39次に寄せられた「医学部基礎系大学教員」さんの情報をまとめたものです。
凡例:
※:スレ住人からの質問
#:教員さんへのレス

医学部を卒業して巣立っていく学生さんのうち、就活に苦労する人はやっぱりいます。
大学の力の及ぶ範囲というか、勢力範囲があるので、もしも各都市の○○医療センター
(旧国立病院)などに就職しようと思うと、大学の勢力範囲が影響します。
でも、ふつうの病院に就職することを望む人は、自力で頑張ってます。

医局が人手不足なので、就活に失敗してやむなく大学病院に残ってくれる
人は大歓迎のようです。そうして医員として働いていると、やがて教授から
「どうせなら、博士課程に進学しないかい? 博士号をとらないかい?」という
【悪魔の誘い】がきます

私は、そうして泣く泣く医学博士をとるために博士課程(4年間)に入ったM.D.が博士号を
とるのを何度も手伝いました。まぁ4年間といっても、実際に実験する期間は個人差が
あって、3か月~1年とバラバラです。自分で手を動かして実験するM.D.はとても真面目
だといえます。強者は、製薬企業などに実験を丸投げしたデータで博士号をとります (344)

※博士課程の間って収入とかどうなるんですか? 医局でバイトをしながらって感じでしょうか※

私も医局=臨床系研究室の運営に詳しいわけではありませんが、
私が知っている博士課程のM.D.について、あげてみましょう

① 学部を卒業し、すぐに大学病院に就職(医員となる)、その2年後に博士課程
  に入った医師が3人→全員、年齢は若いですね。この人たちは大学病院でしか
  働いていなかったはずです。いわゆる「外回り」=よその病院でバイトをせず、
  大学からの給料だけ。医師としては我慢できないというか、腹が立つ薄給で、
  大卒の新人さんとたいして変わらない額だ、と愚痴を言っていました。

② 学部を卒業後、3年~6年、医員として働き、博士課程に入ったM.D.
  こういう人たちは、博士課程に入るのと同時に「助教」のポストをもらって
  いました。博士課程の院生という身分であるにも関わらず、博士号をもたない
  にも関わらず、「助教」のポストをもらえるのです。これにより、大学からの給料
  はアップします。『医学部教授』を目指さないM.D.にとって「助教」になることは
  給料アップための手段であり、医師という肩書に沿える添え物くらいの認識です。
  これはnon M.D.の学部における「助教」のポストと大きく違いますよね。
  なお、この②の人たちは年齢もけっこういっており、バイトもしていました。 (351)

蛇足ながら。
医局には、>>351のような理由で「助教」のポストが数人のM.D.に大盤振る舞い
されるため、ひとつの医局に助教が5人いる、などという状況も珍しくありません。
ただし、その5人のなかに1人はPh.D.の助教がいます。
このPh.D.助教は、その医局でゆくゆく准教授や教授になる、ということは不可能で
すが、ともかく助教のポストを得て、そこで日々働いています。
高校生→医学部入学→医師免許とって医員になったM.D.は、(1)病院で働くのに忙しい、
(2)動物実験とか培養細胞を使った実験の技術と経験が、理学部・工学部・農学部・薬学部
などの修士や博士よりも低いので、実験が円滑に進まないためです。

なので、理学部・工学部・農学部・薬学部出身者は、ますます「博士課程に来ないかい?」
と誘われる可能性(危険性)もあります。 (352)

※薬学部卒の編入生なんかだと、うちの研究室に遊びに来ないかいって勧誘も少なくないですよね(笑)※

本学の学生さんか? と思いましたw 本学にも薬学部の編入生さん、再受験生さんが数人います。
非医学部で修士までとっているような編入生さんや再受験生さんは基礎医学系の部屋に
興味を持って遊びに来る人もいますね。生化学や分子生物学の領域は、非医学部
の学部生の講義や院での研究内容と完全にかぶりますから。

