意地と誇り ◆dGUiIvN2Nw
「セシル……」
……なんだ? 一体誰の声だ?
それよりも殺し合いはどうなった? ぼくは仲間を、カインやリディアを守らないと。
それにしてもこの声、聞いているととても安心する。どこか聞きなれたような……
「セシル、起きて。セシルったら」
セシルは未だぼんやりとした思考でゆっくりと目を開く。しかし自分の側にいる人物を確認すると、すぐに飛び起きた。
「ロ、ローザ……」
それが最愛の彼女だとわかった途端、セシルは自分を制御することもできずに抱き寄せた。
「い、いきなりどうしたの?」
「怖い夢を見た。とても、とても怖い夢を」
「……安心して。ここはあなたのよく見知っているバロン王国よ。あなたはその国の王様で、世界はとても平和だわ」
まるで赤子をあやすようなローザの腕。そのぬくもりを感じ、セシルは心の底から安堵した。
あれは夢だったんだ。ローザが死ぬなんて、そんなはずがない。そんな不合理があってたまるか。
「ローザ。ぼくは君と一緒に──」
……なんだ? 一体誰の声だ?
それよりも殺し合いはどうなった? ぼくは仲間を、カインやリディアを守らないと。
それにしてもこの声、聞いているととても安心する。どこか聞きなれたような……
「セシル、起きて。セシルったら」
セシルは未だぼんやりとした思考でゆっくりと目を開く。しかし自分の側にいる人物を確認すると、すぐに飛び起きた。
「ロ、ローザ……」
それが最愛の彼女だとわかった途端、セシルは自分を制御することもできずに抱き寄せた。
「い、いきなりどうしたの?」
「怖い夢を見た。とても、とても怖い夢を」
「……安心して。ここはあなたのよく見知っているバロン王国よ。あなたはその国の王様で、世界はとても平和だわ」
まるで赤子をあやすようなローザの腕。そのぬくもりを感じ、セシルは心の底から安堵した。
あれは夢だったんだ。ローザが死ぬなんて、そんなはずがない。そんな不合理があってたまるか。
「ローザ。ぼくは君と一緒に──」
「ぽよっ!!」
目を開けたセシルの視界にピンクの球体が映った。
その顔はとても心配そうで、しかしセシルが目を覚ましたことを確認すると、とてもうれしそうにほほ笑んだ。
「よかった~。このまま目を覚まさないかと思った」
弛緩したカービィの表情とは裏腹に、セシルの表情は固まったままだった。
(……そうか。夢、だったんだな)
自分に都合の良い夢を見ていただけ。現実はこっちだ。ローザが訳も分からず殺されたこっちが現実。不合理で、悪意に満ち満ちているこっちの世界が本物。
「……ずっと、夢を見ていたかった」
セシルが身体を起こして呟いたその言葉の真意が分からず、カービィは首を傾げた。
目を開けたセシルの視界にピンクの球体が映った。
その顔はとても心配そうで、しかしセシルが目を覚ましたことを確認すると、とてもうれしそうにほほ笑んだ。
「よかった~。このまま目を覚まさないかと思った」
弛緩したカービィの表情とは裏腹に、セシルの表情は固まったままだった。
(……そうか。夢、だったんだな)
自分に都合の良い夢を見ていただけ。現実はこっちだ。ローザが訳も分からず殺されたこっちが現実。不合理で、悪意に満ち満ちているこっちの世界が本物。
「……ずっと、夢を見ていたかった」
セシルが身体を起こして呟いたその言葉の真意が分からず、カービィは首を傾げた。
「……ところで、全然関係のない話なんですけど、あなたのその格好は……何?」
「何とはなんだ? ちゃんと言葉にしてくれないとわからない」
「ご、ごめんなさい」
「別に謝る必要はない」
「……は、はい」
二人で行動することになってしばらく経つが、雪子は未だにアイクに慣れずにいた。アイクのつっけんどんで無愛想な雰囲気と、元々の引っ込み思案な性格が相なって、なかなか馴染めずにいるのだ。
(まぁ、命を張って私を助けてくれたんだから、悪い人じゃないんだろうけど……)
未だに笑顔一つ見せないアイクに、雪子は戸惑いを覚えていたのだ。
自然、口も重くなり、アイクとの会話は数分に二言三言という具合になった。
そんなわけで、二人の間では大した情報交換もされていない。今歩いているのもアイクが「こういう毒々しい建物は好きになれない」と言うので、とりあえず湖に向かっているだけなのだ。
雪子からしたら、湖などよりもこういった町の方が馴染みがあるし、仲間も集まりそうな気がする。アイク自身にそう言えば町に留まってもらえるのだろうが、自分の用事に付き合ってもらってる身としてはなかなか言いにくいものがあった。
雪子は黙って歩くアイクの横顔をちらりと盗み見た。
自分よりも遥かに強い少年。なのに、自分の目的を果たすことなく雪子に付いてくれているということに今更ながら疑問を抱き始めていた。
「あの、どうして私の用事に付き合ってくれるんですか?」
「理由はさっき言ったが?」
雪子と、そして雪子の仲間を死なせたくない。アイクはそう言ってくれた。しかし、アイクと雪子は出会って間もなく、お互いのことなど何も知らない。
それどころか、あのとてつもなく強い鎧の男から雪子の身を守ってくれた時など、おそらく顔すらきちんと見ていなかっただろう。そんな人間を命懸けで守ろうとするなんて、雪子には普通とは思えなかった。
「赤の他人で、あなたにとって足手まといな私を、殺し合いなんて馬鹿げたゲームの最中に、どうして助けてくれるのか。それが知りたいんです」
「死ぬ必要のない人間が無闇に殺されるのを黙って見ているというのは俺の信念に反する。それに……」
「それに?」
「雪子をあのまま死なせたら、妹にこっぴどく叱られるような気がした」
それは雪子にとってあまりにも予想外な答えだった。
「妹さんが、いるんですか」
「幸い、この腐った催しには参加していないがな」
そう言って、アイクは初めて微かに頬を緩ませて笑った。
その笑顔から、雪子は本物の愛情を感じ取った。妹を誰よりも愛する兄の想い。アイクと出会い、まだまだ知らないことだらけではあるが、その想いだけは確かなものなのだと雪子は確信した。
「雪子は雇い主だ」
突然、アイクは言った。
「え?」
「雪子は警護役として傭兵を雇った。報酬は……そうだな。無事、あのマルクとかいう奴を倒せたら、飯をおごってもらうってのは…どうだ?」
その申し出がアイクの優しさだということに気付くのに大した時間はいらなかった。
自分を見捨ててどこかに行ってしまうのではないか。そう雪子が考えて不安になっているのだとアイクは思ったのだろう。
口数は少なく、滅多に笑わない無愛想な剣士。しかし、彼の優しさと気高さが本物だということが、雪子には分かった。
「…はい。ありがとうございます」
だからこそ雪子は、笑顔でアイクに、そう返事をすることができた。
「何とはなんだ? ちゃんと言葉にしてくれないとわからない」
「ご、ごめんなさい」
「別に謝る必要はない」
「……は、はい」
二人で行動することになってしばらく経つが、雪子は未だにアイクに慣れずにいた。アイクのつっけんどんで無愛想な雰囲気と、元々の引っ込み思案な性格が相なって、なかなか馴染めずにいるのだ。
(まぁ、命を張って私を助けてくれたんだから、悪い人じゃないんだろうけど……)
未だに笑顔一つ見せないアイクに、雪子は戸惑いを覚えていたのだ。
自然、口も重くなり、アイクとの会話は数分に二言三言という具合になった。
そんなわけで、二人の間では大した情報交換もされていない。今歩いているのもアイクが「こういう毒々しい建物は好きになれない」と言うので、とりあえず湖に向かっているだけなのだ。
雪子からしたら、湖などよりもこういった町の方が馴染みがあるし、仲間も集まりそうな気がする。アイク自身にそう言えば町に留まってもらえるのだろうが、自分の用事に付き合ってもらってる身としてはなかなか言いにくいものがあった。
雪子は黙って歩くアイクの横顔をちらりと盗み見た。
自分よりも遥かに強い少年。なのに、自分の目的を果たすことなく雪子に付いてくれているということに今更ながら疑問を抱き始めていた。
「あの、どうして私の用事に付き合ってくれるんですか?」
「理由はさっき言ったが?」
雪子と、そして雪子の仲間を死なせたくない。アイクはそう言ってくれた。しかし、アイクと雪子は出会って間もなく、お互いのことなど何も知らない。
それどころか、あのとてつもなく強い鎧の男から雪子の身を守ってくれた時など、おそらく顔すらきちんと見ていなかっただろう。そんな人間を命懸けで守ろうとするなんて、雪子には普通とは思えなかった。
「赤の他人で、あなたにとって足手まといな私を、殺し合いなんて馬鹿げたゲームの最中に、どうして助けてくれるのか。それが知りたいんです」
「死ぬ必要のない人間が無闇に殺されるのを黙って見ているというのは俺の信念に反する。それに……」
「それに?」
「雪子をあのまま死なせたら、妹にこっぴどく叱られるような気がした」
それは雪子にとってあまりにも予想外な答えだった。
「妹さんが、いるんですか」
「幸い、この腐った催しには参加していないがな」
そう言って、アイクは初めて微かに頬を緩ませて笑った。
