「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 夢幻泡影-70a

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Retsuya

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だれでも歓迎! 編集
2011年10月28日午後4時頃、学校町東区の住宅街にて―――――

「あ、あの、麻夜ちゃん? もうちょっと機嫌良くなってくれると有り難いな~と」
「黙っててよ変態さん!!」
「ウ、ヒヒ…酷いな;」

普段通り黒尽くめの服を着ている黄昏 裂邪は、まだ制服姿の従姉妹・神崎 麻夜を連れて歩いていた
決して援助交際ではない
繰り返す、決して援助交際ではない、断じてない

「だって怪しいもん! どーして突然変態さんとお買い物なんて行かなきゃなんないの!?
 にぃにぃは信用してるけど、私は絶対信じないから!!」

どうやら、裂邪が買い物に行こうと提案したらしい
麻夜はそれには大反対だったのだが、漢の勧めで仕方なくついていったのだった
それでもご機嫌斜めの彼女に、裂邪は引き攣った笑顔を向けていた

「……あー、やっぱり、本当のこと話そうかな?」
「ホントの事?」
「俺がこうやって麻夜ちゃんを誘った理由」
「ふん、どーせにぃにぃのいないところであーんなことやこーんなことするんでしょ?
 その前に血だらけにしてやるもん!」
「俺は犯罪者か……違うから、ちゃんとした理由があるんだよ
 漢と一緒に話し合ったんだからな」
「にぃにぃをたぶらかして、どういうつもりなの――――――」
「10月28日、何の日か知ってるか?」
「…………え?」

それは今日の日付だった
最初は何の事だったか分からなかったが、麻夜はすぐに思い出した

「…私の、誕生日?」
「正解。それで、漢がお前の為にバースデーケーキ作りたかったんだとさ
 でも、どうせならサプライズした方が良いだろ?
 だから、こうして外に連れ出して、帰ってきたらハッピーバースデー!っていう寸法だったの
 全部あいつの提案だぜ? 喜んで欲しかったんだろうな、お前に……たった一人の妹に、さ」
「え……に、にぃにぃ……私の誕生日、覚えて………」
「まぁ、一応これから俺がプレゼントでも買ってやろうって事になってるんだけど、何が欲しいかッって麻夜ちゃん!?」
「ぐすっ………あり、がと…………にぃにぃ……………」

ぽろぽろと、大粒の涙を流し始める麻夜
彼女を宥めようと、裂邪は歩み寄って頭を撫でようとしたが、

(……これは、俺の役目じゃないよな)

と思い、肩をぽんと叩いた

「…ばらしちまってごめん
 嬉しさとか半減しちまうだろうけど、あいつの気持ち、受け取ってやってくれないかな?」
「……うん、分かった。大好きなにぃにぃのケーキ、すごく楽しみ」
「よし、じゃあ改めてデパート行こうぜ、プレゼント何が欲しい?」
「飴で良いよ、もうすぐハロウィンだし、食べたらゴミしか残らないし」
「ぐっ……心臓に毒舌が突き刺さる…………」

苦しそうな演技をする裂邪を見て、麻夜は思わず、笑った















―――――――――――――――――見つけた















どっ!と強い風が吹き抜けた
裂邪は向かい風に顔を覆ったが、それはすぐに止んでしまった

「うひゃあ……すげぇ風だな、麻夜ちゃん気をつけろよ――――――――お、おい?」

隣にいた筈の麻夜に話しかけた
だが、そこに彼女の姿は無い

「ち、ちょっと、放してよ変態さん!」
「るっせぇガキだな、大人しくしやがれ!!」
「この少女…非契約者か。道理で心の器が巨大だ……素晴らしい」

そんな話し声が聞こえ、すぐさま裂邪は前を見た
麻夜が、男女4人組に捕まっていた
1人は赤いダウンコートを着た、白髪交じりの壮年の男性
1人は暴れる麻夜を抑えつけている、パンク風のチャラチャラした金髪の青年
1人は冷たい目をした冷静そうな20代後半程の男性
1人は長い黒髪を揺らす、口数の少なそうな妙齢の女性

