Shadows and Regrets(1)◆S33wK..9RQ
印付きという呪いを永遠に受け続けた。それ故に存在意義を決め付けられた。
戦を望むことが存在意義になってしまった。そして、酷い夢を見た。自分の存在意義がなくなる夢を。
そんな事はあってはならない。あの様な事を繰り返してはならない。だから戦うことしか自分には無い。
そうだ。愛などない。そんな物は一種のアルコールみたいなものだ。
そうだ。言葉など要らない。ただ剣を交えればそれでいいのだ
そうだ。情は少しだけでいい。敗北の念を味あわせない様にすぐ止めをさせばいい。
自分は孤独だ。だからこそ『賢者』に偽りの忠誠を誓ったのだ。だからこそここで漆黒の鎧を捨て、――――――を、―――――――。
だというのに、自分のこの振り上げた剣はどこに下ろせばいいのだ。
戦を望むことが存在意義になってしまった。そして、酷い夢を見た。自分の存在意義がなくなる夢を。
そんな事はあってはならない。あの様な事を繰り返してはならない。だから戦うことしか自分には無い。
そうだ。愛などない。そんな物は一種のアルコールみたいなものだ。
そうだ。言葉など要らない。ただ剣を交えればそれでいいのだ
そうだ。情は少しだけでいい。敗北の念を味あわせない様にすぐ止めをさせばいい。
自分は孤独だ。だからこそ『賢者』に偽りの忠誠を誓ったのだ。だからこそここで漆黒の鎧を捨て、――――――を、―――――――。
だというのに、自分のこの振り上げた剣はどこに下ろせばいいのだ。
『アイク、グリーン、タケシ……』
放送が行われる。死者の名前が順に呼ばれていく。戦はもはや会場の隅まで行われている。ならば自分も戦わなければいけない。
戦わなければいけない。叩かなければいけない。闘わねなけばいけない!!
この振り上げた剣は―――-----
戦わなければいけない。叩かなければいけない。闘わねなけばいけない!!
この振り上げた剣は―――-----
「……私は」
漆黒の騎士を覆っていた鎧は棄ててしまった。崩れてしまったのだから。思い出など残す物ではない。
もはや自分が望んでいたアイクとの一騎打ちは叶わぬものになってしまった。だが我が恩師の息子であっても死んだのならそれまでの事。
いや、違う。恩師の息子だからこそ強く育ち、私を打ち倒したのだ。
そしてそれを倒した者はさらに強き者だと確信できた。もはや旅館で生き残った者共などどうでもいいっ!
だからこそ歩む事をやめることはできない。兵はどこだ。強者はどこだ。我が怨敵がどこだ!?
もはや自分が望んでいたアイクとの一騎打ちは叶わぬものになってしまった。だが我が恩師の息子であっても死んだのならそれまでの事。
いや、違う。恩師の息子だからこそ強く育ち、私を打ち倒したのだ。
そしてそれを倒した者はさらに強き者だと確信できた。もはや旅館で生き残った者共などどうでもいいっ!
だからこそ歩む事をやめることはできない。兵はどこだ。強者はどこだ。我が怨敵がどこだ!?
☆ ☆ ☆
「……10人も死んだのか。ククク。それにガウェインの息子も……興冷めだな」
ため息をつき、頬を掻く。太陽が自分を完全に照らす。その広場にあった時計は朝8時を指す。
それと同時に朝の始まりを告げるチャイムがその広場に鳴り響き、楽しむ為のライドマシンの電源が順に入っていく。
そしてこの殺し合いには似合わない軽快で子供向けの行進曲が流れ始める。それに少し驚くが、気にはならなかった。だいたい乗り方などわからない。
狂王は歩きながら思考する。ガウェインの息子が死んだのか。ククク、ここで死んでしまうならそこまでだったんだろう。
なんて面白いんだ。しかし、如何せん人数が少ない。37とかいう雀の涙の様な人数ではなく、国取り合戦の余蘊な人数でも無く、
――――そうだな100人ほどの人数が丁度いいだろう。この殺し合いが終わったら自分が自ら殺し合いを開催するのも面白いかもしれない。
もっともそれを行うにはこの首輪をとっとと外す事を先にしなければならない。クリスタルは、見つけたら貰っておけばいいだろう。もっとも探す気はないが。
「……しかし、酷く疲れた。少し休息でも取ろうか」
丁度近くにあったゴンドラ状の乗り物になりこみ、横になった。
なに、獲物は逃げるが、この戦は逃げない。ククク……
それと同時に朝の始まりを告げるチャイムがその広場に鳴り響き、楽しむ為のライドマシンの電源が順に入っていく。
そしてこの殺し合いには似合わない軽快で子供向けの行進曲が流れ始める。それに少し驚くが、気にはならなかった。だいたい乗り方などわからない。
狂王は歩きながら思考する。ガウェインの息子が死んだのか。ククク、ここで死んでしまうならそこまでだったんだろう。
なんて面白いんだ。しかし、如何せん人数が少ない。37とかいう雀の涙の様な人数ではなく、国取り合戦の余蘊な人数でも無く、
――――そうだな100人ほどの人数が丁度いいだろう。この殺し合いが終わったら自分が自ら殺し合いを開催するのも面白いかもしれない。
もっともそれを行うにはこの首輪をとっとと外す事を先にしなければならない。クリスタルは、見つけたら貰っておけばいいだろう。もっとも探す気はないが。
「……しかし、酷く疲れた。少し休息でも取ろうか」
丁度近くにあったゴンドラ状の乗り物になりこみ、横になった。
なに、獲物は逃げるが、この戦は逃げない。ククク……
☆ ☆ ☆
「……なんだと!?」
ソリッド・スネークが死んだ。あのスネークが、あのスネークが!?
なぜ死んだっ!?なぜ殺されたっ!?誰が殴殺したのだっ!?誰が撲殺したのだっ!?
どうやってソリッド・スネークを全てを鏖殺したのだっ!?面白いっ!面白いっ!面白いっ!!!
なぜ死んだっ!?なぜ殺されたっ!?誰が殴殺したのだっ!?誰が撲殺したのだっ!?
どうやってソリッド・スネークを全てを鏖殺したのだっ!?面白いっ!面白いっ!面白いっ!!!
「クハハハハ、ハハハッハハハっ!!!!!」
死んだ!皆死んだ!腹が捩れる程おかしいじゃないか。……しかし、あのメイド、そして漆黒の騎士、警察官の名前は呼ばれていない。
随分しぶとい奴共だ。戻って止めを指しに行きたいが、あの様子じゃか勝手にくたばるだろう。ならば自分は新しい獲物を探しに行こうじゃないか。
脚を早めに進ませる。獲物は逃げるものだ。ならば早く仕留めてやろうじゃないか!
全てを撃ち抜いて殺してしまおう。そして新しい秩序を再編させようじゃないか。
随分しぶとい奴共だ。戻って止めを指しに行きたいが、あの様子じゃか勝手にくたばるだろう。ならば自分は新しい獲物を探しに行こうじゃないか。
脚を早めに進ませる。獲物は逃げるものだ。ならば早く仕留めてやろうじゃないか!