その笑顔から、雪子は本物の愛情を感じ取った。妹を誰よりも愛する兄の想い。アイクと出会い、まだまだ知らないことだらけではあるが、その想いだけは確かなものなのだと雪子は確信した。
「雪子は雇い主だ」
突然、アイクは言った。
「え?」
「雪子は警護役として傭兵を雇った。報酬は……そうだな。無事、あのマルクとかいう奴を倒せたら、飯をおごってもらうってのは…どうだ?」
その申し出がアイクの優しさだということに気付くのに大した時間はいらなかった。
自分を見捨ててどこかに行ってしまうのではないか。そう雪子が考えて不安になっているのだとアイクは思ったのだろう。
口数は少なく、滅多に笑わない無愛想な剣士。しかし、彼の優しさと気高さが本物だということが、雪子には分かった。
「…はい。ありがとうございます」
だからこそ雪子は、笑顔でアイクに、そう返事をすることができた。
雪子達の足取りは心なしか以前よりも軽く、会話も先程よりも数倍は多くなっていた。アイクの無愛想は変わらなかったが、それでも雪子は気にならなかった。
先程までは千枝達が心配でどこか塞ぎがちだった雪子も、アイクの優しさに触れ、心なしか気も楽になっていた。
引っ込み思案な雪子には珍しく、自分から身の上話をしていると、突然アイクが彼女を庇うようにして立ち止った。
「……誰か来る。二人組のようだ。ベオクとラグズだな。天使のような出で立ちで、球体のような姿をしている。かなり小さい」
ベオクとは俗に言う人間のことで、ラグズというのは侮蔑的な意味でいわれる半獣のことだということは既にアイクから聞いて知っている。ラグズは元々の身体能力が高い者が多い。もしも敵なら強敵である可能性が高いといえる。
自然、雪子も身構える。が、アイクはすぐに警戒を解いた。
それもそのはず、正面からやって来るラグズがぶんぶんと小さな手を振っていたのだ。まったくもって邪気のない、敵意の欠片も感じさせないにこやかな笑顔を振りまきながら。
先程までは千枝達が心配でどこか塞ぎがちだった雪子も、アイクの優しさに触れ、心なしか気も楽になっていた。
引っ込み思案な雪子には珍しく、自分から身の上話をしていると、突然アイクが彼女を庇うようにして立ち止った。
「……誰か来る。二人組のようだ。ベオクとラグズだな。天使のような出で立ちで、球体のような姿をしている。かなり小さい」
ベオクとは俗に言う人間のことで、ラグズというのは侮蔑的な意味でいわれる半獣のことだということは既にアイクから聞いて知っている。ラグズは元々の身体能力が高い者が多い。もしも敵なら強敵である可能性が高いといえる。
自然、雪子も身構える。が、アイクはすぐに警戒を解いた。
それもそのはず、正面からやって来るラグズがぶんぶんと小さな手を振っていたのだ。まったくもって邪気のない、敵意の欠片も感じさせないにこやかな笑顔を振りまきながら。
「そう、なんですか。恋人を、あの場所で」
「…君が思い悩むことじゃない。すまない。突然こんな話を切り出してしまって」
アイク、雪子、セシル、カービィが集まり、互いに情報交換を始めたはいいが、セシルの抱える重い事実を聞かされると、雪子はどうしても暗い気分になってしまうのだった。
もしも千枝達が死んでしまったら……。そう考えてしまうに足る現実の厳しさを雪子は目の辺りにしているのだ。
「それで、お前はローザのために殺し合いに乗る気はないんだな?」
まるで疑っているかのような口調でアイクは言った。
「ア、 アイクさん! もう少し言い方を考えて……」
「すまん。よく注意されるんだが、どうもこれは直らないらしくてな。もう気にしないことにした」
「気にしないことにしたって……」
呆れてものも言えずに呆然としている雪子を尻目に、アイクは渋面を作った。
「そもそも、セシルの言い方が気に入らない。なんでもかんでも自分のせいだ自分のせいだと。そんな暗いオーラで親しい人間が死んだ話なんてされてみろ。嫌でも自分の友人の安否が気になって不安になる。恋人が死んで気の毒だとは思うが、お前こそもう少し言い方を考えろ」
本当にズバズバと思ったことを口にする人だ。
雪子は呆れを通り越して感動すら覚えていた。
「ぽよっ! セシルをいじめると許さない!」
身体全体で怒っていることを表現しながらカービィが前に出る。
しかし、それはセシルの手によって解かれることになった。
「いいんだ。彼の言う通りだよ。そう……僕は、誰にでも不幸の種を撒き散らしてしまうんだ」
「また始まった……」
アイクは額に手を当てて軽く首を振った。
「アイクさんは少し黙ってて!! セシルさんも、そんなに後ろ向きな考えじゃ、まだ生きているお仲間を守れませんよ」
優しく諭すように雪子は言葉を紡ぐ。
「ボクもおちこんでばかりじゃだめだと思う。にこにこしてないとしあわせがにげちゃうよ」
「うん。カービィちゃんの言う通りだよ」
二人がかりでセシルを励ましていると、そのやつれた顔で弱々しくだが、笑顔をみせてくれた。
「二人ともありがとう。君達から少し元気をもらったよ」
セシルの笑顔に、二人はまるで大切に育てていた芽から花が咲いたかのように喜び合った。
「それじゃあ、さっそく「お前達は下がっていろ」
雪子の声を遮り、アイクがすっと歩き出す。アイクの歩く先をセシルもじっと睨んでいる。
雪子とカービィだけが、意味が分からず首を傾げていた。
「僕も手伝った方が……」
「うじうじと迷ってばかりの剣なんかいらん。俺一人でやる」
アイクは七色に輝く剣を構える。
彼が最も得意とする上段の構えだ。
「姿を見せろ。奇襲なんて盗賊みたいな真似は止めてな」
出てこないこともアイクは想定していたが、意外にも素直に襲撃者は木の影から姿を現した。
「お、お前は……!」
セシルの驚いた声。その声に反応して、襲撃者がぴくりと反応する。
「カイン! 無事だったか!!」
今にも駆け寄りそうなセシルをアイクは待ての一言で制止させた。
「セシル。この殺気をお前も感じ取っているだろ。こいつは……敵だ」
セシルは黙り込む。雪子もカービィも、どうすべきか分からずにいる。その中で、カインが口を開いた。
「セシル。正直に言おう。俺は、お前に会いたくなかった。恋仇で、ローザを奪い去るお前が憎くて悪の道に染まりもしたが、それでも…俺はお前に会いたくなかった。お前がどう思おうと、お前は俺の唯一の親友だった」
すっと手を水平に挙げる。その直線上にはアイクがいる。が、その距離は遠い。弓でもあれば届くだろうが、あいにくカインの手にあるのは取っ手のついた奇妙な筒のようなものだけだ。
「あ、あれは……!!」
いち早くそれが何であるかを察し、雪子は青ざめる。
「俺は、殺し合いに乗った。ローザを生き返らせるために、敢えて悪の道に進むことを決めた。そのためなら、お前だって殺す。リディアを手にかけた俺に、迷いなどないっ!!」
「え?」
「アイク!! 避けて!!」
セシルの戸惑いと雪子の叫びが交差する中、一発の銃声が鳴り響いた。
「…君が思い悩むことじゃない。すまない。突然こんな話を切り出してしまって」
アイク、雪子、セシル、カービィが集まり、互いに情報交換を始めたはいいが、セシルの抱える重い事実を聞かされると、雪子はどうしても暗い気分になってしまうのだった。
もしも千枝達が死んでしまったら……。そう考えてしまうに足る現実の厳しさを雪子は目の辺りにしているのだ。
「それで、お前はローザのために殺し合いに乗る気はないんだな?」
まるで疑っているかのような口調でアイクは言った。
「ア、 アイクさん! もう少し言い方を考えて……」
「すまん。よく注意されるんだが、どうもこれは直らないらしくてな。もう気にしないことにした」
「気にしないことにしたって……」
呆れてものも言えずに呆然としている雪子を尻目に、アイクは渋面を作った。
「そもそも、セシルの言い方が気に入らない。なんでもかんでも自分のせいだ自分のせいだと。そんな暗いオーラで親しい人間が死んだ話なんてされてみろ。嫌でも自分の友人の安否が気になって不安になる。恋人が死んで気の毒だとは思うが、お前こそもう少し言い方を考えろ」
本当にズバズバと思ったことを口にする人だ。
雪子は呆れを通り越して感動すら覚えていた。
「ぽよっ! セシルをいじめると許さない!」
身体全体で怒っていることを表現しながらカービィが前に出る。
しかし、それはセシルの手によって解かれることになった。
「いいんだ。彼の言う通りだよ。そう……僕は、誰にでも不幸の種を撒き散らしてしまうんだ」
「また始まった……」
アイクは額に手を当てて軽く首を振った。
「アイクさんは少し黙ってて!! セシルさんも、そんなに後ろ向きな考えじゃ、まだ生きているお仲間を守れませんよ」
優しく諭すように雪子は言葉を紡ぐ。
「ボクもおちこんでばかりじゃだめだと思う。にこにこしてないとしあわせがにげちゃうよ」
「うん。カービィちゃんの言う通りだよ」
二人がかりでセシルを励ましていると、そのやつれた顔で弱々しくだが、笑顔をみせてくれた。
「二人ともありがとう。君達から少し元気をもらったよ」
セシルの笑顔に、二人はまるで大切に育てていた芽から花が咲いたかのように喜び合った。
「それじゃあ、さっそく「お前達は下がっていろ」
雪子の声を遮り、アイクがすっと歩き出す。アイクの歩く先をセシルもじっと睨んでいる。