「なっ………おい、お前ら! 麻夜ちゃんを返せ!」
「あぁ? 誰だテメェ、人間の分際で俺達に気安く話しかけんじゃねぇよ!!」

金髪の青年が右手を振るうと、突風が生まれて裂邪を吹き飛ばす
地面にぶつかるギリギリのところで、彼の影から無数の黒い腕が伸び、彼を支えた

「大丈夫カ?」
「あ、あぁ、助かった………くそっ、何なんだあいつら!?」

裂邪が4人を睨みつけると、その内の一人―――壮年の男性が前に出て、軽く会釈をする

「すまんな、こちらの「フラカン」が無礼な事をした……許して欲しい
 申し遅れたが、私の名は「ククルカン」。聞いた事くらいはあるかな?」
「「ククルカン」………『マヤ神話』の創造神が何でこんな場所に、それと麻夜ちゃんに何の用だ!?」
「実は、今日が“予言”を実行する日になっていてね……その為にこの少女をお借りしようと」
「ッ!?………予、言…って……まさか………」
「くくるくくくくくく……人類の皆様はご存じかな? そう――――「マヤの予言」だ」

「マヤの予言」
マヤ文明において用いられてきた長期暦が、ある日付で終わっていることから誕生した、
「ノストラダムスの大予言」に続く終末論の事である
終焉を迎えるその日付は幾つも存在するが、最も有力とされたのが、“2011年10月28日”

「…成程、厄介ナ事ニナリソウダナ」
「くそっ、よりによってそんな……だが、まだ麻夜ちゃんをどうするかとは繋がらない!
 どうしてそいつなんだよ!?」
「これはこれは、好奇心旺盛な少年だな…もうすぐ破滅すると言うのに
 まぁ、冥土の土産に教えて差し上げるのも良かろう…
 「イシュムカネー」、「イシュピヤコック」、例の物を」
「はっ」
「…………」

20代後半の男性――「イシュムカネー」と、妙齢の女性――「イシュピヤコック」が、
互いに手を取って力を込めると、アスファルトが割れて植物が伸び、
その植物に持ち上げられて、円形の石板が姿を現した

「ッ……「アステカ・カレンダー」か……!」
「私達は「太陽の暦石」と呼んでいるがね
 これこそが「マヤの予言」の本体であり、要でもある
 この「暦石」が持つ強大な力によって、予言に記された人類滅亡を現実のものと出来るのだが…」
「…エナジーガ感ジラレン……単体デハ何モ出来ナイト言ウ事カ?」
「ご明察。「暦石」の強大な力を発揮する為には契約者が…皮肉にも、これから滅ぼすことになっている人間が必要なのだよ
 それも、「暦石」の力に耐え得る強靭な身体と、巨大な器を持つ者に限られる
 その条件に当てはまった生贄……失礼、破滅の巫女が、この少女だったのだ
 しかし奇遇だな、『マヤ』というのかね、この少女は?」

「ククルカン」は麻夜の頬に触れようとしたが、彼女はそれを撥ね退けた

「触んないでよ、変態さん!!」
「…くくるくくく、威勢が良いな」
「ッテメェ…“神”を何だと思ってやがんだぁ!?」

麻夜を捕獲していた青年――「フラカン」が、怒りに任せて彼女を地面に投げつけた

「痛っ…!」
「やめろフラカン、この少女は「暦石」の器にするのだぞ?」
「うるせぇ! もう我慢ならねぇ、人間ってのはどいつもこいつも―――――――」
「お前は人間を何だと思ってんだ!!」

「フラカン」の言葉をそっくり返して飛び込んできたのは、右腕に黒い影を纏わせ、巨大な拳を作り上げた裂邪だった
黒い拳は「フラカン」の顔面に直撃し、大きく仰け反った
彼から放れ、麻夜は一瞬でも逃げようとしたが、今度は「イシュピヤコック」に捕まってしまった

「やっ、放してってば!!」
「………無理」
「おいお前ら、神だか何だか知らねぇけど、麻夜を置いて馬鹿な事止めてとっとと消えろ
 さもなきゃ………全員俺が滅ぼしてやる」

