京介「お前のノーパソなんか画面青くなったぞ」

京介「変な英語みたいなんも出てきたしどーなってやがんだ?」

桐乃「な……な…。アンタまさか…」



京介「もしかして不良品かコレ? なんも反応しねーし」

黒猫「…で、顔面におもいっきりビンタされたわけね」

京介「ひでー話だと思わねぇか? たかがノーパソの画面が青くなったくらいでさ!」

黒猫「たかが…ねぇ。それくらいで済んでありがたく思いなさい」

京介「んだよ。お前の桐乃の肩を持つのか? どっちの味方だよ」

沙織「こればっかりは京介氏に非があるかと思いますぞ」

京介「沙織まで…。わかったよ、テメェらに愚痴った俺が馬鹿だったよ」

黒猫「全く。拗ねる前に人の話をよく聞きなさい」

沙織「桐乃殿のノーパソは、ただ画面が青くなっただけではありませぬぞ」

京介「…て事は何か意味があるってことか?」

黒猫「俗に言う蒼画面。オペレーティングシステムに何らかの異常が発生した…という警告画面よ」

京介「おぺれーてぃんぐ…? なんだよそりゃ」

沙織「そうですなぁ…。京介氏にもわかりやすく言うならばゲームの電源を入れた時に表示される『おきのどくですが』と同じ様なものでしょうか」

京介「な…なんだよそりゃ!? 俺の今までクリアーしてきたエロゲのデータが全部消えるってことか?」

黒猫「ニュアンス的にはそんな感じね」

京介「うーん…。それでもあんなに怒る事かねぇ? もう一回クリアーすりゃいいじゃないか」

黒猫「はぁ。これだから下界の人間は困るのよ」

京介「なんだよ、その可哀想な物を見るような目は」

黒猫「パソコンというのはゲーム機と違って色々なデータを保存できるのよ」

京介「そんな事位知ってるって。俺も音楽とか画像を保存してるしな」

沙織「ほほぅ…。京介氏の保存している画像。興味がありますな」

黒猫「話を脱線させないで頂戴。どうせ眼鏡の半裸画像がほとんどでしょう」

京介「うるせーよ! お前も充分脱線させてるだろうが!?」

黒猫「…あら、否定はしないのね」

沙織「…とまぁ、パソコンと言う物は各々の記録を保存している大事なアルバムとでも言えるのでござるよ」

京介「アルバム……。てことはそのブルースクリーンってやつになっちまったって事は」

黒猫「最悪の場合はOSを再度インストールし直したり、ハードディスクを交換する事もあるわね」

沙織「つまり、データがすべて消えてしまうと言う事なのです」

京介「データが消える…。って事はアイツの想い出も一緒に消えちまうって……そういう事かよ?」

黒猫「えぇ。そういう事ね。現世から全ての楔を解き放ち、その魂は異界へと転移してしまうの」

京介「そんな…そんな馬鹿な事ってあるのかよ!? 俺は…俺は桐乃になんて事をしちまったんだ」

黒猫「あら、ようやく事態の深刻さに気がついたのかしら」

京介「あぁ…。俺は馬鹿だ、大馬鹿野郎だぜ。桐乃の…、アイツの大事な想い出を奪っちまうなんて…」

沙織「京介氏、そんなに自分を責めないで下され」

京介「けどよ!」

黒猫「フフフ…。アナタも運が良いわね。ここに私という存在がいたことに感謝なさい」

京介「なに……? それじゃ直せるのかお前が!?」

黒猫「センヨウの堕天使と謳われた私に不可能な事など無いわ」

京介「く…黒猫ぉ! 今日ばっかりはお前が堕天使に見えるぜ!」ガシッ

黒猫「……ちょ、ちょっと。きゅ、急に手を掴まないで頂戴…」

沙織「まぁ実のところ再起動で何とかなる場合も多いのですが」

黒猫「アナタは黙っていて!」

