈、鋭い目つき、何よりも特徴的なたなびく真っ黒なマント……。
自分の倍近くある背丈、鋭い目つき、何よりも特徴的なたなびく真っ黒なマント……。
正義「(大王!)」
奇怪な状況にも関わらず、正義は大王の登場に安心してしまう。
今まで共に戦い、助け合ってきた仲。また助けに来てくれたのだと信じていた。
大王の第一声を聞くまで……。
今まで共に戦い、助け合ってきた仲。また助けに来てくれたのだと信じていた。
大王の第一声を聞くまで……。
大王「始めまして。」
正義「(……え?)」
正義「(……え?)」
大王「私は【恐怖の大王】。今まであなたを探しておりました。
本来なら、とうにお会いできている予定でしたが……。」
正義「(ど、どういう事?大王、どうしたの!?)」
本来なら、とうにお会いできている予定でしたが……。」
正義「(ど、どういう事?大王、どうしたの!?)」
ただ、機械のように淡々と話しかける大王。
事情を聞こうにも、正義の声は大王には届かない。
事情を聞こうにも、正義の声は大王には届かない。
大王「私はある使命の下、あなたを迎えにきたのです。
ある物語の、来るべきときのため。」
正義「(大王!使命って、あ……。)」
ある物語の、来るべきときのため。」
正義「(大王!使命って、あ……。)」
その時、正義の頭に、何かが過ぎった。
大王「少年……。」
―――契約を果たそう―――
~~~世界~~~
勇弥「あれ……。」
楓「……あれは……!?」
楓「……あれは……!?」
麻夜「………やひゃっ……。」
真っ赤なマント、きらびやかな装飾の王冠、王のような風貌。
誰とも分からない人間の登場に、全員が呆然と立ち尽くす。
誰とも分からない人間の登場に、全員が呆然と立ち尽くす。
唯一、その正体が分かったのは、奈海だけだった。
奈海「……正義くん……?」
正義「奈海……。」
ふと、正義らしき人物がその場から消える。
そう思ったら、勇弥達のそばへと瞬間移動していた。
そう思ったら、勇弥達のそばへと瞬間移動していた。
正義「勇弥くん、奈海を頼む。」
勇弥「ほ、本当に正義なのか……!?」
勇弥「ほ、本当に正義なのか……!?」
ゆっくりと、静かに正義は頷いた。
勇弥「よかった……でも、なんでだ?」
楓「もしかして大王様が……そうだ、大王様は?」
楓「もしかして大王様が……そうだ、大王様は?」
楓の言葉を聞き、正義の表情が変わる。
なにか、遠くを見ているような目をしていた。
なにか、遠くを見ているような目をしていた。
正義「ッ……!」
正義は、麻夜の精神を支配した【太陽の暦石】を睨みつけると、【太陽の暦石】の近くに白雲が生成される。
そして正義が消えたかと思うと、その白雲から正義が降ってきた。
そして正義が消えたかと思うと、その白雲から正義が降ってきた。
あまりの展開に、全員状況が呑み込めていなかった。
勇弥達は、現状を確認するように話し合っていた。
勇弥達は、現状を確認するように話し合っていた。
勇弥「正義は……生きていた、って訳ではないよな?」
楓「タナトスが居たんだ。間違えるはずがない。……生き返った事になるな。」
勇弥「でも、タナトスは『死人が生き返るのは禁忌』と言ってたよな?
大王さんが何かしてくれたのか?」
楓「……大王様について聞いた時のあの表情。そしてあの服装はなんだ?
十中八九、大王様が関係しているに違いない。何があったんだ……?」
楓「タナトスが居たんだ。間違えるはずがない。……生き返った事になるな。」
勇弥「でも、タナトスは『死人が生き返るのは禁忌』と言ってたよな?
大王さんが何かしてくれたのか?」
楓「……大王様について聞いた時のあの表情。そしてあの服装はなんだ?
