ヴァンパイアは生者の血をすする人型のアンデッド・クリーチャーである。ヴァンパイアの姿は生前とほとんど変わらず、大抵はより蟲惑的になっているのだが、中には代わりに冷酷かつ野性的な見かけを持つ者もいる。
“ヴァンパイア”は5以上のヒット・ダイスを有する生きているどんなクリーチャー(以下これを“基本クリーチャー”と呼ぶ)にも付加できる後天性テンプレートである。
ヴァンパイアの多くはかつて人型生物かフェイか人型怪物であった。ヴァンパイアは以下に示したものの他は、基本クリーチャーのデータを用いる。
CR:基本クリーチャー+2。
属性:いずれかの悪。
種別:そのクリーチャーの種別は
アンデッド(変性種)へと変化する。ヒット・ダイス、基本攻撃ボーナス、セーヴは再計算しないこと。
感覚:ヴァンパイアは暗視60フィートを得る。
アーマー・クラス:外皮ボーナスは+6上昇する。
ヒット・ダイス:すべての種族ヒット・ダイスをd8に変更すること。クラス・レベルによるヒット・ダイスは変化しない。アンデッドであるヴァンパイアは(【耐久力】修正値の代わりに)【魅力】修正値を使用してボーナス・ヒット・ポイントを決定する。
防御的能力:ヴァンパイアは、アンデッドの種別特性によって与えられるすべての防御能力に加えて、“
エネルギー放出に対する抵抗+4”、“
DR10/銀および魔法”、“[雷撃]に対する
抵抗 10”、“[氷雪]に対する
抵抗 10”を得る。ヴァンパイアは“
高速治癒 5”も得る。もしも戦闘でヒット・ポイントが0以下になった場合、ヴァンパイアはガス化形態(下記参照)をとり、逃走を試みる。ヴァンパイアは自分の棺に2時間以内にたどり着かねばならず、たどり着けない場合は完全に破壊される(ヴァンパイアは通常、2時間で9マイル(約14km)まで移動できる)。ガス化形態を強制されているヴァンパイアに追加で与えられたダメージは何の効果もない。棺にたどり着いて休息に入ったら、ヴァンパイアは
無防備状態となる。まず1時間後にヒット・ポイントが1まで回復する。そして
無防備状態でなくなり、それからは毎ラウンド5ポイントの割合でのヒット・ポイントの回復が再開される。
弱点:ヴァンパイアはニンニクの強いにおいに耐えられず、数珠つなぎにしたニンニクで周囲を守られた範囲には入ろうとしない。同様に、鏡や、力強くはっきりと見せつけられた聖印にはひるんで後ずさる。これらのものはヴァンパイアを傷つけはしない――単に寄せ付けないだけである。ひるんだヴァンパイアは鏡や聖印を持ったクリーチャーから少なくとも5フィート離れなければならず、それらのアイテムを持ったクリーチャーに対しては接触することも近接戦闘を行なうこともできない。ヴァンパイアを寄せ付けないようにする行為は1標準アクションを必要とする。1ラウンド後、ヴァンパイアはその物体に対する嫌悪感を克服し、毎ラウンドDC25の意志セーヴを行なって、成功すると通常通りに行動することができる。
ヴァンパイアは家屋などの建物には、誰かその権利を持つ者に招かれない限りはまったく入ることができない。
ヴァンパイアのヒット・ポイントを0以下に減少させることは、ヴァンパイアを無力にするものの、破壊したことにはならない(
“高速治癒”の項を参照)。しかし、いくつかの攻撃はヴァンパイアを滅ぼすことができる。ヴァンパイアを直射日光にさらすと、最初のラウンドでヴァンパイアは
よろめき状態になり、逃走できなければ連続してさらされた第2ラウンド目には完全に破壊される。流れる水に完全に沈められてしまったら、ヴァンパイアは毎ラウンド、最大ヒット・ポイントの1/3に等しいダメージを受ける。この方法でヒット・ポイントが0になったヴァンパイアは破壊される。
無防備状態のヴァンパイアの心臓に木の杭を打ち込む(これは1回の全ラウンド・アクションである)と、ヴァンパイアは即座に滅ぼされる。しかし、首が切り落とされ聖水で聖別されない限り、杭が取り除かれるとヴァンパイアはよみがえる。
移動速度:基本クリーチャーと同じ。もしも基本クリーチャーが水泳の移動速度を持っているのなら、そのヴァンパイアが流れる水によって不必要に傷つくことはない。
近接:ヴァンパイアは、基本クリーチャーが持っていないなら1回の叩きつけ攻撃を得る。この叩きつけのダメージはヴァンパイアのサイズによる(
『モンスターの共通ルール』を参照)。ヴァンパイアの叩きつけは
