11 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/06(金) 16:19:14 ID:yMlyNS4h
TIPS あの日の約束

興宮署に電話の呼び出し音が鳴り響く。
恰幅の良い男がそれを取る。定年間近だが、今だ志は全盛期のままと自他共に認める熱血刑事だ。
「はいはい、興宮署です。……おんやあ!? お久しぶりですねえ~」
いつになく声のトーンを上げる。一瞬何事かと周りの刑事たちが大石刑事を見る。

『……ええ。宿もとってあります。近いうちにそちらに行こうかと』
「なっはっは! 公安の方のお仕事は大丈夫なんで?」
『ええ。庶務に少々無理言って有給取りました。幸い今までの分が余りに余ってたんで』
「あんまり忙しくして奥さん泣かせちゃ駄目ですよう? それで、ご家族も一緒に雛見沢へ?」
『いえ、今回は単身です』
「ん~? まあいいですが。もしかして、愛人と密会とか? んっふっふ!」
『ははは、だとしたら随分可愛い愛人です。実は、古手梨花に用がありまして』
「ほう? 古手さんと面識が?」
『ええ。五年前に、ちょっとした約束をしたんです』

……。
「以上が連絡員の報告です」
「公安の刑事がRと接触ですか……。身元の見当は?」
「はい。赤坂衛、資料室では相当のやり手だそうです。もしや我々の計画を嗅ぎつけて?」
「かもしれません。とにかく、法的手段で介入されると厄介です。排除しておきましょう」
「わかりました。山狗を二、三人用意します」
「いいえ、彼を使いましょう」
報告をしていた男が顔を上げる。
聞き手の女は口元だけで笑みを作っていた。

132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/30(月) 21:34:41 ID:X5oN9cQQ
TIPS「チケットの出自」


 園崎魅音に出会えたのは僥倖だ、と富竹ジロウは思った。

 アルファベットプロジェクトの収束方針が取られ、鷹野三四の夢は潰えようとしている。
 努力はしてみたものの、やはり富竹の力では大勢を覆すことはできない。
 であるならば、せめて一時だけ、彼女の落ち込んだ気持ちだけでも覆したい。
 そう考えて、悩みに悩んだ末・・・やっと出てきたアイデアが
「甘い物をご馳走する」だったことには、さすがに富竹も落ち込んだ。
 しかし、そんな陳腐なアイデアさえ満足に実行できないのだと知り、
 輪をかけて自分自身に失望していたのが数分前のこと。

「・・・一体どんな店がいいんだろう。」
 富竹は女性の好むような店、特にデザートの質が高い店など知らなかった。
 雛見沢村にはデートをするような店はないし、興宮ではあまり出歩かない。
 出歩くにしても、デザートを食べに行くことなどない。
 逆に鷹野はそういった好みにうるさいような印象がある。
 下手な店に連れて行ってしまったが最後、ケーキの細かい焼き加減やフルーツの鮮度、
 添えられた紅茶の銘柄にまで不満足を述べる鷹野の様子が容易に想像できる。
 いや、それをきっかけに富竹をからかうことで、
 鷹野がいつもの調子を取り戻してくれるのならば、それでも構わないのだが・・・
 ・・・やはり素直に「美味しい」と微笑んでくれた方が嬉しい。

 いっそ腹痛覚悟で目に留まった喫茶店を片端からはしごしてみようか、
 などと思い余っていた時、富竹は偶然にも魅音と出会ったのであった。 
133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/30(月) 21:35:36 ID:X5oN9cQQ
「ここら辺で有名な喫茶店、ねぇ? うーん。」
 女の子は甘い物が好き→魅音ちゃんも甘い物が好き→魅音ちゃんは甘い物の店に詳しい
 ・・・と言う見事な三段論法を頭の中で展開し(魅音の土地勘をあてにした部分もあるが)
 率直に心当たりを尋ねてみる富竹。
 尋ねられた魅音の方は内心、少なからず困惑していた。
「(富竹さんってそんな甘党だったっけ・・・?)」
 数年越しの付き合いだがそういう話は聞いたことがない。
 それに興宮だって、雛見沢に比べればと言うだけで、そこまで都会ではない。
 グルメガイドに載るような有名店など数えるほどしかないし、
 喫茶店とまで条件を限定されればさらに厳しい。
 まあ、エンジェルモートはある意味で全国的に有名だが・・・
「(って、あっれぇ? もしかして?)」
「その、デザートが美味しい店とか・・・。」
 富竹が追加で出してきた条件を聞き、魅音は確信した。
「(おじさんはとんでもないカン違いをしていたのかもしれない・・・
  富竹さんは最初からエンジェルモートのことを言っていたんだよ!!)」
 残念ながら乗ってくれる部活メンバーが不在のため、
 声には出さずAAも略で確信した。
 この時期に、ここ鹿骨市で「デザートの美味しい有名な喫茶店」と言えば
 それはデザートフェスタinエンジェルモートのことに他ならない・・・!! 
 そして、特に甘い物に執着のない富竹がエンジェルモートを目指す理由は一つ!
「(富竹さん・・・あまりにも鷹野さんに相手にされないものだから
  せめてモートのウエイトレスで目の保養&煩悩の充足をしようと・・・ッ!!)」
134 :ラスト:2007/04/30(月) 21:36:37 ID:X5oN9cQQ

「み、魅音ちゃん? どうかしたかい?」
「な、なんでもないよ・・・ちょっと目にゴミが入っただけ・・・へへっ。」
「その。いきなりこんなこと聞いて、変に思われるかもしれないけど・・・。」
 男で甘い物が好きだって誤解されたらやっぱり変に思われるかな、と考える富竹。
 しかし魅音はその肩を励ますように叩く。
「変じゃないッ、ぜんぜん変なんかじゃないよッ! おじさんが保証する!
 富竹さんだって健康な人間なんだから・・・! ううッ!」
「あ、ありがとう・・・??」
 疲れたときには甘い物がいいって言うやつかな・・・
 と、富竹は何とか筋道を立てて解釈しようとする。
「わかったよ、皆まで言わなくていい・・・
 おじさんに任せといて。予約チケットとっとくからさ!」
「ええ? そこまでしてもらうのは悪いよ。」
「いいからッ!! もう・・・休めっ・・・! 休めっ・・・! ジロウ・・・っ!」
「う、うん・・・。じゃあ、お言葉に甘えるよ。」
 魅音の剣幕に戸惑いつつも、富竹は親身な協力に感謝した。
「その・・・僕・・・たち、のために、ありがとう。魅音ちゃん。」
 かなりの照れくささを感じながらも、ここは真摯にお礼を言うべきだろうと考え、
 僕「たち」と付け加える富竹。
 鷹野とのデートであると明言する意味も込めて言ったつもりだった。
 ・・・のだが、魅音のフィルタを通すとそれはまったく別の解釈になる。
「(僕『たち』・・・?