十中八九、大王様が関係しているに違いない。何があったんだ……?」
その時、コインシューターからコインが飛び出す。何故か、青ざめた顔をして。
コイン「……そんな……。」
勇弥「コインちゃん、どうかしたのか?」
コイン「正義くんから、都市伝説の気配がする……。」
楓「何ッ!?そうか、あの衣服が黄昏を……!」
勇弥「大王さんかタナトスか、そんな隠し玉を持っていたのか!」
コイン「違う……。」
勇弥「コインちゃん、どうかしたのか?」
コイン「正義くんから、都市伝説の気配がする……。」
楓「何ッ!?そうか、あの衣服が黄昏を……!」
勇弥「大王さんかタナトスか、そんな隠し玉を持っていたのか!」
コイン「違う……。」
コイン「正義くん『から』、都市伝説の気配がするの……。」
勇弥&楓「「 え……? 」」
麻夜「何故生きている?」
正義「……。」
麻夜「……貴様、飲まれたな?」
正義「だったら、どうする?」
正義「……。」
麻夜「……貴様、飲まれたな?」
正義「だったら、どうする?」
麻夜「なら……また滅ぼすのみ!」
麻夜「第三の破滅……『トロメア』。」
【太陽の暦石】の掌から火球が生まれ、それを正義に向けて弾き飛ばす。
正義「……たあぁぁ!」
正義は火球に剣を振り下ろす。火球は真っ二つになり、爆散した。
麻夜「なんだと……!?」
一瞬驚いたのものの、【太陽の暦石】は改めて掌に水の弾を集める。
麻夜「第四の破滅……『ジュデッカ』!」
正義に向けて、水の弾丸が飛び散る。しかし正義は、それを全て振り払ってしまった。
麻夜「……第二の破滅……『アンティノラ』!」
麻夜の拳に風を纏い、正義に殴りかかる。しかしそれさえも、容易に剣で受け止める。
麻夜「お前……黄昏正義だろ……?違うのか……!?」
正義は麻夜を払いのけ、睨みつける。
正義「ボクは……。」
正義「【アンゴルモアの大王】だ……!」
勇弥「そ、そうか……! そういう事だったのか!?」
奈海「え……?」
勇弥「【ノストラダムスの大予言】……覚えているか?」
奈海「え、あれは『1999年に何かが降ってくる』って話でしょ?」
奈海「え……?」
勇弥「【ノストラダムスの大予言】……覚えているか?」
奈海「え、あれは『1999年に何かが降ってくる』って話でしょ?」
勇弥が大きく首を振る。
勇弥「違うぜ、あの原本にはこう書かれているんだ……。」
―――1999年、七か月―――
―――空から恐怖の大王が来るだろう―――
―――アンゴルモアの大王を蘇らせるために―――
勇弥「この予言そのものの読み方自体、諸説あるんだが……。
この3行は概ね合っていると言われている。
4行目は最もブレやすくて、2行目の目的語が変わっちまう訳し方もある。」
この3行は概ね合っていると言われている。
4行目は最もブレやすくて、2行目の目的語が変わっちまう訳し方もある。」
この予言で示されているのは『アンゴルモアの大王の復活と、その後起こる何か』であった。しかし人々は『恐怖の大王』に目を引かれてしまい、【恐怖の大王】の方が有名となった。
それでも、『アンゴルモアの大王』の意味や正しい訳について考えるものも少なからずいた。……そこから導き出される答えは、たった1つ。
それでも、『アンゴルモアの大王』の意味や正しい訳について考えるものも少なからずいた。……そこから導き出される答えは、たった1つ。
コイン「つまり、大王は『何かを降らせる都市伝説』じゃなくて、
本当は『アンゴルモアの大王を蘇らせる都市伝説』だったって事?」
勇弥「それが何かの拍子で、今までの大王さんが誕生したんだ。
……そうでなかったとしても、大王さんの力に違いない。」
本当は『アンゴルモアの大王を蘇らせる都市伝説』だったって事?」
勇弥「それが何かの拍子で、今までの大王さんが誕生したんだ。
