「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 舞い降りた大王-X01

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hayata0328

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 ―――10月28日、夕暮れ時

 麻夜を救うため、“R-No.0”ローゼ・ラインハルトを初め、
 黄昏 正義、日向 勇弥、心星 奈海、コイン、十文字 楓、そして【恐怖の大王】が立ち向かう。

 しかし【太陽の歴石】は、既に麻夜の身体を完全に支配していた。
 自らである石板を現出させ、それを鎧に変えて麻夜に纏わせる。
 魂と器を一体化させた【太陽の歴石】は、予言の力で正義達を翻弄する。

 それでもなお諦めない正義に対し、【太陽の歴石】は滅びの時を告げる。
 洪水の力を指先に圧縮した、水の弾丸を奈海へ目掛けて放つ―――












奈海「うそ……。」

正義「か、は……。」



―――奈海に向けられた水の弾丸。

 その弾速は素早く、動体視力に自信のある楓でも、ある程度予知できるコインでも間に合わなかった。

 それを誰よりも、いち早く察知できたのは、正義1人だけだった。

 正義は奈海の前に立ち、弾丸を剣で受け止める。
 しかし、その威力は凄まじく、弾丸は剣を砕き、正義の胸を撃ち貫いた。

 胸から、大量の血が噴き出し、正義はその場で膝をついた。

 わずか、数秒の出来事である―――



勇弥「正義ィィィイイイー!!!」

 勇弥達が正義の元へと駆け寄る。
 麻夜、いや、その体を奪った【太陽の暦石】は、不敵な笑みを浮かべていた。

楓「黄昏!まだ意識はあるのか!」
正義「……くっ……。」
勇弥「まだ息がある、なら望みはある!」
奈海「……ッ!ほ、本当!?」

 半ば放心状態だった奈海が、勇弥の言葉を聞いて正義の元へ駆け寄る。

勇弥「あぁ。自然治癒力を高めて傷口の細胞を強引に塞ぎ、出血した血液を取り出しながら除菌して注入する。
   注入途中で細菌が入るかもしれないが……、十文字さん!」
楓「あぁ!15秒間までなら細菌を止める事ができる。」
勇弥「充分だ!『いっせーのっで』で始めるぞ!」
コイン「勇弥くん、がんばって!」

 勇弥の言葉を受け、奈海の表情に笑顔が戻る。

勇弥&楓「「いっせェーのォー!」」



大王「止めろ。友、会長。」



 もう治療が始まるというタイミングで、【恐怖の大王】が制止した。

勇弥「なんだよ、一刻を争うんだぞ!」
楓「大王様、いったいなんですか!?」

 2人の言葉に反応せず、大王は無表情のまま正義を見つめた。

大王「少年。」
正義「……。」

 何故か、正義は無理やり笑顔を作る。

大王「そうか……。」



―――数秒間か、数分間か―――



―――沈黙の後、大王が静かに呟く―――



大王「とうとう、寿命が来たのか。」



勇弥「は……?」


楓「なっ……?」


コイン「うそっ……!?」


奈海「……え……?」



 大王の言葉に、全員が耳を疑った。大王は話を続ける。

大王「人間の心の中には《器》というものがあり、都市伝説と契約すると
   その都市伝説の力に応じて、《器》に水が注がれるらしい。」
コイン「そ、そんなの常識でしょ?知ってるわよ!」

大王「まだ続きがある……。《器》がいっぱいになると、命の危機に陥る。
   しかし人間には、《器》の下に《受け皿》があるらしい。
   そこから溢れない限り、人は死ぬ事はないが、状況によっては生きるために都市伝説と化する。
   言わば生存本能の最後の砦というわけだ。」
勇弥「そ、それはものの例えだろ!?実際に心の中に器や受け皿があるってわけじゃ……。」

大王「俺達、都市伝説という非現実的なものが存在しているんだ。
   心の中に器があっても何もおかしくはない。」
楓「そ、それが今回の件とどう関わってくるんですか!?」