雪子とカービィだけが、意味が分からず首を傾げていた。
「僕も手伝った方が……」
「うじうじと迷ってばかりの剣なんかいらん。俺一人でやる」
アイクは七色に輝く剣を構える。
彼が最も得意とする上段の構えだ。
「姿を見せろ。奇襲なんて盗賊みたいな真似は止めてな」
出てこないこともアイクは想定していたが、意外にも素直に襲撃者は木の影から姿を現した。
「お、お前は……!」
セシルの驚いた声。その声に反応して、襲撃者がぴくりと反応する。
「カイン! 無事だったか!!」
今にも駆け寄りそうなセシルをアイクは待ての一言で制止させた。
「セシル。この殺気をお前も感じ取っているだろ。こいつは……敵だ」
セシルは黙り込む。雪子もカービィも、どうすべきか分からずにいる。その中で、カインが口を開いた。
「セシル。正直に言おう。俺は、お前に会いたくなかった。恋仇で、ローザを奪い去るお前が憎くて悪の道に染まりもしたが、それでも…俺はお前に会いたくなかった。お前がどう思おうと、お前は俺の唯一の親友だった」
すっと手を水平に挙げる。その直線上にはアイクがいる。が、その距離は遠い。弓でもあれば届くだろうが、あいにくカインの手にあるのは取っ手のついた奇妙な筒のようなものだけだ。
「あ、あれは……!!」
いち早くそれが何であるかを察し、雪子は青ざめる。
「俺は、殺し合いに乗った。ローザを生き返らせるために、敢えて悪の道に進むことを決めた。そのためなら、お前だって殺す。リディアを手にかけた俺に、迷いなどないっ!!」
「え?」
「アイク!! 避けて!!」
セシルの戸惑いと雪子の叫びが交差する中、一発の銃声が鳴り響いた。
「……っ!」
その威力に、アイクは驚きを隠せなかった。雪子の声に反応して考えるよりも先に身体が動いていなければ、今頃は腹から血を噴き出して倒れていたに違いない。
アイクの背後にある木に開いた穴を見れば、そんな想像も容易にできた。
あんなものがあれば弓など子供の玩具のようなものだ。
「ちっ」
短い舌打ちと共に再度筒をこちらに向けようとカインが動く。
「あの銃口、穴が開いたところから鉛弾が飛び出る仕掛けになってる! 注意して!!」
あのスピードは確かに脅威。だがタネがわかればこちらのものだ。
アイクは敢えて、カインとの距離を詰めるために突進した。
戦場において、戦いを行う際に禁忌とされるものがある。それらは山のようにあるが、今回のカインとの戦いもその一つだ。
曰く、慣れない武器で戦うな。
武器とは本来、自らの身体と同化させるほどに使いこなして、初めて達人ともいえる技が扱えるようになる。それがまったく扱ったことのない武器となれば、まさに豚に真珠。武器の長所どころか、自らのスペックをも武器に振り回されることによって衰える。
今のカインがまさにそれだ。確かに銃というものを知らない人間ならば殺せもするだろう。だが、知ってしまった今となっては、明らかに銃の扱いに慣れていないカインなど、剣の技を磨き続けたアイクにとって雑兵にも劣るものだ。
雪子からの忠告に従い、筒に開いた穴がこちらを向いたと思った瞬間にはその軌道上を反復飛びで避けるようにしながら一気に距離を詰めると、そのまま面倒な筒を一刀のうちに両断した。
「ぐっ」
カインは飛びのいて距離を取るが、デイバックから武器を取り出すようなことはしない。どうやらカインの持っている武器はあれで最後だったようだ。
が、最後まで気を抜かないのが戦いの基本。戦闘慣れしたアイクにはその手の心得は十二分に把握している。
「勝負ありだ。本来ならこのまま斬り殺すところだが、雪子がうるさそうだからな。今は拘束するだけで生かしておいてやる。もっとも、今後の話し合い次第では即刻斬り伏せることになるだろうが」
アイクがそう言って拘束しようとカインに近づいた時だった。
突然、大きな笑い声が聞こえたのだ。ぎょっとしてアイクとカインが振り返ると、そこには腹を抱えて大笑いしているセシルがいた。その有様は恐怖を感じさせるに十分な光景だった。
「カインがリディアを殺した!? はっはっは!! 守ろうとした人間が、守ろうとした人間に殺された。なんて愉快なんだ。こんなにおかしいのは生まれて初めてだ。はっはっは!!
これでぼくは何もできなくなった。仇を討つことも。悲しみに耽ることも。ローザを想うことも。仲間を守ることがぼくに残った唯一の道だったのに。はっはっは!!」
それまで大笑いをしていたセシルは突然、ぴたりとそれを止め、無表情のまま虚空を眺めて呟いた。
「ぼくは……無になった」
「セ、セシルさん! そんなことありません!! カインさんだって、セシルさんがきちんと説得すればきっとわかってくれるはずです!」
「そうだよ! あきらめたらダメ!」
今にも自殺するのではないかと思われるセシルに、雪子もカービィも必死になって説得を試みた。肩を揺すっても、何を言っても、セシルの表情は一切変わらない。
「……雪子、カービィ。今すぐそこから離れろ」
「アイクさん! それはあまりにも冷た過ぎ──」
「さっさと離れろ!! そいつは既に“乗ってる”ぞ!!!」
雪子もカービィも、アイクが何を言っているのか理解できなかった。が、しかし、次の瞬間、セシルが身に纏っていた美しい金色の鎧がどす黒い暗黒の鎧へと変化した時、その全てを理解した。
アイクが全速力で雪子達の元へと走る。
間に合うか!? いや、間に合わせる!!
いつの間にか手にした剣を構え、セシルは言った。
「暗 黒」
漆黒の衝撃派が、カービィと雪子を襲った。
その威力に、アイクは驚きを隠せなかった。雪子の声に反応して考えるよりも先に身体が動いていなければ、今頃は腹から血を噴き出して倒れていたに違いない。
アイクの背後にある木に開いた穴を見れば、そんな想像も容易にできた。
あんなものがあれば弓など子供の玩具のようなものだ。
「ちっ」
短い舌打ちと共に再度筒をこちらに向けようとカインが動く。
「あの銃口、穴が開いたところから鉛弾が飛び出る仕掛けになってる! 注意して!!」
あのスピードは確かに脅威。だがタネがわかればこちらのものだ。
アイクは敢えて、カインとの距離を詰めるために突進した。
戦場において、戦いを行う際に禁忌とされるものがある。それらは山のようにあるが、今回のカインとの戦いもその一つだ。
曰く、慣れない武器で戦うな。
武器とは本来、自らの身体と同化させるほどに使いこなして、初めて達人ともいえる技が扱えるようになる。それがまったく扱ったことのない武器となれば、まさに豚に真珠。武器の長所どころか、自らのスペックをも武器に振り回されることによって衰える。
今のカインがまさにそれだ。確かに銃というものを知らない人間ならば殺せもするだろう。だが、知ってしまった今となっては、明らかに銃の扱いに慣れていないカインなど、剣の技を磨き続けたアイクにとって雑兵にも劣るものだ。
雪子からの忠告に従い、筒に開いた穴がこちらを向いたと思った瞬間にはその軌道上を反復飛びで避けるようにしながら一気に距離を詰めると、そのまま面倒な筒を一刀のうちに両断した。
「ぐっ」
カインは飛びのいて距離を取るが、デイバックから武器を取り出すようなことはしない。どうやらカインの持っている武器はあれで最後だったようだ。
が、最後まで気を抜かないのが戦いの基本。戦闘慣れしたアイクにはその手の心得は十二分に把握している。
「勝負ありだ。本来ならこのまま斬り殺すところだが、雪子がうるさそうだからな。今は拘束するだけで生かしておいてやる。もっとも、今後の話し合い次第では即刻斬り伏せることになるだろうが」
アイクがそう言って拘束しようとカインに近づいた時だった。
突然、大きな笑い声が聞こえたのだ。ぎょっとしてアイクとカインが振り返ると、そこには腹を抱えて大笑いしているセシルがいた。その有様は恐怖を感じさせるに十分な光景だった。
「カインがリディアを殺した!? はっはっは!! 守ろうとした人間が、守ろうとした人間に殺された。なんて愉快なんだ。こんなにおかしいのは生まれて初めてだ。はっはっは!!
これでぼくは何もできなくなった。仇を討つことも。悲しみに耽ることも。ローザを想うことも。仲間を守ることがぼくに残った唯一の道だったのに。はっはっは!!」
それまで大笑いをしていたセシルは突然、ぴたりとそれを止め、無表情のまま虚空を眺めて呟いた。
「ぼくは……無になった」
「セ、セシルさん! そんなことありません!! カインさんだって、セシルさんがきちんと説得すればきっとわかってくれるはずです!」
「そうだよ! あきらめたらダメ!」
今にも自殺するのではないかと思われるセシルに、雪子もカービィも必死になって説得を試みた。肩を揺すっても、何を言っても、セシルの表情は一切変わらない。
「……雪子、カービィ。今すぐそこから離れろ」
「アイクさん! それはあまりにも冷た過ぎ──」
「さっさと離れろ!! そいつは既に“乗ってる”ぞ!!!」
雪子もカービィも、アイクが何を言っているのか理解できなかった。が、しかし、次の瞬間、セシルが身に纏っていた美しい金色の鎧がどす黒い暗黒の鎧へと変化した時、その全てを理解した。
アイクが全速力で雪子達の元へと走る。
間に合うか!? いや、間に合わせる!!