  そっか・・・監督も一緒なんだ・・・。)」
 スー・・・と涙が頬を伝う。
「いいよ、何人でも行ったらいいさ・・・! 楽しんでおいでよ・・・!」
 義郎叔父さんに頼んで、当日はウエイトレス(詩音以外)のスカートの設定を
 普段よりさらに甘くしてもらおう・・・と誓う魅音だった。

 ・・・もちろん、鷹野とのデートで店を訪れる富竹にとっては
 その心遣いは完全に逆効果となるのだった・・・。

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/10(火) 23:00:17 ID:tJnXs+tl
小鳥のさえずりが朝を告げる。
「う~ん……。」
顔にやけに硬い感触を感じて目が覚める。思いっきり伸びをすると、くわぁとあくびが出た。
鏡を確認すると、頬にはくっきりと赤い跡が付いてしまっている。どうやら机に突っ伏したまま眠ってしまったらしい。
振り返ると、同じように沙都子が机に突っ伏していた。何処となく疲れきって眠ってしまったように見える。
ええと、昨日はどうしてたんだっけ……?
昨日は放課後デザートフェスタに行って、スネークを部活に誘って、みんなで騒いで……。……そうだ。家に帰って、沙都子に手伝ってもらってアレをやっていたんだ……。
「……みー。沙都子、沙都子。起きるのですよ。」
体を揺すると、沙都子は眩しそうに目を開けた。
「ふわぁ……梨ぃ花ぁ……。……朝ですの……?」
「ええ。ほら、着替えて学校に行くのですよ。」
「……うー。」
まだ寝惚けているらしい。私がしれっと手渡したメイド服に、何の疑問も持たずに袖を通す。わざわざ指摘することでもないので何も言わないでおくことにする。
私も学校の用意をし、……机の上に無造作に散らばった紙束を整頓し、鞄に詰め込む。
「あぅあぅ……。それ、持っていくのですか……?」
羽入がためらいがちにそう尋ねる。
「別にいいでしょ。これは惨劇を回避するのに必要なんですもの。」
「本当にそうでしょうか……。」
私はあえて答えない。踵を返し、朝ごはんの用意に取り掛かった。
42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/10(火) 23:00:59 ID:tJnXs+tl
いつも通りの登校路。いつも通りの校門を抜け、いつも通りの教室の扉を開く。
「あ、梨花ちゃんおはようー! ……? なんだか眠そうだね?」
教室の中には見慣れたメンバーがすでに揃っていた。圭一までいるのはちょっと珍しい。多分沙都子のトラップ責めを多少なりとも回避しようと早起きして先に登校してしまおうとでもしたのだろう。
「おはようございますですの……。う~、これでは授業中居眠り確実ですわね……。」
もっとも、その当の沙都子はまだ眠気が抜けきっていないらしく、ふらふらと足取りがおぼつかない。……少し昨晩遅くまで付き合せすぎたか。ごめん、と心の中で謝る。
「おはよう二人とも! ……ありゃ? 梨花ちゃん、なんかその鞄やけに中身入ってない?」
流石に目ざとい。私はニヤリと笑い、鞄の中の紙束を彼らの机の上に広げた。
「……お!? これは……へぇ~。」
「うわぁ、梨花ちゃん、これ梨花ちゃんが描いたのかな、かな!?」
「へー、なかなか本格的ですねえ。」
その紙束の正体は……文房具屋で売られているような、ケント紙の原稿。
漫画家が使うようなアレだ。
そこには昨日私が沙都子と執筆した漫画が描かれている。
「私も梨花が漫画を描くなんて知りませんでしたわ。まったく、水臭いですわ。」
「みー。別に隠してたわけじゃないのです、ただ最近描きたくなっただけなのです。」
「ふむふむ……。いや、これ面白ぇよ梨花ちゃん。特にこの、悪の組織に主人公の少女が仲間たちと力を合わせて戦うシーンとか。」
「日本を影で牛耳る謎の秘密結社『東京』に、村ぐるみの奇病ね~! いやはや、梨花ちゃん意外とハードボイルド志向なんだね!」
「はぅ、まだまだ荒削りな部分もあるけど、ストーリーの勢いとキャラクタの個性は○だと思うよ! あとは画面が白黒ばかりでちょっと寂しいかな!」
「ふむ、なるほどね。今度はトーンも使ってみようかしら……。」
そう。鷹野はきっとこの世界でも惨劇を起こす。
それを乗り越えるには、部活のみんなと力を合わせなければならない。だから面倒なようでも、私は毎回こうやって彼らに終末作戦や雛見沢症候群のことを教えているのだ。

「あのー、でも梨花。」
「何よ、羽入。」
「ちゃんと話せば部活のみんなが梨花の話を信じてくれるのはこれまでの世界で分かっているのですから、わざわざ漫画仕立てにしなくてもいいのでは……?」
「……分かりやすく説明するにはこれがちょうどいいのよ。」
「でも、気のせいかその漫画だんだんクオリティが上がってきているのような……。最初はネームもなかったのに、いつの間にか下書きが入って、とうとう今回はペン入れまで……」
「あんまりしつこいとまたキムチよ。」
「あぅあぅあぅ! 最近ボクの扱いが酷いのです……!」

羽入が色々と文句を言うが、聞こえないフリをする。
「しかし梨花ちゃんにこんなにお話作りの才能があるなんてね……! ……どうだい梨花ちゃん、実は今度近くでとあるイベントがあるんだけど……」
「……ページ数次第なのですよ? にぱー☆」
魅音の目が普段とは違うオーラを放つ。私と魅音は二人してくっくっく、くすくすくすと含み笑いを交わした。
「嗚呼……梨花が、なんだか今まさに道を踏み外さんとしているのです……。育て方を間違えたかもしれないのです……。」
羽入が頭を抱えているようだが、それも無視する。
そうこうしている内に知恵がやってきて、その場はそれきりとなった。まあいい、また後で部活のみんなには話の続きをしよう。

