「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

単発 - 繰り糸の先に在る者は誰

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kemono

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繰り糸の先に在る者は誰


「針金 暁仁だな」
「そうですけど。おねえさんは誰ですか。」
「「組織」の黒服だ。貴様の討伐命令が出ている。死を受け入れろ」
「あ。「組織」。聞いたことありますよ。でも。いきなりなんですか。死とか。物騒だなあ。」

 針金 暁仁(はりがね あきひと)。「ハリガネムシは宿主を操る」の契約者。
 ハリガネムシを生み出し、人に寄生させることで、その人物を意のままに操る能力。
 悪意次第であらゆる事態を引き起こせることは想像に難くない。

「「組織」は貴様の都市伝説を野放しにしておくのは危険と判断した」
「ああ。なるほど。それじゃあボクを。「組織」に入れてくださいよ。きっと。役に立ちますよ。」
「獅子身中の虫を飼うほど愚かではない。そうやって貴様の眷属を増やすつもりだろう」
「わ。信用ないなあ。そんなことしませんよ。ボク。頑張りますから。お願いです。」
「動くな」

 黒服は自らの能力、かまいたちを青年の腕に向けて放った。
 不可視の刃による衝撃によろめく青年。
 その腕から血は流れていないが、筋繊維を切断された腕はだらりと垂れ下がり、ぴくりとも動かない。

「う。わあ。すっごく痛い。なんてことを。死んだらどうするんですか。」
「動かなければ楽に殺してやる。大人しくしろ」
「死ぬのはいやだなあ。じゃあ。わるあがきだ。殺される前に。おねえさんを操ってあげますよ。」

 真っ直ぐに迫る青年に向け、黒服は再度かまいたちを放つ。
 真空の刃が迫る気配を感じ、青年はサイドステップで躱す。
 が、同時に飛ばされていた二つ目の刃に正面からぶち当たった。
 服の下で胸がぱっくりと裂け、その場に膝をつく青年。

「あ。れ。これは。やばいか。も。ねえ。おねえさん。ちょっと手を。貸してもらえないか。な。」
「喋るな。不愉快だ」

 かまいたちが青年の咽を切り裂き、青年はうつ伏せに倒れて動かなくなった。

 死亡確認のために、かまいたちを一つ飛ばす。
 それは青年の体を大きく切り裂いたが、生きている人間の反応はない。
 討伐完了報告を入れようと電話を手にしたとき、背後にアスファルトを踏みしめる音。
 慌てて振り返ると、驚愕の表情を浮かべた少年が突っ立っていた。

「ちょうどよかった、手伝ってくれ。そこの青年がいきなり倒れて、今救急車を呼ぶところだったんだ」

 こういうケースのために用意された台詞を、多少の演技を交えて少年に告げる。
 かまいたちの能力で血は流れていないので、目撃者は「道に人が倒れている」という状況しか認識できない。
 加えて一般人、ましてや少年がこのような状況で冷静に対処できることは稀だ。
 もっともらしい説明にもっともらしい指示を与えてやれば、大抵は素直に言うことを聞いてくれる。

「私は彼の様子を見るから、君は119番に連絡してほしい。この携帯電話を使ってくれ」

 そう言って差し出したのは「組織」謹製の携帯電話。催眠音波により、使用した者を瞬時に眠らせる道具だ。
 少年は差し出された携帯電話に手を伸ばすと、携帯電話ではなく黒服の手を握った。
 黒服が疑問に思った瞬間、指先に鋭い痛みが走り、反射的に少年の手を振り払った。
 痛みの走る手を見ると、細い針金のような虫が爪の隙間から手の中に進入してきた。

「おねーさん油断しちゃダメですよー。これであなたも僕の傀儡。あ、「組織」にはよしなに報告しといてくださいね」

 頭がぼんやりする。視界が狭まる。意識が溶けていく。思考が侵食されていく。
 ぬかった。このままではまずい。まだ間に合う。今すぐこいつを倒せば……。


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「報告は以上です。」
「目標の討伐は成功したんだな?」
「はい。確実に殺しました。事後処理班も確認済みです。」
「大事になる前に対処できてなによりだ」
「対象の影響下にあった人物達も。既にその支配から外れております。」
「契約者が消えれば支配が解けるのも道理、か。ご苦労、下がっていい」
「はい。失礼致します。」

 一礼して部屋を後にする黒服を見送り、黒服の上司は報告書を眺めながら一人ごちる。

「二次被害も目撃者も一切無し……。まったく、優秀な部下だよあいつは」


【終】




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