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The Great Escape? A Quantitative Evaluation of the Fed’s Non-Standard Policies


Marco Del Negro, Gauti Eggertsson, Andrea Ferrero, Nobuhiro Kiyotaki

March 3, 2010

Abstract

この論文では、名目賃金の硬直性と価格の摩擦を取り入れ、短期名目金利のゼロ下限を明示的に取り扱えるように拡張した清滝=ムーアモデル(2008)を考察する。我々は2008年のアメリカの金融危機と同等のショックをこのモデルに与える。この枠組みにおいて我々が問うのは次のようなことである。名目金利のゼロ下限のために、これ以上金利の引き下げができなくなった時に、流動的な政府の負債と非流動的な民間の資産とを交換するという非標準的な金融政策はどのような効果を持つであろうか?我々はこの非標準的金融政策の効果はゼロ金利の下では大きいものとなりうることを明らかにする。モデルのシミュレーションからこれらの政策は2008年〜2009年に大恐慌の再来を防いだことがわかったのである。

1 Introduction

2008年、フェデラルファンドレートはゼロまで降下した。金利の操作を通じた標準的な金融政策はその限界に達した。その同時期に連邦準備は1兆ドル、アメリカのGDPの7%、ほどの資産を拡大させた(図1を見よ)。この拡張は政府の流動性----貨幣と公債---と民間資産との交換(直接の購入や短期証券の担保として)を含むものがほとんどであった。これは様々な「手段」---Term Auction Facility (TAF)やPrimary Dealer Credit Facility (PDCF) を通じて行われた。広い意味でこれらの手段を通じての政策執行は、政府が極めて流動性の高い負債とより流動性の低い民間の資産との交換という「非標準的」公開市場操作と考えることができる。言い換えるならば、これらは緩い意味で非標準的な「公定歩合貸出(discount window)」と捉えることができるのである。これらもまた(この場合は担保として)民間資産を政府の流動性と交換することを含む。この論文はこの政策の定量的な効果を考察するものである。そして得られた結果は、その効果は特にゼロ金利の下では非常に大きなものになりうる、と言うことである。

Wallace (1982)の有名なirrelevance result以来、多くのマクロ経済学者にとってもベンチマークは民間資産に対する非標準的な公開市場操作は影響を与えないというものだった。この結果はEggertsson and Woodford (2003)によって拡張され、ゼロ金利の下で名目的・貨幣的摩擦があるモデルで標準的な公開市場操作、すなわち公債の通貨発行による償却、についてもirrelevance resultが成り立つことが示された。これらのモデル、あるいは他のほとんどのモデル---Rotemberg and Woodford (1997)やChristiano, Eichenbaum and Evans (2005)やSmets and Wouters (2007)など---では「流動性」には何の役割も存在しない。いかなる民間証券---株式であろうと社債であろうと---の価格は経済のさまざまな状態における支払に依存している。これらの証券の供給は、もしそれが状態依存ペイオフを変化させない時にはirrelevantである。政府や民間部門がある特定の株や証券がもたらす期待収益の流列を一定に保ったままそれらを保有することの何が重要なのだろうか?実際、最近のよく知られた論文Taylor and williams (2009) で最近の危機において連邦準備の行った操作、特にTAFは実際の影響が全くなかったと結論づけている。それ以前の研究はWallaceのirrelevance resultを取り込んだ現代的な一般均衡理論に基づいていると考えられる。

この論文で我々は素直な方法でWallaceのirrelevance resultを破る。Kiyotaki and Moore (2008)(以下、KMとする)で提案された信用摩擦の具体的な方法を取り込む。我々の目的は二つある。第一に、我々はKMでモデル化された流動性ショックが現在の不況で観察されているようなマクロ変数と金融変数の動きを定量的に生成するかどうかを調べる。第二に、KMで示されたどのような形の信用摩擦が2008年から2009年の危機の間に採用された連邦準備の手段の定量的な効果を表しているのかを探る。KM信用摩擦は二つの異なる形式を取る。一つ目は、投機機会に直面した企業(または銀行)はその投資のネットの現在価値収益の一定割合までしか借入することができないものである。これは比較的標準的な借入制約である。二つ目は、売却に関する制約である。投機機会に直面した企業は毎期その「流動」資産のある一定割合しか売却できないとするものである。これらの流動資産は他の形でのエクイティに対応する。より一般的に言うと、これらの流動資産を民間部門が発行したコマーシャルペーパー、銀行のローン、株式、住宅ローンなどと解釈する。

KMではこの売却制約を不完備情報をベースに議論しているが、ここではいかなるミクロ基礎についても扱わないが、それを所与のものとして扱いその定量的インプリケーションについて考察する。売却制約にさらされる民間部門の流動性の扱いとは対照的に、政府発行の証券、すなわち貨幣と公債、について我々はKMに従い、この制約はないものとする。これによって政府の負債と貨幣は取引を円滑にする「流動性」としての需要な役割を果たすことになる。この経済においてはWallaceのirrelevance resultはもはや成立しない。なぜなら民間部門が保有する流動性と非流動性資産の相対量は均衡に影響を与え、政府がその比率を変化させることができるからである。これは2008年の危機の自然な説明を与え、KMモデルでの連邦準備の反応を追認する。