69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/14(土) 00:17:59 ID:am/jzRng
「「「いっただっきまーす!」」」
午前の授業が終わると、教室はたちまち賑やかになる。
下級生の子たちがそれぞれ仲良しのお友達と机を寄せ合う。「今日の弁当何だろー!」「ねえねえ、さっきの黒板のとこ・・・」そんな声があちこちから聞こえて、喧騒となる。
「腹減った~・・・俺たちもメシにしようぜ!」
「昨日あれだけ食べたのに、圭一さんは元気ですわねえ。」
「甘い物は別腹だもんね。・・・でも、当分ケーキは見たくないかなあ。」
デザートフェスタだからって調子に乗って食べ過ぎた。・・・結局ゆうべは体重計に乗れなかったなあ。
でも楽しかったからまあ、いいか。
私は昨日のドタバタ騒ぎを思い返して笑う。
「レナ~、圭ちゃ~ん、さっきの問題教えて~」
魅ぃちゃんがのべーっと脱力したように腕を投げ出す。
「うん、いいよ。ノート見せてー」
「さっきってあれか? 魅音は去年習ったはずじゃねえか。」
「へっ、そんな昔のことは忘れたよ・・・」
そうおどけてみせる魅ぃちゃん。
・・・魅ぃちゃんは最近特に勉強をがんばるようになった。ちょっとレベルの高い学校に進路を変更したらしい。・・・圭一くん、頭いいからなあ。微笑ましくて、少しだけ複雑。
・・・だけど、勉強に打ちこみ始めてるのは私だって同じか。
問題の解き方を解説しながら、頭の片隅で思いをはせる。
再来年の春。私は新しい靴を履いて、新しい校門をくぐり抜ける。
そこには同じ制服を着た魅ぃちゃんと詩ぃちゃんと・・・圭一くんが待っていて、私に手を振ってくる。
梨花ちゃんと沙都子ちゃんが入学する頃には卒業しちゃってるのが残念だけど。・・・いっそ、みんなで留年してしまおうか。圭一くんたちなら本気でやっちゃいそうだなあ。
・・・そんな未来を思い描く。そんなことを思う自分に少し驚く自分がいる。
ちょっと前までは今の幸せだけを受け入れようって思ってたのに・・・。
みんなといる時間が心地よくて、ちょっとだけ欲張りになったみたい。
「ありがとうレナ! やっと分かったよ~!」
「どういたしましてなんだよ、はぅはぅ。」
魅ぃちゃんがメモを取ったノートを机にしまうと同時に、教室の廊下側の方からどよめきが沸いた。
好奇心旺盛な下級生の男の子たちが、窓枠から身を乗り出して廊下を覗き見ている。昇降口の方から誰かが歩いてきているらしい。
その人物に何となく予想がついて、私の思考はざわめいた。
70 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/14(土) 00:18:51 ID:am/jzRng
「うむ、今日は大漁だな。」
鷹揚に廊下を横切るのは、三日前に雛見沢にやってきたあの人だ。
手には大きな捕獲用の網を持っている。・・・よく見ると、その中に入っているものが激しくうごめいているようだ。
「せんせー、それ何ですかー?」
男の子の一人がその網を指さして尋ねる。
「ん? ああ、今日の昼食だ。ここの山はわりと鳥が沢山いてな・・・」
スネーク先生がそれを掲げもって説明していると、廊下の逆の方から知恵先生が姿を見せた。・・・呆れたように口が開いている。
「おお、知恵先生。どうかしたか・・・」
「・・・ちょっと職員室まで来てください。」
知恵先生はスネーク先生の言葉を遮り、有無を言わせず職員室まで連れて行くと、扉をぴしゃりと閉めた。気のせいか人目をはばかるようで、連行するといったほうが正しいようにも見える。
私はこっそり教室を出、忍び足で彼らの後を追った。

「・・・あまり目立つことはしないでください! 何考えてるんですか!」
「いや、ちょっと食糧をキャプチャーしていただけなんだが・・・」
「普通の教師は昼休みに山に行って動物をとってきたりしません!」
「そうは言うがな知恵先生・・・」
「・・・はぁ、あなた本当に潜入のプロなんですか? 頭痛い・・・」
・・・・・・・・・。
71 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/14(土) 00:19:28 ID:am/jzRng
教室に戻る。
みんなはお弁当を食べながら談笑しているところだった。特に声もかけず自分の席に着く。
「・・・どうした、レナ?」
「え?」
顔を上げる。
圭一くんが、真面目な表情で私の目を見つめていた。
「どうしたって、何のことかな、かな?」
「いや、なんか考え込んでるような様子だったからよ。なんか気になることでもあるのか?」
どきりとする。
・・・圭一くんは時々とても鋭い。表には出さないようにしていたのに、私があることを気にかけているのを見抜いてしまった。
・・・どうしよう、みんなに相談してみようか・・・・・・。
「ん? レナ、悩み事? もし悩みがあるなら言ってくれるとうれしいな。」
魅ぃちゃんがやんわりと相談を促す。みんなも私たちの会話に気づいて、こちらを見た。
・・・仲間っていうのは、隠し事なんかなしだよね。
うん、と私は決意する。言ってしまおう。
「あのね、スネーク先生のことなんだけど・・・」
「・・・スネークがどうかしたのですか?」
「あの・・・なんかスネーク先生って、ちょっと変わったところがないかな、って・・・」
「変わったところ? ・・・まあ、確かに変人って言えば変人かもねえ。さっきもなんかサバイバルしてたっぽいし。」
「ううん、そういうんじゃなくて、上手く言えないんだけど・・・」
言い淀む。
スネーク先生は沙都子ちゃんを救ってくれた恩人だ。だからこんな疑いを持つのはやはり良くないことかもしれない。
「・・・なんだか、スネーク先生って、とても大きな秘密を抱えてるような・・・・・・・・・私たちに知られたくないと思っているようなことがある気がするの。」
「秘密?」
魅ぃちゃんは首をかしげる。・・・無理もないか、私だって言ってることが抽象的過ぎると思う。
ただ、スネーク先生と会った初日から・・・あの人の周りに、良くない気配を感じるのだ。
スネーク先生本人の立ち居振る舞いに、初日エンジェルモートでこっそりと無線を交わす様子。
・・・そして、昨日保健室で岡村君と話していたこと。
話の内容は掴めなかったけれど、・・・怯えるような岡村君の声音と刃のような先生の口調、そして漏れ聞こえてきた不穏な単語。
「んー・・・悪いけど、ちょっと分からないかな・・・。具体的にスネークが私たちに秘密にしてることって、何だと思うの? それが分かんないと何ともいえないよ。」
「それは・・・ごめんなさい、私にも分からない。本当に何となくなんだけど・・・」
「うーん・・・」
みんな黙り込んでしまった。
・・・言葉にすると、自分のスネーク先生に対する疑いが根拠のないものに思えてくる。
でも、何か嫌な予感がする。こういう予感は当たることを私は知っていた。
「はぅ、そんなに真剣にならなくてもいいんだよ! ちょっとしたことだし、レナの気のせいかもしれないから。」
雰囲気を戻そうとわざと声のトーンを上げる。
・・・そうだ、本人に直接尋ねてみよう。本当に私の気のせいかもしれないし。
気のせいならそれでいい。
今の幸せが壊れなければ、それでいいんだ。

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 23:09:43 ID:A249xkje
分校の廊下を軋ませながら歩いている途中で、傍らの教室から部活メンバーの話し声が聞こえてきた。
授業が終わって生徒は大体帰ったと思っていたが、まだ残っていたのか。
「ごっめーん、今日バイトあったのすっかり忘れてたよ~。悪いけどちょっと抜けさせて!」
「おいおいまだ勝負はこれからだろー!」
魅音がオーバーに手を合わせるのが見える。
「いやほんと申し訳ないけどさ、もう遅刻する時間だから・・・」
「まったく仕様がないですわね。それでは部活はここでお開きといたしましょうか。」
「ボクは負けてたのでラッキーなのですよ。」
彼らの集まった机を見ると、トランプやボードゲームの類が散乱している。
昨日に続いて部活をやっていたのか。全く元気な子供たちだ。
「あ、スネーク先生・・・」
レナが入り口の近くに立っていた俺の姿を見つける。
「今日も部活か、元気なことだな。」
「お、スネークじゃねえか。どこ行ってたんだ?」
「放課後になって部活に誘おうと思ったら姿がないんですもの。部員なのにサボりとは感心しませんわね。」
「仕事だ、そう言うな。」
仕事があったのは本当だ。とはいっても正式の任務ではなく教師としての、だが。
「・・・スネーク。どうですか、これからボクたちと帰りませんか?」
梨花がそう誘ってくれるが、あまり暢気にしてばかりもいられない。
「悪いな、これから知恵先生とミーティングだ。下校の同伴はまた今度にしよう。」
「はぅ、先生のお仕事大変なんだね・・・じゃあ仕方ないか。」
「ああ、じゃあな。」
軽く手を振ってその場を後にする。