大王「少年には、《受け皿》が無いんだ。」
勇弥「……『無い』?」

大王「おそらく、兄の特異な《器》が原因で、少年の分は用意されなかったんだろう。
   そしてどうやら、《器》には『負の感情』というものまで注がれるらしい。
   俺の分で既にいっぱいだった《器》に『負の感情』は収まらず……溢れていった。」

コイン「そうか、前の町では正義くんの性格もあって、別に何の問題もなかったけど
    こっちに来てから色んな事があったからね……。」
大王「溢れた水は留まる場所を知らず、ただ、じわじわと少年の命を削っていった。
   本当はもっと早く契約解除すれば止められたんだが……少年が拒んだ。」

 契約解除を拒む、そんな事は正義なら当たり前の事だった。
 正義にとって大王は、良いパートナーであり、『戦う力』でもあった。
 それを失えば、正義は自分の夢を失う事になる。拒んで当然だ。

 全員、何を怨めばいいのか分からなくなっていた。



―――黄昏家という忌まわしい種族を作った先祖なのか



 正義の分の器と受け皿を奪った裂邪なのか



 中学校の無く、引っ越すしか選択しない自分たちの故郷なのか



 正義を苦しめてきた人々なのか



 今、正義の胸を貫いた【太陽の暦石】なのか



 その前に成す術もない自分達なのか



 命を顧みず、自分の『正義』を貫いた正義なのか―――



正義「奈海……。」

 かすれそうな声で、正義が呼びかける。

奈海「な、何?」
正義「やくそ、ま、れなッ。」ゴホッゴホッ!
奈海「……。」
楓「正義、無理するな!」



勇弥「まだ何か方法があるはず、そうだ、『寿命の値』を伸ばす事ができれば……!」
陰「(なりません!)」

 【電脳世界=自然界論】の陰が、勇弥の心に直接話しかける。

勇弥「(な、なんだよ急に!無理じゃないだろ!)」
陰「(ゲームのキャラクターの寿命や他のエネルギーのような、既に定義されているものとは訳が違うのです!)
  (ほんの数百年前まで熱エネルギーさえ理解できなかった『人間』ごときに)
  (都市伝説か否かさえ分からない『生命力』という存在を、たった数秒で理解し、定義できますか!?)」
勇弥「(そ、そうか……定義できなければ、翻訳に失敗して全く見当違いな値を変えてしまう……!)
   (くそ……どうすればいい!)」



コイン「ママ、ママ!お願い!正義くんを助ける方法を教えて!
    もうママしか頼りがないの!お願い!」



楓「打つ手無しか……。私は、なんて無力なんだ……」
伯爵「(楓さん、すみません。私にもっと力があれば……。)」



正義「大、王……。」
大王「……。」


正義「け、い……やく……。」






――――――






大王「正義ィィィイイイ!!!」



 大王は、ただ、力の限りその名を叫んだ。






(正義「どうしたの? 早く帰ろうよ、大王。」 )

(大王「うるさい! お前さえいなければ今頃、俺は……。」 )

(正義「まったく、だからセカイのシハイとか したらダメだって 言ってるだろ。」 )

(大王「お前は少し欲望を持て! 金が欲しいとか、たくさん食い物を食いたいとか、あるだろ!」

(正義「ボクは今のままで 幸せなの。みんなが幸せだったら、それでいい。」

(大王「だから! ……もういい、疲れた……。」 )

(正義「じゃあ、帰ろっか。」 )



(大王「おい。お前は何で、そこまで正義に固執するんだ?」)



(正義「え? ぅうんと……。」)






(正義「みんなが ずっと笑顔だったら、ずっと楽しいから かな。」)



(大王「……ふっ、典型的なガキの発想だな。」)



(正義「ガキじゃないもん! 命をかけて 笑顔を守るのが ヒーローなんだよ!」)



(大王「それをガキと言っているんだ! だいたい―――」)






―――なぁ、正義。俺の言う通りだっただろう―――












―――お前が命を落としても、誰1人、笑顔になれないじゃないか―――






マヤの予言編第X1話「セイギ」―完―



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