いつの間にか手にした剣を構え、セシルは言った。
「暗 黒」
漆黒の衝撃派が、カービィと雪子を襲った。
「素晴らしい動きだ」
セシルは感慨もなく、そう答えた。その二メートルほど先には頭部から血を流し、片膝をつきながらも剣を構え、左手で雪子達を庇うアイクがいた。
雪子もカービィもたいした外傷はないが、頭部を強く打ったらしく気を失っているようだ。
そして、セシルとアイクの間には、まるで大蛇が通った跡のように大地が砕けていた。
(…くそっ。危険な奴だとは思っていたが、あれほどすぐに心変わりするとは)
瞬時にセシルから発せられる殺気に反応したは良いが、先程放たれた技は凄まじいものがあった。
頭部の出血はさほどでもないが、先程の技、暗黒を正面から受け止めたことで全身に打撲を被り、ひいては左手、右足の傷は致命傷とは言わないまでもかなりのダメージだ。
セシルの周りに漂う、先程まではなかった禍々しいオーラを感じ取り、アイクは自分の迂闊さを呪った。
「その剣も、ただの剣ではないようだな。僕の暗黒を多少なりとも跳ね返して相殺するとは。とはいえ、彼女達を庇って出来た傷は軽傷ではあるまい」
まさしく図星だった。
が、それでも眼光だけは決して衰えることなく、アイクはセシルを睨みつける。
「僕もパラディンとして戦ってきたからわかる。仲間をかばいながら戦うというのは辛いものだ。回復魔法を使ってくれる仲間がいない君の場合は特にね」
セシルは徐にデイバックから一本の槍を取り出した。
何をするのかとアイクが警戒するも、セシルはそれをあらぬ方向へと投げ捨てた。いや、あらぬ方向ではない。あの方向は……
「使え」
カインのすぐそばで地面に突き刺さった槍。セシルはそれを一切見ずに言った。
「ぼくは殺し合いに乗った。しかし、優勝する気はない。ぼくは君の補佐に殉ずる」
「……どういうことだ?」
それはアイクの口から洩れた言葉だが、カインが問いかけようとしていたものと同じだった。
「ぼくは生きていても仕方がない。そういう結論が出た、ということさ。しかし、そのまま死ぬわけにはいかない。ぼくには辛苦を共にしてきた仲間がいる。
彼らを助けるまで、ぼくは死ぬわけにはいかない。そして、リディアが死んでしまった今、ぼくの目的を叶える方法は一つしかなくなった」
「優勝の褒美か…!」
吐き捨てるようにアイクは言った。しかし、セシルは動じるどころか、一瞬たりとも表情を変えずに頷いた。
「カイン。その代わり、君が望むのはローザの命じゃない。この殺し合いに参加させられた全ての人間の救済だ。僕と君、二人だけになったら僕は自害する。そうなったら、君はこのゲームに参加した全ての人間を生き返らせるように願ってくれ。
全員が生き返ったことを確認すれば、僕はみんなの元を去る。誰にも会わず、誰にも関わらずに生きて行く。ローザも君に任せる。彼女には僕は死んだと伝えてくれ。君なら彼女を幸せにできる」
「下種な発想だ! それじゃマルクの思うつぼだということが何故分からない! この世にそんな都合の良いことなどあるわけがない」
「ならば、君はこの殺し合いをどう説明する」
アイクは言葉に詰まった。セシルの言わんとすることがわかったからだ。
「服を見ればわかる。君も、雪子も、カービィも、我々とはまったく異質な世界の人間だ。事情があって僕は自分の世界にはかなり詳しいんだが、それでも君達のような人間は見たことがない。
もしも僕達が異質な世界から集められているのだとしたら、マルクがその世界を渡り歩けるのだとしたら、死者を蘇生させることが常識とされる世界だってあるのかもしれない」
確かに、アイクが雪子と出会った町は、アイクの世界では到底有り得ないような構造のものばかりだった。
建築物に詳しくないアイクでも、自分達の世界よりも遥かに進んだ文明によって作り出されたものだと理解できた。雪子の語っていた道具の数々はアイクには想像もつかないものだった。
実際、アイクに不可能だと思われた技術が別世界では使われている。ならば、死者を蘇らせる技術があってもおかしくはない。
「……しかし、マルクが馬鹿正直に従うとは思えない。殺し合わせることが目的なら、俺達は死んでいなければならないはずだ」
「ならば何故さっさと殺してしまわない。僕達を悟られずに拉致できるほどの力を持ったマルクだ。殺すことなんて造作もなかったはずだ。殺さなかったのは、あくまでも僕達の命自体には興味がないからだ。
マルクにとって必要なものを得るために僕達は死ぬ必要があった。だから死ぬ。それだけだ。マルクの目的が僕達の命ではない以上、死者蘇生の技術を持ったマルクは願いを聞いてくれるかもしれない」
「かも、だろ。確証がない。そんなものに命を預けられるか」
「君はね。だが僕はできる。何故なら、僕にとって命はないに等しいからだ。そして、リディアが死んでしまった以上、ぼくが守るべき人間はカインだけ。
そのカインが殺し合いに乗っているというのだから、これが最善の道なんだ。可能性があるだけ、そちらに賭ける方が賢明だ」
もはや何を言っても無駄だ。
一種の狂気に取りつかれでもしたかのように、セシルは完全に吹っ切れてしまっていた。
度重なる悲惨な出来事で脳がオーバーヒートを起こし、負の感情そのものを忘れてしまっているのか、先程までの暗い雰囲気は一掃されている。
セシルは感慨もなく、そう答えた。その二メートルほど先には頭部から血を流し、片膝をつきながらも剣を構え、左手で雪子達を庇うアイクがいた。
雪子もカービィもたいした外傷はないが、頭部を強く打ったらしく気を失っているようだ。
そして、セシルとアイクの間には、まるで大蛇が通った跡のように大地が砕けていた。
(…くそっ。危険な奴だとは思っていたが、あれほどすぐに心変わりするとは)
瞬時にセシルから発せられる殺気に反応したは良いが、先程放たれた技は凄まじいものがあった。
頭部の出血はさほどでもないが、先程の技、暗黒を正面から受け止めたことで全身に打撲を被り、ひいては左手、右足の傷は致命傷とは言わないまでもかなりのダメージだ。
セシルの周りに漂う、先程まではなかった禍々しいオーラを感じ取り、アイクは自分の迂闊さを呪った。
「その剣も、ただの剣ではないようだな。僕の暗黒を多少なりとも跳ね返して相殺するとは。とはいえ、彼女達を庇って出来た傷は軽傷ではあるまい」
まさしく図星だった。
が、それでも眼光だけは決して衰えることなく、アイクはセシルを睨みつける。
「僕もパラディンとして戦ってきたからわかる。仲間をかばいながら戦うというのは辛いものだ。回復魔法を使ってくれる仲間がいない君の場合は特にね」
セシルは徐にデイバックから一本の槍を取り出した。
何をするのかとアイクが警戒するも、セシルはそれをあらぬ方向へと投げ捨てた。いや、あらぬ方向ではない。あの方向は……
「使え」
カインのすぐそばで地面に突き刺さった槍。セシルはそれを一切見ずに言った。
「ぼくは殺し合いに乗った。しかし、優勝する気はない。ぼくは君の補佐に殉ずる」
「……どういうことだ?」
それはアイクの口から洩れた言葉だが、カインが問いかけようとしていたものと同じだった。
「ぼくは生きていても仕方がない。そういう結論が出た、ということさ。しかし、そのまま死ぬわけにはいかない。ぼくには辛苦を共にしてきた仲間がいる。
彼らを助けるまで、ぼくは死ぬわけにはいかない。そして、リディアが死んでしまった今、ぼくの目的を叶える方法は一つしかなくなった」
「優勝の褒美か…!」
吐き捨てるようにアイクは言った。しかし、セシルは動じるどころか、一瞬たりとも表情を変えずに頷いた。
「カイン。その代わり、君が望むのはローザの命じゃない。この殺し合いに参加させられた全ての人間の救済だ。僕と君、二人だけになったら僕は自害する。そうなったら、君はこのゲームに参加した全ての人間を生き返らせるように願ってくれ。
全員が生き返ったことを確認すれば、僕はみんなの元を去る。誰にも会わず、誰にも関わらずに生きて行く。ローザも君に任せる。彼女には僕は死んだと伝えてくれ。君なら彼女を幸せにできる」
「下種な発想だ! それじゃマルクの思うつぼだということが何故分からない! この世にそんな都合の良いことなどあるわけがない」
「ならば、君はこの殺し合いをどう説明する」
アイクは言葉に詰まった。セシルの言わんとすることがわかったからだ。
「服を見ればわかる。君も、雪子も、カービィも、我々とはまったく異質な世界の人間だ。事情があって僕は自分の世界にはかなり詳しいんだが、それでも君達のような人間は見たことがない。
もしも僕達が異質な世界から集められているのだとしたら、マルクがその世界を渡り歩けるのだとしたら、死者を蘇生させることが常識とされる世界だってあるのかもしれない」
確かに、アイクが雪子と出会った町は、アイクの世界では到底有り得ないような構造のものばかりだった。
建築物に詳しくないアイクでも、自分達の世界よりも遥かに進んだ文明によって作り出されたものだと理解できた。雪子の語っていた道具の数々はアイクには想像もつかないものだった。
実際、アイクに不可能だと思われた技術が別世界では使われている。ならば、死者を蘇らせる技術があってもおかしくはない。