金色のパスを構え、怒気を込めて言い放つ裂邪
やれやれ、という風に肩を竦めて大袈裟に呆れる「ククルカン」に、
「イシュムカネー」が消えそうな声で提案した

「……僕が黙らせようか?」
「必要ない、目的は果たした……このまま我々は退却しよう」
「待てよククルカン……俺ァそのガキに用がある」

ようやく起きあがった「フラカン」が、怒りを露わにしながら前に出た
彼を中心に旋風が巻き起こり、それは徐々に強くなり、拡がってゆく

「どいつもこいつも神を侮辱しやがって……
 良いか人間、俺は“神”だぞ? 嵐の神「フラカン」様だぞ?
 テメェ等ゴミを創ってやったのは“神”である俺達だって分かってんのか!?」
「知るか! それで殺すんだったら結局意味ねぇじゃねぇか!
 それだったら最初から作んじゃねぇよバーカ!」
「ッ……今馬鹿にしやがったな? したよなぁ??………ぶっ殺す!!」

その間、一体何秒しか経ってなかったのだろうか
気がつけば裂邪は、先程自分が殴り飛ばした筈の「フラカン」に腹部を殴られていた

「かはっ………!?」

―――――――速い!?
そう思った束の間に蹴りを受け、今度は裂邪が吹き飛ばされた

「……ちぃっ、伊達に“神”は名乗ってねぇか……カキ氷より厄介かもな」
「おいおいどうした? もっと楽しませろや人間!!」
「ミナワ!理夢!ウィル!!」

《ドリーム》
《ファントム》
《バブル》
《レイヴァテイン》
《インフォーム!!》

何処からともなく、ミナワと理夢、そしてウィルが現れ、裂邪は黄金の鎌を携える
既に全員が戦闘態勢に入っていた

「いつでも行けますよ、ご主人様!」
「こいつぁ手応えありそうでい!」
「ん? 主、ナユタは呼ばねぇのか?」
「絶対呼んでやらねぇ! それより敵は一応『マヤ神話』の神だ、最初から本気で行くぞ!」

裂邪とミナワが理夢に飛び乗ると、シェイドが裂邪と理夢を包み込み、ウィルが理夢の翼となって背に羽ばたく
「レイヴァテイン」を巨槍に変え、風を切ってそれを構えた

「「「「「『シャドーズ・ウトガルド』!!」」」」」
「へっ……れ、裂兄ぃ……!?」
「ほぅ、あんなことも出来るのか?」
「楽しい奴だなぁ、だがそんなんじゃ俺の怒りは収まらねぇ!!」

「フラカン」は先程と同じように、目にも止まらぬスピードで拳をぶつけようとした
が、裂邪達はそれとほぼ同等の速さで躱してみせた

「何っ……俺の攻撃を避けただと!?」
「ヒハハハハハ! 所詮は追い風を受けた程度のスピード!
 シェイドで筋力を補助し、ウィルで加速力を上げた理夢の速さ、舐めんじゃねぇぞ!」

裂邪が黄金の槍で、ミナワが起爆するシャボン玉を付けた『バブロッド』で攻撃を仕掛ける
「フラカン」は持ち前の速さで難なく避けていくが、ウィルが飛ばした火炎弾幕をもろに受けた
しかし、それほどダメージは受けていないようだった

「「フラカン」ハ“風”、“嵐”、“炎”ヲ司ル神……炎ハ殆ド無力ト言ウ事カ」
「くぅ、面目ねぇ旦那ァ!」
「と言う事は、氷もダメですね……」
「俺様としちゃあ夢を見せてやりてぇが、あんだけ風を起こされちゃあな……」
「弱気になるな! 勝たなきゃならねぇんだよ、この戦い!
 あいつは………漢は、麻夜の帰りを待ってんだよ!!」
「ふらっふらららららららら!! 帰りだぁ? まだ取り返せると思ってんのかよ!?
 “神”を舐めんのも大概にしやがれ!!」