京介「じゃあ早速修理してくれよ、アイツを安心させてやりたくてさ」

黒猫「ふむ…。私の魔力を持ってすれば片手間で出来るのだけど。それじゃ面白くないわね」

京介「面白くない? どういう事だよ」

黒猫「いい事を思いついたわ。アナタが直してあげなさい」

京介「俺が!? 馬鹿言うなよ、それが出来ないからお前に頼んでるんじゃ」

黒猫「もちろんそんな事不可能だというのはわかっているわ。だからコレを使うのよ」サッ

沙織「それは、携帯のハンズフリーのイヤホンでござるな」

黒猫「これで私が指示を出すから、アナタは指示通りに動いて頂戴」

京介「いや。なんでそんな面倒臭いことするんだよ。お前がウチに来てパパっと直してくれればいいじゃんか」

沙織「拙者も京介氏に同感かと。その方がきりりん氏も喜ぶでしょうぞ」

黒猫「そ…それが…嫌なのよ」

京介「はぁ…? なんで嫌なんだよ。きっとお前に感謝すると思うぜ」

沙織「ははーん。さては黒猫氏照れているのでござろう」

黒猫「ち、違うわよ!? 借りを作りたくないだけよ」

京介「全く。どいつも素直じゃねぇな」

桐乃「…で? 何の用なのよアンタ。良くもノコノコとアタシの前に顔を出せたわね」

京介「桐乃……聞いてくれ」

桐乃「なによ? 急に改まって」

京介「俺はお前に取り返しの付かない事をしちまった…。お前のノーパソをブルースクリーンってヤツにしちまったんだ」

桐乃「な、…なんでアンタがそれを知ってんのよ」

京介「それなのに俺はお前の気持ちも知らずに、あんな無神経な事を言っちまった」

桐乃「ちょっと…止めてよ。そんなマジになって。分かればいいんだから…」

京介「いや、そんなんじゃ俺の気がすまねぇ! だからお前のノーパソを貸して欲しいんだ」

桐乃「そんなのどうするのよ。コレはブルースクリーンが…」

京介「俺が直すんだ」

桐乃「アンタがぁ? 馬鹿言わないでよ、素人のアンタがそんな事できるわけないじゃない!」

京介「いいや。出来るさ、必ずな」

桐乃「な、なんでよ!?」

京介「だって、俺はお前のお兄ちゃんなんだからな」

桐乃「え…………」

京介「だから俺に任せろ。俺がお前の想い出を取り戻してやるから。な?」ポン

桐乃「う、……うん。わかった」


黒猫「………」

沙織「どうしたでおじゃるか黒猫氏? 携帯をもったまま激しい歯軋りをして」

京介「…、聞こえるか黒猫? 何とか修理まで取り付けたぞ」

黒猫『鮮明に聞こえているわよ。アナタ達のやり取り一語一句逃さずにね…』

京介「ん? なに怒ってるんだよお前」

黒猫『怒ってなどいないわよ! 怒ってなどいないわ』

桐乃「ちょっと、何アンタ一人でブツブツ言ってんのよ? 直してくれるんじゃないの」

京介「あぁ、悪い悪い。今からやるからな」

沙織『さぁ、黒猫氏。はやく京介殿にご指示を』

黒猫『分かっているわよ…。それじゃあ蒼画面の種類を教えて頂戴』

京介「種類…? ブルースクリーンはブルースクリーンじゃないのか」

沙織『正確にはそこに表示されている英文の事でござるよ』

京介「あぁ、白い文字のコイツか。これが何の役に立つんだ?」

黒猫『はぁ…。下界の人間を相手にするのも疲れるわね』

京介「だからなんだよ。その可哀想な物を見るような溜息は…」

黒猫『よくお聞きなさい。そこに表示された文字は一見、古代クロンギ語に見えるでしょうが。実はエラー内容や問題を起こしたファイル名が表示されているのよ。センヨウの堕天使である私ならば…』