・・・そのまま、廊下の角にある階段を真っ直ぐに目指す。
黄昏時の学校。窓から差し込む夕焼けが建物をオレンジ色に染め、ひぐらしが絶え間なく鳴き続ける。
俺は二階の、普段は使われてない部屋の扉を静かに引いた。
107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 23:10:37 ID:A249xkje
電気のついていない部屋に、日の光が差し込んで塵を映す。
「流石に蜘蛛の巣までは張ってないが・・・ふむ。」
年季を感じさせる部屋だ。この建物はそもそもは営林署のものらしいが、分校が場所を借りる前から使われていないかのようにも思える。ここなら普通の生徒が間違って入ってくることもないだろう。
俺はざっと周りを見回すと、古びた椅子に腰掛けて無線のスイッチを入れた。
『・・・こちらスネーク。大佐、頼んでいた調査はどうだ。』
『うむ。入江京介と富竹ジロウと言う人物について、だったな。』
ノイズ交じりに返事が返ってくる。
・・・俺は昨日の部活の後、大佐たちに頼んで入江と富竹の素性を調べてもらっていた。これでも観察力には自信がある。ほとんど第六感のようなものだが、彼らの所作に怪しいものをとらえたからだ。
『まず入江の方だが、これは簡単に調べが付いた。先日報告した「東京」という組織のことは覚えているか?』
『日本の国粋主義団体、だったな。』
『ただの団体と言うよりは、日本の政財界の重鎮が肩を連ねる秘密結社と言うべきだろうな。』
『どこの国も似たような話はあるものだな。それで?』
『実は「東京」には大きく分けて二つの派閥があるのだ。流石に調査できることにも限界があるから詳しいことまでは判らないが・・・日本の独力での再軍備を目指すグループと、他国との同盟を固めようとするグループだ。入江が関係しているのは、前者の旧派閥だ。』
『ほう・・・』
話がキナ臭くなってきた。先を促す。
『旧派閥・・・コイズミ派とか言ったか。私の人脈を使ってそのデータを調べてもらったところ、アルファベットプロジェクトというものが浮かんできた。』
『なんだそれは?』
『受け取った書類には、「××県雛見沢村の風土病に関する研究プロジェクト」としか書かれていなかった。』
『風土病・・・?』
・・・どこかで聞いた気がする。
そう、この地に来てある少女から受け取った注射と、彼女が口にしていたこと・・・。
『・・・どうやらザ・メディウムの言ったことはあながち嘘でもなさそうだな。そうだスネーク、君が彼女にもらったワクチンの対象という「雛見沢症候群」だよ。』
『なんだと・・・!』
思わず腰を浮かせた。
あの男は、やはり単なる僻地の医者ではない。
『入江京介はその研究チームの長らしい。研究しているものが只の風土病なら結構だが・・・』
『・・・生物兵器(バイオウェポン)か。』
俺は知らず歯噛みする。
細菌やウイルスを使った生物兵器は、感染力・殺傷力の高さと比較的製造が簡単なことから「安価な核兵器」とも呼ばれる。
軍事力を求める勢力が研究していても不思議ではない。
『そうと決まったわけではないが、十分に注意しろスネーク。』
『ああ。ウイルスはもう沢山だ。』
『次は富竹ジロウだが・・・こちらは自衛官だな。元射撃教官だったらしい。』
『よくそんなことまで調べられたな。』
『ちょっと防衛庁のコンピュータに侵入してね。』
突如、無線の向こうから若い男の声が割り込んできた。
『オタコン?』
『やあスネーク。日本にはもう慣れたかい?』
勝手知ったる相棒だ。昨日の礼を二言三言交わす。
『ところでスネーク。』
『ん?』
『この任務が終わったら、一つ土産を頼みたいんだ。』
『何だ? 言ってみろ。』
『同人誌さ!』
・・・・・・は?
一瞬頭が真っ白になる。
『ドウ・・・何?』
『同人誌だよ、知らないかい!? いやあ、夢だったんだよね本場の同人誌! できれば日本のコミケにも行きたいんだけどそうも行かないから・・・そうだスネーク、イチロー・マエバラ先生の本を買ってきてくれ! 
こっちじゃなかなか手に入らないんだよ、オークションにも出ないし。この間なんて・・・』
ブツッ。
何も言わず無線を切る。
・・・・・・。
しばらく時間が過ぎるのを待ち、再びスイッチをオンにする。
『こちらスネーク。大佐か?』
『ああ、私だ。』
『奴は?』
『取り押さえて拘束した。』
『よし。』

139 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/03(木) 10:00:21 ID:n4MMluQj
『やはり接触する気か、スネーク?』
大佐の質問は、俺が彼ら――― 富竹と入江、「東京」の連中とのコンタクトを意味している。
『遅かれ早かれはな。聞きたいこともある。だが、今は――― 』
『うむ。やはりメタルギアが先決だろう』
『ああ』
俺がここにいる一番の理由は、メタルギアなのだから。
『〈弓〉と彼女の組織が把握している情報は掴んだのか?』
『いや、これから彼女とその件について話しあうところだ』
『我々と彼女達は協力関係にある。だが、十分に注意するんだ』
『彼女が――― 裏切る可能性が?』
殺す――― そう彼女が言ったという、少年の言葉が再び脳裏によぎる。
『そうではない。だが、我々も彼女の組織の全体を把握しているわけではない』
彼女の組織は隠匿と隠蔽を得意とする。ブリーフィングでの資料に記載されていた一文を思い出す。
『そんな不安要素がある相手とよく協力したものだ』
『今回のメタルギア製造に関わる情報には信憑性がある。万が一でもわが国に対する脅威は払拭せねばならない』

そう、俺が祖国に組するエージェントである以上、未来に死の灰を与えてはならない。
それが同盟国であろうと隷国であろうと、脅威になるのなら、殲滅する。

『わかっている』

静かに、だが力強く。 ―――俺はそう答えた。

『時間だ』
『そうか、では通信を切断する。スネーク、幸運を祈る』
大佐との通信を終了した。

……余談ではあるが。
鷹野三四についても調べなかったことを、俺はのちに後悔することになる。

俺は椅子から立ち上がる。
まだ知恵の姿も、こちらへ向かってくる足音も聞こえない。

俺は一歩、踏みしめる。
両腕を水平に上げた。
右手に見えない銃を、左手に見えないナイフを掴んで。
重心を下げ、銃とナイフを同時に構える。
そして見えない敵に視線を向け―――銃口を向けた。

クロース・クォーターズ・コンバット 通称、[CQC]