「……しかし、マルクが馬鹿正直に従うとは思えない。殺し合わせることが目的なら、俺達は死んでいなければならないはずだ」
「ならば何故さっさと殺してしまわない。僕達を悟られずに拉致できるほどの力を持ったマルクだ。殺すことなんて造作もなかったはずだ。殺さなかったのは、あくまでも僕達の命自体には興味がないからだ。
マルクにとって必要なものを得るために僕達は死ぬ必要があった。だから死ぬ。それだけだ。マルクの目的が僕達の命ではない以上、死者蘇生の技術を持ったマルクは願いを聞いてくれるかもしれない」
「かも、だろ。確証がない。そんなものに命を預けられるか」
「君はね。だが僕はできる。何故なら、僕にとって命はないに等しいからだ。そして、リディアが死んでしまった以上、ぼくが守るべき人間はカインだけ。
そのカインが殺し合いに乗っているというのだから、これが最善の道なんだ。可能性があるだけ、そちらに賭ける方が賢明だ」
もはや何を言っても無駄だ。
一種の狂気に取りつかれでもしたかのように、セシルは完全に吹っ切れてしまっていた。
度重なる悲惨な出来事で脳がオーバーヒートを起こし、負の感情そのものを忘れてしまっているのか、先程までの暗い雰囲気は一掃されている。
アイクは身体を奮い起こして立ち上がる。説得が無駄だと分かった以上、これ以上時間をかけてはいられない。カインがセシルの提案を呑めばただでさえないに等しい勝機が……
「わかった。お前を信じよう」
その言葉を聞いて、アイクはあからさまに舌打ちした。
「馬鹿か。あんなことを言ってるが、本心ではお前を殺そうとしてるかもしれないんだぞ」
「お前こそ、俺とセシルの何がわかる。この男がそう断言したのなら、事実そうなのだ。それを信じれるだけの友情と信頼が、俺の中にはある」
そう言って、カインは槍を地面から引き抜いた。
最悪の展開だ。傭兵団にいた頃でも、ここまでのピンチはなかった。そう思えるほどに、ここにいる二人は一騎当千、手練中の手練。しかも、今のアイクには二人も助けなければいけない無力な保護対象がいる。
「……あんたら、その恰好は騎士のものだと見受ける」
アイクはいちかばちかの賭けにでた。現状、勝機が唯一あると思われる戦法だ。弱冠ご都合主義で、敵如何では即刻殺されることもあるだろうが、何もしないよりもましだ。小さな可能性に賭ける。
それが、セシルが今やろうとしていることと同じだということに一種の皮肉を感じ、アイクは少しだけ苦笑する。しかし、すぐに顔を引き締め、その手に持つ剣を空に掲げ、それからカインの方へと剣先を向けた。
「一騎討ちを申し込む。騎士として、剣士として、あんたに勝負を挑む」
二人とも、黙ってアイクを見つめていた。
「あんたが勝ったら好きにしろ。どんな拷問だって受けてやるし、死だって辞さない。だが、もしも俺が勝ったら……せめてそこの二人を、見逃せ」
セシルではなくカインを指名した明確な理由があるというわけではない。ただ、何となく、セシルよりもカインの方が勝ちを拾いやすいと感じただけだ。
これは勘でしかないが、傭兵として瞬時に相手の力を把握する能力を培っているアイクだ。この勘は頼りになるものだと自負している。
「……いいだろう。受けてやる」
そう言ったのは、カインではなくセシルだった。
「おいセシル。そんなことをするのは無意味だ」
「無意味じゃない。君の現在の精神状況を計るには、この戦いはうってつけのものだ。僕はそれを知りたい。なに、ただの余興だ。それとも、アイクに勝つ自信がないか?」
カインは少し逡巡したが、やがて殺気でぎらついた瞳でアイクを睨み、頷いた。
「……わかった。俺が…奴を殺す」
こうして、アイクの三人分の命を背負った決闘が始まった。
「わかった。お前を信じよう」
その言葉を聞いて、アイクはあからさまに舌打ちした。
「馬鹿か。あんなことを言ってるが、本心ではお前を殺そうとしてるかもしれないんだぞ」
「お前こそ、俺とセシルの何がわかる。この男がそう断言したのなら、事実そうなのだ。それを信じれるだけの友情と信頼が、俺の中にはある」
そう言って、カインは槍を地面から引き抜いた。
最悪の展開だ。傭兵団にいた頃でも、ここまでのピンチはなかった。そう思えるほどに、ここにいる二人は一騎当千、手練中の手練。しかも、今のアイクには二人も助けなければいけない無力な保護対象がいる。
「……あんたら、その恰好は騎士のものだと見受ける」
アイクはいちかばちかの賭けにでた。現状、勝機が唯一あると思われる戦法だ。弱冠ご都合主義で、敵如何では即刻殺されることもあるだろうが、何もしないよりもましだ。小さな可能性に賭ける。
それが、セシルが今やろうとしていることと同じだということに一種の皮肉を感じ、アイクは少しだけ苦笑する。しかし、すぐに顔を引き締め、その手に持つ剣を空に掲げ、それからカインの方へと剣先を向けた。
「一騎討ちを申し込む。騎士として、剣士として、あんたに勝負を挑む」
二人とも、黙ってアイクを見つめていた。
「あんたが勝ったら好きにしろ。どんな拷問だって受けてやるし、死だって辞さない。だが、もしも俺が勝ったら……せめてそこの二人を、見逃せ」
セシルではなくカインを指名した明確な理由があるというわけではない。ただ、何となく、セシルよりもカインの方が勝ちを拾いやすいと感じただけだ。
これは勘でしかないが、傭兵として瞬時に相手の力を把握する能力を培っているアイクだ。この勘は頼りになるものだと自負している。
「……いいだろう。受けてやる」
そう言ったのは、カインではなくセシルだった。
「おいセシル。そんなことをするのは無意味だ」
「無意味じゃない。君の現在の精神状況を計るには、この戦いはうってつけのものだ。僕はそれを知りたい。なに、ただの余興だ。それとも、アイクに勝つ自信がないか?」
カインは少し逡巡したが、やがて殺気でぎらついた瞳でアイクを睨み、頷いた。
「……わかった。俺が…奴を殺す」
こうして、アイクの三人分の命を背負った決闘が始まった。
「うおおおおおおっ!!」
虹色の剣が幾多の弧を描き、カインの槍を弾き落とそうとでもするかのように素早く鋭い斬撃を繰り出す。荒々しい獣のような猛攻。その剣技と気迫に明らかにカインは呑まれていた。
その様を冷めた瞳で見つめるセシル。今のところ約束は守るつもりらしく腕を組んでただ事の成り行きを見守っている。
(くっ……。何故だ。剣技もまるで劣っているわけではないというのに……!!)
明らかにカインは劣勢だ。その事実がカインを焦らせ、その結果さらに技を鈍らせることになる。到底カインがアイクに勝つことはなさそうだ。それなのに、セシルは一向に手を出さない。
まるでトラのように突進してくるアイクに、カインは堪らず槍を振り回す。槍はリーチが長い分、確かに剣よりも有利だ。しかしそれも懐に入られていたのではまったく逆効果である。
だからこそ槍と剣での戦いは両者の距離が重要になってくる。戦いの中心となる距離が遠ければそれだけ槍が有利であるし、逆ならば剣が有利。アイクは最初の特攻めいた一撃でその一番重要なポジションをカインから奪っていたのだ。
(だがそれだけじゃない。なんだ……この力はっ!)
カインは連戦の身だ。しかし、疲労こそすれ、さしたる怪我はしていない。だがアイクは違う。セシルの奇襲でかなりの傷を受けている。それでもなお、カインを力押しできるほどに力が漲っている。
(そうだ。俺は…この力を知っている)
胴を両断しようと横なぎにされる剣を間一髪で防ぐ。
(いつも見ていた。隣で、ずっとずっと見ていた姿。これは……仲間を守り、その絆と信念を武器に戦っていたセシルだ)
時には仲間を庇い、時には率先して敵に突っ込み、いつも活路を切り開いてきたセシルと、アイクは同じ原動力を持っている。
(何故だ? 何故勝てない。何故俺は、いつもお前に勝てないんだ!)
アイクの猛攻を縫って、セシルの姿が目に入る。
ただ黙ってこちらを見据えるセシルの瞳。それを見て、カインは何故か理解できた。
(……そうか。俺は、迷ってたんだな)
リディアを殺し、吸血鬼達に自らの行いを否定され、知らぬ間に自棄になっていたのだ。
(これじゃ、この男は倒せない。こんな弱い心じゃ、信念に生きるこの男は倒せない)
セシルはそれを気付かせたかったのか。
だが、それを自覚したから何になる。ローザのためにリディアを殺し、誰も望まない未来を望むことを、今では自分すらも疑問に思っている。こんなボロボロな状態で、一体何を信じればいいというのだ。
「……カイン」
ふいに、セシルが言った。
「迷うな。恐れるな。自分を信じれないというのなら、この僕を信じればいい。お前の想いを受け入れている人間が、ここに一人いることを忘れるな」
虹色の剣が幾多の弧を描き、カインの槍を弾き落とそうとでもするかのように素早く鋭い斬撃を繰り出す。荒々しい獣のような猛攻。その剣技と気迫に明らかにカインは呑まれていた。
その様を冷めた瞳で見つめるセシル。今のところ約束は守るつもりらしく腕を組んでただ事の成り行きを見守っている。
(くっ……。何故だ。剣技もまるで劣っているわけではないというのに……!!)