全てを撃ち抜いて殺してしまおう。そして新しい秩序を再編させようじゃないか。
☆ ☆ ☆
「……スネークが死、んだ?グレイフォックスも……?」
「よかったじゃない。厄介な友達が死んで」
「……アンタって無神経よね。取り消しなさいよ」
「よかったじゃない。厄介な友達が死んで」
「……アンタって無神経よね。取り消しなさいよ」
無表情でその言葉を吐き出した咲夜に怒る千枝だが、咲夜はそんなことどうでもよかった。オタコンが落胆しようが自分には関係ない。
ソリッドスネークは死んだ。確かに死んだが、危険人物が二人生きている。
とんでもない戦闘狂の漆黒の騎士、ゼルギウス。
芝居上手の足立透。
前者はまだ良心的で話がわかる奴(それでも強者と戦いを望む奴)だが、後者は危険だ。
私が死んでないとわかったのだから、もしかしたら私の悪評を広め始めているかもしれない。
ならばどうするか、早めに息の根を止めるのが先決だ。ではここに留まる必要は無い。
「……咲夜」
唐突に、オタコンが自分の名前を口に出す。知り合いの名前が呼ばれているが、彼の動揺は少ない。
もっともあんな男が死んだのだ。動揺が無いのは当たり前なのだろう。
「何かしら?告白の次はベッドに誘うお言葉でも?」
「ちょっ!そんなストレートに!」
またしても顔を真っ赤にした千枝がツッコミを入れる。一々五月蝿い子だ。
こういうタイプの女の子は幻想郷には居るには居る。だがこの子は幻想郷の常識を知らない。
だからこそこんなに苛々するのか。幻想郷の常識はこの殺し合いじゃ通じない。
それでも自分の考え方を押し通してもいいだろう。だから千枝に何を言われても訂正はしない。というよりしたくない。
「別にそれでもいいけど、そんな事より情報交換をしよう。ほら、僕達まだロクに話してもいないでしょ?」
「……そうね。ちょっと口五月蝿い女の子がいるけど、仕様が無いから情報交換しましょうか」
「……………。」
千枝はもうその言葉に反論するのも面倒になってしまった。なんなんだこの銀髪和服は。
そんなに五月蝿くしている覚えはない。
……それにしてもよかった。知り合いが誰も死んでいない。それでも10人という人物が死んでいった。オタコンの話していたソリッドスネークも。
知り合いが死ぬというのはどういう気分なのだろうか。ふと陽介の事を思い出す。先輩が死んだとき、どんな気持ちだったのだろうか。
まだ自分は戦闘という行為はこの会場でしていないが、10人という人数からして殺し合いに乗った人物は多いだろう。
これ以上、死者を出す事はしてはいけない。とっとと乗った人物をやっつけて自分の家に帰ろう。絶対に。
ソリッドスネークは死んだ。確かに死んだが、危険人物が二人生きている。
とんでもない戦闘狂の漆黒の騎士、ゼルギウス。
芝居上手の足立透。
前者はまだ良心的で話がわかる奴(それでも強者と戦いを望む奴)だが、後者は危険だ。
私が死んでないとわかったのだから、もしかしたら私の悪評を広め始めているかもしれない。
ならばどうするか、早めに息の根を止めるのが先決だ。ではここに留まる必要は無い。
「……咲夜」
唐突に、オタコンが自分の名前を口に出す。知り合いの名前が呼ばれているが、彼の動揺は少ない。
もっともあんな男が死んだのだ。動揺が無いのは当たり前なのだろう。
「何かしら?告白の次はベッドに誘うお言葉でも?」
「ちょっ!そんなストレートに!」
またしても顔を真っ赤にした千枝がツッコミを入れる。一々五月蝿い子だ。
こういうタイプの女の子は幻想郷には居るには居る。だがこの子は幻想郷の常識を知らない。
だからこそこんなに苛々するのか。幻想郷の常識はこの殺し合いじゃ通じない。
それでも自分の考え方を押し通してもいいだろう。だから千枝に何を言われても訂正はしない。というよりしたくない。
「別にそれでもいいけど、そんな事より情報交換をしよう。ほら、僕達まだロクに話してもいないでしょ?」
「……そうね。ちょっと口五月蝿い女の子がいるけど、仕様が無いから情報交換しましょうか」
「……………。」
千枝はもうその言葉に反論するのも面倒になってしまった。なんなんだこの銀髪和服は。
そんなに五月蝿くしている覚えはない。
……それにしてもよかった。知り合いが誰も死んでいない。それでも10人という人物が死んでいった。オタコンの話していたソリッドスネークも。
知り合いが死ぬというのはどういう気分なのだろうか。ふと陽介の事を思い出す。先輩が死んだとき、どんな気持ちだったのだろうか。
まだ自分は戦闘という行為はこの会場でしていないが、10人という人数からして殺し合いに乗った人物は多いだろう。
これ以上、死者を出す事はしてはいけない。とっとと乗った人物をやっつけて自分の家に帰ろう。絶対に。
☆ ☆ ☆
「メタナイト、デデデ大王……」
「グリーンにタケシ……なんということでござるか」
「グリーンにタケシ……なんということでござるか」
キョウとカービィは放送で呼ばれた名前を次は自分の口で紡ぐ。それを聞いていたアリスと雪子は何もすることができなかった。
アリスも知り合いが呼ばれたが、もっとも自分を殺そうとしてきた人物(子供だが、それでも殺人未遂犯だ)だから悲しむことはなかった。
励ます気はあったが、ここで下手に励ましては落ち込ませる事になるかもしれない。だからこそ二人はかける言葉を捜す。
アリスはもっとも言葉を捜す気はなかったが、自分が人間だった頃を思い出すとその行為は自分の信頼とか評価を落とす事になるだろう。
それに元は人間だったから人が死ぬというのは悲しい事だと痛いほどわかっていた。
やがて自分がかける言葉を見つけることができた。しかしそれを言おうとした瞬間、カービィとキョウが言った。
「……行こう!こんな所に居たらもっと人が死んじゃう!」
「……そうしよう。拙者もこんな所で落ち込んでいる暇は無いでござる」
……どうやら励ます必要はなかったみたいだ。自分が関わったこの二人はどうやら予想以上に精神的に強かった。
カービィは思う。デデデ大王もメタナイトも自分のプライドをかけて戦ったんだと。ならば彼らの分まで生き続けなければならない。
そうだ。こんな所で落ち込んでる暇はない。とっととあのマルクをやっつけて異変を解決しようじゃないか。
だから自分は知り合いが死んだとき、悲しむ事はしないようにしよう。もっともそれがその時がきて実行できるかはわからないけど。
「そうですね、……でもカービィちゃん。どこに向かうの?」
「……あ、そうだね。決めてなかった」
「拙者もその事を失念していた」
だが、少し頭が悪いらしい。どうしてそこまで考えていないのか。……もっとも私もどこに向かえばいいのかわからなかった。
そこで自分はある事に思い出す。
「ねぇ、私さ、遊園地に行ってみたいんだけど」
外の世界にあるというとても楽しい場所。それは弾幕遊びの何倍も、何十倍も楽しいらしい。
だからこそ自分はそこに行ってみたかった。どんな所なのだろうか?弾幕遊びの何十倍も楽しいのだから弾幕がいつもの十倍襲ってきたりするのか。
「む、アリス殿。それは短絡的な考えでござるぞ?」
「あら?じゃあキョウの意見を聞こうかしら?」
「んぐ……」
やはりどこに向かうかキョウは決めていなかった。確かに短絡的な考えだが、ここでボーッとしているよりはマシだろう。
「雪子、貴方もそれでいい?」
「え?……確かに移動することはいい事ですけど、やっぱりアリスさんの考えはキョウさんの言うとおり短絡的だと思います」
「でもこの町には人気が無いわよ。私、色々回ったけど貴方の知り合いらしき人はいなかったし」
「……アリスさんそんなに遊園地行きたいんですか?」
「僕も遊園地行きたい!」
雪子が飽きれ顔でそう言うと次はカービィがそう言った。これでもう決定だ。半ば私が無理やりきめたものだが。
本当はこういう決め方はしたくはなかったが、少し人間ぽく考えてみた結果である。
「ねぇ、それと雪子、次から私に敬語は無しね。敬語って苦手なの。あとさん付けもやめてね」
そうえば外の世界で敬語が常識だと聞いたことがある。まったく外の世界って面倒なのね。よく考えたら幻想郷はとても住み心地のいい場所らしい。
問題はその事に今まで気付かなかった私である。ああ、とっととこの異変を解決して暖かい家に帰ろう。
「敬語駄目なんですか?……これでいい?」
「うん。それでいいわ、うーん……遊園地にはちょっと距離があるわね……」
雪子に敬語を禁止させたと同時に気付く。ここからでは。距離があることにどうすればいいか、と思考しているときにキョウが言った。
「先ほどそこに軽トラがあったでござるぞ」
「「「軽トラ?」」」
三人は思い思いの想像をする。
アリスも知り合いが呼ばれたが、もっとも自分を殺そうとしてきた人物(子供だが、それでも殺人未遂犯だ)だから悲しむことはなかった。
励ます気はあったが、ここで下手に励ましては落ち込ませる事になるかもしれない。だからこそ二人はかける言葉を捜す。
アリスはもっとも言葉を捜す気はなかったが、自分が人間だった頃を思い出すとその行為は自分の信頼とか評価を落とす事になるだろう。
それに元は人間だったから人が死ぬというのは悲しい事だと痛いほどわかっていた。
やがて自分がかける言葉を見つけることができた。しかしそれを言おうとした瞬間、カービィとキョウが言った。
「……行こう!こんな所に居たらもっと人が死んじゃう!」
「……そうしよう。拙者もこんな所で落ち込んでいる暇は無いでござる」
……どうやら励ます必要はなかったみたいだ。自分が関わったこの二人はどうやら予想以上に精神的に強かった。
カービィは思う。デデデ大王もメタナイトも自分のプライドをかけて戦ったんだと。ならば彼らの分まで生き続けなければならない。
