「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 首塚-13

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 …街中で、ポスターを貼っているあいつの姿を見かけた
 正直、顔色はあまりよくない
 相変わらず、あまり休んでいないのだろう

「よぅ」
「あ…あなたですか。最近、よく会いますね」

 小さく、会釈してきた黒服
 ぷるんっ、とのその拍子に胸が揺れて
 ……だから、そこを見つめてばっかりじゃ駄目だろ俺ぇえええええ!!!

「明日で、元に戻るんだったか?」
「はい。明日には、毒ガスの効果が抜け切るはずですから」

 …あぁ、やっぱり勿体ねぇよなぁ…
 ……って、だからそうじゃなくて!!

「ご用件は、それを聞きにきただけですか?」
「いや、そうじゃねぇよ…」

 手を差し出してやる
 首を傾げてきた黒服に、続ける

「貸せよ、そのポスター。貼っていかないと駄目だんだろ?」
「……いえ。これは、私が頼まれた仕事ですから」

 …頼まれた?
 こんな疲労困憊のこいつに、頼み事をしたと言うのか
 どこのどいつだ、そのやろうは!?
 この黒服は、頼み事を断るのが苦手だと言うのに!
 ムカムカしたものを抱えつつ、俺は手を引っ込めない

「お前一人でその量は大変だろ?半分くらい、俺が張ってきてやるから」

 全部、と言ったら、こいつはきっとやらせてくれない
 さっき言ったとおり、自分が頼まれたから、といって引かないだろう
 …だから、半分だけ
 せめて、これだけは請け負いたい

「……それでは、お言葉に甘えましょうか」

 苦笑して、ポスターを半分ほど、俺に手渡してきた黒服
 それと、メモを渡された
 …何か、文字がぐっちゃぐちゃになってて読めない部分が大半なんだが…

「このメモの…ここから、下の部分。大体の住所しかわかりませんが、この辺りに張ってきてください」
「わかった。つか、メモ、俺に渡して、場所わからなくならないか?」
「メモの内容は暗記していますから、問題ありません」

 記憶力も良くないと、黒服の仕事はやっていけないものなのだろう
 こともなげに、こいつはそう言って見せた
 …そうか、と頷く

「……なぁ」
「はい?」
「『夢の国』に対して、そっちの「組織」は、どう言う動きを?」

 俺の、言葉に…黒服は、やや、悲しそうな表情を浮かべた
 こいつにとって、あまりいい内容ではなさそうだ

「…取り込まれた子供の身も、契約者の身も考えずに…相手の戦力を削る作戦が、つい先日、決行されたそうです…」
「………っ!」

 …それは、つまり
 「夢の国」に取り込まれている子供や、契約者が…一部、犠牲になったということか
 なんと言う、非道な作戦
 将門様が知ったら、激怒するだろう
 …そして
 こいつは、その事実に悲しんでいる
 その作戦を、止められなかった己の無力さを…悔やんでいる

 あんな組織、さっさと抜けてしまえばいいのに
 こいつは、どこまでも、自分は「組織」の歯車であると言って、縛られ続けている
 …あんな組織、こいつには似合わないのに
 こいつは、それから離れることができない

「…胸糞悪ぃな」
「……同感です」

 苦笑してくる黒服
 力なく、首を振ってくる

「これが…組織、ですから」
「……………」

 …こいつは
 組織に不満を持ちながらも
 しかし、自分は組織の歯車だからと……組織から離れたら、生きられないと、そう考えて
 組織から、離れることができないまま

 俺は、こいつを組織から解放させてやりたいのに
 ……未だに、それができないままだ

「…しかし。これ以上、そんな事をさせる訳にはいきません…一人でも多く、「夢の国」の黒いパレードに取り込まれてしまっている子供たちを、救う事ができればいいのですが…」
「……無理、すんなよ?考えがあるなら、俺にも協力させてくれよ?」

 今回の件について、ある程度「組織」と協力体制をとってもいいと、将門様から言われている
 特に、この黒服に協力するのなら、文句は在るまい
 こいつは、俺たちにも、この危機を教えてくれたのだから

