「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

単発 - 金色の猿

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kemono

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だれでも歓迎! 編集
まず最初に伝えておきたい
僕は至って普通の男子高校生だ
別に霊感なんて強くないし、そもそも霊なんて見たこともない
ある日突然超能力に目覚めたとか、両親が宇宙人だったとかも断じてない
今日今さっきまで、極々普通の生活を送って来た筈だった


それならば
僕の目の前に落ちている、この小さな金色の毛むくじゃらは何だ?


「・・・何だよ、これ・・・?」

恐る恐る、その毛の塊を持ちあげてみる
金色と言ったが、近づいて見るとオレンジ色っぽい
それと、形は人間のようだ
手もある、足もある、顔もある
顔はサルっぽいし、長めの尻尾があるから、サルの人形かな?
にしては、ちょっとリアルで不気味だけど・・・死体じゃないよね

「おい、お前はどこから来たんだ?」

あまりにリアルだったので、何気なく声をかけてみた

「おう、それが中国から来てさ。で、腹が減って飯探してたら空高くから真っ逆さまよ
  危なく落ちて死ぬところだったぜ、てかあんだけ高い所から落ちて死なないとか俺流石じゃね?」
「・・・はい?」

振り向いた
誰もいない
辺りを見回す
やはり誰もいない
俺の傍にあるのは、この毛むくじゃらの何かだけだ

「何だよ、ジロジロ見んじゃねぇ気持ち悪い」
「気持ち悪いのはお前だっ!?」

ただでさえ非現実的な喋るサルという理解しがたい存在に出会い、思わず投げ飛ばしてしまった
流石はサル、身軽そうに身体を捻って見事に着地、

「痛ぇ!? 何しやがんだテメェ!?」

しなかった

「い、いや、お前何なんだよ!?」
「ハァ? 見りゃ分かんだろうが!!」
「分かんないから訊いてんだろ!?」
「どう見てもキンシコウじゃねぇか!!」
「見たこと無いし!? 初めて見たよ!? てかそうそう見られるものじゃないよねキンシコウって!?」
「さぁもっと見るが良い、そして敬い崇めるが良い! ジロジロ見んな!!」
「どっちだよ!? いやそんなことより、何で喋れるの!?」
「あ? サルが喋って問題でもあんのか?」
「大有りだよ! というか中国から来たんだよね!? 日本語じゃん!」
「サルの知能指数舐めんなクソガキ! 俺はカラスやイルカぐらい賢いんだよ!」
「比較対象が小さい!? そ、それよr」
「質問ばっかすんじゃねぇよ! 何でこの俺がガキの質問に懇切丁寧に説明しなきゃなんねぇんだよ!」

どうでも良いけど、二本足で立って怒鳴るサルの姿は、シュールだ

「俺は今忙しいんだ、腹減ってんだ飯だ飯!」
「あ、バナナあるけど、食べる?」
「あーそうそう、この眩しい黄色と滑らかな肌触りの皮を剥く事で濃厚な甘みのッて俺はゴリラじゃねぇんだよ!」
「うわっ、弾き飛ばすこと無いじゃん! 勿体無いなぁもう・・・」
「そんなもんよりもっと美味そうな奴よこせ! 日本なら寿司とかあるだろ!?」
「何でサルに寿司奢らなきゃならないの!? 嫌だよそんなの!」
「嫌とかそういう問題じゃねぇ、YO☆KO☆SE!!」
「何度言われても嫌なものは嫌だよ!」
「私、綺麗?」
「こンの分からず屋が! 困ってる人間は助けるのが筋ってもんじゃねぇのか!?」
「いや人間じゃないじゃん! サルじゃん!」
「テメェさっきからサルサルサルサル言いやがって!!」
「お前も自分で言ってたよね!?」
「・・・私、綺麗?」
「俺が自分をサルっつぅのは良いんだよ! 他人に言われるとムカつく!」
「理不尽すぎるよ! じゃあ何て言えば良いの!?」
「キンシコウじゃ不満か!?」
「名前ついてないからって種類名では呼ばないと思うな!」
「注文の多い奴だなテメェは! だったら親しみを込めてこう呼びやがれ! 俺は天下の孫――――」
「ねぇ・・・聞いてよぉ・・・ひっぐ」

女性の声がした
後ろを見てみると、大きなマスクをした女性が泣いていた
梅雨も過ぎたというのに、コートまで着ている

「あの、どうかしたんですか?」
「やっと気づいたわね」
「立ち直り早ッ」
「じゃあ改めて訊くから『はい』か『Yes』か『Oui』か『Ja』で答えなさい」
「全部同じ『はい』ですよね!?」
「私って綺麗?」
「え、あ、はい」
「馬鹿かテメェ!さっさと逃げろ!!」

え?