そうだ。こんな所で落ち込んでる暇はない。とっととあのマルクをやっつけて異変を解決しようじゃないか。
だから自分は知り合いが死んだとき、悲しむ事はしないようにしよう。もっともそれがその時がきて実行できるかはわからないけど。
「そうですね、……でもカービィちゃん。どこに向かうの?」
「……あ、そうだね。決めてなかった」
「拙者もその事を失念していた」
だが、少し頭が悪いらしい。どうしてそこまで考えていないのか。……もっとも私もどこに向かえばいいのかわからなかった。
そこで自分はある事に思い出す。
「ねぇ、私さ、遊園地に行ってみたいんだけど」
外の世界にあるというとても楽しい場所。それは弾幕遊びの何倍も、何十倍も楽しいらしい。
だからこそ自分はそこに行ってみたかった。どんな所なのだろうか?弾幕遊びの何十倍も楽しいのだから弾幕がいつもの十倍襲ってきたりするのか。
「む、アリス殿。それは短絡的な考えでござるぞ?」
「あら?じゃあキョウの意見を聞こうかしら?」
「んぐ……」
やはりどこに向かうかキョウは決めていなかった。確かに短絡的な考えだが、ここでボーッとしているよりはマシだろう。
「雪子、貴方もそれでいい?」
「え?……確かに移動することはいい事ですけど、やっぱりアリスさんの考えはキョウさんの言うとおり短絡的だと思います」
「でもこの町には人気が無いわよ。私、色々回ったけど貴方の知り合いらしき人はいなかったし」
「……アリスさんそんなに遊園地行きたいんですか?」
「僕も遊園地行きたい!」
雪子が飽きれ顔でそう言うと次はカービィがそう言った。これでもう決定だ。半ば私が無理やりきめたものだが。
本当はこういう決め方はしたくはなかったが、少し人間ぽく考えてみた結果である。
「ねぇ、それと雪子、次から私に敬語は無しね。敬語って苦手なの。あとさん付けもやめてね」
そうえば外の世界で敬語が常識だと聞いたことがある。まったく外の世界って面倒なのね。よく考えたら幻想郷はとても住み心地のいい場所らしい。
問題はその事に今まで気付かなかった私である。ああ、とっととこの異変を解決して暖かい家に帰ろう。
「敬語駄目なんですか?……これでいい?」
「うん。それでいいわ、うーん……遊園地にはちょっと距離があるわね……」
雪子に敬語を禁止させたと同時に気付く。ここからでは。距離があることにどうすればいいか、と思考しているときにキョウが言った。
「先ほどそこに軽トラがあったでござるぞ」
「「「軽トラ?」」」
三人は思い思いの想像をする。
アリス(軽トラ?トラ?なんだその危なっかしい名前は。生き物?)←虎と勘違いしている
雪子(軽トラってトラックのことよね?でもトラックって二人しか乗れないわよね?……まさか荷台?でも中って真っ暗よね?)←トラックは知ってるが軽トラは知らない
カービィ(軽ドラ?軽いドラ焼き?でもなんでドラ焼きの話に?嬉しいけど……)←もはや全てを間違っている
雪子(軽トラってトラックのことよね?でもトラックって二人しか乗れないわよね?……まさか荷台?でも中って真っ暗よね?)←トラックは知ってるが軽トラは知らない
カービィ(軽ドラ?軽いドラ焼き?でもなんでドラ焼きの話に?嬉しいけど……)←もはや全てを間違っている
「……もしや皆の衆、軽トラを存じぬのか?」
一同が一斉に頷いた。それを見たキョウは目が点になった。
☆ ☆ ☆
「ってことはつまり私を襲ったのはソリッドスネークではないってことね」
「君が言うソリッドスネークの外見上からそういうことになるよ。もっとも……」
「もっとも……?」
「君が言うソリッドスネークの外見上からそういうことになるよ。もっとも……」
「もっとも……?」
――――放送で嘘を言うメリットはないからスネークは本当に死んだ。
そう口に出そうと思ったが、上手く口が動かなかった。こういう仕事柄、人が死ぬ事は慣れている筈なのに。
きっと彼が任務で必ず成功してきた為だろう。だから彼が死なないことが当たり前になってしまった。
なぜか腹の奥底で何かが蠢きまわり吐き気を催す。
冷静に考えてスネークがこんなナンセンスなゲームを楽しむことは可能性的に著しく低い。
ならばそれはスネークの名を騙った者の仕業と推理した。スネークに恨みを持つ者(正直、恨みではないが)は名簿に一つ。
『リボルバーオセロット』ただ一人だ。グレイフォックスがスネークの名を騙る確立も低い。つまり自動的に彼の仕業になるだろう。
気をつけなければならない。この殺し合いは異常だ。死人が歩き、そして死に、そして英雄までもが死んだ。
悲しむ暇はない。任務を優先させなければならない。自分は冷血漢ではないが、このように思考しなければ悲しみで自分を保つ事ができないだろう。
「それにしても驚きよね。アンタが足立と、漆黒の騎士とオセロットだっけ?三人に一斉に襲われたなんて」
「鼻に文鎮突っ込まれた時が一番死ぬかと思ったわ……それと、私は咲夜って読んで頂戴。餓鬼にアンタなんて言われたくない」
「アンタも充分餓鬼でしょ!......ねぇ咲夜。鼻に文鎮の下りは聞いて無いわ」
もやは何度目かわからないこの喧嘩を尻目に考える。確かに鼻に文鎮の話は気になるが、他に話すべき所があるだろう。
情報交換は一通り終わった。ペルソナの次は幻想郷、吸血鬼に鼻の妖怪、魔法使い。ファンタジーな話だが、マルクの件があるから信じざるを得ない。
「……それで咲夜、これは僕の推測なんだけど、まさか足立の息の根を止める為に旅館の方向に行く気かい?」
「あら、なんでわかったの?」
「君や千枝ちゃんの話を聞くと足立は狡賢く頭が良い。僕と同じ理系の人間だろうね。そしてそういう性格だから咲夜の悪評を言い振り回しているかもしれない。だから早く息の根を止めたい、でしょ?」
放送の内容からきっとこれから一人で行動すると言い始めるだろう。この子を一人で行かせるわけにはいかないし、こちらも人数が多い方がいい。
だからここで彼女を引き止める為の理由付けを行わなければならなかった。
「でも、足立が君の悪評を言い振り回す可能性は低いよ。僕なら咲夜を仲間だったってことにする」
「なぜ?」
「最初に『自分は無害だ、ここから逃げよう』と言ってきたんだろう?だからその行動を次に接触する人物にする可能性は高い。そして信用を得る為に嘘はあまり言いたくない。ならばその旅館で殺し合いに唯一乗っていなかった咲夜を仲間に仕立てれば信用はあがる。しかもその咲夜が死んだっていうなら矛盾は生じなくなる」
「……すっご」
自分がそう推理すると千枝がそう呟いた。やっぱりオタコンは頭が回るのだなと千枝は思った。
「それで今頃、偽りの仲間と放送を聴いて泣いて喜んでるだろうね。咲夜が生きていた、って。」
「胸糞悪い話だけど、そんなに私をここに留めたいの?それに、足立に騙されてる奴がいるのもちょっと困るわ」
だが、咲夜は図星を突いてきた。確かにここに留めたいのだが、他にも理由がある。
「……まだ話してないが、聞いてくれ。この首輪を外す方法だ。それと僕だったらその騙した奴はすぐには殺さないし、利用してから殺すだろうね」
殺す、という言葉に千枝が反応するが例えばの話だったのでツッコミを入れることはしなかった。
まだ首輪を外してくれるゲーム機の話を咲夜にはしていなかった。彼女が危険人物という可能性があった為である。
「首輪を外す方法?」
「これを見てくれ。こいつをどう思う?」
「……無駄にデカイ携帯ね。」
咲夜はそのゲーム機を見たことがない。といよりか携帯ゲーム機なんか幻想郷には存在しない。だからこそ幻想郷でも比較的知っている人が多い携帯と勘違いしたのだ。
もっとも幻想郷で携帯の使用方法を知っているひとは居ないに等しいが。
「……本当に幻想郷ってあるんだ」
千枝だってこのゲーム機は見たことがある。だから歳が近い咲夜がこのゲーム機を「携帯」を勘違いしたのに驚いた。
幻想郷という異世界の話を聞いた時が驚いたけど、マヨナカテレビの件があるのだから信じるのに時間はかからなかった。そしてそれは咲夜の反応で確信にかわった。
「……まぁ説明はあとにしよう。これに触ってくれ」
「……?別にいいけど……」
咲夜がゲーム機に触る。そしてゲーム画面に咲夜によく似たキャラ(もっとも和服ではなく、メイド服だが)が画面上に現れる。それをみて咲夜は驚いた。
「とりあえず、僕らには当たり前の話なんだけど、とりあえず説明をしよう。これはゲーム機っていってね、娯楽目的の為に開発されたものだ」
「娯楽目的にしちゃ凄い手間がかかってる物ね」
咲夜は何処ぞの河童を思い出した。あの河童なら、これを見てもきっと驚かないだろう。
「だけど、これは主催から僕らへの挑戦状みたいなものだ。このゲームをクリアすると……」
「首輪は外れる?」
「……結構、勘が鋭いね」
「あら、勘が鋭いんじゃなくて推理したのよ。それにさっき言ってたじゃないの」
ああ、そういえば自分で首輪を外す方法を話す、と言っていた。やはり自分はスネークが死んで動揺している事を痛感した。
「このゲームはゲーム機には触った人物が動かせるようになっている」
オタコンは咲夜から目を逸らし、画面に目を移す。それと同時に咲夜も千枝も画面に見入る。
先ほど言った通り、一人増えただけで時間はかかったが難なくクリアした。
「おぉー!やっぱオタコン凄いじゃん!」
「……あら、この数値は強さを表すの?……よかった。こんな餓鬼には負けてない」
「もう反論する気にもなれんわ!それと、私は千枝って名前があるの!」
「このゲームに出てる千枝は小さくて蟻みたいね。すばしっこくて……ありんこ千枝ちゃん」
「じゃりんこちえみたいに言うな!」
そう口に出そうと思ったが、上手く口が動かなかった。こういう仕事柄、人が死ぬ事は慣れている筈なのに。