……そうでなかったとしても、大王さんの力に違いない。」
今ある情報を統合しても、【恐怖の大王】という都市伝説が関与している事しか分からない。ふと、楓の胸に一抹の不安が過ぎる。
楓「では、大王様は!?」
勇弥「……分からねぇ。4行目の解釈にもよるが、おそらく……。」
楓「大王様……。」
奈海「正義、くん……。」
勇弥「……分からねぇ。4行目の解釈にもよるが、おそらく……。」
楓「大王様……。」
奈海「正義、くん……。」
正義「たあああぁぁぁ!」
正義は【太陽の暦石】に剣を振り下ろす。
しかしその鎧には全く歯が立たず、剣は弾かれてしまった。
しかしその鎧には全く歯が立たず、剣は弾かれてしまった。
【太陽の暦石】も風を纏って反撃するが、正義は剣で受け止める。
そのまま正義は【太陽の暦石】を弾き飛ばすが、【太陽の暦石】は耐性を崩さず、火球や水の弾丸を飛ばす。
しかし正義は、それらを軽く薙ぎ払ってみせた。
そのまま正義は【太陽の暦石】を弾き飛ばすが、【太陽の暦石】は耐性を崩さず、火球や水の弾丸を飛ばす。
しかし正義は、それらを軽く薙ぎ払ってみせた。
勝負は互角、いや、若干【太陽の暦石】が押しているように感じられた。
事実、【太陽の暦石】の表情には余裕が見えるが、正義の表情からは余裕が見られない。
事実、【太陽の暦石】の表情には余裕が見えるが、正義の表情からは余裕が見られない。
勇弥「くっそ!正義でも、【アンゴルモアの大王】でもダメなのかよ!」
楓「やはり元人間では限度があるのか……!?」
楓「やはり元人間では限度があるのか……!?」
二人が心配していると、コインが震えた声で話し出す。
コイン「能力は大王よりもはるかに上よ。でも中身は正義くん。
あいつも鎧や人格は【太陽の暦石】だけど、中身は麻夜ちゃんでしょ?
そもそも倒せるはずなんてないの……正義くんが手加減しちゃうから……。」
あいつも鎧や人格は【太陽の暦石】だけど、中身は麻夜ちゃんでしょ?
そもそも倒せるはずなんてないの……正義くんが手加減しちゃうから……。」
それを聞いて、奈海はただ、祈るように目を瞑る。
【太陽の暦石】と正義のぶつかり合いの果て、正義の剣が宙を舞い、風を纏う拳が正義を殴り飛ばす。
正義は地面に叩きつけられ、剣は地面に突き刺さった。
正義は地面に叩きつけられ、剣は地面に突き刺さった。
麻夜「やっひゃひゃひゃひゃひゃ……。
飲まれて間もない状態で負担が大きかったようだな。今のお前では勝てまい!」
飲まれて間もない状態で負担が大きかったようだな。今のお前では勝てまい!」
【太陽の暦石】は掌に火球を浮かべる。
正義は地面に大の字に伏せたまま、呟く。
正義は地面に大の字に伏せたまま、呟く。
正義「うん、勝てないね。」
【太陽の暦石】が、一瞬制止する。そして全員が、正義の方を注目する。
正義「お前と戦って分かったよ……。ボクの、ボク1人の力は弱いんだ。
今まで色々な人と戦って、勝ってきた。でもそれはボクの強さを証明するものなんかじゃない。
勇弥くんがサポートしてくれて……十文字さんが情報をまとめてくれて……
コインちゃんが皆を導いてくれて……奈海が見守ってくれて……。」
今まで色々な人と戦って、勝ってきた。でもそれはボクの強さを証明するものなんかじゃない。
勇弥くんがサポートしてくれて……十文字さんが情報をまとめてくれて……
コインちゃんが皆を導いてくれて……奈海が見守ってくれて……。」
正義の頭の中で、今までの戦いが回想される。
その中で、「自分1人の力で勝った」と言えるものは、確かに1つとして無いだろう。
その中で、「自分1人の力で勝った」と言えるものは、確かに1つとして無いだろう。
正義「そして、誰よりもボクと一緒にいて、一緒に成長して、一緒に戦った……。」
~~~覚醒の時~~~
―――俺は、暗闇の中で生まれた―――
