黒猫√ 初デート編

黒猫「貴方にしてはやけにはっきり言うわね」
京介「あぁ。俺とデートして欲しい」
黒猫「そう。……でも、今までだって何度かしてきたじゃない」
京介「え?……いや、前のは別の用事がイロイロあっただろ。そう言うんじゃなくてさ、お前と……、ふたりで……」
黒猫「貴方、もうすぐ三年でしょう?こんな事してていいのかしら」
京介「う……、確かにその通りなんだが 黒猫「良いわよ」」
京介「え?」
黒猫「良いと言ったのよ。それで?何時にするの」
京介「あぁ、…じゃあ、今度の日曜二時に駅の改札で待ち合わせな」
黒猫「わかったわ」

~デート当日~

京介「すまん。……遅れた」
黒猫「あと二十秒したら帰るところだったわ」
京介「す、……すまん」
黒猫「うふふ。冗談よ」
京介「おう、……実はさ、コレを買いに行ってたんだ」
黒猫「紅帯十字架(リボンクロス)?ハッ、………まさか、それで私の力を封じようと?ウフフフフ、甘いわね。私ほどにもなればその程度で呪具に抑えられる魔力量ではないのよ」
京介「いや、…単純にお前に似合うかと思って買ってきたんだが」
黒猫「一一ッ!? ///」
黒猫「そ、そ、そう。解らずに買ってきたと言うの………。この男、危険ね…。早いウチに芽を摘んでおかないと」

京介「取り合えず、秋葉原でいいのか?」
黒猫「それであの女は満足するかもしれないけれど、皆がそうと思ってもらっては困るわね」
京介「あの女?って桐乃のことか…?いや、違うぞ‼俺はそういう意味で言ったんじゃなく………」
黒猫「貴方は一つ大きな前提を忘れているわね…………。今日は、…デートなのよ///」
京介「…………。そ、そうだったな///」
京介「よし、それじゃ御台場に行くか」
黒猫「ええ、期待しているわ」

それから俺達はたまたまイベントのあったネットラジオの公開録音を一緒に見て、バカでかいホットドッグを食べたあと、腹ごなしに海浜公園をブラブラすることにした。

京介「もう、日が沈むな……」
黒猫「冬ですもの。フフフ、冬は良いわね。凍てつく空気、夜永く、私達のような闇の眷属に最良の季節だわ」
京介「……そうだな」
黒猫「あら、貴方はしおらしいのね。いけないわ。私の溢れでる魔力に当てられたのかしら」
京介「あぁ、俺はお前に参っちまってるよ」
黒猫「え?」
京介「海をバックにしてお前を見てると、街中で見てたよりもずっと可愛いと思ってさ」
黒猫「な、なにを…」
京介「朝、買ってきたクロス…、着けてくれよ。店員に着け方教わってきたんだ」
黒猫「そ、そうね。貴方が私の邪気に当てられて苦しいようだから、仕方なく付けてあげるのよ。感謝なさい」
京介「あぁ、そうだな」
………………
…………
……

京介「えっと、一周ぐるっと首を回して、十字架の中心を見せるように菱形に結んで、と………。よし、出来たぞ」
黒猫「そう、……ありがとう。しかし、何か褒美をあげなくてはならないわね」
京介「いや良いって、別に……。やりたくてやってんだし」
黒猫「そうもいかないわ。そうね、キス………、しても良いわよ///」
スッ
京介「え? うわっと、…(目を閉じて、顔ちけー)///」
黒猫「どうしたの?はやくなさい///」
京介「あ、…あぁ、い、…いくぞ?」ギュッ
黒猫「ん…、ちゅ、……はぁ、はぁ……はむ、んちゅ。れろ…」
……………
………

黒猫「イ、イキナリ舌を入れるなんて…、何をッ」
京介「え~~~!?キスってそういう事じゃなかったのか!!」
黒猫「あ、貴方ごときが…、舌を、舌を入れるなんて百年はやいわ。取り合えず、この事はあの女にもきつく抗議しておかなくてはならないわね」
京介「バッ、頼むからやめてくれ!殺されちまう」
黒猫「あら、もうすっかり暗くなってしまったわね。そろそろ帰りましょう」
京介「不自然に話を反らすな!」
黒猫「わんわんキャンキャンと落ち着きがないわね」
京介「それ…、俺の所為かよ」
黒猫「違うのかしら?」
京介「違うわ!!」
黒猫「強い言葉を使うと弱く見えるわよ」
京介「何所かで聞いたような言葉を……」
黒猫「それに……」
京介「…?」
黒猫「私はまだ貴方から大事な言葉を聞いてないわ」
京介「あぁ、……悪い」ダキッ
京介「大好きだ」
黒猫「遅いのよ/// 莫迦///」