きっと彼が任務で必ず成功してきた為だろう。だから彼が死なないことが当たり前になってしまった。
なぜか腹の奥底で何かが蠢きまわり吐き気を催す。
冷静に考えてスネークがこんなナンセンスなゲームを楽しむことは可能性的に著しく低い。
ならばそれはスネークの名を騙った者の仕業と推理した。スネークに恨みを持つ者(正直、恨みではないが)は名簿に一つ。
『リボルバーオセロット』ただ一人だ。グレイフォックスがスネークの名を騙る確立も低い。つまり自動的に彼の仕業になるだろう。
気をつけなければならない。この殺し合いは異常だ。死人が歩き、そして死に、そして英雄までもが死んだ。
悲しむ暇はない。任務を優先させなければならない。自分は冷血漢ではないが、このように思考しなければ悲しみで自分を保つ事ができないだろう。
「それにしても驚きよね。アンタが足立と、漆黒の騎士とオセロットだっけ?三人に一斉に襲われたなんて」
「鼻に文鎮突っ込まれた時が一番死ぬかと思ったわ……それと、私は咲夜って読んで頂戴。餓鬼にアンタなんて言われたくない」
「アンタも充分餓鬼でしょ!......ねぇ咲夜。鼻に文鎮の下りは聞いて無いわ」
もやは何度目かわからないこの喧嘩を尻目に考える。確かに鼻に文鎮の話は気になるが、他に話すべき所があるだろう。
情報交換は一通り終わった。ペルソナの次は幻想郷、吸血鬼に鼻の妖怪、魔法使い。ファンタジーな話だが、マルクの件があるから信じざるを得ない。
「……それで咲夜、これは僕の推測なんだけど、まさか足立の息の根を止める為に旅館の方向に行く気かい?」
「あら、なんでわかったの?」
「君や千枝ちゃんの話を聞くと足立は狡賢く頭が良い。僕と同じ理系の人間だろうね。そしてそういう性格だから咲夜の悪評を言い振り回しているかもしれない。だから早く息の根を止めたい、でしょ?」
放送の内容からきっとこれから一人で行動すると言い始めるだろう。この子を一人で行かせるわけにはいかないし、こちらも人数が多い方がいい。
だからここで彼女を引き止める為の理由付けを行わなければならなかった。
「でも、足立が君の悪評を言い振り回す可能性は低いよ。僕なら咲夜を仲間だったってことにする」
「なぜ?」
「最初に『自分は無害だ、ここから逃げよう』と言ってきたんだろう?だからその行動を次に接触する人物にする可能性は高い。そして信用を得る為に嘘はあまり言いたくない。ならばその旅館で殺し合いに唯一乗っていなかった咲夜を仲間に仕立てれば信用はあがる。しかもその咲夜が死んだっていうなら矛盾は生じなくなる」
「……すっご」
自分がそう推理すると千枝がそう呟いた。やっぱりオタコンは頭が回るのだなと千枝は思った。
「それで今頃、偽りの仲間と放送を聴いて泣いて喜んでるだろうね。咲夜が生きていた、って。」
「胸糞悪い話だけど、そんなに私をここに留めたいの?それに、足立に騙されてる奴がいるのもちょっと困るわ」
だが、咲夜は図星を突いてきた。確かにここに留めたいのだが、他にも理由がある。
「……まだ話してないが、聞いてくれ。この首輪を外す方法だ。それと僕だったらその騙した奴はすぐには殺さないし、利用してから殺すだろうね」
殺す、という言葉に千枝が反応するが例えばの話だったのでツッコミを入れることはしなかった。
まだ首輪を外してくれるゲーム機の話を咲夜にはしていなかった。彼女が危険人物という可能性があった為である。
「首輪を外す方法?」
「これを見てくれ。こいつをどう思う?」
「……無駄にデカイ携帯ね。」
咲夜はそのゲーム機を見たことがない。といよりか携帯ゲーム機なんか幻想郷には存在しない。だからこそ幻想郷でも比較的知っている人が多い携帯と勘違いしたのだ。
もっとも幻想郷で携帯の使用方法を知っているひとは居ないに等しいが。
「……本当に幻想郷ってあるんだ」
千枝だってこのゲーム機は見たことがある。だから歳が近い咲夜がこのゲーム機を「携帯」を勘違いしたのに驚いた。
幻想郷という異世界の話を聞いた時が驚いたけど、マヨナカテレビの件があるのだから信じるのに時間はかからなかった。そしてそれは咲夜の反応で確信にかわった。
「……まぁ説明はあとにしよう。これに触ってくれ」
「……?別にいいけど……」
咲夜がゲーム機に触る。そしてゲーム画面に咲夜によく似たキャラ(もっとも和服ではなく、メイド服だが)が画面上に現れる。それをみて咲夜は驚いた。
「とりあえず、僕らには当たり前の話なんだけど、とりあえず説明をしよう。これはゲーム機っていってね、娯楽目的の為に開発されたものだ」
「娯楽目的にしちゃ凄い手間がかかってる物ね」
咲夜は何処ぞの河童を思い出した。あの河童なら、これを見てもきっと驚かないだろう。
「だけど、これは主催から僕らへの挑戦状みたいなものだ。このゲームをクリアすると……」
「首輪は外れる?」
「……結構、勘が鋭いね」
「あら、勘が鋭いんじゃなくて推理したのよ。それにさっき言ってたじゃないの」
ああ、そういえば自分で首輪を外す方法を話す、と言っていた。やはり自分はスネークが死んで動揺している事を痛感した。
「このゲームはゲーム機には触った人物が動かせるようになっている」
オタコンは咲夜から目を逸らし、画面に目を移す。それと同時に咲夜も千枝も画面に見入る。
先ほど言った通り、一人増えただけで時間はかかったが難なくクリアした。
「おぉー!やっぱオタコン凄いじゃん!」
「……あら、この数値は強さを表すの?……よかった。こんな餓鬼には負けてない」
「もう反論する気にもなれんわ!それと、私は千枝って名前があるの!」
「このゲームに出てる千枝は小さくて蟻みたいね。すばしっこくて……ありんこ千枝ちゃん」
「じゃりんこちえみたいに言うな!」
『クリアおめでとうなのサ!……なんてね』
咲夜がまた千枝の神経を軽く逆撫でしたその時だった。画面にマルクではなく、一人の男(女?)が映し出された。
その姿はガソリンスタンドの店員の様な格好をしていた。千枝はその人をどこかで見た気がするが、思い出せない。
『こんにちわ、ハル・エメリッヒ。この殺し合いの参加者の中で君は頭の良い方だね。それとお二方』
「……誰よ貴方?」
『ハル・エメリッヒ。君は頭がいいから俺に質問する事が無意味って事はわかるよね?この画面上の俺に質問するのはお地蔵さんに話しかける行為に等しいよ』
「……これ壊していいかしら?」
咲夜がオタコンに許可を取ろうとするが、勿論許可は下りない。それも当然か。いや、それ以前にオタコンは画面に集中しており、周りの音などなにも聞こえない。
『これはゲーム機。だからこそプログラムされた質問しか返せない。本当はここであの道化師が激励の言葉を言うんだけど、俺が書き換えちゃった』
するとその店員の下にメッセージウィンドがわざとらしく現れる。
『あと三面クリアしたら首輪を解除できる。でも、その道は険しい。だから俺はここで君たちにご褒美を与えて、やる気を出させようと思う』
彼がそういうとメッセージウィンドに文字が表示される。
その姿はガソリンスタンドの店員の様な格好をしていた。千枝はその人をどこかで見た気がするが、思い出せない。
『こんにちわ、ハル・エメリッヒ。この殺し合いの参加者の中で君は頭の良い方だね。それとお二方』
「……誰よ貴方?」
『ハル・エメリッヒ。君は頭がいいから俺に質問する事が無意味って事はわかるよね?この画面上の俺に質問するのはお地蔵さんに話しかける行為に等しいよ』
「……これ壊していいかしら?」
咲夜がオタコンに許可を取ろうとするが、勿論許可は下りない。それも当然か。いや、それ以前にオタコンは画面に集中しており、周りの音などなにも聞こえない。
『これはゲーム機。だからこそプログラムされた質問しか返せない。本当はここであの道化師が激励の言葉を言うんだけど、俺が書き換えちゃった』
するとその店員の下にメッセージウィンドがわざとらしく現れる。
『あと三面クリアしたら首輪を解除できる。でも、その道は険しい。だから俺はここで君たちにご褒美を与えて、やる気を出させようと思う』
彼がそういうとメッセージウィンドに文字が表示される。
┏━━━━━━━━━━━━━━┓
ニア 主催の正体を教えて欲しい
殺し合いを開催した理由
ここがどこの島なのか
┗━━━━━━━━━━━━━━┛
ニア 主催の正体を教えて欲しい
殺し合いを開催した理由
ここがどこの島なのか
┗━━━━━━━━━━━━━━┛
『情報こそがこの殺し合いを操る為の最大の攻略方法さ。好きなのを選びなよ。あと次のステージをクリアしてもに俺は登場しないからじっくり選びなよ』
☆ ☆ ☆
「10人も死んだのか。あと27人だ、セシル。」
「そうだな。あと27人殺すことで僕らの目的は達成される」
「そうだな。あと27人殺すことで僕らの目的は達成される」
あと27人を殺せば、全ては無かったことにされる。そうだ、ローザだって生き返るし、先ほどの血みどろの戦いだって無かったことになる。
悲しみはなくなる。先ほど流した涙もなかったことになる。この殺し合いがなかったことになればハッピーエンドだ。
目指すのは二人きりになること。
しかし、心配事があった。
「なぁ、カイン、あのバルバリシアが死んだ。もしかしたら二人になるのは困難な道なのかもしれない」
「だからこそゴルベーザを仲間にしようとさっきから何度も言っているじゃないか」
ああ、しまった。そういう訳にもいかない。ゴルベーザにはちゃんと自分の道を進んで欲しいのだ。だからといって自分は自分の道を進まなければいけないのだ。
「……ああ、そうだな」
だが自分はどうしてもそれをカインに言う出すことができなかった。
「しかし、問題はゴルベーザがどこにいるか……おい!セシル!あれを見てみろ!」
カインが何かを指差す。
あれは……なんだ?
