薬物と中毒

麻薬と中毒 Drugs and Addiction

 へべれけの英雄、ワインと祝祭の神、オラクルと賢者の煙のかかった聖堂は、神話や古典的な幻想文学の最も印象深い記述につきものである。それゆえにファンタジー・ロールプレイング・ゲームの冒険がそのようなキャラクターや場所で満たされていることは、何ら驚くことではない。何と言っても、無数のキャンペーンが酒場のテーブルの側で始められているし、ドワーフの黒エールの悪名高い効能は全ての冒険者の知るところだ。

 良かれ悪しかれ、現実世界で見られる全ての事は、ファンタジー世界では何倍にもなり、驚異的で致命的な特質を持つ。そしてアルコールと薬物乱用の害悪も例外ではない。多くのゲームではリアリティのある酒宴も魂を押し流す中毒の深淵もその居場所はないが、これらの要素には冒険にとっての大きな潜在力がある。ヘラクレスとデュオニソスとの飲み比べのような剛勇たちの饗宴を再現しようとするにせよ、ロートスの実を食する人々のような退廃的な者たちとの遭遇にせよ、宗教的な神秘の幻覚剤を再創造するにせよ、このルールはあらゆるものをカバーする。

麻薬 Drugs

 麻薬はそれを使用した者に効果をもたらす錬金術アイテムである。類似のアイテムとこれらを区別する点は、麻薬の効果が短いルール上の言葉(通常は有利なもの)と一定量の能力値ダメージで表現されることである。それに加えて、麻薬を使用した者は中毒の危険も負う。これは使用した麻薬の種類によって異なる強度を有する一種の病気である。

 キャラクターが麻薬を使用した場合、即座にその効果を受け、一定量の能力値ダメージを被り、そして麻薬への中毒を避けるために頑健セーヴを行わなければならない(中毒参照)。初期効果は麻薬による心身に変化をもたらす効果を表し、そして吸収は副作用と1服の効果がキャラクターの体に残る時間の双方を表す。能力値ダメージが1日1ポイントの割合で回復するように、1ポイントの能力値ダメージを与える麻薬もキャラクターの身体に1日の間残るが、一部の麻薬はそれ以上のダメージを与え、それによってより長い間体内に残留し活動する。1度に数服の麻薬を使用した場合に何らかの利益があることは滅多にないが、麻薬の効果が切れる前にまた同種の麻薬を使用した場合、その効果時間は更新され、能力値ダメージと中毒の可能性は上昇する。

 麻薬は〈製作:錬金術〉を使用することで製造することができる。麻薬を作るDCはその中毒のDCに等しい。麻薬を作る際の〈製作〉判定で出目が1だった場合、製作者はその麻薬1服にさらされることになる。

酩酊 Drunkenness

 麻薬同様、アルコールもまた乱用されることがあり、大きな悪影響を及ぼしうるものだ。一般に、キャラクターは自分の1+(【耐久力】修正値の2倍)に等しい数のアルコール飲料を摂取できる。これを超える数を飲んだ場合、キャラクターはこの最大値を超える1服分につき1時間の間不調状態になる。特に珍しい酒や強い酒は通常の麻薬のように扱われる場合もあるだろう。定期的にアルコールを乱用するものは、最終的には中等症の中毒になるかもしれない。

中毒 Addiction

 キャラクターが麻薬を使用した場合、麻薬の説明文に従って、中毒になるのを避けるためのセーヴィング・スローを行わなければならない。キャラクターがセーヴに成功した場合、中毒に陥らず、麻薬は通常通り効果が続く。セーヴに失敗した場合、記述されているタイプの中毒にかかる(下記参照)。キャラクターが短期間の間に同種の麻薬を複数服分使用した場合、中毒はより抵抗しがたくなる。前回使用分による能力値ダメージが続いている間に同種の麻薬を使用したキャラクターは、追加で使用した1服ごとに麻薬のセーヴィング・スローのDCが+2上昇する。中毒を克服するのに必要なDCを決定するため、すでに中毒に陥ったキャラクターであっても、このDCの上昇は記録しておくこと。

 中毒には、軽症、中等症、重症の、3種の異なる度合いの強度がある。各麻薬にはセーヴに失敗した結果陥る中毒の種類が記述されている。それぞれの中毒は、キャラクターがその病気にかかっている間継続する、持続的な能力値ダメージをもたらす。また、中等症と重症の中毒の場合は、キャラクターは中毒をおこした麻薬による能力値ダメージが自然に回復することはない。

 いずれの強度でも、中毒者はその中毒している麻薬を使用し続けるように刺激される。キャラクターが中毒に陥っている麻薬の効果による利益を受けている間は、中毒の病気のペナルティは被らない。麻薬の利益と能力値ダメージを通常通り受けている間はその病気の効果は中和される。その麻薬の利益が消えると同時にその病気の効果は戻ってくる。