叩き込まれ、血ヘドを吐きながらも会得した、俺の身体に刻みこまれている、戦術。
銃以上に信頼を置くこの近接格闘術こそが、潜入任務を行う俺の本質を浮き彫りにする。
この村に来て、この構えを行うのは初めてのことだった。
この村の日常が、それだけ――― 俺がいた世界とかけ離れていたからかもしれない。

俺は、願わくば、その平和が、このまま、ずっと続けばと―――

「なんて―――私すらも殺しそうな殺気」
振り向く。
白い服に青い髪。
大き目の茶封筒を胸に抱きかかえた。
知恵留美子が、 そこにいた。

146 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/05(土) 21:14:52 ID:dBUSc7We
心底、恐ろしいと思った。

彼女がいつの間にこの部屋に来たのか。
或いは、最初からこの部屋に居たのか、ということ――ではない。
部屋には最初から、彼しかいなかった。
断言しよう。
彼女は、ついたった今、彼の背後に現れたのだ。
しかし、恐ろしいと思ったのは。
油断するつもりも、気の緩みがあったわけでもない、のに。
自らにとって致命傷となる距離に。
自分以外の誰かが、自分が認識するよりも早く、そこにいた、ということ。
彼――スネークは兵士である。それも世界を数度、核の危機から救ったという――英雄と称される男である。
戦場の恐怖を誰よりも身近に味わい、死の恐怖と隣り合わせになりながらも――過酷な任務をやり遂げた実績を持つ。
受けた銃弾も一つ二つでは済まない。
その都度、弾をほじくり、傷口を縫い合わせて立ち上がった――不屈の闘志とタフネスを持ち合わせている。
しかし、彼もやはり――、と言うか当然ではあるが、人間であることに変わりはない。
至近距離から銃弾を、それこそこの距離なら頭でも心臓でも容易に狙いをつけられて、簡単に殺される。

死ぬのだ。

それも、彼は相手が話すその瞬間まで、自分の背後に誰かがいることなど知らなかったのだから。
もし――彼女が、言葉の、かわりに。
〈 囲いに追って―― 殺します 〉
殺気がある――。 そう、彼女は彼に言った。
だけど、彼にとっては、
『 お前なんて、いつでも、殺せるぞ 』 と。
言われたように思った。

「そんなに身構えないでくださいよ」
知恵の言葉に彼は はっ、とした。
振り向いたまま、構えを解かずそのまま、知恵と対峙していたからだ。
「――ああ、すまない、知恵――先生」
「〈弓〉と呼んでもらっても構いませんよ。ソリッド・スネーク」
いつもと同じ――ように見える笑顔で、そう、知恵は口にした。
間違いなく、紛れもなく。
私は貴方と同じ世界の住人ですよ、と。
〈弓〉 ――それが彼女のコードネームだと、彼は認識している。
コードネームとは、複数の意味を持って呼称されるものだ。
一つは、その任務の上で与えられる仮の名前。
一つは、その作戦、目的を隠匿するため。
そして一つは――、 脅威となりうる対象の特徴を明記するため。
彼女のコードネームは、彼女の身体的能力、もしくは戦闘方法を物語るものではないのか――。
そう、彼は読み取っていた。
事実、それは中々当たりに近いのだが。
呼んで字の如く弓矢を使う――ようには見えない。
ならば銃器か。それに近い何かか。

「ほら。突っ立ってないで、こっちにいらしてください」
知恵が埃の積もった机を一つ、お互いの中央に移動させた。
窓から差し込む夕日が、机の影を伸ばす。
「さあ、それでは」
「……これが、」
「ええ、そうです」
これが――目的の。
「どうぞ」
そう促されて。
スネークは茶封筒から引き出された数枚の写真を凝視した。
153 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/06(日) 07:48:11 ID:9xbEs5TN
「まず、一枚目は」
知恵が大きく引き伸ばされた一番上の写真を左に避ける。俺も視線でそれを追う。
「今から一ヶ月ほど前、隣県の林道とトンネルで撮影されたものです。」
確かにその写真には、林道と思える場所――山間特有の斜面や木々が風景として写りこんでいる。
そしてその手前から向こう、写真の、一番奥に、ぽっかりと、真っ黒い喉を見せるかのように、トンネルがあった。
そして、そのトンネルのさらに手前に、不自然に、余りにも不自然に。トレーラーが一台、通過しようとしていた。その様子が写っている――写真であった。
不自然と思ったのは、とても単純な理由で、そのトレーラーが、日本という国では公道を走行する許可が得られないものだから。
反対車線いっぱいまで、幅があるトレーラーなど、この国の道路は走れない。
そして高さもおそらく、トンネルにひっかからない程度の隙間しか残さないくらいだろう。
このあまりにも特徴のある、トレーラーの積荷。
それが――目的の。
「この不審な車両は隣県からこちら――輿宮市の市外に向かいその途中で、消息を絶ちました」
トレーラーの積荷には青いビニールシートが被せられていて、中身を確認することはできない。
「さらにほぼ同時刻」
二枚目の写真に指が添えられた。
「先ほどのとは違い、今度は西方からこちらに」
まったく、同じようなトレーラーが写っていた。積荷の厚みが違うように思える。
「やはりこれも山間道を走行。その後に」
消息不明。か。
「三枚目と四枚目。これはこの二枚から三日ほど後になって撮影されたものですが」
これも――同じような車だ。
「違うところといえば?」
「今度は北部と南方から、くらいですかね」
それと、積荷の中身だ。と俺が言うと、恐らくそうでしょうね。と彼女は返した。
写真は、この四枚ですべてのようだった。
「で?」
俺は聞き返す。
「以上です」
「以上?」
そんなはずはない。
「知恵――先生」
「〈弓〉でよいと言いました。言いにくければ知恵で構いません」
「ああ――それなら、知恵」
「はい」
どうも調子が狂う。
「俺の目的は知ってるな」
「ええ。貴方の目的だけではなく、あなた自身のこともよく存じていますよ。ソリッド・スネーク。アメリカCIAの所属、特殊部隊FOXHOUNDきってのエージェントであり、メタルギア破壊のスペシャリスト、そして――、英雄」
「俺は英雄なんかじゃない」
「世間はそうは思いませんよ」
「いい迷惑だ。で?」
「私達が調べたかぎり、そして手元にある情報とその証拠は、これで以上です」
「それでは――いや、これでは」
足りない。動くとするなら、まだ。
「ええ。ですから」
ここから先が――貴方の本分でしょう。と、彼女の視線が告げる。
「……まあな」
確かに、その通りだ。
隠れているものなら探し出す。見つからないものでも見つけ出す。俺は今までずっと――、そうやって生きてきた。
そしてこれからも。
「ですが、わかっていることもあります」
「それは?」
俺は促す。
「このトレーラーは4台が4台とも、ここを目指していた。ということです」
「消息不明なんだろう。それなら」
確証は無い。そのトレーラーがこの雛見沢に来たという、明らかな証拠が。
「この雛見沢に」
知恵がそう言いながら、地面を指差した。
「地下数千メートルに達する規模で、巨大な空洞を設け、そこに秘密裏に施設が建設されている」
――と言ったら、貴方は信じますか。と、知恵が言った。

