「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

単発 - 試案-01

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無機質な暗い通路に少女の笑い声が響き渡っていた

「あはwあははwwあははwwwあはwはあ……はあ……」

笑い過ぎて息も絶え絶えと言った体だ
笑い続ける少女と相対するように居るのもまた少女だった
幼い顔つきの少女は、笑う少女とは対照的に怯み切っている
身体とはどこかアンバランスな漆黒のスーツはあちこち切られており
切られた部分からは、白のシャツ生地や素肌がのぞいている
ポニーテールの頭には、白くて丸い可愛らしい謎の生物が張り付き
――張り付いたまま、動かなくなっていた。失神しているようだ

彼女は同じく漆黒のスーツを着た女性を抱きかかえるように座り込んでいた
少女よりもずっと年上のような女性は顔から玉のような汗を滲ませており
目を固く閉じて荒い呼吸を繰り返している
女性のスーツも切り刻まれていたが
ポニーテールの少女の比ではなく、全身が血に濡れている
女性は手でもう一方の腕を押さえていた
ポニーテールの少女は知っている。彼女の片腕が文字通り皮一枚で繋がっている事を
要するに彼女は重傷を負っていた。早急に処置を取らなければ命を落とすほどに

「あかん、あかんて……」

唇をわなわなと震わせ、眼の前で笑い続ける少女を凝視するポニーテール
彼女――Rナンバーの上位管理職者、乱堂凛々はあまりにも危険な事態のなか
内から湧き上がる混乱と恐怖とを無理やり抑え込んでいた

「なんで……なんで『ダジャレ』効かへんの……」

「あはwはあぁwあはwwあははw」

狂った笑いを上げる少女は、毒々しいまでのオレンジと紫の服に身を包んでいる
まるで秋葉原謹製の典型的萌えアニメから飛び出してきた魔法少女ような格好だ
暗い通路と黒服の女のなかにあって、彼女の存在は圧倒的過ぎた
その手には、これまた萌えアニメに登場しそうな装飾過多なステッキが握られている

「凛々タンの、あははw能力はww笑われるとwキャントw発動wwww」

「これはあかんて……マジで――」

「あはwwwだってw勝手に*ナンバーの領区に入ってきたのwwwwそっちじゃんwww」

少女の周囲は時折、空気が歪んだかのように揺らいでいる
コイツは『鎌鼬』の能力者だ
『鎌鼬』の能力者自体は別段珍しいわけでもない
しかし、コイツは何から何までレベルが違い過ぎた
能力の射程距離も、発動速度も、切断力も、全てが
まるで、『暴走』を引き起こした能力者のように

「それじゃww魔法少女☆ぁーみるタンがw闖入者をwwお掃除wお掃除ィwww」

このままでは救助が間に合わず
この女性もろともコイツに殺されてしまう
乱堂は片方の手で自分の頬をつねった

(これは夢や無いんや……集中、集中……)

『お掃除』をするためか、少女は徐々にこちらへ歩み寄ってくる

もう、タイミングは逃せない

「あはwあははwwwはwはあwwはあ……」

笑い過ぎて再び息が苦しくなったのだろう、少女の笑い声が途切れた
乱堂の手がスーツの懐へと突っ込まれ、直ぐに抜き取られた
試験管が握られている
流れるような動作で、それが放り投げられる
近づいてくる少女の、足元へと

「はあ……はあ……」

試験官が割れて、中身が飛び散った
少女の足へも、液体が掛かる

乱堂は思念する。自身の『幼気』を

  対象ヘノ集中 → 焦点化ニヨル空間ヘノ思念ノ累積 → 幼気ノ発動

恐らく『幼気』を操る者にとっての常識であろう了解を経て
――彼女は能力を発動させる

「試験管で、今日、試験か――ン」

「はあ……あ、あれww」

ぁーみる、と名乗った少女が、自分の足が動かない事に気付いたのは直ぐだった
両足が凍りつき、地面に取り付けられていたからだ

ぞわりと恐怖が抜け、何処か性質の悪い疲れが押し寄せてくるのを感じる
乱堂は長く息を吐いた

彼女の能力、『寒いダジャレ』はダジャレの発話による凍結の能力をもつ
しかし、この能力は発話したダジャレを笑われてしまうと発動ができなくなる
『鎌鼬』の能力者を足止めしようとして、かなわなかったのは
彼女に笑われ続けていたからだ
本当に、ダジャレに対して笑っていたのかは分からない
しかし、そのせいで能力が行使できなかったのだ
ならば……相手が笑いを中止するタイミングを計ればいい
さらに能力を補助するための粘度のある液体を利用し、
『鎌鼬』の能力者を足止めした、というわけだ