「三人ほど乗っていた。追うぞ!」
カインが駆け出すがそれは早く、追いつかない。なんて速さだ。あの乗り物はなんなんだ?
「おい、セシル!行くぞ!」
「あ、すまない、行こう」
それに追いつく為に走る。追いつくのは難しいが、地図を広げるとどこに向かっているかはわかった。『バンクル遊園地』。
悲しみはなくなる。先ほど流した涙もなかったことになる。この殺し合いがなかったことになればハッピーエンドだ。
目指すのは二人きりになること。
しかし、心配事があった。
「なぁ、カイン、あのバルバリシアが死んだ。もしかしたら二人になるのは困難な道なのかもしれない」
「だからこそゴルベーザを仲間にしようとさっきから何度も言っているじゃないか」
ああ、しまった。そういう訳にもいかない。ゴルベーザにはちゃんと自分の道を進んで欲しいのだ。だからといって自分は自分の道を進まなければいけないのだ。
「……ああ、そうだな」
だが自分はどうしてもそれをカインに言う出すことができなかった。
「しかし、問題はゴルベーザがどこにいるか……おい!セシル!あれを見てみろ!」
カインが何かを指差す。
あれは……なんだ?
「三人ほど乗っていた。追うぞ!」
カインが駆け出すがそれは早く、追いつかない。なんて速さだ。あの乗り物はなんなんだ?
「おい、セシル!行くぞ!」
「あ、すまない、行こう」
それに追いつく為に走る。追いつくのは難しいが、地図を広げるとどこに向かっているかはわかった。『バンクル遊園地』。
☆ ☆ ☆
「……マヨナカテレビに、ペルソナ、ねぇ。地上にもそういう魔法の類があったなんて」
「私は幻想郷があること自体驚きました」
「敬語」
「あ!……ごめん!」
「幻想郷ってプププランドに似てるね!」
「異世界、なんとも面妖な……」
「私は幻想郷があること自体驚きました」
「敬語」
「あ!……ごめん!」
「幻想郷ってプププランドに似てるね!」
「異世界、なんとも面妖な……」
アリス、カービィ、雪子の三人で軽トラックの荷台で和気藹々と会話する。キョウは運転しているが会話に無理に混じり、運転は覚束ない。
情報交換は一通り終わってもう雑談が始まっていた。
「確かに幻想郷に似てるわね。妖怪とか吸血鬼とか煩わしい存在はいないけど」
「毎日が平和なんだぁ!でもマルクみたいなのがたまに悪戯するけど」
「……カービィちゃん、これって悪戯ってレベルじゃないけど?」
「うん。それが凄い不思議なんだ。こんな度が過ぎた事をするとは思わなかったし」
カービィが不思議そうに言う。星を丸ごと自分の物にするというレベルは悪戯にしては度が過ぎているが、この件でマルクは懲りて小さな悪戯しかしないようになったらしい。
だが、その後の事件がこれか。事件というより、陰謀レベルの事件じゃないか。
「ねぇ、キョウ、アンタの世界のポケモンってどんな生き物なの?火を吹いたり、空を飛ぶのって妖怪そっくりよ」
「む、確かに幻想郷の妖怪に似ている点はある。だがポケモンは一体一体の個性が強く、同じ種類でも強さや見た目が違うでござる。拙者も一体、支給されている」
「え?キョウさんポケモン持っているんですか?見せてください!」
それを言った瞬間に気付いた。キョウは正直しまった、と思った。コイキングは見せたくない……!
「……皆の衆、着いたでござるぞ」
そう思考していると看板が見えた。『バンクル遊園地へようこそなのサ!営業時間8:00~21:00』
目の前には、何をモチーフにしたのかよくわからない小さいお城(あのテーマパークにあるアレとは何十倍も小さい)が立っており、軽快な音楽がエントランスのスピーカーから流れているが、スタッフは誰一人おらず、全体的に寂しい。
それでも雪子は興奮していた。
「ここが遊園地……初めて来た」
「……これが遊園地?趣味の悪い建物ね。期待はずれもいいとこよ」
そう不満を漏らしたのはアリス。どうやらイメージと大幅に違っていたらしい。どんな物をイメージしていたかカービィにはわからなかった。
「雪子殿、アリス殿、一応言っておくが、これは観光ではないでござる……」
「わかってるわよ。とりあえずは周辺を捜索ね。時間かかりそうだし、二手に分かれる?」
「うむ、少々危険だが、その方が時間はかからないでござる」
「どうやって組み分けする?」
「ジャンケンは嫌だよ!」
カービィが急に声を荒げる。カービィをみると、ああ、なるほど、そうか。そういうことか。じゃあジャンケンは駄目だな。うん。
「……籤引きできめよ」
「そうしよう」
アリスが基本支給品のメモ帳を手で千切り、丸と三角のマークをつける。それを折りたたむ。
それを4人一斉に引き、組はきまった。
「……女の子チームと男チームね」
「問題はないと思うが、女子だけで大丈夫でござるか?」
「大丈夫、問題ないわよ。きっと。雪子けっこう強いし」
「え、ちょっと、アリス戦わないの?」
「うん」
……正直心配だったが、キョウは突っ込まないようにした。
もっともキョウは、アリスと雪子を二人きりにする気は無かった。二人は自分の娘と同じぐらいの年齢だ。だからこそ守ってやらなければいけないと思ったが。
二人のマヨナカテレビの話と幻想郷の話を聞いた所、彼女らはかなりの手垂れと感じ、二人きりにさせても大丈夫かと思った。過信かもしれないが。
……もっともこの籤引きはアリスが何か仕組んでいたので無意味な物だ。本人はバレてないと思っているだろうが、指摘はしないことにしよう。
「キョウは僕と一緒だね。……あ!」
またもや急にカービィが突拍子に声を上げる。
「どうしたでござるか?」
「ポケモン見せてよ!」
話を逸らしたつもりだったが……!これはみせたくないでござる……!
「そうそう、火噴いたり、空を飛んだりするんでしょ?」
「キョウさん、私にも見せて!」
だが、現実は非情……!話は逸れない……!
「……むう。しょうがない、でござる」
もはや逃げられないと感じ、モンスターボールをデイパックから取り出す。
そして地面に向かって投げつけると、コイキングが現れた。
その様子を見た三人は興奮する。ずっと小さいボールからかなり大きめのコイキングが現れたのだ。
それも規格外の。キョウはこのコイキングを自分で取り出して確認していなかったためその大きさに自分も驚いた。
もしやこの大きさでギャラドスに進化したらどれだけの暴れん坊になるのだろうか。
……だがそれは進化した話だ。これぐらい大きくても、コイキングはコイキング……!
