「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 仲介者と追撃者と堕天使と-07

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 人間は、皆、醜い生き物である
 彼はそう信じていた
 どんなに着飾ろうとも、外面を取り繕うとも
 その心は醜い
 人間は総じて全て悪であり、ちょっと心を揺さぶってやれば、あっと言う間に化けの皮を剥がす
 自分の仕事は、そんな人間の悪意を引き出し、地獄へと落とす事


 ……そう、ずっと信じていたのだ


「ひ……ぃ……っ」

 ひゅぅ、と喉から空気が漏れ出す
 ガタガタと、みっともなく体が震える

 彼はただただ、恐怖していた
 不幸にも、彼は最後まで意識を保っていてしまっていて…先に気絶してしまった仲間達が、羨ましくて仕方ない
 オレオレ詐欺で荒稼ぎをしていた彼らのこの事務所に、それは突然やってきた

『よぉ、悪党共』

 変わった色の髪の男は、そう言って笑って
 彼らの目の前で、突然姿を変えた
 青紫色の髪。顔の上半分を覆う仮面。
 …真黒な翼
 それは、まるで悪魔か、堕天使のようで

「どうした?」

 くつくつと、堕天使が笑う
 彼らを見下ろし、楽しげに、楽しげに
 ばさばさと黒い翼をはばたかせ、笑っている

 事務所の中はめちゃくちゃだ
 パソコンやデスクは破壊され、黒い羽があたり一面に散乱している
 そんな中、死人一人、怪我人一人出てはいないが

 -----いっそ、殺してくれ

 彼は、そう考えた

 突然やってきた堕天使は、彼らに映像を見せてきた
 それは、彼らの犯罪により苦しむ人々の様子と
 それと入れ替わり立ち代り、見せられる地獄の光景
 地獄に落ちた悪人共が、苦しめられて苦しめられて
 何度も死んでは蘇らされ、また頃されを繰り返す光景
 それは、まるで彼らが死後、たどる運命を見せられているようで

「どうした?まだ、序盤だぞ」

 再び、彼の脳裏に浮かぶ映像
 おぞましい地獄の光景に彼は悲鳴を上げた
 そんな彼の様子に、堕天使はますます笑うのだ

「どうしたどうした!?この程度か、悪党が」

 けらけらけらけらけらけら
 仮面の下で、堕天使はおかしそうにおかしそうに笑う
 悪意が、真っ直ぐに突きつけられる

「前に会った悪党はもっと持ちこたえたぞ?この程度で壊れる悪党じゃなかったぞ?」

 そんな事、知るか
 頼む、早く解放してくれ

「俺は、親切でお前達にこの映像をみせてやっているんだぞ?」

 ……嘘だ

「嘘じゃない。お前達が落ちる予定の地獄だ。先に教えてやっているんじゃないか」

 嘘だ、嘘だっ!!

「悪い事をしたら地獄に落ちる、悪党は地獄に落ちる。わかりきってる事だろう?わかっていて、悪事を働いたんだ。地獄に落ちる覚悟はできてるんだろぉ?
 …………っは!!その覚悟もなしに悪事を働いたのか?」

 けらけらけらけらけらけら
 笑う笑う堕天使
 つぅ、と彼の顔を覗き込んできた

「……ならば、恐怖するがいい!!死後受けるその報い、今、ここで全て体感するがいい!!悪意に堕落した愚かな人間共め!!!」

 ----映像が、よりリアルになっていく
 映像の中で受ける拷問を、自らが受けているような錯覚
 発狂寸前の意識の中、彼はただただ絶叫した

 けらけらけらけらけらけらけら
 堕天使の笑いはいつまで立っても耳から離れない…………---------







「マステマ、おそーい」
「御免!ケーキ奢ってやるから、許してくれよ」

 待ち合わせ場所でむくれていた恋人に、平謝りするマステマ
 …ま、いいけど、と恋人はくすりと笑った
 どうやら、許してくれるらしい
 マステマは、ほっと息を吐く

「何かあったんでしょ?なら、いいわよ」

 恋人の心の広さに感謝する
 二人が並んで歩き出そうとした時…待ち合わせ場所の傍の電光掲示板に、臨時ニュースが流れる
 最近、被害を多発させていたオレオレ詐欺グループが自首してきた、というニュースだった
 なにやら意味不明な発言が多いらしいが、どうやら犯人で間違いないらしい

 そのニュースを見あげ、彼女が満足げに笑っている
 あぁ、良かった
 彼女は、オレオレ詐欺のニュースを見て憤慨していた
 そんな酷い事をする人達を許せない、と
 …都市伝説絡みだったならば、彼女が成敗してもいいのだろうが、そうでなかったのだから、仕方ない
 自分の仕事だ、とマステマは考える

 ……本来のマステマの仕事とは、それは違う
 本来のマステマの仕事は、あんな「悪党」を増やす事だ
 マステマは、人間の本質は悪であるとし、神より悪霊の一部の指揮権を預かり、人間を堕落させる存在だ
 あぁやって、悪党を成敗する立場ではない

 ……だが
 彼女と出会ってから、マステマは変わっていた
 少々変わり者だが、しかし、そこまでも真っ直ぐな、この女性と出会ってから
 この女性と恋に落ちてから、彼は変わっていた

 人間の本質は、悪だ
 ずっと、そう信じていた
 しかし、彼女はそうではなかった
 彼女の魂の本質は、どこまで真っ白で純粋で
 そんな彼女の魂を護りたい、と、マステマはそう考えるようになっていた

 だから、彼女の心を曇らせる悪党が許せない
 そんな連中を成敗することが、いつからか快感になっていて

「…ん~?どうしたの、マステマ。ニヤニヤして」
「いや、別に」

 …まったく
 都市伝説の本質すら、変えてくるなんて
 罪深い女だな、と
 己の恋人を見つめ、マステマは惚気るようにそう考えたのだった




おわれ






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