「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 仲介者と追撃者と堕天使と-08

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
 とにかく、昔から体が弱かった
 幼い頃の記憶は、常に病室だった気がする
 確か、あの頃の担当医師が、20歳まで生きられないかもしれないとか言っていたようないなかったような
 ……まぁ、こうして20歳を超えても生きて居られる訳だが、それは都市伝説と契約したお陰であり、そうでなければ、確かに20歳まで生きられなかったかもしれない
 それほどまでに、体が弱かった
 長い入院生活
 自然と、一人でいる事が多かった
 家族はなるべく傍にいてくれるようにしてくれていたが、それでも限界がある
 寂しいと思ってはいけないと、そう考えていた
 結果として、自分は空想の世界を見つめることにしていた
 本を読み、それらの世界へと空想を広げる
 その流れから魔術的な物に興味を示し、魔術書(グリモワール)などと呼ばれるようなものへと興味をどんどん広げていった
 そんな自分に、両親は魔術書の類も買い与えてくれた
 難しい字が多かったが、それでも読みたくて覚えて読んで行った
 レメトゲンを始めとし、宗教書物の類も、魔術書として見られるようなものにも手を伸ばしてどんどん、どんどん読んでいった

 …そんな自分が、この都市伝説と契約したのは、自然な流れだったのだろうか?



「玄宗君?もう消灯時間ですよ?」
「うん?……あぁ、もうそんな時間だったのか」

 看護婦に声をかけられ、その少年は本から顔をあげた
 ふと、窓の外に視線をやれば、暗い闇の中に星と街の灯りが輝いている
 思わずそれに見とれていたら、看護婦にカーテンを締められてしまった

「明日も検査があるんですから、夜更かしは駄目よ?」
「…心得ている」

 ぱたん、と本を閉じて、少年はベッドにもぐりこんだ
 看護婦はほっとして…部屋の灯かりを消し、病室から立ち去っていく
 コツ、コツ、コツ…と言う足音が遠ざかっていくのが無性に寂しいのだが、ここで愚図って看護婦を困らせるのも嫌だった
 この病棟の看護婦長は、何かと性格が悪い
 あの新人看護婦が、彼女にいびられるかもしれない原因を作るのは気が引ける
 まったく、あの看護婦長の性格の悪さはどうにかならないものか
 ため息をつきつつ、暗い中では本も読めないし、寝てしまおうと少年は目を閉じた
 先ほどまで読んでいた「光輝の書」を、そっと抱きしめたまま…静かに、眠りに付こうとして

 こつ、こつ、こつ

 聞こえてきた足音
 見回りの看護婦だろう
 そう考え、少年は意識を眠りに落とそうとする

 こつ、こつ、こつ

 足音は、少年の病室に近づいてきて
 こつ、こつ、こつ、こつ…
 ………

「……?」

 …足音が
 少年の病室の前で、止まった
 音を立てないように、扉が開く

 …ちゃんと寝ているかどうか、確認しに来たのか?

 疑問に思い、同時に不気味さすら感じて
 少年は、目を閉じたまま体を縮みこませた

 …その時


『逃げなさい、少年』


「……っ!?」

 頭の中に、響いた声
 自分は、とうとう幻聴を聞くようになったか?

『逃げて、危ないわ』
『危険な都市伝説が近づいている。少年よ、逃げなさい』

 …都市伝説?
 そう言ったものが存在している事は、知っているが
 ……あぁ、つまり
 今、自分に近づいてきている足音の主は、病院に関係したなんらかの都市伝説か
 しかも、危険な

 少年は、諦めたようにため息をついた
 そして、声に出すのも面倒で…きっと、通じるだろうと勝手に考えて、心の中で返事する

(…危険ならば、逃げたいのだがね。生憎、僕の身体能力では逃げ切れないだろうし、この病室のベッドの位置的に、逃げるのは不可能だろうよ)