「それなら・・・これでもぉ???」

女性がマスクを剥ぎ取った時、思わず一歩引き下がってしまった
彼女の口が、耳元まで大きく裂けていたからだ

「っち、だから早く逃げr」
「うわっ、ちょっ、だ、大丈夫ですか!? す、すぐ救急車呼びますから!」
「は?」
「あ?」
「え、何?」
「テメェ天然か!? どう見ても「口裂け女」だろうが!」
「「口裂け女」・・・って、あの都市伝説の? まさかそんな」
「あんたの口も私と同じようにしてあげるわぁ!!」
「そのまさかだったぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

女性―――「口裂け女」は包丁を出して僕に襲いかかろうとしてきた
その前に、僕は咄嗟に走り出す
と、暫く走った後に、不意にサルも助けなきゃと思いだした
変な奴だけど、あれでも命を持った生き物なんだから
振り返り、サルを連れていこうとした時だった

「あれ?」

僕が見たのは、「口裂け女」の包丁を、長い棒で抑えているサルの姿だった

「っまだ逃げてなかったのかよ! まぁいいぜ、そこで大人しく俺のカッコいいところを見てな!!」

かきぃん!と甲高い音を打ち鳴らして、「口裂け女」の包丁は遠くへ飛ばされた

「くっ、だがこれしきの事でぇ!!」

「口裂け女」は何処からともなく鎌を出現させると、
それを振りかぶり、サルを切り刻もうと襲いかかった
けど、サルは、

「伸びろ、如意棒!」

持っていた棒を伸ばして、「口裂け女」を二度、三度殴ると、横薙ぎに振って足を払った
足を引っかけられた「口裂け女」は、その場に盛大に転んだ
色々と訳が分からないこの状況に、開いた口が塞がらなかった

「ぁ・・・・」
「何だテメェ、都市伝説知らねぇのか?」
「だって、都市伝説って実際には・・・」
「それがこうして存在してんだよ
  あぁいう人殺しだの何だのやって、己の存在を保つ馬鹿とかな
  ま、普通の人間だと対抗しづらいが、俺みてぇに都市伝説の力を借りればチョロいもんよ」
「・・・借りる?」
「えぇい、ごちゃごちゃとやかましい!」

立ち上がる「口裂け女」
彼女が何かする前に、サルは自分の毛を何本か引き抜いて、ふっ、と息を吹いて飛ばした

「秘術、身外身の術!」

直後、飛んだ毛が全部サルになって、「口裂け女」を攻撃し始めた
殴ったり、蹴ったり、引っかいたり・・・ん?

「如意棒、毛で分身、って・・・孫悟空?」
「だからさっき言っただろうが! 俺の事は孫悟空って呼べってな!!」
「言ってないよ!?聞いてないよ!?」
「へっ、まぁいい・・・俺は「キンシコウは孫悟空のモデル」と契約した立派な契約者だ
  あ、孫悟空っつっても『ドラゴンボール』のじゃねぇぞ? 『西遊記』の方だ」
「分かってるよ」
「こ、このっ!邪魔だ、どけ!!」

「口裂け女」は無数のサルに翻弄されている
それを見て、サルは―――孫悟空はニヤッと怪しく笑った

「おぅおぅ、しぶてぇな・・・じゃ、とっておき、見せてやるか!」

と言って、孫悟空は両手首をくっつけて、まるで掌で花を作るかのようにして構えた
あれ?この構えって

「かめはめ波ァ!!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」

青白い光の線が、サルの分身ごと「口裂け女」を飲み込んだ
その後に残ったものは、焼け焦げたアスファルトだけだった・・・って

「何で『かめはめ波』撃てるの!? あれは『ドラゴンボール』の方の孫悟空の技でしょ!?」
「名前だけだ、名前だけ。俺は神通力って奴を使えるからな、それであぁいうのを出せるんだよ(キリッ」
「何こいつムカつく」
「あーぁ、腹減った・・・また探すか飯。 おぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!フェラーリィィィィィィィ!!」

耳を劈く程の声で孫悟空が叫ぶと、空の向こうから何かが飛んできた
ふわふわした、千切れた雲の塊のようなそれは正しく・・・

「キン斗雲じゃん!? フェラーリじゃないじゃん!?」
「ぶっちゃけ『キン斗雲』ってダサくね?」
「酷い! 子供の夢ぶち壊しだ!」
「じゃあな、もう襲われんなよ」

そう言い残して、孫悟空は雲に乗って飛び去った
ようやく、静寂が訪れる
彼が騒がしかっただけに、嵐が去ったような静けさだ

「・・・仮にも助けて貰ったんだし、お礼とかしたかったな・・・」

そういえば、お腹が空いてたとかどうとか言ってたな
また何処かでくたばっていないと良いけれど








「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ減ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」







遠くで、何かが落ちる音が聞こえた

「・・・やっぱり何か食べさせてあげよう」

僕は孫悟空を探す為に走り出した
この日から、僕と孫悟空の奇妙な物語が始まった


   ただし続かない





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