「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 我が願いに踊れ贄共・頭のあったかい子-05

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 ゆっくりと、夕日が沈んでいく
 夕暮れ時、黄昏時
 都市伝説の、時間

「…むぅ」

 そんな、時間帯
 一人、とぼとぼと歩いている少女の姿があった
 少女、ニーナは小さくため息をつく

「…本当、私は未熟デス。クールトーを逃がしてしまうだなんて…」

 一ヶ月以上も前の出来事
 それを、未だに彼女は引きずっていた

 クールトー
 悪魔的な存在と遭遇しながら、無様に踏みつけられて意識を失い、逃げられた
 …あれが、もし、人を害していたら
 それは、逃がしてしまった自分の責任ではないか

「………我らが主よ、どうか、私を罰してください………」

 自分を罰する方法を、考え続けた
 しかし、考えはまとまらず…………ただ、自己嫌悪だけを重ねていく

 遭遇した、凶悪な悪魔……都市伝説には、全て天罰を与えてきた
 しかし、それでも…クールトーを逃がしてしまったという責任は、彼女の小さな体に重くのしかかる

「…司祭様…」

 そっと、胸元で揺れる木で出来た十字架……「ドッグウッド伝説」に触れる
 悪魔を滅する為に、契約した都市伝説
 司祭様から、与えられた力
 この力を持ちながらも……自分は、こんなにも、無様

 以前、倒せなかったドラゴンもそうだ
 たくさん、戦い方を学び、強くなったつもりだったけれど
 自分はまだまだ、こんなにも、力が足りないのだ

「…こんな時………カイン司祭なら、どうしたのでしょう…」

 自分の上司よりは、位が下の、とある司祭の事を思い出すニーナ
 彼女に、都市伝説の力の使い方を教えてくれた青年
 戦闘向きではない都市伝説と契約していたが、しかし、ニーナに戦い方をも教えてくれた青年だ
 生真面目なあの青年だったならば、自分と同じような状況に陥った時、どうするのだろうか?
 ……いや、きっと、彼ならば、このような状況にはなるまい

 ますます、憂鬱な気分になって、とぼとぼと歩き続けるニーナ
 …くぅきゅるる
 お腹が小さく鳴る
 相変わらず、空腹である

「……主よ、どうか、もっと、罰をお与えください……」

 こんな、空腹よりも
 もっと、もっと、重い罰を
 私は、それに耐え、悪魔を滅し続けますから
 祈るように考えながら、ニーナは空き地に張ったテントへと、戻っていった

 …今日も、また
 目標とする淫魔が見つからなかった事に、落ち込みながら






 遠き、異国の地
 とある、修道院にて
 その軒先を、一人の青年が掃除していた
 この国の男性にしてはやや背が低いが、整った容姿をしており、バランスの良い体格をしている

 青年が、掃除を終えたところで……一羽の小鳥が、その肩に舞い降りてきた
 ちちち、と、囁きかけるように、青年の耳元で小さく鳴く
 青年は、その小鳥を追い払う事なく、その囁きに小さく笑みを浮かべて耳を傾けていた
 暖かな日差しの下、その様子はどこか微笑ましい光景だった

 ……しかし
 そこに、訪問者が近づいていく
 その気配を察したように、小鳥は飛び去ってしまった

「あ………」

 飛び去る小鳥を、どこか寂しそうに見送る青年
 …小鳥が完全に見えなくなったところで、訪問者がやってきた事に気付いた

「エイブラハム司祭…?何か、ご用ですか?」
「カイン司祭。お忙しいであうところ、申し訳ない」

 青年…カインの元に訪れた男性…エイブラハムは、人の良い笑みを浮かべて、帽子を取った
 白銀の髪が、日の光を浴びてきらきらと輝く

「ニーナの事を覚えているかね?」
「…?はい、覚えていますが。お………私が、彼女に都市伝説の扱い方や戦い方を教えていたのは、つい半年前までの事ですから」

 彼女が何か?とカインは首をかしげた
 実際の戦いの場に出た事がない自分が、ニーナに教えられる事は、そう多くなかった
 戦い方とて、基礎を教え込んだだけだ
 ニーナと共に居た時間は、そう多くない
 そんな自分に、エイブラハム司祭は何の用でやってきたのだろう?
 人ではない存在との戦い方について自身に教えを説いてきた司祭相手に、カインは疑問に思う

「ニーナは、今、日本にいるのだよ」
「……日本に?」
「学校町、と言う街だ。本当ならば、日本にいる「教会」のメンバーと合流させるべきだったのだが……手違いがあってね。彼女は、今、一人なのだよ」
「……!?彼女は、まだ子供だぞ!まさか、一人で行かせたのか……………ぁ」

 驚きのあまり、素の話し方に戻ってしまったカイン
 エイブラハムは、小さく苦笑した

「周りに信者達がいる訳でもない。無理に言葉を丁寧にしなくとも良い」
「……ですが」
「まぁ、その生真面目さが君の良いところなのだがね」

 話を戻そう、と表情を引きしめるエイブラハム
 …カインも、表情を引き締める

「…とにかく。今、ニーナは一人で、その学校街と言う街にいるのですね?」
「あぁ、そうだ……誰か派遣しようかとも思ったのだが、うまく人材が見つからなくてね………そこで、君に頼みたいのだよ。「教会」の一員である事を隠して、学校街に入り込み、ニーナの傍にいてやって欲しい」
「……「教会」の一員である事を隠して?何故ですか?」
「事情があってね……あの街は、本来、我ら「教会」にとって不可侵の地なのだよ……それでもなお、やらねばならぬ神の使命が、ニーナには、ある。その手伝いをしてやって欲しい」
「……私にできる事でしたら、協力します。すぐに、日本に向かう準備を整えます」

 背筋を伸ばし、答えるカイン
 詳しい事情はわからない
 だが、遠い異国の地で、あの小さな少女は心細い事だろう
 自分が心の支え二なってやれるのならば、傍にいってやりたい

「あぁ…………頼みましたよ、カイン司祭」

 カインの答えに、笑みを浮かべるエイブラハム
 その笑みの奥にあるものに、カインは気付かない

 それでは、と一礼して、立ち去っていくエイブラハム
 カインは、その背中を見えなくなるまで見送った

 ……ちちちっ、と
 小鳥が、カインの元に戻ってきた
 その肩に改めて泊まり、首をかしげる

「……大丈夫だ。問題ない」

 カインは小さく微笑むと、その小鳥をそっと撫でて…教会の中へと、入っていった


 己に待ち受ける運命に
 気付く様子など、カケラも、なく






to be … ?





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