 俺の言葉に、黒服はどこか自嘲気味に、笑ってきた

「…そう、ですね。その時が来たら…ご協力、願うかもしれません」

 きっと、こいつは
 己の無力さを嘆いているのだろう
 自分には、戦う力がないと、嘆いているのだろう

 どうか、嘆かないでくれ
 あんたには、戦う力はないかもしれないけれど


 …俺は、そんなあんたに、救われたんだ


「…それでは、これで。……お願い、しますね」
「あぁ。任せろ」

 黒服は、俺に小さく頭を下げてきて
 そして、少しふらつきながら、この場を後にする

 …くぉら、周りの男共
 あの胸に見とれてんじゃねぇ!!
 いや、俺だって、うっかり胸に注目しちまったけど!!
 後半、わりと頑張って見てなかったんだぞ、こら
 あれに触りたい誘惑は、最後の最後まで堪えたんだ!!
 だから見るんじゃねぇえええ!!!!!!

 黒服の胸に見とれてやがった野郎共を、威嚇してから
 俺は、ポスターを張りに行こうと歩き出し…

「………げ」
「………」

 …小さな、餓鬼が
 こっちを見ている事に、気付いた
 以前、顔をあせた事がある、少女

「…また会ったな」
「…………」

 向こうは、ぷい、とそっぽを向いてきた
 なんだ、俺とは会話もしたくないってか?
 どうやら、黒服が、今、気にかけているらしい少女
 多分、契約者で……あまり、恵まれた環境にいるのでは、ないのだろう
 だから、あいつが気にかけている

 …そして
 多分、以前会った時の態度から、するに
 こいつも、あの黒服の事を、少しは気にかけている

 ……それなら
 この話を持ちかける価値は、あるかもしれない

「……お前、あいつのこと、心配か?」
「え?」
「それと……お前は、「組織」の一員か?」

 俺の、その質問に
 こいつは、前半には答えてこず、後の方にだけ答えてきた

「…あんな組織、できれば関わりあいたくもないわよ」
「………そうか」

 良かった
 こいつは、組織の一員ではないのか
 それなら…話しても、いいだろう

「…あの黒服が心配なら、ちょっとついて来い。話がある」
「……?どういう事よ」
「いいから」

 そう言って、俺はさっさと歩き出す
 少し迷ったようだったが…そいつは、俺の後をついてきた
 やっぱり、あいつの事が心配だったようだ
 なら……俺と、同じだ
 ひとまずは、このポスターをある程度貼っていかないと
 安心して話せる場所を探しながら、俺はポスターを張って回る事にした

 …そして
 結局行き着いたのは、カラオケ店
 態度の悪い店員が一人きりで、管理なんぞおろそかな店
 多少、客の組み合わせがおかしくとも、店員は何も言ってこない
 だから、俺たち「首塚」組織の面子で、たまに会議とかに使っている店だ
 入っても、歌う訳じゃなく、相談しあったり、近況を話し合ったりするのによく使っているのだ
 適当な部屋を取って入り…話を切り出す

「…ぶっちゃけて言う。俺は、あの黒服を組織から解放したい」
「……解放?」
「あぁ」

 そうだ
 解放してやりたいのだ
 あの黒服は、あの組織に相応しくない
 …いや、違う、逆だ
 あの組織が、あの黒服に相応しくないのだ
 あいつは優しいから、慈悲深いから
 …あんな非道な組織、あいつに相応しくない
 それに…

「解放はできなくとも……もし、万が一。あいつが組織に消されそうになった時、助けたいと思っている……あいつは、組織に消されかねない行動もとっている。お前も、それはわかってるだろ?」
「…………」

 少女は、俺の言葉に俯いてきた
 多分、わかっているのだろう
 あいつが、そんな行動も取っている事に
 かなりの数の都市伝説や契約者を見逃し、時には庇っている事を

「…方法が、あるというの?そんな時、黒服を助ける方法が」
「ある」

 きっぱりと、俺は答える
 …やっと、一つ見つけたのだ
 その、方法を

「あいつは、「組織」の黒服だ。「組織」に不要だと判断されたら、その時点で消えかねない。ここまでは、わかるな?」
「………」
「そうなっちまうのは、あいつが「組織」の黒服だから…「組織」と言う都市伝説の、一部だからだ」

 「組織」
 それは、都市伝説
 そして、黒服は都市伝説の、一部

「つまり、あいつも「都市伝説」である事に、変わりはない。どれだけ、人の心を残していても、あいつは「都市伝説」なんだよ」
「…何が言いたいの?」
「つまりだ……あいつだって、都市伝説なんだから。人間と、契約できるはずなんだよ」