……
黒猫「私も貴方に知ってもらいたいことがあるわ。これから時間あるかしら?」
京介「まだ六時だしな。時間なんていくらでもあるが……」
黒猫「そう、……なら、これからウチに来て頂戴」
京介「いいぜ。でもその前に……」
京介「手、繋いで帰ろうぜ」ギュッ
黒猫「か、勝手になさい!」

黒猫「ここが私の家よ」
京介「ずいぶんとレトロ調だな……」
黒猫「クスッ、そうね。ものは言いようだわ。さ、入って」
京介「お邪魔しまーーっ!?」
黒猫「あら、貴方達……。ただいま。この人はね、お姉さんの高校のお友達で高坂京介さんっていうの。ほら、挨拶なさい」
妹1,2「「こんばんわー」」
京介「あ、あぁ、こんばんわ」スッ
妹1,2「一一一一ッ!?」ビクッ
京介「よろしくな」ナデナデ
黒猫「貴方のおウチみたいにキレイではないけれど、どうぞ上がって頂戴」
京介「あぁ……(二人きりってんでもないんだな)」
黒猫「フフ、どうしたの?残念そうな顔して……」
京介「いやぁ、そんなことないぞ!!」
黒猫「そう、なら夕飯までその子達をあやしてて頂戴」
京介「いいけど、一一夕飯ってお前が作るのか?」
黒猫「そうよ。………安心なさい。毒なんて入れないわ」
京介「いや、疑ってねェけど……」
黒猫「あら、彼女の初手料理がこんなに早く出て来る幸運に泣いて感謝する所よ」
京介「お、……おう」
黒猫「貴方達も……。お姉さんお料理してくるから良い子にしてるのよ」ナデナデ
妹1,2「「ハーイ」」

妹1,2 壁|ω・)・) ジーーー

京介「(すげー見られてんな)」
京介「だ、大丈夫…。怖くない、怖くないぞー」ソー
妹1,2 ビクッ
京介「(な、なんだか厚い壁を感じるな……)」
京介「ほ、ほら。親指が……外れるんだぞーー(流石に子供騙し過ぎるか…?)」
妹1,2 ビクッ ピャーーー
京介「逆効果だったか…」
京介「(アイツがこのくらいの時はどうしてたかなんて覚えてねーな。まぁ、その時は俺もこんなにいかつくなかったろーけど……)」
黒猫「惨敗したの?」
京介「観てたのか?」
黒猫「あの子達が『お兄ちゃん親指が取れた』って私を呼びにきたのよ」
京介「あぁ、それな…。古い手品だよ。ほら」
黒猫「だそうよ。ほら、大丈夫みたいだからちゃんと遊んでもらいなさい」
妹1,2 黒猫|ω・)・)チラッ
京介「ありがとな」ワシワシ
妹1,2「「………///」」
黒猫「もうちょっと掛かるからしっかり面倒みるのよ」
京介「りょーかい……」
妹2「コレ………」
京介「………?」
妹1「ご本読んで…」
京介「あぁ、いいぞ。ほら、だっこしてやるからここ座って」
妹1,2 トテトテ スク
京介「一一一一昔、むかしあるところに…」
………………
…………
京介 ガオーーーーー
妹1,2 キャーーーーー
黒猫「フフフ」
……
黒猫「出来たわ、机を出して頂戴」
京介「お、早いな。よし、片付けするぞー」
妹1,2 ハーーイ
黒猫「少し時間が掛かってしまったわ」
京介「帰ってきて休みなしなんだから、よくやってる方だろ」
黒猫「ふふ、そうね。普段のご飯はどれくらい食べるのかしら」
京介「並程度だと思うぞ…。って、うお!かなり作ったな、大変だったろ」
黒猫「たいしたことないわ…。さ、ご飯にしましょ。お箸もった?」
妹1,2「「ハーイ」」
黒猫「そう、それじゃ」
一同「「「「いただきます」」」」