京介「……なぁ黒猫」

黒猫『なにかしら?』

京介「ただでさえややこしいんだから、こういう時くらい中二設定ってヤツは控えてくれないか?」

黒猫『う、うるさいわね! アナタは言われた通りにやりなさい』

ガチャリ

桐乃「どう兄貴? 直りそうなの」

京介「え!? お、おう。センヨウの堕天使に任せとけってばよ!」ビクッ

桐乃「センヨウ…? 堕天使ぃ」

京介「あ、いや何でも無いぞ!」

桐乃「しっかりしてよね。あの地味猫の中二病が移ったのかと思ったじゃん」

京介「ば、馬鹿言うな!? んなわけないだろ、うん!」

黒猫『……地味はひとりでいい。…地味はひとりでいいのよ』ギリギリッギリギリ

沙織『く…黒猫氏。だからどうしたでおじゃるか。携帯を持ったままさらに激しい歯軋りを…』

桐乃「ま、いいわ。ほらアンタの分」サッ

京介「紅茶か? サンキューな桐乃」

桐乃「アタシのとっておきだから感謝しなさいよね。香りとかもいいんだから」

京介「お前のとっておきか。それじゃゆっくり味わって飲まないとな」ニコッ

桐乃「う、……うん」

沙織『黒猫殿。コーヒーのお代わりはいかかがですかな? いやぁ、何杯でもおかわり無料とはマックもやりますなぁ』

黒猫『そうね…。紅茶はないけれどもコーヒーはあるものね。兄さんと紅茶はないけれど、コーヒーはいくらでもあるものね…流石マックね』ブツブツ

沙織『うん? 何を詠唱してるのでござるか』

桐乃「この紅茶には、このクッキーが合うのよね」ポリッ

京介「へぇー、そうなのか。どれどれ」ポリポリ

桐乃「あ、こら! そんなに沢山食べるなっての!」

京介「ブッ! …わ、悪ぃつい旨そうだったからさ」

桐乃「べ、…別にいいどさ。そんなに気に入ったの?」

京介「あぁ、どこで売ってたんだコレ? また買ってきてやるよ」

桐乃「駅前のデパート…。そ、その時はアタシも一緒に行くから言ってよね」

京介「そうか。ありがとな桐乃、助かるよ」

桐乃「うん…。別にいいしそれくらい」

黒猫『私はアナタのティータイムを実況してもらう為に、今日このマックにいるのかしら? 紅茶も何もないマックにいるのかしら?』

京介「あ、悪ぃ悪ぃ。そう言うなってよ、紅茶くらいウチで飲ませてやるから」

黒猫『そ、それは真実の理なのかしら!?』ガダッ

沙織『ちょ、黒猫殿。そんな急に立ち上がってはマックコーヒーがこぼれてしまいますぞ!』

京介「あぁ。桐乃が入れてくれる紅茶はすげぇ美味いぞ。期待しててくれ」

黒猫『あ……うん。いいわ、遠慮しておくわ。私そんなに言うほど紅茶好きじゃなかったわ。オラクルからのメッセージでもそう言っているもの…』ブツブツ

京介「あん? まぁ、それならいいんだけどさ」

沙織『京介氏。それはさておき早く英文の方を教えてくださりませぬか?』

京介「あぁ、そうだったな。えー…っと……」

京介「…なぁ、桐乃。こいつなんて書いてあるんだ?」

桐乃「はぁ? 見れば分かるじゃないの。つかアンタ今みてるじゃない」

京介「でもそれじゃ、黒猫に伝わ…じゃねぇや。なんでもいいだろ!」

桐乃「……ん? ま、いいけどさ。
STOP:c0000218 unknown Hard Error

Beginning dump of physical memory
Physical memory dump complete.
Contact your system administrator or technical support group for further」

黒猫『はびゅぅぅるう!!?』ブッツッパァーーーンッ!!

沙織『く、黒猫氏ぃぃ!! コーヒーがぁぁ! 熱々のマックコーヒーが拙者の顔面にぃぃ!!』ゴロゴロ

京介「…!?」ビクッ

桐乃「な、何!? 今なんかアンタの方から沙織の叫び声が聞こえなかった?」

京介「そ、そんな訳ないだろ!? 俺だよ、俺の声だってば」

桐乃「そうなの…? なんかついでに地味猫の声も聞こえたような…」

京介「お…おーい…。HQ、HQ。どうなんだ? 直りそうなのか」

沙織『きゅ、急に何をするでござるか黒猫氏…。流石の拙者も死ぬかと思いましたぞ…』フキフキ

黒猫『そんな悠長な事を言っている場合じゃないわよ…』

京介「なんだ? 沙織が死ぬよりも大変な状態なのかよ」ボソボソ

黒猫『セーフモードだとか前回正常起動時の構成だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてないわよ。もっと恐ろしいものの片鱗ね……』