2008年危機の原因として考えられるショックとして我々は民間資産の売却制約へのショックを考えた。信用市場は突然膠着した。我々は2008年危機の中心的な側面としてとらえるものとこのショックを考える。定量的な分析のために我々は我々がファンドのデータから構築し、「流動性シェア」---経済における流動性資産の比率---を捉える新しい観察可能な変数をマッチングすることでこのショックをカリブレートした。このショックをカリブレートする観察可能なモデルの変数を使うことに加え、1兆ドルの介入を政府の非標準的政策反応関数をカリブレートするために使用した。これによって我々は危機のショックの定量的な影響を分析できるだけでなく、連邦準備が介入しなかった場合の反実仮想的な経済の変化も調べることが可能になった。

我々はKM信用摩擦をChristiano, Eichenbaum and Evans (2005) やSmets and Wouters (2007) に沿った比較的標準的なDSGEモデルに埋め込む。このモデルは賃金と価格の当局製と集計的な資本調整コストといった標準的な摩擦を含む。標準的な金融政策は名目金利の変更である。非標準的な政策は毛試合全体の流動性のレベルを増加させる民間資産の公開市場操作である。

最初の主な結論は、物価と賃金の硬直性がない場合には金融ショックも1兆ドルの介入も大きな定量的な影響はない、というものである。二番目の主な結論は、このモデルの他の摩擦を先行研究と整合的な値でカリブレートし、金融政策がテイラールール(名目金利がインフレ率に対して1対1以上に反応するルール)に従うならば、金融ショックも非標準的政策も重要な影響を与える、ということである。三番目の結果は、短期名目金利にゼロ下限が導入されると、介入が行われない場合には経済が大恐慌タイプの崩壊を味わうことになる。介入を伴う場合にはこれとは対照的にアメリカ経済において現在観察されるような反応を示す。これがこの論文のタイトルを「大脱出」と名付けた理由である。なぜなら、我々の数値例では非標準的政策なしではアメリカ経済は第二の大恐慌を経験したことになっていたはずだからである。非標準的政策がゼロ金利の下で特に大きな効果がある理由はChristiano, Eichnbaum and Rebelo (2009) とEggertsson (2009)で示されたものと同様である。ゼロ金利の下では財政政策の乗数は通常よりも大きくなるからである。

この論文はBernanke, Gertler and Gilchrist (1999), Christiano, Motto and Rostagno (2003, 2009), Goodfriend and McCallum (2007) and Cudia and Woodford (2009a)といった金融DSGEの金融摩擦を導入した一連の研究に属するものである。Gertler and Karadi (2009)、Gertler and Kiyotaki (2009)、Curdia and Woodford (2009b)は現在の不況における非伝統的な中央銀行の政策の役割について分析している。

先へ進む前に、この分析の重要な限界について強調しておきたい。我々の主な目的は非標準的政策が、それらには効果がないというWallaceのベンチマークに対して、重要な定量的インプリケーションを持つかどうかを理解することである。この問いに光を当てるために我々は第一接近として最も自然と思われるKiyotaki and Moore (2008) で提案された流動性制約の特定の形式を選んだ。しかしながら、これらの流動性制約はある意味においての「誘導形」である。つまりこのモデルは今後の重要な検討課題となるであろうより長期の問題について取り組むためには現在の方法では役に立たないのである。具体的には我々のアプローチはレンプ準備が行ったような介入が民間部門の今後のインセンティブ構造に与える影響については何も語らないが、そのような介入は我々がここで所与とした「誘導形」流動性制約を内生的に変化させるかもしれないのである。より一般的に言えば、我々は介入のコストをモデル化していないのであるが、それは非常に大きなものになりうるのだ。したがって、これは規範的な論文ではなく、実証的なものである。非標準的な金融政策は短期のマクロ経済安定製には定量的に重要な効果を与えることを示す。そしてこの結果の理解が今後の研究課題として重要になるであろう。

2 The model

モデルは6つの異なる経済主体からなる。企業家、資本供給者、消費財供給者、金融供給者、労働者、そして政府である。我々は企業家の説明から始める。もっとも標準から外れるからであり、モデルの核心であるからである。彼らが直面する問題は本論では標準的な実質及び名目負債からなる「流動」資産の特定化を除いてKiyotaki and Moore (2008) のものと同一である。モデルの残りは他のいくつかのDSGE研究と同様である。[...]

10 Conclusions

この論文で我々はKiyotaki and Moore (2008)によって提示された金融摩擦の理論を使って非標準的金融政策について分析した。そして非標準的政策は大きな効果があることが示された。特にゼロ金利においては顕著である。また、数値例においては非標準的政策が採られなかった場合には大恐慌が発生することを示した。