159 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/07(月) 00:13:26 ID:y+lyDSr5
「……地下施設だと……!」
知恵の言葉は、余りにも突拍子も無いものだった。
「ええ。4台のトレーラーは、そこにメタルギアと」
「生物兵器を持ち込んで、開発しているというのか……!?」
裏付けは取れていませんから推測ですが、大筋そういうことです。と、知恵は頷いた。
だが、そう考えれば、辻褄は合ってくる。
まず第一に、この村は小さく、そして狭い。
トレーラーにせよ、メタルギア開発に関わる人間の出入りにせよ、話題に上らないということは、まずありえない。
そして第二に、この村にも、近隣の集落にも、輿宮市はどうかわからないが――、大規模な工場は一棟だってありはしない。
この数日の間に、自分の足で歩き回り、自分の目で確認してきたのだ。
この村には、何かを隠すことはできない。そういう場所だ。
隠れ蓑には完全に、不向きの場所だ。
だからこそ、なのかもしれない。
そういう場所を、あえて選んだからこそ。
一旦隠しきれたのなら、秘密の保持は磐石のものだ、ということか。
「しかし、だ」
疑問が浮上する。
「それほどの規模の施設を、一体、何時、どうやって?住民達には一切気付かれなかったとでもいうのか?」
隠し通すには無理のある場所だ。誰かは知っていてもおかしくはない。
知恵に問う。すでに西日は沈みかけていて、逆光で知恵の表情は闇が覆う。
知恵の答えは、
「この村の風土病は、最近発見された病気ではありません」
まったく見当違いのものだった。
「……知恵、一体何を」
「雛見沢村にのみ流布する風土病、明確な治療法はいまだ確立されておらず、軽度、中度なら自然治癒による完治の見込みがありますが、一旦本格的な発症をすれば完治させるのは難しい」
「……」
俺は口を噤んだ。
知恵は、こんなときに意味のないことを言う人間ではない。
黒く、表情が見えない女は、淡々と話を続ける。
「どういう感染経路で、どういう状態なら発症するのか。その経緯も判明していません。今現在も、研究を続けている段階ということですが」
誰かから聞いた話だ。誰からだったか。
そう、ザ・メディ―― 梨花 ――古手梨花、だ。
そして、この病の名前も。
「ただ、どこに行った人間が一番―― 発症しやすいかは 当時 よくわかったんだそうです」
「……どこだ?」
聞くまでも無いが。
「戦場――、ですよ」
雛見沢症候群――、過度のストレスや不安から引き起こされる、死の病。
「当時の――第二次世界大戦中の旧日本帝国陸軍は戦争法における最大の違反――細菌研究による大量虐殺計画も視野に入れていた、そうです」
勝つために――
「その中で特に注目されたのが、敵国人に抗体がないであろう、風土病の利用。その研究をするために、風土病のある土地に研究施設を、設けたといいます」
ただ、当時は戦時中ですから――、と知恵は続ける。
「施設は塹壕や、深く掘った穴に設置したんだといいます。そして、この雛見沢にも」
山中に深く穴を掘って――、その中に作ったと、言った。
「では……その施設に」
あるのか――メタルギアが。
「当時は深く掘った、と言ってもせいぜい50から100メートル、ですよ」
けれど、そこからさらに、掘り進めたなら。
できちゃうかも、しれませんよねぇ。
と、顔の見えない女が笑った――ように感じた。
160 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/07(月) 00:14:21 ID:y+lyDSr5
「一切、気付かれなかった、と?」
同じ質問を、もう一度問う。
「当時は、そんなことに構っている余裕がなかったんだと思いますよ」
「当時?戦時中は100メートル程度の施設だと」
「新しい施設が完成したのは、今から4年前のことと推測されます」
「4年――前、だと?」
何かあったのか。何が――、何があった。
「ええ。4年前です。貴方は、旧鬼ヶ淵死守同盟 という組織をご存知ですか」
その名前も聞いた。誰かが言った――、誰、だったか。
「4年前――昭和54年、この村は、絶望から救われたんですよ。全員の力を合わせて、ね」
「それは、どういうことだ?」
「当時、この雛見沢は滅亡の危機に、さらされていたんです」
「滅……亡、だと?」
「ええ。……といっても、住民が全員死ぬという話ではありません。ただ、この村が歴史から抹消される。ということです」
抹消。
それは、一体。
「どういうことなんだ?」
「この村に、ダム建設の話が持ち上がったんです」
ダム建設。
生きている人以外。
みな等しく水の底に、沈めと。
「愛する故郷を守るべく、雛見沢の住人は一致団結して、強大ともいえるこの国の政策に、立ち向かいました」
国策の非道を世間に解き。
雛見沢の素晴らしさを訴え。
大衆の関心を引いて自分達の正当性を知らしめた。
そして――、それでも村に牙を向く者たちを、徹底的に、排除した。
そう、あの頃の、この村は確かに、強大な敵を前にして一歩も引かず、全員が一丸となって立ち向かっていた。
皆、それだけで精一杯だった。
この地に住まう住民も。
話題を聞きつけては飛んでくるマスコミも。
時事も。
世間も。
大衆も。
この時、この場所にいるものは全て。
一つのことに目を奪われたのだ。

もし、仮に、この村でひっそりと。
この話題よりも目立たずに、この問題よりもドス黒い陰謀が暗躍跋扈していたとしても。

果たして、誰か気付けたのだろうか?

「全ては――陽動。ダム建設も、住民達の反対運動も」
マスコミの目をそちらに追いやることも。大衆の関心をそむけることも。

メタルギアの、ために――。

「一体、そこまでして、ここで作られているものとは」

単なる戦争の道具だけで、本当に済むものなのか?