「キョウさん!これが火を噴いたりするんですね!」
「いや、これはコイキングといって……」
「早くわざを見せないよ。『そらをとぶ』とか」
「いや、これは水ポケモンだから……」
「キョウ~!はやく見せてよ~!」
情報交換は一通り終わってもう雑談が始まっていた。
「確かに幻想郷に似てるわね。妖怪とか吸血鬼とか煩わしい存在はいないけど」
「毎日が平和なんだぁ!でもマルクみたいなのがたまに悪戯するけど」
「……カービィちゃん、これって悪戯ってレベルじゃないけど?」
「うん。それが凄い不思議なんだ。こんな度が過ぎた事をするとは思わなかったし」
カービィが不思議そうに言う。星を丸ごと自分の物にするというレベルは悪戯にしては度が過ぎているが、この件でマルクは懲りて小さな悪戯しかしないようになったらしい。
だが、その後の事件がこれか。事件というより、陰謀レベルの事件じゃないか。
「ねぇ、キョウ、アンタの世界のポケモンってどんな生き物なの?火を吹いたり、空を飛ぶのって妖怪そっくりよ」
「む、確かに幻想郷の妖怪に似ている点はある。だがポケモンは一体一体の個性が強く、同じ種類でも強さや見た目が違うでござる。拙者も一体、支給されている」
「え?キョウさんポケモン持っているんですか?見せてください!」
それを言った瞬間に気付いた。キョウは正直しまった、と思った。コイキングは見せたくない……!
「……皆の衆、着いたでござるぞ」
そう思考していると看板が見えた。『バンクル遊園地へようこそなのサ!営業時間8:00~21:00』
目の前には、何をモチーフにしたのかよくわからない小さいお城(あのテーマパークにあるアレとは何十倍も小さい)が立っており、軽快な音楽がエントランスのスピーカーから流れているが、スタッフは誰一人おらず、全体的に寂しい。
それでも雪子は興奮していた。
「ここが遊園地……初めて来た」
「……これが遊園地?趣味の悪い建物ね。期待はずれもいいとこよ」
そう不満を漏らしたのはアリス。どうやらイメージと大幅に違っていたらしい。どんな物をイメージしていたかカービィにはわからなかった。
「雪子殿、アリス殿、一応言っておくが、これは観光ではないでござる……」
「わかってるわよ。とりあえずは周辺を捜索ね。時間かかりそうだし、二手に分かれる?」
「うむ、少々危険だが、その方が時間はかからないでござる」
「どうやって組み分けする?」
「ジャンケンは嫌だよ!」
カービィが急に声を荒げる。カービィをみると、ああ、なるほど、そうか。そういうことか。じゃあジャンケンは駄目だな。うん。
「……籤引きできめよ」
「そうしよう」
アリスが基本支給品のメモ帳を手で千切り、丸と三角のマークをつける。それを折りたたむ。
それを4人一斉に引き、組はきまった。
「……女の子チームと男チームね」
「問題はないと思うが、女子だけで大丈夫でござるか?」
「大丈夫、問題ないわよ。きっと。雪子けっこう強いし」
「え、ちょっと、アリス戦わないの?」
「うん」
……正直心配だったが、キョウは突っ込まないようにした。
もっともキョウは、アリスと雪子を二人きりにする気は無かった。二人は自分の娘と同じぐらいの年齢だ。だからこそ守ってやらなければいけないと思ったが。
二人のマヨナカテレビの話と幻想郷の話を聞いた所、彼女らはかなりの手垂れと感じ、二人きりにさせても大丈夫かと思った。過信かもしれないが。
……もっともこの籤引きはアリスが何か仕組んでいたので無意味な物だ。本人はバレてないと思っているだろうが、指摘はしないことにしよう。
「キョウは僕と一緒だね。……あ!」
またもや急にカービィが突拍子に声を上げる。
「どうしたでござるか?」
「ポケモン見せてよ!」
話を逸らしたつもりだったが……!これはみせたくないでござる……!
「そうそう、火噴いたり、空を飛んだりするんでしょ?」
「キョウさん、私にも見せて!」
だが、現実は非情……!話は逸れない……!
「……むう。しょうがない、でござる」
もはや逃げられないと感じ、モンスターボールをデイパックから取り出す。
そして地面に向かって投げつけると、コイキングが現れた。
その様子を見た三人は興奮する。ずっと小さいボールからかなり大きめのコイキングが現れたのだ。
それも規格外の。キョウはこのコイキングを自分で取り出して確認していなかったためその大きさに自分も驚いた。
もしやこの大きさでギャラドスに進化したらどれだけの暴れん坊になるのだろうか。
……だがそれは進化した話だ。これぐらい大きくても、コイキングはコイキング……!
「キョウさん!これが火を噴いたりするんですね!」
「いや、これはコイキングといって……」
「早くわざを見せないよ。『そらをとぶ』とか」
「いや、これは水ポケモンだから……」
「キョウ~!はやく見せてよ~!」
キョウは自分がポケモンを万能の様に説明したのを後悔した。
「………コイキング!!『はねる』でござる!!!」
それをみた三人は目が点になった。勿論、悪い意味で。
☆ ☆ ☆
「ちょっと!アンタ何者よ!」
「無駄だよ千枝ちゃん。これはプログラムされてる。この選択肢以外の質問は答えてはくれない」
「早く決めちゃえばいいじゃない。私は『主催の正体を教えて欲しい』が知りたいわ」
「そういうわけにもいかない。今、僕達が今一番欲しい情報は常に変動している。……どうやらこの画面を保留できないみたいだ。この選択肢を選ばないと次のステージには進めない」
「無駄だよ千枝ちゃん。これはプログラムされてる。この選択肢以外の質問は答えてはくれない」
「早く決めちゃえばいいじゃない。私は『主催の正体を教えて欲しい』が知りたいわ」
「そういうわけにもいかない。今、僕達が今一番欲しい情報は常に変動している。……どうやらこの画面を保留できないみたいだ。この選択肢を選ばないと次のステージには進めない」
咲夜と接触したことによりこの戦況はかなり変わったと言えるが、その途端にこれだ。
正直オタコンはこの選択肢を選びたくは無かった。この選択肢にある情報は全て等価値だ。
だからこそ何を選んでもよい。だが何を選んでもいいからこそ、罠の可能性があった。
「(……このゲームを主催した人物は僕らに何をさせたいんだ?)」
娯楽の為にこれを主催したと思えば、首輪を外せるチャンスを与え、その次は自らの情報を与えようとしてくる。
わけがわからない。
「(……二重スパイか?つまり主催を相手にした愉快犯?)」
そう分析するも情報が少なすぎる。この男(やはり女か?)はそれがわかっているからこの選択肢を出してきたのだろう。
「ねぇ、オタコン、これって全部、同じ価値のある情報なんでしょ。なら適当に選べばいいじゃない」
千枝がそういう。確かに適当に選べば次のステップに進める。そうすれば情報も手に入るし首輪を外すことが出来るまでの時間は短くなるだろう。
「……保留だ。この質問を選ぶわけには行かない」
オタコンはゲーム機を折りたたみデイパックに入れなおした。
「これを選ぶのは他の参加者とコンタクトをとってからにしよう。君たちは僕の事を慎重すぎないかって思ってると思う。だけど慎重すぎるぐらいが丁度いいんだ。戦場ではね」
そうだ。スネークも慎重に物事を進めていき、いつも難題を解決してきた。だからこそスネークを模倣し、そして自分の頭脳を最大限に活用しなければならない。
「(……スネーク。君は悪いと思うけど、悲しむのは後にする。この事件を解決したら君の事をみんなに伝えるよ)」
「随分賢い頭をお持ちだこと。……あら?あれはなに?」
「え?……あれ!?ねえオタコンあれを見て!」
急に咲夜と千枝が声を荒げる。この状況でこんなに大きな声を上げるのは危険だ。
だが、声を荒げる理由がわかった。ここから見える観覧車が回り始めたのだ。
「……誰かがテーマパーク内の電源をいれたのかな。無意味な行動には変わりないけど。……参加者をおびき寄せる罠かもしれない」
「……あんなに大きなものを動かすなんて。地上って結構凄いのね」
「ねえオタコン、あれさ、罠だとしたら、どうなるの?」
今度は千枝が質問をしてきた。
「……君が予想している通りだよ」
だがそれは質問よりも、確認の意味合いが強かった。知らない情報を知るための質問ではなく、テストの答えあわせのように千枝はオタコンにその質問を投げつけた。
だからオタコンはその質問に対してそう答えたのだ。
「……あら、もしかしてくだらない正義感をかざして、あの車輪に向かおうって訳?」
「だとしたらなにさ、どうせアンタは私の事を止めないでしょ?」