そういう領域では、小テストや定期試験の直前になると、「編入生や再受験生さんが、
高校から入学した学生さんに教えてあげる、過去問を解いてあげる」などの光景を目にします。
なので、編入生・再受験生さんたちは必ずしも肩身の狭い思いをしていない ようです。 (354)

※「医局が人手不足なので、就活に失敗してやむなく大学病院に残ってくれる
人は大歓迎のようです。」とありましたが、医学科卒業生のほぼ総数が、
それほどまでに毛嫌いするほど、大学病院は不人気な職場なのでしょうか?
初期研修・臨床業務だけをやるのだったら、
大学病院は、与えられる休暇と報酬に対し、課される労働が釣り合っていない職場環境の筆頭であり、
それならばいっそ大型の市中病院で研修・勤務したほうがよほど賢明で無難、といった感じでしょうか?※ (355)

私が勤務しているのは「ふつーの」、「並レベルの」大学ですから、
これは知人のM.D.からの伝聞ですが、旧帝大や慶應、旧六などの上位校の
学生ほど、医師免許をとってさっさと脱出してしまうようです。
15年前なら、医師の就職に医局が強い力を持っていて、教授などに紹介してもらわない
と就職でいないので、泣く泣く医局にご奉公していたそうですが、いまは、民間の
病院などへの就活はけっこう自力でできるので、『優秀な(もしくは高学歴な)医師ほど
さっさと脱出』して就職してしまうとのことです。

大学病院は【激務】らしいです。とはいうものの、「科」によって大きく異なります。
私が実際に臨床系教員や博士課程のM.D.たちとしゃべっていると、眼科・皮膚科・耳鼻咽喉科
などは楽だと聞きます。ですから、「どの科の医師として生きていくのか?」ということ
と合わせて考えたほうがよいと思います。 外科や腫瘍関連の医局・センター勤務は激務です。

355大学病院は、与えられる休暇と報酬に対し、課される労働が釣り合っていない職場環境の筆頭であり、
これについては、あるエピソードがあります。
本学で、「来たれ、大学病院に!博士課程に!」的パンフレットを配布していたので
読んでみたら、臨床系の教員が「大学に残ったキミたちは、卒業後、民間の病院で働き始めた同期たちに
比べて収入の面では落ちるだろう。生涯年収では負けるかもしれない。だが、医師になってすぐ高い収入
を得ていればいいのか? 収入は低くとも、医師になってから5年くらいは大学病院で働き、ここでこそ学べる
高度な医療や貴重な経験があるんじゃないのか?」と熱いメッセージを書いていて、それが大学病院勤務の辛さ
を裏打ちしてしまってました。

あと、【学歴ロンダ】という言葉を当然ご存じですよね? 医学部の世界ではこの学歴ロンダと
並行して、【経歴ロンダ】とでも表現する行為があります。(失礼ですが、偏差値から見て)底辺私立医学部の卒業生が
旧帝大などの「大学病院に就職=医局に入局」することです。
旧帝大の植民地みたいになっている底辺私立医学部の卒業生が、旧帝大の医局に就職し、経歴を飾ります。
そういう人の母親が「ウチの息子は、いま○○大学の大学病院で働いているザマスの。おーほっほっほ」と自慢すると、
一般の人たちはころりとだまされ、まるで旧帝大の医師になった=ものすごいエリート医師なんだ、信じ込みます。

それならばいっそ大型の市中病院で研修・勤務したほうがよほど賢明で無難、といった感じでしょうか?
これは自分には答えられませんが、博士号をとって大学病院を辞めて、市中病院に就職したM.D.と
再会すると、すごく晴れ晴れとした顔をしていることが(略  (356-357)


大学病院勤務は、市中病院に行けなかったから…という理由ばかりではありません。
確かに自大の大学病院にはマッチングでも受かり易いです。
それは、研修医を受け入れられる枠が大きいことも要因の一つなのです。
大学病院を希望して進まれる方も、当然います。
自分の周りの人達は、専門医コースの存在や研修環境、または将来どこで働きたいかなどを考慮してマッチング先を選んでいました。
さらに、一概に市中病院と言っても、その内情は異なります。
ジェネラリストの養成に力をいれていたり、特定の診療科が強かったりと様々です。