 こつ、こつ、こつ
 足音は近づき続けている
 もう、大分接近されてしまっているのだ
 …逃げるなど、不可能

『でも、このままじゃ殺されちゃうわ』
『死が怖くないのか?少年』
(…怖いさ。だが、人間諦めが肝心だからな)

 どうせ、20歳まで生きられないと言われている
 ちょっと、死ぬのが早くなるだけだ
 そう考えて、少年はさっさと自分の命を諦めていた

 …そんな少年に対して
 語りかけてくる複数の声は、困惑しているようだった

『…困った少年だ』
『でも、ダメよ。見殺しになんてできない』
『少年、生きたいと、思わないのか?』
(どうせ、20歳になる前に死ぬといわれている身でね。生きれるものなら生きたいが、難しいようだから)

 こつ、こつ、こつ、こつ、こつ……

 あと数歩で、足音は少年に到達する
 命が終わるまで、きっとあともう少し


 ……声が
 少年に、語りかけ続ける


『…では、少年。我々と契約しないか?』
(…契約?)
『そうだ。さすれば、我々は、少年を救うことができる。その寿命、伸ばす事もできようぞ』
『……ただ、少年は本当に体が弱いようだ。我々の力を使役する際、反動もあるかもしれんが…』
『でも!生きられるわ!!』

 ……生きられる?
 死なずにすむのか?
 ふむ、と少年は冷静に考えた
 人間諦めが肝心とは言え、まだ若い身である
 死にたくはない
 生き延びる手段があるのなら、それが悪魔との契約であろうともすがりたい
 それが、少年の本音だった

(……いいだろう。僕が死なずにすむのなら、君達が悪魔だろうとも契約する)
『我々は悪魔にあらず………まぁ、良い………契約は、成立だ』

 瞬間、少年は理解する
 自分が、何と契約したのか
 その力の使い方を、理解した
 腕の中の本を広げ、念じる

「……アフ、ヘマハ、マシト!!」

 叫び、本に記された存在の名前を呼んだ
 少年に近づいていた足音が、びくりと止まって

 その存在と、少年の間に…三人の、黒い翼を生やした男の天使が姿を現した

「焼き払え!」

 己が呼び出した三人に……破壊の天使達に、指示を出す
 天使達は指示に従い、各々の武器で、少年を害しようとしていた存在に攻撃を開始する!

「…「入院中不審死した患者の体から、内臓が抜き取られている」か」
「我ら、汝を邪悪と認識す!」
「地獄の業火に焼き尽くされよ!!」
「ぎゃ………!?」

 悲鳴すら、あげることを許されず その存在は、焼き尽くされた
 …ほっと、息を吐く少年
 安心した瞬間、ずしり、激しい疲労を覚える

「…大丈夫ですか?我等が主(マスター)」

 そっと、額に冷たい手が当てられた
 見ると、眼鏡をかけた青年の姿をした天使が、心配そうに少年を見つめている

「…ザフキエルか……問題、ないと思う。この疲労が君達を扱う代償か」
「その通りです…強引な契約になってしまった事を、お許しください」
「構わない、僕が死なずにすむのなら」

 ぽふん、と
 少年は、ベッドに倒れこんだ
 …疲労のせいで、眠い

「…すまないが、自己紹介などは、また後日、頼んで良いか?」
「心得ました、我等が主。ごゆっくりお休みください」

 ……っふ、と姿を消す天使たち
 それらが、自分が持っている本に戻ったのだと、少年は理解する

「……やれやれ」

 契約してしまったか、か
 さて、生き延びる事ができたのはいいが…これから、どうしようか

「…まぁ、いい、か…20歳以上まで、生きられるかもしれないんだし、な」

 諦めていたよりも、長生きできるのなら、考える時間はたっぷりある
 そう考えて…少年は、満足感を伴う疲労を感じながら、目を閉じ、眠りに付いた



 これが、少年にとって長い付き合いとなる都市伝説、「光輝の書」により召還できる天使達との、ファーストコンタクトだったのだった




終わる




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー