異なる七つの世界に住む三十八の因子。
それらが今集まり、混じり、一つへと集められた――。
……一つの、“神”の元へと。
それらが今集まり、混じり、一つへと集められた――。
……一つの、“神”の元へと。
◇
「…………ぃ。…………おい、……起きろ! 相棒!」
――自室で眠りについたはず。なのに、部屋にいる筈のない『相棒』の声がした。
覚醒しきっていない頭は疑問すら抱かなかった。ゆっくりと体を起こし、首を振る。
覚醒しきっていない頭は疑問すら抱かなかった。ゆっくりと体を起こし、首を振る。
「良かった、目が覚めた見たいだな。大丈夫か?」
まだ頭がぼんやりするが、それ以外に体に以上は見あたらない。そう答えた。
そして、状況確認を始める。今現在、自分が置かれている状況が分からないからだ。
とりあえず周りを見る。埃っぽく、薄暗い空間だった。
ここはどこだろう。当たり前の疑問を口にする。
同じく戸惑っていた様子の『相棒』――花村陽介が、口を開いた。
そして、状況確認を始める。今現在、自分が置かれている状況が分からないからだ。
とりあえず周りを見る。埃っぽく、薄暗い空間だった。
ここはどこだろう。当たり前の疑問を口にする。
同じく戸惑っていた様子の『相棒』――花村陽介が、口を開いた。
「分っかんねぇんだよ、それが。気づいたら俺もここに倒れてて、側にお前も倒れてた」
――どういうことだろうか。さっぱり分からない。
お互い、知らない間にここに連れてこられたらしい。
……何者かに拉致された? なら陽介もいる理由が分からない。
テレビの中の可能性もあるが、霧がまったく見えないのでそれは無いだろう。
周囲からはざわめきが聞こえる。まだ周りがよく見えないが、他にも人がいる事は確かだった。
他にも知り合いが連れてこられているのだろうか。目を凝らす。
お互い、知らない間にここに連れてこられたらしい。
……何者かに拉致された? なら陽介もいる理由が分からない。
テレビの中の可能性もあるが、霧がまったく見えないのでそれは無いだろう。
周囲からはざわめきが聞こえる。まだ周りがよく見えないが、他にも人がいる事は確かだった。
他にも知り合いが連れてこられているのだろうか。目を凝らす。
「つうか、あれは何なんだ? コスプレか? なんかシャドウっぽい奴もいるしよ」
陽介が指差す先を見る。
黒い甲冑をまとった騎士――のような人物。
シャドウにしては愛くるしい外見――の、ピンク色の物体。
メイド服――のような物を身にまとった少女。
忍者のようで、サイボーグの外見――の男。
黒い甲冑をまとった騎士――のような人物。
シャドウにしては愛くるしい外見――の、ピンク色の物体。
メイド服――のような物を身にまとった少女。
忍者のようで、サイボーグの外見――の男。
訳が分からない。とりあえずそっとしておこう……。
他に見知った人物がいないか探そうとした時、唐突に明かりがついた。
眩しさに目が眩むと同時に、前方から声が響く。
他に見知った人物がいないか探そうとした時、唐突に明かりがついた。
眩しさに目が眩むと同時に、前方から声が響く。
「はるばる、ようこそ」
白いローブをまとった姿。赤い双眸。
その人物から発せられる声は、不思議な響きを伴っていた。
……人物、であるかどうかすら怪しい。何故なら『それ』は、上空にふわりと浮かんでいるからだ。
人間の姿をしているが、ヒトでは無い雰囲気を纏っている。
――一瞬だけ、『それ』と目が合う。
ずきり、と頭のどこかが痛んだ。
その人物から発せられる声は、不思議な響きを伴っていた。
……人物、であるかどうかすら怪しい。何故なら『それ』は、上空にふわりと浮かんでいるからだ。
人間の姿をしているが、ヒトでは無い雰囲気を纏っている。
――一瞬だけ、『それ』と目が合う。
ずきり、と頭のどこかが痛んだ。
「これから、君たちには――」
文字通り「人を見下している」ような目で、『それ』はあっさりと恐ろしい事を口にする。
「…………殺し合いをしてもらう」
ざわり、と会場がどよめく。
「殺し合いをしてもらう」。奴はそう言った。
一体何を言っているのだろう。胸に嫌な予感がわき上がってきたが、どこか現実離れしていた。
「殺し合いをしてもらう」。奴はそう言った。
一体何を言っているのだろう。胸に嫌な予感がわき上がってきたが、どこか現実離れしていた。
「何よそれ、どういう事!?」
どこか遠くで叫ぶ声。自分の友人の――天城雪子の声だった。雪子もここへ来てるのか。
「だいだい、アンタは何なの! 勝手に人を集めといて、『殺し合い』なんでふざけないでよ!」
同じく友人の、里中千枝の声もした。それに続き、怒号と喧噪がわき起こる。
会場は怒りに満ちていた。
殺し合いをしろ、と言われてすんなり納得する人間などいない。自分もそうだ。
だが、『奴』の目は冷たいままだった。
喧噪、叫びを気にしている様子はない。それどころか、哀れんでいるようにも見えた。
会場は怒りに満ちていた。
殺し合いをしろ、と言われてすんなり納得する人間などいない。自分もそうだ。
だが、『奴』の目は冷たいままだった。
喧噪、叫びを気にしている様子はない。それどころか、哀れんでいるようにも見えた。
「まったく、君たちはどこまでも邪魔をする……」
その双眸と同じ、冷たい感情を宿した声が突き刺さる。
鳥肌が立った。心臓の鼓動が激しくなる。嫌な予感がする。
鳥肌が立った。心臓の鼓動が激しくなる。嫌な予感がする。
「この『私』――イザナミに立ち向かう事がどれほど愚かな事か」
「……イザナミだって?」
陽介が繰り返す。
日本で伝わる、国生みの神の名前。――こいつは、神なのか。
……イザナミ。神話と照らし合わせるならば、自分のペルソナ「イザナギ」と対になる。もしや……。
日本で伝わる、国生みの神の名前。――こいつは、神なのか。
……イザナミ。神話と照らし合わせるならば、自分のペルソナ「イザナギ」と対になる。もしや……。
「そう、君の力の後押しをしたのは私だよ。予想通り君たちは面白い結果を生み出してくれた」
自分の疑問に、いつの間にかこちらを向いていたイザナミが答える。
また頭痛がしたので頭を押さえた。
また頭痛がしたので頭を押さえた。
「何の話をしてるんだよ!? それとこの『殺し合い』に関係あんのか!?」
気持ちを押さえきれなくなったのか、陽介が叫んだ。
「君たちは町を霧で包み、そして晴らした。小さい町にもたらした変化と考えればそれは大きい」
「だが――私には物足りなかった。所詮は田舎町。事件も風化し、霧も忘れ去られる」
「……そう。小さい変化に過ぎないんだ。たとえ特殊な能力を秘めた人間がいたとしても、ね」
意味がよく分からず、話が見えてこない。
周りの人間も抱いている思いを無視しながら、イザナミは会場をぐるりと見渡す。
周りの人間も抱いている思いを無視しながら、イザナミは会場をぐるりと見渡す。
「しかし、この者達は違う。皆、特別な力に値する物を持って、それを生かしながら暮らしている」
「――面白いとは思わないか? 住む世界も能力も違う、ヒトですらないものが集まればどうなるか?」
面白い、と思えるから、「殺し合い」を要求しているのか……?
「無論、理由はそれだけでは無いよ。だが君たちは知らなくていい事だ」
「……ふざけるな! テメェの都合は知らねぇが、それだけの理由で、殺し合いなんてさせるかッ!!」
陽介が前より強く叫ぶ。自分も同じ気持ちだった。
だが、体が動かない。嫌な予感はいっそう体も心も満たしていく。当たって欲しくは無いが……。
だが、体が動かない。嫌な予感はいっそう体も心も満たしていく。当たって欲しくは無いが……。
「君たちの欲しい『真実』を口にしても、反抗は止まらないか。……ならば、犠牲が必要だな」
イザナミが呟くと、会場はどこからか現れた白い霧で覆われた。あちこちで悲鳴が上がる。
何も見えない。全てを閉ざしてしまう霧。誰もが、霧の中では無力だ。
――そして、霧が晴れる。
ひとつの変化がそこにあった。
自分の姪の、まだ幼い子供に過ぎない菜々子が――宙に浮かんでいた。
それも、イザナミの目の前に、だ。
何も見えない。全てを閉ざしてしまう霧。誰もが、霧の中では無力だ。
――そして、霧が晴れる。
ひとつの変化がそこにあった。
自分の姪の、まだ幼い子供に過ぎない菜々子が――宙に浮かんでいた。
それも、イザナミの目の前に、だ。
――菜々子!
体を包んでいる呪縛が解けた。
なりふりかまわず、前に飛び出す。陽介も追ってきた。
千枝、雪子もイザナミの、菜々子の前へと駆けつけた。
なりふりかまわず、前に飛び出す。陽介も追ってきた。
千枝、雪子もイザナミの、菜々子の前へと駆けつけた。
「菜々子ちゃんを離して!」「こんな小さい子に何する気よ!」「止めろ! イザナミ!」
仲間達が次々に叫ぶ。自分も菜々子に声を掛けた。
「おにぃ……ちゃん、こわい、……よぉ…………」
訳が分からないまま引き寄せられたのだろう。菜々子は顔面蒼白だった。
目にはうっすらと涙が浮かんでいる。無理もない、まだ小学生の子供なのだから。
目にはうっすらと涙が浮かんでいる。無理もない、まだ小学生の子供なのだから。
「……君たちは本当に愚かだ。いつまでもこの私に逆らうから、この子が――」
「――――死ぬことになる」
ぼん、と軽い音がした。
……それは、命を奪うには、あまりにも軽い音。
菜々子の恐怖に引きつった顔が、……舞う。首から大量の血を流しながら。
血飛沫が顔にかかった。何も考えられないままに、菜々子の首が地面へと落ちる。
ころころと転がり、こちらを向いた目は、何の感情も宿してはいない。
血を吹き出しながら空中に静止していた幼い体も、どさりと地面に落ちた。
……それは、命を奪うには、あまりにも軽い音。
菜々子の恐怖に引きつった顔が、……舞う。首から大量の血を流しながら。
血飛沫が顔にかかった。何も考えられないままに、菜々子の首が地面へと落ちる。
ころころと転がり、こちらを向いた目は、何の感情も宿してはいない。
血を吹き出しながら空中に静止していた幼い体も、どさりと地面に落ちた。
――…………菜々子!!
甲高い悲鳴。声にならない声。千枝と雪子の叫び声も聞こえる。
――この会場にいる人間の生殺与奪は、イザナミが全て持っている。
会場の空気は、先ほどの“怒り”から“悲しみ”、そして“恐怖”へと移行した。
……菜々子が抱いていた感情と同じ物に。
――この会場にいる人間の生殺与奪は、イザナミが全て持っている。
会場の空気は、先ほどの“怒り”から“悲しみ”、そして“恐怖”へと移行した。
……菜々子が抱いていた感情と同じ物に。
「くっそぉぉおぉぉぉ!! こいつ、よくも菜々子ちゃんを!」
拳を握りしめ、走りだそうとした陽介の肩を掴む。
止める言葉が、悲しみの感情に遮られて出てこない。
止める言葉が、悲しみの感情に遮られて出てこない。
「何でだよ、相棒! お前も許せねぇだろ!! こいつは、何の罪も無い菜々子ちゃんを、こんな残酷に――!!」
肩を掴んでいる手に力を入れ、首を激しく左右に振る。
気持ちは陽介と同じだ。自分も怒りに満ちているし、相手を殴らなければ気持ちは収まらない。
だが――それは出来ない。陽介と目を合わせ、言葉にならない感情を必死に伝える。
それを感じ取ったのか、陽介は、ゆっくりと拳を降ろした。
気持ちは陽介と同じだ。自分も怒りに満ちているし、相手を殴らなければ気持ちは収まらない。
だが――それは出来ない。陽介と目を合わせ、言葉にならない感情を必死に伝える。
それを感じ取ったのか、陽介は、ゆっくりと拳を降ろした。
「賢明な判断だ。さらなる犠牲は私にとっても不都合になる――駒は多い方がいい」
声色を変えずにイザナミが言う。
自分だって、飛びかかりたい。唇を噛みしめ、必死にその感情を抑える。鉄の味がした。
だが、これ以上菜々子と同じ目に合う人間は出てはいけない。それは菜々子も望まない。
自分だって、飛びかかりたい。唇を噛みしめ、必死にその感情を抑える。鉄の味がした。
だが、これ以上菜々子と同じ目に合う人間は出てはいけない。それは菜々子も望まない。
……菜々子。
あの笑顔は、もう見られない。
…………怒りがどこかへ過ぎ去り、ゆっくりと胸が悲しみの感情で満たされ始めた。
…………怒りがどこかへ過ぎ去り、ゆっくりと胸が悲しみの感情で満たされ始めた。
「納得がいかないのならば、好きなだけ騒げばいい。ただし、さらなる犠牲が生み出される事になる」
イザナミが再度会場を見渡す。
口を開く者は、もう誰もいなかった。
口を開く者は、もう誰もいなかった。
「参加者には荷物を配布する。中には食料、水、地図、筆記用具、時計、コンパス、ランタン、メモ帳が入っている。
その中には殺し合いを円滑に進める為の道具も入っている。他人から奪っても構わない」
その中には殺し合いを円滑に進める為の道具も入っている。他人から奪っても構わない」
「地図にはとある島が載っていて、そこで殺し合いをしてもらう。六×六ブロックに分かれていて、辺りは海だ。
海に入って地図の外に出ようとしたり、後で説明する『禁止エリア』に入ったりしたら、首輪が爆発する」
海に入って地図の外に出ようとしたり、後で説明する『禁止エリア』に入ったりしたら、首輪が爆発する」
首に手を当てる。冷たい金属の感触が伝わってきた。
首輪が嵌められていることすら、今まで気づかなかった。
首輪が嵌められていることすら、今まで気づかなかった。
「殺し合いがスタートしてから六時間毎に放送を行う。放送では死亡者の名前と、禁止エリアの発表を行う。
禁止エリアにいる者は、指定された時間までに出ないと死ぬことになる」
禁止エリアにいる者は、指定された時間までに出ないと死ぬことになる」
「言い忘れていたが、首輪を無理に外そうとしても爆発する。無駄な抵抗はしない方が良い」
二十四時間経過しても死者が出ない場合は、全員の首輪を爆破する。
全員でどこかに隠れてやり過ごす、なんて甘い考えは捨てるんだな」
二十四時間経過しても死者が出ない場合は、全員の首輪を爆破する。
全員でどこかに隠れてやり過ごす、なんて甘い考えは捨てるんだな」
「最後まで生き残った一人は……そうだな、褒美をやろう。
金、地位、名誉――何でもいい。死者の復活でも構わない。それと元の世界に戻してやる」
金、地位、名誉――何でもいい。死者の復活でも構わない。それと元の世界に戻してやる」
「最後になるが、君たちの『能力』についてだ」
イザナミが、ここにいる四人を見た。
「ペルソナ能力は発動可能だ。……他にも、魔法が使えたりする者もいるだろう。基本的に『能力』は使える。
ただしそのままだと面白くない。いくつか制限を設けさせて貰った」
ただしそのままだと面白くない。いくつか制限を設けさせて貰った」
語り終えたイザナミの口が弧を描く。
「――さあ。殺し合いを始めよう」
再び、白い霧が辺りを包んでいく。
そして、深い深い霧が立ちこめ、何も見えなくなった――――。
【堂島菜々子@ペルソナ4 死亡】
ゲームキャラ・バトルロワイアル 開始
主催者
【イザナミ@ペルソナ4】
【イザナミ@ペルソナ4】