また最先端の機器を持つ病院が最先端の治療を行うとは限りません。
画像診断の機器などは個人の医院でも最先端のものをいれていることがありますが、問題はその画像から医師がどれだけの情報を読み取れるかなのです。

ご存知かと思いますが、大学病院は第3次の機関です。
特定難治疾患やレアケースの多くは大学病院に転送されます。
そのような疾患も診れるようになりたいと思えば、大学病院を選ぶということも自然な流れだと考えています。
一方で、迅速に感冒などの治療・診断を進める力は市中病院で研修された方の方が強くなるように思えます。
要は、どのような医師になりたいかで研修先を決める方が良いのではないかと思うのです。

ちなみに、自分は10年以上医学に携わっていますが、特に旧帝大や有名私立の卒業生が大学病院を毛嫌いするなんていう状況は知りません。
旧帝にも在籍してたんですけどねw (362)#

#初期研修だけ市中で研修する人が多いですよ。3年目から自大か旧帝大に行く人が多いです。(363)#

大学病院に残るM.D.、あるいは数年市中病院で働いてから大学病院の医員となるM.D.の
事情については>>362氏の言葉も合わせて考えたほうがいいと思います。
私が知っているのは、あくまでも本学のM.D.15人くらいの事例ですから。
さらに『高額な医療機器がある=高度の医療が施される』わけではないという
362氏の言葉にも、私は賛成します。自分が患者として大学病院で
CTやMRIをとってもらったことがありますが、結局は医師が画像を観察して診断を
下すわけですから。
「旧帝大など上位校の卒業生が大学病院を嫌うか?」という問題については、最初に述べた
とおり知人のM.D.からの伝聞を紹介しただけなので、なんともいえません。旧帝や上位校
もたくさんありますから、>>362氏の情報と併せて、自分でもツテをたどって調べてみるとよいと思います。 (370)

※センター勤務とは何でしょうか※ (358)
センター勤務といっても特殊なものではありません。
最近の大学病院では「高度医療」とか「最先端医療」とか「集学的医療」とかと
謳って、そういう名称を冠した〇〇センターを病院内に3つ、4つ設けているところも
あります。そのセンター長は、どこかの医局の長=教授が兼任しているので、
某医局の医員が、自動的に○○センター配属、などということがあります。

蛇足ですが、>>355に関しまして。たしかに、大学病院の設備は、市中病院の平均レベル
より高いです。基礎系教員である私の耳にでも、高額な医療機器を買ったことは聞こえてきます
し、患者の立場で大学病院にお世話になったこともあります。
TVや小説などに登場するPETとかCTなどのための高額機械がある、という意味で大学病院はレベル
が高いはずです。しかしながら、大学病院といえどもこれらの高額機械を「2年に1度は買い替える」
なんてことはできないようで、1度購入した機械を10年使っていたりするようです。
そうすると、大学病院より3年後に市中の◆◆病院が買ったCTスキャンのほうが次世代型だった、なんて
ことは当然に起こります。 (359)

※学部6年研修2年で一番時間があり遊べるのっていつですか? 研修はかなり時間に余裕がないと聞きますが ※ (360)
非医学部と同じで、学年が上がるごとに学生さんは忙しく、負担が大きく
なります。
前期試験・後期試験のほか、講義科目によってかなり頻繁に小テストをする
のですが、それでも1年、2年は学生さんはよく遊んでいるようです。

私が数年間勤務した感触では「2年生→3年生」が1度目の壁で、留年してしまう最初の危機です。
これを超えると、「4年生→5年生」で躓くかどうかの2度目の壁まで、だいたい進級していきます。