右腕に雷鳴轟く暗雲が宿り、それを差し出して一気に解き放つ
途方もない量の水流が途轍もない勢いで噴き出し、裂邪達を飲み込んだ

「知ってたかぁ? 俺は“神”を侮辱する人間共を1回洪水でぶっ殺してんだよ!
 愚かで間抜けな人間数億人をぶっ殺したこの俺にぃ! 弱小都市伝説ばっか連れ歩いた一契約者が勝てると本気で思ってんのかよぉ!?」

水が引いていくと、そこには融合状態が融けてしまった裂邪達が倒れていた
麻夜が駆け寄ろうとするが、「イシュピヤコック」が尚も彼女を離さない

「………弱小、だと?」

水を滴らせながら、裂邪はゆっくりと立ち上がり、
未だに闘志を漲らせた目を「フラカン」に向けた

「俺が弱いのは分かるよ、俺が貶されんのなら良いよ
 だがこいつらを馬鹿にする奴は、例え神だろうと俺が許さん!
 こいつらは、俺と一緒に今まで色んな敵と戦ってくれた優秀な仲間―――いや!家族だ!
 お前みたいに弱い人間を殺すだけの、脆弱な野良都市伝説みてぇな奴とは訳が違う!!」
「……あぁ?」

再び、重い拳が裂邪の腹に刺さる
込み上げた酸い液体を堪えたが、堪え切れずにそのまま戻してしまった

「立場分かってんのかテメェ? やられてんのはテメェの方なんだけどなぁ?
 テメェみてぇなバカがいるから俺達が働かなきゃなんねぇんだ、そこんとこ分かってんだろうなぁ!?」

「ケホッ………一々殺さなきゃ解決できないようなら、最初からやるんじゃねぇ、っつうの」
「っテメ―――――――」
「もうやめてよ、裂兄ぃ!! それ以上やったら、本当に死んじゃう………!
 私の事は、もう良いから……にぃにぃに、「ごめんね」って、伝えて――――――――」
「ふざけんなぁ!!!」

びくんっ、と麻夜の小さな身体が僅かに跳び上がる
裂邪は口の中の唾液を吐き捨て、口を拭ってそのまま続けた

「何でお前が謝らなきゃなんねぇんだよ……お前が一体何したんだよ!
 どっかの偶像にふざけた理由で狙われて、付き人がしっかりしてねぇから捕まって……お前はただの被害者だろうが!
 謝るべきなのは………俺の方だろうが……」
「ぅ……れ……裂、兄ぃ………」
「絶対に取り戻す。絶対にプレゼント買ってやる。絶対に、漢に会わせて、誕生日を祝う!」
「……ふらっふららららららららららららら!!!
 バァッカじゃねぇの!? ガキ同士の約束の為に“神”に挑んで命を捨てるってのか!?
 んなバカ初めて見たぜ……ふらっふらららららららららら!!」
「命をゴミとしか思わねぇ神なんざぁ、俺は神とは認めねぇ!
 そんな神、こっちから願い下げだ!!
 お前ら邪神が、この世界をぶっ壊すってんなら……俺は喜んでお前ら神々に対して宣戦布告をしてやる!!」

その瞬間だった
シェイドが黒い影に、ウィルは赤い炎に、「レイヴァテイン」は黄金の水に、
そしてミナワと理夢の身体が、それぞれ青く細かい泡と白く濁った煙となり、
裂邪を中心にして、五色の雷光を走らせながら渦を巻き始めた

「あぁ……? 何が始まるってんだ?」
「『夢』……『幻』……『泡』……『影』……そして『滅』………
 5つの“無”を司る都市伝説を、俺の中に注ぎ込む……!
 崩壊せし者達よ、【黄昏(ラグナロク)】に集え!!!」

白、赤、青、黒、金
五色の渦が裂邪を覆い尽くし、禍々しい球体を作り出す
それは暫くうねりながらやがて白、赤、青、黒の4色となり、4対の翼となって拡がった
翼の中から現れたのは、黄金の鎧の戦士
四色の翼を織りなしたその姿は、神と見紛う美しさを放っていた

【『崩壊せし者達の黄昏(コラプサーズ・ラグナロク)』………俺達、君臨!!】


   ...To be Continued

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