少しぐらいは仲良くしたらどうなんだ、とオタコンは思う。同じ事を千枝も思っているだろう。
「千枝ちゃん、危険だ。もう少し冷静に考えようよ。放送で呼ばれた名前は10。だから……」
「10人も死んでるんだからそいつを殺した奴を倒さなきゃいけないじゃん!」
「返り討ちにされたらどうするんだっ!?」
「……っ!」
予期せぬオタコンの激昂。千枝はオタコンが温厚なイメージ(実際温厚なのだが)しか見ていなかったのでそれに驚く。
咲夜もオタコンが急に声を張り上げたのに驚いた。この男はどうやら根性も持ち合わせているらしい。
「……それでも、行くよ私は!例え返り討ちにされても!」
咲夜は千枝が言った言葉に更に驚いた。もしやこの餓鬼は偽善ではなく、大真面目に人助けでもしたいとでも言うのか。
これが地上の人間?聞いてるのと違うじゃない。あのソリッドスネー、ではなかったリボルバー・オセロットの様に腐った奴ばかりだと思っていたが、どうやら違うらしい。
それでも愚かで自分勝手なのは間違いない。それでこそ光るものもある。幻想郷にはこのような人物は居ない。
「……わかった、君の我儘に付き合うのはこれっきりだ。次からは僕の指示に従ってもらう。……咲夜。君はどうする?」
「あら、まるで私が行くのが嫌みたいじゃない。勿論行くに決まってるわ。千枝がどうやって戦うのかみたいしね」
オタコンは彼女の真意は知らないが、きっと善意なのだろう。やはりこの子は優しさを持っていることが確信できた。
ぐぅ~
「……あら、かっこいい事を言っときながらお腹の音を綺麗に鳴らすなんて芸当もできるのね」
その音と共に千枝が顔を真っ赤にする。確かに自分達はこのゲームが始まってから何も口にしていなかった。
「……食事しながら移動しよう。今は時間を無駄にしたくはない」
正直オタコンはこの選択肢を選びたくは無かった。この選択肢にある情報は全て等価値だ。
だからこそ何を選んでもよい。だが何を選んでもいいからこそ、罠の可能性があった。
「(……このゲームを主催した人物は僕らに何をさせたいんだ?)」
娯楽の為にこれを主催したと思えば、首輪を外せるチャンスを与え、その次は自らの情報を与えようとしてくる。
わけがわからない。
「(……二重スパイか?つまり主催を相手にした愉快犯?)」
そう分析するも情報が少なすぎる。この男(やはり女か?)はそれがわかっているからこの選択肢を出してきたのだろう。
「ねぇ、オタコン、これって全部、同じ価値のある情報なんでしょ。なら適当に選べばいいじゃない」
千枝がそういう。確かに適当に選べば次のステップに進める。そうすれば情報も手に入るし首輪を外すことが出来るまでの時間は短くなるだろう。
「……保留だ。この質問を選ぶわけには行かない」
オタコンはゲーム機を折りたたみデイパックに入れなおした。
「これを選ぶのは他の参加者とコンタクトをとってからにしよう。君たちは僕の事を慎重すぎないかって思ってると思う。だけど慎重すぎるぐらいが丁度いいんだ。戦場ではね」
そうだ。スネークも慎重に物事を進めていき、いつも難題を解決してきた。だからこそスネークを模倣し、そして自分の頭脳を最大限に活用しなければならない。
「(……スネーク。君は悪いと思うけど、悲しむのは後にする。この事件を解決したら君の事をみんなに伝えるよ)」
「随分賢い頭をお持ちだこと。……あら?あれはなに?」
「え?……あれ!?ねえオタコンあれを見て!」
急に咲夜と千枝が声を荒げる。この状況でこんなに大きな声を上げるのは危険だ。
だが、声を荒げる理由がわかった。ここから見える観覧車が回り始めたのだ。
「……誰かがテーマパーク内の電源をいれたのかな。無意味な行動には変わりないけど。……参加者をおびき寄せる罠かもしれない」
「……あんなに大きなものを動かすなんて。地上って結構凄いのね」
「ねえオタコン、あれさ、罠だとしたら、どうなるの?」
今度は千枝が質問をしてきた。
「……君が予想している通りだよ」
だがそれは質問よりも、確認の意味合いが強かった。知らない情報を知るための質問ではなく、テストの答えあわせのように千枝はオタコンにその質問を投げつけた。
だからオタコンはその質問に対してそう答えたのだ。
「……あら、もしかしてくだらない正義感をかざして、あの車輪に向かおうって訳?」
「だとしたらなにさ、どうせアンタは私の事を止めないでしょ?」
少しぐらいは仲良くしたらどうなんだ、とオタコンは思う。同じ事を千枝も思っているだろう。
「千枝ちゃん、危険だ。もう少し冷静に考えようよ。放送で呼ばれた名前は10。だから……」
「10人も死んでるんだからそいつを殺した奴を倒さなきゃいけないじゃん!」
「返り討ちにされたらどうするんだっ!?」
「……っ!」
予期せぬオタコンの激昂。千枝はオタコンが温厚なイメージ(実際温厚なのだが)しか見ていなかったのでそれに驚く。
咲夜もオタコンが急に声を張り上げたのに驚いた。この男はどうやら根性も持ち合わせているらしい。
「……それでも、行くよ私は!例え返り討ちにされても!」
咲夜は千枝が言った言葉に更に驚いた。もしやこの餓鬼は偽善ではなく、大真面目に人助けでもしたいとでも言うのか。
これが地上の人間?聞いてるのと違うじゃない。あのソリッドスネー、ではなかったリボルバー・オセロットの様に腐った奴ばかりだと思っていたが、どうやら違うらしい。
それでも愚かで自分勝手なのは間違いない。それでこそ光るものもある。幻想郷にはこのような人物は居ない。
「……わかった、君の我儘に付き合うのはこれっきりだ。次からは僕の指示に従ってもらう。……咲夜。君はどうする?」
「あら、まるで私が行くのが嫌みたいじゃない。勿論行くに決まってるわ。千枝がどうやって戦うのかみたいしね」
オタコンは彼女の真意は知らないが、きっと善意なのだろう。やはりこの子は優しさを持っていることが確信できた。
ぐぅ~
「……あら、かっこいい事を言っときながらお腹の音を綺麗に鳴らすなんて芸当もできるのね」
その音と共に千枝が顔を真っ赤にする。確かに自分達はこのゲームが始まってから何も口にしていなかった。
「……食事しながら移動しよう。今は時間を無駄にしたくはない」
☆ ☆ ☆
「……それ、本当?……ぷぷ」
「どこに笑う要素があったのよ」
「どこに笑う要素があったのよ」
聳え立つ観覧車の真下。それをアリスと雪子が見上げる。稼動しており、雪子はそれに乗りたかったが、口には出さなかった。
アリスも少し乗りたいという気持ちもあったが、高い所は別に珍しいものではないと認識していたのでその気持ちはすぐに失せた。
アリスは幻想郷であった異変や住人の話をしているだけなのに雪子が笑う理由がわからなかった。
確かに紅魔館の門番が鯰を退治する話やまその湖に住む氷の妖精の話はおかしな話だが、別に笑えるような話ではない。
どうやらこの子は笑いのツボがどこかおかしいらしい。話相手だけ楽しいのは気に食わない。
もっとも雪子の話はちょっと常軌を逸脱していて、例えば町からでたことがないとかの内容は幻想郷に住まうものなら理解しがたい話であった。
「まぁ妖精は妖精でも、結構強いのよ……どうしたの?」
「なんかアリス、千枝に似てるなぁ」
「千枝って貴方の親友だって子、……ちょっと?」
とかの他愛ない話をなんどか続けていると、雪子が泣いているのに気付いた。口も目も顔も全て笑っているのに雪子の涙が頬をつたっていく。そして雪子が立ち止まった。
「……あれ、なんでだろ……涙が……」
「……雪子、大丈夫?」
急に涙を流す雪子に驚く。元人間のアリスでもその涙の理由はわからないし、幻想郷に急に涙を流す人なんて居るわけがなった。
「……千枝、元気かな」
「大丈夫にきまってるでしょ。さっき放送で名前も呼ばれてないし」
「でも!……襲われてるかもしれない」
涙目で自分に訴えてくる。確かにその可能性は完全に拭うことができない。だが今は人の事を気にしている場合ではない。
もっとも自分らしくない行動が長続きしている自分がそれをフォローするのは難しい。
「……いい、雪子。いま私達がすべき行動はこの遊園地の捜索。お友達の心配は別にしてもいいけど、貴方の泣き言をここで立ち止まって聞いてる場合じゃないの」
だから自分は話題を逸らすことしかできなかった。先ほどキョウがコイキングを頑なに見せなかったように。これが良い選択とは思えなかったが。