戦士としての勘が、ひっきりなしに警鐘を鳴らしていた。

164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/08(火) 07:43:38 ID:Tbxbu/wS
凛。
何処かで、鈴の音が響いた。
職員室の軒先に吊るされた風鈴が、強く吹いてきた夜風に当たって揺れていた。
すでに、陽は見えない。
闇に包まれた部屋の中、男と女が、対峙している。
蛇は窓の外から夜の風景を眺める。
弓は傍にあった椅子に掛けている。
無言が、静寂と同化する。ひぐらしの鳴き声も、もう聞こえない。
すでに聞くべきことは終わった。
後は動くだけだ。
蛇は、そう判断した。
部屋を出る。教室の出入り口の扉に、指をかけようと、
「――それでは、今度は私達の依頼を」
聞いていただけますか。と闇の中で女が囁く。
「依頼……?」
彼はもう、輪郭すら曖昧な女を見やった。
貴方に必要な情報は渡しました。なら――、貴方も応えてくださいな。と。
ギブアンドテイク。お互いに求めるものが、あるのなら。
彼女にも、いや彼女達にも、欲しいものが、あるのか。
「……何だ?」
彼は尋ねる。
「私達も――ある情報が欲しいんですよ」
情報の報酬は、情報で返せ。
そう言うことらしい。
「貴方がこれから調査をする、メタルギアの」
ある一部分の詳細が、知りたいんです。と、闇が揺れた。
「その一部分、とは?」
促す。けれど。
「貴方は――今回の件、何が、一番、気にかかりますか?」
細菌兵器と搭載されたミサイル? それともメタルギア? それとも――、 こんなことを、しでかす、何者か、ですか?
「……全て、だ」
そう、ここで起こっている、全ての事柄。
それを全て、明るみにしなくてはならない。それが、彼の任務なのだから。
――欲張り。
かすかな笑い声と共に、闇が呟いた。それから、
「この雛見沢には」
一種の領域――、東洋で言う霊場、と呼ばれるものがあります。と、知恵は言った。
「霊場?」
一種のパワースポットですよ。と彼女は答える。
「東洋では霊場とは、神に一番近い場所、神が住まう場所。そして、神の恩恵を授かる場所と言われています」
古来より神そのものとして信仰され、祭られる場所。
そこで。
「一体――、それが」
なんだと。
「霊場とは神そのもの。そして、神とは 無限 の代名詞」
「……無限……」
特にこの雛見沢は、一種の異界とも言うべきもの、と。闇が、再び囁いた。
「この地で造られる鉄の巨人に、その力を、与えようとしています」
「それは?」
「鉄の器を持って、無限を具現しようとしています。私達が欲しい情報は、その鉄の心臓のこと」
無限に動く、発動機。
「永久機関」
ですよ、と。
凛。
再び、風鈴が鳴った。
172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/08(火) 22:56:55 ID:353AUiCg
紫煙が縒れた糸のように、しばらく伸びたあと、ほどけるように薄らいで消えた。
知恵と彼女の出した「依頼」という要求に、彼はまだ、答えを保留している。
時間稼ぎのために火をつけた煙草であったし、問題を整理する時間を得るための一服でもあった。
この部屋で彼女と話し合い。にわかには信じられない話を連続で聞いたせいか、今更何を聞いても驚きはしない。
それでも――、風土病を研究して創り出された生物兵器。そしてそれを搭載した核と同義、いや、それ以上にもなりうる――、ミサイル。
メタルギア製造のために地下に建設されたという施設。そしてそれを隠蔽するための4年前のダム建設工事。
そして――、無限の動力を生み出す、永久機関なる炉心、か。特に永久機関は、彼女達が最も重視する秘宝のようだが。
「永久機関。にわかには信じがたいものだが」
お互いに向かい合った夜の教室で、彼は正直な感想を口にする。
相手の姿は、目が慣れてきたせいもあって輪郭程度は見えていた。が、その表情までは伺い知ることができない。
「なければ無い。或いは全くの別物 ――であったとしても、調べてもらわなければなりません」
無限というものは、人の手に余りますから――。と、女は云った。
「あんた達はそれを信じているようだが」
茶化すつもりで、言った一言だったが。
「ええ。信じていますよ」
私達は、神を信仰していますから――。と、彼女は言った。
神と無限は、同義、か。
「エネルギー問題は即座に解決しそうだがな」
煙草を携帯灰皿に揉み消しながら、秘宝の有効利用を提案する。勿論、ユーモアとして。
空気が、変化するのを感じた。
彼女を見る。彼女は――。表情無く彼を、唯見つめているだけだったが。
歴戦の勇士が竦み上がるほどの畏怖すべき威圧が、その目に篭っていた。
「欲しいですか」
貴方達も。神の奇跡が。
欲しいと云ってみろ。そのときは――。
――囲いに、追って――

「あんた達もだろう」

お互い様さ、と。
二本目の煙草に火を点しながら、あっさりと彼は言った。
殺気が晴れていくのを、蛇は感じた。
やがて、くす、と彼女の声。
「本当に――、不思議な人ですね、貴方」
「たまに言われる」
さて、と彼は吸い込んだ煙を吐き出して、
「今度は俺からも質問させてもらおう」
と言った。
「……ええ」
何です?
「どうして喋ったんだ?」
何を、という表情をした。
「あんたが最後に言ったその永久機関――。それはあんた達の目的そのものだ。しかも、かなり重要な」
返答はない。しかし沈黙が、その肯定に変わる。
「その永久機関が本当にあるとして――、それは俺のような部外者に探索させるようなものじゃ決してないはずだ」
あんたのさっきの態度からもわかる。自分達以外の人間が手にすることを、絶対に許さないような。文字通り秘宝のはずなのに。
「……その理由は、三つほどあります」
「何だ?」
「一つは、貴方がメタルギアの専門家だということ」
餅は餅屋、ということか。
「二つ目は、それはかなりの確率で、ここでしか製造できないものである、ということ」
ここがメタルギアの製造場所に選ばれた理由、か。
「三つ目は、貴方がいい人だということが、わかりましたから」
「どうして?本当の俺は極悪人かもしれないのにか?」
これも、まぁブラックジョークとして言ったのだけど。
「沙都子ちゃんを、助けてくれましたから」
だから、信じてみたくなりました。
彼女は、その日の別れ際にそう、言ったのだった。
182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/10(木) 00:24:44 ID:znLP06mB
学校を出て、しばらく歩いた先の林道で、俺は道を外す。
太い杉の木の陰に隠れ身を屈め、通信機を作動させた。
『こちらスネーク。大佐か』
『うむ。私だスネーク』
いつもの落ち着いた老齢な口調が聞こえる。
『〈弓〉から情報を得た』
『こちらでも聞こえていた。〈弓〉の依頼を、結局は承諾したようだな。しかし、大変なものがここには隠されているようだ』
『ああ。正直、向こうの撹乱作戦かと思ったほどだ』
本当に、信じられない事を次々と話されたのだ。そうも思いたくなる。
『おまけに、最後まで釘を刺されまくったしな』
もし、それをアメリカなんぞに持っていったら、私が必ずぶっ殺しますよ(はぁと)
……いや、ニュアンスはだいぶ違うが。そんな風なことを言っていた。と思う。
『だが彼女がすぐにでも、こちらに牙をむくということはないだろう』
俺は彼女と話し合い、多少なりとも彼女の意図を把握したつもりではある。
これからの彼女の動向を、俺はそう推測する。
『それについての確かな根拠はあるのか? スネーク』
『俺の勘だ』
俺の答えに大佐は、信じようスネーク。と言った。
『それにしても、永久機関か。この世に無限などあるとは思えんが』
いや、そうでもないですよ、大佐。と、別な声が割って入る。
『オタコンか?』
『ああ、僕だよスネーク。それにしてもさっきのアレはないよ。せっかく僕が……』
『……大佐。任務に戻る』
『ちょ、ちょっと待ってよスネーク。悪かった。もう言わない』
『本当か?』
『疑うなぁ。まあいいけど』
と、少しすねた様子で若い科学技術者は言葉を続ける。
『無限というものは、科学の分野――、量子学や宇宙学でも必ず取り沙汰される問題でね。あるのか、それともないのか。これはまあ終わりの無い命題みたいなものなんだけど』
『なんだオタコン。お前は無限信者か』
長くなりそうな話だったから、早急に腰を折ってみる。
『そんなんじゃないよ。だけど、無限というものがもし存在していたとするなら。それはどういうものか。というよりは、どう使われるのか。というほうが重要だね』
どう、使うか。
『無限の動力、もしくはそれを生み出す、燃料みたいなものじゃないか』
そのぐらいしか思い浮かぶものはない。
『そのぐらいなら今ある材料でも代用が効くさ』
核燃料とかね。と、彼は言った。
『なくならない。ということは脅威では、ない?』
『いや、そんなことはないよ。こっちのスタミナが切れてるのに向こうが元気いっぱいじゃ、勝ち目なんてないだろ? でもそれじゃただの ――物量勝負さ。ただの力押しなら、そんなに怖いものじゃないよ。対処の方法だってある』
『そうかな。俺は何度倒したと思ってもゾンビのように這い上がってくるやつにこそ背筋が震えるが』
これは俺の、正直な気持ちでもあった。
『とにかく、実際にどんなものなのか見てみないことには、こんな論議も役に立たないな』
『その通りさスネーク。頼んだよ』
『ああ』
通信機の向こうの気配が変わる。
『それではスネーク、今後の君の行動を考えよう。まず永久機関については、確かな情報を手に入れ、実物を確認してからどうするかを決めよう』
『ああ。ないものでどうのこうのいうのは見苦しいしな』
『取らぬ狸の皮算用 って言うのよ。この場合はね』
メイ・リンの合いの手が入る。
『……。次にメタルギアが開発されているという地下施設についてだが、〈弓〉からの情報では、明確な場所の特定まではできなかったな』
『いや大佐、それがまんざらでもない。彼女が言った生物兵器についての情報があったな』
『対戦中の実験施設か。そこからさらに深く掘り進めた可能性がある。だったな』
『その施設のことを調べれば、辿り着くとは思わないか?』
『うむ。ほかに手立てが無い以上、そこから調べるのが得策かもしれんな』
『この件については、接触する相手の目星はもうつけてある。現在で、生物兵器の基――雛見沢症候群を、最もよく理解している男だ』
『うむ。入江京介――、彼に接触してみるべきだろうな』
『そのつもりだ』
『そうか。頼んだぞスネーク』
通信を終える。
俺は立ち上がり、そして。
次の目的のために、また一歩踏み出した。