明らかにカインは劣勢だ。その事実がカインを焦らせ、その結果さらに技を鈍らせることになる。到底カインがアイクに勝つことはなさそうだ。それなのに、セシルは一向に手を出さない。
まるでトラのように突進してくるアイクに、カインは堪らず槍を振り回す。槍はリーチが長い分、確かに剣よりも有利だ。しかしそれも懐に入られていたのではまったく逆効果である。
だからこそ槍と剣での戦いは両者の距離が重要になってくる。戦いの中心となる距離が遠ければそれだけ槍が有利であるし、逆ならば剣が有利。アイクは最初の特攻めいた一撃でその一番重要なポジションをカインから奪っていたのだ。
(だがそれだけじゃない。なんだ……この力はっ!)
カインは連戦の身だ。しかし、疲労こそすれ、さしたる怪我はしていない。だがアイクは違う。セシルの奇襲でかなりの傷を受けている。それでもなお、カインを力押しできるほどに力が漲っている。
(そうだ。俺は…この力を知っている)
胴を両断しようと横なぎにされる剣を間一髪で防ぐ。
(いつも見ていた。隣で、ずっとずっと見ていた姿。これは……仲間を守り、その絆と信念を武器に戦っていたセシルだ)
時には仲間を庇い、時には率先して敵に突っ込み、いつも活路を切り開いてきたセシルと、アイクは同じ原動力を持っている。
(何故だ? 何故勝てない。何故俺は、いつもお前に勝てないんだ!)
アイクの猛攻を縫って、セシルの姿が目に入る。
ただ黙ってこちらを見据えるセシルの瞳。それを見て、カインは何故か理解できた。
(……そうか。俺は、迷ってたんだな)
リディアを殺し、吸血鬼達に自らの行いを否定され、知らぬ間に自棄になっていたのだ。
(これじゃ、この男は倒せない。こんな弱い心じゃ、信念に生きるこの男は倒せない)
セシルはそれを気付かせたかったのか。
だが、それを自覚したから何になる。ローザのためにリディアを殺し、誰も望まない未来を望むことを、今では自分すらも疑問に思っている。こんなボロボロな状態で、一体何を信じればいいというのだ。
「……カイン」
ふいに、セシルが言った。
「迷うな。恐れるな。自分を信じれないというのなら、この僕を信じればいい。お前の想いを受け入れている人間が、ここに一人いることを忘れるな」
カインの瞳が見開き、先程までとは段違いの素早さで槍を回転させる。アイクがそれを防いでいる間にカインは一気に跳躍して距離を取った。
「……アイクといったな。お前の力、凄まじいものがあった。技もさることながら、その精神力はどんな騎士にも劣るまい」
アイクは何も言わない。ただ剣を構えているだけだ。しかし、肩で息をしているその様子は、限界が近づいている証拠だった。
「だが、お前に信念があるように、俺にも信念がある。お前に支えてくれる友がいるように、俺にも友がいる。俺は竜騎士だ。俺は、竜騎士としてこの殺し合いに乗り、優勝してみせる!」
次に攻めるのはカイン。地面を抉るほどの脚力でアイクに突進し、その槍を一撃二撃と繰り出す。アイクはうまくその攻撃を捌くも、防戦一方だ。カインの突きの速さはアイクから攻撃に転じる余裕をなくさせていた。
が、そこは百戦錬磨のアイク。剣を使って突きをうまく逸らしていたが、このままでは不利とみて、無理やりカインの懐に潜り込む。弾丸のような突きが頬を掠めるが、気にも留めない。
これで槍は封じたと思いきや、アイクが想像していた以上に素早くカインが後方へと下がる。構わず剣を振るうアイク。両者の武器が火花を散らしてぶつかりあう。
「…なかなかやるな。さっきとは大違いだ」
「お前こそ、俺が手を下すに相応しい相手だ」
互いに力を込めて武器を振り切る。その反動で二人とも地面を削りながら後方へ下がる。
しかし、それは小休止の合図などではない。後方へ下がったと思いきや、すぐさまアイクが距離を詰め、横なぎの一撃をお見舞いする。
が、手応えはまったくない。
カインの姿はこの場から消えていた。
「……アイクといったな。お前の力、凄まじいものがあった。技もさることながら、その精神力はどんな騎士にも劣るまい」
アイクは何も言わない。ただ剣を構えているだけだ。しかし、肩で息をしているその様子は、限界が近づいている証拠だった。
「だが、お前に信念があるように、俺にも信念がある。お前に支えてくれる友がいるように、俺にも友がいる。俺は竜騎士だ。俺は、竜騎士としてこの殺し合いに乗り、優勝してみせる!」
次に攻めるのはカイン。地面を抉るほどの脚力でアイクに突進し、その槍を一撃二撃と繰り出す。アイクはうまくその攻撃を捌くも、防戦一方だ。カインの突きの速さはアイクから攻撃に転じる余裕をなくさせていた。
が、そこは百戦錬磨のアイク。剣を使って突きをうまく逸らしていたが、このままでは不利とみて、無理やりカインの懐に潜り込む。弾丸のような突きが頬を掠めるが、気にも留めない。
これで槍は封じたと思いきや、アイクが想像していた以上に素早くカインが後方へと下がる。構わず剣を振るうアイク。両者の武器が火花を散らしてぶつかりあう。
「…なかなかやるな。さっきとは大違いだ」
「お前こそ、俺が手を下すに相応しい相手だ」
互いに力を込めて武器を振り切る。その反動で二人とも地面を削りながら後方へ下がる。
しかし、それは小休止の合図などではない。後方へ下がったと思いきや、すぐさまアイクが距離を詰め、横なぎの一撃をお見舞いする。
が、手応えはまったくない。
カインの姿はこの場から消えていた。
カインの得意技、ジャンプ。
一瞬で敵の視界から姿を消し、死角である上空から改心の一撃を狙う技。数多もの戦いで活躍したカインの最も得意とする技。
カインは、アイクの頭部に狙いをつけ、槍を突き出すべく身体を捻った。
カインは、アイクの頭部に狙いをつけ、槍を突き出すべく身体を捻った。
ヒュンヒュン……
ふいに、何かが空を切る音が聞こえた。
上空だ。思わず顔をあげる。
そこには回転しながら宙を舞い、朝日に当てられ虹色に輝く剣があった。
まずい。
長年培ってきた勘から、危険性を察知する。
その刹那、先程まで下にいたアイクが宙にあった剣を握り、大車輪のように回転して隼のごとくカインに襲いかかった。
「天 空!!!」
大気をも斬り裂く、一文字の斬撃がカインを襲った。
上空だ。思わず顔をあげる。
そこには回転しながら宙を舞い、朝日に当てられ虹色に輝く剣があった。
まずい。
長年培ってきた勘から、危険性を察知する。
その刹那、先程まで下にいたアイクが宙にあった剣を握り、大車輪のように回転して隼のごとくカインに襲いかかった。
「天 空!!!」
大気をも斬り裂く、一文字の斬撃がカインを襲った。
………妙に清々しい。
こんな気分は生まれて初めてだ。雄大な草原で、爽やかな風にでも当たっているような、奇妙な感覚。
これが死か。
全てが初めての経験だ。死にそうになったことは幾度もあったが、死がこれほど心地良いものだとは知らなかった。
冷たいはずの地面が、まるで母親の羊水の中のように暖かく感じられる。……いや、これは、地面ではなく己自身の血液による暖かさなのだろう。急激に血液がなくなり、一気に身体が冷えたからこその感覚だ。
地面に倒れ伏す男、アイクの耳に随分と遠く感じる声が届いた。
「何故、手を出した」
「君がやられそうだったからだ。言っただろ。僕にとっての希望は君だけなんだ、カイン」
「しかし……」
「志半ばで死ぬのが君の望みなのか?」
「……いや。そうだったな。すまん。助けてくれたことに感謝する」
「感謝はいらない。結果さえ残してくれれば」
……そうか。俺は、カインではなくセシルにやられたのか。
自分が誰にやられたのかも分からないくらいに、アイクはカインを倒すことに必死だった。アイク程の人間なら、一騎討ちとはいえ常にセシルを意識して動けたはずだ。それができなかったのは、一重に先に受けた傷と、カインが想像以上の強者だったからに過ぎない。
天空を仕掛ける寸前、カインに意識が集中した時に暗黒で狙い撃ちされた。
だというのに、アイクの心に過ったのは、卑怯だと相手を罵倒する気持ちでもなく、悔しいと怒り嘆く気持ちでもなかった。それは安堵だった。死の淵にいてなお、アイクはカインとの一騎打ちで敗れたのではないということに心の底から安堵していた。
一騎討ちならばカインに勝っていた。その事実が、アイクにはなによりも重要だった。アイクは、どこまでいっても純粋なまでに騎士だった。
「それにしても、先程の技は凄まじいものがあった。おそらく、攻撃と回復を同時並行する技だったのだろう。僕があくまでも一騎打ちに拘って手を出さなければ、君も僕もやられていたかもしれない」
「……だが、俺達は勝利した。大事なのは結果だ」
「その通りだ。君も、迷いを振り切れたようだ。この男との戦いは、君にとってかなり有益なものだったのだろう。先程までにはない強い意思が感じられる。そういう意味では、この男に感謝しなければならない」
「そうだな。もしも願いが叶ったら……。いや、そういう話は止めておこうか」
ただでさえ聞きとりづらい声がどんどん小さくなっていく。
(これは……もう、駄目…だな。……すまん、ミスト。約束、守れなかった)
カインが歩く音が地面を通して伝わってくる。しかしセシルは動かない。どうやらこの場を離れるのが目的ではないようだ。