沙織『そ、そこまでの代物なのでござるか?』

黒猫『窓達の最凶クラスのエラーよ。その原因不明で凶悪なエラー症状から、死のエラーという別称で恐れられているわ』

京介「またまたー。そういう中二設定はいいからさ、早く直し方を教えてくれよ」

黒猫『これは、ガチよッ!!』ダンッ

京介「ガチって…。おいおいそれじゃ俺の立場はどうなるんだよ…」

桐乃「ちょ、ちょっとどうしたのよ兄貴? なんか顔色悪くない」

京介「き、気のせいだ! 待ってろよー今すぐお兄ちゃんが直してやっからな!」

沙織『黒猫氏…、どうにかなりませぬか。このままでは京介殿が』

黒猫『くっ……。いったいどうすれば。あの手段だけはとりたくは無いのだけれども』

京介「何かとっておきがあるのか? アイツのノーパソが直るんなら、この際何でもいいぜ。教えてくれ黒猫ッ!」

黒猫『分かった…。センヨウに伝わる禁忌の魔術書。その一番核心に記されている創生の呪文をアナタに伝承するわ…』

桐乃「本当に大丈夫? 少し横になったほうが良くない。ほらアタシのベット貸したげるからさ」

京介「桐乃、一度しか言わないから良く聞いてくれ」クルッ

桐乃「な…、何よ? 身体は大丈夫なの」

京介「俺はお前と約束した。お前のノーパソを…、いや。お前の大事な想い出を取り返してみせると」

桐乃「それはそうだけど…。無理しなくっても」

京介「桐乃の笑顔が戻れば俺の身体はどうなったっていいんだ!」

桐乃「あ…、兄貴…アンタ」

京介「だから聞いてくれ。この言葉を…、桐乃の笑顔を取り戻す魔法の呪文を」

桐乃「魔法の……呪文?」

京介「『東芝情報機器株式会社が提供する有料のデータ復旧サービスに送れば直るんじゃないかしら。
三万円近くするでしょうけど貴方、無駄にお金持っているだから簡単でしょう。フフフフ…』だ!」

桐乃「…………………………………」

京介「桐乃、どうした虚空を見つめて? まさかダメだったってのか、この謎の文字列の呪文が…」

桐乃「……ねぇ、お兄ちゃん」ニコッ

京介「お、おぉ!? 桐乃に笑顔が…。笑顔が戻ったのか! ありがとよ黒ね…」

桐乃「三回死ねぇぇぇえぇぇぇえええええええぇッ!!!」ブォォオオォォン!

ベッチコォーーーーーンッ!!

京介「ぐべらぁぁあああぁっ」ドガァァアアァン!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

黒猫『……ミッション・コンプリート』

黒猫「…で、また顔面におもいっきりビンタされたわけね」

沙織「黒猫氏の言葉を翻訳しますと、…『自腹で修理してもらえよ、お前金あるんだからさー』といった所でしょうか」

京介「そりゃぶたれるわ!! テメェらに愚痴った俺が馬鹿だったよ!」

黒猫「全く。拗ねる前に目の前のマックコーヒーでもありがたく啜りなさいな」

京介「こんなインスタントのコーヒーなんざありがたくもなんともねーっての」

黒猫「あら、そうかしら。兄さんの奢りのマックコーヒーはとても美味に感じるわよ」ズズズズ…

沙織「京介殿、黒猫氏をあまり責めないでもらえませぬか? 彼女も持てる限りの努力はしたのでござるよ」

京介「あぁ…、分かってるって。サンキューな黒猫」

黒猫「べ…、別に感謝などされるいわれは無いわよ。結局直せなかったのだし…」

京介「いいや。お前はちゃんと直してくれたさ」

黒猫「そんな見え透いた嘘は止めて頂戴。あなたの妹のノートパソコンはいまだにブルースクリーンでしょう」

京介「ノーパソじゃねぇよ…」

黒猫「…え?」

京介「俺と桐乃の仲を治してくれたんだ、お前はさ。相変わらずツンケンしてるけど、最初に愚痴った時よりかは大分機嫌も治ったみたいだしよ」

沙織「きっと、思いっきり気持ちをぶつけ合ったお陰でござろうよ」

京介「気持ちだけじゃなくて、平手もぶつけられたけどな…」

黒猫「…………あなた達兄弟の仲…ね」

京介「どうしたよ、微妙な顔して。俺は感謝してるんだぜ」

黒猫「私自身も微妙なのよ…。治して良かったのか、悪かったのか」

京介「なんだそりゃ…? 相変わらず面倒くさいヤツだなぁ」

黒猫「私もそう思うわ…」

京介「マックといえども三人分の出費はシャレにならねぇな…」ガチャリ

佳乃「あ、あら。おかえり京介」

京介「お袋? 玄関で立ちすくんでどうしたよ」

佳乃「いや、それが…二階から変な声と物音が聞こえてくるのよ。気持ちが悪くってね…」

京介「二階…って、俺と桐乃の部屋か?」


「あぁぁあああッ! アタシの秘蔵兄貴フォルダが! 300ギガの隠し撮り動画がぁあ!? こんなことなら外付けHDDにバックアップ取っておくんだった!!」ドガッ! ドガンッ!!


佳乃「…一体何かしら「ぎが」とか…「はーどでいすく」とか呪文みたいなものが聞こえてくるのよ」

京介「なーにやってんだ、アイツ…」


桐乃「兄貴のバカァァ! でも、明日はデパートデート! 兄貴愛してるぅううぅ!!」

=おしまい=

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最終更新:2010年12月23日 19:32