軽症の中毒

種別 病気;セーヴ さまざま
潜伏期間 1日;頻度 1/日
効果 【耐久力】に-2ペナルティ;治癒 2連続セーヴ成功

中等症の中毒

種別 病気;セーヴ さまざま
潜伏期間 1日;頻度 1/日
効果 【筋力】と【耐久力】に-2ペナルティ。目標はこの中毒を引き起こした麻薬による能力値ダメージが自然に回復することはない;治癒 3連続セーヴ成功

重症の中毒

種別 病気;セーヴ さまざま
潜伏期間 1日;頻度 1/日
効果 【筋力】【敏捷力】【耐久力】に-2ペナルティ。目標はこの中毒を引き起こした麻薬による能力値ダメージが自然に回復することはない;治癒 3連続セーヴ成功

中毒の治癒 Curing Addiction

 中毒は病気であるので、リムーヴ・ディジーズのような呪文の使用や、必要な回数の頑健セーヴに成功することによって、同様に治癒する。他の病気とは違い、中毒になったキャラクターは、中毒している麻薬を使用してから1日経過した後にのみ、中毒を克服するための頑健セーヴを行うことができる。この頑健セーヴのDCは、彼の麻薬の使用によって達した最高の中毒DCに等しい(中毒になってからも麻薬の使用を継続している場合、必ずしも中毒になったときのDCではない)。このDCは、キャラクターが麻薬を使用していない1日ごとに-2減少する(最低その麻薬の基本中毒DC)。

 キャラクターの中毒の強度によって2連続または3連続で、病気を克服するための頑健セーヴに成功しなければならない。キャラクターが中毒している麻薬を使用した場合、すぐに悪い状態に逆戻りし、中毒DCは即座に最高のDCに戻り、過去に成功したセーヴは無かったことになる。

麻薬の例 Sample Drugs

 現実世界とファンタジー世界の双方で無数の種類の麻薬が存在する。ここに挙げたものは、そのうちさまざまな効果を持つものの数例である。全ての麻薬は以下の特徴を有する。

種別:これはその麻薬がどのようにして身体に取り入れられるかを表す。これらは毒に普通に見られる種別と同じであり、接触、摂取、吸入、致傷がある。
中毒:これはその麻薬の引き起こす中毒の強度である。キャラクターが中毒を避け、それを克服するために必要なセーヴの基本DCを含む。このDCは麻薬の複数服分の使用により上昇する。
価格:この麻薬の1服分の通常価格。
効果:麻薬の効果時間と効果。
ダメージ:引き起こされる能力値ダメージの種類と量。

エーテル Aether

種別 吸入;中毒 中等症、頑健・DC16
価格 20GP
効果 1時間;術者レベル+1
効果 1d4 時間;使用者は呪文を使用するためには術者レベル判定を行なわなければならない。DCは15+呪文レベル。
ダメージ 1d2【耐】

ドワーフの火酒 Dwarven Fire Ale

種別 摂取;中毒 中等症、頑健・DC20
価格 50GP
効果 1d4ラウンド;レイジ呪文と同様
効果 1時間;[氷雪]に対する抵抗5
ダメージ 1d2【耐】

エルフのアブサン Elven Absinthe

種別 摂取;中毒 中等症、頑健・DC16
価格 500GP
効果 1時間;+1d4【魅力】
ダメージ 1d4【耐】

むくり草 Flayleaf

種別 吸入または摂取;中毒 軽症、頑健・DC12
価格 10GP
効果 1時間;[精神作用]効果に対するセーヴに+2の錬金術ボーナス、疲労状態
ダメージ 1【判】

阿片 Opium

種別 吸入、摂取、または致傷;中毒 重症、頑健・DC20
価格 25GP
効果 1時間;+1d8の一時的ヒット・ポイント、頑健セーヴに+2錬金術ボーナス、疲労状態
ダメージ 1d4【耐】、1d4【判】

ペシュ Pesh

種別 摂取または吸入;中毒 中等症、頑健・DC20
価格 15GP
効果 1時間; 【筋力】に+2の錬金術ボーナス、幻術と[精神作用]効果に対する-2のペナルティ。
効果 1時間後;1d2時間の疲労状態
ダメージ 1d2【耐】、1d2【判】

こくり液 Scour

種別 摂取または吸入;中毒 重症、頑健・DC24
価格 45GP
効果 3時間;【敏】に+1d4の錬金術ボーナス、【判】に-1d4ペナルティ
ダメージ 1d6【耐】

慄け薬 Shiver

種別 致傷または摂取;中毒 重症、頑健・DC18
価格 50GP
効果 可変;50%の確率で1d4時間睡眠状態または1d4分間[恐怖]に対する完全耐性

ザーク Zerk

種別 致傷;中毒 軽症、頑健・DC18
価格 50GP
効果 1時間;イニシアチブに+1錬金術ボーナス。中毒に陥った場合、中毒の間は+1d4【筋】ボーナスを得る。
ダメージ 1d2【耐】
最終更新:2023年05月29日 20:12