では何を…? そんなことを最後に考えながら、アイクの意識はどんどん薄れゆく。
「この二人を殺せば、とりあえず戦闘は終了か」
その言葉で、既に閉じられるところだったアイクの瞳に再び炎が宿った。
こんな気分は生まれて初めてだ。雄大な草原で、爽やかな風にでも当たっているような、奇妙な感覚。
これが死か。
全てが初めての経験だ。死にそうになったことは幾度もあったが、死がこれほど心地良いものだとは知らなかった。
冷たいはずの地面が、まるで母親の羊水の中のように暖かく感じられる。……いや、これは、地面ではなく己自身の血液による暖かさなのだろう。急激に血液がなくなり、一気に身体が冷えたからこその感覚だ。
地面に倒れ伏す男、アイクの耳に随分と遠く感じる声が届いた。
「何故、手を出した」
「君がやられそうだったからだ。言っただろ。僕にとっての希望は君だけなんだ、カイン」
「しかし……」
「志半ばで死ぬのが君の望みなのか?」
「……いや。そうだったな。すまん。助けてくれたことに感謝する」
「感謝はいらない。結果さえ残してくれれば」
……そうか。俺は、カインではなくセシルにやられたのか。
自分が誰にやられたのかも分からないくらいに、アイクはカインを倒すことに必死だった。アイク程の人間なら、一騎討ちとはいえ常にセシルを意識して動けたはずだ。それができなかったのは、一重に先に受けた傷と、カインが想像以上の強者だったからに過ぎない。
天空を仕掛ける寸前、カインに意識が集中した時に暗黒で狙い撃ちされた。
だというのに、アイクの心に過ったのは、卑怯だと相手を罵倒する気持ちでもなく、悔しいと怒り嘆く気持ちでもなかった。それは安堵だった。死の淵にいてなお、アイクはカインとの一騎打ちで敗れたのではないということに心の底から安堵していた。
一騎討ちならばカインに勝っていた。その事実が、アイクにはなによりも重要だった。アイクは、どこまでいっても純粋なまでに騎士だった。
「それにしても、先程の技は凄まじいものがあった。おそらく、攻撃と回復を同時並行する技だったのだろう。僕があくまでも一騎打ちに拘って手を出さなければ、君も僕もやられていたかもしれない」
「……だが、俺達は勝利した。大事なのは結果だ」
「その通りだ。君も、迷いを振り切れたようだ。この男との戦いは、君にとってかなり有益なものだったのだろう。先程までにはない強い意思が感じられる。そういう意味では、この男に感謝しなければならない」
「そうだな。もしも願いが叶ったら……。いや、そういう話は止めておこうか」
ただでさえ聞きとりづらい声がどんどん小さくなっていく。
(これは……もう、駄目…だな。……すまん、ミスト。約束、守れなかった)
カインが歩く音が地面を通して伝わってくる。しかしセシルは動かない。どうやらこの場を離れるのが目的ではないようだ。
では何を…? そんなことを最後に考えながら、アイクの意識はどんどん薄れゆく。
「この二人を殺せば、とりあえず戦闘は終了か」
その言葉で、既に閉じられるところだったアイクの瞳に再び炎が宿った。
「…! カイン!!」
近くに落ちていた剣を拾い、カインに向かって剣を振るう。しかし、既に致命傷を受けたアイクの攻撃などカインほどの男なら容易に回避できた。
「貴様っ! まだ動けるのか!」
「………せ、…ない。……殺……させ…ない」
暗黒によって穿たれた傷から血が吹き出る。足がガクガクと震える。
しかし、それでもアイクはしっかりと二の足で立って、剣を構えていた。
もはや思考もままならない。それでもアイクはその剣先をカインに向けていた。
カインが雪子やカービィに近づこうものなら、すぐにでも襲いかかれるように。
敵は瀕死。もはや数分も立っていられないような状況。それでも、カインはアイクの鬼のような気迫を感じ取り、動けずにいた。
「……カイン。すぐに楽にしてやれ。このままでは忍びない」
セシルに言われ、カインは自らの槍を構える。そして……
ドシュ
その槍は一切ぶれることなくアイクの胸元に突き刺さった。
「これで終わ……っ!!」
思わず槍を離して後方へたたらを踏む。槍の攻撃などものともせず、アイクが剣を振るってきたからだ。
有り得ない。明らかに人間のキャパシティを越えている。セシルもカインも、アイクの執念ともいえる力に息を呑んだ。
「……俺……が、…守……る。……雪……子は……俺………が………」
剣を構えたまま、がくりと頭が垂れる。しかし、その足は未だ地面を踏みしめて立っていた。
「し、死んだか?」
狼狽を隠し切れず、セシルは呟いた。
「すぐに確認するんだ! この男は、ここで確実に殺しておかなければならない!」
カインが慌てて落ちてあった小石をアイクに投げた。それはアイクにぶつかって地面に落ちる。しかし、アイクはぴくりとも動かなかった。
セシルはそれを見て、すぐさまアイクの側に近寄り、心音を確かめる。
「……死んでいる。確かに死んでいる」
「…立ったままか?」
「ああ、確かだ。しかしなんという豪傑だ。本当に、ここで殺せてよかった」
二人は心から安堵のため息をついた。
死んでなお、仁王立ちで二人を守ろうとしているアイクの意地は、この二人の強者を確かに恐怖させたのだ。
近くに落ちていた剣を拾い、カインに向かって剣を振るう。しかし、既に致命傷を受けたアイクの攻撃などカインほどの男なら容易に回避できた。
「貴様っ! まだ動けるのか!」
「………せ、…ない。……殺……させ…ない」
暗黒によって穿たれた傷から血が吹き出る。足がガクガクと震える。
しかし、それでもアイクはしっかりと二の足で立って、剣を構えていた。
もはや思考もままならない。それでもアイクはその剣先をカインに向けていた。
カインが雪子やカービィに近づこうものなら、すぐにでも襲いかかれるように。
敵は瀕死。もはや数分も立っていられないような状況。それでも、カインはアイクの鬼のような気迫を感じ取り、動けずにいた。
「……カイン。すぐに楽にしてやれ。このままでは忍びない」
セシルに言われ、カインは自らの槍を構える。そして……
ドシュ
その槍は一切ぶれることなくアイクの胸元に突き刺さった。
「これで終わ……っ!!」
思わず槍を離して後方へたたらを踏む。槍の攻撃などものともせず、アイクが剣を振るってきたからだ。
有り得ない。明らかに人間のキャパシティを越えている。セシルもカインも、アイクの執念ともいえる力に息を呑んだ。
「……俺……が、…守……る。……雪……子は……俺………が………」
剣を構えたまま、がくりと頭が垂れる。しかし、その足は未だ地面を踏みしめて立っていた。
「し、死んだか?」
狼狽を隠し切れず、セシルは呟いた。
「すぐに確認するんだ! この男は、ここで確実に殺しておかなければならない!」
カインが慌てて落ちてあった小石をアイクに投げた。それはアイクにぶつかって地面に落ちる。しかし、アイクはぴくりとも動かなかった。
セシルはそれを見て、すぐさまアイクの側に近寄り、心音を確かめる。
「……死んでいる。確かに死んでいる」
「…立ったままか?」
「ああ、確かだ。しかしなんという豪傑だ。本当に、ここで殺せてよかった」
二人は心から安堵のため息をついた。
死んでなお、仁王立ちで二人を守ろうとしているアイクの意地は、この二人の強者を確かに恐怖させたのだ。
「……セシル。お前が仲間になってくれて助かった。改めて礼を言う」
「……」
「もしも俺一人だけだったら、さっきの戦いで死んでいた。…正直なところ、一人では限界を感じていたんだ。だが今は違う。お前という仲間がいてくれるというだけで、俺はなんでもできる気がするんだ」
「…それを言うのは僕の方だ。君がいてくれなかったら、それこそ僕は何もできない腑抜けになっていた」
セシルが守るべきだったのはリディアとカイン。だが殺し合いに生き残れるのは一人だけ。その事実がセシルに殺し合いに乗るという選択肢を奪い、自分の無力さに苦しむことしかできなかった。皮肉にも、カインがリディアを殺したことで、
その呪縛から解き放たれ、一つの目的に邁進できるようになったのだ。
だからセシルは、カインを責めるつもりなど一切なかった。リディアが死んだことは悲しいことだが、それがあったからこそ、一つの希望に縋って生きていくことを選択できたのだ。全ての人間の救済。
その大義のためなら、たとえどんな汚らしい手でも使ってやる。そう決意できたのだ。
「……なぁ、セシル。ゴルベーザのことは……」
「もしかしたら仲間になってくれるかもしれないが、袂を分かつというのなら、相手になるだけだ」
二人は沈黙した。ゴルベーザが味方になってくれればそれこそ百人力だ。だが、術が解け、自らの行いに悔いを抱いているゴルベーザが仲間になってくれるかは、二人にもわからなかった。
「……それじゃあ、さっさとこの二人も殺すぞ。いつ起きてくるかもわからんからな」
アイクに突き刺さった槍を引き抜き、カインは側で気絶している二人に槍を向ける。
カインは何の躊躇もなくその赤黒く染まった槍に力を込め、そのまま貫いた。
「……なんのつもりだ?」
貫いた、と思われた槍はその後ろをセシルによって掴まれたために、ギリギリのところで止まっていた。
「カイン。僕からの最後の頼みだ。……この二人を、今しばらく生かしておいてやってくれないか?」