「ど、どんなもんや……」

思わず捨て台詞を吐いた乱堂だったが、突飛の閃きを実行に移しただけだったため
内心はまだバクバクしているのと少しばかりの安堵のために
力が抜けてしまっていた

そもそも、決して乱堂から喧嘩を売ったわけではなく
通路を追いまわされていた黒服を助けようと割って入った所で
妙な闘いが始まってしまったのだ
乱堂に非はない

凍りついた足を引き剥がそうと格闘している少女を見て
そう簡単に凍結の能力が破られないことを確認し
彼女は携帯を取り出す
――通信状態はなぜか圏外となっている

「……」

乱堂は何処か嫌な予感を胸中に感じながらも
どうにか立ちあがった

「大丈夫かぁ? ウチの声、聞こえる?」

抱きとめていた女性にそっと声をかける
やや間があったが、女性は小さく頷いた

「ほら、腕かし。立てる?」

携行している応急処置用の道具を取り出しながら
切断寸前の方の腕を手早く固定し
反対側の方の腕を取って、自身の首へ回し、女性の身体を支える

「大丈夫や……大丈夫」

黒服の女性に言い聞かせるように、自分にもそう言い聞かせる


「ね え」

後方から声が響いたのはその時だった

ギクリ。乱堂の動きが止まる
一拍後、乱堂は女性を引いて歩きだした
思った以上に遅い。体格差もあるため、女性を支えて速く動くのは無理だ

「な んで 逃げ る の? まだ 終わ っ て な いよ 」

聞いてはいけない。アレの声を聞いてはいけない

「 凛 々たん、 あ そぼ お  ? 」

先程とは、何処となく声の調子が変わっていた
何かを押し殺したような
それでいて、何かが滲み出ているような

「ぁー  み る、  と 、  あ そ  ぼ 」

乱堂は、思わず、振り向いてしまった

「鬼 ご っ  こ し よ    っ か 」

少女は通路の暗がりにあって、その両眼はぎらぎらと狂気を放っている
持ち上げられた片手には注射器が握られている
その先端が、少女の口に含まれる
直後に吐き捨てられた針のカバーが地に落ちて、からんと乾いた音を立てた

「この お注射、で 、 つよ く なれ  る」

マズい
乱堂の、女性を支えていた腕に、不意に力がこもった


早く
速く、逃げなければ

前だけを見据え、女性の身体を引いて、無理やり歩みを速める
まだ――まだ、アレは地に足を凍結されている
今のうちに、今のうちに――

「あ、ああは、ああ、あああああああああああ」

聞いてはいけない。アレの声を
聞くな。聞くな

「ああああああ、ああああ、あああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「やめぇッ!」

胸の奥底から湧き上がる妙に冷えた感覚に耐えかね
思わず乱堂は声をあげた

「あ゙あ゙あ゙、あ゙はっあ゙ははっwwwwwううっktktktprrrあ゙あ゙」

先程と様子が違うのは、さらに様子がおかしくなったのは
その声色が耳に入るだけで十分過ぎるほど伝わってくる

「あ゙はっrrtnの***wtbstkwstぁーみrnmnnst!!あ゙!」

乱堂はさらに力を入れ、とにかく速くその場から離れようと

「rrtn!rrtn!rrtn!ngrnあ゙っ゙あははっwwww」

「ひっ」

凶悪な音を立て、何かが乱堂の頬をかすめた
アレが『鎌鼬』を発動している
まずい

狩られる

「ううっ、なんで、なんで圏外なんや!」

引っ張り出した携帯は相変わらずの通信域外だ
同じ『組織』内部のはずなのに

「嫌ァッ! ラピーナぁっ、ローゼさん早よ気付いてェッ!」

「dknwwwwngytUndnwwwprsknwwwwww」

無数の殺気が、乱堂の身体を掠めてゆく

不意に女性が呻き声を上げた
同時にぱらぱらと頭髪が散り、血が垂れる
乱堂は首を捻って、支えている女性の黒服を見る
頭部を、軽くではあるが、削られたようだ

「急がな……大丈夫や、あんたは、ウチが…ウチが助けたる……」

乱堂の声は、先程よりもひどく震えていた




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