生命力吸収も引き起こす(下記参照)。ヴァンパイアの肉体武器は、ダメージ減少を克服するにあたっては魔法の武器として扱われる。
特殊攻撃:ヴァンパイアはいくつかの特殊攻撃を得る。特に断りのない限り、セーヴDCは(10+ヴァンパイアのHDの1/2+ヴァンパイアの【魅】修正値)である。
吸血(超常)/Blood Drain:ヴァンパイアは
組みつき状態の相手から血を吸うことができる。ヴァンパイアが“押さえ込む”ことに成功したか“押さえ込み”を維持した場合、ヴァンパイアは血を吸い、1d4ポイントの【耐久力】
ダメージを与える。血を吸うことのできたラウンドごとに、ヴァンパイアは5ポイントのヒット・ポイントを回復するか、あるいは1時間持続する5ポイントの一時的ヒット・ポイントを得る(一時的ヒット・ポイントは最大で通常の合計ヒット・ポイントに等しい値まで)。
夜の子供たち(超常)/Children of the Night:1日1回、1標準アクションとして、ヴァンパイアは1d6+1群れの
ラット・スウォーム、1d4+1群れの
バット・スウォーム、3d6体の
ウルフのいずれかを呼び寄せることができる(基本クリーチャーが陸地に住むものでない場合、この能力は同様の能力を持つ別種のクリーチャーを招来することにしてもよい)。これらのクリーチャーは2d6ラウンドで到着し、ヴァンパイアに最大1時間まで奉仕する。
同族作り(超常)/Create Spawn:ヴァンパイアは、殺されたクリーチャーがヴァンパイアの基本クリーチャーと同じクリーチャー種別を持つならば、吸血もしくは生命力吸収で殺した者から同族を作り出すことができる。犠牲者は1d4日後にヴァンパイアとしてよみがえる。このヴァンパイアは自分を作成したヴァンパイアの支配下にあり、主人が破壊されるまで隷属する。ヴァンパイアは自分のヒット・ダイスの2倍のヒット・ダイスまでの同族を隷属させることができる。この制限を越えて作られた同族は自由意志を持つヴァンパイアとなる。ヴァンパイアは新たな同族を作るために、隷属させている同族を自由に解放することができる。しかし、いったん解放したなら、そのヴァンパイアもしくはヴァンパイア・スポーンを再び隷属させることはできない。
支配(超常)/Dominate:ヴァンパイアは1標準アクションとして1体の人型生物の相手の意志を圧倒することができる。ヴァンパイアの目標となった者は意志セーヴを行なければならず、失敗するとあたかも
ドミネイト・パースン(術者レベル12)をかけられたかのように、直ちにヴァンパイアの影響下に置かれる。この能力は30フィートの有効距離を持つ。GM判断で、ヴァンパイアの中にはこの能力を用いて異なる種別のクリーチャーに影響を及ぼすことのできる者がいるとしてもよい。
生命力吸収(超常)/Energy Drain:ヴァンパイアの叩きつけ攻撃(もしくは、そのヴァンパイアが持っている何らかの肉体武器)を受けたクリーチャーは、負のレベルを2レベル得る。ヴァンパイアが何回攻撃したかに拘わらず、この能力は1ラウンドに1回しか効果を表さない。
その他の特殊能力:ヴァンパイアは以下の“その他の特殊能力”を得る。
変身(超常)/Change Shape:ヴァンパイアは変身を使用して
ビースト・シェイプIIと同様に
ダイア・バットもしくは
ウルフの姿をとることができる。
ガス化形態(超常)/Gaseous Form:1標準アクションとして、ヴァンパイアは回数無制限で
ガシアス・フォームをとることができる(術者レベル5)。ただし、この能力によるガス化形態は効果時間が限られておらず、飛行の移動速度は20フィートで、機動性は完璧である。
影がない(変則)/Shadowless:ヴァンパイアは影を落とさず、鏡に映ることもない。
スパイダー・クライム(変則)/Spider Climb:ヴァンパイアは切り立った面を、
スパイダー・クライムの呪文を使っているかのように登ることができる。
能力値 【筋】+6、【敏】+4、【知】+2、【判】+2、【魅】+4。アンデッド・クリーチャーであるため、ヴァンパイアは【耐久力】の数値を持たない。
技能 ヴァンパイアは
〈隠密〉、
〈真意看破〉、
〈知覚〉、
〈はったり〉の判定に+8種族ボーナスを得る。
特技 ヴァンパイアはボーナス特技として
《イニシアチブ強化》、
《鋭敏感覚》、
《回避》、
《神速の反応》、
《追加HP》、
《迎え討ち》を得る。