「この殺し合いは異常。まったくもって異常。だから幻想郷の住人だろうが日本の稲羽市の住人だろうがプププランド住人だろうが、均等に異常。だから貴方だけが知り合いの心配をしてる訳じゃない。私だって心配よ。でも心配した所で今は何も出来ない」
「……ごめん」
「あら、なんで謝るの?だから今はここを捜索するわよ」
本当は雪子が謝った理由は元人間だから知っていた。だが今は知らないふりをしておけば面倒は起きない事をしっていたので知らないふりをしたのだ。これはきっと間違った選択だと思うけど。
「(……やっぱり人間って面倒。この子の気持ちがわかればいいんだけど)」
元人間だから、この子の気持ちはわかる。わかるにはわかるが、それは細かな所まで渡るわけではない。
『こう言ったら怒るだろうな』とか『これを言うと悲しむから言わない様にしよう』程度だ。だからこの子の事を細かく知りたかったから一緒に行動する様に仕向けたのだ。
先ほどの籤引きは自分が細工して雪子と行動するようにつくったのだ。魔法使いだから種無し手品ぐらいはできる。(もっとも今は種無し手品程度の魔法しかできない)
キョウはそれに気付いてたみたいだが、何も言われなかったのでよしとしよう。
「……幻想郷っていいですね」
ふと、雪子が言った。
「あと、プププランド。平和で、退屈もしなくて、そして人間関係の柵が一切ない。私、そういう所に生まれたかった」
「……急にどうしたの?そんなにいいところじゃないわよ。あれじゃないの?『隣の芝は凄い』とかいう諺」
「『隣の芝は青い』だよ、アリス。……この面倒な事が終わったら幻想郷に遊びに行きたいな」
地上の人間がたまに幻想郷に迷い込むときがある。大抵は帰りたいと言うが、幻想郷が地上より良い所だとわかると途端に帰りたくない、ここに居住する、とか言うのも稀にいる。
それで、後者の方と雪子があまりにも一致していたので色々な理由でアリスは困ってしまった。
「是非来なさい。それで私の人形を手土産にして ち ゃ ん と 帰りなさい」
とりあえずその部分だけを強調しておいた。……しかし、雪子を招いておいて自分は訪れないのか、というのが凄く失礼なんじゃないか。
「……そうね。じゃあ私も稲羽市に遊びに行こうかしら。貴方の旅館に止まる一泊二日の旅。そのあとにキョウの世界にいってちゃんとしたポケモンを見ないとね」
「本当?じゃあ精一杯の御持て成しをしないと!……キョウさんのポケモン、悪い意味で想像の範囲外だったから、こんどこそ火を吐くポケモンを……あ」
そう、にこやかに雪子が言うと、雪子の笑顔が威嚇に変わる。そして指を刺した。振り返るとそこにいたのは、竜の鎧を模った戦士。
「……カイン・ハイウィンド、ね。セシルを唆した人で、セシルの仲間」
アリスはカインに質問をする。
「……セシルさんはどこにいったの?」
続いて雪子が質問をする。だが、カインはその質問に答えるそぶりも見せない。槍を二人向け戦闘態勢を取る。
「……戦う気が満々って訳ね」
アリスがデイパックから釘打ち機を装備する。これはショッピングモールで調達してきたものだ。
拳銃の方は雪子に持たせた。彼女のペルソナが無効化されたときの為に装備させたものだ。いつ襲われてもいいように準備は怠らなかった。
続いて雪子もタロットカードを壊し、コノハナサクヤをその場に呼ぶ。
そして戦が始まった。
アリスも少し乗りたいという気持ちもあったが、高い所は別に珍しいものではないと認識していたのでその気持ちはすぐに失せた。
アリスは幻想郷であった異変や住人の話をしているだけなのに雪子が笑う理由がわからなかった。
確かに紅魔館の門番が鯰を退治する話やまその湖に住む氷の妖精の話はおかしな話だが、別に笑えるような話ではない。
どうやらこの子は笑いのツボがどこかおかしいらしい。話相手だけ楽しいのは気に食わない。
もっとも雪子の話はちょっと常軌を逸脱していて、例えば町からでたことがないとかの内容は幻想郷に住まうものなら理解しがたい話であった。
「まぁ妖精は妖精でも、結構強いのよ……どうしたの?」
「なんかアリス、千枝に似てるなぁ」
「千枝って貴方の親友だって子、……ちょっと?」
とかの他愛ない話をなんどか続けていると、雪子が泣いているのに気付いた。口も目も顔も全て笑っているのに雪子の涙が頬をつたっていく。そして雪子が立ち止まった。
「……あれ、なんでだろ……涙が……」
「……雪子、大丈夫?」
急に涙を流す雪子に驚く。元人間のアリスでもその涙の理由はわからないし、幻想郷に急に涙を流す人なんて居るわけがなった。
「……千枝、元気かな」
「大丈夫にきまってるでしょ。さっき放送で名前も呼ばれてないし」
「でも!……襲われてるかもしれない」
涙目で自分に訴えてくる。確かにその可能性は完全に拭うことができない。だが今は人の事を気にしている場合ではない。
もっとも自分らしくない行動が長続きしている自分がそれをフォローするのは難しい。
「……いい、雪子。いま私達がすべき行動はこの遊園地の捜索。お友達の心配は別にしてもいいけど、貴方の泣き言をここで立ち止まって聞いてる場合じゃないの」
だから自分は話題を逸らすことしかできなかった。先ほどキョウがコイキングを頑なに見せなかったように。これが良い選択とは思えなかったが。
「この殺し合いは異常。まったくもって異常。だから幻想郷の住人だろうが日本の稲羽市の住人だろうがプププランド住人だろうが、均等に異常。だから貴方だけが知り合いの心配をしてる訳じゃない。私だって心配よ。でも心配した所で今は何も出来ない」
「……ごめん」
「あら、なんで謝るの?だから今はここを捜索するわよ」
本当は雪子が謝った理由は元人間だから知っていた。だが今は知らないふりをしておけば面倒は起きない事をしっていたので知らないふりをしたのだ。これはきっと間違った選択だと思うけど。
「(……やっぱり人間って面倒。この子の気持ちがわかればいいんだけど)」
元人間だから、この子の気持ちはわかる。わかるにはわかるが、それは細かな所まで渡るわけではない。
『こう言ったら怒るだろうな』とか『これを言うと悲しむから言わない様にしよう』程度だ。だからこの子の事を細かく知りたかったから一緒に行動する様に仕向けたのだ。
先ほどの籤引きは自分が細工して雪子と行動するようにつくったのだ。魔法使いだから種無し手品ぐらいはできる。(もっとも今は種無し手品程度の魔法しかできない)
キョウはそれに気付いてたみたいだが、何も言われなかったのでよしとしよう。
「……幻想郷っていいですね」
ふと、雪子が言った。
「あと、プププランド。平和で、退屈もしなくて、そして人間関係の柵が一切ない。私、そういう所に生まれたかった」
「……急にどうしたの?そんなにいいところじゃないわよ。あれじゃないの?『隣の芝は凄い』とかいう諺」
「『隣の芝は青い』だよ、アリス。……この面倒な事が終わったら幻想郷に遊びに行きたいな」
地上の人間がたまに幻想郷に迷い込むときがある。大抵は帰りたいと言うが、幻想郷が地上より良い所だとわかると途端に帰りたくない、ここに居住する、とか言うのも稀にいる。
それで、後者の方と雪子があまりにも一致していたので色々な理由でアリスは困ってしまった。
「是非来なさい。それで私の人形を手土産にして ち ゃ ん と 帰りなさい」
とりあえずその部分だけを強調しておいた。……しかし、雪子を招いておいて自分は訪れないのか、というのが凄く失礼なんじゃないか。
「……そうね。じゃあ私も稲羽市に遊びに行こうかしら。貴方の旅館に止まる一泊二日の旅。そのあとにキョウの世界にいってちゃんとしたポケモンを見ないとね」
「本当?じゃあ精一杯の御持て成しをしないと!……キョウさんのポケモン、悪い意味で想像の範囲外だったから、こんどこそ火を吐くポケモンを……あ」
そう、にこやかに雪子が言うと、雪子の笑顔が威嚇に変わる。そして指を刺した。振り返るとそこにいたのは、竜の鎧を模った戦士。
「……カイン・ハイウィンド、ね。セシルを唆した人で、セシルの仲間」
アリスはカインに質問をする。
「……セシルさんはどこにいったの?」
続いて雪子が質問をする。だが、カインはその質問に答えるそぶりも見せない。槍を二人向け戦闘態勢を取る。
「……戦う気が満々って訳ね」
アリスがデイパックから釘打ち機を装備する。これはショッピングモールで調達してきたものだ。
拳銃の方は雪子に持たせた。彼女のペルソナが無効化されたときの為に装備させたものだ。いつ襲われてもいいように準備は怠らなかった。
続いて雪子もタロットカードを壊し、コノハナサクヤをその場に呼ぶ。
そして戦が始まった。