ぽつり、正義の脳内に言葉が流れ込んでくる。その声は、大王の声のようだった。
最後に記憶しているのは、タナトスと共に黄泉への道を歩いていたことと、それを大王に妨害されたこと。
―――俺には親がいた。親、と言っても、漠然とした概念のようなものだった―――
―――何故かは分からないが、俺は『それ』を『親』と認識した―――
正義の脳内に映像が映る。淡く光る煙の塊が、膨らんだり縮んだりを繰り返していた。
―――親は、俺に2つの選択肢を与えた―――
―――1つは、自らを隕石に変えて、地球を破壊すること―――
―――もう1つは、アンゴルモアの大王を探し、蘇らせること―――
―――どちらでも、結果は同じだと俺は予想した―――
映像は、隕石の方にクローズアップした。
―――仮に、隕石になる道を選んだ場合―――
映像では、首尾よく地球を破壊し、人類が絶滅する様が映されている。
―――それは、俺が忘れられる事を意味している―――
都市伝説は、人間の噂を元に生きている。人間がいなければ、食料を失った生き物のように、餓死するだろう。
人類滅亡系の都市伝説というのは、言ってしまえば自殺するだけの哀れな存在なのだ。
人類滅亡系の都市伝説というのは、言ってしまえば自殺するだけの哀れな存在なのだ。
―――仮に、王とやらを蘇らせる道を選んだ場合―――
映像では、首尾よく男を蘇らせ……傍にいた、淡く光る煙の塊が消えていく様が映されている。
―――俺は持てる全ての力を使い、消え失せるだろう―――
その後は、想像に難くない。アンゴルモアの王は、自分の力を行使し、名を轟かせるだろう。
しかしそうなれば、【恐怖の大王】の印象は薄まり、最終的には消え失せるだろう。
しかしそうなれば、【恐怖の大王】の印象は薄まり、最終的には消え失せるだろう。
―――どちらを選んでも、俺はこの世から消える―――
―――何故、そのような選択を押し付けたのか、俺は親を怨み続けた―――
―――しかしある時……ある言葉が俺の人生を大きく変えた―――
世界征服。
―――世界を己が手に納めれば、人間は嫌でも俺を忘れないだろう―――
―――そうすれば、俺は―――
すると、淡く光る煙の塊は形を変え……1人の人間が誕生した。
その姿は、正義には見慣れたものだった。
―――俺は親への反逆を誓った―――
―――俺は力と知識を蓄え、ある日、地上に降りた―――
映像では、見慣れた街並みが上空から映し出されていた。
映像はゆっくりと下降し……1人の子どもの前で止まる。
―――降り立ったところに、1人の少年がいた―――
その後、彼と少年は契約を交わす。正義はその時の光景をしっかりと記憶していた。
なのに、少しだけ、今まで忘れていたことがあったのを、今やっと思い出した。
なのに、少しだけ、今まで忘れていたことがあったのを、今やっと思い出した。
少年「ねぇ、なんって言ってるの?」
大王「黙ってろ、契約のための儀式だ。―――よし。
おい、次の質問に『はい』か『いいえ』で答えろ。ちなみに『いいえ』だったら帰る。」
おい、次の質問に『はい』か『いいえ』で答えろ。ちなみに『いいえ』だったら帰る。」
少年「じゃあ『はい』でいいよ。」
大王「質問がまだだ。……。」
『汝、我と共に、王の亡骸を見つけ出し、その眠りを覚ますことを誓うか?』
少年「……??? えっと……はい。」
大王「……契約完了。」
少年「えっと……なんだったの、さっきの?」
大王「ん? あぁ、要は『一緒に人を探してくれ』ということだ。が、気にするな。
とりあえず言えという取決めであって、実行する必要はない。」
とりあえず言えという取決めであって、実行する必要はない。」
少年「……ふぇ、学校があるから、ボクもそのほうがいいけど、いいの?」
大王「(こいつ、知恵熱出してるのか……? 発言レベルを落とすべきか?)