 ぴくり
 こちらの言葉に、少女は反応した
 はっとしたように、顔をあげる

「ぶっちゃけ、「組織」の実態自体は、構成員すら知らないって言われているらしいな。「組織」の首領が、「組織」と言う都市伝説と契約しているのか、そもそも、バカデカイ野良都市伝説なのか、その辺りは、よくわからねぇが……少なくとも、黒服たち事態、都市伝説なんだ。契約は可能なはずだ」
「…つまり…黒服と、契約すれば……黒服が、「組織」に不要だと、判断されても……消滅しないかも、しれない。そう言う事?」

 お、頭の回転の早いお子様だ
 そうなれば、話は早い

「そうだ、だから…俺は、あいつと契約したいと思っている」
「…………」

 こちらの言葉に、むっとしてくる少女
 だが、無視して俺は続ける

「だから、お前も協力しろ」
「…なんで、私があんたなんかが、あの黒服と契約する手伝いを…」
「お前も、あいつと契約してくれ」

 ………
 ……………

「え?」

 俺の言葉に
 少女は、きょとん、としてくる

「…私、も?」
「あぁ…ぶっちゃけ、俺一人があいつと契約しようとしたら、絶対、あいつに反対される…属性が違いすぎる多重契約は危険だ、って言われてな」

 そうだ
 きっと、あいつは反対してくる
 多重契約して、都市伝説に飲み込まれやすくなる事を心配して
 絶対に、反対してくるに決まっている
 …だから

「多分、お前が一人で、あいつと契約するといっても、それは同じ結果になる。反対してくるはずだ…だが、俺とお前。二人であいつと契約するなら、問題ないはずだ」
「………ストップ」

 何だよ
 調子よく話しているのに

「…一つの都市伝説が、多人数と契約なんて、できるの?」
「半分、裏技みたいなもんだがな。可能だぜ」

 それは、確かである
 はるか昔、復讐のために、2,3人の男が将門様と契約した事があったらしい
 一人だったら、将門様の強大すぎる力に、あっと言う間に飲み込まれる
 だが、それを複数で分担して背負えば…ある程度は、耐えられたらしい
 そうやって、その男たちは将門様の力を借りて、復讐した

「ほぼ同時に契約を結べば、それは可能だ。そして、それなら…多重契約でも、都市伝説に飲み込まれるリスクは下がる」

 それなら
 あいつは、承諾してくれるかもしれない
 俺は、それに賭けたいのだ

「俺一人が申し出ても無理だ。でも、お前も一緒に申し出れば、あいつは承諾してくれるかもしれない」
「………」
「今すぐ、返事をしろとは言わねぇ。俺の携帯の番号教えとくから、答えが決まったら返事しろ」

 そう言って、紙に俺の携帯の番号を書いて手渡す
 …悩んでいたようだったが、こいつはそれを受け取った

「…あ、それと。抜け駆けすんなよ!?俺は、あいつと契約して、あいつの力になりたいんだ。他の奴を割り込ませるなよ!?」
「……わかってるわよ」

 やや不機嫌そうに、少女はそう言って来た


 今日は、ここで別れる
 返事は出来るだけ早く、とだけ言っておいた

 …そうだ
 これが、俺が見つけた答え
 あの黒服を、助ける方法

 これしか、見つけられなかった
 そして、この唯一の方法は…俺一人では、実行できない

 だから、必要だったのだ
 俺のように、あの黒服を心配しているであろう…気にかけているであろう、奴が

 俺にとって、あの黒服は父親のようなものだ
 あの少女にとって、あの黒服がどんな存在かは、わからないが…気にかけているのは、心配しているのは、きっと事実
 だから、その唯一をあいつにも話した

 あいつが話に乗ってくれれば、俺は黒服を助けられる
 乗ってこなかったら…
 その時は、他に話に乗ってくれそうな奴を見つけ出すか
 これが唯一であると諦めず…他の方法を探すかだ

「…絶対に、あいつを……俺たちのものに、してやる」

 二人がかりで説得すれば、きっと大丈夫だ
 絶対に、諦めない
 あいつから預かったポスターを抱えながら
 俺は、その決意をしっかりと抱えるのだった



 to be …?







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