カインは黙ったままセシルを見つめた。
「僕は、ここに連れてこられてからずっと塞ぎこんでいた。それを、何の打算もなく二人は励ましてくれたんだ。だからこの一回だけ、見逃してやってくれ。それで、僕は過去の自分と決別できる」
普段なら、即座にノーと言うところだ。しかし、先程アイクにあれほどのものを見せつけられて、騎士を名乗る人間で揺さぶられない者などいない。
セシルの言っていることに嘘はないというのは分かる。だが、それ以上にアイクという男の信念に尊敬の念を抱いたことが、今回の頼み事を提案した理由なのだろうとカインは感じた。
「……わかった。今回だけだぞ」
「すまない」
「お前に約束を反故されることを思えば何ということはない」
そう言ってカインは苦笑した。
釣られて、セシルも薄い笑みを浮かべ、眩しく光る朝日を眺めた。
「……こうしていると、昔を思い出す。王の命令でクリスタルを奪っていた赤き翼の暗黒騎士だった頃を」
「忘れたい過去か?」
しばらく考え、セシルは首を振った。
「いや、そうでもない。あの時があったからこそ、今の僕がいる。こうして、暗黒の道を進めるぼくがいる。確かに周りは闇ばかりだが、その果てには一つの希望の光があると信じられる道だ。この道は暗黒騎士だからこそ渡れる道なんだ」
「そうか。ならば新たな結成だな」
「なにをだ?」
「新生、赤き翼をさ」
「……」
「もしも俺一人だけだったら、さっきの戦いで死んでいた。…正直なところ、一人では限界を感じていたんだ。だが今は違う。お前という仲間がいてくれるというだけで、俺はなんでもできる気がするんだ」
「…それを言うのは僕の方だ。君がいてくれなかったら、それこそ僕は何もできない腑抜けになっていた」
セシルが守るべきだったのはリディアとカイン。だが殺し合いに生き残れるのは一人だけ。その事実がセシルに殺し合いに乗るという選択肢を奪い、自分の無力さに苦しむことしかできなかった。皮肉にも、カインがリディアを殺したことで、
その呪縛から解き放たれ、一つの目的に邁進できるようになったのだ。
だからセシルは、カインを責めるつもりなど一切なかった。リディアが死んだことは悲しいことだが、それがあったからこそ、一つの希望に縋って生きていくことを選択できたのだ。全ての人間の救済。
その大義のためなら、たとえどんな汚らしい手でも使ってやる。そう決意できたのだ。
「……なぁ、セシル。ゴルベーザのことは……」
「もしかしたら仲間になってくれるかもしれないが、袂を分かつというのなら、相手になるだけだ」
二人は沈黙した。ゴルベーザが味方になってくれればそれこそ百人力だ。だが、術が解け、自らの行いに悔いを抱いているゴルベーザが仲間になってくれるかは、二人にもわからなかった。
「……それじゃあ、さっさとこの二人も殺すぞ。いつ起きてくるかもわからんからな」
アイクに突き刺さった槍を引き抜き、カインは側で気絶している二人に槍を向ける。
カインは何の躊躇もなくその赤黒く染まった槍に力を込め、そのまま貫いた。
「……なんのつもりだ?」
貫いた、と思われた槍はその後ろをセシルによって掴まれたために、ギリギリのところで止まっていた。
「カイン。僕からの最後の頼みだ。……この二人を、今しばらく生かしておいてやってくれないか?」
カインは黙ったままセシルを見つめた。
「僕は、ここに連れてこられてからずっと塞ぎこんでいた。それを、何の打算もなく二人は励ましてくれたんだ。だからこの一回だけ、見逃してやってくれ。それで、僕は過去の自分と決別できる」
普段なら、即座にノーと言うところだ。しかし、先程アイクにあれほどのものを見せつけられて、騎士を名乗る人間で揺さぶられない者などいない。
セシルの言っていることに嘘はないというのは分かる。だが、それ以上にアイクという男の信念に尊敬の念を抱いたことが、今回の頼み事を提案した理由なのだろうとカインは感じた。
「……わかった。今回だけだぞ」
「すまない」
「お前に約束を反故されることを思えば何ということはない」
そう言ってカインは苦笑した。
釣られて、セシルも薄い笑みを浮かべ、眩しく光る朝日を眺めた。
「……こうしていると、昔を思い出す。王の命令でクリスタルを奪っていた赤き翼の暗黒騎士だった頃を」
「忘れたい過去か?」
しばらく考え、セシルは首を振った。
「いや、そうでもない。あの時があったからこそ、今の僕がいる。こうして、暗黒の道を進めるぼくがいる。確かに周りは闇ばかりだが、その果てには一つの希望の光があると信じられる道だ。この道は暗黒騎士だからこそ渡れる道なんだ」
「そうか。ならば新たな結成だな」
「なにをだ?」
「新生、赤き翼をさ」
【一日目 早朝 D-5】
【チーム 赤き翼】
【セシル・ハーヴィ@ファイナルファンタジーⅣ】
[状態]疲労(小) 暗黒騎士化
[装備]銀の大剣@ファイアーエンブレム 蒼炎の軌跡
[道具]支給品一式×4、キラーボウ(15/15)@ファイアーエンブレム 蒼炎の軌跡、不明支給品(2~6)
[思考]基本方針:カインを優勝させ、ローザを含む全ての参加者を救済する
1. カインと共に、参加者を一掃する
2. 悲しみを捨て、暗黒の道を行く
3. ゴルベーザに執着は……ない
4. 自分の命はもういらない
※カービィ、雪子、アイクの支給品を全て回収しました。虹の剣はアイクが所持しています。
[状態]疲労(小) 暗黒騎士化
[装備]銀の大剣@ファイアーエンブレム 蒼炎の軌跡
[道具]支給品一式×4、キラーボウ(15/15)@ファイアーエンブレム 蒼炎の軌跡、不明支給品(2~6)
[思考]基本方針:カインを優勝させ、ローザを含む全ての参加者を救済する
1. カインと共に、参加者を一掃する
2. 悲しみを捨て、暗黒の道を行く
3. ゴルベーザに執着は……ない
4. 自分の命はもういらない
※カービィ、雪子、アイクの支給品を全て回収しました。虹の剣はアイクが所持しています。
【カイン・ハイウィンド@ファイナルファンタジーⅣ】
[状態]疲労大、腕に軽度の火傷、
[装備]グングニル@ファイナルファンタジーⅣ
[道具]支給品一式
[思考]基本方針:優勝し、ローザを含む全ての参加者を蘇らせる
1. セシルとの約束を果たし、この殺し合いを共に勝ち進む
2. ゴルベーザには仲間になってもらいたい
3. ルビカンテを倒す
[状態]疲労大、腕に軽度の火傷、
[装備]グングニル@ファイナルファンタジーⅣ
[道具]支給品一式
[思考]基本方針:優勝し、ローザを含む全ての参加者を蘇らせる
1. セシルとの約束を果たし、この殺し合いを共に勝ち進む
2. ゴルベーザには仲間になってもらいたい
3. ルビカンテを倒す
◆
こうして、二人のか弱き者は生き永らえることが出来た。
天城雪子は、自分を守ると約束してくれた者の亡骸を前に、悲嘆に暮れるだろう。カービィは、自分が守ろうとした男に裏切られたことを実感し、落胆するだろう。
彼女達に立ち憚る現実の壁は高い。しかし、それでも彼女達は生きている。その事実をどう捉えるかは、彼女達次第。
守護者のように立ち尽くすアイクの背後で眠る二人。まるで彼女達の生を祝福するかのように、暖かい朝日が差し込んでいた。
天城雪子は、自分を守ると約束してくれた者の亡骸を前に、悲嘆に暮れるだろう。カービィは、自分が守ろうとした男に裏切られたことを実感し、落胆するだろう。
彼女達に立ち憚る現実の壁は高い。しかし、それでも彼女達は生きている。その事実をどう捉えるかは、彼女達次第。
守護者のように立ち尽くすアイクの背後で眠る二人。まるで彼女達の生を祝福するかのように、暖かい朝日が差し込んでいた。
【天城雪子@ペルソナ4】
[状態]気絶中、SP消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考]基本方針:殺し合いを止める
1:瀬多君、花村君、千枝を捜す
2:アシュナード、漆黒の騎士、鎧の男、足立に警戒
※真ENDルート、イザナミと出会う前からの参戦です。
※ペルソナはコノハナサクヤです。
※アイクと情報交換しました。
[状態]気絶中、SP消費(小)
[装備]なし
[道具]なし
[思考]基本方針:殺し合いを止める
1:瀬多君、花村君、千枝を捜す
2:アシュナード、漆黒の騎士、鎧の男、足立に警戒
※真ENDルート、イザナミと出会う前からの参戦です。
※ペルソナはコノハナサクヤです。
※アイクと情報交換しました。
【カービィ@星のカービィ】
[状態]気絶中、エンジェルカービィ
[装備]なし
[道具]なし
[思考]基本方針:ゲームには乗らない。困った人は助けたい
1. マルクはたおしたはずなのに……?
※名簿、支給品は確認済みです
※銀河に願いをクリア~の時期での参戦です
[状態]気絶中、エンジェルカービィ
[装備]なし
[道具]なし
[思考]基本方針:ゲームには乗らない。困った人は助けたい
1. マルクはたおしたはずなのに……?
※名簿、支給品は確認済みです
※銀河に願いをクリア~の時期での参戦です
【アイク@ファイアーエンブレム 蒼炎の軌跡 死亡】
【残り32名】
【残り32名】
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