1年生のころの学生さんは大学入試をクリアした喜び・開放感ではじけちゃっている人
が何人かいて、午後6時ごろにキャンパス内で『河童』のコスプレをして歩いている
男子学生と鉢合わせした経験があります。彼の周囲には数人の男女がいて笑っていたので、
何かの罰ゲームだったのでしょうか。 (361)

#どの学年が厳しいかなんて大学、いや教官次第だろ。
本物の教員、しかも他大学にも在籍歴があるなら分かって当然の話だが#(371)
なるほどたしかにその通り。大学ごとにカリキュラムも異なりますしね。
本学の状況だけ見て2年→3年での留年の話を持ち出したのは早計でしたね。(372)
確かに大学によってカリキュラムが違ったりしますけど、編入受験時代の
仲間とのやり取りを思うと、そこまで大きな差はなさそうですよ。
だいたい2年後期を軸に、2年前期や3年前期に留年要素の高い科目が配置。
それに伴って、2年→3年のタイミングで留年者が大量発生。
ただし、3年次編入はそれを無条件にパスできるかというと、そうでもないっぽい。
そして、進級への影響はともかく、体力的・時間的・精神的に最大級の負担が
解剖学実習。まぁ、合格した奴らは自分の選んだ道と思って頑張ってな~ (376)

※他学部の学生とはキャンパスやサークルなどが違う事が多いですがやはりあまり接点はないんですかね?※(369)
他学部の学生との接点ですが、これこそ、各大学によって異なるので一言でまとめられません。
総合大学でも「医学部だけ別キャンパス」とか「医学部と薬学部だけ別キャンパス」とかあります
よね? キャンパスが同一or近い場所にあると部活やサークルの交流があるようです。
テニス部で知り合った男女(医学生と薬学生)が卒業後に結婚した話は聞いたことがあります。(370)

※基礎研究に興味があるのですが、学部を卒業したあとにどのような進路をとる学生が多いのか教えてもらえませんか
生活はできるのでしょうか (373)※
本学の医学部医学科の学生さんは〇〇人いますが、私の知る限り、ほとんど全員が臨床医として
の人生を歩んでおられます。(以下、すべて本学の場合です)
大学病院に残って→博士課程に入った方は博士号を得るために『研究』を
する期間があるわけですが、それでも昨夜書いたとおり、『動物実験とか培養細胞を
使うような実験』をする期間は、3か月~1年です。その実験成果で、欧文原著の論文投稿
をして博士号をとります。

本学においては、製薬企業とか医系公務員の道に進む人は、私は見聞きしたことがありません。
医学部の教員を目指す、というのが研究を志すM.D.には標準なのではないでしょうか?
呼吸器内科だから『肺』の株化細胞を使っているのかと思ったら、それ以外の臓器由来の細胞を使った
研究をしていたりもします。
独立行政法人の研究所などで研究するM.D.がいることは聞いたことがありますが、
本学の卒業生さんで、そちらの進路をとった人は聞いたことがありません。
なお、市中病院で働く臨床医でありながら、研究に参加するM.D.もいます。
特定の疾病の患者さんの血清や、オペで切除した癌組織を郵送して来られます。本人の仕事はそこまで
ですが、とにかく研究に参加していることに変わりありません。
大学教員になると決めたM.D.のうち助教のポストをもらって+外回り(バイト)
もしている人は、生活に不自由があるようには見えません。
講師、准教授になるとかなり収入も良いようです。
市中病院で働くM.D.の年収や、大学病院の講師、准教授の正確な年収は知りませんが、
一般市民よりはるかに高い年収であることは推測できます。(お家に招待してもらった感想)

『実験』そのものについては、医局に実験助手、研究補助員などさまざまな名称のテクニシャン
がいますし、Ph.D.助教もいます。また、私のような基礎系教員の部屋との共同研究という
形をとることで、実験を『投げる』こともできます。
本人が大学病院での仕事やバイトで忙しく、自ら実験をすることができずともO.K.です。 (374-375)


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最終更新:2012年12月03日 08:54