187 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 00:14:26 ID:Yd/v0p+s
TIPS: 愛国者の、愛国者による、愛国者の為の「  」

…それは最早、政治ではなく支配である。
G.Wの実験は成功し、戦争の操作は可能となった。
これにより、愛国者達の情報コントロールによる
世界的秩序の生成は確固たる物となった。
―――それなのに、何故、今になって生物兵器なのか?―――
「G.Wによって情報操作は確固たる物となったはずです。
 それは戦場の操作も可能になりつつあるはず、それなのに、
 何故今になって生物兵器を作るのですか?
 これからは対人兵器として量産可能な小型の兵器を開発するべきなのでは?」
「これは上からの指示だ。私にはそれ以上の情報を与えることはできない。」
「…そうですか。」
私には納得がいかなかった。確かに鷹野氏の、終末計画にはお誂え向きの兵器である。
その点においては間違いないだろう。
しかし、愛国者達にとってとても利益になるとは私には思えない。
このような、超大型のメタルギアが、一体何の為に開発されているのか?
唯ひとつ分かることは、目的がなんであろうと私はもうこの計画から抜けだすことができないということだ。
何しろ、私―野村は、地下数千メートルの場所にいるのだから…

188 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 01:29:02 ID:Cpo9wx4m
TIPS:ものぐさカレー

最初は本当に、殺そうと思っていた。
欲しい情報だけ手に入ったら、あとはもう、ネズミ捕りにかかったネズミのように、えいっ、って。

でも、あの日のことでちょっとだけ、彼に対する印象は変わったの、だと思う。
あの子は本当に不幸で、笑顔を見せたのなんてついこの間からだって思っていた。
その前のあの子とその学級は、いつも喧騒。怒号。悲鳴がありふれていたのだし。
私は教師としてしか彼女達に向き合う術を知らなくて。
あの子はいつも影を落とした視線で私を睨めつけて。
だから、あの日のあの、電話のあとも。
一年前の感じにもどるだけなんだな。って。

けど彼は、あの子を守った。
それこそ全力で。
隠さなきゃならない裏の顔まで全開にしていたのだし。
どうしてこんな人が潜入任務のプロなんて呼ばれてるんだろうって思ったし。
馬鹿じゃないのかな、とも思ったし。
任務と関係の無いことに、何ムキになってるんだろうって。

だけど。
それがとっても、羨ましく思ったのは、一体何でなんだろう?

そう思ったからこそ、私は彼に、私が知っていることを教えた。
勿論、全部じゃないけれど。
彼なら、何とかしてくれるんじゃないかって、馬鹿げた期待を寄せて。

彼はこれから、彼の役割をこなす。
私もこれから、私の役割をこなそう。
彼は動くけれど。
私は動かない。
動かないで待つ。
待つことが、私の役割なんだと思う。

だから私は、一介の教師、知恵留美子として。
彼が持ってくる最良の結果報告を待つことにしよう。


……今晩の夕食、チキンカレーにしようかな……

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/06(日) 06:33:13 ID:hgaXmf/6
Tips 再び


「あぁん!もうむしゃくしゃするんね!!」

叫びながら拳をテーブルに叩きつけるが、そのくらいで怒りは収まらない。

「なんね!?あのスネークとか言う奴は!ワシになんの恨みがあるっちゅうねん!!」

怒りを吐き出そうとするも、はけ口が無いので吼える事しかできない。
いつもなら沙都子へと向かう暴力も今では行き場所を探していた。

あの男を思い浮かべ、顔を怒りに歪めると、アザが思い出したかのようにズキズキとしてくる。
やられた仕返しをしたいと思うが、あの男ともう一度会ったらと思うと、恐ろしかった。

だが、何とかして沙都子から通帳の事を聞き出さないと…。

「ほんま、おもろないんね!!」

スネークから逃げ出した後、鉄平は輿宮に住んでいた。
なんの為に雛見沢に行ったかというと、輿宮でのほとぼりを冷ます為であった。

しかし、それができなくなった今は、輿宮で隠れ住まう生活しかできなかった。
そんな生活を続けていれば金が底をつきてくる。
151 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/06(日) 06:41:00 ID:hgaXmf/6
…やはり通帳が必要だ。

いかにして通帳を手に入れるか鉄平は2つ考えた。
1つはあの男に見つからずに沙都子を探し出し、輿宮へ連れて行って聞き出すこと。
もう1つは悟史を探し出し、聞き出すこと。

沙都子が知らないと言い張れば知らないのだろう。
…と、なると聞き分けの良い悟史が知っているはずなのだ。

どちらにせよ、もう一度雛見沢に行かなければならないという結論に至った。

もし、あの男や園崎組に会ったら…
嫌な考えが頭をよぎるが、すぐにそんな考えを振り払う。

そして、鉄平はバイクにまたがり雛見沢を目指して走っていくのだった。

一言叫びながら…。


「沙都子…通帳……どこじゃあッッ!!?」

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最終更新:2007年05月19日 19:20