あぁ。どうせ塵一つと残っていないだろうからな。
だいたい、俺はどんな奴で、何処に居るかも知らん。
俺の目の前に適当な人間が現れたら、そいつだったという事にする。」
あぁ。どうせ塵一つと残っていないだろうからな。
だいたい、俺はどんな奴で、何処に居るかも知らん。
俺の目の前に適当な人間が現れたら、そいつだったという事にする。」
少年「それでいいの……?」
大王「そんなものだ。まぁしばらくは関係のない話だ。
どうであれ、契約は成立だ。良かったな。」
どうであれ、契約は成立だ。良かったな。」
少年「やったー! よろしくね。」
大王「(何も知らずに喜びやがって……。)」
大王「(何も知らずに喜びやがって……。)」
―――それが俺の、物語の始まりだった―――
その後、今まで出会った人が映し出されていく。
そして最後に、タナトスの姿が映された。
そして最後に、タナトスの姿が映された。
―――最初は後悔したが……今なら断言できる―――
―――彼が契約者で良かった、と―――
―――タナトスとの戦いで気付いたんだ―――
―――手段と目的が逆転していたことと、『目的を果たしていた』ことを―――
―――俺にはもう、掛け替えのない仲間がいる―――
―――そして、俺の『記憶』がある―――
―――もういいだろう、【恐怖の大王】よ―――
―――今まさに、恩人の物語が終わろうとしているんだ―――
―――今こそ、契約を果たすときだろう―――
―――彼こそが、【アンゴルモアの大王】だ―――
これは―――間違いなく大王の記憶だろう。
彼がこんなものを抱えていたことは、正義さえも知らなかった。
きっと心の奥底に押し込めて、正義に見せなかったのであろう。
……それが、何故今更聞こえてきたのか?
彼がこんなものを抱えていたことは、正義さえも知らなかった。
きっと心の奥底に押し込めて、正義に見せなかったのであろう。
……それが、何故今更聞こえてきたのか?
そう考えるより先に、正義は意識を取り戻した。
―――目を開けると、そこは森の中だった。
周りにタナトスの気配はなく、大王の姿は見えなかった。
……ただ、大王の気配だけは、かすかに感じられた。
自分の中に。
そして、自分の姿を見て、全てを理解した。
大王の思いと、力と、『やるべき事』を―――
~~~今~~~
正義「ボクに戦うきっかけを、戦う力をくれた……。
個々の力じゃない……『繋がり』こそが力の源だと教えてくれた……。」
麻夜「下らん。そんなものに何の価値がある?」
個々の力じゃない……『繋がり』こそが力の源だと教えてくれた……。」
麻夜「下らん。そんなものに何の価値がある?」
正義は立ち上がり、【太陽の暦石】を睨みつける。
正義「『偽りの繋がり』しか持たないお前には絶対に分からない。
仲間や、麻夜ちゃんを道具としか思っていないお前なんかには……!」
仲間や、麻夜ちゃんを道具としか思っていないお前なんかには……!」
麻夜「仲間?あれは我が生み出したものだ。そしてこれは我の力を発揮するための器。
どうせ全て、滅びゆくもの。ゴミを、我が使ってやっているだけだ。貴様とて同じだろう?」
どうせ全て、滅びゆくもの。ゴミを、我が使ってやっているだけだ。貴様とて同じだろう?」
正義「違う!この『繋がり』さえあれば、ボク達は何とだって戦える!どんな困難にだって立向かえる!
お前も……ボクも、『独り』じゃ絶対に勝てない!」
お前も……ボクも、『独り』じゃ絶対に勝てない!」
【太陽の暦石】は痺れを切らしたのか、改めて正義に狙いを定める。
麻夜「そこまで言うなら、その力、我の前に示してみろ。
第三の破滅……『トロメア』。」
第三の破滅……『トロメア』。」
【太陽の暦石】は正義に向けて、火球を放った。しかし正義は微動だにしない。
正義「ボクは絶対にお前を倒す!お前なんかに未来を奪わせはしない!」
正義「だからお願い……力を貸して!」
―――正義に命中する寸前で、火球は真っ二つに切り裂かれた。
そこに立っていたのは―――
正義「 大 王 ! 」
大王「まったく、人使いの荒い奴だ。」
正義「……行くよ、大王!」
大王「終わらせるぞ、正義!」
マヤの予言編第X4話「ヒトリ」―完―