一同「「「「ご馳走様でした」」」」

黒猫「さて、片付けだけど…、あなた、手伝って頂戴」
京介「あぁ、いいけど。放っておいていいのか?」
黒猫「今からはメルルの放映があるからその子達は忙しいのよ」
京介「ふーん」
黒猫「『アイツも今頃、テレビに噛り付いているのかな』という顔ね」
京介「な、何を言って……」
黒猫「図星のようね。私の前で他の女の事を考えないで…、不愉快だわ」
京介「他の女って妹だぞ!?」
黒猫「なら尚更ね。解った?」グイッ
京介「わ……、わかった」

黒猫「そう。じゃあ、食器を運びなさい」
京介「おぉ」
黒猫「返事は『おぉ』じゃなくて『はい』でしょう?」
京介「はい」
黒猫「よく出来ました」ナデナデ
京介「(なんでこんなドキドキしてんだ、俺は?)」
…………
………

ジャー ジャバジャバ パシャパシャ

黒猫「で、どうかしら?」
京介「あぁ、お前達、姉妹って仲良いんだな」
黒猫「じゃなくて!」
京介「ん?」
黒猫「『ん?』じゃないわ…。まさか、本当に分からないのかしら?」
京介「え?あ、いや………。美味かった!あんだけ作れるなんてすげーよ。ホントにびっくりした」
黒猫「まったく、ここまで言わないと分からないなんて……。次からはもっと早く言いなさい」
京介「おぉ…….、じゃなくて!はい!」
黒猫「それと、明日からお昼は一緒に食べることにしましょう」
京介「それはちょっと、あからさますぎるんじゃ?」
黒猫「嫌なの?何か私と食べることで不都合があるのかしら?」
京介「ないです。むしろ、嬉しいです」
黒猫「ふふふ」
黒猫「あら、眠ってしまったのね」
京介「遅くなっちまったな……。迷惑になるだろうしそろそろおいとまするか」
黒猫「その前に、この子達をお布団に運ぶのを手伝って貰えるかしら」
京介「そのぐらいお安い御用だ」
ギュッ ダキッ
黒猫「二人一緒に運べるなんてね」
京介「どこ持ってけば良いんだ?」
黒猫「こっちよ」
一一一一一一一一一一一一一一
黒猫「お布団を敷くからすこし待って頂戴」
京介「しかし、このくらいが可愛い盛りだよな」
黒猫「ふふふ、そうかしらね。そうかも知れないわね」

京介「お前も立派にお姉さんやってるんだな」
黒猫「そうね、あなたと同じ。………さ、敷けたわ」
京介「この者達の身柄は預かった。我が元で育ちいずれ、お前に牙を剥くことになろう」ギュッ

妹1,2 クークーー スースーー

黒猫「なんてこと!油断したわ……。まさか、こんな所にまで天界の手が伸びていたというの!?後悔なさい!私の眷属に手を出した事を!!」
黒猫「しかし、こうなったら私一人の力で立ち向かわなくてはならないという事ね。でも、私の魔力では例え低級魔術を行使してもあの子達を巻き込んでしまう……。先ずはアイツから引き離さないと……」
黒猫「あけびの花は地に堕ち、紅く爛れた酸鼻な血に酔わん。右にみずちを、左に雷を、かの者に死霊の叫びと鉾槌を!」

シーーーーーーン

京介「………………」
黒猫「………………」
妹1,2 スーーースーーー クーークーー
黒猫 トテトテトテ ボフッ
京介「………………や、やられたーー」
黒猫「莫迦……」

京介「じゃあ、今度こそ本当に帰るよ。メシ、美味かったぞ。ありがとうな」
黒猫「いずれまた作ってあげるわよ」ギュウ
京介「ん、……また明日も会えるってのに、やっぱり、お姉ちゃんでも甘えたい時はあるもんか?」ナデナデ
黒猫「違うわ。ただ、今宵の星の巡りが人間には危険だから、加護があるようにと祈ってあげてるのよ。分からないのなら黙っていなさい///」ギューー
京介「そりゃ、ありがとうな///」ギューー
………………
…………
……

こうして俺たちの初デートは終わり、帰宅した俺は連絡忘れで親父に絞られ、初デートという事でいくらかの恩赦は得られたものの行きがけには上機嫌だったはずの桐乃の八つ当たりとも思しき理不尽な暴力を受けることとなったのだった。

~黒猫√ 初デート編 了~

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2011年01月07日 22:26